平成二十五年東京都議会会議録第十七号

〇議長(吉野利明君) 十五番白石たみお君。
   〔十五番白石たみお君登壇〕

〇十五番(白石たみお君) まず、昨日代表質問に続き、徳洲会からの知事への巨額資金提供問題について伺います。
 昨日の代表質問に対する知事の答弁は、またまた前言を翻すもので、極めて不誠実なものであり、疑惑は深まるばかりです。
 借用証について、知事は二十九日の記者会見でどういったでしょうか。本物かどうか疑われているので、確認のために、徳田毅議員と人を介し連絡をとって確認した旨の発言をしました。しかし、昨日は、毅氏が借用証が私の手元にあるかどうか確認をしたのだと、百八十度違う答弁を行いました。
 二十九日の記者会見で、連絡をとったのは知事の側からというのは偽りだったのですか。これでは、あなたの説明を信用しろというのが無理です。いかがですか。
 しかも、再質問で、本物かどうか確認するために徳田議員に借用証を見せたのか、見せたのはいつかという質問に、知事は答えませんでした。不誠実きわまる態度です。明確に答えてください。答弁によっては、借用証はなかった、最近つくったものという疑惑が決定的なものになるということを申し述べておくものです。
 次に、徳洲会が獲得に動いた東京電力病院について伺います。
 東京電力病院売却への道を開いたのが、当時の猪瀬副知事、あなたですね。当時の東京電力は、当初、売却を拒否してきましたが、昨年六月二十七日の株主総会で、知事は売却を激しく迫りました。その結果、昨年十月に行われた東京都と東電との第一回定期会合で、東電は病院売却を表明するに至ったのです。
 その後、東電が病院売却を決めた約一カ月後の昨年十一月六日、知事が徳田虎雄氏と面会を行い、資金提供を受けたわけです。このとき、徳洲会は既に東電病院の売却方針を当然知っていたはずです。徳田氏との間で、東電病院問題について話題になりませんでしたか。
 都心に徳洲会病院の旗を立てることを悲願としてきた徳洲会にとって、東電病院を取得することは悲願達成のチャンスであり、落札のためにあらゆる手を尽くそうとしたことは十分想像されることです。そうした期待を込めて知事に資金提供した可能性は否定できないのではありませんか。知事、資金提供を受けるときに、そのことが頭をよぎりもしなかったのですか。
 しかも不思議なことに、その後一年半近くたつのに、東電病院の入札が行われたのかどうかすら発表されず、この問題は秘密のベールに包まれているのです。
 私は徳洲会を訪れて、この問題について聞きました。徳洲会側からは、都心に徳洲会病院の旗を立てることが悲願だと前々から公言していたとのことでした。そこにタイミングよく東電病院の話が出たので、競争入札に参加した。しかし、結果的に東京地検に家宅捜査を受けたので辞退をした。担当者が拘留されているので詳しいことはわからないといっていました。
 そこで、知事に伺います。
 東電病院の売却後、熱心に進めた猪瀬知事が、その後の経過について知らなかったとは思えません。本当に売却するのか、いつどのようにして売却するのか、目を光らせていないはずがないからです。
 東電病院売却の入札がいつ行われたのか、どの事業者が入札をしたのか、その順位がどうか。知事はどういう情報を得ているのですか。はっきりと答えてください。
 知らないというのなら、知事、あなたが進めてきた問題なのですから、知事の責任で直ちに調べて、都民と都議会に全貌を明らかにしてください。
 次に、防災対策について伺います。
 東京都は、震災対策による延焼遮断などを名目に、二十八の特定整備路線計画を進めています。私の地元品川区で進める補助二九号線、放射二号線、補助二八号線は、空襲で焼け野原となった戦後間もなくの計画であり、その後、半世紀以上の間、たくさんの住宅や商店が立ち並びました。
 それだけに、立ち退きや分断で大変な犠牲が生まれます。補助二九号線、放射二号線の二つの路線だけでも七百七十棟が立ち退きの対象となり、数千人近い人が立ち退かなければなりません。六十年以上暮らしてきた夫婦は、焼け野原のころから近所同士助け合ってきた、道路が通れば町会が二つに分断されてしまう、なぜ今になってつながりを壊そうとするのかと強く訴えました。
 商店街の犠牲も重大です。品川区は百七の商店街があり、東京商店街グランプリを九回も受賞し、受賞数では都内第一位です。品川区を南北に三・五キロ貫く補助二九号線は、十もの商店街を削り取り、または分断をします。宮前商店街、戸越公園中央商店街、戸越公園南口商店街の片側が根こそぎ削り取られ、一・六キロと東京で一番長い戸越銀座商店街も分断をされてしまいます。
 品川には苦い教訓があります。一本橋商店街は、百九軒もの商店が、道路と再開発によって七割以上がなくなりました。私はこうしたことが繰り返されてはならないと思います。
 お茶屋の二代目商店主は、七十年ここで営業し、お客さんの趣味も生きがいも知っているから心が通い合う交流ができる、その姿を見ていた息子も店を継ぐといってくれた、しかし、道路で将来が見えず、こっちは継いでくれと喜んでいえないと話します。
 都は、震災では行政の力に限界があり、自助、共助が大切だと強調してきました。しかし、これまで述べてきたように、補助二九号線を初め三つの道路整備は、町会も商店街も壊され、コミュニティ力も、避難や消火などの地域の防災力も弱体化させることになってしまいます。そのことをどう考えるのですか。
 都は、関係者の理解と協力を得て事業を進めていくとしています。しかし、地域当たり一、二回の住民説明会で疑問や反対の声が噴出しているのに、有無をいわさず測量を始めています。住民からは、不安で夜も眠れない、測量の人を見かけるとそれだけで怖くて仕方ないという、悲痛な声が届いています。この声をどう受けとめますか。これで住民の理解と協力を得てといえますか。
 しかも、都は、この道路の防災効果についてまともな検証も行っていないのではないですか。都のシミュレーションでは、道路の延焼遮断力が試される条件として、道路と垂直方向に吹く風の場合の火災だけを確かめています。これは東風か西風です。
 しかし、地震で一番大きな被害を生むのは、空気が乾いた冬の北風のときです。だから、都の首都直下地震の被害想定も、北北西の風でシミュレーションを行っているのです。品川の三つの道路は、いずれも南北方向に伸びております。北風が吹けば、炎の行く手を阻むことはできません。これでは、道路で本当に住民や地域が安全になるか、一番肝心な点が確かめられないではありませんか。
 私は、住民と地域に多大な犠牲を一方的に押しつける品川区内の特定整備路線の撤回を強く求めるものです。
 私は、住民に即した防災対策を提案します。
 都民の命を守るというのであれば、住宅の耐震化の支援がまずは大切です。倒壊を防止できれば出火も抑制でき、避難や救助の担い手もふやせるなど、地震火災の被害も減らせるのです。都内の一部地域に限定されている住宅耐震助成を都内全域に拡大し、高齢者、障害者世帯には上乗せをすべきです。
 耐震工事と一体で燃えにくい家に改修する難燃化工事によって、町もさらに安全になります。墨田区は、今ある墨田らしい木造の町並みを大切にするため、住宅を燃えにくく倒れないよう補強する助成を始めました。京都では、歴史ある町並みと細やかなコミュニティを守るために、担当者が地域に入り、町の皆さんと一緒に歩き、三年かけて地域の防災まちづくりを策定しようとしています。
 墨田区や京都市で始まった、耐震化と難燃化をセットで行う工事に助成する制度を、都としてどう評価しますか。
 延焼遮断帯中心のまちづくりを押しつけるのではなく、京都市で行われているように、地域の皆さんとの調査、協議の積み重ねによる、その地域にふさわしい防災まちづくりを求めるものですが、いかがですか。
 地震においては、電気が回復するときに起こる通電火災が出火原因の大きな一つであり、地震のときに電気を遮断して避難することが重要です。また、地震を感知してブレーカーを落とす感震ブレーカーや、必要な機器の電源だけを切る感震コンセントなどの出火防止器具の普及を促進することで、木造住宅密集地域における出火防止対策を推進すべきと考えますが、いかがですか。
 答弁を求め、再質問を留保して、質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 白石たみお議員の一般質問にお答えします。
 十一月二十九日に申し上げた徳田議員との借用証を確認した件について、連絡をとったのは知事の側からというのは偽りだったのですかというお尋ねですが、二十九日の会見で、そもそも、私の方から連絡をとったとは申し上げておりません。その件について、きのう、共産党の河野ゆりえ議員の代表質問にもお答えしたとおり、十一月二十五日に徳田毅氏の秘書から、鈴木特別秘書に連絡があり、確認したとの報告を受けているということです。
 次に、徳田議員に借用証を見せたのか、見せたのはいつかというお尋ねですが、借用証は、徳田議員に見せていません。十一月二十五日に徳田毅氏の秘書から鈴木特別秘書に連絡があり、私のもとに借用証が到着しているかを確認したと報告を受けているのみです。
 続いて、十一月六日の徳田虎雄氏との面会で、東電病院の売却が話題になったかどうかのお尋ねですが、東電病院の売却は話題になっておりません。
 次に、今回の私の借り入れと東電病院に関しての徳洲会グループの考えについてのお尋ねですが、当時、徳洲会グループの都内での事業計画や病院経営をしているという認識はありませんでした。昨日も答弁申し上げましたとおり、徳洲会グループに対しては、私は便宜を図ったことも一切ないし、それを頼まれたという事実もないし、そのつもりもなかったということです。
 東電病院の売却の件についてでありますが、東電病院は、原発事故の賠償責任を果たし、さらに電気料金の値上げをするという状況の中で、東電に経営努力を促す意味で、東京都として東京電力に売却を迫ったものであります。
 私は、昨年十月の東京都と東京電力の定期会合において報告を受け、東京電力が東電病院を売却する方針であることは承知していました。しかし、その後のことは、東京電力における実務的な問題であり、実際の売却に至る詳細な経緯までは承知しておりません。
 新聞報道では、東京建物に売却されるということを新聞報道では知りました。東電病院売却の問題と今回の私の借り入れの問題とは一切関係ありません。
 以上です。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 防災対策に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、住宅の耐震化助成についてでございますが、都は、防災都市づくり推進計画に定める震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象として、住宅の倒壊による道路閉塞や大規模な市街地火災を防止するという公共性の観点から、区と連携し、公的助成を行っております。財源を効率的、効果的に活用する観点から、引き続き整備地域に的を絞り、重点的に木造住宅の耐震化助成を行ってまいります。
 次に、墨田区などが実施している助成についてでございますが、都は、山手線外周部を中心に分布する防災上危険性の高い木密地域を安全な市街地につくりかえていくため、老朽木造建築物の不燃化建てかえ等に対する補助を行っております。墨田区の制度は、これに加えまして、建てかえまでの間、一定の防火、耐震性能を確保するために、老朽木造建築物の改修に助成を行うものでございます。一方、京都市の制度は、京都らしい町並みの保存を前提として防災対策を進めるための取り組みでございます。
 こうした助成制度などは、各自治体が主体的に創意工夫を凝らして進めているものであると、こういうふうに理解をしてございます。
 最後に、地域にふさわしい防災まちづくりについてでございますが、燃えない、燃え広がらない町を実現するためには、都市計画道路の整備などによる延焼遮断帯の形成や、老朽木造建築物の建てかえなどによる市街地の不燃化を促進する必要がございます。木密地域では、住民の高齢化に加え、権利関係が複雑であるため、こうした事業を進めるためには地元住民の理解と協力が重要であることはいうまでもなく、都と区は連携して、これまでも防災まちづくりの勉強会や説明会などを開催してまいりました。
 今後とも、都は区と連携して、防災都市づくりを推進してまいります。
   〔建設局長横溝良一君登壇〕

〇建設局長(横溝良一君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、特定整備路線の整備に対する考え方についてでございますが、六千四百人を超えるとうとい命が失われた阪神・淡路大震災では、幅員十二メーター以上の道路を越えて燃え広がることはありませんでした。
 この教訓を踏まえ、東日本大震災後に、都は、震災時に特に甚大な被害が想定される木造住宅密集地域の整備地域において大きな効果が見込まれる、補助第二九号線などの特定整備路線を整備することといたしました。燃え広がってしまっては、コミュニティの力も地域の防災力も全く発揮することができないと考えております。
 次に、特定整備路線の関係者への対応についてでございますが、都は特定整備路線の事業化に先立ち、地元説明会を開催し、その必要性や進め方を説明するとともに、幅広い質問や意見にお答えをしてきております。本日開催予定の北区の補助八六号線をもって、二十八地区全ての地元説明会を開催することになります。
 現在、関係者の理解と協力を得ながら測量作業を進めており、今後ともきめ細かく対応してまいります。
 最後に、特定整備路線の延焼シミュレーションによる安全性の検証についてでございますが、本シミュレーションは、木密地域全体の火災に対する安全性を検証するものではなく、特定整備路線のあるなしによる焼けどまり効果を路線ごとに確認するために実施したものでございます。シミュレーションに当たっては、東京消防庁の効果測定の手法を用いており、その整備により、確実に安全性は高まります。
 人の命と財産を守る取り組みは待ったなしであります。都は、命の道となる特定整備路線の整備に、スピード感を持って全力で取り組んでまいります。
   〔消防総監大江秀敏君登壇〕

〇消防総監(大江秀敏君) 木造住宅密集地域における出火防止対策についてでありますが、東京消防庁では、都民の地震時の行動をまとめた「地震 その時十のポイント」を活用し、避難時には電気やガスを遮断するなど、出火防止対策について広く普及啓発を行っております。
 また、火気器具周辺の整理や家具類の転倒、落下、移動防止対策を進めるとともに、感震コンセント等の住宅用防災機器や電源復旧時における安全確認の周知も図っております。
 今後とも、震災時の出火防止対策の推進に努めてまいります。
   〔十五番白石たみお君登壇〕

〇十五番(白石たみお君) 知事に再質問します。
 徳洲会は、巨額の金をなりふり構わずばらまいて、選挙買収などに使い、逮捕者まで出しています。
 猪瀬知事が昨年十一月六日、徳田虎雄氏と会ったとき、知事は会見では、挨拶程度しかしていないと説明していますが、救急救命などに取り組んできたことを一生懸命話していたと、同行した木村氏が新聞紙上で証言をしています。
 私は、徳洲会が東電病院の入札に参加したことも、徳洲会から明確に聞いています。便宜供与が疑われるのは当然ではありませんか。知事が徳田氏と医療について一生懸命話したという木村氏の証言は真実ではないのですか。お答えください。
 そして、徳田虎雄氏と交わした話の全容を明らかにしてください。
 自分がいい出した東電病院売却のその後の経過を調べようともしないのは、不可解な話です。あなたは、東京電力に対して、経営改革合理化の具体的内容について、明確な情報開示をと迫った人です。そのあなたが東電病院売却のその後の経過については手をこまねいている、何もつかんでいない、そんなことは信じられない。東電病院の売却をめぐる今の実態を、不明朗な実態であるとは思わないのですか。お答えください。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 先ほども申しましたように、十一月六日に、徳田虎雄氏との面会のときに、東電病院の売却は話題になっておりません。徳田虎雄氏の、立志伝中の人物であるという、そういう話を聞いておりました。
 また、東電病院の売却は、東京都として東電の資産売却をやるべきだというふうに提案し、東電が東電病院の売却をしたということで、東京都の目的は達成しております。以上です。
 東京電力の病院の売却と今回の話は一切関係ありません。

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