平成二十五年東京都議会会議録第三号

〇副議長(ともとし春久君) 十七番栗林のり子さん。
   〔十七番栗林のり子君登壇〕

〇十七番(栗林のり子君) 初めに、人と動物の共生社会について伺います。
 少子高齢社会において、動物を育てることは大変効用があるといわれています。子どもには命の大切さを学ぶ機会となり、ひとり暮らしの高齢者には、孤独感の解消や認知症防止にもつながるといわれています。
 都も、都立公園にドッグランを十年間で当初の予定を上回る十二カ所を整備し、課題とされていた飼い主のマナー向上にもつながってきているようです。
 また、都内三カ所の動物愛護相談センターでは、動物愛護精神と適正飼育の普及啓発、動物の保護と管理、健康危機管理等を柱とし、人と動物とが共生できる社会づくりを目指しています。
 昨年九月に動物の愛護及び管理に関する法律が改正され、動物取扱業の適正化や、飼い主の終生飼育の努力規定、行政が引き取り、収容した犬や猫の致死処分がなくなることを目標に、飼い主への返還や、新たな飼い主への譲渡に努めることなどが盛り込まれました。
 都は、犬や猫の致死処分数の減少には力を入れ、平成十八年六千九百五頭から、二十三年には二千五百七十三頭と、六年間で四千頭以上減少させています。しかしながら、現在、二千頭以上が致死処分されています。改正法でもうたわれている人と動物の共生社会の実現を目指す上で、致死処分の減少をさらに進めていくことは重要な課題であります。
 そこで、東京都における致死処分数の減少に向けたさらなる取り組みについて、都の見解を伺います。
 また、飼い主がどうしても飼うことができなくなった場合や、捨てられた動物などの譲渡先が見つかるまでの間、面倒を見てくれるシェルター機能のあるドイツのティアハイムのような施設が設置できるよう要望しておきます。
 次に、東京スマート保育について伺います。
 仕事と育児の両立を図ることを希望する方が急増する現在、早急な環境整備が求められています。
 都は、平成二十二年から二十六年までの五年間で保育サービス三万五千人増を計画し、待機児数は二年連続で減少したものの、依然として高い水準となっています。
 私の地元世田谷区では、昨年度、待機児が七百八十六人となったため、待機児解消に向け、昨年一年間で認可保育園六園、認証保育所七園など、九百人の定員増を図りました。しかし、いまだ待機児解消には至っていません。特に、ゼロ歳から二歳を対象とした保育サービスは量が絶対的に不足しています。
 都は新たに、ゼロ歳から二歳を対象とした小規模保育施設の整備を進める補助事業、東京スマート保育を創設するとしています。三歳からは園庭つきの認可保育園での保育を希望する方が多いとしても、ゼロ歳から二歳は、小規模で家庭的な保育を希望する方も多くいます。
 私は、平成二十一年第三回定例会の一般質問で、保育室など小規模保育の拡充を求めてきただけに、大いに期待するところです。
 しかしながら、国の小規模保育事業に先駆けて二年前倒しで実施するとのことですが、国制度の詳細が示されるのもこれからです。待機児を多く抱える区市からは、本事業に対する大きな期待と同時に、施設設備の基準や職員の配置基準等、制度設計の詳細がいまだ示されていないということから、不安も寄せられています。
 本事業が待機児解消として早急に取り組めるよう、本事業創設の目的と制度の周知について伺います。
 また、本事業の実施規模は、都全体で、二年間、五十五カ所、千四十五人となっております。本事業の実施により、待機児解消のさらなる取り組みを進めるべきであります。本事業に対する都の取り組み姿勢について見解を伺います。
 ところで、待機児の九割を占めるゼロ歳から二歳児については、認証保育所、認定こども園、保育室、保育ママ、そして新たに開始する東京スマート保育など、多様な保育サービスを拡充し、待機児解消に向けて取り組みが進む方向です。
 しかしながら、三歳以上の待機児の親は、育児休業から復職を希望している方や、二歳までは保育ママや認証保育所に預けていたけれども、子どもの成長に合わせ、より大きな集団での保育を希望し、認可保育園への移行を希望するなど、さまざまな事情を持っています。
 こうした方々のため、三歳からの受け入れ枠がきちんと確保されなければ、安心して働くことができません。三歳以降の行き先がなくなってしまうことになれば、利用する方にとっては死活問題です。
 毎年、進級の際に不安がつきまとうようでは困ります。新事業の東京スマート保育もゼロ歳から二歳が対象です。切れ目なく、安心して移行ができる保育環境を構築することが求められています。三歳以上に対する適切な保育サービスの提供について、都の見解を伺います。
 次に、薬物乱用防止について伺います。
 昨年、大阪や横浜で、脱法ハーブによる暴走運転や吸引後の呼吸困難による死亡事例など、悲しい事件が相次ぎ起こりました。
 薬物乱用防止活動を行う日本薬物対策協会は、昨年秋に、中高生六千百五十人を対象に、脱法ハーブを含む薬物に対する意識調査を行いました。その結果、余り危険ではないので法律で規制されていないという誤った認識があるということもわかり、また、使うのは個人の自由と答えた人が一三%という恐ろしい結果も出ていました。
 私も以前より、地域の若い方たちと薬物乱用防止のボランティア活動をしており、ことし一月にも、夜回り先生こと水谷修先生を迎え、シンポジウムを開催し、身近な地域から危険性を訴えました。
 都は今月、知事指定薬物も八薬物を新規指定し、国に先駆け規制強化に取り組んでいることは高く評価するところです。
 また今回、我が党の要望で、違法、脱法ドラッグ緊急啓発事業に復活予算二千万円計上されました。若者をターゲットとし、違法、脱法ドラッグによる健康被害、死亡事故の増加に対応するための乱用防止に向け、緊急的に普及啓発を実施するものです。
 今回は、緊急啓発というところを強調し、若者の心に届くような、わかりやすくインパクトのある斬新な方法で取り組む必要があると考えます。都の見解を伺います。
 次に、芸術文化を活用した被災地支援について伺います。
 都は芸術文化を通しての被災地支援として、東京都交響楽団による演奏会、ヘブンアーチストの派遣、バリアフリー映画上映会やアートプログラムを実施し、支援しています。
 三・一一東日本大震災より、もうすぐ二年を迎えようとしていますが、いまだ被災地では厳しい現実と向き合い、復興に向け頑張られています。本当に支援が必要なのは、むしろこれからです。
 都議会公明党は、継続的に、岩手、宮城、福島と、被災地の視察を行っています。昨年十月、私は岩手県大槌町を訪ねました。その際、町長を初め行政関係者との懇談の折、感動を受けたお話がありました。
 大槌町には「ひょっこりひょうたん島」のモデルになった島があり、この震災でも形も変わらず、小さな島が残ったそうです。昭和三十九年から放送されていた人形劇「ひょっこりひょうたん島」のテーマ曲に、苦しいこともあるだろうさ、悲しいこともあるだろうさ、だけど僕らはくじけない、泣くのは嫌だ、笑っちゃおう、進め──とあります。
 この歌は、この災害に負けないでみんなで頑張ろうと立ち上がるための歌だったのだと共感を呼び、この「ひょっこりひょうたん島」をシンボルに頑張ろうと皆さんが奮起し、そして、ひょっこりひょうたん塾をつくり、地域の人材を育てる事業を立ち上げたそうです。その塾をつくり、支援しているのが、東京都の芸術文化を活用した被災地支援だったのです。
 年六回、全国各地で活躍する芸術家やコミュニティデザイナーなど、芸術とまちづくりの研究や実践を行う方を講師として招き、まちづくりを学び、将来的には、芸術文化による地域人材輩出タウンおおつちを、まちの新たなブランドとして全国発信することを目指しているとのことでした。この都の芸術文化を通しての支援が、今、復興のエネルギーになっているのです。
 そこで、芸術文化の力と復興支援について、知事の所見を伺います。
 また、このような支援は三年、五年と長期間支援する必要があります。ぜひとも、芸術文化を活用した被災地の支援を継続していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、都営住宅の建てかえに合わせたまちづくりについて伺います。
 現在、老朽化した団地の建てかえが計画的に進められています。私の地元でも七年前に、都営成城八丁目アパートの建てかえ計画が発表されました。周辺の地域住民と団地住民とで協議会を立ち上げ、団地を中心にコミュニティをつくり、防災の協力体制、そして建てかえ後に生まれる余剰地についての要望なども協議し、私も後押しをしてまいりました。
 都と区が協議を続けた結果、一昨年、団地が完成後、敷地内のあいたスペースに、特別養護老人ホーム、障害者のグループホームと生活介護事業所、そして百五十人定員の認可保育園が整備されることに決まりました。保育園は待機児解消に向け、何とこの四月からのスタートです。地域住民からも、要望が反映され、大変喜ばれています。
 今後は、このような都有地を有効利用し、地元区市のニーズにも対応することが求められています。今後の都営住宅の建てかえに合わせたまちづくりの展開について、都の見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 栗林のり子議員の一般質問にお答えします。
 芸術文化の力と復興支援についてどうするかという話でありますが、芸術文化は、東日本大震災の被災者の未来に向けた心のよりどころとなり、生きる希望や活力を与えると、そう思っています。
 東京都は、現場で培った人的ネットワークやノウハウを活用して、芸術文化による復興支援を行ってきました。お話のように、岩手県大槌町では、復興への思いを「ひょっこりひょうたん島」のひょうたん島のモデルで、地元のシンボルである蓬莱島に重ねて、実践的なまちづくり講座を実施し、人材育成に取り組んでいます。
 また、宮城県石巻市では、津波により失われた雄勝法印神楽の舞台を再生して、地元の人々のきずなを取り戻すなど、これまで多くの具体的な成果を上げてきています。
 直接の被災地支援ではありませんが、先日は、ゆうばり映画祭がありましたけれども、夕張にもヘブンアーチストを送ったりとか、いろんなアートの力を東京から送り込んで支えにしてもらっています。
 そういう意味で、東京都の職員というのは、首都公務員として、百点満点じゃなくて百二十点満点で、百点は東京のために全力を尽くすんだが、日本全体のために二十点残して百二十点満点だと。そのぐらい働かなければいけない。特に東日本大震災に対しては、持てる力、特にアートの力というのは東京が一番持っていますから、そういう力を生きる糧にしてもらうために、さらにもっと続けてやりたいと思っております。
 その他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 五点の質問にお答えいたします。
 まず、犬や猫の致死処分数減少に向けた取り組みについてでありますが、ペットを生涯にわたり適正に飼養することは飼い主の責務であり、都は、イベントやパンフレット等により、飼い主責任の徹底を図っております。
 また、やむを得ない理由により引き取り、収容した犬や猫については、動物愛護相談センターにおいて譲渡会を開催するほか、飼育経験が豊富で実績のある団体等と連携し、譲渡の拡大に取り組んでおります。
 さらに、致死処分の六割以上を占める子猫対策として、飼い主のいない猫の不妊去勢手術などに取り組む団体等を、区市町村を通じ、包括補助により支援しております。
 今後とも、致死処分数の減少に向け、こうした取り組みを進め、人と動物との調和のとれた共生社会の実現を目指してまいります。
 次に、小規模保育への支援についてでありますが、都はこれまで、地域の実情に応じて多様な保育サービスの整備を行う区市町村を支援してまいりました。その結果、待機児童数は二年連続して減少したものの、依然として七千人を超えており、その九割を三歳未満児が占めております。
 そのため、都は、来年度から、区市町村が行う三歳未満児を対象とする定員六人から十九人までの小規模保育についても新たに支援することで、待機児童解消の取り組みを強化いたします。
 この事業は、区市町村がこれまで独自に実施してきた制度も支援の対象とするものであり、今後、説明会の開催や個別の相談などにより、広く制度を周知し、活用を促してまいります。
 次に、小規模保育事業への取り組みについてでありますが、都は、待機児童を解消するため、認可保育所、認証保育所、家庭的保育など、多様な保育サービスを拡充し、平成二十四年度から三年間で、保育サービス利用児童数を二万四千人ふやすこととしております。
 来年度から新たに実施する小規模保育への支援は、こうした待機児童解消の一環として取り組むものであり、区市町村においては、空き家、空き店舗等の活用により、機動的な整備が可能になると考えております。
 今後とも、待機児童の解消に向け、小規模保育の整備も含め、区市町村が積極的に保育サービスを整備できるよう支援してまいります。
 次に、三歳以上の児童に対する保育についてでありますが、お話のように、三歳以上の児童についても、平成二十四年四月現在、三歳児が六百十三人、四歳以上の児童が百一人、計七百十四人の待機児童が存在しております。
 都は、今後とも、待機児童の解消に向けて保育サービスを拡充するため、安心こども基金の活用に加え、区市町村や施設整備を行う事業者の負担を軽減する都独自の補助制度や、未利用都有地の貸し付けなどを通じて、区市町村が地域の実情に応じて行う認可保育所、認定こども園、定期利用保育などの整備を支援してまいります。
 最後に、違法、脱法ドラッグの乱用防止に向けた若者への普及啓発についてでありますが、都はこれまで、中学生を対象としたポスター、標語の募集や、高校生会議の開催、繁華街でのイベント、若者向けのリーフレットやポスターの作成など、薬物乱用防止に向けた普及啓発に取り組んでまいりました。
 来年度は、薬物乱用の若者への急速な広がりを受け、緊急啓発対策として、若者に人気のあるタレントが出演する映像を作成し、山手線などのトレインチャンネル、新宿、渋谷の街頭ビジョンや映画館など、若者が多く集まるところで放映をいたします。
 また、大学生と連携し、学園祭でタレントを起用したイベントも開催する等、若者をターゲットとした啓発活動を重点的に展開し、薬物の危険性を強く訴えてまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 芸術文化を活用した被災地支援についてでありますが、都は、震災後速やかに、被災三県にヘブンアーチストや東京都交響楽団を派遣しました。
 また、地元のニーズを踏まえたアートプログラムなどを実施してまいりました。
 具体的には、人々の心に安らぎを与えるとともに、地域のきずなを深めるため、仮設住宅の住民と地域の復興を語り合うプロジェクトや、子どもたちが参加する手づくりのワークショップなどの事業に取り組んできております。
 また、お話のひょっこりひょうたん塾は、まちの特性を活用しながら、地域でのネットワークの形成を通じて地元の復興につながっております。
 こうした取り組みを含め、今後とも、地元自治体との連携を強化しながら、芸術文化を活用した被災地支援に継続して取り組んでまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 都営住宅の建てかえに合わせたまちづくりの展開についてでございますが、都営住宅においては、老朽化した住宅の建てかえを推進し、バリアフリー化された住宅に更新するとともに、敷地を有効利用して用地を創出し、地域のまちづくりに活用することが重要と考えております。
 これまでも関係局や区市町と連携しながら、建てかえにより創出した用地を活用し、子育て支援施設や高齢者福祉施設の整備、木密地域の整備と連携した集合住宅の導入など、取り組みを行ってまいりました。
 今後も、都営住宅の建てかえにおいて、地域の特性やニーズを踏まえながら創出用地の活用を進め、まちづくりに寄与してまいります。

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