平成二十五年東京都議会会議録第十三号

   午後三時五十一分開議

〇議長(吉野利明君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十四番大場やすのぶ君。
   〔四十四番大場やすのぶ君登壇〕

〇四十四番(大場やすのぶ君) 初めに、高度防災都市の実現について伺います。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定いたしました。今後、我が国のみならず海外からも多くの方々が訪れ、東京は世界的にも最も注目される都市となることは明らかです。
 しかし、東京、そして我が国は宿命的な弱点を負っています。それが、大規模地震発生のおそれと、発生した場合の被害と混乱であります。
 東日本大震災から二年半が経過しましたが、この間、都は、我が党の提言も踏まえながら、昨年度、地域防災計画の見直しなどに取り組み、ことし一月に作成した「二〇二〇年の東京」へのアクションプログラム二〇一三においても、目標1に高度防災都市の実現を掲げ、防災対策の推進に取り組んでいます。
 また、私が住む世田谷区においても、木造住宅密集地域がまだまだ広く存在しています。特定整備路線の整備など、昨今もその改善に向けて取り組みが進んでいることは承知していますが、こうした地域は戦後から数十年間続いており、一朝一夕に解消されるものではありません。
 木造密集地域の改善だけでなく、津波、高潮対策や豪雨対策など、防災の取り組みはいずれも短期間で完成させることは困難なものでありますが、オリンピック・パラリンピック開催に伴い、我が国だけでなく世界からお客様を招くに当たっては、防災の備えに最大限取り組み、安心して東京で過ごせる環境を提供することが何よりのおもてなしの精神ではないでしょうか。
 知事は今後、二〇二三年を見据えた長期ビジョンを策定するとしていますが、オリンピック・パラリンピックを視野に、高度防災都市の実現に向けた知事の決意をお伺いいたします。
 次に、心の東京革命について伺います。
 次代を担う子供たちに、親と大人が責任を持って正義感や倫理観を伝えていくという心の東京革命の理念は、日本人として普遍的に大切なものであり、我が党も当初から賛同し、ともに進めてまいりました。
 そして、推進母体である心の東京革命推進協議会には三百団体が加盟し、個人会員の登録は五千人を超えるほか、他県や都内区市町村でも同様の取り組みが定着するなど、着実な広がりを見せています。
 一方で、本来、子供の育ちに責任を負うべき親の育児放棄や虐待は後を絶たず、子供においても、いじめや非行はもとより、最近ではインターネット上でみずからの迷惑行為を興味本位で公開するなど、心の東京革命の理念に反する事件が頻発しています。
 提唱から十年以上が経過し、子供を取り巻く社会情勢が大きく変化した今、もう一度、心の東京革命の理念の重要性を認識し、これを確実に浸透させる必要があると考えますが、所見を伺います。
 オリンピック・パラリンピックに関連して、スポーツ振興について伺います。
 東京が開催都市に決定した今月七日から八日未明にかけて、私も地元世田谷の駒沢オリンピック公園総合運動場を訪れ、開催都市決定を待つ都民の皆様の熱気、熱い思いを肌で感じました。
 この日、駒沢公園ではスポーツイベントが開催され、深夜には陸上競技場でリレー形式のファンランイベントが行われていました。私の仲間も含め大勢の皆さんが、東京オリンピックの決定を待ちながら、深夜のランニングを心から楽しんでいる様子でした。私も日ごろから駒沢公園でジョギングに励んでおり、スポーツを通じた健康づくり、仲間づくりのすばらしさを感じています。
 世田谷区では、スポーツ基本法の趣旨を踏まえ、地域スポーツの推進などについて、区の取り組みなどを新たに盛り込んだ世田谷区スポーツ振興計画第三期年次計画を昨年八月に策定しました。この計画では、基本理念を、区民が生涯を通じ身近な地域で、いつでも、どこでも、誰でも、いつまでも気軽にスポーツ・レクリエーションに親しみ、楽しむことのできる生涯スポーツ社会の実現と定め、スポーツ振興施策の展開、場の整備と提供、担い手の育成を計画の三つの柱に据えて、さまざまな施策を展開しています。
 都においても、我が党の提案を受け、ことし三月、スポーツ推進計画を策定し、スポーツの力を全ての人にを基本理念として、二〇二〇年までに国の目標を上回る世界最高水準のスポーツ実施率七〇%を目指すとしています。
 これを実現するためには、二〇二〇年に向けて、これからもより多くの都民がスポーツに取り組むきっかけを提供していくことが必要であると考えますが、都の所見を伺います。
 次に、シニアスポーツの普及について伺います。
 世界でも例を見ないスピードで高齢化が進む我が国では、医療費や介護費用の増大、高齢者の社会的な孤立などが大きな社会問題となりつつあります。
 スポーツには、健康の維持増進という効果に加え、上達することの喜び、チームメートと力を合わせて勝利したときの達成感など、生きがいづくりにもふさわしい要素を多く持ち合わせており、高齢者に対するスポーツ振興の果たす役割はますます大きくなっています。
 都は、我が党の提案を受け、平成二十四年度からシニアスポーツ振興事業を開始し、地域に根差したスポーツ活動を支援しています。
 今後は、これまで以上に高齢者の生活環境や健康状態に応じてスポーツが楽しめるよう、シニアスポーツの普及に努めていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、障害者の雇用対策について伺います。
 障害者の方々が地域において自立して生き生きと暮らせるようにするためには、障害者雇用は大変重要な課題です。本年四月から、民間企業における障害者の法定雇用率が一・八%から二・〇%へと引き上げられ、障害者を雇用しなければならない企業の規模は、従業員五十六人以上から五十人以上へと対象が広がりました。
 大企業での障害者の雇用を促進することも必要ですが、地域に住んでいる障害者の方々が働く場合に、通勤のことなどを考えると、やはり地元の地域にある中小企業で雇用できるよう、受け入れ体制を整えていくことが必要です。
 中小企業で障害者雇用を進めていくためには、個々の企業ニーズに応じて、障害者を雇用する前提となる理解促進から受け入れ体制づくり、また、雇用後の職場定着に関する支援など、それぞれの場面に対応したきめ細かな支援が必要と考えます。
 本年第一回定例会において、私からの質問に対して、個々の企業の事情に応じ、一貫して支援するモデル事業を行っているとの答弁がありました。
 モデル事業終了後でも中小企業に対する企業現場での一貫した支援を実施していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、本年六月には障害者雇用促進法が改正され、精神障害者を法定雇用率の算定基準に加えることとなりました。実際、ここ数年、精神障害者の方々の雇用者数や就職者数が大きく伸びるなど、精神障害者の雇用が注目されています。
 しかし、現場の企業からは、予想以上に仕事をしてくれて大変助かっているという声がある一方で、体調に波があることから、雇用していく上で課題を抱えている方も少なくないという声も寄せられています。
 このような中で、とりわけ精神障害者の雇用を促進するための支援を強化していくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、消費者被害の防止について伺います。
 平成二十四年度に都内の消費生活相談窓口で受け付けた相談件数は、約十一万八千件でした。高齢者の相談はその約三割に当たる三万件を超えており、ここ数年、その割合が連続して増加するなど、深刻化しています。特に詐欺的な商法による被害が急増しており、最近、マスコミでも劇場型詐欺と呼ばれる新手の手口について注意を呼びかけているのを目にします。
 例えば、高齢者宅に見知らぬ事業者から投資商品として有料老人ホームの利用権購入の勧誘があり、利用権を買えば、後日上乗せした額で買い取ると持ちかけられるそうです。さらに、他の複数の人物から投資の確実性をにおわせる電話があり、購入を勧められます。しかし、この有料老人ホームは実在せず、一口二十万円などと説明される利用権は架空の権利であり、被害者が代金を支払うと、投資を勧誘した者と販売した会社とも連絡がつかなくなるという手口です。
 この利用権の売買は、規制する法律のない、法のすき間をついたもので、こうした悪質、巧妙化する手口により、老後の資金を根こそぎ奪われてしまう高齢者もいます。
 我が国最大の消費地であり、このような最新の手口が最初にあらわれるといわれている東京において、悪質事業者を市場から速やかに排除することは、消費者被害の拡大を防ぐとともに、健全な市場の形成という観点から、法令を遵守する多くの事業者にとって望ましいことです。
 昨年、消費者安全法が改正され、法のすき間を狙う悪質事業者に対し、国による行政処分が可能となりました。今後もふえることが予想される、法のすき間をつく悪質事業者に対し、都においても取り締まりを強化していくべきと考えますが、見解を伺います。
 一方、一層普及が進むインターネットを悪用した事例もふえています。手をかえ品をかえ消費者を狙う悪質事業者の手口をわかりやすく知らせるなど、消費者教育に取り組むことが必要です。
 特に、若者の間ではSNSを使って友人とコミュニケーションをとることが大変多くなっていますが、このSNSを悪用した手口による被害がふえています。SNSで知り合った人から言葉巧みに勧誘され、消費者金融で借金までして、高額のエステ契約や、就職に役立つとうたった講座の受講契約を結ばされてしまうケースもあると聞きます。
 若者は被害者となるだけでなく、例えば、携帯電話を契約して渡してくれればアルバイト代を払うといわれ、そのとおりにしたら振り込め詐欺に使われたなど、結果として加害者となってしまうような場合も見受けられます。
 全国でも若者が多く集まる東京都として、若者に対する消費者教育を強化していく必要があると考えますが、今後どのように取り組みを進めるのか、見解をお伺いして、質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 大場やすのぶ議員の一般質問にお答えします。
 高度防災都市の実現についてでありますが、長期ビジョンの策定を表明しましたが、知事としては、首都東京を、安心、希望、成長を実感できる世界一の都市にしていきたいと考えております。中でも都民の安全・安心を守ることは最も大事なことであります。
 そのためにも、この東京を高度防災都市へと進化させなければいけません。そして、首都の防災力向上は、自助、共助、公助の力を結集することがその要諦であります。
 昨年、全国初の帰宅困難者対策条例を制定し、全ての企業に従業員の三日間の待機を努力義務化しました。さらに、観光や買い物で東京を訪れる人々のために、備蓄の一割の上乗せを求めるなど、自助、共助の取り組みを加速させております。この取り組みは、助け合うという思想の確立でもあります。
 公助を担う行政の責務としては、東京が抱える課題の克服にも全力を尽くしていくつもりで、木造住宅密集地域における不燃化特区を、これまでの十二から五十地区へと拡大するとともに、臨海部や区部東部ゼロメートル地帯における水門、堤防などの耐震、耐水対策を推進していきます。
 また、救援部隊や避難者のために、都立公園における自立電源設置を検討するなど、発災時の対応にも万全を期していきます。
 こうした取り組みをこれからも推し進め、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックで、高度防災都市に進化した東京の姿を世界にアピールしていきたいと思っております。
 なお、その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔青少年・治安対策本部長河合潔君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(河合潔君) 心の東京革命の推進についてお答えいたします。
 心の東京革命は、親と大人が責任を持って子供の正義感や倫理観、思いやりの心を育み、人が生きていく上での当然の心得を伝えていく取り組みであります。
 都はこれまで、あいさつ運動を初め、さまざまな普及啓発活動に努めてまいりましたが、ご指摘のような理念に沿わない行為も残念ながら見受けられるところであります。
 そこで、青少年をめぐる社会情勢の変化に対応し、一層、心の東京革命の理念が浸透するよう、家庭、学校、地域での取り組み指針となる行動プランの見直しを進めてまいります。
 また、このたびの東京オリンピック・パラリンピック開催決定をも踏まえまして、フェアプレー精神など、スポーツの持つ力を普及啓発事業に取り入れて、活性化を図ってまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、スポーツに取り組むきっかけづくりについてでございます。
 都はこれまでも、ご指摘の駒沢公園でのスポーツ博覧会やTOKYOウオークなど、参加型スポーツイベントを数多く開催してまいりました。
 今年度のスポーツ博覧会では、二日間で十二万人が参加して、野球やテニス、車椅子バスケを初めとしたさまざまな種目を体験するなど、都民がスポーツと触れ合うきっかけを提供いたしました。
 これらの取り組みにより、都民のスポーツ実施率は、平成十九年の三九・二%から、昨年は五三・九%へと、五年間で一五ポイントも上昇いたしました。
 また、スポーツ祭東京二〇一三の国民体育大会では、トップアスリートが競い合う正式競技に先立ち、デモンストレーションとしてのスポーツ行事が五十七行事、七十八会場で行われておりまして、誰もがスポーツを楽しめる機会の拡大を図っているところでございます。
 今後も、都民がスポーツに参画できる機会を提供するとともに、二〇二〇年には世界最高水準のスポーツ実施率七〇%を達成し、スポーツ都市東京を実現してまいります。
 次に、シニアスポーツの普及についてでございます。
 既に約五人に一人が高齢者となり、超高齢社会に突入している東京において、スポーツを通じた体力づくりや生きがいづくりは重要な意義を持ちます。
 このため、都は、地域の高齢者スポーツ教室などを支援するシニアスポーツ振興事業のほか、シニア健康スポーツフェスティバルの開催や、ねんりんピックへの東京都選手団の派遣など、高齢者のスポーツ実施率の向上を目指し、さまざまな事業を展開しているところでございます。
 都はこのような取り組みを、ホームページ、スポーツTOKYOインフォメーションを通じて情報発信してまいります。
 さらに、地域におけるシニアスポーツのきめ細かな情報提供についても、地区体育協会や区市町村に働きかけるなど、より多くの高齢者に参加していただけるよう、シニアスポーツの普及に努めてまいります。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、障害者雇用に向けた中小企業支援についてでありますが、中小企業における障害者の雇用を促進する上では、企業の理解促進と職場の実情に応じた支援が必要であります。
 都では、中小企業の経営者や人事担当者に対して、参考となる事例の紹介など、普及啓発のためのセミナーを開催しております。
 また、モデル事業として、障害者雇用の経験のない中小企業等を対象に、個々の企業ニーズに合わせて支援するオーダーメード型障害者雇用サポート事業を実施し、利用企業からは、安心して雇用を進めることができたなど、高い評価を得ております。
 今後、これらの施策で蓄積したノウハウを生かし、障害者を雇用しようとする中小企業に対して、採用前の準備段階から採用後の定着サポートまで一貫した現場での支援の充実を検討してまいります。
 次に、精神障害者の雇用促進のための支援についてでありますが、精神障害者の就職件数は大きく伸びているものの、障害に対する企業の理解はいまだ十分ではなく、また、障害者の職場環境への適応が難しいといった課題もございます。
 このため、都では、障害種別に応じた雇用の際のポイント等をまとめたハンドブックを作成するほか、今年度から、精神障害者などを対象とした職業訓練を開始いたしました。
 また、職場体験実習のサポートや企業合同説明会の開催を通じ、精神障害者と企業とのマッチングに向けた支援を実施しております。
 今後とも、これらの施策を着実に実施するとともに、企業に対して、精神障害者の障害特性を踏まえた雇用管理のアドバイスを行うための体制整備や、職場体験機会の拡大に向けた取り組みなど、支援の充実を検討してまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 消費者被害対策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、悪質事業者の取り締まり強化についてであります。
 先鋭的な新手の消費者被害が発生する東京においては、法のすき間をつく悪質事業者へ迅速かつ厳格に対応することが重要であります。
 そのため、ことし五月に開設した悪質事業者通報サイトも活用して、幅広く被害情報を収集し、消費生活条例に基づく指導を積極的に行っているところであります。
 今回の消費者安全法の改正では、法のすき間事案に対する事業者処分の権限は国に留保されましたが、立入調査権限等の一部が知事に委任をされました。
 都としては、条例に基づく指導に加え、立入調査権限を機動的に行使し、取り締まりを強化するとともに、都道府県がより迅速な処分を行うことで被害の拡大防止を図るため、国に対して処分権限の委任を強く求めてまいります。
 次に、若者に対する消費者教育の強化についてであります。
 東京には、大学や企業の集積により、全国から多くの若者が集まることから、若者に対する消費者教育は大変重要な課題であると認識をしております。
 都はこれまで、若者向けに、スマートフォン用ゲームアプリを活用した情報発信や、近隣自治体との共同による被害防止キャンペーンなどを実施してまいりました。
 さらに、ことし八月、全国に先駆けて東京都消費者教育推進計画を策定し、若者の消費者被害の防止を重点テーマとして掲げ、一層の強化を図ることといたしました。
 具体的には、事業者団体との連携により、新社会人が陥りやすい消費者トラブルと対処法に関する講座等を実施するほか、若手芸人を活用した啓発や大学生向きセミナーなど、一層効果的な消費者教育を実施してまいります。

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