平成二十五年東京都議会会議録第三号

〇副議長(ともとし春久君) 五十二番山下ようこさん。
   〔五十二番山下ようこ君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇五十二番(山下ようこ君) それでは、私、山下ようこが一般質問をさせていただきます。
 環境の世紀といわれる二十一世紀も十二年が経過しました。東京都では、その最初の年、二〇〇一年に屋上緑化の義務化が始まり、二〇一〇年には、世界初となる都市型キャップ・アンド・トレードがスタートするなど、世界に冠たる環境都市の確立のためのダイナミックな施策が展開されています。
 全世界的地球規模の課題である気候変動対策に着目しますと、温室効果ガス排出量について、国は二〇二〇年までに一九九〇年比で二五%削減するという目標を二〇〇九年以来掲げていましたが、このほど、この削減目標を、ことし十一月の国連気候変動枠組条約締約国会議COP19までに見直すと表明。東日本大震災以来、エネルギー政策が社会全体で大きくクローズアップされるのに伴い、温室効果ガスの削減にかける強い意思が前面に押し出しされることが少なくなったと感じます。
 こうした中、東京都は、二〇二〇年までに二〇〇〇年比で二五%削減という目標を、ことし一月に策定した「二〇二〇年の東京」へのアクションプログラムにおいても堅持し、そのための事業を行うとしています。首都東京が目標を高く掲げ、率先して実効性のある対策に取り組み、成果を上げていく、これは極めて大きな意義を持つことと考えます。
 そこで改めて、都の気候変動対策のこれまでの成果と今後の取り組みについて伺います。
 温室効果ガスの削減のためには、排出量の削減だけでなく、植物の光合成による二酸化炭素吸収の働きも強化しなければなりません。東京独自の指標、みどり率は、この数年間の推移を見ますと、二十三区では横ばい、多摩地区では減少傾向。緑を守り、さらにふやす。東京都が昨年、緑施策の方向性を示す緑施策の新展開をまとめたのは適切であったといえるでしょう。
 都の緑施策のこれまでの成果と今後の取り組みについて伺います。
 二十三区でみどり率が横ばい、すなわち、都市部の緑地の減少に歯どめがかかっているのは、東京都の緑施策の成果、つまり、都が積極的に緑化を推進しているからこそといえます。
 東京では、昨年秋、緑と花の国内最大級の祭典、全国都市緑化フェアが開催されました。東京での開催は二十八年ぶりです。私は、今からちょうど二年前の都議会本会議の一般質問で、この催しが、人間と植物との共存共栄のすばらしさを多くの人に知らせる大きな可能性を秘めたものであるとの認識を述べた上で、いわゆる一過性のイベントではなく、二十一世紀を生きる人々に、緑あふれるライフスタイルを提案できるものとするよう要望しつつ、この緑化フェア開催の基本的な考え方を伺いました。
 今回のフェアは、一カ月の開催期間中、入場者が五百万人を超え、まさに大盛況といえる緑と花の祭典になりました。このフェアを契機として、都民の緑化意識のさらなる高揚を図り、二十一世紀にふさわしい美しいまち東京の創造を加速していきたいものと思います。
 そこで、この緑化フェアの成果について、都は主催者としてどのように認識しているのかを伺います。
 一方、郊外では、農地の減少がみどり率の低下をもたらし、すなわち、農業振興が緑を守り、育てることにつながるといえます。小規模経営がほとんどの東京の生産者、その経営を支えていくためには、魅力ある新品種の育成、ブランド化が非常に重要なポイントであり、東京都農林総合研究センターの研究者の力に期待するところであります。
 今から二カ月余り前の東京都知事選挙、猪瀬新知事誕生が確実になった際、猪瀬知事は、青いバラの花束を抱えて登場し、この花は、不可能を可能にするという意味を持つと語りました。研究者の長い年月をかけての努力の結晶、青いバラ、不可能と思われていたのに、ついに開発に成功した青いバラ、私自身、学生時代は、花き園芸学を専攻し、花の色素をテーマに研究していただけに、この青いバラ育成に取り組む企業の研究には、当初から注目しており、今回、猪瀬知事が、このバラを記念すべき瞬間を彩る演出としてセレクトしたことに驚き、そして感動しました。
 研究者には、新品種にかける夢があります。そしてこの夢の力は、一般の人々の暮らしを豊かにすることもできます。一九九〇年代のガーデニングブームは、茎が垂れ下がるペチュニアの改良種の誕生によって巻き起こったといわれます。たった一つの植物の誕生が人々のライフスタイルに変化をもたらすこともできる、それを実証する事例です。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック招致の合言葉「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ。」これはそのまま新品種育成の分野にも当てはまると考えます。東京で開発された花、野菜、果物、東京ブランドは、人々の暮らしや食卓を豊かにし、同時に、東京に住まう喜びや誇りをも生み出します。東京都農林総合研究センターでの新品種育成の取り組みについて伺います。
 また、農業振興のためには、高品質のものを低コストで栽培する技術の確立も重要です。その研究も、農林総合研究センターの役割の柱といえましょう。栽培技術開発の現状を伺います。
 さて、私は、一貫して東京のオフィスビルの建物内の緑化、すなわち室内緑化を進めるべきと訴えております。その目的は、大きく四つ、一つ目、東京で働くおよそ七百四十万人の職場環境の向上と健康維持、二つ目、ビルから外に強制換気によって排出される空気による大気汚染の防止と温室効果ガス、二酸化炭素の削減、三つ目、ヒートアイランド現象の緩和、四つ目、観葉植物や苗木、シクラメンなどの鉢花といった室内で育てる植物の需要拡大による農業振興。農業振興は当然、農地、緑地の保全につながり、環境保全の効果が生まれます。
 植物には、蒸散作用による夏の気温低下と冬の乾燥の緩和、光合成による二酸化炭素吸収、酸素放出、空気中のホルムアルデヒドやトルエンといった揮発性有機化合物VOCの吸収、分解による無毒化、これは、NASA、アメリカ航空宇宙局の実験などによって立証されています。そしていわゆるいやしという精神的効果、植物には、これら複合的な力があります。
 生命を持つ植物だからこそ、同じ生きるものとして、人間との命のきずなをはぐくむこともできます。オフィスビル内のパソコン、プリンターなどのOA機器からは、人間にとって有害なVOCが発生しており、そのVOCを含む空気の中で人々は働いています。そして、その空気は、換気によって外に排出されています。
 例えば、ここ東京都庁、第一庁舎、第二庁舎の事務フロアの容積を設計図面によって、私自身が計算しましたところ、およそ五十万立米となりました。一方、執務室の二酸化炭素濃度は一〇〇〇ppm以下に保つことが法律で義務づけられているため、この都庁では一日二回の強制換気、つまり空気の総入れかえを行っています。ということは、都庁の職員の皆さんが呼吸によって吐き出す二酸化炭素やOA機器などから発生するVOCを含んだ空気が、一日百万立米も大気に放出されている計算です。これと同様のことが各ビルで行われているというわけです。この実態を認識し、高層ビルが林立するこの首都東京から室内緑化を推進すべきと考えます。
 私は、この室内緑化について、今から三年余り前の二〇〇九年十二月の都議会本会議の一般質問で、その必要性を述べさせていただきました。そのとき私は、室内緑化の都の基本的認識について質問し、当時の有留武司環境局長は、緑は美しく風格のある都市景観の創出に加えて、そこに住む人々の心にゆとりやくつろぎを与えるなど、その役割は多様かつ重要である。オフィス空間などの室内緑化についても、都民に潤いや安らぎを与えるとともに、身の回りにある緑を大切に守りたいと思う心をはぐくむなど、さまざまな効果があるものと認識しているとご答弁くださいました。
 一般の事業所では、景気低迷の影響も受け、室内緑化縮小の傾向が指摘される昨今ですが、この都庁内では、税収が減少する中でも、室内緑化は堅実に推移し、このうち病院経営本部では、都立病院内部の緑化面積が拡大、また、昨年の全国都市緑化フェアでは、室内緑化されたビルの写真が出展団体によって掲示されるなど、三年前の質疑以来、室内緑化推進の動きが見られます。
 このような着実な前進は、都庁各局の高い見識のあらわれであると拝察いたします。心より敬意を表させていただきますとともに、都内の職場環境の改善のために、また、観葉植物の産地八丈島や、苗木、鉢花を栽培する多摩地区はもちろんのこと、都内の室内緑化の推進に熱い期待を寄せる全国の植物生産者の支援のために、そして、かけがえのない地球のために、この室内緑化をさらに広めていくような施策展開を望みます。
 緑豊かな東京、屋外も建物内も緑化された品格ある都市東京は、世界からの観光客、とりわけ東京オリンピック・パラリンピックが実現した際、東京を訪れる世界じゅうの人々へのおもてなしにもなるはずです。環境の世紀、そして都市の世紀、ここで緑あふれる東京を実現する取り組みについて、猪瀬直樹知事の決意を伺い、私の質問の結びとさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 山下ようこ議員の一般質問にお答えします。
 山下議員は、園芸が専門なのでお詳しいですが、青いバラというのは、ヨーロッパで長年かけて栽培技術をやってもできなかった。オレンジや黄色や、いろんな色はできるんだけれども、青だけはできなかった。それが日本のバイオ技術で青いバラをつくることができたということですね。
 緑あふれる東京を実現する取り組みについてでありますが、東京は、江戸時代からずっと世界有数の緑豊かな都市で、大名庭園があり、そして今は六義園とかそういう形で残っているわけですが、また、一般の庶民の方々も、軒先で緑をはぐくむ文化を引き継いでいまして、そういう中で、ジョギングをしたりしますと、ついその緑のある並木に沿って走っている自分を発見することがあります。
 そこで「二〇二〇年の東京」の中で、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京を復活させる、これ意識的にやらないと、確かに緑はどんどん減っていくのです。ですから、意識的に目標をつくって、平成二十八年までに、サッカー場一千五百面に相当する緑を創出するとともに、街路樹を百万本に倍増するなど、あらゆる都市空間において緑化を推進していきます。
 平成十九年に開始した緑の東京募金は、昨年六月に目標額八億円に達しまして、街路樹に寄附した人のメッセージプレートをつける、名前をつけるんですね。それは、マイツリーといいますが、その成果で今も続いています。校庭の芝生化もその募金を活用してやっています。
 今後も、東京湾に皇居の広さに匹敵する緑の島を出現させる海の森──皇居は大体百ヘクタール、海の森も九十ヘクタールですから、大体同じぐらいの大きさの緑の空間がそこに生まれます。ロンドンでのオリンピックのプレゼンも緑が多いんだよということをやりましたし、三月初旬の今度のIOCのプレゼンでも、緑の回廊をつくるということをプレゼンでやっています。そういうことで、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催地にふさわしい、豊かな緑あふれる洗練された環境都市東京を実現していきたいと、こういうふうに思っています。
 なお、その他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 第二十九回全国都市緑化フェアTOKYOについてでございますが、上野恩賜公園や井の頭恩賜公園など、メーン六会場及び区市の公園などから成るサテライト会場におきまして、民間企業など延べ五百五十団体に上る出展、協賛により五感を通じて楽しむ庭園群など、新たな緑との触れ合いを提案し、緑化意識の高揚につながるフェアを開催いたしました。
 また、延べ二千八百名に及ぶボランティアスタッフが、会場案内や草花の管理などに参加し、きめ細かな会場運営が行われ、フェア閉幕後も、ボランティアの一部が引き続き公園内の花壇管理を行うなど、緑化活動を継続する人材の育成も図られました。
 これら取り組みの結果、目標入場者数五百万人を超える五百十六万人もの方々にご来場いただき、フェアを成功裏に終えることができたと考えております。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、都の気候変動対策についてでございますが、都はこれまで、最先端の低炭素都市の実現に向けまして、大規模事業所への総量削減義務制度、中小規模事業所への地球温暖化対策報告書制度、また、太陽エネルギー利用機器への創意的な普及策など、さまざまな対策を展開してまいりました。
 この結果、例えば、大規模事業所の昨年度のCO2排出量は、平均で二三%の大幅減となり、住宅用太陽光発電につきましては、都の補助制度開始前に比べて導入速度が十倍以上になるなど、大きな効果を上げております。
 今後とも、都は、「二〇二〇年の東京」で掲げました低炭素都市の実現を目指して、実効性のあるさまざまな対策を進めてまいります。
 次に、緑施策の成果と今後の取り組みについてでございますが、都はこれまでも、海の森や都市公園の整備、街路樹の倍増、校庭芝生化など、新たな緑の創出に取り組む一方で、自然保護条例に基づく開発許可制度では、緑化計画書制度を通じて、開発行為にあわせた緑の確保と創出を図ってまいりました。
 今後は、これまでの緑の量を確保する取り組みに加えまして、生物多様性の保全など、緑の質を高める視点も重視して、緑の量と質をともに確保できるよう緑施策を推進してまいります。
   〔産業労働局長中西充君登壇〕

〇産業労働局長(中西充君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、花や野菜などの新品種開発の取り組みについてでございます。
 東京都農林総合研究センターでは、東京の気候風土に適し、市場競争力や収益性が高く、地域の新たな特産物になるような品種開発に努めております。
 これまで、果物では、大粒で甘い種なしブドウの高尾や、甘くて色鮮やかなカキでございます東京紅、花では、香りのあるシクラメン、野菜では病害に強いコマツナやウドなどを開発いたしまして、農家に普及してまいりました。
 現在は、温暖な気候でも栽培が容易なトルコギキョウや、果肉が黄色で甘味の強いキウイフルーツでございます東京ゴールドを品種登録出願中でございます。
 次に、栽培技術開発の現状についてでございます。
 東京都農林総合研究センターでは、これまで、コマツナなどについて、収益性を高めるため、防虫ネットや紫外線カットフィルムなど、新しい資材を効果的に組み合わせた病害虫防除技術を開発し、既に広く実用化されております。また、ナシやブドウでは、根や枝の生育を制御することにより、果実の糖度や収量に加え、作業効率も高める栽培法の確立に向け、現在、実証栽培を行っております。さらに、花のハウス栽培において、燃料費を削減するため、夜間の暖房時間を最小限に抑える栽培管理方法の開発などにも取り組んでおります。
 今後とも、農家のコスト削減につながる生産技術の開発を進め、農業振興に寄与してまいります。

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