平成二十五年東京都議会会議録第三号

〇副議長(ともとし春久君) 六十番吉倉正美君。
   〔六十番吉倉正美君登壇〕

〇六十番(吉倉正美君) 今、都政における最優先課題は、一千三百万都民の命と首都機能を守るための東京の震災、防災対策であり、特に、老朽化した東京の橋や道路などの都市インフラの整備更新であります。高度経済成長期をピークに建設された都市インフラは、更新時期に差しかかり、老朽化対策はまさに待ったなしであります。
 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの開催にふさわしい都市としていくために、都市開発などの都市づくりに合わせてインフラを整備更新することで、大都市の風格を高めながら、安全性や利便性を求めていくべきであります。
 そこで、首都東京の都市インフラの整備更新に対する知事の基本的な見解を伺います。
 具体的に対策が求められている都市インフラ、特に橋梁について質問します。
 昨年七月、私は都議会公明党の一員として、隅田川や神田川、日本橋川の橋や堤防、護岸などの整備状況を視察いたしました。
 改めて、東京は水の都であり、多くの橋がかかり、吾妻橋や清洲橋など関東大震災の復興で架設された、歴史的価値がある貴重な橋も多くあることを認識いたしました。
 都は、これらの歴史的価値の高い橋や環状七号線の立体交差橋などの重要な橋を多く管理しておりますが、今後、老朽化が進む中で、これら都道の重要な橋について、長寿命化を積極的に推進すべきであります。見解を求めます。
 次に、鉄道施設の耐震対策について質問します。
 鉄道駅は、大規模地震が発生した場合には、多くの帰宅困難者の収容や負傷者の応急対応、さらに情報発信拠点となることから、早期耐震化は不可欠であります。ところが、耐震対策には多額の費用を要する一方で、鉄道利用者の増加や事業の収益につながりにくいことなどから、いまだに耐震化されていない駅が残っております。
 都は、平成十八年度から、乗降客数が一日一万人以上で、かつ、乗りかえ駅などを対象として、国とともに鉄道駅の耐震化を推進してきておりますが、切迫する首都直下地震に備え、防災、減災の観点から対象駅をさらに拡大すべきであり、早期に耐震性を向上させるべきであります。今後の取り組みについて都の答弁を求めます。
 次に、首都東京のバリアフリー対策を推進する立場から、駅のホームドアの整備促進について質問します。
 ホームドアは、高齢者や障害者を含むすべての人が安心して安全に利用できるという観点から、社会的要請の高い取り組みであります。視覚障害者の線路への痛ましい転落事故やベビーカーが車両の扉に挟まる事故など、これを未然に防ぐことができることから、命を守る安全対策として大きな役割を担っております。こうしたことから、私は、鉄道駅のホームドアを早期に整備すべきと機会あるごとに主張してまいりました。
 このような社会的要請、議会からの要請を受け、都は、平成二十三年度からホームドア整備促進のための補助スキームの予算を地方自治体で初めて計上いたしました。費用が高額であることから、鉄道事業者だけの取り組みではホームドアの整備が進まないことに対し、都が積極的に関与して前に進めようと努力していることを高く評価いたします。
 そこで、都の補助スキームを再度確認するとともに、このスキームを活用した実績について答弁を求めます。
 また、ホームドアの整備が進みにくい大きな理由として、相互乗り入れの課題があります。例えば、都営交通においては、都営三田線、都営大江戸線のホームドア整備を進めてきておりますが、他社線との乗り入れがある都営新宿線、都営浅草線については、いまだに着手されておりません。これは、技術面、輸送面、そしてコストの面で課題が大きいことが指摘されております。
 扉の位置の異なる列車への対応や、高額な設置費用への対応に関する新たな技術開発も進んでいると聞いております。こうした新技術も積極的に取り入れ、整備を一層加速すべきであります。都の見解を求めます。
 いうまでもなく、ホームドアの整備は究極のバリアフリー施策であります。東京の鉄道は各社が相互に乗り入れをするなど、他社と連携して取り組む必要もあることから、ホームドア整備をさらに大きく拡大するためには、補助制度を拡充するなど都が引き続き積極的に鉄道事業者への支援に取り組むことを強く要望しておきます。
 次に、新宿区の都営霞ヶ丘アパートについて質問します。
 国は、二〇一九年のラグビーワールドカップの開催などを目指して、国立競技場の建てかえを決定し、昨年七月から国際デザインコンペが行われるなど、競技場の建てかえに向けた準備が進められています。この国立競技場の建てかえに伴い、近接する都営霞ヶ丘アパートも整備区域に含まれることになりました。この建てかえ後の競技場は、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックが招致されれば、メーンスタジアムになることも予定されています。
 そこでまず、神宮外苑地区の再整備の基本的な考え方を伺います。
 また、この国立競技場の建てかえ計画により、今後、霞ヶ丘アパートの居住者の移転が必要となりますが、ここには約二百三十世帯の居住者の方々が暮らしておられます。居住者の方々は、この建てかえによって、住まいを移転しなければなりません。私は、この霞ヶ丘アパートの居住者の方々から、これまで築き上げた家族の歴史や地域への愛着など、それぞれの思いをお聞きしました。都は、こうした思いをできるだけ受けとめるべきであります。
 まず、都は、居住者の方々が安心して移転ができるよう、十分な説明を尽くし、理解をしていただくことが必要です。また、昨年八月に行われた都の説明会に欠席された方々にも十分な配慮をすべきであります。都の見解を求めます。
 居住者の方々からは、霞ヶ丘から離れたくないという要望が多くあります。現地での建てかえができないならば、約二百三十世帯の方々が、なるべくまとまって安心して移転できるよう、移転先を確保することが必要であります。新宿区内で移転先を確保するとともに、居住者の方々からは、通院などに支障のないように、近隣の都営住宅の建てかえに際して、霞ヶ丘アパートの居住者の移転も含めて建築計画を講じてほしいとの要望が出されております。
 加えて、子どもが小中学校に通っている世帯からは、転校の時期について心配する声や、障害のある方からは、バリアフリー化された住宅へ早期に移転を望む声もいただいております。都は、こうした居住者の要望を受けとめ、居住者が安心して生活していけるよう、移転先を十分に確保すべきであります。都の見解を求めます。
 最後に、新宿歌舞伎町の治安対策について質問します。
 東京最大の繁華街である新宿歌舞伎町の治安回復に向けて、都はこれまで、さまざまな形で対策を講じてきたことは評価いたします。しかし、現実には、飲食店や風俗店、ゲームセンターなど多種多様の業種が混在し、年齢や国籍を超えて多くの人々が集まる中で、強引で悪質な客引きや薬物の密売などが後を絶ちません。地元からは、治安対策の強化を求める声が日ごとに高まっております。
 そこで私は、新宿歌舞伎町の安全対策の拠点となる民間交番の設置を強力に後押しをし、平成二十三年四月、関係機関との調整を経て、歌舞伎町商店街振興組合が中心となり、歌舞伎町セントラルロードの入り口に安全安心ステーションを設置いたしました。この民間交番も活用しながら、今後さらに歌舞伎町の治安対策を展開すべきであります。
 その上で、都は、新宿歌舞伎町の治安回復に向けたこれまでの取り組みを総括し、さらなる対策を講ずるべきであります。都の見解を求めます。
 新宿歌舞伎町では、コマ劇場跡地の再開発を起爆剤として、にぎわいのあるまちづくりを目指した取り組みが進められております。その中で、この客引きが、歌舞伎町地区の風評を下げているほか、若い女性や家族連れを遠ざける原因にもなっています。こうした状況を新宿区議会も問題視し、新宿区民の安全・安心の推進に関する条例を九年ぶりに見直して、客引き禁止条項を加えた条例改正が行われると聞いております。
 現在、警視庁と地域住民が一体となり、歌舞伎町地区の浄化に向けた取り組みを進めておりますが、一向に効果が上がらず、実効性ある客引き対策が求められております。このような状況を認識していただき、強引な客引き行為の取り締まりについて警視総監の所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事猪瀬直樹君登壇〕

〇知事(猪瀬直樹君) 吉倉正美議員の一般質問にお答えします。
 都市づくりに合わせた都市インフラの整備や更新についてでありますが、東京は日本の心臓であり、その役割を今後も発揮させていくには、都市開発の機会などをとらえて、世界トップクラスの都市インフラを備えた先進国の成熟モデルとなる都市づくりへ変えていく必要があります。
 八路線の鉄道が集まる渋谷駅は、大正時代より増改築が繰り返されて、温泉旅館のように継ぎ足し、継ぎ足ししているような状態で、鉄道間の乗りかえも複雑になっている。非常にわかりにくい構造です。
 このため、駅周辺における大規模な民間開発と一体的に駅舎や交通広場などをつくり直す抜本的なリノベーションによって、渋谷のまちを、時代に合った都市の拠点へと再編していきたいということです。
 さらに、新橋・虎ノ門地区では、臨海部と都心部を結ぶ環状二号線と地域のシンボルとなる超高層複合ビルの整備を一体的に進めていきます。
 大切なことは、民間の資金やアイデアをどんどん取り入れて、スピード感を持った都市づくりを進めることで、首都東京の都市活動を踏まえて、文化の薫りが漂う、そういう都市で、オリンピック・パラリンピックの舞台にもふさわしい、世界一の輝く都市にしたいと、そういうふうに思っております。
 その他の質問については、警視総監、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監西村泰彦君登壇〕

〇警視総監(西村泰彦君) 新宿歌舞伎町における強引な客引き行為の取り締まりについてお答えいたします。
 警視庁では、平成十四年に盛り場総合対策推進本部を設置し、警視庁本部関係所属及び各警察署で体制をとりながら、新宿歌舞伎町・池袋・六本木・渋谷の四地区を中心とした盛り場の環境浄化を強力に推進しており、路上における悪質、迷惑な客引き行為についても、重点的な取り締まりを継続しております。
 また、客引き行為を減らすために、客引き行為者のみならず、従業員を客引きとして路上に出す店舗営業者についても、両罰規定のある風営適正化法で取り締まりを行っておりましたが、現在では、店舗側が取り締まりを逃れるため、フリーの客引きを雇うことが多くなっております。
 これらの行為に対しましては、東京都迷惑防止条例の執拗な客引き及びぼったくり防止条例の不当な客引き行為等を用いた営業の禁止を適用して検挙するとともに、悪質店舗の排除にも努めております。
 また、路上における悪質な客引き行為や、キャバクラ等のスカウト行為などに対する規制を強化するため、平成二十年四月、平成二十四年七月と二回にわたり、東京都迷惑防止条例が改正されております。
 警視庁としましては、引き続き、盛り場における悪質な客引き行為の取り締まりを積極的に推進するとともに、風俗営業者等に対しても指導、啓発活動を実施してまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 橋梁の長寿命化についてでございますが、都は日常的な巡回点検に加え、管理するすべての橋梁を対象に、昭和六十二年より五年に一度定期点検などを行い、必要な補修、補強を実施することで、安全を確保しております。
 橋梁の多くは、高度経済成長期に集中して建設されたため、高齢化が進み、近い将来一斉に更新時期を迎えます。そこで、計画的かつ効率的な維持更新を行うため、平成二十一年に橋梁の管理に関する中長期計画を策定し、著名橋や幹線道路の橋梁などを対象に長寿命化を進めております。
 これまでに二十一橋の工事に取り組み、平成二十四年度末までに八橋の対策を完了させ、二十五年度は新たに御茶ノ水の聖橋や環七の春日橋など二十四橋に着手いたします。
 引き続き、橋梁の長寿命化事業を推進し、既存のインフラを最大限に活用するとともに、日本の成長を支える都市基盤整備を推進してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、鉄道施設の耐震化に向けた今後の取り組みについてでございますが、鉄道施設の安全性を高めるためには、主要駅のみならず、鉄道路線全体としての耐震化を促進していく必要があることから、都は国に対し、補助制度の拡充を求めてまいりました。
 このたび国は、補助要件を緩和し、すべての一日一万人以上の利用者のある駅や、駅と駅との間にある高架橋などについても対象を拡大いたしました。
 このため、都は、平成二十五年度から、国とともに補助を実施していくこととしております。
 今後とも、国や鉄道事業者などと連携しながら、鉄道施設の耐震性向上を一層促進してまいります。
 次に、ホームドア整備に対する都の補助スキーム及び補助実績についてでございますが、駅ホームからの転落防止策については、鉄道の安全な運行の責任を負う鉄道事業者みずからが取り組むことが基本でございます。しかし、駅ホームにおける事故が繰り返され、社会的要請が強いこともあり、整備に慎重な鉄道事業者の積極的な取り組みを促すために、試行的な補助として、平成二十三年度から三年間に限り、ホームドア設置にかかわる経費のうち、国が三分の一、都と区が六分の一ずつ補助をしております。
 これまで、小田急線新宿駅、京王線新宿駅、東急大井町線大井町駅の三駅において実施しており、整備上の課題について検討を行っております。
 次に、ホームドアの新技術の取り入れについてでございますが、ホームドアの設置に当たっては、相互乗り入れなどで異なる型の車両が運行されることや、ホームの強度の確保が必要であることなどが課題となっております。
 このため、国において扉の位置の異なる列車に対応可能なホームドアや、軽量化したホームドアの技術開発を行っており、平成二十五年度に実証実験を実施する予定でございます。
 こうした状況を踏まえ、都は、昨年、鉄道施設の改良等に関する連絡会議を開催し、鉄道事業者に対し積極的に情報提供や意見交換を行っております。引き続き、国や地元自治体と連携しながら、ホームドアの整備の促進に取り組んでまいります。
 次に、神宮外苑地区の再整備についてでございますが、本地区には、風格ある都市景観と樹林地などの豊かな自然環境とともに、日本を代表するスポーツ施設が集積しております。
 こうした地域特性を踏まえ、都は、「二〇二〇年の東京」計画において、神宮外苑地区一帯を多くの国際大会等が開催されるスポーツクラスターとして整備することとしております。
 昨年、ナショナルプロジェクトとして新国立競技場の計画が具体化したことを受け、都は、事業者からの提案も踏まえ、競技場を含む周辺一帯の再整備に関する都市計画案を策定いたしました。
 今後、関係権利者等と連携して、具体的な整備計画を取りまとめ、緑豊かで風格と活力を兼ね備えた世界に誇れる我が国のスポーツ拠点の実現に取り組んでまいります。
 次に、都営霞ヶ丘アパートの居住者への説明についてでございますが、国立競技場の建てかえの対象範囲には霞ヶ丘アパートが含まれており、現地でのアパートの建てかえはできないこと、移転が必要となることについて、昨年八月に、アパートの居住者を対象として説明を実施いたしました。
 その後、説明の場に欠席された世帯には、お知らせを配布し、個別に連絡をとるなど周知を行っております。また、居住者からの問い合わせなどに対し、説明を重ねるなど対応しているところでございます。
 今後も、移転について居住者の十分な理解が得られるよう、丁寧な説明などに努めてまいります。
 最後に、霞ヶ丘アパートの居住者の移転先についてでございますが、居住者が円滑に移転できるよう、都営百人町アパートを初め、新宿区内の移転先を用意するとともに、近隣の原宿・神宮前アパートなどの建てかえにあわせ、従前居住者の入居がない住居を確保してまいります。
 移転先の確保とともに、子どもが小中学校に通っている世帯については、希望に応じ、来年度当初、他のアパートへの移転ができるよう準備を進めております。また、障害のある方など、早期の移転を望まれる世帯についても適切に対応してまいります。
 今後とも、居住者の事情などに配慮しながら、霞ヶ丘アパートの二百二十九世帯すべてが安心して移転できるよう取り組んでまいります。
   〔青少年・治安対策本部長樋口眞人君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(樋口眞人君) 歌舞伎町地区における治安対策についてでありますが、都は、平成十七年に設立された歌舞伎町ルネッサンス推進協議会に当初から参加し、新宿区、警視庁、地域の方々などと連携して歌舞伎町の安全・安心と環境美化などを推進する取り組みを進めてまいりました。
 具体的には、これまで地域への支援として防犯カメラ整備費の補助やパトロール資材の配布、また、外国人不法就労防止対策として雇用主等への外国人の適正雇用講習の実施、さらに、暴力団対策として暴力団排除演劇の実施や区の暴力団排除条例施行キャンペーンへの支援、そして環境美化の観点から、落書き消去活動への支援や年末の地域清掃活動への参加など、さまざまな取り組みを進めてまいりました。
 今後も、新宿区や警視庁、そして地域の方々と連携して歌舞伎町地区のさらなる治安の向上のために各種対策に取り組んでまいります。

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