平成二十四年東京都議会会議録第十六号

〇議長(中村明彦君) 質問を続行いたします。
 七十五番尾崎大介君。
   〔七十五番尾崎大介君登壇〕

〇七十五番(尾崎大介君) まず、福祉サービスにおける地域差について伺います。
 住民にとって、みずから住む自治体区域が違うだけで、受ける福祉サービスの量や質に地域格差がある、しかも大きな落差があるとなると、市民としての扱いとしては不公平である、フェアでないという声をよく聞きます。
 そもそも福祉サービスにおける地域格差が生じる要因については、少子高齢化や産業構造、就業構造、給与水準等の違いや地域特性へ配慮した福祉サービスに対する各自治体の創意工夫の違いもあるものと思われますが、確かに地域の特殊性を背景とした福祉ニーズ等については、そのようなこともあると考えられます。
 しかし、社会福祉サービスの基本としては、どこに住んでいても、いつでも利用できる体制を整えるべきものではないかと思います。
 一方、東京都における福祉サービスの基本方針ともいえる福祉・健康都市東京ビジョンにおいては、三つの視点として、創意工夫の競い合い、ともに支え合う、指導監督等を示しておりますが、この観点から見ても、東京都としてはこのような地域差の是正に対する支援策も必要と思われます。
 社会福祉法第六条では、福祉サービスの提供体制の確保等に関する国及び地方公共団体の責務、これは、「国及び地方公共団体は、社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して、社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施が図られるよう、福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策、福祉サービスの適切な利用の推進に関する施策その他の必要な各般の措置を講じなければならない。」をうたっておりますが、まず、社会福祉法第六条における地方公共団体の責務とは何かについて、東京都としての見解をお答え願いたいと思います。
 また、この観点から、福祉サービスの地域間格差を縮小する方策は何かをお伺いいたします。
 社会福祉法第百八条では、都道府県地域福祉支援計画、これの策定の努力義務をうたっておりますが、平成二十四年現在の厚生労働省の報告によると、この計画を未策定の都道府県は四十七団体中七団体であり、残念ながら、この七団体の中に東京も入っております。
 そこで、東京都が福祉・健康都市東京ビジョンを定めている一方で、地域福祉支援計画をいまだに策定しない理由をお伺いいたします。
 また、この都道府県地域福祉支援計画策定に関しては、計画に盛り込むべき事項として、市町村の地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項が挙げられておりますが、ビジョンであれ、地域福祉推進計画であれ、東京都が区市町村の施策展開をしっかりと支援し、公的制度としての福祉サービスの都民への均衡ある提供が望まれると思うことを意見として、次の質問に移ります。
 次に、家庭的保育事業についてお伺いをいたします。
 東京都の待機児童数は、本年四月一日現在、七千二百五十七人と、二年連続して減少したとはいえ、依然高い水準で推移をしております。中でもゼロ歳から二歳児の待機児童が全体の九割を占めており、東京における待機児童問題は、ゼロ歳から二歳の問題ともいえます。
 このような状況を背景とし、東京都独自の制度である認証保育所は、定員の五割をこの待機児童の多いゼロ歳から二歳児で設定することを求めており、東京都が認可保育所だけでは対応できない大都市のニーズに対応した都独自の基準を設定、企業の経営感覚の発揮により、多様化する保育ニーズにこたえることのできる新しいスタイルの保育所として認証保育所をつくり、公的保育の持つ課題への現実的な対応策として取り組んでいることは基本的に評価をできるものであります。
 このように、認証保育所は待機児童対策としても有用でありますが、一方、家庭的保育事業という制度も古くからあり、いわゆる保育ママと呼ばれている制度ですが、これについても、ゼロ歳から二歳の子どもを保育ママ資格を持った方の自宅等で預かる制度であり、東京都における待機児童対策としてはなくてはならないものとなっております。
 この保育ママ制度の歴史は古く、昭和三十五年、制度の運営要綱を制定し、それに基づき、東京都が国をしり目に、全国に先駆けて実施をしてまいりました。そして昭和四十四年からは、東京都下区市町村の補助事業として位置づけ、制度の推進を図ってきた歴史があります。
 また最近では、複数の家庭的保育者が共同で保育を行う事業、これはグループ保育事業となりますけれども、これも開始したと聞いております。
 このように、東京都が国に先んじて保育事業を先進的に行ってきたことは評価されるべきものと考えます。
 この家庭的保育事業については、民主党が三党合意のもと成立をさせた子ども・子育て関連三法による新たな制度で、地域型保育給付にも位置づけをされております。
 また、複数の家庭的保育者、これは保育ママでありますけれども、この保育ママが共同で保育を行う事業、いわゆるグループ保育事業についても、地域型保育給付に位置づけられた定員十九人以下の小規模保育となる見込みであります。
 現在の特徴としては、待機児童が都市部に集中しており、また、待機児童の大半が満三歳未満の児童であるということです。
 これらを踏まえて、新たな制度においては、こうした家庭的保育や小規模保育などの量的補充も推進をしていくこととなると思います。また、保育ママは、親御さんだけではなく、保育ママ資格者本人にとっても、子育ての喜び、働く喜び、そして、ひいては地域のコミュニティの実現を得るものと思います。
 そこで、東京都として、この家庭的保育事業の推進に向け、どのように取り組んでいくのか、所見をお伺いいたしたいと思います。
 次に、空き家対策についてお伺いします。
 本年六月に国土交通省住宅局が発表した調査によれば、我が国においては、昭和四十八年以降、すべての都道府県で総住宅数が総世帯数を上回るようになり、平成二十年には総住宅数が総世帯数を七百六十一万戸上回り、そのうち空き家は七百五十七万戸、これは全住宅ストック数に対する空き家率は一三・一%となっております。
 このような住宅数と世帯数のミスマッチは、少子高齢化や世帯数の伸び率が低下をしていることなどが背景として考えられますが、その結果として、空き家数、空き家率がともに増大をしております。
 五年ごとに実施されている、平成二十年住宅・土地統計調査によると、東京都では平成二十年において、全国の空き家の約一〇%の約七十五万戸の空き家があると報告をされております。また、このうち活用可能と想定される腐朽、破損なしの賃貸用の空き家数は四十・七万戸であります。
 空き家対策については、地域の過疎化から、地方においては自治体が移住を希望する都市住民に対してあっせん紹介する、いわゆる空き家バンクなどがありますけれども、都市部における空き家対策については、家賃の高さなどにより、効果ある取り組みは余り実施されていないのが実情であります。
 しかし、空き家については、オーナーの意思や固定資産税など関連税制の課題なども目前の問題としてありますが、大所的に空き家の活用をとらえると、いろいろな可能性が考えられるのではないかと思われます。
 一つの例としては、財団法人世田谷トラストまちづくりという団体がありますが、この団体が行っている地域共生の家制度は、空き家を子育てサークルや介護関連の方々の交流などに開放した地域コミュニティの再生として活用した事業であります。このような取り組みを東京都としても体系的に行うことが必要と思われます。
 このような空き家対策は、実は商店街空き店舗や廃校利用などと根本的なところでは、地域コミュニティの喪失という同じ問題と課題を含んでいるといえるのではないかと考えます。
 このような観点からも、空き家対策は、俯瞰的に見れば、新しい地域コミュニティの再生拠点、あるいはシンボル拠点としての可能性も大きいといえます。
 このような状況を背景として、東京都では、国の民間住宅活用型住宅セーフティーネット整備推進事業を活用したモデル事業、東京都民間住宅活用モデル事業を今年度実施しておりますけれども、特に子育て世帯や高齢者世帯を対象とした都独自の共同居住、グループリビングといわれるものでありますけれども、この取り組みについては、一定評価ができるものであります。
 ちなみに私は、例えばシングルマザーなどに多く見られる児童虐待等については、議会でも特に、その実態について機会があるたびに訴えてまいりました。このようなシングルマザー世帯がグループで暮らすことができれば、結果として児童虐待も減っていくことになるのではないかと思われます。
 しかし一方で、本事業は、活用可能な空き家数約四十万戸に対して、事業枠が三千万円ということになっており、限度額百万円として、わずか三十戸分にしかならず、事業効果の観点から見れば、その効果には少々疑問が感じられます。
 そこでお伺いをいたしますが、本モデル事業のねらい、意図するところについて、どのように考えているのか、所見をお伺いいたします。
 また、このような空き家を、グループ保育、あるいはこの母子家庭共同住宅のようなものにも活用できる方策を考えることはできないのか、所見をお伺いいたします。
 最後に、民有林買い取り事業についてお伺いをいたします。
 私は議員になってから、多摩の森林を守るべき観点から、そうしたさまざまな関連質問、提案を続けてきておりますが、特に外資による日本全国の森林が買い占められつつある事実には非常に驚いたものであります。
 これに関して、二〇一〇年、東京都が推進をする民有林購入モデル事業について、この事業はいろいろ課題はあるものの、外資による森林買い占めに対抗する策としても有効と思われるとの観点からの質問を行いました。
 山林の購入は、市街地と違って境界がはっきりしていないことや傾斜がきついこと、面積も広大で測量作業に手間がかかることなどが課題と聞いておりますが、民有林購入モデル事業の契約締結に向けての具体的な課題をお伺いいたします。
 また、この質問の答弁において、石原前知事は、森林や水といった国土資源の保全については、国が速やかに対応すべきであると、現場を預かる都としては、森林に関する情報を十分に把握するとともに、関係各局に横ぐしを通して、しっかりとした連携を保って森林の保全に取り組み、次世代にこれを継承していきたいと答弁をしております。
 そこで伺いますが、多摩の森林の外資による売買について、その後の調査は行っているのか、また、知事答弁では、関係各局の横ぐしを通していくという答弁を行っていますが、具体的にどのような連携策をとっているのかお伺いをして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 尾崎大介議員の一般質問にお答え申し上げます。
 まず、社会福祉における地方自治体の責務についてでございますが、だれもが地域の中で、みずからサービスを選択し、利用しながら自立して生活できるよう、福祉サービスの基盤を整備し、住民の福祉ニーズに応じたサービスの充実を図っていくことが地方自治体の責務であると認識しております。
 具体的な福祉サービスの提供体制の拡充は、住民に最も身近な区市町村の役割であり、都は、広域自治体として、東京の福祉水準全体の向上を図るため、地域の実情に応じた区市町村のさまざまな取り組みを、包括補助制度等を活用し、支援をしているところでございます。
 また、認知症高齢者や知的障害者のグループホームを初めとした福祉サービス基盤の整備につきましても、都独自の補助制度により促進しているところでございます。
 次に、都道府県地域福祉支援計画についてでございますが、社会福祉法において、平成十二年六月、支援計画策定の規定が盛り込まれましたが、都はこれに先立ち、平成三年一月に東京都地域福祉推進計画を策定し、その後、福祉改革推進プランやTOKYO福祉改革STEP2などを経て、平成十八年二月には、福祉、保健、医療施策の基本方針となる、福祉・健康都市東京ビジョンを策定いたしました。
 また、分野別にも、高齢者保健福祉計画、障害者計画、障害福祉計画、次世代育成支援計画、保育計画、ひとり親家庭自立支援計画等を策定しております。
 ビジョンや各種計画の中には、地域福祉支援計画の中で定めることとされている区市町村への支援や民間団体との協働など、地域福祉に関する考え方を示していることから、現在、地域福祉支援計画は策定しておりません。
 最後に、家庭的保育事業についてでございますが、本事業は、自宅など家庭的な雰囲気のもと、少人数の乳幼児に対し、同一の保育者によるきめ細かな個別保育を提供するもので、本年四月現在、七百三十九人の方が約千九百人の乳幼児を保育しているところでございます。
 都は、その推進を図るため、一人の家庭的保育者による個人実施型に加えて、平成十三年度には、保育所から技術的な支援を受けながら実施する連携型を補助対象とし、平成二十二年度には、複数の家庭的保育者が相互支援を行いながら実施する共同実施型への補助事業を国に先駆け創設するなど、区市町村の取り組みを支援してまいりました。
 今後、実施予定の子ども、子育てに関する新たな制度におきましても、都と区市町村のこうした取り組みが生かされる仕組みとなるよう、国に対して働きかけてまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 空き家の活用に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、空き家活用モデル事業の目的についてでございますが、防災上の課題や少子高齢化に伴い多様化する都民の居住ニーズ等への対応のため、空き家を積極的に活用することは重要であると認識しております。
 今年度実施する空き家活用モデル事業は、木造住宅密集地域内の従前居住者の移転先や新しい住まい方である高齢者等の共同居住に活用することにより、空き家の利活用方策の可能性を検証するものでございます。
 今後、本モデル事業の結果なども踏まえ、空き家活用の促進策に取り組んでまいります。
 次に、空き家のグループ保育等への活用についてでございますが、本モデル事業は、住宅を他の用途に転用するのではなく、空き家の改修によりグループリビング用の住宅として活用するものでございますが、グループリビングの対象としては、高齢者世帯だけでなく、子育て世帯も想定しております。
 グループリビングの要件としては、世帯間のコミュニケーションが図れるよう、共同で利用するための居間、食堂等を有することとしており、こうした交流スペースを活用して、例えば子育て世帯であれば、子育てを互いに助け合いながら安心な暮らしを実現するなどの効果も期待できると考えております。
   〔水道局長増子敦君登壇〕

〇水道局長(増子敦君) 民有林購入事業における具体的な課題と取り組み状況についてでありますが、多摩川上流域の民有林では、長期にわたる林業不振の影響などにより、荒廃の進んだ人工民有林がふえております。
 このため、水道局では、平成二十二年度から水源地域を良好な状態で保全することを目的といたしまして、管理が十分にできず、所有者が手放す意向のある民有林を購入する事業を実施しております。
 購入に向けた課題といたしましては、第一に、山林所有者の名義が明治時代の登記のまま放置されているなど、相続登記されずに代がわりしていることが多く、相続にかかわる権利者の特定が難しいことが挙げられます。
 第二に、隣接する山林所有者も同様に相続登記されていないため、隣接所有者の特定が難しいこと、地形が険しいことなどから、境界確定に多くの時間が必要となっております。
 このため、水道局では、平成二十四年度から、相続に係る権利者の特定作業につきまして、山林所有者に具体的なアドバイスを行うなど積極的に支援を行うことといたしました。
 また、申込者の負担軽減のため、隣接所有者の特定作業につきましても、水道局が実施することといたしました。
 これまでの申込件数は合計十三件、面積にして約一千二百ヘクタールでございます。
 現在、これらの隣接所有者の特定作業や境界確定、測量作業、立木評価及び土地鑑定などを行うとともに、契約締結に向けた交渉を進めております。
   〔産業労働局長中西充君登壇〕

〇産業労働局長(中西充君) 外国資本による森林売買の調査等についてでございますが、都は、平成二十年六月から国の調査依頼に基づき、外資による森林買収の情報を収集するため、毎年一回、森林組合等の関係団体や市町村の協力を得て調査を行ってまいりました。
 さらに、平成二十三年度からは、実態をより迅速に把握するため、都独自に同様の調査を四半期ごとに行うことといたしました。
 一方で、本年四月には森林法が改正され、森林売買に関するすべての取引について市町村への届け出が必要となりました。このことから、今後はより正確に森林売買に関する情報を把握することが可能となったところです。
 なお、これまでの調査において、外資による森林売買の事例は確認されておりません。
 また、平成二十三年一月、関係各局において、東京都森林保全等情報連絡会を設置いたしまして、外資による森林買収に関する調査結果や他の自治体における取り組み状況など、情報の共有化に努めております。

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