平成二十五年東京都議会会議録第十七号

   午後一時開議

〇議長(吉野利明君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(吉野利明君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(吉野利明君) 昨日に引き続き質問を行います。
 七十二番鈴木隆道君。
   〔七十二番鈴木隆道君登壇〕

〇七十二番(鈴木隆道君) 初めに、先般の台風二十六号により亡くなられた多くの方々に、心からご冥福をお祈り申し上げます。また、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げ、一般質問に移ります。
 まず、都市外交について伺います。
 IOCのジャック・ロゲ前会長から、東京という名前が告げられ、オリンピック・パラリンピックの開催都市が決定をいたしました。その瞬間、また、あの感動的な場面は一生忘れ得ぬものとなりました。私は、東京を支持してくれたアジアや世界の友人たちに、非常に強い感謝の念で胸がいっぱいになったことが事実でありました。素直に、ありがとうございましたという言葉が出てまいりました。
 と同時に、実は身震いのする怖さが心を覆ったのもまた事実でありました。今、東京そして日本が国際社会の中で果たすべき大きな役割とその責任の重さを自覚し、勇気を持って立ち上がるべきと決意を新たにしたところでもあります。
 また、今回の成功を手繰り寄せたのは、感謝の心、謙虚の心、そして諸外国への尊敬の念を持ち、多くの方々の協力に支えられたオールジャパンとしての取り組みであり、二〇一六年の招致活動を糧としたきめ細かいロビー活動の結果であったことが大きな理由でありましょう。
 しかし、私はそれだけではないと思うのであります。そもそもオリンピック・パラリンピック招致は、国や都市の総合力が問われているものであるからです。その国、都市が有する歴史、文化に対する高い評価、そして国際社会における貢献度、そうしたものも踏まえて、その国、都市が尊敬を受けていないならば、いかにロビー活動を行おうとも、とても招致はおぼつかないのではないかというふうに感じています。
 戦後、多くの方々が、坂本竜馬の意思を継ぐ形で海を渡り、世界中で活躍をし、そして日本人としての信用、信頼を築いてまいりました。今回の成功の背景には、まさにそのような大きな力が働いたと私は感じています。このことは、恐らく私一人ではないと思います。
 都が今回、二度目の挑戦で招致をかち取ったことは、東京がまさに国際社会からその実力、総合力を評価されたということにもなりましょう。その中でも大きな要因となったのは都市外交であったと私は考えております。
 代表質問で宇田川議員からも申し上げましたが、都がこれまで推進してきたアジア大都市ネットワークなど、儀礼的な内容にとどまらない、現実的な課題解決のための地道な取り組みが、アジア諸都市や世界の主要都市の共感を得ることにつながりました。そして、東京がオリンピックの開催都市になることで、アジアや世界の発展に東京が積極的に貢献していくという期待がさらに高まり、このことが招致を成功させる土壌となったものと考えられます。
 私はここに、これからの都市外交の鍵があると思っています。これからの東京は、冒頭に申し上げました、国際社会への感謝の気持ちを目に見える形であらわすとともに、さらに国際社会からの共感、尊敬を得るべく、従来にも増して心のこもった、世界に貢献する形での交流を進めなければならないのであります。
 それは、従来の取り組みの延長にあるものではありません。オリンピック・パラリンピック招致が決まった今、都市外交のさらなる高みへと新たな一歩を踏み出すべきと考えます。
 そこで、この機会に、東京の都市外交について考察を深めたいと思います。
 まずは、姉妹友好都市であります。
 アジア大都市ネットワーク21をアジア外交戦略のかなめとすれば、こちらは、アジアはもとより、さらに全世界を視野に入れたグローバルな展開を考えて、都市関係を活性化させるべきであります。
 そのための一つの戦略として、文化、スポーツ交流に重点を置いてはいかがでしょうか。これは、今回のオリンピック・パラリンピック招致の経験を踏まえた、東京ならではの提言であります。招致のライバルであった、まずはマドリード、これは戦略的にも非常に大事だと思いますが、マドリード、イスタンブール、そしてIOC総会が開催されたブエノスアイレスとも一日も早く姉妹友好都市関係を構築し、文化、スポーツ交流、または目的を決めた交流をするという外交戦略を持つべきと考えます。将来を見据えた政策として、私はあえて提言として申し上げるものであります。
 このように、姉妹友好都市を単なる儀礼的な関係ではなく、都市が抱える課題解決など、都市外交の外交の舞台としてさらに積極的に活用すべきと考えます。
 そこで、姉妹友好都市の今後の展開について、まず所見を伺います。
 さて、先月、アジア大都市ネットワーク21の総会が、ベトナム・ハノイ市で開催されました。都市計画や省エネルギー政策について、会員都市による活発な意見交換が行われたと聞いております。
 アジア大都市ネットワーク21は、今後さらに飛躍的に発展する可能性を持っています。いや、発展をさせるべきだと私は考えています。
 例えば、アジア大都市ネットワークの加盟都市は十三の都市であります。しかし、ASEANのメンバーである、親日的で東京の貢献を大変期待をしているラオスのビエンチャンは加盟都市ではありません。
 また、一国一都市にとらわれる必要もないと考えます。都が経済的に結びついたり、文化的に結びついたりした方がよい都市もあります。アジア経済全体の繁栄を考えるならば、アジア経済のハブである香港やシンガポール、また成長著しい経済都市である上海とか大連、流通を考えれば、アジアの海運ハブとしての韓国の釜山、台湾の高雄と連携することも、効果は期待できます。
 さらにいえば、従来のアジア大都市ネットワーク21や、姉妹友好都市との交流の形にとらわれない、例えば先ほど申し上げました文化、スポーツに特化した都市間交流や、経済交流に特化した第三の交流の道があってもよいのではないでしょうか。
 こうして見ると、アジア大都市ネットワーク21も、今、新たな展開が期待されていると思います。
 そこで、アジア大都市ネットワーク21の今後の展開についての所見を伺います。
 これまでも、私は質疑の中で、東京がすぐれた技術を持つ企業とアジア都市との特に経済交流を促進すべきと申し上げてまいりました。アジア大都市ネットワークでは、産業交流展やその他の国際見本市においてアジアゾーンを設置するなど、経済交流を進めてまいりました。
 アジア各都市との経済交流は、アジアの発展に資するだけでなく、都内中小企業にとっては新たなビジネスの機会でもあります。今後は、アジア市場を目指す都内中小企業に対する支援を強化することにより、都市間に加え、企業間の実質的な経済交流を進めていくことが重要であります。
 都内中小企業の中には、新たな販路を求めて、潜在的に高い成長力を持つアジアのマーケットを目指す企業も多いと聞いておりますが、現地の情報に疎いまま、知り合いもいない中で、いきなりビジネスをしようとしてもなかなかうまくいかないという現実があります。
 海外ビジネスで成功するためには、その前段として、現地の情報を的確に把握、分析するとともに、現地の関係機関や企業とのネットワークを構築することが不可欠であります。しかし、人員的にも資金的にも限界がある中小企業がこうした取り組みを独自に行うのは、現実的に困難であります。
 また、都市間の経済交流を東京に要求する国はアジアに非常に多く、各都市の期待するところでもあります。経済交流都市としての形も、先ほども申し上げましたが、考える必要がある、またそのときが来ていると思われます。
 このことを踏まえ、具体的に東京都が現地にキーパーソンとなる人を置いて、迅速な情報収集やパートナー企業の発掘など、きめ細やかな支援を展開すべきと考えますが、所見を伺います。
 もとより、外交政策は国家のかなめであります。しかし、二十一世紀は都市の時代といわれ、外交における都市の果たす役割が大変大きく重要になっているのも事実であります。アジアや世界に交流から協力、そして貢献をしていくという新たなステージに対応し、そしてそのための都市外交は、従来のカテゴリーにとどまっていたのでは十分ではないと考えています。アジアの国々の発展により一層貢献するためにも、現在の交流の枠組みにとどまらない新しい都市外交戦略へとギアチェンジをする必要があると考えます。
 そこで、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック実現に向けた首都東京の今後の都市外交、特にアジアに対する都市外交戦略の理念について、改めて所見を伺います。
 次に、教育について伺います。
 キャロライン・ケネディ新駐日大使が、女性初の駐日アメリカ大使としての第一歩を踏み出しました。精力的に活動を始められておりますが、大使の父でありますジョン・F・ケネディ大統領、元大統領は、一九六一年の大統領就任演説で、国が何をしてくれるのかを求めるのではなく、国のために何ができるのかを問うてほしいと述べたことは、世界中の人々の記憶に残る名演説の一節であります。
 オリンピック・パラリンピックが決定いたしました。今、我が国は、世界に何かを求めるのではなく、日本が世界のために、東京が世界のために何ができるのか、また一人一人の日本人が世界のために何ができるのかを考えるべきときが来ていると私は考えます。
 九月七日、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会が東京に決定をいたしました。ブエノスアイレスで開かれたIOC総会での東京開催の決定の瞬間、これまで招致活動に携わってきた者の一人として、あの感動と感激は生涯忘れることのないものとなりました。
 そして、まさに日本が世界に対して貢献をすべきときが来たわけであります。それが今であります。その責任は、さきにも申し上げましたが、非常に重いと考えます。そして、それと同時に、感謝の気持ちを持ち、そのことを伝えていくことも大変重要なことだというふうに思います。
 スポーツは、国や地域、人種や宗教の違いを超えた、世界共通の文化であります。そして、オリンピックには、世界の平和を希求する深遠な哲学があり、崇高な理念や哲学について、全ての日本人が謙虚に学び、何ができるのかを考え、世界に貢献していくという行動を起こしていくことが、開催都市東京としての責務であると考えます。
 そのためには、子供のころから日本人として、オリンピックの歴史的意義や世界平和に果たす役割を謙虚に学び、世界に貢献するという学びの心に灯をともしていく必要があると考えます。温故知新、日本の伝統文化を継承し、世界の国々の伝統文化の理解を深めること、草の根の交流、お互いの心の交流を深め、感謝の気持ちを伝え合うことが、最も今、必要なことと考えます。
 このことを踏まえ、都教育委員会は、開催都市東京として、今後、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催を見据えた都の教育をどのように展開をしていくべきと考えるか、所見を伺いたいと思います。
 昨年のロンドン・オリンピック・パラリンピック大会に象徴されるように、世界のトップアスリートの崇高な競い合いは、若者や子供たちを含めた世界中の人々を魅了いたしました。ヨーロッパでは、平和の祭典であるオリンピック、誰もが自国でのオリンピック・パラリンピック競技大会の開催の実現を夢見ています。そして、そういう国、誇りある国家をつくりたいということを念願しているのが事実であります。
 スポーツ、特にオリンピック・パラリンピックに対する考え方については、今いいましたように、日本人が改めて学ぶべきことが、私は大変多いというふうに考えています。
 私が中学生のころ、一九六四年の東京オリンピックが開催をされました。あのときの日本人の大活躍した姿に感動したことは、初めて見た外国人選手の競技水準の高さへの驚きは、今でも私の心のレガシーとして残っています。
 私は、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技開催が、二十年後、三十年後も、次代を担う全ての子供たちの心の中にレガシーとして生き続けるものにしていきたいと願っています。
 そのためにも、七年後に開催する東京にあって、オリンピックの崇高な理念や哲学、世界平和につながるオリンピックムーブメントを子供たちが深く学ぶことができるよう、オリンピック学習の充実について、今後具体的に取り組む必要があると考えますが、所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 鈴木隆道議員の一般質問にお答えをいたします。
 教育に関する二点のご質問ですが、まず、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック開催を見据えた教育についてであります。
 スポーツを通じ、国や地域、文化の違いを超えて互いを理解し、世界平和に貢献するというオリンピックの理念を踏まえ、児童生徒が世界の人々とともにこれからの時代を切り開く力を身につけていくことは、極めて重要でございます。
 このため、都教育委員会は、我が国や他国の伝統文化に触れ、日本人としての自覚と誇りを持ち、多様な文化を尊重できる心や態度を育む教育をより一層推進してまいります。
 また、国際社会の一員としての自覚を持ち、言葉の壁を乗り越えて、世界の人々との友好と親善を深め、世界平和の確立に貢献できる人材を育成する教育を積極的に展開をしてまいります。
 次に、オリンピック学習の具体的な取り組みについてでありますが、七年後のオリンピック・パラリンピック競技大会で選手を直接応援したり運営を支えたりするという貴重な体験を、児童生徒が人生の大きな糧としていくためには、学校においてオリンピックに関する教育を推進することが極めて重要であります。
 このため、都教育委員会は、関係機関との連携を図り、オリンピック・パラリンピックの意義と国際親善に果たす役割などを詳しく学習できる教材の開発、オリンピアンやパラリンピアンから夢に向かって努力することの大切さなどを直接学ぶための交流、学校と参加国との国際交流を図る一校一国運動などの具体的な取り組みを通して、開催都市にふさわしいオリンピック学習の充実に全力を挙げて取り組んでまいります。
   〔知事本局長中村靖君登壇〕

〇知事本局長(中村靖君) 都市外交について、三点のご質問にお答えします。
 まず、姉妹友好都市の今後の展開についてでありますが、都はこれまで姉妹友好都市との間で、文化、スポーツ等を通じた交流を図ることはもとより、大都市の課題解決に向け共同で取り組むなど、実質的な交流を行ってまいりました。最近では、本年四月にニューヨーク市と環境問題等について意見交換するとともに、友好関係の象徴として桜を贈呈することといたしました。また、十月には北京市の実務担当者を東京に招き、大気環境改善のためのワークショップを開催いたしました。
 今後も、ご指摘を踏まえつつ、これまで築いてきた信頼関係を礎に、さまざまな機会を捉えて相互理解を深めるとともに、知恵や経験を積極的に交換することにより、姉妹友好都市との交流を推進してまいります。
 次に、アジア大都市ネットワーク21の今後の展開についてでありますが、アジア大都市ネットワーク21では、文化やスポーツの分野についても、これまでにアジア舞台芸術祭やジュニアスポーツ交流などの共同事業を通じて、会員都市との交流を深めてまいりました。
 今後は、ハノイ総会において承認された新規共同事業、経済交流促進のプラットホームを通じ、各国の中小企業の販路開拓につなげ、アジア発の新産業を生み出していくことを目指していきます。
 今後とも、アジア大都市ネットワーク21の取り組みを通じ、アジアの発展により一層貢献してまいります。
 最後に、今後の都市外交戦略についてでありますが、世界人口の半数が都市に集中する中にあって、都市外交の役割はますます増大しております。中でも、豊かな潜在力を持ち、力強く成長を続けているアジア諸都市との交流は重要でございます。
 都はこれまで、姉妹友好都市との交流やアジア大都市ネットワーク21を通じ、互いの知恵や経験を交換し、アジアを初めとする都市の課題解決に取り組んでまいりました。東京オリンピック・パラリンピックの開催決定を契機として、こうした都市同士の交流をさらに進めることが期待されております。
 今後は、アジア大都市ネットワークの新たな共同事業も活用しながら、さらなる国際貢献を視野に入れ、都市外交を積極的に推進してまいります。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 中小企業のアジア展開支援についてでありますが、高い成長が見込まれるアジア市場において、都内中小企業の販路開拓を支援することは、東京の産業の活性化を図る上で重要であります。
 都はこれまで、製品の輸出を希望する企業に対し、アジア各地域から収集した情報をもとに、商品ニーズや取引実務に関するアドバイスなどを行ってまいりました。近年、中小企業の海外展開の形態は、販売拠点の設立など多様化しており、現地において、各企業のニーズに応じたきめ細かな支援が求められております。
 そこで今後は、アジア地域に新たにアドバイザーを配置し、現地の状況を的確に踏まえたアドバイスや代理店とのマッチングを行うなど、中小企業の販売活動の強化に対する支援の充実を検討してまいります。

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