平成二十五年東京都議会会議録第三号

〇副議長(ともとし春久君) 九十八番大西さとる君。
   〔九十八番大西さとる君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇九十八番(大西さとる君) 二十三区で最も低いといわれた足立区の教育レベル、これを引き上げるために、私は幾度となく、この本会議場で質問を行い、政策提案をしてまいりました。その結果、頑張る足立区の子どもたちを応援するために、地域的な要素を考慮して、足立区の江北高校を進学指導推進校に指定いたしました。そして、今回、その期間も五年間延長することが受け入れられました。本当にありがたく思っております。
 私はその後も、その効果や中学校への周知、競争率などの課題を指摘してきました。この施策がどのくらい効果があり、学力向上に寄与しているのか、今後の方向性を含め、都の所見を伺います。
 今、足立区では、教育のレベル以外に大きな課題、その一つに治安の問題があります。足立区は、平成十八年から四年間、都内の刑法犯発生件数が新宿区に抜かれてワーストワンになったことから、区長を中心に、平成二十二年に足立区治安再生アクションプログラムを策定し、警視庁などと協働して、足立区の治安再生事業を推進しています。
 その一つに、ビューティフルウインドーズ運動があります。これは、ニューヨークのジュリアーニ市長が実践した、割れた窓を放置していくとまちが汚れ、汚さから犯罪の温床になってしまう。一方、その割れた窓を修復し、きれいにすれば、犯罪自体がなくなっていくという、そういう考えのもとで、ニューヨークも地下鉄をきれいにするなどして、犯罪の発生を大きく抑制しております。
 その成果は足立区でもあらわれております。昨年の刑法犯発生件数は九千百四十一件、前年比千二百件も減っております。しかし、新宿区に再びワーストワンを譲っただけで、足立区はワーストツーになったという厳しい状況が続いております。
 新宿区には、歌舞伎町という日本一の歓楽街があります。しかし、足立区には、北千住や竹の塚といった、どこにでもある地方都市の飲み屋街しかありません。どうして新宿区と張っているのか、私は悲しい思いでございます。
 今、足立区は安心して住むことができるまちにするため、区を挙げて頑張っておりますが、やはり治安の再生は、警視庁の応援なくしてはなし得ないものと考えます。ぜひとも足立区の治安回復に強く応援をいただきたいと考えます。よろしくお願いします。
 そこで、足立区治安再生アクションプログラムに協働してきた警視庁のこれまでの取り組みと、今後、足立区の治安再生に向け、どのような対策を実施していくのか所見を伺います。
 ことしはインフルエンザが流行いたしました。その原因の一つに、子どものインフルエンザが法定接種から任意接種に変更になったことを指摘するお医者さんもいます。最近のインフルエンザは、新型、ソ連型、香港型などさまざまなタイプが検出されており、予防接種の効果自体が疑問視されている側面があるのは承知していますが、接種されない子どもは、家庭事情、家庭環境にて、同じ子どもに特定されているという傾向も存在します。これはもちろん、親の対応に問題があるわけですが、苦しむのは子どもです。
 その対処方法として、小学校での集団接種の再開を望む声も多くあります。日本の集団接種は、メディカルトリビューンでも高く評価されています。都の見解を伺います。
 一見、何の損傷もないご遺体。しかし、皮膚をめくってみると、絞められた指の跡がはっきりと内出血として残っている、こんな写真を見ました。外表検査では異常がなく、病死とされた事例が、解剖によって犯罪死体であることが証明された事例はたくさんあります。
 東京都の解剖案件は、他県と比べるとはるかに進んでいます。警察庁の集計によれば、平成二十四年の解剖率は、千葉県の四・二%に対して、東京都全体において一八・二%となっています。これは東京都監察医務院の存在のおかげです。解剖率の高さに加え、エコノミー症候群や熱中症による死亡の実態解明など、死因究明に大きく貢献していると聞いております。
 石原前知事も死因究明の必要性は認識されておられましたが、改めて新知事に所見を伺います。
 内閣府は、死因究明を推進する計画を作成するため、死因究明等推進会議を設置。その委員に、都の副知事が選任されています。死因究明制度の中で、監察医務院の果たす役割は大きいと考えます。
 近年、検案数、解剖数ともに年々増加傾向にあり、二十三区では三十年前に年間五千件だった検案件数が、昨年は一万四千体と三倍近くにふえています。しかし、ここ三十年、医師を含めた職員体制は余り変わってないと聞きます。
 現在、東京都監察医務院は、来年春を目指し、施設の建てかえを進めておりますが、他県をリードする死因究明の体制づくりを強化するため、この施設の建てかえにあわせ、人員体制の充実も含めた今後の充実強化が必要だと考えますが、所見を伺います。
 私は、ここ数年、青少年健全育成審議会の委員として活動しています。同審議会の活動目的は、青少年に対する不健全図書の指定と青少年に見せるべき推奨映画の指定です。不健全図書の指定は、毎月数冊ずつ指定されています。
 一方、推奨映画でありますが、青少年の健全育成に寄与するようなよい映画かどうかを審査します。この審議会では、年間五、六本の映画の推奨の依頼を受け、審査しています。しかし、推奨映画と認定されても、東京都推奨映画と記すことができたり、東京都のホームページで掲載されるぐらいで、子どもたちや父兄に対してほとんど宣伝されていません。
 そこで、私はここ数年、よい映画については学校にポスター掲示を促すよう提案をしてまいりました。諸事情により、なかなか進まない施策でした。昨年十二月、「だいじょうぶ三組」という、あの「五体不満足」の乙武洋匡さんのすばらしい映画の推奨が決定いたしました。この映画が第一号となり、今、都内の小学校にポスターが張り出されています。これがその写真です。学校の中に張っていると。公的な学校に映画のポスターが張られる。宣伝効果というのは、これは多分、絶大なものだと思います。この状況を東京都はどのように感じているのかお伺いいたします。
 これを先例として、今後、多くの映画が東京都の推奨を得んがため、申請されることが予想されます。ただし、子どものお小遣いはたかが知れてます。申請がふえたときに、すべてひとしく推奨するのがよいのか悩んでいるところです。そのような場合、推奨するものの、ポスターは掲示しないなど、周知方法を工夫するべきと考えますが、見解を伺います。
 交通問題は、個々に事例を検証し、解決する必要があります。例えば、幹線道路の渋滞緩和のために違法駐車をなくすことを目的として創設された駐車監視員制度、通称緑のおじさんともいいますが、この幹線道路の違法駐車が激減した昨今、対象が生活道路周辺になりつつあります。公衆便所の前でトイレ使用中に取り締まられたといった声まで寄せられています。この個別事例に対して、都は、路上パーキングの二十分百円制の一部導入により、その解決を図ろうとしています。
 一方で、タクシーの降車場の問題があります。タクシー乗り場は、相当数が整備されており、主要な場所では見つけることに苦労はしません。乗ればおりる必要があるわけですから、降車する場所を整備していくのはこれからの課題だと思います。そこ、そこ、そこの交差点でとめてくれ、こういう経験を多分皆さんもされたことは多いと思います。交差点でおりる方、よく見られる光景です。しかし、運転手さんが交差点の周辺で車をとめたら、これは検挙対象になってしまいます。まず、人やバス、タクシーなどが集中する駅前では、タクシーの駐車スペースを計画的に整備することが必要だと考えますが、都の所見を伺います。
 また、こんな事例もあります。バスの運転手が、飛び出してきた自転車を避けるため急停止。衝突は避けられたものの、乗客が車内で転倒してけがをしてしまった。自転車はそのまま行っちゃった。運転手は後日、反則切符を切られたという話も聞いています。
 この事例の解決の策としては、ドライブレコーダーの設置が有効です。最近は、運転手に過失がないことが明白になったため、処罰がなくなった事例も見受けられます。安全度が高まり、運転手を守ることになるドライブレコーダーの設置、都営交通ではすべての車両に行き渡っていますが、他の民間バス会社への普及はいまだ一〇〇%ではありません。民間路線バス事業者によるドライブレコーダーの設置の促進をすべきだと考えますが、都の所見を伺います。
 築地市場の豊洲への移転が一年延期されました。安全な土壌での移転は前提条件であり、しっかりやっていただきたいと思います。思い返せば、ここ数年、築地の豊洲移転は都議会の大きな課題でした。特別委員会も設置され、多くの議論がなされました。しかし、しかし、卸売市場は築地だけではありません。青果は九市場も都内に存在します。鮮魚も大田や足立にあります。
 私の地元の足立市場は、施設の老朽化に苦しんでいます。今年度の東京都の施設整備、修繕の経費予算ですが、土壌汚染対策費用を含まない築地関係では五十四億円、大田は、青果、花きを含みますが十九億円。一方、足立市場は二億円。これは余りにも少ない気がするのは私だけではないと思います。
 取扱量は、大田が三十トン、足立は八十二トン、倍あります。当然、築地市場は多くて千八百二十一トンあります。しかし、大田が十九億円、築地が五十四億円、足立が二億円、余りにもひどいんじゃないかと私は思います。
 足立区には、北市場も存在します。このような市場の整備の必要性を強く強く訴えたいと考えますが、都の所見を伺い、私の一般質問を終了させていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 大西さとる議員の一般質問にお答えします。
 死因究明の必要性についてでありますが、死因究明を適切に行うことは、死者の尊厳や権利を守るとともに、公衆衛生や臨床医学に寄与し、現代医学の進歩に貢献するものであります。
 東京都には監察医務院があります。これは、GHQが昭和二十一年に申し入れして、昭和二十三年に監察医務院ができたんですね。いろいろ、GHQのもたらしたもので、いろんないいものと悪いものがあるけれども、やっぱりきちんとエビデンスに基づいて原因を究明していくという姿勢は、これは非常によかったと思っています。そういう意味で、東京だけ監察医務院があるんです。
 政令で指定されて、二十三区の検案、解剖を行うほか、多摩地域においても検案活動を実施しております。隠れた犯罪死や事故死の発見など、社会秩序の維持に、この東京監察医務院は大きく貢献しています。
 医師の診察を受けずに死亡した死体について、医師が死因究明のために見分する検案や解剖は、人が受ける最後の医療という位置づけで、そこで得られた知見により、一人の死が万人の生につながっていくと、こういうふうに考えてよいと思います。
 今後とも、監察医務院の役割をきちんと果たして、死因の究明というものに力を注いでいきたい、そう思っています。
 なお、その他の質問については、警視総監、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監西村泰彦君登壇〕

〇警視総監(西村泰彦君) 足立区における治安対策についてお答えいたします。
 初めに、これまでの取り組みについてであります。
 警視庁は、平成二十一年十二月に締結した、足立区の治安再生に関する覚書に基づきまして、足立区内における犯罪実態の分析結果を踏まえ、足立区と協働して、平成二十二年四月に、先ほどお話のありました足立区治安再生アクションプログラムを策定いたしました。
 そして、効果的な抑止対策及び取り締まりの強化を初めとする総合的な治安対策の推進、街頭防犯カメラなどの設置促進を初めとする防犯設計による犯罪抑止対策の推進、少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動を初めとする社会における規範意識の向上に向けた対策の推進などの基本方針のもと、足立区や民間ボランティア団体に対する犯罪情報の提供や事業計画の企画立案などに関する助言、支援などを積極的に行ってまいりました。
 また、ひったくり、乗り物盗、侵入窃盗の三罪種については、具体的な重点対策罪種と定め、検挙と抑止の両面から集中的な対策を実施してまいりました。
 その結果、平成二十一年と比較しまして、平成二十四年には、重点対策罪種を中心に、刑法犯認知件数を約二千件減少させまして、年間一万件未満とする目標を達成するなど、一定の効果を上げたところであります。
 次に、足立区の治安をさらに改善させるための今後の取り組みについて申し上げます。
 警視庁と足立区は、当初三カ年の計画であった、足立区治安再生アクションプログラムの期間を延長し、平成二十五年度の重点目標としまして、刑法犯認知件数を年間九千件未満に抑える、刑法犯認知件数に占める自転車盗の割合を三割未満に抑えるとすることなどを定めました。
 警視庁としましては、本アクションプログラムに基づきまして、引き続き足立区と協働し、自転車盗抑止対策、防犯カメラの設置促進、ひったくり防止対策、振り込め詐欺対策を重点的に推進していきたいと考えております。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 進学指導推進校の効果と今後についてでございますが、都教育委員会は、平成二十二年度に江北高校を進学指導推進校に指定し、予備校講師による授業改善の助言や公募制による教員人事などの支援策を実施してまいりました。
 この指定を受け、これまで学校は、全教科の教員により生徒の学力を分析し、それを授業の改善に生かすなど、指導体制の改善と教育内容の充実に取り組んできており、今後はさらに、生徒の習熟度に応じた指導や進学指導に関する教員の技術向上などに取り組む必要がございます。
 都教育委員会は、地区の教育委員会や中学校に学校の取り組みをより一層積極的に周知するとともに、学校が設置する特進クラスの運営に対する指導助言や、指導力にすぐれた教員OBが活用できるようにすることなどにより、進学実績の向上に向け、学校を支援してまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、子どものインフルエンザの予防接種についてでありますが、予防接種を受ける子どもの身体の状況は個人によって異なり、また、時間とともに変化を来すことがございます。
 このため、予防接種の実施方法は、重篤な副反応の発生を可能な限り防止することを目的として、子どもの個人的な体質等をよく理解したかかりつけ医が、ふだんの健康状態、当日の体調等を的確に把握した上で行う個別接種が基本となっているところでございます。
 次に、東京都監察医務院の充実強化についてでありますが、監察医務院では、全国的に法医学の医師が少ない中、常勤医師に加え、大学医学部等の協力を得て非常勤医師を採用し、後継医師の確保に努めているところでございます。
 また、平成二十二年から、医師会や大学の法医学教室と連携し、検案実技も取り入れた研修を実施し、地域の検案医を育成するなど、都において死因究明を担う人材の育成、確保を担っているところでございます。
 現在、監察医務院の建てかえを進めておりますが、新たな施設では、解剖前に異常が疑われる部分を画像で確認でき、死因究明に有効とされるCTを導入し、また、化学分析装置も更新するなど、設備の充実を図ることとしております。
 今後、新たな施設、設備を十分に活用しながら、監察医務院の機能強化に努めてまいります。
   〔青少年・治安対策本部長樋口眞人君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(樋口眞人君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、優良映画のポスターの掲示についてでありますが、事業者から推奨してほしいとの申請があった映画は、青少年健全育成審議会において、推奨するにふさわしい映画か否かについての審議を行い、その答申を受けて、都は優良映画の推奨を行っております。
 優良映画を周知するため、都は、平成二十三年二月から、希望する学校へポスターの配布を開始いたしましたが、お話の映画につきましては、審議会からご提案をいただき、また、事業者側も対応が可能であったため、都内の公立小学校全校にポスターを配布いたしました。
 学校にポスターが張られることにより、子どもやその保護者等の目にとまり、優良映画を鑑賞するきっかけになると思われ、青少年の健全育成に資するという推奨制度の趣旨に沿うものと考えております。
 次に、優良映画の周知方法についてでありますが、都が推奨した映画につきましては、希望する学校へのポスター配布とともに、今後は、児童生徒及び保護者が、実際に鑑賞するかどうか判断する上で参考となる情報、例えば作品のねらいや対象学年などの情報も提供されるよう、事業者に働きかけてまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、駅前におけるタクシーの駐停車スペースについてでございますが、鉄道駅周辺においては、乗りかえ利便性の向上を図るため、路線バスやタクシーの乗降場や駐車スペースを確保することが重要でございます。
 都では、これまでにも、駅前広場を整備する場合には、関係機関と協議しながら、需要に応じ、そのスペースを確保してまいりました。
 高度に都市化が進展した東京では空間が限られていることから、駅周辺のまちづくりなどの機会を的確にとらえて駅前広場を整備し、その中で必要な駐停車スペースを確保するよう努めてまいります。
 次に、民間路線バス事業者によるドライブレコーダー設置の促進についてでございますが、ドライブレコーダーは、事故原因の究明に役立つとともに、事故映像を通して乗務員に必要な指導を行うことにより、安全意識や技術の向上に資するものでございます。
 この民間路線バス事業者によるドライブレコーダーの設置を含む安全対策については、事業者がみずから取り組むべきものであり、都は、事業者を指導する立場にある国と連携し、関係団体に対して適切に対応してまいります。
   〔中央卸売市場長塚本直之君登壇〕

〇中央卸売市場長(塚本直之君) 足立市場などの整備についてでありますが、東京の中央卸売市場は、築地市場や大田市場などの基幹的な市場と、足立市場などの地域のニーズに対応した役割を担う市場、合わせて十一の市場が相互に補完しながら、その機能を発揮し、都民の日常生活に欠かせない生鮮食料品の安定供給という責務を果たしております。
 これら十一の市場の整備については、その特色、特性を生かしながら計画的に実施しておりまして、足立市場についても、冷蔵庫棟冷凍機改修工事など、これまで多様な整備を行っているところでございます。
 加えて、都と市場関係者とが一体となった活性化への取り組みについても現在進めております。
 今後も、こうした取り組みを都と市場関係者とが協力しながら進め、食の安全・安心などの都民ニーズに的確に対応してまいります。

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