平成二十五年東京都議会会議録第十三号

〇副議長(藤井一君) 二十八番田中朝子さん。
   〔二十八番田中朝子君登壇〕

〇二十八番(田中朝子君) ついに東京が二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの開催地に決定いたしました。長きにわたりオリンピック招致にかかわってこられた関係者の皆様、都知事初め、都庁の皆様、また、都議会の諸先輩議員の皆様のご努力には、都民、国民の一人として最大の敬意と心よりの感謝を申し上げます。
 前回、一九六四年の東京オリンピックがそうであったように、オリンピックは単なるスポーツの祭典にとどまらず、その国の都市の転換点ともなる巨大なイベントです。七年後の開催を東京、また日本の未来を考える契機にしなければなりません。
 オリンピック・パラリンピック開催時には、世界中から多くの人が集まり、東京や日本が今に増して国際都市となるチャンスとなりますが、これを一過性のものにしてはいけません。人が集まる都市は活気にあふれ、発展を続けることができます。そして、国際競争力の向上にもつながり、将来の東京が発展するための大きな力になるのです。
 オリンピック・パラリンピックを契機として、国際性を高め、世界中からたくさんの人が集まるような都市へと東京を変えていくべきだと考えますが、初めに、知事のご見解を伺います。
 次は、予算についてです。
 東京都は、競技場や施設の整備の総工費を四千五百五十四億円と試算しており、そのうち都の負担額は千五百三十八億円とのこと。都には四千億円のオリンピック準備基金があることから、今のところ資金には余裕があるように思われます。
 しかし、その施設整備の課題になりそうなのが、資材価格や人手不足によるコスト高です。実際、オリンピック施設建設にコスト高は早くも影響を及ぼしており、一般競争入札したオリンピックの競技会場になる武蔵野の森総合スポーツ施設新築工事は、この七月、いずれも参加者全てが辞退し、不調となっています。公告から開札までの四カ月間に資材価格や労務単価の著しい高騰があり、当初の予定価格では合わなくなってしまったことが不調の理由と所管からお聞きしました。
 また、昨年開催されたロンドン・オリンピックも、当初三十億ポンドだった予算が、たった一年ほどで九十三億ポンド、約二兆円強です、と三倍にまで膨れ上がっており、これらのことから考えると、東京オリンピック関連の予算が大幅にふえることも予想されます。
 今のところ四千億円の基金の使い道は施設整備だけでなく、インフラ整備にも使われる可能性があり、具体的に何に使われるかはまだ決まっていないとのことですが、余裕があるからこの際何でもつくってしまおうというわけにもいきません。
 国は、国立の施設建設にも都の協力をといっていると漏れ聞こえてきますが、それであるなら、知事の所信表明にもあるとおり、消費税増税も控え、東京へオリンピック招致が決まったこの際、まずは地域主権の考え方に著しく反している地方法人特別税を本来の都の法人事業税に戻すべきではないでしょうか。
 平成二十年に地方法人特別税に変わって五年半での都の減収額は八千億円にも上り、今後オリンピックまでの七年間では、この一・五倍近くの減収になるのは明らかです。
 備えあれば憂いなし。開催地である東京都が責任を持って二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックのさまざまな準備ができるようにするためにも、地方法人特別税を本来の都の法人事業税に戻すよう、今こそ強く国に要望すべきと考えますが、いかがでしょうか。ご見解を伺います。
 次に、国民の参加について伺います。
 今回の東京オリンピック招致に成功したのは、多くの都民、国民の皆様の大きな支持があったからにほかなりません。開催が近くなれば、ボランティアの皆さんが具体的な参加もできるようになるとは思いますが、開催までの七年の間、都民、国民の期待を途切れさせてはいけません。そのために、皆さんが今から七年後のオリンピックへの参加意識が持てる仕組みをつくってはいかがでしょうか。
 例えば、好きな競技が行われる施設を選び、その整備に都民、国民の皆さんが寄附できるようにするのはどうでしょう。もちろん寄附控除もできる仕組みをつくり、選んだ施設が完成した暁には、寄附者名をプレートに刻むようにすれば、都民や国民の皆さんの参加意識が高まり、将来大きな記念になるのではないでしょうか。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックは、都民、国民の参加型の大会にすることが成功への大きな鍵の一つになると考えます。二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックへの寄附に関してのお考えを伺います。
 次に、開催時期についてお伺いします。
 二〇二〇年東京オリンピックの開催日程は七月二十四日から八月九日、パラリンピックは八月二十五日から九月六日となっており、真夏の一番暑い時期の開催です。招致委員会がIOCに提出した立候補ファイルによると、この時期の天候は晴れることが多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候であるとありますが、ことしの東京の夏の猛暑やゲリラ豪雨の多さを考えると、決してこのとおりでないことは誰もが感じるところです。
 一九六四年大会のときは、開会式が十月十日、東京の平均気温は十六・一度。しかし、ことしの八月上旬は平均気温二十九度、最高気温は三十八度を記録しています。
 また、ことしは七月下旬から八月上旬に都内各地で七十回以上のゲリラ豪雨を観測していますが、オリンピック開催期間中に同じような天候になれば、新幹線や都内交通機関の乱れ、また、都市型水害等も大きく懸念されます。真夏の日本の開催は、出場するアスリートの皆さんにも過酷な大会になるだけでなく、二〇二〇年には都民の四人に一人が高齢者となる、応援に来られる観客のリスクも高まり、大いに心配するところです。
 気候のよい秋の開催だった一九六四年の東京オリンピックと比べると、猛暑、ゲリラ豪雨、落雷による停電対策など、真夏特有の気候の問題は非常に大きな課題となるのではないでしょうか。
 そこで伺います。二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催時期は、なぜこの真夏の時期に決められているのでしょうか。同じく真夏が暑い一九八八年開催のソウル・オリンピックでは、開催時期を九月中旬から十月上旬にまでずらしていますし、二〇〇〇年のシドニー・オリンピックも同じく九月から十月にかけての開催でした。必要ならば、まずはIOCに対し開催時期の交渉を粘り強くしていくことも必要と考えますが、ご所見を伺います。
 また、このように二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催時期を気候的に厳しい条件の真夏の期間とするのであれば、どのような対応を考えているのかをあわせて伺います。
 最後に、電力エネルギー政策について伺います。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催を踏まえ、都にはエネルギーの安定供給に向けた新たな取り組みが求められます。エネルギーの安定化は、ピーク時の使用を抑え、エネルギー使用の最適化を実現することが重要です。
 最近では、家庭やオフィスを初め、商業施設等でエネルギー管理システムを用いたスマート化の動きが進んでいますが、こうした施設が単体でスマート化を進めるだけでは効果は限定的です。ICTを活用し、これらを束ねて地域でエネルギーの最適化を進めれば、より高い効果のスマートシティーにつながります。エネルギー供給においても、地域内でのコージェネレーション設備や再生可能エネルギー等を利用すれば、地域内の雇用の拡大や活性化等にもつながります。
 現在、都の進めている取り組みは、将来のまちづくりとして期待されているスマートシティーの実現に向けたステップであると考えますが、今後どのようにスマート化に向けて取り組んでいくのか、ご見解を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 田中朝子議員の一般質問にお答えします。
 東京の国際性を高め、世界から人が集うための政策展開についてでありますが、東京は現在、世界をリードするフロントランナーとしての地位にありますが、その活力の源は、国内はもとより、世界中から集まる多様な人々が生み出すエネルギーにもあります。
 例えば、東京を訪れる外国人旅行者数は、二〇〇〇年の二百七十七万人が昨年は五百五十六万人へと倍増していますが、オリンピック・パラリンピックが開催され、世界の注目がより一層東京に集まるということで、二〇二〇年には一千五百万人を目指したいと思っております。
 この実現のために、東京と世界の接点となる羽田空港の機能強化や、横田基地の軍民共用化の実現に取り組むとともに、外国人も快適に滞在できる都市を目指し、案内サインや飲食店メニューの多言語対応など、あるいはコンビニの表示などを含めて、ユニバーサルデザインのまちづくりを進めていきます。
 こうしたハード、ソフト両面にわたる取り組みにより、今後ますます多くの人々に東京を訪れてもらい、世界における東京のプレゼンスを高めていきたいと思っております。
 なお、その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

〇財務局長(中井敬三君) 地方法人特別税、いわゆる法人事業税の暫定措置についてでありますが、そもそもこの措置は、税制の抜本的な改革が行われるまでの暫定的な措置として導入されたものであります。
 したがいまして、平成二十六年度税制改正において、当初の約束どおり、この暫定措置を確実に撤廃し、地方税として復元するよう、都議会の皆様のご協力をいただきながら、国に強く働きかけてまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) オリンピック・パラリンピック関係の三点のご質問にお答えいたします。
 まず、寄附についてでございます。
 二〇二〇年東京大会を成功に導くためには、都民、国民の皆様のご協力が必要不可欠でございます。その中でも寄附は、大会を財政的に支えるだけでなく、都民、国民の参加意識を高めることから、都民、国民の皆様からのご要望に沿う寄附の受け皿をつくっていくことが非常に重要であると考えております。
 一九九八年、長野オリンピックでは、大会組織委員会への寄附として、全国の企業、団体、個人などから寄附が集まり、その総額は四十八億円以上にもなったこともございます。
 都においては、緑の東京募金や都立公園における思い出ベンチなど、都民の参加意識を高めるさまざまな工夫を行ってきた実績がございます。
 そういった事例も参考にしながら、二〇二〇年東京大会においても、参加型の寄附のあり方について検討してまいります。
 次に、二〇二〇年大会の開催時期についてでございます。
 まず、オリンピックの開催時期については、IOCの規定により七月十五日から八月三十一日の間で設定することとされております。
 また、オリンピックとパラリンピックを合わせて六十日以内で実施することも定められております。東京はそれに基づき、オリンピックは七月二十四日から八月九日まで、それに続くパラリンピックは八月二十五日から九月六日までを開催期間といたしました。
 この時期は、学校等の夏季休暇に当たり、ボランティアや子どもたちなど多くの人々が参加しやすいことや、公共交通機関や道路が比較的混雑していないこと、また、ほかの大規模な国際競技大会と重複していないことなどから、開催期間の設定については適切なものと認識しております。
 最後に、気候への対応についてでございます。
 オリンピック・パラリンピックなど大規模なイベントを開催する際には、気候や天候に十分配慮して計画することが重要と認識してございます。
 日本では、二〇〇七年、大阪世界陸上など、夏の大規模イベントの経験を有してございまして、例えば暑さ対策としては、競技時間を朝や夕方に設定し、会場内に日陰を確保するなどの対応を検討しております。
 今後、庁内関係部局はもとより、会場施設の管理者や競技団体その他の関係者とも十分協議し、夏開催の課題とその対策について検討を進めてまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) エネルギー利用のスマート化に向けた取り組みについてでありますが、ピーク電力の平準化や節電等のためには、家庭や企業などにおいて、電力使用の見える化を図り、需給制御等の仕組みを普及することが重要であります。
 このため、都は、燃料電池や蓄電池等を活用したスマートハウスの導入を後押しする補助制度を既に開始しており、また、防災力の強化にも寄与するオフィスビル等への分散型電源の普及拡大も推進しております。
 さらに、オフィスビル集積地におけるエネルギーの有効活用の実現可能性に関する調査を一昨年度から継続して実施しております。
 今後とも、こうした施策の展開により、エネルギー利用の効率化、最適化を促し、スマートエネルギー都市の実現に向けて取り組んでまいります。

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