平成二十五年東京都議会会議録第十三号

〇副議長(藤井一君) 十二番小松久子さん。
   〔十二番小松久子君登壇〕

〇十二番(小松久子君) 都議会生活者ネットワークを代表して質問します。
 東京は、安心、安全、安定を強調して、ついにオリンピック開催を手に入れました。しかし、福島原発について、状況は完全に制御されているという安倍首相の発言は、どう見ても無理があります。
 その後、東京電力も、猪瀬知事も、今は必ずしも制御されていないと修正発言をしていますが、復興五輪を掲げ、それまでに被災地を復興させることを内外に約束したからには、都としても放射能対策や復興支援への責任を国だけに押しつけるわけにはいきません。
 オリンピック開催決定で、老朽化したインフラや建築物の更新需要が一挙に加速することは確実で、人手や資材不足の問題は既に発生しており、被災地の復興のおくれが懸念されます。
 オリンピック開催に合わせたさまざまな施設やインフラ整備が将来世代に過大な負担とならないよう、環境、省エネ、障害者や高齢者に優しいまちづくりを実現するチャンスと捉え、限られた財源の中で優先課題を明確にし、不要不急の事業にまで着手しないことが重要です。
 復興五輪を掲げた東京の知事として、改めてこれからの都政運営について決意を伺います。
 八ッ場ダムと治水対策について。
 近年、ゲリラ豪雨が多くなっており、ことしも都内で浸水被害が発生しました。東京で起こっている浸水被害は、遠くの山に降った雨が中流域、下流域であふれて起こすのではなく、都内の狭いエリアで短時間に大量の雨が降り、河川や下水道の流下能力を超えるため起こっているのが特徴です。実際に、東京の利根川水系の河川である江戸川と綾瀬川及び中川は、ここ何十年もあふれたことはありません。
 こうした現実を考えると、八ッ場ダムやスーパー堤防は今必要な治水対策とは思えないのです。優先すべきは豪雨による洪水対策であると考えますが、見解を伺います。
 ことし四月から、小学六年生から高校一年生までの女子を対象にHPVワクチン、いわゆる子宮頸がんワクチンが法定接種化されました。しかし、それ以前のワクチン接種緊急促進事業による接種で深刻な副反応被害が全国で起きていることから、六月十四日、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会は、国民に適切な情報提供ができるまでの間との限定つきで、積極的勧奨の中止を決めました。
 ことし三月、杉並区で副反応被害が明るみに出たことを発端に設立された被害者連絡会には、頭をがんがん殴られるような、スプーンで目の奥をえぐられるような痛み、真っすぐ歩けない、立てない、自分でコントロールできない不随意運動、失神を繰り返す、生理がとまる、記憶障害、計算障害、時計や漢字も読めない、書けない、細かい作業ができない、視力障害、光がまぶしいなどなど、毎日のこともあれば、突然出現することもあり、痛みが体中移動し、日により、時間により変わると症状を訴える声が、全国から七百件も寄せられています。
 さらに、症状が接種直後に起きるとは限らないため、本人も医者もワクチン接種の因果関係の可能性に思い至らないケースが非常に多いのです。
 文科省が行った昨年度の全国の中学、高校におけるワクチン接種に関連した欠席などの状況調査では、全国で百七十一人の該当者が確認され、そのうち約四割は症状の改善が見られないことが報告されています。
 しかし、この調査は学校が把握している範囲であり、実態を正確に捉え切れていません。都としても、緊急促進事業で接種を受けた全員に調査をかけ、被害の実態把握をすることを強く要望します。
 また、接種後の体の痛みなどを訴える多くの被害者に、適切な医療を提供することも必要です。このような少女たちを救済するため、都として、国に対し、このワクチン接種による副反応についての詳細な検証と国民や医師への情報提供を行うとともに、被害者たちへの支援を行う体制を整えるよう求めていくべきと考えますが、見解を伺います。
 八月に消費者教育推進計画が策定され、平成二十五年度には若者や高齢者の被害防止、子供の安全など、ライフステージごとのきめ細かい取り組みが計画されていることは評価しますが、二十四年度に実施された消費者教育に関する実施状況調査では、小中高のいずれの学校でも年間一、二時間の授業しかなく、とても十分とはいえません。
 課題として、他の優先課題があり取り組めないが最も多く、活用できる教材、教員のスキルアップの必要性も挙げられています。子供のころから金銭管理や食品表示、情報化への対応などの基本的な消費者教育こそ、もっと力を入れるべきです。
 教育庁はこの推進計画を踏まえ、どのように取り組んでいくのか伺います。
 学校における消費者教育を充実するためには、多忙な教員にかわって消費者教育を行う仕組みが必要です。
 都は、消費生活アドバイザーや消費生活コンサルタントなど、各種団体が認定した資格を持つ東京都消費者啓発員、コンシューマー・エイドを講師として学校に派遣していますが、より多くの学校に派遣するなど、学校における消費者教育への支援を充実すべきと考えますが、見解を伺います。
 障害者施策についてです。
 これまで、高齢者、障害者、子供という枠組みの壁に阻まれて、一つの施設を複合的に使うことができませんでしたが、今回の条例改正で、高齢者施設に障害のある子供が通うことができるようになります。
 生活者ネットワークは、かねてから地域でともに過ごす場づくりを提案し、高齢者と障害のある子供が一緒に過ごす富山での先駆的な取り組みを高く評価してきました。今回、制度の壁に風穴があけられたことの意義は非常に大きいと歓迎しています。
 放課後デイサービスの施設はふえているものの、ニーズは多く、地域の小規模多機能施設に通うことで解決できるケースも考えられ、今後この仕組みが活用されることを期待します。
 しかし、高齢者と障害児という枠を超えた制度改正の情報は、縦割り行政の中で必要なところに届かない懸念があります。
 都として積極的に情報を提供し、実現するよう自治体とともに進めてほしいと思いますが、見解を伺います。
 ことし四月から、障害者優先調達推進法が施行され、都でも法に基づく調達方針を策定しました。
 方針では、障害者就労施設等からの調達を推進するため、施設が提供する物品や役務の情報を提供することや、施設の受注機会増大に向け、例えば分離分割発注を行うなど、発注方法や履行期限、発注量を考慮すること等が示されています。
 都の各局は、この方針に沿って、施設が受注しやすいよう配慮しながら発注拡大に取り組んでいく必要があります。
 また、法は施設が連携、共同して物品等の供給の円滑化に努める、いわゆる共同受注にも言及しており、小規模な施設がグループで共同受注することで、受注拡大を目指すことも重要です。
 そこで、障害者就労施設等への発注を検討する庁内各局や、地域における施設の共同受注体制構築の取り組みをどのように支援していくのか伺います。
 実際の受注に当たっては、小規模な団体や共同受注に対応する契約方法の周知を進める必要があります。この取り組み状況について伺って、質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 小松久子議員の一般質問にお答えします。
 オリンピック・パラリンピックの開催を見据えた都政運営についてでありますが、生活ネットは、オリンピックに反対しているんですか、賛成しているんですか、一体どっちなんですか。注文をつけるばっかりじゃ、しようがないでしょう。招致のために、皆さんが努力してどれだけ汗を流してきたのか、そういうことの前提がなくて、注文をつけるだけだったらおかしいでしょう。
 それで、共産党だってちゃんとIOC総会の決定を尊重するっていったじゃないですか。(笑声、拍手)それが公の党、公党ですよ。生活ネットは、公党であれば、ちゃんとそういうことをまずいってから質問してくださいよ。
 まず、申し上げておきますが、安倍総理はIOC総会の場で、福島第一原発の汚染水対策について、日本国政府として責任を持って取り組むという本気の覚悟を示された。帰国後、早速、福島第一原発の現場にも赴かれた。四百七十億円の国費を新たに投入することになっているが、この問題は政府と東京電力の責任でしっかりと対応すべき問題であります。
 また、不要不急のインフラ整備の話がありましたが、大会開催、そしてその先においても、必要な事業とそうではない便乗組とは峻別するのは当然であります。必要なインフラを整備しながら、既存のインフラの効果も最大限発揮させて、東京のインフラを組み立て直すというのが都知事としての僕の考え方です。
 パラリンピック開催都市にふさわしく、電線の地中化を進めて電信柱を取り除き、駅のエレベーターを整備するなど、ユニバーサルデザインのまちに東京を改良していきます。来年度開通予定の中央環状品川線を初め、三環状道路を整備して、交通の流れを変えることで、首都高一号羽田線のような老朽化した高速道路を維持更新しやすい環境を整えていく。
 横田基地の軍民共用化も、増大する首都圏の航空需要に対応するために、今ある資源を最大限に使う、こういうことなんです。
 被災地の復興も引き続き徹底して支援していく。ご存じのように、人手不足の話も出されましたが、東京都は退職した東京都の職員や民間の技術者を任期つきで採用し、被災地に派遣しています。
 この定例会でも構造的福祉の話をしてきましたが、高齢化、人手不足、被災地支援、こうした課題を個々ではなく構造として捉えれば、そこには新しい答えがあります。団塊の世代の意欲ある高齢者、熟練の技術者が被災地の復興に貢献することは、その方々の新しい生きがいにもなるのではないかと思っています。
 これまで述べてきた考えも盛り込みながら、少子高齢化社会、これからの人口減少社会を見据えた新たな長期ビジョンを年内を目途に策定します。
 被災地を聖火ランナーが走る、宮城でサッカーの試合もやる、スポーツの力であしたへの希望をつくりながら、日本の空を、我々の心をさらに明るく日本晴れにしていきたい。生活者ネットワークの皆さんも、二〇二〇年大会に向けて、まあ頑張りましょう。(笑声)
 その他の質問については、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 消費者教育の取り組みについてでありますが、変化の激しい社会にあって、自立した生活を営む消費者として、子供たちが主体的に生きていくためには、発達段階に応じた実践的な教育を行うことが重要でございます。
 このため、各学校では学習指導要領に基づき、小中学校の社会科や技術・家庭科、高等学校の公民科や家庭科の授業で、身近な消費生活を題材に、経済活動の意義の理解や生活に必要な品物やサービスの適切な選択、購入及び活用についての学習活動などを行っております。
 今後とも、都教育委員会は、東京都消費者教育推進計画を踏まえ、区市町村教育委員会や関係機関と連携し、消費生活総合センターが作成した教材や外部講師を活用した、すぐれた実践事例の紹介などの取り組みを通して、学校における消費者教育を進めてまいります。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 治水対策についてでございますが、人口や都市機能が集積する東京で、水害から都民の生命と財産を守るためには、局所的集中豪雨などによる都市型水害対策と、利根川のような広域的な幹川の洪水対策とをあわせて進めることが重要でございます。
 このため、都では都市型水害対策への対応といたしまして、豪雨対策基本方針を策定し、中小河川や下水道の整備、雨水貯留施設の設置などの対策を総合的に進めております。
 一方、利根川水系などにおきまして、江東デルタなど、ゼロメートル地帯を含む東部低地帯の治水安全度を高めるためには、八ッ場ダムやスーパー堤防などの整備は極めて重要です。
 今後とも、これらの取り組みを積極的に進めることにより、東京の安全・安心を確保してまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、HPVワクチンについてですが、現在、国は、HPVワクチンの接種後に長時間続く痛みに関し、その病態やワクチン及び注射との関係の分析とともに、専門医療を行える拠点病院等で患者に適切な医療を提供するための研究を実施しているところであります。
 国は、この調査結果等を踏まえ、今後、接種を積極的に勧めることを再開するかどうか、改めて判断することとしております。
 都としては、国に対して、副反応に関する国民及び関係者への情報提供を行うとともに、痛みを訴える患者への専門医療の提供など、国民が安心して予防接種を受けられる体制を整備するよう提案要求してまいります。
 次に、指定小規模多機能型居宅介護事業所における障害児通所支援のサービス提供についてでありますが、今回の条例改正は国の省令改正に伴うものであり、地域において児童発達支援、放課後等デイサービスが提供されておらず、サービスの利用が困難な障害児に対して、一定の要件を満たした小規模多機能型居宅介護事業所がサービスをできるようにするものであります。
 現在の状況を見ますと、都内において児童発達支援は百五十二カ所、放課後等デイサービスは二百四十カ所の事業所でサービスが提供されており、また、障害児の受け入れを予定している小規模多機能型居宅介護事業所はございません。
 今後、条例改正の内容につきましては、区市町村へ情報提供を行うとともに、区市町村から事業実施に関する相談等があった場合には適切に対応してまいります。
 最後に、障害者就労施設等からの優先調達に向けた取り組みについてですが、都は、本年七月、障害者就労施設等からの物品等の調達方針を策定し、説明会を通じて庁内各局に、個々の施設が供給できる物品や役務の内容、受注実績等について情報提供を行うとともに、発注方法や発注量、履行期間なども考慮して、物品等の調達を積極的に進めるよう依頼を行っております。
 また、障害者就労施設等の受注拡大を図るため、地域における施設のネットワークを構築して、受注先開拓や共同受注に取り組む区市町村を包括補助により支援しております。 今後も、関係局や区市町村と連携しながら、こうした取り組みを一層進め、施設の受注機会の拡大を図ってまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 学校における消費者教育への支援についてでありますが、東京都消費生活総合センターでは、教育庁や私学団体と連携しながら、教員を対象として消費者教育の実践に役立つ講座の開催や実践事例に関する情報提供、教材及び指導用資料の作成、提供などを行っております。
 また、消費生活相談に携わった経験者などを研修により養成した上で、東京都消費者啓発員、コンシューマー・エイドとして学校に派遣して授業を行うなど、学校現場への支援を積極的に進めております。
 今後とも、より多くの学校において消費者教育が実施されるよう、これらの取り組みの周知を図ってまいります。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

〇財務局長(中井敬三君) 障害者優先調達に関する都の取り組み状況についてでありますが、本年七月に策定した東京都による障害者就労施設等からの物品等の調達方針では、地方自治法施行令に規定する随意契約を積極的に活用するとともに、都からの発注に当たっては、障害者就労施設等の受注能力に配慮しつつ、可能な限り分離分割発注に努めること、履行期間及び発注量についても考慮すること、性能、規格等、必要な事項について十分な説明に努めることなどを規定いたしました。
 この方針に基づいて、庁内各局が障害者就労施設等から円滑に物品等を調達することができるよう、契約関連の庁内会議を通じて周知を図るとともに、八月には各局の契約実務担当者を集めての説明会を実施し、法及び調達方針の周知並びに受注可能な団体に関する情報提供など、障害者就労施設等からの円滑な調達に向けて取り組んでいるところでございます。
 今後とも、こうした取り組みを通じ、施設の受注機会拡大に努めてまいります。

ページ先頭に戻る