平成二十五年東京都議会会議録第十三号

〇議長(吉野利明君) 八十七番高木けい君。
   〔八十七番高木けい君登壇〕

〇八十七番(高木けい君) 昨年十二月、石原前知事の突然の辞任により行われた東京都知事選挙で、猪瀬知事は石原後継候補として都知事選挙に初当選されました。
 石原都政で五年五カ月の長きにわたって副知事を務められましたが、これからの猪瀬都政は、その理念や政策など前都政の何を継承し何を継承しないのか、猪瀬都政とは何を目指し、何を実現するために誕生したのか、まずは知事の所見を伺いたいところですが、本日は問わないことにいたします。
 出馬表明時の記者会見の発言、選挙公報等を拝見しても、どのような都政を目指すのか、政治理念を含めて明確なものが見えてきませんので、今後の都政運営の実態を見て、しかるべき時期に改めて、猪瀬都政とは何を目指し、何を実現するために誕生したのかを問いたいと思います。
 さて、石原都政は、都議会自民党との切磋琢磨を通じて都政の可能性を広げ、実績を上げてきました。中でも独自の視点で積極的に推進をしてきた都市外交、アジア大都市ネットワークは、国家間の外交に加え都市同士の連携が、地球規模の課題を解決する上でも重要であるという認識のもと、都市環境政策、航空機産業の育成、震災等危機管理対策など、独自の切り口で多くの成果を上げてきました。
 そこで、アジア大都市ネットワークを今後どのように進めていくのか、知事の所見を伺います。
 私がアジネットを高く評価するのは、昨年、会員都市を従前の北東アジア、東南アジアだけでなく、その範囲を東アジアへと広げたことにもあります。それは、モンゴルのウランバートル、ロシアのトムスクの加入であり、このことは単なる地理的な拡大だけではなく、安倍総理の提唱する価値観外交と気脈を通じています。
 さらに、中央アジアのカザフスタン、ウズベキスタン等、今後アジネットによる都市外交の可能性を模索できる地域は極めて広く大きく、北京市が脱退している中国においても、そろそろ新たな可能性を探るべきと考えます。
 中国には、北京以外にも人口百万人を超える大都市は多数あります。特に我が国と歴史的つながりの深い中国内陸部の内蒙古自治区、いわゆる南モンゴルの中心都市であるフフホトや、新疆ウイグル自治区、いわゆる東トルキスタンの中心都市であるウルムチなどをアジネットに誘い、ともに都市の抱える諸問題解決に取り組むことが、広くアジア全体の利益につながると考えます。
 私は、こうした都市を加入させるべく、東京が主体的にアプローチをしていくべきと考えますが、今後のアジア大都市ネットワークにおける新規加入都市の考え方について、所見を伺います。
 続いて、都市外交の一層の充実に向けて、旧南洋諸島の国々との連携について伺います。
 西太平洋の赤道付近に広がるミクロネシアと呼ばれる地域は、その歴史的背景から世界で最も日系人比率が高く、親日家の多い地域であるといわれています。
 しかし、我が国の国費留学生制度の改変から、近年、日本との関係は、とみに希薄になりつつあり、このままでは貴重な親日の国々を失うおそれがあります。
 そこで、都として、旧南洋諸島の国々との連携を都市外交の手法で推進すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、都議会自民党が過日の都議選で都民とお約束した公約集、東京を世界で一番の都市に、この公約集でございます。この中から三点質問をいたします。
 最初に、東京から電柱をなくすことについて伺います。
 東京都発行「十年後の東京」への実行プログラム二〇一一(概要版)によると、世界の大都市における無電柱化率は、ロンドン、パリ、香港、シンガポールが一〇〇%、ニューヨークは七二%等、極めて高水準である一方、東京は七%と、無電柱化に関しては諸外国と比べて大きく立ちおくれている現状にあるとされています。
 将来、東京から電柱をなくし、世界で一番の都市を目指すならば、まず都が率先して無電柱化に取り組み、区市町村を先導していく必要があります。そのためには、より一層明確な目標を定めて、無電柱化事業を進めていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、特別養護老人ホームの整備について伺います。
 高齢者の安心を守るためには、住まいと見守り体制の確立や、特養、認知症高齢者グループホームの設置促進が不可欠であります。都内の高齢者人口は、とりわけ七十五歳以上の後期高齢者の割合が今後ますます増加していくことを考えると、さらに特養に対する需要が高まることは明らかです。
 都はこれまでも、定期借地権の一時金や、所得の低い方にも利用しやすい、プライバシーの確保された多床室の整備など、都独自の補助を実施してきました。こうした施策が成果を上げ、本年九月一日には、都内特養の定員は四万人を超えましたが、一方でその定員を上回る入所申込者がいるのも現実であります。
 入所申込者の中には、最優先で特養に入所すべき方々ばかりではないとも考えられますが、今後、都が取り組むべきことは、中長期的な介護需要を見定め、これに向かって多様な手法により、介護サービス基盤の効果的な整備を一層促進することにあります。
 昨日の代表質問でも披瀝したとおり、折しも今月、都議会自民党は、東京を世界で一番の都市にするための政策推進総本部を立ち上げました。この中で、高齢者施策の重要なテーマの一つとして、介護サービス基盤の充実、なかんずく特養整備についても多面的な検討を行っていきます。こうした我が党の検討状況も踏まえて、都は、さらに特養整備に力を入れていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、待機児童ゼロを目指す対策の一環として、今後行われる子供・子育て会議について伺います。
 都はこれまでも、待機児童の解消に向けた取り組みを強力に推進してきましたが、保育サービスの充実は、引き続き喫緊の課題であります。また、幼児教育や地域の子育て家庭などに対する幅広い子育て支援策の充実も強く求められています。
 こうした中、国の社会保障・税一体改革の一つとして、平成二十七年度から子ども・子育て支援新制度が本格施行される予定になっております。
 新制度の施行に向けては、各区市町村が必要量の調査を行い、事業計画を策定すると聞いています。都においても、子供・子育て会議の意見を踏まえ、区市町村に対する支援計画を策定するとのことですが、策定に当たっては、幼稚園及び保育事業者など関係者の意見を十分聞きながら進めていくことが大切だと考えます。
 そこで、この会議ではどのような議論を行い、一定の集約を図っていくのか、お伺いいたします。
 最後に、産業政策について伺います。
 昨年末の政権交代以来、期待感先行といわれながらも、景気経済には確実に明るさが戻ってきました。今後さらに必要なことは、アベノミクスの効果による景気回復の実感を中小企業にまで波及させ、成長分野への参入や事業拡大につなげていくことです。ここは日本の景気回復、経済再生を牽引するために、東京が先頭を切って、一歩踏み出した施策を打ち出していくべきときであります。
 まず、都における中小企業支援の大きな柱は制度融資であり、半年前の予算特別委員会で取り上げた量的な側面の確保に加え、メニューの見直しなど質的な充実を求めます。
 例えば、工場の建てかえや最新の機械の導入など設備投資の推進、商品、技術の海外への販売展開などの取り組みを中小企業が大胆に進められるよう、強力な後押しが必要です。
 また、小零細企業の日々の資金繰りなど、現場の切実な声に応えたつなぎの小口資金も必要です。さらには、こうした融資メニューは、中小企業経営者の目線から、わかりやすく利用しやすいものとすべきであります。
 中小企業の資金調達を支える制度融資のさらなる充実に向けた都の取り組みについて、所見を伺います。
 アベノミクスの一つの特徴は、女性や若者の活躍を後押しすることで、産業活動を活性化させ、誰もが生き生きと働くことのできる社会をつくろうとするものです。私は、これにビジネスはもとより、社会経験豊かなシニア層も加えるべきと考えます。
 産業に活力をもたらすのは、いうまでもなく創業であり、女性の豊かな感性、若者の夢とアイデア、シニアの経験など、それぞれの持ち味を生かした創業を飛躍的にふやしていくことが、少子高齢化社会にあっても世の中に活力をもたらす有効な手だてであると考えます。
 しかしながら、創業にはさまざまなハードルがあることも事実ですから、都が従来の支援の枠組みを一歩踏み出し、女性、若者、高齢者に狙いを定めた資金供給や経営面でのサポートなど、きめ細かい支援を通じて創業を促し、さらに創業間もないアーリーステージの企業についても、その育成に力を入れていくべきと考えますが、所見を伺います。
 また、就業については、我が国の女性の就業率がいまだ三十代を底として、M字カーブを描くなど、働く意欲のある女性が力を発揮し切れていない現実があります。
 国の成長戦略に呼応し、女性が企業等の成長を支える人材として十分に力を発揮できるよう、都としても女性の就業を支援する取り組みをより一層充実させていく必要があると考えますが、見解を伺います。
 次に、ものづくり産業への支援について伺います。
 東京には、世界最高水準の技術を持ち、新たな技術の開発にも挑戦するすぐれたものづくりの中小企業が数多く存在し、我が国産業の土台を支えています。こうした企業が地域で息長く事業活動を続けていけるよう、しっかりとした行政のバックアップが必要であります。
 国政において、我が党は、中小企業の試作開発経費の助成など、ものづくり産業支援を強力に進めてまいりました。民主党政権の事業仕分けで施策が後退した時期には、中小企業団体中央会の切実な声を受け、都議会自民党から都独自の支援充実を要望し、受注型中小製造業競争力強化支援事業が実施されています。
 安倍政権となって以来、国では再びものづくり中小企業への支援に力を入れ始めました。都でも、地域の小さな製造業にまで支援が行き渡るよう、助成規模の拡大や助成率の引き上げなど、本事業をさらに充実、発展させるべきものと考えますが、所見を伺い私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 高木けい議員の一般質問にお答えいたします。
 先ほど、猪瀬都政は何を目指し何を実現するために誕生したのかというご質問かと思いましたが、しかるべき時期に質問したいということなので、しかるべき時期にお答えさせていただきます。
 さて、次の今後のアジア大都市ネットワークの取り組みについてのご質問ですが、アジア大都市ネットワーク21は、アジアの首都及び大都市が連携し、大都市が直面する課題に共同で取り組むことにより、アジアの繁栄と発展に貢献してきたと認識しております。
 単なる儀礼的な交流ではなく、感染症対策や防災訓練などの危機管理、廃棄物処理などの環境対策、企業の商談会を初めとする産業振興など、幅広い分野で実務レベルでの協力体制構築や解決策の研究に取り組み、成果を上げてきました。
 この貴重なレガシーを継承するとともに、ビジネスの視点を重視した新たな共同事業の立ち上げや、個別課題に機動的に取り組むことを可能にする枠組みを創設するなど、さらなる発展に向けた改革を進めていくつもりであります。
 なお、その他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔知事本局長前田信弘君登壇〕

〇知事本局長(前田信弘君) 都市外交に係る二点のご質問にお答えいたします。
 今後のアジア大都市ネットワーク21における新規加入都市の考え方についてであります。
 アジア大都市ネットワーク21への新規加入につきましては、規約によりまして全会員都市の合意に基づき認めているところでございます。昨年六月、新たに加入いたしましたウランバートル及びトムスクにつきましても、同様の手続を踏んだところでございます。
 今後、新規都市の取り扱いにつきましては、加入の希望とともに既に会員となっている都市の意向も確認しつつ対応してまいります。
 次に、ミクロネシア地域など太平洋の島々との都市外交を通じた連携についてであります。
 太平洋の島々は、ミクロネシア連邦やパラオ共和国のように、それぞれ一つの国を形成しており、基本的には国家間による外交を進めていくべきものと考えております。
 外務省によれば、太平洋島しょ国は、大変親日的で、国際社会において日本の立場を支持するなど、日本にとって重要な国々であるとしており、国はこれらの国々との関係を強化するため、平成九年以来三年ごとに太平洋・島サミットを開催するなど取り組みを進めてきております。
 東京都におきましても、国際交流を推進する観点から、ミクロネシア連邦と首都大学東京との間における学生交流の検討などを行っており、今後とも、必要な協力を行ってまいります。
   〔建設局長横溝良一君登壇〕

〇建設局長(横溝良一君) 無電柱化事業の推進についてでございますが、都は、アクションプログラム二〇一三に基づき、センター・コア・エリア内を初め、環状七号線、多摩地域の緊急輸送道路などの都道において無電柱化を推進しており、施設延長で約七百七十キロメートルが完成しております。
 また、区市町村に対しては、技術的支援や国と都で事業費のおおむね四分の三の補助を行っております。
 今後は、主要駅周辺や緊急輸送道路などの都道の無電柱化について、新たな整備目標を示すとともに、区市町村の事業が展開しやすいよう、一層の支援に努めてまいります。
 また、国に対し、必要な財源の拡充を求めるとともに、国や区市町村、電線事業者との連携を一層強化して、都内の無電柱化を積極的に進め、風格ある都市景観の形成と高度防災都市の実現を目指し世界に誇れる都市空間を創出してまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、特別養護老人ホームの整備についてですが、都はこれまで、区市町村が地域の介護ニーズを踏まえて算定したサービス見込み量に基づき、高齢者保健福祉計画を定め、整備の進まない地域の補助額を一・五倍に加算するなど、独自補助により特別養護老人ホームの着実な整備を進めてまいりました。
 また、現在、本年七月に設置した構造的福祉プロジェクトチームのもとに、高齢化対策検討チームを設け、中長期的な視点から介護基盤整備も含めた高齢者施策全般について、局横断的に検討しているところでございます。
 その検討結果は、今年度策定する長期ビジョンや来年度予算に反映させることとしており、お話の政策推進総本部の議論も踏まえながら、特別養護老人ホームの整備促進に取り組んでまいります。
 次に、東京都子供・子育て会議についてですが、この会議は、平成二十七年度から実施される子ども・子育て支援新制度に向け、都が策定する支援計画や施策の総合的かつ計画的な推進に関して、審議等を行うことを目的として、条例に基づき設置したものでございます。
 会議の委員は、幼稚園や保育園などの事業者、子育て中の都民、子供、子育て支援に見識を有する学識経験者、区市町村の代表者、経済界の代表者など幅広い立場の方々に依頼をしており、それぞれの立場から子育て支援に関する具体的な意見をいただく予定でございます。
 第一回の会議は十月下旬を予定しており、都としては、待機児童解消や子育て支援策など、支援計画に盛り込む事項を中心に議論を行っていただく考えでございます。
   〔産業労働局長塚田祐次君登壇〕

〇産業労働局長(塚田祐次君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、制度融資の充実についてでありますが、制度融資による金融支援に当たっては、経済情勢の変化や企業の資金ニーズに的確に対応できるよう、資金供給への万全な備えに加え、機動的に制度の見直しを行うことにより、中小企業の経営安定化や成長を支えることが重要であります。
 都はこれまでも、リーマンショック後の緊急保証制度や金融円滑化法終了時の特別借換融資の創設など、その時々の中小企業の資金ニーズに適切に対応してまいりました。
 今後は、小規模企業の日々の資金繰りを確実に支えつつ、設備投資を初めとする前向きな取り組みへの対応など、企業の実情を踏まえたきめ細かい支援を講じるため、融資メニューの充実について検討を進めてまいります。あわせて、利用者の視点に立った利便性のさらなる向上を図ってまいります。
 次に、女性、若者、高齢者への創業支援についてでありますが、東京が将来にわたり成長を実現していくためには、産業の重要な担い手として、女性、若者、高齢者がその力を存分に発揮し、さまざまな分野で新たな事業を立ち上げていくことが重要であります。
 このため、都はこれまで、制度融資により創業者向けの融資メニューを提供するとともに、窓口相談やセミナーの開催を通じて、創業ノウハウの提供を行ってまいりました。また、女性起業家向けセミナーや学生によるビジネスプランコンテストなど特色ある支援も実施してまいりました。
 今後は、女性、若者、高齢者の創業を一層促進するため、それぞれのニーズや実情を踏まえた新たな資金供給の仕組みや、ビジネスプランを磨き実現につなげるための支援の拡充など、創業の各段階に応じた効果的な支援策を検討してまいります。
 次に、女性の就業支援についてでありますが、高い能力を持ちながらも出産等で退職し、再就職を望む女性が、仕事について企業現場で活躍するためには、個々の状況に応じたきめ細かな就業支援が重要であります。
 このため、都は、しごとセンターにおいて専任のアドバイザーによるキャリアカウンセリングを行うほか、就職活動に関するセミナーと職場実習を組み合わせたプログラムなど、女性の再就職を支援する事業を展開しております。
 今後は、就職相談とあわせて保育に関する情報提供を行うなど、再就職を目指す女性を的確にサポートする体制の整備や、セミナーを初めとしたサービスの地域展開による利便性の向上を検討してまいります。こうした支援策の一層の充実強化を図り、女性の就業を積極的に推進してまいります。
 最後に、ものづくり産業への支援についてでありますが、付加価値の高い製品の開発を支える中小製造業の技術力を高めることは、東京の産業を活性化していく上で重要であります。
 このため、都では、中小企業団体中央会との協力のもと、受注型中小製造業競争力強化支援事業により、中小製造業の技術レベルの向上や高品質の部品の開発などを支援してまいりました。
 今後、東京の産業の競争力を一層高めていくためには、都内の小規模ながらもすぐれた基盤技術を持つ企業が、その力を最大限発揮していくことが必要であります。こうした企業がこの事業を活用し、技術力の向上を効果的に行うことができるよう、ご提案の内容も踏まえ、質と量の両面から支援の充実について検討してまいります。

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