平成二十五年東京都議会会議録第十七号

〇議長(吉野利明君) 三十八番遠藤守君。
   〔三十八番遠藤守君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇三十八番(遠藤守君) 昨日と同様の趣旨により、以下、教育長並びに関係局長に答弁を求めます。
 初めに、医療機関に入院中の患者が別の医療機関に転院する際の、都の新たな支援について質問をいたします。
 先日公表されました福祉保健局の平成二十六年度主要事項予算見積概要には、新規事業として、都内医療機関に対し、転院支援情報システムの普及啓発を行うとともに、システムを活用した転院調整を実施し、その結果について評価、検討を行うとの記載がありました。これは、ことしの予算特別委員会を初め厚生委員会などで、入院三カ月後の転院支援のため、全都的な仕組みづくりが必要という、私の提案に沿ったものと評価をいたします。
 一連の質疑の際、私は、入院中の身内が余りに早く転院を迫られた、病院で紹介された転院先は高額なところか遠方で大変悩んでいますなどといった、患者、家族から寄せられる切実な声を紹介いたしました。
 新たに構築を目指すシステムは、転院先探しに苦慮するこうした患者、家族の負担軽減に確実につながるものでなくてはなりません。システムの概要と導入に向けた今後のスケジュールについて、まず答弁を求めたいと思います。
 ところで、この予算特別委員会では、高齢社会における地域医療体制のあり方を検討するため、都として、中小病院への訪問調査や、都内全病院を対象にしたアンケートを実施するとの答弁がありました。これらの調査には、転院調整に関する事項も含まれていたと承知をしています。それらの結果を明らかにするとともに、新たな転院支援システムの構築に当たっては、この調査で得られた現場の声も十分に反映させるべきと考えます。それぞれ見解を求めます。
 次に、復興記念館について質問をいたします。
 一九二三年、大正十二年、首都東京を襲った関東大震災は、十万人を超すとうとい人命を奪い、その爪跡は甚大きわまるものとなりました。
 折しも、ことしはこの関東大震災から数えて九十年の節目を迎え、多くの犠牲者が出た墨田区の横網町公園において、九十周年事業の一環として、復興記念館のリニューアルがなされたと聞き、私も十月にその展示を見学してまいりました。
 この記念館は、天災の恐ろしさを忘れない心がけを持つために、社会教育的機関としても利用される目的で、昭和六年に開館をいたしました。館内には、当時の痛ましい被害の状況や、復興に向けたさまざまな取り組みが、写真や模型などで展示をされていて、貴重な資料も所蔵されておりました。
 今回、展示内容をリニューアルするに当たっては、記念館をこれまで管理してこられました東京都慰霊協会及び東京都が中心となって、平成二十四年に展示構成等検討委員会を設置し、さまざまに議論をしてきたとのことであります。新たに修復した絵画や巻物を展示するとともに、展示品として大型パネルやパノラマ写真等を併用したところなどは、非常に迫力を感じました。その一方で、展示品の中には、内容が難しいものや解説がないものもあり、全体としてはわかりにくさを感じました。
 復興記念館というコンセプトのように、この記念館が震災と復興という歴史的事実を発信する施設であるのならば、若い世代や外国人も含めて、より多くの方に見てもらえるよう、さらなる工夫が必要とも率直に感じました。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、この記念館に近い両国国技館はボクシングの競技会場になり、今後は国内のみならず、海外からも多くの外国人旅行者が当地を訪れることになります。
 そこで、よりわかりやすい臨場感ある展示を目指して、最新の映像技術を活用したり、被災の様子を実体験できる装置を導入する、さらには複数の言語で解説をする多言語対応など、その手法を大幅に見直すべきです。答弁を求めたいと思います。
 次いで、東京都指定の有形文化財の調査について質問をいたします。
 最近、国が指定した重要文化財のうち、絵画、仏像などの美術工芸品七十六点が所在不明であるとの報道がございました。所在不明の文化財は、盗難に遭ったケースや、文化財の持ち主がかわった際に文化庁に対して所有者の変更届を行わなかったため、所有者がわからなくなったケースもあるようであります。このため、重要な文化財が海外に流出してしまったというショッキングな報道内容でありました。
 国民の貴重な財産である重要文化財が行方不明になっているということは、都の文化財行政に強い関心を持っている私にとっても決して他人事ではない、このように思いました。
 今回の報道を受け、文化庁は、全国的に文化財の所在に関する調査を行うとのことでありますが、東京都においても、絵画、考古資料、仏像など二百七十三点の美術工芸品が文化財に指定をされていることから、この報道を受け、私はその所在に強い関心を持ったわけであります。
 この点、都教育委員会は、現在では恒例となっております東京文化財ウイーク、これを始めるに当たり、平成九年と十年にかけて、都指定の有形文化財全てについて、その保存管理状況の確認調査を行ったとのことであります。
 しかしながら、この際、美術工芸品について実際に職員が現地で確認をしたものは、全体のわずか二五%にとどまり、残りの七五%については所在を確認したわけではありません。この調査から既に十五年が経過し、その後、調査は行われていないことから、都指定の美術工芸品の所在について速やかに調査、確認すべきであると思います。
 また、今後は、一定期間ごとに調査を行う必要もあると考えますが、それぞれ見解を求めたいと思います。
 なお、ことしの予算特別委員会では、都内には、国や都が指定した文化財が全国最多の約四千件もあるという現状に鑑み、学芸員の増員を求めました。今回提案した調査をするに当たっても、学芸員の専門的知識が不可欠であると思います。改めて、文化財保護行政を着実に推進する体制の早期整備を強く要望しておきます。
 次に、下水道施設の耐震対策について質問をいたします。
 我が党は、重点政策の一つとして、迫りくる首都直下地震に備えるために、東京の高度防災都市づくりを実現し、都民が安心・安全に暮らせる社会環境を構築していくことを掲げております。
 さきの東日本大震災では、大規模な地震や津波により下水道施設が被災し、震災後の住民生活に大きな影響を与えたことから、下水道は地震時においても安定した機能を発揮する必要があり、下水道施設の耐震性及び耐水性の確保が重要であります。
 中でも、区部にある十三の水再生センターや八十五カ所のポンプ所は、下水道管で集めた下水の処理や雨水の排除といった下水道機能の中核をなす施設であるため、耐震化を進め、下水道機能を確保していくことが極めて重要であります。
 さらに、これらの下水道施設は東京湾周辺に立地していることが多く、津波への備えも欠かせません。
 そこで、下水道局として、水再生センターやポンプ所の耐震化、津波対策としての耐水化を積極的に進めるべきと考えます。見解を求めます。
 ところで、水再生センターは規模が非常に大きく、施設数も多く、一度に全ての施設を耐震化や耐水化することは困難であると思います。
 中でも、大田区にある森ヶ崎水再生センターは、区部で発生する下水の約四分の一を処理しており、日本で最大規模の水再生センターであります。また、センター内の森ヶ崎公園は区の広域避難場所にも指定されており、震災時の都民の安全確保のために極めて重要な施設であります。さらに、同センターは東京湾に面しており、地震時の津波など、影響を直接受けやすいのではないかと、近隣の皆さんも大変に危惧をしておられます。
 そこで、この森ヶ崎水再生センターについては、施設の耐震化や津波に対する耐水化を優先的に進めるべきと、このように考えます。見解を求めます。
 最後に、伊豆大島への支援について一言申し上げます。
 土石流災害発生の翌朝、私は単身、大島入りいたしました。八年前の初当選以来、大島を担当する我が党都議会議員として、何度も足を運んできました。ふだんは三原山をバックに緑豊かでのどかな地域が、一夜のうちに凄惨な被災地に変わってしまったことに、ただただ愕然といたしました。
 昨日の代表質問でも触れたとおり、先月十九日、発災から一カ月後の課題を探るため、都議会公明党は、中嶋幹事長を団長とする現地調査団を派遣し、私も随行いたしました。発災直後から現在、そして将来へと被災地のニーズは刻々と変化していますが、被災地が、現地が一貫して求めているのは、都の全面かつ継続的な支援である、このように実感をいたしております。
 昨日の代表質問での関係局長の答弁の内容が迅速かつ着実に実施されますよう、強く強くこのことを求めまして、私の質問とさせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 遠藤守議員の一般質問にお答えをいたします。
 文化財の調査についてでありますが、東京には建造物や絵画など多くの文化財があり、都民共通の貴重な財産として適切に保存、管理することが求められております。
 これまで都教育委員会では、区市町村と連携し、都指定文化財の復元、修理や、文化財ウイーク実施時の現状確認、さらに、都内の文化財を一覧にした東京都文化財総合目録の五年ごとの改訂等を通じて、全ての都指定文化財の把握に努めてまいりました。
 しかし、手続を経ずに所有者が変更され、所在不明となっている国の文化財の例もあるため、都教育委員会として、区市町村と連携し、所有者の協力を得ながら都指定文化財の早急な現状確認を行うとともに、定期的な調査の充実を図ってまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、転院支援情報システムについてですが、都は現在、学識経験者や病院において実際に転院支援に当たっている医療従事者から成る検討会議を設置し、システムの具体的な内容について検討を進めております。
 システムは、医療機関の所在地やアクセスなどの基本情報に加え、提供しているリハビリテーション医療の内容やおおよその月額入院費用など、転院先選定に必要な情報を簡単に検索できるものとし、今年度中の構築を予定しております。
 来年度にはシステムの試験運用を開始し、検索項目等について評価検証を行いながら、早期の本格運用を目指してまいります。
 次に、転院支援に関する医療現場の声についてですが、都が本年二月に都内全病院を対象に実施した調査では、約九割の病院で転院支援など医療連携の担当者を配置しておりますが、規模が小さい病院では、他の業務との兼務の割合が高いこと、担当者は、MSW、社会福祉士、看護師のほか、事務職員等も従事していることがわかりました。
 また、医療現場からは、転院支援に必要な医療機関の情報が少なく、適切な転院先を選定することが困難であるとの声が多く寄せられております。
 そのため、システム構築に当たりましては、担当者が職種等にかかわらず都内全域の病院の情報を容易に入手でき、その中から、患者の病態や希望に応じて転院先を検索できるよう、医療現場の声を十分反映させてまいります。
   〔建設局長横溝良一君登壇〕

〇建設局長(横溝良一君) 都立横網町公園の復興記念館の展示についてでございますが、この記念館は、関東大震災や東京大空襲という歴史的な惨事を深く認識し、都民に悲惨な状況を実感してもらうために、当時の写真や絵画、遺品などの資料を展示しております。
 ことしは関東大震災から九十年目に当たるため、有識者から成る展示構成等検討委員会の提案を踏まえ、大型モニターによる記念館のガイドの放映や展示パネルの改善、修復した絵画の公開など、展示の充実を図りました。
 今後は、オリンピック・パラリンピックの開催も見据え、新たにデジタル映像技術を取り入れるほか、解説板を多言語化するなど、外国人観光客を含め、多くの来館者にわかりやすい施設となるよう検討を進めてまいります。
   〔下水道局長松浦將行君登壇〕

〇下水道局長(松浦將行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、下水道施設の耐震化、耐水化についてであります。
 下水道局では、下水道施設の地震・津波対策整備計画に基づき、想定される最大級の地震動に対する耐震化や津波への耐水化を進めております。
 耐震化については、水をくみ上げる揚水、簡易処理、消毒など、震災時にも必ず確保すべき機能を担う施設を対象とし、区部にある十三の水再生センターと八十五のポンプ所の全てで、オリンピック・パラリンピック開催前の三十一年度までに対策を完了させることとしております。
 耐水化については、津波による電気設備などの浸水を防ぐため、地盤高さなどを勘案し、三十四の施設で開口部の水密化などを行っています。臨海部や東部低地などに位置する施設から優先して実施しており、二十八年度までに対象施設の全てを完了させることとしております。
 次に、森ヶ崎水再生センターの耐震化、耐水化についてであります。
 同センターは、日本最大の施設規模や臨海部での立地を踏まえ、優先的に対策を進めております。
 耐震化は、平成二十四年度から、揚水のためのポンプ施設、簡易処理のための第一沈殿池及び消毒のための塩素接触槽で工事を行っており、放流渠についても、新たに来年度から着手するなど、三十一年度までに対象施設の全てを完了させます。また、森ヶ崎公園として広域避難場所に指定されているセンター上部については、既に安全性を確認しております。
 耐水化につきましては、西側処理施設の地盤が低いことから、処理施設の周囲全てを囲う止水壁の設置工事に来年度から新たに着手し、二十八年度までに完了させることとしています。
 下水道施設の耐震化や耐水化を積極的に推進し、震災時においても安定した下水道機能を確保してまいります。

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