平成二十五年東京都議会会議録第三号

〇議長(中村明彦君) 四十六番鈴木あきまさ君。
   〔四十六番鈴木あきまさ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇四十六番(鈴木あきまさ君) 最初に、羽田空港跡地における産業交流施設の規制緩和協議についてお尋ねいたします。
 東京都は、東京の国際競争力の強化に不可欠なものとして、羽田空港の機能強化と国際化を推進してまいりました。今後は、国際化が進む空港のより効果的な活用が求められていますが、特に産業面において、新製品、新サービスの創出を後押しし、世界に展開する戦略が必要です。
 大田区では羽田空港跡地に、国内外の企業、人材交流、技術連携等を通じ、ものづくり産業の競争力強化機能の発揮を想定した産業交流施設の整備を目指しております。これは、外国企業誘致によって、経済活性化を目指すアジアヘッドクオーター特区の考え方に調和するものであります。当該施設の整備に当たり、国有地の処分等について規制緩和を求める必要があります。国際戦略総合特区に指定されていることを踏まえ、東京都は大田区と連携し、精力的に国との協議を進めるべきと考えますが、所見を求めます。
 次に、産業政策、中小企業支援についてお尋ねします。
 中小企業の人材確保、若年者の就業対策です。
 安倍政権は、景気対策に加え、雇用対策にも力を入れていくこととしています。都としても、今こそ次代を担う若者が夢と希望を持って活躍できる社会を創出するために、若者の就業対策を積極的に推し進めていくべきです。
 我が党はかねてより、人材確保に苦慮する中小企業と意欲のある若者とのミスマッチの問題について指摘し、両者を結びつけるこの取り組みの強化を求めてまいりました。
 さきの第三回定例会では、民主党政権下にあった国が、雇用対策に関する交付金を終了させようとする中、我が党は紹介予定派遣を活用した支援策の充実を強力に主張し、都の交付金の確保を後押しするとともに、私も機会あるごとに若者の就業対策の重要性にかんがみ応援してまいりました。
 これまで都が成果を上げてきた支援を拡充し、より多くの若者に門戸を開くなど、若者の中小企業への就業を一層促進させるべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、三年以上にわたり借入金の返済猶予に利用されてきた中小企業金融円滑化法が三月末で終了となります。都内でも三万社に上る企業が利用しているといい、法の終了による影響は大変大きいものがあると危機感を抱いています。
 地元大田区の企業からも、最近、金融機関の融資姿勢が厳しくなったとか、次は返済のリスケが認めてもらえそうもないなど、今の資金繰りについての不安の声が数多く寄せられております。
 こうした現状を踏まえ、都は、中小企業が経営改善の途上で資金繰りに行き詰まることのないよう、制度融資において特別借りかえ融資を創設するとしており、また、我が党の要望にこたえて、三月から前倒し実施することを、さきの代表質問で答弁いたしました。
 これまでも制度融資に借りかえメニューはありましたが、新設する特別借りかえ融資は中小企業にどのようなメリットがあるのか、その具体的な内容についてお伺いをいたします。
 次に、電気イノベーションについてお尋ねをいたします。
 中小企業が競争力を高めるためには、環境や医療といった成長分野での技術、製品開発に、積極果敢に挑戦することが重要です。しかし、こうした分野は競争も激しく、自社の技術だけで新たな市場を切り開く製品をつくり出すことは容易ではありません。
 そうした中、私の地元大田区では、昨年十一月、区の主導のもと、医工連携支援センターが開設し、中小企業の技術と大学や医療機関のニーズ等をマッチングして、新しい医療機器を生み出そうとする取り組みが始まっております。高い技術を持つ中小企業が最先端の研究成果を活用すれば、東京ひいては日本の製造業の競争力は一層確固としたものとなります。
 さきの代表質問において、大学等と連携した技術開発を重点的に支援するとの答弁がありましたが、その具体的な内容をお伺いいたします。
 次に、クルーズ客船の誘致促進についてお尋ねします。
 旅行雑誌の三月号に、格安時代到来、日本発着で楽しむ初めての外国船クルーズの特集がありました。海外の豪華客船が日本発着のクルーズに本格参入することしは、まさにクルーズ元年とのことであります。
 クルーズ客船は、乗客の消費等により、一隻の寄港で数億円の経済波及効果も期待できるなど、低迷が続く都内経済の活性化に大きく寄与するものです。東京と同様に、国際的な大都市であるシンガポールにおいては、年間四百回もクルーズ客船が寄港していますが、東京港の寄港数は年間二十回程度にとどまっています。東京港は、クルーズ客船の寄港地として非常に大きな魅力を秘めており、もっと寄港数を伸ばすことが可能であります。
 クルーズ客船の誘致に向け、さらに積極的な誘致活動を展開していくべきと考えますが、所見を伺います。
 また、近年、世界のクルーズ業界においては、従前の富裕層から中間層にマーケットを拡大するために、クルーズ客船を大型化し、一泊一万円台という低価格なクルーズ商品を販売する戦略が主流となっており、もはやクルーズは一生に一度の夢ではありません。
 我が国に寄港するクルーズ客船の大型化の潮流は確実なものとなっており、東京湾では、レインボーブリッジやベイブリッジをくぐれないといったケースが発生しています。我が国の玄関口である首都東京においてこそ、こうした課題にしっかりと対応すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、防災対策についてお尋ねします。
 昨年四月、東京都防災会議により、東日本大震災を踏まえ、首都直下地震等による東京の被害想定が発表されました。この中で、元禄型関東地震による津波のシミュレーションでは、万一、全水門が閉じられなかった場合、大田区における建物被害は、全壊八十八棟、半壊が千二十棟と多くの被害が発生すると想定されております。
 このような中、大田区内にあるいわゆる港南四水門は、建設から五十年近くが経過し、耐震強化も実施されていないため、もし水門が閉じられなかった場合には浸水することが懸念されております。
 都は、昨年末に、水門や防潮堤等の海岸保全施設の新たな整備計画を策定しました。大田区の港南四水門については、水門を廃止し、防潮堤を整備する方針と聞いていますが、整備形態とスケジュールについてお伺いをいたします。
 次に、下水道施設の再構築、水再生センター間のネットワーク化についてお尋ねいたします。
 先日の我が党の代表質問で、下水道管の老朽化への対応について確認しましたが、管で集めた下水を処理する水再生センターなどについても、同様に老朽化が進んでおり、こうした施設の再構築も重要であります。私の地元大田区にある森ヶ崎水再生センターは、国内で最大規模の下水処理施設であります。このような大規模な施設の再構築には長期間を必要とすることに加え、再構築時に処理能力が低下する影響が大きく、さまざまな困難を伴うことと思います。
 下水道局では、施設の再構築に先立ち、水再生センター間を結ぶ連絡管などのネットワーク化を推進することで、こうした課題に対応していくとのことでありますが、水再生センターなど、下水道施設の再構築をどのように進めていくのか、お伺いをいたします。
 次に、ネットワーク化の取り組みについてお尋ねいたします。
 ネットワーク化を進めることにより、再構築時に下水を受け入れる側の水再生センターに負荷がかかるのではと危惧をいたしております。晴れの日はもとより、大雨の際には、森ヶ崎水再生センターにも大量の下水が流れてくることに加え、連絡管により、他の水再生センターから下水が送られてくることで、放流先の水質が悪化するのではないかと懸念しています。
 下水道局では、森ヶ崎と芝浦水再生センターを結ぶ連絡管を整備していくと聞いていますが、芝浦水再生センターの下水を連絡管により受け入れるに当たって、森ヶ崎水再生センターの放流水質が悪化することのないよう、どのように対策を行うのか伺います。
 また、二つの水再生センター間を結ぶ連絡管の整備は、再構築時に活用するだけではなく、災害時に一方の水再生センターが被災したときにも活用できるのではないかと考えます。
 そこで、森ヶ崎と水再生センターとを結ぶ連絡管をどのように活用するのか伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事本局長前田信弘君登壇〕

〇知事本局長(前田信弘君) 鈴木あきまさ議員の一般質問にお答えします。
 羽田空港跡地における規制緩和についてでありますが、大田区が整備を目指している産業交流施設は、新産業、新技術の創出機能に加え、誘致した外国企業と国内企業とのマッチング機能を持つものであり、アジアヘッドクオーター特区の目的に沿うものであります。
 区は、国有地の処分などについて三つの規制緩和を求めており、都は区と連携しながら、特区法に基づく協議事項として国との交渉を進めております。そのうち、国有地を処分する際の契約方法については、昨年秋に行われた国との協議において、区との随意契約が可能となる特例が認められました。国有地の減額譲渡、施設整備に係る無利子貸付につきましても、区の要望を踏まえた上で、積極的に国との協議を進め、規制緩和の実現に努めてまいります。
   〔産業労働局長中西充君登壇〕

〇産業労働局長(中西充君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、若者の中小企業への就業促進についてでございます。
 将来を担う若者と人材不足に悩む中小企業を結びつけるため、これまで都は、研修と企業での派遣就労を組み合わせた制度を活用した支援に取り組むなど、就業対策に力を入れてまいりました。
 こうした取り組みの成果を踏まえ、新年度は、既存事業を再構築した若年者緊急就職サポート事業を開始いたします。実施に当たりましては、国の交付金を確保し、規模を拡大、正規雇用化に向けて千四百名の若者を支援してまいります。
 また、新たに派遣先の業種や職種に応じたきめ細かい事前研修や就労体験中の研修、受け入れ企業向けのセミナーなど、支援策の充実を図ってまいります。
 加えて、環境や健康など、今後成長が見込まれる重点産業分野への就業を促進するため、紹介予定派遣制度を活用した取り組みを都の独自財源により引き続き実施してまいります。
 このような取り組みを通じて、将来を担う若者の就業を着実に推進するとともに、東京の産業振興を人材面から支援してまいります。
 次に、特別借りかえ融資についてでございます。
 借り入れ条件を変更中の中小企業が経営改善を進める過程で資金繰りを確保できるよう、都は制度融資に、借り入れ企業の返済負担の軽減に役立つ特別借りかえ融資を新設し、三月から取り扱いを開始いたします。
 この融資では、借入残高の範囲内であれば、限度額を設けずに、保証つき融資を一本化し、返済期間を延長できる仕組みといたします。
 また、新たに、元金返済の据置期間を最大で六カ月間設けることで、借り入れ企業の当面の返済負担のより一層の軽減を図ります。
 さらに、小規模の企業に対しては保証料の二分の一を補助するなど、これまでの借りかえに対応する融資メニューに比べ、よりメリットが大きい制度となってございます。
 本融資の利用促進に向け、中小企業に対する積極的なPRを実施するとともに、金融機関等への協力要請を行うことなどにより、経営改善に取り組む中小企業の資金繰りを的確に支援してまいります。
 最後に、中小企業の技術開発への支援についてでございます。
 高い技術力を持つ中小企業が、今後成長の見込める分野で大学等と連携し、先端の研究成果を活用しつつ、製品開発を進める取り組みを支援するため、都は新年度より、連携イノベーション促進プログラムを開始いたします。
 本事業では、環境エネルギー、防災、医療福祉などの分野で、都市課題の解決に役立つ技術開発テーマを具体的に示した課題マップを都が作成し、これに沿って、中小企業が大学や研究機関等と連携して実施をいたします製品開発の経費の三分の二について、三千万円を限度に助成いたします。
 こうした取り組みにより、成長分野における中小企業の意欲的な技術開発を積極的に促進してまいります。
   〔港湾局長多羅尾光睦君登壇〕

〇港湾局長(多羅尾光睦君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、クルーズ客船の誘致促進についてでありますが、クルーズ客船は港の花といわれ、乗客の消費等による大きな経済効果、クルーズ客船自体が新たな観光資源となるなど、さまざまな効果が見込まれます。
 都はこれまでも、入港料の減免など、客船の寄港に伴うコスト負担を軽減するとともに、船会社等を訪問し、東京港の魅力をPRするなど、さまざまな取り組みを行ってまいりました。
 来年度も、既に大きな効果を発揮しつつある水先案内料などへの補助制度を継続するとともに、クルーズ客船関係者を対象としたセミナーを拡充するなど、誘致活動を強化してまいります。
 さらに、和太鼓演奏など日本の伝統文化を生かした歓迎イベントの実施など、地元区とも連携を図りながら、積極的にクルーズ客船の誘致活動を展開してまいります。
 次に、クルーズ客船の大型化への対応についてでありますが、東京港においても、全長が三百メートルを超え、乗客、船員合わせて約五千人が乗船できる超大型クルーズ客船の誘致に成功し、ゴールデンウイーク以降、複数回寄港する予定です。
 こうした大型客船は、十五階建てビルに相当する高さがあり、レインボーブリッジの下を通過できないため、通常の客船受け入れ施設である晴海ふ頭に着岸できません。このため、当面はレインボーブリッジの外側にある大井水産物ふ頭で受け入れを行ってまいります。
 しかしながら、同ふ頭の受け入れ可能日が物流施設の休業日である土日祝日に限定されることなどから、今後は、世界のクルーズ業界の動向や、東京港への大型船の寄港状況等を勘案しながら、さらなる検討を行ってまいります。
 最後に、港南四水門についてでありますが、貴船、呑川、北前堀及び南前堀の四カ所の水門については、現在では、背後の水域が行きどまりになっており、開閉操作を伴う水門を存続させる必要性が薄れております。そこで、津波、高潮に対する安全性向上の観点に加え、散策路の整備や周辺環境への配慮など、地元が進めるまちづくりとの整合性等を勘案し、水門を廃止し、防潮堤整備を進めていくことといたしました。
 南前堀水門については、水域を一部残し、防潮堤を整備することとし、今年度、測量及び地質調査を実施しており、来年度は、設計を実施する予定でございます。
 また、このほかの三カ所の水門についても、新たな整備計画に基づき、引き続き地元区と協議しながら、早急に対策を推進し、津波、高潮対策を強化してまいります。
   〔下水道局長小川健一君登壇〕

〇下水道局長(小川健一君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、下水道施設の再構築についてでございますが、水再生センターなどの大規模な施設を再構築するには、多額の費用と長期間を必要といたします。このため、コンクリート製の構造物の腐食対策等により施設の延命化を図りつつ、水再生センターの施設ごとの老朽度等に基づき、優先度を定め、中長期的に事業を平準化するなど、計画的に再構築を進めてまいります。
 さらに、再構築時に一時的に処理能力が減少することに対応するため、水再生センター間で下水などを相互に送る連絡管など、ネットワーク施設の整備を施設の再構築に先行して実施してまいります。これにより、再構築時に不足する処理能力を相互に補完することで、効率的に再構築を進めてまいります。
 次に、森ヶ崎水再生センターの放流水質についてでございますが、芝浦水再生センターの下水を森ヶ崎で受け入れる際には、昼夜間の流入下水量の差を活用するなど、運転面での工夫により、森ヶ崎の水処理機能への影響が出ないように対応してまいります。
 また、下水の受け入れに先行し、処理水量を減少させることなく水質を改善できる準高度処理を導入いたします。
 さらに、雨天時の汚濁物を従来の二倍程度多く除去できる新たな技術である高速ろ過施設を整備することで、放流水質の改善を図ってまいります。
 こうした取り組みにより、森ヶ崎の放流水質の改善を図りながら、芝浦水再生センターの再構築を進めてまいります。
 一方、森ヶ崎水再生センターの再構築時には、連絡管を活用し、芝浦水再生センターに下水を送る計画となっております。
 次に、連絡管の活用についてでございますが、森ヶ崎と芝浦水再生センター間を結ぶ連絡管は、京浜運河の地下約六十メートルの深さに内径六メートルのトンネルを延長約八キロメートルにわたり整備し、トンネル内に送水管などを敷設する計画としております。来年度から本格的な工事着手を予定しており、完成までに十年程度の期間を見込んでおります。
 完成後は、水再生センターの再構築時の活用に加え、ご指摘のとおり、震災時などに一方の水再生センターが被災した場合に、下水をもう一方に送って処理することで、バックアップ機能を確保し、危機管理対応を強化してまいります。
 今後とも、水再生センターなどの再構築やネットワーク化の推進により、将来にわたって安定的に下水道機能を確保してまいります。

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