平成二十五年東京都議会会議録第三号

〇議長(中村明彦君) 六十五番高橋かずみ君。
   〔六十五番高橋かずみ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇六十五番(高橋かずみ君) 最初に、エネルギー政策についてお尋ねいたします。
 東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故やその後の計画停電などにより、電力供給体制の脆弱性が明らかとなりました。電力は、都民生活や産業活動の根幹を支えるインフラであり、日本経済が再び成長軌道に乗るためには、エネルギーの安定供給が不可欠であります。
 こうした中で、まず、最優先の課題は、規制改革により、競争を通じて電気料金の引き下げや電力の安定供給につなげていくべきです。電気料金のさらなる値上げや供給不安が重なると、産業や雇用の空洞化につながる懸念があります。
 先般、国は、安倍政権になって小売分野への参入の自由化や、発送電分離など、電力システム改革を三段階で進める報告書を取りまとめ、エネルギー不安の克服に向けて改革の第一歩を踏み出したところであります。
 一方、都においても、これまでどおり、エネルギー政策を着実に進めていく必要があります。特に、東京電力の火力発電所の四割が、運転開始から三十五年以上経過しており、事故や故障などの報道を耳にします。老朽化した火力発電所を早急にリプレースすることで、電力安定供給へ道筋をつけることが不可欠であります。最新設備へのリプレースは、低炭素化など、環境負荷の低減や発電効率を高めて燃料コストの削減にもつながります。都として、今後どのように東京電力の老朽火力発電所のリプレースを進めていくのか、知事にご所見をお伺いいたします。
 次に、生態系に配慮した緑のネットワークについてお尋ねいたします。
 首都東京は、稠密な都市インフラ、産業、芸術、文化拠点の集積等を通じ、成熟都市としての威容を備えつつあります。しかし、今後一層激しくなる世界の他都市との都市間競争に勝ち抜くためには、そこで働き、生活する人間にとって快適な都市空間を形成する視点が一層求められております。
 このような視点から、我が党は、昨年の第三回定例会で、緑の歴史的価値や生物層の多面的な機能に着目しつつ、潤いや安らぎを与える自然に配慮した都市環境を創出し、都市としての魅力を一層引き上げるべきと主張を展開いたしました。
 こうした我が党の主張を踏まえ、環境局から都市公園などの大規模緑地との連続性に配慮しながら、公共施設などの緑化を進め、生態系に配慮した緑のネットワークを形成していくという今後の緑施策の方向が示されました。
 そこでまず、東京で生態系に配慮した緑のネットワークを形成する意義について、改めてお伺いいたします。
 生態系に配慮した緑のネットワークの形成には、都みずからの取り組みも大切でありますが、区市町村、NPO、地域住民の参画や協力も得て、取り組みを進める必要があると思います。このような観点から、来年度の新規施策である江戸のみどり復活事業は、区市町村における公共施設を活用した在来植物の緑化を支援するものとして高く評価いたします。今後、生態系に配慮した緑のネットワークを形成するため、この事業をどのように展開していくのか、お伺いいたします。
 次に、都市農業の振興についてお尋ねいたします。
 我が党は、平成十五年に東京都議会自由民主党都市農政を考える議員連盟を結成し、東京の農業振興と農地の保全に取り組んでおります。先日も、若い農業者との意見交換会を開催したところ、生産施設を充実させて増産したい。新たな販路を開拓したい。相続税やその後の経営方針をどうするか、今から考えておきたいなど、さまざまな夢や悩みを語っておりました。東京農業の発展には、こうした農業者の夢を実現することが不可欠であります。
 そこで、こうした農業者の要望にこたえながら、都は、どのように都市農業を振興していくのかお伺いいたします。
 大消費地の中で営まれている東京の農業は、流通や販売では有利な面もあるものの、生産環境としては決して恵まれているとはいえません。私の地元の練馬区でも、住宅に囲まれた農地で農薬と化学肥料の使用を減らした環境保全型農業を実践し、国の制度であるエコファーマーの認定を受けている農業者が多くいます。中には、直売所に認定マークを掲げている農家もおり、人々が安心して買い物に来ております。
 しかし最近、国のエコファーマーのマークが使えなくなると農家が話しておりました。都は、国のエコファーマー制度の変更への対応も含め、今後、環境保全型農業をどのように推進していくのかお伺いいたします。
 次に、特別区消防団員の活動についてお尋ねいたします。
 私は、平成十七年第一回定例会において、消防団員の活動拠点となる分団本部施設の整備を強力に推し進めていくことを訴え、その後は、東京消防庁を初め関係機関のご努力により、分団本部施設の整備が進んでいることは大いに評価するところであります。
 さて、一昨年の東日本大震災においては、全国から派遣された消防職員はもとより、多くの消防団員の方々が、一人でも多くの地域住民の命を救うため、みずからの命を顧みず果敢に消火、救助活動などを行いました。首都東京においても、直下型地震が危惧される中、地域に密着した消防団員の活動に大きな期待が寄せられており、特に震災時において同時多発する火災等による被害を最小限に食いとめるためには、消防職員のみならず、地域に密着した消防団員の活動は不可欠であり、これらの活動に必要な防火衣、防火帽等の装備、消火、救助活動に必要な資機材のさらなる改良、拡充も非常に重要なことだと思います。
 我が党は、特別区消防団員の消防団活動に報いるための処遇改善を要望し、また、特別区消防団員の活動にとって重要な装備資機材の大幅な増強も要望してまいりました。
 今後も、特別区消防団員が地域の防災リーダーとして、平常時はもとより、大地震発生時においても、災害の最前線で消防団活動を実施するためには、装備資機材の充実と消防団員の災害活動能力の向上が重要であると考えますが、東京消防庁の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、連続立体交差事業についてお尋ねいたします。
 都内には、いまだ数多くの踏切が残されており、慢性的な交通渋滞が発生するとともに、道路ネットワークの形成を進めていく上で大きな妨げとなっております。このような問題を解消するには、数多くの踏切を一挙に除却する連続立体交差事業の推進が必要不可欠であります。
 特に、西武新宿線は、踏切が数多く残されており、連続立体交差化の取り組みがおくれております。現在、西武新宿線では、中井駅から野方駅間と東村山駅付近で事業化に向けた手続が進められており、以前から見ると、進捗が見られます。しかし、都が事業候補区間に位置づけている井荻駅から東伏見駅間は、いまだ事業化の見通しが立っておりません。
 地元の踏切解消に対する期待は非常に大きく、この区間にある上石神井駅や武蔵関駅の周辺では、まちづくり協議会を開催するなど、沿線まちづくりの取り組みの意欲が高まっております。
 そこで、井荻駅から東伏見駅間における現在の検討状況についてお伺いいたします。
 最後に、都営地下鉄大江戸線延伸についてお尋ねいたします。
 大江戸線は、光が丘団地など周辺地域から都心方向に多くの通勤通学客などを輸送するといった重要な役割を果たしております。今や都民にとって欠かすことのできない便利な交通機関として利用されているだけでなく、沿線地域のまちづくりや地域経済の発展に多大に貢献しております。
 また、一昨年の東日本大震災発生時には、いち早く運転を再開し、帰宅困難者の輸送手段としての役割を果たしたことなど、防災上の視点からも高く評価されています。
 ところで、大江戸線がいまだ未整備の練馬区北西部は、外環道の整備が着実に進められる一方、依然として道路交通渋滞などのため定時性が確保されない不便なバス交通に頼らざるを得ない、都区部における数少ない鉄道交通不便地域であります。この地域の住民にとって、地下鉄大江戸線の延伸は、長年の悲願であるとともに、沿線のまちづくりに大きな変化をもたらすきっかけとなるものであります。
 こうした状況のもと、これまで都と練馬区は、大江戸線の導入空間となる補助二三〇号線の整備が最優先課題と認識し、一体となって土地区画整理事業などの取り組みを進めてきました。その結果、昨年の七月には、補助二三〇号線の一部が交通開放されるとともに、残りの区間すべてが事業化されるなど、街路整備が着実に進み、大江戸線延伸への住民の期待はさらに高まっており、例えば、地質調査などの検討を深めていくべきと考えます。
 そもそもこの大江戸線の延伸は、運輸政策審議会答申第十八号において、目標年次までに整備着手することが適当な路線として位置づけられており、このことは、都も十分認識していると聞いております。
 私は、二十三区北西部の交通不便地域の解消だけでなく、大規模地震発生時に新たな輸送ルートを確保し、都の防災対応力の向上を図る観点からも必要な路線であると考えます。
 そこで、大江戸線の延伸の事業化について、導入空間の整備が進捗したことを踏まえて、今後どのように検討を進めていくのかお伺いいたします。
 これで私の一般質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 高橋かずみ議員の一般質問にお答えします。
 老朽火力発電所のリプレースについてでありますが、東京湾には、四十年を超えた老朽火力発電所が一千万キロワット、さらに三十五年以上のものを加えると一千六百六十万キロワットの老朽火力発電所があります。これは、いつ壊れてもおかしくない状態だと思ってください。
 そこで、老朽火力発電所をリプレースして、そして、我々がずっと問題提起している天然ガスコンバインドサイクル発電という高効率の天然ガスの発電所に置きかえる、環境負荷の少ない新しい発電所に置きかえるということで、リプレースする場合には環境アセスメントは短縮すべきだと、当たり前のことなんですね。前にそこにあったのですから、もう一度やる必要はないんです。ということで、いろいろと経済産業省とか環境省に出向いて、その当時の大臣にもいいましたし、その官僚にもいった。ということで、圧迫感を与えてきたつもりですが、しかし、まだまだおくれている。そこで、東京都としても独自の知恵を絞って、リプレースの支援に役立つ官民連携政策投資システムというのを今研究中で、それについての構築の調査、その予算はつけています。
 それから、福島から現在九百万キロワットの電源が来ていない、新潟県の柏崎刈羽から八百万キロワットが来ていない、千七百万キロワットの電源が来ていないという状態が、もうこれで一年続いています。にもかかわらず、東京電力は、立地場所も定まらず、事業化の見通しも不明確な二百六十万キロワットの入札手続を進めるだけであって、対象が明確で早急なリプレースが必要な首都圏の老朽火力発電所については後回しになっている。
 先日開催した、第三回の東京都と東電改革本部の定例会合、ここで強く申し入れました。そうしたら、来年度以降になるべく早く準備が整い次第、リプレース事業を募集したいと、こういう表明がありました。
 本気でやります。都民に電気を安心して使用できる環境を整備し、産業や雇用の空洞化を阻止するためにも、引き続き力強く国や東京電力を動かして、リプレースを迅速かつ着実に進めたいと、こう思っております。
 なお、他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 西武新宿線井荻駅から東伏見駅間の鉄道立体化についてでございますが、連続立体交差事業は、複数の踏切を同時に除却することで、道路ネットワークの形成を促進し、地域の活性化にも資するなど、極めて効果の高い事業でございます。
 井荻駅から東伏見駅間には、あかずの踏切が七カ所あり、都市計画道路が五カ所で交差するなど、鉄道立体化により大きな効果が得られる区間と認識しております。
 都は、現在、事業範囲や構造形式などの調査を実施するとともに、課題の把握を行うなど、事業化の可能性について検討を進めております。
 今後とも、鉄道事業者と連携し、周辺まちづくりの動向を踏まえながら、前向きに取り組んでまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、生態系に配慮した緑のネットワークを形成する意義についてでございますが、都内には、皇居や明治神宮の森を初め、大規模な緑地が点在をしておりまして、そこに生育している在来の植物を好む野鳥や昆虫などが数多く生息しております。こうした大規模緑地の間を在来植物の緑でつないでいくことによりまして、都市化によって細分化された生物の生息空間を連担させることができます。
 このように、在来植物による緑のネットワークを形成することにより、東京で働き、暮らす人々が、都会の中にいながらにして、野鳥のさえずりなど自然の息づかいをより一層体感することができるようになります。こうした取り組みは、東京の都市としての魅力を高める上で重要な意義を持つものと認識しております。
 次に、江戸のみどり復活事業についてでございますが、この事業は、大規模緑地との緑の連続性や地域に生育する希少動物、自然植生に配慮しながら、公共施設を活用して在来植物の緑化を行う区市町村を支援する事業でございます。
 今後、この事業を通じまして、区市町村による在来植物の緑化を促すとともに、植栽にふさわしい在来種のリストや、地形に応じた植物種の選定、植栽を行う際の留意点をわかりやすく示すなど、在来植物の緑化の意義について、広く普及啓発を行ってまいります。
 こうした取り組みを通じて、企業、NPO、地域住民等の参加と協力を得ながら、生態系に配慮した緑のネットワークを東京全域に広めてまいります。
   〔産業労働局長中西充君登壇〕

〇産業労働局長(中西充君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都市農業の振興についてでございます。
 都はこれまでも、意欲ある農業者を支援するため、農業用パイプハウスや直売所など、生産や流通の施設等を対象に、都市農業経営パワーアップ事業により整備を支援してまいりました。
 一方、農産物の販路の開拓や加工品の開発など、新たな経営展開を目指す農業者に対しまして、ソフト面からの支援を行っていくことも重要となっております。そこで新年度から、こうした農業者のニーズに幅広く対応していくため、東京農業の産業力強化支援事業を開始することといたしました。
 具体的には、東京都農林水産振興財団に、農業経営を総合的に支援する窓口を設置いたしまして、農業者の相談に応じるとともに、専門的な課題に対しましては、経営コンサルタントやフードコーディネーターなどの専門家を派遣することにより、解決に向けた指導助言を行ってまいります。
 今後とも、ハード、ソフトの両面から総合的な支援を行い、都市農業を振興してまいります。
 次に、環境保全型農業の推進についてでございます。
 都はこれまで、安全・安心な農産物の供給と環境負荷を軽減するために、特別栽培農産物認証制度や国のエコファーマー認定制度によって、環境保全型農業を推進してまいりました。しかし、今後、エコファーマーの認定マークが使用できなくなることから、これを機に制度を見直し、都独自の東京都エコ農産物認証制度を設けることといたしました。
 新しい制度は、農薬と化学肥料を削減した農産物であることを都が認証するものであり、生産者に生産情報の記録、公開を義務づける一方で、都が新たに作成した認証マークの表示を認めることといたします。
 また、この制度の適正な運用を確保するため、畑における農薬等の使用状況の調査や農薬の分析検査を一層充実いたします。
 今後は、新制度について積極的な情報発信を行うことにより、消費者の認知度向上と生産者の取り組み促進を図ってまいります。
   〔消防総監北村吉男君登壇〕

〇消防総監(北村吉男君) 特別区消防団の装備資機材の充実と消防団員の災害活動能力の向上についてでございますが、消防団は、大地震発生時等において、地域の防災リーダーとして極めて重要な役割を果たしております。
 当庁はこれまでも、消防団活動に必要な装備資機材を計画的に整備してまいりましたが、首都直下地震等の発生が危惧される中、都民の期待にこたえていくためには、さらなる消防団の活動体制の充実強化が必要であります。このため、災害活動に必要な可搬ポンプ積載車や救助資機材等を拡充するとともに、新たに新型編み上げ活動靴や救命胴衣等を整備してまいります。
 また、消防団員の活動能力を向上させるため、消防署隊と緊密な連携を図り、延焼危険度の高い地域における消火活動訓練、津波等による浸水が想定される地域における救命ボート取り扱い訓練など、地域の災害特性に応じて、消防団の装備資機材等を有効に活用した実践的な訓練を推進してまいります。
 今後も引き続き、消防団の教育内容等の充実を図りながら、活動体制の強化に積極的に取り組んでまいります。
   〔交通局長中村靖君登壇〕

〇交通局長(中村靖君) 都営地下鉄大江戸線の延伸についてでございますが、これまで交通局は、運輸政策審議会の答申などを踏まえ、基礎的な検討を進めてまいりました。
 延伸の事業化に当たりましては、導入空間の確保とともに、駅やトンネルの構造及び需要予測などの課題があり、さらに具体的な検討が必要と考えております。このうち、導入空間となる都市計画道路補助二三〇号線の整備が進捗していることは認識しており、そうした状況を受け、構造検討の精度を高めるなど、諸課題の検討を行ってまいります。
 今後とも、地元区や関係局などと連携して、事業化について、採算性も含め、引き続き検討を進めてまいります。

〇副議長(ともとし春久君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時三分休憩

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