平成二十五年東京都議会会議録第十三号

   午後六時二十分開議

〇副議長(藤井一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 三十一番中山ひろゆき君。
   〔三十一番中山ひろゆき君登壇〕

〇三十一番(中山ひろゆき君) 初めに、オリンピック・パラリンピック招致成功に伴う観光基盤整備についてお尋ねいたします。
 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京開催が決定した今、二〇二〇年に向かって未来を担う子供たちに夢を贈り、被災地復興に弾みをつけ、日本が持つ力とホスピタリティーを国際社会に強くアピールする絶好のチャンスが訪れました。
 同時に、日本の魅力によって、観光を産業へとさらに導く契機でもあります。それも、二〇一〇年から二〇一五年までの日本の人口動態を鑑みれば、団塊の世代が六十五歳を超えるがゆえに、十五歳から六十四歳までの生産年齢人口が日本全体で四百四十八万人減少すると推計されております。
 その結果、需給ギャップによるデフレ、消費拡大、需要創出が内政の最重要課題であります。対策として、生産年齢人口をふやし、消費拡大、需要創出を図るか、国内、国外の観光客に消費を促すかが根本の解決策であります。
 その中で、東京オリンピック・パラリンピックは、観光産業をリーディング産業へと導く起爆剤でもあるのです。
 今回の五輪招致成功の鍵は、日本の安心と安全が最後の決定力になりました。選手たちが安心して競技に傾注できる環境、来る人、見る人が安心・安全、そして、それを裏づける強い東京の財政力に説得力がありました。まさに、おもてなしがかなう開催地域なのです。
 そして、さらに、豊富な観光資源は、外来者を大いに楽しませることができます。IOCプレゼンテーションで、東京のシンボルとして映し出された東京スカイツリーが年間約五千万人という集客力が高まる中で、スカイツリーの位置する墨田区を初め、中央区、台東区、江東区など、隅田川を挟んだ下町観光ゾーンは、昨今、集客数が著しくふえております。
 それは、新たなる観光スポットに加え、神社仏閣を初め、食文化、和装小物、日本庭園など、観光客にとって非日常性が魅力的に感じられるからです。さらに舟運によって川を楽しまれる観光客も着実にふえており、隅田川の舟運を観光の目玉に位置づけようとする機運も東京都を中心に高まってきております。
 そして、その下町観光ゾーンが、オリンピック・パラリンピックの開催施設八五%が含まれる晴海選手村から八キロ圏内に位置しており、五輪開催時にはあふれんばかりの観光客や見物客、ボランティアの方々も訪れると予想されます。
 公共交通施設整備においては、ユニバーサルデザインに基づき、全ての利用者が円滑に移動、乗りかえできる基盤が何よりも求められ、人に優しい東京を世界にアピールできるチャンスでもあるのです。また、二〇二〇年以降も国際観光都市としてさらなる発展も視野に入れながら取り組む必要に迫られております。
 そこで、大きく二点についてお尋ねいたします。
 一つ目は、観光バス駐車場についてです。
 現状では、東京スカイツリー開設以来、バスの路上駐車が目立って多くなりました。東京スカイツリーでは、完全予約制、五十五台の駐車場を用意しておりますが、それだけでは到底足りません。
 さらに、スカイツリー周辺のみならず、全体的にバスの駐車場スペースが不足している中、駐車スペースの拡充は、区の行政にとって重要課題の一つです。
 区をまたいだ課題として、東京都が統括することが理想的な体制といえますが、一方で、民間の施設整備に伴う駐車スペースの確保や、区を先頭に公有地を活用した対策が現実的な対応ともいえます。
 そこで、都内の観光地等における観光バスの駐車場整備の基本的な考え方について伺います。
 二つ目は、駅のバリアフリー問題です。
 現状では、都営地下鉄浅草線浅草駅は、羽田空港とも成田空港とも通じる、国内、国外の観光客にとって重要な駅となっております。
 しかし、東京メトロ銀座線と相互の乗りかえが不便なことなど、必ずしも人に優しい駅とはいえない現状です。観光客が重たそうな荷物を持ち、コンコースの階段を利用する姿は、よく見られる光景です。
 都営交通は、他の事業者に先駆けてエレベーターのワンルート確保に取り組んできたことや、東京メトロもさらなるワンルート確保に向けて進めていることも聞き及んでおります。さらに人に優しい駅を実現するように期待します。
 そこで、誰もが利用しやすい都営地下鉄を目指すために、これまでの取り組みに加え、さらなるエレベーター整備が必要だと考えます。所見を伺います。
 次に、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震について伺います。
 現在、浅草の玄関口である雷門通り沿いの台東区浅草一丁目一番一号に創業明治十三年を誇る浅草神谷バーで耐震改修工事の真っただ中にあり、夜間や休日の少ない時間を最大限に活用して、いながら工事を進めております。
 これは、特定緊急輸送道路に指定されている江戸通りにも面し、沿道対象建築物に決定しています。もちろん耐震診断、補強設計、耐震改修と、それぞれ助成金を活用しております。
 神谷バーは、大正十年の建築物で、登録有形文化財にも指定されており、関東大地震、東京大空襲、東日本大震災をくぐり抜けて現在に至りますが、大もとの設計図面がなく、耐震診断、補強設計には長い時間を要しました。さらに、敷地要件や登録有形文化財であることなどでさまざま制約があり、設計事務所、施工業者の知恵を総結集した中で工事が進捗をしております。
 思い起こせばオーナーも、工事コストの面や営業スケジュールなどを鑑みると悩みは尽きず、一度は白紙の状況が長く続きました。しかしながら、お客様の身の安心・安全を守れるお店をどうしても築こうという一心で着工までたどり着きました。
 これはあくまでも耐震困難物件の一例として取り上げましたが、耐震改修工事に至るまでには幾つものハードルを越えなければなりません。
 今回の案件は、もとの図面がないことに加え、登録有形文化財であることや、飲食店であるがゆえに客席数の確保などさまざまな制約要件の中で進みますと、本来の耐震診断をもってそのまま補強設計に入っていくことが困難な場合もあります。つまり、補強設計をしながら、さらに詳細な耐震診断も進めなければなりません。当然コストや時間を要します。
 現在指定されている沿道でも、対象建築物には耐震診断困難物件は少なくありません。そこで、理想的には、耐震診断をさらに進めるため、特殊ケースの助成基準の見直しも含めて、さらなる制度設計の展開の必要性を感じます。
 現状、東京都は、条例に合わせて拡充した耐震診断助成を設けていますが、所有者の意識が高まりつつある中で、耐震診断完了が困難な物件が出てきており、耐震診断助成制度の見直しを図る必要があると考えます。
 そもそも、特定緊急輸送道路の沿道にあるビル所有者には、国に先駆けて制定した都条例により、耐震化状況の報告義務、耐震診断の実施義務、そして、耐震性能が不十分な場合には、耐震改修の実施が努力義務として課せられております。
 そこで、耐震診断が義務化された中で、助成制度を活用して診断を促すことは、耐震化を進めることの第一歩であります。しかし、設計や工事には、合意形成や所有者負担などの問題から容易に一歩を踏み出せないのが実情であります。
 今後、こうした個々の悩みに対応して耐震改修に結びつけていくための取り組みを考えていくべきだと考えますが、見解を伺います。
 また、平成二十七年までに特定沿道建築物一〇〇%の耐震化を達成するためには、区市町村の協力も必要不可欠であります。耐震改修に際しては、助成金が受けられるものの、区市町村の助成率の違いから、所有者負担の影響は否定できない事実であります。
 耐震改修に係る助成制度について、区市町村の今年度の対応はどのようになっているか伺います。
 以上で質問を終了させていただきます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) 中山ひろゆき議員の一般質問にお答えいたします。
 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、観光バスの駐車対策についてでございますが、観光バスの駐車場は、観光の目的である施設側で確保し、整備することが原則でございます。
 そのため、大規模拠点開発などでは、開発事業者が施設計画の段階で検討を行い、都や地元自治体、交通管理者などと調整し、必要に応じて観光バスの駐車場整備を行っております。
 また、観光バスの駐車場が不足している地区につきましては、それぞれの地域の実情を踏まえ、基本的には地元自治体が主体となって駐車対策を行う必要があります。
 都は、関係事業者や地元自治体などと連携を図りながら適切に対応してまいります。
 次に、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震改修に向けた取り組みについてでございますが、耐震診断は、既に特定沿道建築物の約七割で実施されるなど、着実に進捗しており、今後は耐震性の不足が判明した建築物につきまして、補強設計や耐震改修に速やかにつなげていくことが重要でございます。
 このため、区市町村や関係団体などとも連携し、診断が完了した建物所有者に対しまして、個別訪問や相談会などにより、改修に向けた働きかけを精力的に実施してまいります。
 また、相続、資金調達、権利の錯綜など個々の事情に応じた情報提供や助言を丁寧に行っていくために、今年度拡充いたしました耐震化アドバイザー派遣制度の活用を促してまいります。あわせて助成制度や低利融資制度などの支援策を講じ、耐震化を強力に推進してまいります。
 最後に、区市町村の耐震改修助成制度についてでございますが、区市町村が財政負担をしない場合、国と都を合わせて改修工事費の三分の一の助成を基本としておりますが、区市町村が財政負担をする場合には、国及び都と区市町村とを合わせて、最大で工事費の六分の五まで助成することとしております。
 このため、区市町村に対し、耐震改修助成への積極的な財政負担を要請してまいりました結果、今年度新たに八つの区市町村が助成制度を拡充することとなり、現在、全体の約八割で最大の助成率が適用されるに至っております。
 耐震診断の結果を着実に耐震改修に結びつけていくために、残った区市町村に対しましても、助成制度の拡充につきまして、引き続き強力に働きかけてまいります。
   〔交通局長中村靖君登壇〕

〇交通局長(中村靖君) 都営地下鉄におけるエレベーターの整備についてでございますが、交通局は、人に優しい公共交通機関を目指し、地下鉄の全ての駅においてエレベーターなどによるホームから地上までのワンルートの確保に取り組んでまいりました。
 これまでに全百六駅のうち、お話のありました浅草駅を含む百四駅で整備を完了し、一〇〇%整備に向け、現在残り二駅について工事を進めており、今年度に完了する予定でございます。
 今後は、駅のバリアフリー化をより一層進めるため、東京メトロなど他路線との乗りかえ駅等において、エレベーターを整備し、誰もが利用しやすい都営地下鉄を目指してまいります。

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