平成二十五年東京都議会会議録第十三号

〇副議長(藤井一君) 二十番河野ゆうき君。
   〔二十番河野ゆうき君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇二十番(河野ゆうき君) 初めに、都政運営について質問いたします。
 知事は、十年後、二十年後、あるいは三十年後の東京の風景をどのように想像しますでしょうか。
 例えば、下町の路地裏、路面電車の走るまち、住宅に囲まれた田畑、マンションに隣接する町工場、東京の風景はどのように変貌しているのでしょうか。
 我が町板橋区には、光学、印刷業等を初めとする優秀な技術を持つ企業群があり、また、ハッピーロード大山商店街のような人情味のあふれる日本を代表する商店街の活気があります。我々の先輩が残してくれたかけがえのないまちの風景であります。
 丸の内のオフィス街や湾岸エリアのようなつくられたまちだけではなく、都民の生活環境の中にこそ、景観が整い、自然を慈しむ風景が必要であると思います。また、東京の特筆すべきは、世界の大都市につきもののスラム街がなく、清潔で安全なところであります。
 こうした東京のすばらしさを守り、一段と発展させ、次世代につないでいかなければなりません。そのためには、東京の各地域が持つ特性を十分に考慮し、それを伸ばしながら、一方で光の当たらない地区をつくらないことが必要であります。
 今回、東京オリンピック・パラリンピック開催が決定をし、我々は、夢への切符を手に入れました。私のいう夢とは、単に競技大会としての成功だけでなく、この東京のまちづくりであり、国づくりであります。
 これからの七年間で、その夢をいかに実現するのか。この東京の将来の姿を決め、かけがえのないまちの風景を守り、発展させていくのは、知事と我々都議会とのこれからの議論にかかってくると思っております。
 知事には、中長期的な視点に立ち、それぞれの地域がその特性を生かして発展をなし遂げられるよう都政運営を進めていただきたいと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、災害に強いまちづくりについて伺います。
 都は、木密不燃化十年プロジェクトで、区が策定する整備プログラムに基づき、不燃化特区制度を実施するとしております。
 我が板橋区にも整備地域が二つあります。一方で、都が指定する整備地域以外にも、先日発表された地域危険度がランク四に入るような地区も多数抱えております。
 これまで区は、独自の取り組みとして、木密市街地の改良事業を進めてまいりました。かつて、老朽木造家屋がひしめき合う、都内でも有数の危険な木密地域であった大谷口上町地区を区の粘り強い努力によって、今では見違えるほどの町並みに変えてまいりました。
 都は、不燃化特区で平成三十二年までの間は、集中的に整備地域での事業を進めるとしておりますが、こうした区のよき例もあることから、将来には、区が独自で取り組むとされている地区への支援も充実させていくべきだと考えます。
 そのためにも、まず、十年プロジェクトを優先的に、かつ速やかに進めなければなりません。今般、不燃化特区の指定を受けた大谷口一丁目周辺地区の現在の取り組み状況を伺います。
 次に、保育行政について伺います。
 私は、在宅での子育てを応援、拡充していくことにより、あえて保育所に預けなくてもよいと思えるような環境を整えていくことこそが、待機児対策として、ただただ保育定員をふやしていく政策よりも現実的であり、持続可能な社会保障のあり方であると考えます。
 ゼロ歳児の保護者の八割以上、二歳児でも六割が在宅で子育てをしております。また、本年四月の待機児童の保護者のうち、六割はパートタイムや、これから就職をしたいと考えている方々です。
 例えば板橋区でゼロ歳児を区立、あるいは私立の認可園で預かると、月約四十二万円、十二カ月間預かると約五百万円もの運営経費がかかっております。仮に、生まれてから就学するまでの六年間、認可園で預かるとすると、一千三百三十八万円の運営経費が一人の子供のためにかかっております。
 一方で、在宅での育児をされる保護者に対しては、区もさまざまな取り組みを行っております。しかしながら、入園希望者は増加の一途であります。それは、家庭で子育てを選択される保護者に対しての支援策がまだまだ足りないということだと私は考えます。
 預ける選択をする家庭と在宅子育てを選択する家庭では、公的な支援に経費的にも雲泥の差があるということだと思います。
 保護者それぞれ望ましいと考える子育てのスタイルが実現されるよう、在宅で子育てをする家庭も対象とする多様な子育て支援サービスを拡充していく必要があると考えますが、都の所見を伺います。
 また、多様な子育て支援サービスの拡充にあわせ、それぞれの保護者が実情に応じたサービスを利用できるよう支援していく必要もあると考えます。
 いい方を変えると、さまざまな保育サービスがあるにもかかわらず、ニーズにマッチしていないような場合がある。例えば、定期利用保育でニーズが足りているのに、フルタイムの認可園に入園させたり、もしくは待機している保護者も多いのではないでしょうか。
 保護者がニーズに応じた子育て支援サービスを選択できるよう、保育コンシェルジュ事業のような利用者支援が必要と考えますが、所見を伺います。
 次に、鉄道の立体化とまちづくりについて伺います。
 鉄道の立体化は、安全なまちづくりの観点からも早急に進めなければならない事業であります。さきの東京都議会議員選挙中、安倍晋三総裁は、東武東上線ときわ台駅北口に私の応援演説に駆けつけていただきました。
 そのとき、ときわ台駅の北口には交番があり、その前には、誠の碑という記念碑があります。ホーム脇にある踏切に侵入した自殺志願者の女性を救出しようとして殉職された板橋警察、宮本巡査部長の勇気ある行動をたたえる記念碑であります。そして、安倍総理は、応援演説を終えるとそこに献花をされました。
 あの痛ましい事故からもう七年が経過しようとしておりますが、踏切はなくなりません。それどころか踏切での事故、自殺は後を絶ちません。それらによる電車の遅延も日常茶飯事であります。一刻も早く都内から踏切をゼロにすることを切望するところであります。
 板橋区は、大山駅から成増駅まで東上線の区内全線の立体化を区民の悲願と捉えております。私からも将来的に全線の立体化が行われるよう要望いたします。
 都の踏切対策基本方針では、そのうち大山駅周辺、ときわ台─上板橋付近の二区間が立体化検討対象区間に位置づけられておりますが、これらの二区間の立体化に向けた都の見解について伺います。
 また、東上線の立体化のまずは突破口として進めなければならないのが、大山駅周辺のまちづくりであります。この中で、最も大きな問題となるのが、都市計画道路補助二六号線の整備であります。
 道路の計画線がハッピーロード大山商店街を斜めに横切ります。その部分、いわゆるクロスポイントにおいて、いかに商業機能を維持できるのかが課題であると認識します。
 このような状況の中、本区間の整備に当たっては、地元との合意形成を図りながら検討を進めていく必要があると考えますが、所見を伺います。
 また、補助二六号線に接し、大山駅周辺まちづくりの中心には、板橋キャンパス、健康長寿医療センターがあります。ことし六月には、健康長寿医療センターが新施設に移転、また、板橋ナーシングホームの建設工事も既に始まっております。
 今後、健康長寿医療センター旧施設及び板橋ナーシングホームの跡地がどのように活用されるか、板橋区としても注視をしております。
 地元の町会や商店街、商工会等からも大山駅周辺のまちづくりにあわせた跡地活用についての要望を受けております。
 そこで伺います。板橋キャンパスの今後の活用検討の進め方についてお考えをお聞かせください。
 次に、産業振興についてお聞きします。
 東京には、すぐれた基盤技術などを持つ中小企業が多く存在しており、それらが地域的に、あるいは機能的に集積することは、濃密な情報交換や取引交渉を容易にするといったメリットをもたらし、新しい技術やビジネスの創出にとって重要な意義を有しております。
 グローバル化が進展する中、東京の製造業の競争力を高めるため、都は、中小企業の集積を維持強化するとともに、その集積を生かした連携やネットワークの構築といった取り組みを一層支援するべきであると考えますが、所見を伺います。
 競争力を高めるという点では、新興国の拡大する需要を取り込むという視点も重要であります。海外展開を図る企業のニーズや戦略に応じ、販路拡大のため、さらに踏み込んだ支援を行うべきと考えますが、所見を伺います。
 最後に、観光振興について伺います。
 二〇二〇年に向け、東京を訪れる観光者はさらに増加していくことが見込まれます。この機を捉え、都は一層、観光振興に力を入れ、都内のメジャーな観光スポットだけでなく、各地に点在する観光資源に観光客を取り込むことにより、地域経済の活性化を推進すべきと考えます。
 板橋区では、民間工場の見学ツアーを企画したり、板橋の産業遺跡などを見学する産業観光散策ツアーなどの取り組みも行っております。
 例えば、板橋区加賀にある独立行政法人理化学研究所板橋分所のれんがづくりの建物は、もともと板橋区の工業化の原点である板橋火薬製造所であり、戦後には、湯川秀樹氏、朝永振一郎氏などが、ここで研究をされたというような歴史的な建物であります。そこでは今もなお、世界最先端の研磨技術の研究活動が行われております。
 こうした地域に埋もれた観光資源となり得るものを発掘し、活用していくとともに、旅行者の興味、関心に合わせ、複数の地域にまたがる魅力を提供していくことも重要であると考えます。
 そこで、地域の資源を生かした観光振興に対する都のこれまでの取り組みと、今後の施策展開について見解を伺います。
 以上で自由民主党の質問を終了いたします。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 河野ゆうき議員の一般質問にお答えします。
 地域の特性を生かした都政運営についてでありますが、東京は、幅広い産業が集積する日本の首都であるとともに、歴史を感じさせる町並み、豊かな自然環境、四季折々の風物など、多彩な顔を有しており、これらが融合して、魅力あふれる都市を形成しております。
 都内には、山の手、下町、多摩、島しょなど、それぞれの地域に個性あふれる町並みや景観があり、こうした地域の資源を将来にわたって発展させ、次代に継承していくことは、都市としてのさらなる魅力向上に重要であります。
 東京都はこれまで、ものづくり産業が集積する地域に対しては、企業の競争力強化や立地環境の整備に向けた取り組みを行う一方、都市農地や里山などの貴重な緑については、潤いある景観の形成を初め、多面的な機能を生かしながら保全に努めるなど、地域の魅力を高めるさまざまな取り組みを展開してきました。
 東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機として、一九六四年のヘリテッジゾーンである神宮の森が生まれ変わり、ベイゾーン、臨海部にも新たなスポーツクラスターができ上がります。
 今後、地域の特性を生かした発展を促す施策を総合的に展開し、世界に輝く都市としてふさわしいまちづくりを進めてまいります。
 なお、その他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁します。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、不燃化特区である大谷口一丁目周辺地区での取り組み状況についてでございますが、同地区では、狭隘な道路の拡幅整備にあわせて沿道の不燃化を進めるとともに、地区内にある老朽家屋の建てかえを促進し、地域の防災性向上を図ることとしております。
 そのため区では、これらの取り組みについて説明会を重ね、個々の住民の建てかえ意欲が高まるよう、地元に対し積極的な働きかけを行っております。
 今後、さらにきめ細かく対応するため、老朽家屋への全戸訪問や、弁護士など専門家の派遣を行うことを予定しております。
 都といたしましては、建てかえを促す税制優遇に加えて、こうした区の取り組みに対する財政的な支援や、事業実施に必要な技術的助言を行うなど、木密地域の不燃化に積極的に取り組んでまいります。
 次に、東武東上線の大山駅付近及びときわ台駅から上板橋駅付近の立体化についてでございますが、お話のとおり、この二区間は、都が平成十六年に策定した踏切対策基本方針におきまして、鉄道立体化の検討対象区間に位置づけられております。
 道路と鉄道の立体化につきましては、地域におけるまちづくりと連動することから、地元区が主体となり、道路と鉄道のあり方や、まちづくりを検討することが必要でございます。
 都といたしましては、両区間の鉄道立体化につきましては、交差する都市計画道路の整備計画の具体化や、地元区によるまちづくりの取り組みの状況などを十分に踏まえまして、適切に対応してまいります。
 最後に、補助二六号線大山区間の整備についてでございますが、本区間は、道路の計画線が商店街を横断することから、都は地元区と連携し、商店街を中心とした地元のまちづくり勉強会に対しまして、支援などを実施してきております。
 昨年三月には、こうした商店街を含むまちづくり協議会が、大山駅周辺地区まちづくりマスタープランを区に提言し、現在、区は、まちづくり計画の策定に取り組んでおります。
 都は今後、特定整備路線である本区間の整備に当たり、関係権利者などへの説明会や個別の意向調査などを行ってまいります。
 こうした取り組みにより、地元の意見も丁寧に聞きながら、引き続き区と連携し、道路整備と一体となった沿道まちづくりの検討を進め、早期事業化を図ってまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、多様な子育て支援サービスの拡充についてですが、区市町村では、子育てひろばや子供家庭支援センターで育児相談に応じるほか、保育所等における一時預かり、保護者が病気や育児疲れなどの場合に子供を預かるショートステイ、家庭への育児支援ヘルパーの派遣など、在宅の子育て家庭を支援するさまざまな取り組みを行っております。
 また、利用者の働き方に応じて保育サービスを利用できるよう、認可保育所や認証保育所に加え、短時間でも利用できるパートタイム労働者のための定期利用保育など、多様な保育サービスの拡充を図っているところでございます。
 都は、今後とも、身近な地域での子育て支援サービスが一層充実するよう、区市町村の取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、子育て支援サービスの利用者支援についてですが、子育て支援サービスの利用を希望する保護者が、多様なサービスの中から実情に合ったメニューを選択し、円滑に利用できるよう、区市町村が身近な場所で相談や情報提供などの支援を行うことは重要でございます。
 こうした取り組みは、今年度から安心こども基金の対象となりましたが、国の要領では、実施場所が子育てひろばに限定されております。
 そのため都は、保護者の利便性を高める観点から、区市町村が子育てひろば以外の場所で実施する場合にも、包括補助により支援を行っているところでございます。
 今後とも、こうした利用者支援の取り組みが多くの区市町村で進むよう、積極的に支援してまいります。
 最後に、板橋キャンパスの再編整備についてですが、都は、平成二十年二月に、板橋キャンパス再編整備基本計画を策定し、これまで地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターによる新施設建設、板橋ナーシングホームの民営化に伴う介護保険施設の建設など、施設の整備を進めてまいりました。
 基本計画の中では、これら施設の建てかえ跡地について、高齢者の福祉施設等ゾーン及び緑化、広場ゾーンとして活用策を検討することとしております。
 キャンパスでは、今後、順次、移転後の施設の解体工事や、健康長寿医療センターの駐車場の整備などを進めることとしており、その後の跡地の活用につきましては、基本計画の考え方や地域のさまざまな福祉ニーズを踏まえながら、地元区の意見等も聞き、検討を進めてまいります。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業の集積に対する支援についてでありますが、東京では、すぐれた技術を有する中小製造業が、各地域で特色のある産業集積を形成するとともに、技術や情報を共有しながら、グループで製品開発や共同受注などに取り組むことが多く行われております。
 このように、中小企業の集積により形成されたネットワークを活用することは、企業単独では対応の難しい課題に取り組む上で効果的であります。
 そのため、都は、これまで区市町村と連携して工場の集積を図る取り組みや、中小企業のグループ化に対する支援を行ってまいりました。
 中小企業のネットワークを活性化し、東京の産業のさらなる発展を図るため、都は今後、産業集積の維持強化の着実な実施と、グループによる連携の強化について検討してまいります。
 次に、中小企業の海外展開に向けた支援についてでありますが、都はこれまで、すぐれた製品を持ちながら海外取引に関する知識やノウハウが不足している中小企業に対し、海外における販路を円滑に開拓することができるよう、実務的な助言や、取引先となる企業、商社の発掘などの支援を実施してまいりました。
 アジアなど新興国の経済成長が進む中、都内中小企業が取り組む海外展開の形態は、商品の輸出にとどまらず、現地における販売拠点の設立など多様化しており、各企業のニーズに応じた支援が求められております。
 今後、現地の状況を的確に踏まえたアドバイスや、効果の高い商談機会の確保など、海外における販売活動の強化を目指す企業に対する支援の充実について検討してまいります。
 最後に、地域の資源を生かした観光振興についてでありますが、観光を振興し、地域の活性化を進めるためには、地元のさまざまな主体が、みずから特色ある資源を発掘するとともに、その魅力を高めていくことが重要であります。
 現在、都は、地域のアイデアを生かし、特産品や旅行商品の開発を行う、地域資源発掘型実証プログラム事業や、ものづくりの現場である工場等を見学する、産業を生かした観光ルート整備への支援などにより、新たな観光資源の掘り起こしや活用を後押ししております。
 今後は、地域が連携して旅行者の誘致につなげる取り組みへの支援や、地域の自由な発想と創意工夫をより一層引き出すための方策を検討し、東京の多様な魅力を創出して、地域経済の活性化を図ってまいります。

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