平成二十五年東京都議会会議録第十三号

〇議長(吉野利明君) 三十六番大松あきら君。
   〔三十六番大松あきら君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇三十六番(大松あきら君) 初めに、教育について質問します。
 東京オリンピック・パラリンピック招致が決定し、開催年の二〇二〇年を目指して、東京都は新しい都市づくりに邁進していくことになりました。
 そこで、どのような都市を目指すのか、また、オリンピック・パラリンピックが目指しているものは何か、オリンピック精神と共鳴する夢のある未来の都市ビジョンを示していかなければなりません。
 オリンピック憲章は、スポーツを人類の調和のとれた発達に役立てること、人間の尊厳保持に重きを置く平和な社会を推進することと宣言しています。オリンピック・パラリンピックは、まさに教育運動であり、平和運動であります。
 このオリンピック憲章の理念を踏まえ、新たな東京都の都市づくりでは、防災や環境など社会インフラの整備に加えて、若者の未来に資する教育や文化の分野においてもレガシーを残していくべきです。知事の所見を求めます。
 特に、東京はすぐれた教育力をアピールし、世界に開かれた教育国際先進都市を構築していくべきです。
 今、世界の国々は、さまざまな教育問題を抱え、その解決を目指す国際協力を模索しています。G8、主要八カ国は、二〇〇〇年に第一回教育大臣会合を開き、APEC、アジア太平洋経済協力は、二〇〇〇年から四年ごとに教育大臣会合を開催しています。
 一方、大臣レベルだけではなく、現場レベルの教育者の交流も求められています。日々、子供と向き合っている教員同士が、国を超えて切磋琢磨できる場があれば、お互いの教育力向上に役立ちます。
 そこで、約六万人の教員が教育現場の最前線を担っている都教育委員会が、東京オリンピック・パラリンピックを好機として、世界の教員が幅広く交流できる、世界教育者サミットを開催するべきです。すぐれた国際貢献になり、新たなレガシーとして後世に引き継がれていきます。
 その原型として期待されるのが、都教育委員会と指導主事の海外派遣研修の報告会です。平成二十二年度から実施されております。そして、平成二十四年度の報告会は、海外大使館やJICA職員を招き、シンポジウム形式で開催されました。都議会公明党の提案を受けて実施されたものと高く評価いたします。
 そこで、今後は、海外派遣研修報告会に海外から来日している外国人教員を参加させるなど、報告会の内容の一層の充実を図るべきです。都教育委員会の答弁を求めます。
 また、東京オリンピック・パラリンピックの公式行事として、世界各国の青少年が交流し、オリンピック精神や互いの文化を学ぶユースキャンプが開催されます。一九六四年の東京オリンピックのユースキャンプに参加した方にお話を伺いましたところ、すばらしい体験でした、多くの青年に参加させてあげたいと語られていました。こうしたプログラムは、日本の若者の育成において大きな意義があります。
 都は、このユースキャンプに光を当て、より多様な国々から、より多くの青少年が参加できるように支援し、その成功に力を注ぐべきです。所見を求めます。
 次に、環境対策について伺います。
 東京オリンピック・パラリンピックで残すべきもう一つのレガシーは、地球に優しい環境インフラです。今、温暖化対策として注目を集めているのが、電気自動車と燃料電池自動車です。電気や水素の生成から運搬過程も含めた二酸化炭素の総排出量が、ガソリン車の約三分の一から二分の一で、低炭素型社会を実現する象徴的な存在です。
 こうした次世代自動車を普及させるためには、環境性能や走行性能を広く情報発信し、社会全体で積極的に利用されるような状況をつくっていかなければなりません。
 このうち、電気自動車は、平成二十一年度に販売が開始され、着実に利用が広がっています。国は、今年度、電気ステーション設置の補助制度を拡充、都も整備計画を策定し、普及のスピードアップを図っています。
 都は、今後も、電気ステーション整備にさらに力を入れ、電気自動車の普及を加速させるべきです。都の所見を求めます。
 燃料電池自動車については、日米欧韓の大手自動車メーカーが二〇一五年の商品化を宣言、国内では自動車メーカー、ガス、石油会社が百カ所の水素ステーション整備を目指し、国は全国十九カ所、都内四カ所の整備を支援することを決定しています。
 燃料電池自動車の航続距離は、一回の水素注入で約五百キロメートル。約百キロメートルの電気自動車の五倍です。一方、燃料電池自動車は、車両の価格が高いなど一長一短があります。このため、電気自動車と燃料電池自動車は、用途によって使い分けられながら普及していくことが予測されます。
 また、都心部では、水素ステーションの用地確保が課題になり、その設置が地域的に偏らないようにしなければなりません。
 都は、こうした課題を解決しながら、燃料電池自動車の水素ステーションが、電気自動車の電気ステーションとあわせて普及するように取り組むべきです。所見を求めます。
 燃料電池自動車は、災害時、貴重な電力源になります。特に、バスは一台で四百五十五キロワットアワーの電源容量があり、体育館などの避難所で必要な日量百キロワットアワーの電力を悠々と賄えます。また、再生可能エネルギーによる水素生成が広がれば、燃料電池自動車は、より環境に優しい車になります。
 こうした多様な可能性の観点から、都は、燃料電池自動車の普及に取り組むべきです。所見を求めます。
 次に、高齢化対策について伺います。
 私の地元、北区は、東京二十三区で最も高齢化率が高い区になりました。一方、区民の平均寿命は男女とも全国平均を下回り、健康寿命をどう延ばしていくのかが課題になっています。
 そこで、北区医師会が、メタボ改善、禁煙、野菜摂取、減塩、散歩を呼びかけるポスターを作成し、北区と共催して健康寿命を目指す運動を始めています。病気になってから治療するより、病気になる前に予防に力を入れた方が、住民の皆様方の生活の質は向上し、医療費の負担軽減にもつながります。
 都は、こうした区市町村の取り組みを支援するとともに、さらに広く東京都全体に広報活動を展開していくべきです。所見を求めます。
 高齢化が急速に進む中、地域から孤立し、医療や介護が必要であるにもかかわらず、そのサービスを受けられていない高齢者がふえています。
 そこで、北区は、医師会の提案を受け、地域包括支援センターを支援するサポート医制度を導入し、医療、介護が連携した在宅療養サービスを展開しています。
 先日、その取り組みを視察しました。包括支援センターの職員は、サポート医から適時、医学的なアドバイスを受け、サポート医は高齢者宅の家庭訪問もします。認知症など対応が難しい場合は、医師、看護師、包括支援センターの職員らによる検討会を開きます。介護認定や成年後見に必要な書類もスムーズに作成され、隅々までサービスが届くように取り組まれていました。
 サポート医は、北区医師会の意欲的な取り組みで全国に先駆けて実現し、区内四カ所の地域包括支援センターに配置されています。
 現在、都は、包括補助事業として、こうした区市町村の取り組みを支援していますが、今後も区市町村が継続して取り組めるよう支援し、都内にも広く普及させていくべきです。地域包括ケアシステムの実現に向けて、今後の都における在宅療養推進の取り組みについて所見を求めます。
 次に、災害対策について伺います。
 阪神大震災では多くの橋梁が損壊し、それを教訓に、都は現在、都内の主要な幹線道路にかかる橋梁の耐震強化を進めています。
 その中で、北区は、南北に崖地が延び、その麓をJR京浜東北線などが走り、地形的にまちは東西に分断されています。そして、東西のまちをつないでいるのが、各所にかかる橋梁です。それらが地震で損壊すれば、避難、緊急輸送ができず、致命的な被害につながります。
 北区は木造密集地域も多く、地震対策は最大の課題です。首都直下型地震に備え、JR田端駅前の新田端大橋、岸町の南大橋など、都道における橋梁の耐震化を急ぐべきです。都の所見を求めます。
 JR東十条駅南口の十条跨線橋は、北区がかけかえる計画ですが、都としても支援するよう求めておきます。
 その上で、北区が実施する東十条駅南口の駅前整備においては、バリアフリーの観点から、駅改札内にエレベーターの設置が必要です。エレベーター設置を目指す北区に対する都の取り組みについて所見を求めます。
 最後に、下水道整備について伺います。
 昨日の我が党の代表質問で、安全・安心の先進都市東京を目指し、老朽化が進む下水道幹線の再構築について確認しました。大量の下水を集める下水道幹線が老朽化し、地震などにより損壊した場合、その影響ははかり知れません。このうち、北区を含む都心部の下水道管は早期に整備されたものが多く、老朽化が進んでいます。
 今後、高度成長期に整備した膨大な量の下水道幹線の老朽化が見込まれる中、北区においても下水道幹線の再構築のスピードアップを図るべきです。所見を求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 大松あきら議員の一般質問にお答えします。
 オリンピック・パラリンピックについてでありますが、ブエノスアイレスのプレゼンテーションでは、気仙沼出身のパラリンピアン、佐藤真海選手が、みずからの経験を踏まえ、こう語りました。スポーツは人生で大切な価値を教えてくれた。これは、二〇二〇年東京大会が世界に広めようと決意している価値である。
 彼女は、骨肉腫で右足を失った体験、家族を襲った震災の経験から、スポーツの真の力、新たな夢と笑顔を育む力、希望をもたらす力、人々を結びつける力を目の当たりにしたわけです。
 スポーツには人々の人生を大きく変える力があります。オリンピズムが提唱する卓越、友情、尊敬という理念は、スポーツの中で現実に体験することで、言葉以上の大きな力を有するものと思います。
 このスポーツの力というのは、チームワークやフェアプレーの精神、そして目標を持つという、そういうことで汗を流したり涙を流したりする、そういうことも含めてスポーツの力があるんだというふうに思っておりますが、そういうスポーツの力を体験した若者を──日本人の若者が世界を変えていくんだと、そういうふうに思いたいですね。
 世界中の若者が、まさにスポーツから文化、教育など、あらゆる分野で友情や尊敬を深めて切磋琢磨していくわけです。こうした体験を持つことによって、大会後も長く続くレガシー、若者の豊かな心、果敢な挑戦、国際感覚を養い、未来の希望を担う、そういう精神が大きなレガシーだと思います。
 なお、その他の質問については、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁します。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 教員等の海外派遣研修の報告会についてであります。
 この報告会は、諸外国の教育施策や学校運営などについての調査研究、英語の先進的な指導法など、海外に派遣した指導主事及び教員の研修成果を広く普及することで、東京都の教育の充実を図ることを目的としております。
 これからのグローバル社会に生きる生徒に必要な能力などについて、教員が幅広く考えを深めるためには、研修成果の還元とともに、海外の教育事情や国際交流の取り組みに関して意見交換を行うことは有効であります。こうしたことから、今年度は、新たに派遣研修先であるオーストラリア大使館やJICAの職員を招いたシンポジウムを実施いたしました。
 今後は、東京オリンピック・パラリンピック開催を踏まえ、来日している外国人教員をシンポジストに加えるなど、本報告会を一層充実させ、その成果を全公立学校に周知してまいります。
   〔東京都技監藤井寛行君登壇〕

〇東京都技監(藤井寛行君) JR東十条駅南口改札内のエレベーター設置についてでございますが、北区は、東十条駅周辺交通バリアフリー基本構想を策定し、バリアフリー化への取り組みとして、鉄道事業者とともに、二〇〇四年に北口改札内にエレベーターを設置しました。
 現在、北区では、二〇一〇年に策定した都市計画マスタープランに基づき、南口の駅前広場計画などを検討しております。その中で、南口改札内のバリアフリー施設の設置につきましても、今後、鉄道事業者と協議していくこととしております。
 都といたしましては、こうした状況を踏まえ、関係局と連携し、適切に支援などを行ってまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) ユースキャンプについてでございます。
 ユースキャンプは、日本の若者と世界中の若者が集い、オリンピズムへの理解を深めるとともに、多様な文化や習慣に触れ、相互理解を促進する目的で開催されます。東京の立候補ファイルでも、大会の三年前から実施することとしております。オリンピック・パラリンピック大会は、日本の若者と世界の若者との交流を促進するまたとない機会でございまして、若者が世界に目を向ける大きな契機ともなります。
 ユースキャンプを初め、若者を対象としたプログラムにつきましては、都としても、今後設立予定の大会組織委員会を初め、関係者と具体的内容を検討し、積極的に支援してまいります。
   〔環境局長長谷川明君登壇〕

〇環境局長(長谷川明君) 次世代自動車に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、電気自動車の普及に向けた取り組みについてでございますが、都はこれまで、中小事業者の電気自動車購入に対する助成を行うとともに、急速充電器についても、三カ年で集中的な補助を行うことで普及を図ってきており、本年二月末時点で、都内に百十七カ所が設置されております。
 国は、新たに自治体等の整備計画に基づく整備の費用の三分の二を補助する約一千億円の事業を開始しており、また、自動車メーカーも上乗せ支援を検討しております。
 都は、この補助事業を踏まえた整備計画を六月に策定し、これまでに七十三カ所の新たな充電器が都内に設置される予定となっております。
 今後とも、設置要望の状況に応じて計画の改定に積極的に対応するなど、電気自動車の導入しやすい環境づくりに努め、その普及を図ってまいります。
 次に、水素ステーションの整備についてでございますが、平成二十七年の本格販売が見込まれております燃料電池自動車は、水以外に排出ガスは一切発生しないため、電気自動車と同様、低炭素型社会の形成に資するものであり、ともに普及を図るべきものと考えております。
 燃料電池自動車の燃料供給インフラでございます水素ステーションは、電気自動車の充電設備と比較して、大規模な設備と広い敷地が必要であり、都内で整備する場合、必要な敷地の確保が難しいなどの課題がございます。
 そのため、都は、今年度から都内等で先行整備される水素ステーションを対象に、整備事業者と共同調査を実施することとしておりまして、整備を進めるに当たっての課題の整理を行い、水素ステーションの普及策の検討を進めてまいります。
 最後に、燃料電池自動車の普及についてでございますが、燃料電池自動車は、大気環境対策、地球温暖化対策に貢献すると同時に、燃料となる水素が多種多様なエネルギー源から製造できるメリットがございます。
 さらに、災害時における避難所等での分散型電源装置としての活用のほか、燃料電池自動車と住宅の間で電気を融通し合うビークル・ツー・ホームシステムによる電力のピークカットなど、家庭のエネルギーマネジメント実現の手段としても期待されております。
 都は、こうした燃料電池自動車の多様な可能性を踏まえ、普及に向けて、補助制度の拡充などを国に提案するほか、事業者とも共同し、燃料電池自動車の環境性能を広くアピールするなどの取り組みを実施してまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、健康寿命の延伸についてですが、都民の健康づくりを進め、健康寿命の延伸を図るためには、ライフステージを通じた都民の主体的な取り組みを社会全体で支援することが重要でございます。
 このため、都は、区市町村、学校等教育機関、保健医療関係団体等が連携して効果的な取り組みを進められるよう、先進的な事例の収集、紹介などを行っております。
 また、今年度からは、住民の生活習慣改善に向けた効果的な促進策を包括補助事業における先駆的な取り組みと位置づけ、区市町村への支援を一層強化しているところでございます。
 今後、階段の利用など、日常生活の中で負担感なく行える行動などを盛り込んだ新たなパンフレットも活用しながら、より多くの都民が健康づくりの一歩を踏み出せるよう、広く都民への普及啓発に取り組んでまいります。
 次に、在宅療養の推進についてですが、医療や福祉、住まいなど、多様なサービスを日常生活の中で切れ目なく提供する地域包括ケアシステムの実現のためには、医療と介護の連携を強化し、在宅療養を推進することが重要でございます。
 そのため、都は、ことし改定した東京都保健医療計画において、在宅療養の推進を重点課題に位置づけ、医療、介護の関係者等による協議会や、病院から在宅への円滑な移行を調整するための在宅療養支援窓口の設置など、地域の特性に応じた取り組みを行う区市町村を支援しております。
 今後、お話の北区医師会のような先進的な事例を広く紹介し、普及を図りながら、在宅療養推進に向けてさまざまな取り組みを行う区市町村を、包括補助等により、一層支援してまいります。
   〔建設局長横溝良一君登壇〕

〇建設局長(横溝良一君) 都道の橋梁耐震化についてでございますが、震災時に都民の安全な避難や緊急輸送を確保し、救命、復旧活動を迅速に行うためには、橋梁の耐震性向上が重要でございます。
 都では、阪神・淡路大震災や東日本大震災の状況を踏まえ、緊急輸送道路等の橋梁四百一橋を対象として、橋脚の補強や落橋防止装置の設置など必要な耐震化に重点的に取り組んでおり、平成二十四年度末までに三百六橋の対策を完了いたしました。新田端大橋、南大橋を含めた残る九十五橋の耐震化につきましても、平成二十七年度末までに全て完了させる予定でございます。
 引き続き、橋梁の耐震化を推進し、安全の確保を図り、高度防災都市の実現に向けて全力で取り組んでまいります。
   〔下水道局長松浦將行君登壇〕

〇下水道局長(松浦將行君) 下水道幹線の再構築についてでございますが、下水道幹線の再構築は、老朽化対策とあわせ、耐震性の向上などを効率的に行うことを基本に取り組んでおります。
 北区内では、昭和初期に整備され、老朽化が特に著しい十条幹線や王子西幹線において、想定される最大級の地震動にも対応できる再構築工事を進めてきています。十条幹線は今年度完了予定であり、王子西幹線については、他の工事との調整を図りながら早期の完成を目指してまいります。
 再構築対象幹線については、区部全域で四十七幹線から百十五幹線に拡大し、北区内においては新たに四幹線を対象に加えました。このうち、谷田川幹線は既に着手しており、石神井川下幹線は今年度着手予定であります。
 今後とも、事業の一層のスピードアップを図り、安全で安心な都民生活の実現に取り組んでまいります。

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