平成二十五年東京都議会会議録第八号

〇副議長(ともとし春久君) 五十八番かち佳代子さん。
   〔五十八番かち佳代子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇五十八番(かち佳代子君) 日本共産党都議団を代表して質問します。
 知事は所信表明で、安倍政権のアベノミクスなる経済政策が効果を上げていると述べましたが、賃金は前年比で下がり続ける一方、ガソリンや小麦、住宅ローンの金利などが上がり、庶民の悲鳴の声が広がっています。もうけているのは一握りの富裕層だけです。投機とバブルをあおる金融緩和の危険性は、五月の株価急落、乱高下で浮き彫りになりました。
 しかも、安倍政権は、企業が一番活動しやすい国をつくるといって、解雇の自由化やサービス残業の合法化などを検討しています。これは、日本社会全体をブラック企業化するものです。
 さらに、消費税大増税と社会保障の一体改悪により、消費税は来年八%、生活保護制度の改悪、年金給付の連続削減と支給開始年齢先延ばし、医療費の窓口負担増などが計画されています。これが進められたら、暮らしは破壊され、日本経済がさらに冷え込むことは明らかです。知事、いかがですか。
 知事は、消費税増税を主張する一方、政府に多国籍企業などの誘致のため、法人実効税率を二〇%へ引き下げるよう提案しました。しかし、多国籍企業への行き過ぎた減税競争や免税地域を利用した税金逃れが各国を財政危機に追い込んでおり、国際的批判が広がっているのです。
 今、日本を含む国際社会にとって重要なことは、無国籍企業化した多国籍企業に対し、各国の税財政や雇用ルールを守るという社会的責任を果たさせるための取り組みを進めることだと考えますが、知事、いかがですか。
 実体経済の立て直しには、日本経済の六割を占める家計を温め、事業所の九九%を占める中小企業を元気にすることこそ緊急課題です。経済活動の利益が、国民、都民、中小零細企業に確実に回るようにする手だてこそ講ずるべきです。いかがですか。
 この間、二十三区の国民健康保険料は毎年値上げが続き、市町村も多くが値上げしています。滞納世帯は二三%に及び、収納率は全国最低です。二十三区の今回の値上げで、夫婦二人で夫の年収が二百万円の世帯の保険料は、三年前の九万一千円が十五万七千円に、七二%もの値上げになります。
 都は、二〇〇〇年以降、国保への都独自支援を三百二十億円から四十三億円まで減らしました。国民健康保険法は、都道府県が区市町村国保に補助を交付できると明記し、その内容を制約していません。国保料、国保税の負担軽減へ、都独自の財政支援の上乗せに踏み出すべきです。いかがですか。
 パパ、ママの乱といわれる認可保育園増設を求める都民の声が広がっています。我が党の二月の調査で、認可保育園に申し込み、入れない子どもは二万三千人でした。四月一日時点の旧定義の待機児童数を調べると、二十一区二十五市で約二万一千人に及び、昨年より二千人もふえています。都はどう認識していますか。
 知事は前議会で、認可保育所もふやすと答えましたが、何人分の認可保育園をいつまでにふやすのですか、あわせてお聞かせください。
 特別養護老人ホームの待機者は四万三千人、老老介護など現状は深刻です。知事は、施設整備も大事ですし、在宅支援も進めていかなければいけないと答弁しました。特養ホームを初め、施設の整備及び在宅支援の充実をどう進めるのですか。
 石原前都政以来、高齢者一人当たりの老人福祉費は実額で二三%も減らされました。他の道府県は平均五三%増、減らしたのは東京都だけで、全国一位から二十九位に転落です。巨大な財政力を持つ東京都が全国平均程度でよいのですか。
 地価は全国一高いのです。実態にふさわしい財政投入をしないから、老人保健施設もグループホームも小規模多機能施設も、整備率は全国最低水準です。全国一の福祉都市東京を取り戻すため、全力を尽くすべきです。知事、いかがですか。
 大型開発優先、福祉、暮らしに冷たい猪瀬都政の姿勢は、アクションプログラム二〇一三にあらわれています。総事業費の三一%が大型開発で、少子化対策、医療対策はそれぞれ二%、高齢者対策は三%にすぎません。中でも外環道は、関越─東名間の本線の事業費が一兆二千八百億円、地上部道路を合わせると約二兆円、一メートル一億円もかかる巨大開発です。
 外環建設による環状八号線などの渋滞解消効果はわずかであり、莫大なお金を注ぎ込んで近く開通する中央環状線や圏央道に加えて、さらにこれだけの巨額投資で高速道路をつくる必要はありません。
 我が国は、既に人口減少社会に突入しています。外環などの大型開発にメスを入れ、少子高齢社会に対応できるよう、福祉、暮らしを最優先にした財政運営を行うべきと考えますが、いかがですか。
 外環三キロ分の事業費で三万人分の認可保育園、二万人分の特養ホームの整備ができます。福祉、暮らし最優先の都政への転換を強く求めるものです。
 国会で憲法九条改定を中心とした改憲派が多数を占めていますが、とりわけ改憲派が憲法九十六条の改定による改憲手続の緩和を憲法改定の突破口として押し出したことに、立場の違いを超えて批判が広がっています。
 近代の立憲主義は、主権者である国民がその人権を守るため、憲法によって国家権力を縛るという考え方に立っています。そのために、憲法を時の権力者の都合で安易に変えることができないよう、改憲要件を厳しくしているのが世界的常識です。改憲手続緩和は絶対に許してはなりません。
 憲法九十六条改定への知事の見解を伺い、再質問を留保し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) かち佳代子議員の代表質問にお答えします。
 暮らしと経済の立て直しについてでありますが、今、日本に必要なのは、未知なるものに挑戦し、困難を乗り越えようとする前向きな気持ちであります。安倍政権は、脱デフレの経済政策を展開しており、景気が上向き、人々の気持ちも前向きになれば、日本はもっと明るくなると思います。
 私は、知事就任以来、一人一人が輝く社会の実現を目指し、例えばケアつき住まい一万戸の整備、東京スマート保育を初め東京都独自の保育施策の推進、不燃化特区の大幅拡大など、さまざまな政策を考えて始めています。
 今後とも、政府の経済政策と連携しつつ、東京都の先進的な政策を加速させ、人々を覆う心のデフレを取り払い、東京に元気を取り戻していきたいと、こう思っています。
 高齢者施策についてであります。
 老人福祉費に係る決算額についてお話がありましたが、介護保険制度の導入など、比較の前提となる制度が大きく変わっている中で、過去と比べて、単純に高齢者一人当たりの額について議論することは意味がありません。
 今年度の福祉と保健の分野の予算額は一兆円を超え、一般歳出に占める割合は二二・二%といずれも過去最高となっています。高齢者施策でいえば、高齢者のためのケアつき住まいの整備、認知症の早期発見、診断、治療のための新たなシステムの構築など、費用対効果の高い新しい施策に取り組んでいます。
 また、特別養護老人ホームなどの介護サービス基盤についても、東京都独自の整備費補助や未利用の都有地の減額貸付などを実施しています。
 今後とも、区市町村のニーズを踏まえて、計画的に高齢者施策を進めていく考えであります。
 憲法九十六条についてでありますが、都議会民主党からもほとんど同じ内容の質問がありましたので、答弁が一部重複しますけれども、ご容赦願いたい。
 先ほど、東日本大震災と原発事故を経験した日本は、起こり得る危機を想定する社会へと転換しなければいけないと申し上げました。将来のリスクを想定し、あるいは、これからの時代の変化に対応していくために、憲法の改正条項についてもさまざまな議論が起こるのは当然であります。要は、国民全体で議論して決めることが大事で、そのことによって憲法の、国家の基本法としての価値も高まると、そう考えるのが当然です。
 ご質問の中で、国民の権利を守る近代立憲主義についての話がありましたが、国民主権、基本的人権の尊重という憲法の基本原理は変えてはならないと思っています。それは、大方の国民が共有している価値観だと思います。そして、我々が本当に平和を望むなら、この基本原理にリアルな平和主義を加えるべきだと思う。戦争を想定外にすれば、かえって戦争を防ぐ手だてを見つけることができなくなる。来るべき国政選挙で、それぞれの政党が憲法改正についてわかりやすい選択肢を示すことで、国民の間で議論が盛り上がることを期待しております。
 なお、その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔知事本局長前田信弘君登壇〕

〇知事本局長(前田信弘君) 東京都の外国企業誘致についてのご質問にお答えいたします。
 まず、ご指摘のありました多国籍企業に対する課税制度につきましては、国際社会の枠組みの中で適切なルール化が検討されているものと承知しております。
 一方、現実の国際社会経済では、台頭するアジア諸都市との間で外国企業誘致に向けた都市間競争が激しさを増しております。
 外国企業の誘致は、すぐれた経営資源の受け入れにつながり、また、国内の企業にとりましては販路拡大や新たなビジネスチャンスが創出されるなど、東京と日本の国際競争力の強化につながるものであると考えております。
 このため、過日、産業競争力会議において、アジアヘッドクオーター特区に進出する外国企業に対する法人実効税率のさらなる引き下げを求めたものでございます。
 今後とも、戦略的に外国企業誘致を進めてまいります。
   〔産業労働局長中西充君登壇〕

〇産業労働局長(中西充君) 中小企業の振興等についてでございます。
 国では、景気対策などにより、中小企業の活性化や雇用情勢の改善に取り組んでおります。
 都も、中小企業に対しまして、経営や技術の面からのサポートや資金繰りの支援を行うとともに、雇用の確保を推し進めるなど、必要な対策を適切に実施しているところでございます。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 三点の質問にお答えいたします。
 まず、保険料負担軽減のための財政支援についてですが、都は、国民健康保険制度の健全かつ安定的な運営を図るため、法令等に基づき、各保険者に対する財政支援を行っております。保険料負担軽減のため、都として新たな支援を行うことは考えておりません。
 次に、認可保育所の増設についてですが、保育サービスは、保育の実施主体である区市町村が、認可保育所に限らず、認証保育所、認定こども園、家庭的保育など地域のさまざまな保育資源を活用して整備するものであり、国の現在の定義では、地方自治体の単独保育施策の利用児童は待機児童に含まれておりません。
 都はこれまで、区市町村や事業者の負担を軽減する都独自の支援策や未利用都有地の貸し付け、定期借地権利用に対する支援などを実施しており、平成二十三、二十四年度には、認可保育所も含め、新たに年一万人分以上の保育サービスが整備されました。
 今後とも、地域のニーズを踏まえ、多様な保育サービスの拡充に取り組む区市町村を支援してまいります。
 最後に、介護サービス基盤の整備についてですが、都は、特別養護老人ホーム等の整備を促進するため、整備状況が十分でない地域の補助額を加算するほか、都有地の減額貸付や定期借地権の一時金に対する補助への加算など、独自の多様な手法を講じているところです。
 また、在宅サービスの充実を図るため、訪問看護ステーションやショートステイの整備を支援するとともに、訪問看護や訪問介護を担う人材の育成等にも取り組んでいるところです。
 今後とも、介護保険の保険者である区市町村が地域のニーズを踏まえて算定したサービス見込み量に基づき、計画的に介護サービス基盤の整備を進めてまいります。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

〇財務局長(中井敬三君) 財政運営についてでありますが、外環道を初めとする都市インフラの整備は、都民の利便性や国際競争力の向上、東京の活力維持などに不可欠な取り組みであり、着実に進めていく必要があるものと考えております。
 また、福祉や医療、雇用や中小企業対策など、都民にとって必要なそのほかの施策にも的確に財源を振り向けてきております。
 引き続き、財政の健全性に十分留意しながら、ハード、ソフト両面にわたり山積する都政の諸課題にしっかりと取り組んでまいります。
   〔五十八番かち佳代子君登壇〕

〇五十八番(かち佳代子君) 再質問をします。
 私は、認可保育園を希望したのに入れなかった旧定義の待機児童が二万一千人に及ぶことへの認識と対応を聞きました。ところが答弁は、認証保育所などに入れたら待機児童に含まないという国の定義を代弁するものでした。
 これは、厚生労働省が待機児童を少なく見せるために変えたものです。子どものより安全、健康、幸せを守れる水準の認可保育園が多くの方の願いです。
 旧定義の待機児童は昨年より二千人もふえ、この六年間に倍増しているんです。この深刻な事態をどう認識し対応するのか、明確に整備計画を示してお答えいただきたいと思います。(拍手)
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) かち議員の再質問にお答えします。
 先ほどもご答弁したとおり、認可保育所の増設についてでございますが、保育サービスは、保育の実施主体である区市町村が、認可保育所に限らず、認証保育所、認定こども園、家庭的保育など地域のさまざまな保育資源を活用して整備するものであり、国の現在の定義では、地方自治体の単独保育施策の利用児童は待機児童に含まれておりません。
 都はこれまでも、区市町村や事業者の負担を軽減する都独自の支援策や未利用都有地の貸し付け、定期借地権利用に対する支援などを実施しており、平成二十三、二十四年度には、認可保育所も含め、新たに年一万人分以上の保育サービスが整備されました。
 今後とも、地域のニーズを踏まえ、多様な保育サービスの拡充に取り組む区市町村を支援してまいります。

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