平成二十五年東京都議会会議録第三号

〇副議長(ともとし春久君) 七十六番山口拓君。
   〔七十六番山口拓君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇七十六番(山口拓君) まず、保育施策の充実について伺います。
 都内保育園の待機児問題は年々深刻化し、七千人を超えました。この問題を解消するためには、保護者の就労形態の多様化など社会環境の変化を踏まえて、多様な保育サービスを展開していく必要があります。
 中でも、サービス業などで休日も働かなければならない保護者にとって、休日保育の必要性は高く、拡充に向けて取り組むべきと考えますが、都の見解を伺います。
 この時期、認可保育所の四月入所の決定通知が届くころですが、私の地元世田谷区でも非常に厳しい状況にあります。中でも、早生まれの子どもが最も厳しい状況に置かれています。四月入所の締め切りは十二月に終わってしまう場合が多く、早生まれの子どもは四月保育の申し込みができません。保育所入所は四月にほぼ埋まり、年度途中からは限られた枠しか残されておらず、保育を利用することができません。
 そこで、早生まれの子どもが利用しやすくなるような取り組みを行うべきと考えますが、都の見解を伺います。
 一例ですが、東京都は、東京都児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例が定められ、対象となる十五区九市においては、年度途中におけるゼロ、一歳児の乳児室、匍匐室の面積は弾力化できるにもかかわらず、全く活用されていないのが現状であります。
 あらゆる手段を尽くさなければ保育園の待機児問題を解決することはできません。都の積極的な働きかけを期待し、次の質問に移ります。
 大都市特有の保育ニーズに対応するため、都が独自に創設した認証保育所は、待機児童の九割を占めるゼロ歳から二歳までの低年齢児を定員の半分以上とするなど、待機児対策として極めて有効です。
 国は、認証保育所の実績を認めず、早ければ平成二十七年四月から本格施行される子ども・子育て支援新制度においても、認証保育所が正式に位置づけられるかは不透明な状況ですが、都の保育施策の重要な柱である認証保育所を引き続き積極的に推進していくことが重要と考えます。
 保育サービスのさらなる拡充を図るために、都は国に対し、認証保育所を新制度に位置づけるよう、強く求めていく必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、学童保育について伺います。
 現在の保育園利用の実態や、今後さらに利用者がふえるならば、いわゆる小一の壁が深刻な課題となります。今後、放課後対策である学童クラブについて、都としてどのようにとらえ、具体的に対応していくのか、今から示していく必要があるのではないでしょうか。見解を伺います。
 次に、母子生活支援施設について伺います。
 戦前に創設された施設は、当初、戦争で夫を亡くした母子への低所得対策、住宅対策としての機能を担っていましたが、現在では、DV被害や児童虐待などさまざまな生活課題のある世帯の利用が多数を占めるようになってきたことから、高い専門性を持った職員による二十四時間対応の支援が必要となっています。
 施設運営費は、民間施設の場合、国と都、区が分担をし、内訳は事務費と事業費から成っています。事務費は、利用定員に応じて支払うことが原則ですが、例外として、利用数と定員数には一〇%以上の開きを認めないこととし、暫定定員を設け、その状態が継続した施設に対し定員削減を求めることにしています。
 先日、私は世田谷区内のある母子生活施設を訪問し、施設長の切実な話を伺いました。話によれば、昨年八月、世田谷区がこの施設を訪問し、暫定定員制度の説明を行いました。世田谷区は、事業費を昨年度、五千七百二十二万余円支払い、今年度も同額を支払うこととしている。しかし、ここ三年、定員割れを起こしていることから暫定定員となり、年度末に一千七百五十九万余円の返還を求めることとなるとのことでありました。
 しかし、施設への入所は、申し込みから入所の決定まで、区の福祉事務所が行います。つまり、この施設が定員割れを起こしていることの原因は施設には全くなく、施設長以下、職員が一丸となって利用者の処遇に取り組んだ結果、自立して施設を退所する利用者が出たことから起きたものです。母子家庭の自立に向け励めば励むほど、施設運営が困難になるこの暫定定員制度を何とかしてほしいと施設長は訴えられていました。暫定定員制度は母子家庭の自立を全く考慮しない制度であると断ぜざるを得ません。
 施設を利用している母親が職を得て経済的に自立し、施設を去ることになれば、施設利用者は一名減となります。自立する母親の数がふえ、新たな利用者があらわれなければ、施設運営は困難をきわめるです。
 福祉は人なりといわれるように、福祉に従事する良質な職員によって、要援護者である母子生活支援施設利用者の自立は進むものと考えます。施設安定の意味でも、入所決定権限のある区の福祉事務所が、支援の必要な母子を適切に入所させ、施設の職員が暫定定員などの経営上の不安なく、ケアに専念できるように強く願うものです。
 児童虐待や配偶者暴力などが増加する中、母子生活支援施設が必要とする方がふえると考えるため、都としても、区が措置した入所者の自立が進むよう、施設のケアの充実に向け取り組むべきと考えます。また、せっかく専門知識と経験のある施設ですから、地域に対してもその機能が十分発揮されるよう望むところであります。
 そこで、母子生活支援施設について、入所者へのケアの充実や、その機能の地域での活用が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 また、施設の職員の方々の努力により、無事に施設を退所し、地域生活に移行した後も、安定した生活を継続していくことは相当困難が伴うかと思います。
 そこで、都は施設を退所する方に対してどのような支援を行っているのでしょうか、見解を伺います。
 次に、救命救急搬送について伺います。
 都は、平成二十一年から、救急医療の東京ルールを開始いたしました。東京ルールⅠは、救急患者を迅速に病院に搬送するため、地域の救急医療機関が互いに協力連携して救急患者を受け入れるものです。
 救急車が搬送先を決めることが困難な患者が発生した場合に、その受け入れ調整を行う東京都地域救急医療センターは、現在都内に七十八病院設置されています。救急搬送患者全体に占める東京ルール対象患者の発生割合は、現在約二%であり、全国平均は六%程度といわれていることと比較すると、東京ルールは取り組みの成果を着実に上げていることがうかがえます。
 一方、東京消防庁の統計資料を見ると、ここ数年、救急搬送件数が急増しており、平成二十一年の出場件数が六十五万五千六百三十一件だったのに対し、平成二十三年度では七十二万四千四百三十六件と、わずか三年で六万八千八百五件もふえてしまっています。中でも、高齢者人口の増加に伴い、高齢者の搬送件数は著しく増加をしています。
 また、東京の救急車の搬送時間は、平成二十三年度で五十三分と、依然として全国一搬送時間のかかる状態が続いています。特に深刻なのは、高齢者が救急車を呼んだ場合、自分の症状を救急隊にうまく伝えられないことや、身の回りの支度に時間がかかることもあり、搬送時間が長くなる傾向にあります。しかしながら、救急患者の搬送時間が長くてもいいことにはなりません。
 そこでまず、都は搬送時間が長い原因をどのように分析をしているのか、見解を伺います。
 東京都は、道が狭く、道路が渋滞をしている、高層マンションが多いなど、患者を運びにくい条件がそろっています。しかし、救急車で運ばれる患者や家族は、一刻も早く病院で治療を受けたいと、だれもが願っているはずです。また、運んでいる救急隊も、早く病院で治療を受けてもらいたいと、努力をしているはずであります。
 そこで、搬送時間の短縮に向け、救急医療体制の充実強化が必要と考えますが、都の見解を伺います。
 救急搬送時間の短縮には、搬送件数そのものを減らす必要があります。救急搬送患者全体に占める軽症患者の割合は減少傾向にはあるものの、依然として五割を超えています。軽症患者が、皆必ずしも救急要請を必要としない人ではありませんし、結果、軽症であればこしたことはありません。しかし、救急車の台数は限られており、さきに述べたような現状につながっていることは事実です。さらに高齢化が急速に進展をしていく中にあっても、重症の患者を迅速かつ確実に搬送しなければなりません。そのためには、不要不急な場合は救急車を利用しないよう、しっかりと都民一人一人が認識をし、社会全体で救急医療を支えていく必要があります。
 そこで、救急車の適正利用に向けた都の取り組みについて、見解を伺います。
 次に、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック招致について伺います。
 IOCによる支持率調査は、ことしの一月前後に行われると見込まれています。この調査結果は、七月のIOC評価委員会のレポートの提示まで公表されませんが、最近のメディアによる独自の支持率調査や招致活動を取り上げる報道内容などを見ると、確かな追い風が吹いていると考えています。
 これまでの間、私たち都議会民主党としても、招致議員連盟での全国行脚に始まり、個々の議員活動のさまざまな場面において、日本を元気にしようというメッセージを発信し、懸命な招致活動を展開してきた中で、順風吹くこの状況下にあることは大変な喜びを感じているところであります。
 国内で盛り上がってきた招致機運をIOCへ確実にアピールするためには、今後もより一層都民、国民の関心や支持を高めていく必要があると考えます。
 そこで、九月の開催都市決定に至るまでの都民の支持率獲得について、都の見解を伺います。
 去る一月七日、東京は、IOC本部に立候補ファイルを提出いたしました。既に東京の開催計画そのものや運営能力については高く評価されていますが、今後は、二〇二〇年東京大会の魅力的なイメージを都民に共有してもらい、さらに招致機運を盛り上げていく必要があります。
 昨年のロンドン大会では、オリンピックと並行し、コンサートや映画、演劇、アートエキシビションなど多彩な文化イベントを催すカルチュラル・オリンピアード、ロンドン二〇一二フェスティバルが英国全土で行われ、大きな盛り上がりを見せました。
 東京は、日本古来の伝統文化やファッション、アニメに代表される現代文化が調和した都市です。東京に招致が決まれば、ロンドン大会のように、東京の魅力を生かした多彩で大規模な文化芸術イベントを文化五輪として開催し、多くの都民、国民が文化芸術のすばらしさに触れ、改めて日本のよさを実感してもらうことで、日本人の誇りや自信につなげられるのではないでしょうか。
 そして、海外からの選手や観客にも、東京、日本の文化の魅力に触れてもらい、また、東京や日本を訪れたくなるような観光施策にもつながるのではないかと考えます。また、これらを国内でアピールすれば、招致機運の醸成にもつながるのではと考えます。
 こうしたことを踏まえ、二〇二〇年東京大会を一層魅力的なものとするために、東京ならではの強みを生かした取り組みを行っていくべきと考えますが、見解を伺います。
 以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 山口拓議員の一般質問にお答えいたします。九点の質問でございます。
 まず、休日保育の拡充についてでありますが、サービス業など、日曜や祝日に就労している保護者に対して保育サービスを提供するため、都はこれまでも、区市町村が認可保育所や認証保育所などを活用して行う休日保育事業を、保育対策等促進事業や子育て推進交付金により支援しており、今年度は、二十四区市が六十二カ所で休日保育事業を実施しております。
 今後とも、区市町村に対し、休日保育事業の拡充を働きかけてまいります。
 次に、早生まれの子どもの保育サービスについてでありますが、早生まれの子どもが保育サービスを利用しやすくするためには、ゼロ歳児を初めとした低年齢児の定員の拡充に加え、年度途中の入所に柔軟に対応することが必要であります。
 現在、都内におけるゼロ歳児保育の実施率は、認証保育所は一〇〇%であるのに対し、認可保育所の実施率は七九%となっており、都は、待機児童解消区市町村支援事業により、三歳未満児の定員拡充に積極的に取り組む区市町村への支援を強化してまいります。また、年度途中の弾力的な受け入れについても、区市町村の取り組みを支援してまいります。
 次に、認証保育所についてでありますが、大都市特有の保育ニーズにこたえる認証保育所は、平成十三年度の制度創設以来、着実に増加し、本年二月一日現在、六百六十六カ所、定員は二万二千人を超えております。都はこれまで、認証保育所を国の制度に位置づけ、十分な財源措置を講じるよう要求してきましたが、国はいまだに認証保育所の実績を認めておりません。待機児童の多くを占める低年齢児を中心に受け入れ、育児休業明けなど、年度途中の入所ニーズにも柔軟に対応している認証保育所は、都の保育施策の重要な柱の一つであります。
 都は、認証保育所が新たな子ども・子育て制度の中に位置づけられるよう、引き続き国に強く求めてまいります。
 次に、学童クラブについてでありますが、現在の学童クラブには、保育所で利用していた時間延長サービスが小学校入学後に受けられなくなる、いわゆる小一の壁の問題があります。このため、都は平成二十二年度から、民間事業者が運営するクラブを対象に、午後七時までの開所や、保育士等の資格を有する指導員の配置などを条件とした都型学童クラブ事業を開始し、現在十八区市で百六十を超えるクラブが事業を実施しております。
 今後、区市町村に対しては、公営のクラブを含め、開所時間の延長を一層働きかけ、児童が安心・安全に放課後を過ごすことができる学童クラブの確保に努めてまいります。
 次に、母子生活支援施設のケアの充実等についてでありますが、母子生活支援施設は、経済的困窮などさまざまな課題を抱える母子の生活の安定と自立に向けて、子育てや就労など生活全般にわたって支援を行っております。
 入所者の中には、配偶者暴力や児童虐待などの被害を受けた者も多く、心理面でのきめ細かいケアを行う必要があることから、都は、心理相談や職員の資質向上などに取り組む施設に対して独自に補助を行い、利用者に対するケアの充実を図っております。また、入所者以外でも支援が必要な母子を短期に受け入れ、家事援助サービスを提供するなど、施設を活用した取り組みにつきましても、都は独自の補助制度により支援をしているところでございます。
 次に、施設の利用者の自立に向けた支援についてでありますが、母子が施設を退所して地域の中で安定した生活を送るためには、入所中から自立に向けた準備を支援するとともに、退所後のアフターケアを適切に行うことが重要であります。このため、都は、就職先の開拓などの就労支援、施設退所後の住宅確保の際の身元保証、金銭管理など生活全般にわたる相談支援など、施設が行う取り組みを独自の補助により支援しております。
 今後とも、利用者の自立に向けた母子生活支援施設のさまざまな取り組みを支援してまいります。
 次に、救急搬送時間についてでありますが、都がこれまで実施した救急搬送実態調査結果では、患者の背景や救急隊の活動環境が救急搬送時間に影響を及ぼすことが改めて明らかになりました。主な要因として、患者の背景では、ひとり暮らし、精神疾患、泥酔状態などが、救急隊の活動環境では、医療機関における院内調整や患者、家族への説明などが挙げられております。また、高齢者や中等症患者の搬送時間が平均と比べ長く、これらの患者の全体に占める割合が増加していることが、搬送時間延伸の原因と考えております。
 次に、救急搬送時間の短縮に向けた取り組みについてでありますが、都は、救急医療を取り巻く環境の変化を踏まえ、昨年七月、救急医療対策協議会に対し、社会構造の変化に対応する都の救急医療体制のあり方について諮問を行いました。協議会では、二次救急医療体制の見直しに焦点を当てて議論しており、その中で搬送時間の短縮についても課題の一つとして取り上げているところでございます。
 今後、協議会答申を踏まえながら、関係機関とも連携し、救急搬送時間の短縮に向けた検討を進めてまいります。
 最後に、救急車の適正利用についてでありますが、救急医療の東京ルールでは、救急医療への都民の理解と参画を定めており、救急の日のイベントなどを通じて、救急車の適正利用や、救急車を呼ぶべきか迷ったときに相談する東京消防庁救急相談センター、シャープ七一一九の利用などについて普及啓発を行っております。こうしたことにより、救急搬送患者に占める軽症患者の割合は減少しており、また、シャープ七一一九の相談実績も、平成二十一年の五万三千件から、平成二十三年には七万九千件と、大幅に増加しております。
 今後とも、限られた社会資源である救急医療を守るため、区市町村や東京都医師会、東京消防庁と連携しながら、東京ルールの普及啓発に努めてまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) オリンピック・パラリンピック招致に係ります二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、開催都市決定に至るまでの都民の支持獲得についてでございます。
 これまでも、都民、国民から幅広い支持を得るために、例えば鉄道機関の協力による駅構内や車内でのポスターの掲出など、精力的なPR活動に取り組んでまいりました。また、ロンドン・オリンピックでの日本選手団の活躍等もありまして、ことし一月に招致委員会が行った調査では、七三%の支持率を得ました。
 今後は、評価委員会の来日に合わせた競技会場や街路灯へのフラッグ等の掲出による効果的な雰囲気の創出や、開催都市決定前の節目及び決定当日におけるイベントの開催、さらには、地域や大学、企業などと連携した盛り上げを実施してまいります。
 今後も、招致をかち取るまであらゆる機会をとらえて、都民の招致機運の盛り上げを図ってまいります。
 次に、二〇二〇年大会を魅力的なものにする取り組みについてでございます。
 東京は、世界で最も先進的で安全であるとともに、伝統と現代性が融合した、たぐいまれな都市でございます。こうした強みを持つ東京の中心で開催する二〇二〇年大会は、スポーツに加えて、文化やエンターテインメントの要素を盛り込み、都市の隅々に至るまで大会の雰囲気を共有できるダイナミックな祭典といたします。
 具体的には、都内の複数の公園に大型スクリーンを設け、観戦チケットを持たない人も大会の雰囲気を楽しめるライブサイトを設置し、競技の中継に加え、音楽イベントや演劇も開催することで、すべての人に感動を共有できるようにいたします。競技会場と最寄り駅との間には、彫刻や音楽、ストリートパフォーマンスなどによって、会場までの道のりを盛り上げるファントレイルを設置いたします。
 このように、開催期間中は都市全体が一体となり、東京に集うだれもが大会の雰囲気を楽しめる祭典としていくように考えております。

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