平成二十四年東京都議会会議録第十六号

〇議長(中村明彦君) 百七番東村邦浩君。
   〔百七番東村邦浩君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇百七番(東村邦浩君) 十月二十五日、石原前知事は、突然知事を辞職する旨の記者会見を開き、十月三十一日に知事を辞職されました。記者会見を見ていて、「蒼穹の昴」でも描かれていた中国清朝末期の改革者、譚嗣同の仁がわからなくなるのは名のためであるという言葉を思い出しました。
 知事の任期半ばでの辞職は、都政に大きな混乱をもたらしたばかりでなく、首都直下地震に対する抜本的な防災対策や、知事が発案した新銀行東京の新たなステージなど、都政の重要課題についても道半ばのままとなりました。
 今定例会においても、知事不在のままで議会を開催しなければならないという前代未聞の事態を招きました。知事と議会は車の両輪といわれながら、このような事態になったことは残念でなりません。今回の地方自治法の改正などで、一年じゅう議会を開ける議会の通年化が可能となりました。これにより、従来、知事に議会の招集権があったものが、事実上、議会側に担保され、不測の事態にも議会主導で対応できることになります。現在、議会のあり方検討会で、この通年化を含めた議会改革の議論を真摯に行っていますが、我が党も積極的に取り組み、都民が納得できる形を示してまいりたいと思います。
 以下、都政の喫緊の課題について、教育長、技監並びに関係局長に質問いたします。
 初めに、被災地への支援について質問いたします。
 総務大臣も務めた前岩手県知事の増田寛也氏は、政府が二〇一二年を復興元年と銘打ったが、被災地に対する日本全体の風潮は忘却元年になってしまったと心配をされていました。
 被災地支援は、現地の復興の進みぐあいに応じて、時々刻々とその支援内容を変化させていく必要があります。我が党は、繰り返し被災三県を訪問し、現地関係者と意見交換を重ね、その都度、議会提案に生かしてまいりました。
 初めに、被災地応援ツアーについて質問いたします。
 我が党が東日本大震災の被災地を調査し、被災県の経済団体からの強い要望により実現した被災地応援ツアーは、本年度は原発事故の風評被害で観光客が激減した福島県を限定に、当初二万泊分が用意されました。この被災地応援ツアーは、予想を上回る反響があり、当初の二万泊分は夏休みを前に完売するという状況でありました。こうした状況を踏まえ、都がさらに二万泊分の追加予算を計上したことは、高く評価いたします。
 先日、都議会公明党を訪れた福島県の内堀副知事も、被災地応援ツアーについて、風評被害で苦しむ産業の背中を押していただいた、その効果ははっきりと県民の笑顔に見えますと心から感謝をされていました。福島県からの報告によると、本年度の観光客は震災前の七〇%で、被災地応援ツアーがなければもっとひどい状態であったとのことであります。
 いまだ風評被害に苦しむ福島県の観光産業をもう一押しするためにも、被災地応援ツアーを来年度も継続すべきであります。見解を求めます。
 その際、被災地応援ツアーについては、福島県で宿泊した後、二泊目を他の被災県で利用できるようにし、被災地全体での経済復興に寄与すべきであると要望いたします。
 豊かな自然が広がる被災三県では、東京の学校による教育旅行も活発に行われてきました。しかし、昨年の大震災や原発事故による風評被害の広がりに伴い、その多くがキャンセルされました。都立高校においては、平成二十四年度に入り、福島県への部活動等での宿泊施設を利用した教育旅行の件数はやや回復したものの、厳しい状況が続いています。
 都議会公明党は、被災地の応援とともに、防災教育を推進する観点から、東京の教員による被災地での視察研修を行うよう提案してまいりました。
 これを受け、都教育委員会は今年度、防災教育推進校の教員の被災地訪問や区市町村の指導主事による被災地での視察、研修を実施しました。また、宮城県への都の教員派遣をきっかけにして、都立三田高校と被災地の学校などとの間で、生徒同士の相互交流も生まれています。これらの取り組みは教員だけでなく、東京の生徒たちの防災意識の向上につながっています。
 都の教員による被災地訪問や被災地と都立高校の生徒たちの交流は、防災教育を推進していく上で大変重要であり、こうした取り組みを今後さらに進めていくべきでありますが、都教育委員会の見解を求めます。
 次に、被災地の子どもたちとのスポーツを通した被災地支援事業について質問いたします。
 都が我が党の提案を受け、これまでもスポーツを通じた被災地の子どもたちへの支援事業を実施してきたことは、震災により打ちひしがれた子どもたちの心に希望と活力を与えた事業であると高く評価いたします。
 その中でも、特に被災地から子どもたちを招待し、東京の子どもたちと野球やサッカーの試合、合同練習などを行ったスポーツ交流事業は、被災地の子どもたちだけでなく、受け入れた都内の子どもたちや保護者に感動を与えました。我が党も八王子市や東大和市、板橋区などで行われた交流事業に参加し、保護者からは、貴重な経験をさせてもらうことができたとの感謝の言葉や事業継続を望む声が届いています。
 一方、津波の恐怖で水が怖い、プールに入れないといっていた子どもたちが、トップアスリートと一緒に水に触れ合うことで恐怖心が薄らぎ、プールに入ることができるようになった、どんな心理療法にも勝る薬になったという声が届いています。このように、アスリートとの交流も子どもたちの心のケアに大きく貢献しています。
 スポーツを通じた被災地支援については、震災の記憶が薄れつつある今こそ、これを風化させることのないよう継続をし、さらに拡充していくべきと考えますが、これまでの成果と今後の取り組みについて都の見解を求めます。
 都はこれまで、都有施設のほか、都内の各事業者に協力を依頼して、被災地産品の産直市などを積極的に開催し、好評を博しております。しかし、被災地での農林水産物の収穫、生産体制が整うのは、おくれていた復興の取り組みがようやく形となるこれからであります。
 例えば、水産加工品の生産拠点でありました気仙沼市では、我が国有数の水産加工施設が津波で壊滅、その後も地盤沈下の対策を行おうとしない国のていたらくによって、今も加工場跡地は空地のままとなっております。
 一方、都内では、既に東京商工会議所などが会員企業に向けて、消費拡大への協力を繰り返すなど、既に精いっぱいの取り組みが行われています。被災地の期待にこたえるためには、我が国最大の消費地である東京の総力を結集した取り組みを展開しなければなりません。
 そこで、都は、今後被災地産品の消費拡大に向けた推進組織を立ち上げ、都民全体、都内の全企業と団体に協力を呼びかけ、創意工夫に富んだ粘り強い運動を展開すべきと考えます。見解を求めます。
 被災地産品の消費拡大に向けた都内での取り組みが効果的に被災地に伝わることは、エールを送ることになるほか、都民の被災地支援に対する意識が強くなります。
 そのためにも、まずは都内の外食産業、食品販売業の取り組みや職員食堂を有する官公庁、企業、団体の取り組みを調査し、都民や被災地の人々に向けてわかりやすく情報を発信すべきと考えます。見解を求めます。
 次に、東京の防災対策について質問いたします。
 まず、帰宅困難者対策についてであります。
 都は、来年四月の帰宅困難者対策条例の施行に向けて、先般、実施計画を取りまとめました。東日本大震災当日、三百五十万人の帰宅困難者が発生した事実を踏まえ、この大混乱の状況を二度と繰り返さないためには、何よりも一斉帰宅の抑制に実効性を持たせることが必要です。そのためには、都民一人一人が家族との安否確認を確実に行える体制づくりが最も重要であります。
 国や通信事業者に実効ある対策を講じるよう求めるとともに、都としても安否確認の体制づくりに具体的に取り組むべきであります。見解を求めます。
 加えて、首都直下地震が発生すると、東京では昨年の東日本大震災をはるかに上回る大混乱が生じることは明らかであり、行き場のない帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設をできるだけ多く確保することが極めて重要であります。
 我が党はこれまで、昨年の第二回定例会や本年の予算委員会において、東日本大震災の状況をつぶさに検証し、本条例制定への具体的な提言を行ってまいりました。とりわけ一時滞在施設の拡充や民間企業への備蓄支援など、現場からの視点で都の取り組みを強く求めてまいりました。
 実施計画では、一時滞在施設について、都立施設を率先して活用するとしておりますが、実際には、今年度末までに確保できるのは七万人分であり、残りは民間施設に頼らざるを得ない状況であります。多くの民間事業者の協力を得られるように、都は特段の支援策を講じるべきであります。見解を求めます。
 次に、都市型集中豪雨等への防災対策についてであります。
 都内において、近年、一時間に一〇〇ミリを超えるような局地的集中豪雨による浸水被害が発生しております。
 都議会公明党は、神田川などの水害が顕著となった一九七六年に、東京の総合的な治水対策として、調節のための大規模貯水槽の設置を提案、さらに一九七九年、地下貯水方式を具体的に提案し、神田川・環状七号線地下調節池の整備へとつながった歴史があります。
 今回の専門家による検討委員会の最終報告書では、既設の環七と現在事業中である白子川の地下を連結する広域の調節機能が、今後の河川整備を進める上で効果的な方策であると示しております。
 都は、最終報告書を受けて、目標とすべき整備水準や効果的な対策を示した新たな整備方針を策定しました。
 今後、広域調節池による調節機能の流域間相互融通を早期に推進することなどにより、局地的集中豪雨や台風に対して、治水安全度の向上を図るべきと考えます。見解を求めます。
 次に、中小企業支援について質問いたします。
 リーマンショック、東日本大震災、そして今日まで長引くデフレ状況の中、都内中小企業は年を越せるかどうかという瀬戸際に立たされています。ただ、ことしの場合は、先の見通しさえつかなかった昨年の年末に比べ、年明けにはこれまでにない受注が見込まれているという企業が少なくありません。
 しかし、これまでの不況の中で、苦渋の選択をした返済条件の変更により、新たな借り入れができず、年末の資金繰りに困っているとの声が上がっています。あと一歩のところで立ち直れる中小企業を倒産させるようなことがあってはなりません。
 こうした中小企業の現状を踏まえ、これまで以上に踏み込んだ年末の資金繰り対策を実施すべきであります。見解を求めます。
 我が国では、一九八〇年代末から開業率が廃業率を下回る状態が続き、諸外国に比べ創業活動が低い水準にあります。国際競争力の地盤沈下に歯どめをかけるためにも、新たな産業の担い手である創業者への支援を積極的に展開していくことが重要であります。
 創業はまた、不況のときほどふえる傾向にあり、現在のような経済状況のもとでは、創業支援は中小企業支援策として有効な手だてであると考えます。
 大阪府の例ですが、製造業を中心とした創業促進のための法人事業税を十分の九軽減する優遇措置を平成十三年度から続けています。この大きな減税分の使い道としては、設備投資、販路開拓、研究開発と回答した企業が多く、設立後、資金が足りない新しい企業にとって、事業展開を進める上で的確な支援になっていることがうかがえました。
 東京には、高度な技術を有するものづくり企業の集積を初め多彩な産業の基盤があり、日本経済を支えています。しかし、長引く円高や需要低迷の影響を受け、廃業や海外移転などにより、一社、また一社と貴重なプレーヤーが都内から失われています。こうした状況を打開するためには、都として税制面からインセンティブを与える思い切った創業支援策を展開していくことが必要と考えます。
 一方、厳しい不況の中で企業が生き延びていくためには、成長が見込まれる分野への積極的な事業転換の道を切り開いていく必要もあります。事業転換には設備投資が不可欠であり、そのためには投資経費などの負担増が伴います。
 大阪府では、企業の設備投資の促進を図る目的で、法人府民税法人税割を十分の九軽減する施策が実施されていました。現行税制の中にあっても、独自の施策展開が可能であることを改めて認識いたしました。
 都としても、事業転換も対象にした設備投資促進のための税制面からの優遇策も必要と考えます。あわせて見解を求めます。
 また、創業者の負担を軽減するためには、空室が目立つ都内の民間ビルなどを活用したインキュベーション施設の設置促進が効果的であります。とりわけ若年の創業者にとっては、接客を可能とする受付人員や商談や打ち合わせに要する会議室スペースの確保が大きな課題であり、経費上も負担となっています。
 都は、今後、効率的な創業に必要な人的ネットワークの構築に向けた支援に力点を置くとしていますが、こうした課題の解決に向け、柔軟かつ積極的な運用を図るべきと考えます。見解を求めます。
 次に、若年者雇用について質問いたします。
 都内の雇用情勢は依然として厳しく、ことし四月から六月の完全失業率は四・八%となっており、その中で十五歳から二十四歳までは九・一%、二十五歳から三十四歳までも五・四%と、若年者ほど厳しい状況となっています。こうした中、東京しごとセンターにおいて、三十四歳以下のヤング、三十歳から五十四歳までのミドル、五十五歳以上のシニアに分けて就労支援を行っています。
 特に二十九歳以下のヤングについては、国のジョブカフェ事業により、キャリアカウンセリングやセミナー、職業体験を行っていますが、職業紹介は国のハローワークを活用しており、二〇一一年度の就職率は五五%にとどまっています。これに対して、三十歳から五十四歳までのミドルは、職業紹介を民間の就職支援会社がみずからの求人情報を活用しているため、就職率は六九・四%と七割近い数字になっています。
 総合的な雇用対策を行うためには、東京都が国にかわって職業紹介権を持つことが望まれますが、改革までの間、二十九歳以下のヤングの職業紹介についても、ハローワークだけでなく、民間の就職支援会社を活用すべきと考えますが、都の見解を求めます。
 我が党は、かねてより若者を職業訓練に導くことの重要性を主張し、高校生に職業能力開発センターの魅力を積極的にPRすることを求めてきました。
 都は現在、十四カ所の職業能力開発センターで、ものづくりを中心に約六千名を対象に職業訓練を実施し、訓練修了生の就職率は七〇%以上を確保、一〇〇%近い科目もあります。
 その中で、加工技術などは、募集の三倍を超える応募が殺到しながら、業界として安い外国製品の大量輸入に苦しみ、求人枠を容易に拡大できず、募集定員も広げられないという状況にあります。
 都内のものづくり中小企業の技術水準は高く、大手先端企業の製品開発を支えるだけでなく、大量生産には見られないブランド性を秘めています。そうした意味で、ニーズの高い産業界の受け入れの拡充を図るなど、一層の取り組みを強化すべきであります。都の見解を求めます。
 次に、高齢者、障害者への支援策について質問します。
 まず、高齢者向け医療と介護のサービスつき住宅についてであります。
 急速な高齢化により、二〇一五年には都民の四人に一人が六十五歳以上の高齢者となる見込みであり、ひとり暮らしの高齢者や介護が必要となる高齢者の大幅な増加が見込まれています。
 平成二十二年度に都が実施した調査によれば、特別養護老人ホームの新たな入所希望者数は約四万三千人であるのに対し、平成二十四年十月一日現在の定員数は三万八千四百七十六人であります。したがって、高齢者が地域で安心して暮らしていくためには、多様な住宅の整備が必要となります。
 こうした状況を踏まえ、都はモデル事業として、医療と介護のサービスつき高齢者向けの住宅の整備を進めており、大都市東京の実情に即した住宅として高く評価されております。特別養護老人ホームなどの現在の整備状況をかんがみると、モデル事業の検証を前倒ししてでも、こうした高齢者住宅の整備を早期に実施すべきであります。見解を求めます。
 次に、高齢者等の転倒事故の防止についてであります。
 厚生労働省が発表している人口動態統計の調査結果によると、転倒、転落事故で亡くなる人の数は、平成二十二年には七千五百人を超え、交通事故の死者数を上回るという驚くべき数字が報告されています。そのうち、平らなところでの転倒事故の死亡者数は、高齢者を中心に年間四千人を超えており、看過できない状況にあります。
 また、近年では、転倒事故でけがをした人が店舗等の施設所有者や管理者に対して損害賠償を請求するなどの訴訟がふえています。危険防止措置をとらなかったことが過失認定されるなど、転倒防止対策が急がれています。国は本年七月、バリアフリーのガイドラインを見直し、新たに危険項目として床の滑りを追加しました。
 そこで、都においても事業者等にこのガイドラインの周知を早急に図るとともに、福祉のまちづくり条例の施設整備マニュアルを改定すべきであります。見解を求めます。
 特に都立建築物については、多くの都民が利用することから、過去にあった転倒、転落防止事故などの事例を踏まえ、だれもが安全で快適に利用できるよう、施設整備を進めていくべきであります。見解を求めます。
 次に、障害者用駐車場の適正利用についてであります。
 近年、公共施設や高速道路のパーキングエリア、またはショッピングセンター、コンビニなどの一般商業施設などに障害者用駐車スペースの整備が進んでいます。しかし、せっかく設置された障害者用駐車スペースに健常者が駐車しているケースも多く、また難病や内部障害者、妊産婦やけが人など、一時的に歩行が困難な方が専用スペースに駐車した際、その必要性が理解されず、トラブルになるケースなども発生しており、その場所を必要とする方が利用できないとの声が多く寄せられています。
 都議会公明党は、来年開催される全国障害者スポーツ大会に向けて、都内のバリアフリーを一層進める観点から、パーキングパーミット制度の導入など、繰り返し障害者用駐車区画の適正利用の推進を求めてきました。都は、都立施設を含む実態調査の結果を踏まえた実行策に早期に取り組むべきであります。見解を求めます。
 次に、私学支援について質問いたします。
 東京では、公立学校とともに、多くの私立学校が独自の建学精神に基づいてすぐれた教育を実施し、公教育を担っています。その教育力を存分に発揮していくために支援するのが私学助成であり、都政の重要施策の一つであります。
 教育は国家百年の大計です。私学助成は経常経費補助を初め、継続的かつ着実に拡充していくべきと考えます。都の見解を求めます。
 子どもを私学に通わせる人の多くは、個性豊かな教育方針や校風で学校を選んでいます。どのような教育をするのか、どの学校で学ばせるのか、その選択肢を広げることが大切であります。
 こうした視点から、父母負担の公私間格差をなくしていくために、現在、授業料等の負担軽減補助については高校生が対象ですが、中学生にも補助をすることが求められています。あわせて入学金に対する軽減補助の実施も要望しておきます。
 次いで、留学生の支援についてであります。
 経済のグローバル化の進展に伴って、外国人留学生を採用しようという日本企業がふえ、二〇一三年卒の採用で、採用するまたは検討中としている上場企業が全体の六割に達するという調査結果があります。
 その一方で、日本の学生は内向き志向といわれ、留学する学生が減ってきています。これでは国際社会で活躍できる人材が育たず、日本が国際社会の中で取り残されていくことになりかねません。
 都では、かわいい子には旅をさせろと都立高校生の留学を支援していますが、私学ではそれぞれの教育理念に基づき、独自の留学制度を持っています。その取り組みを生かせるような留学支援を行うべきであります。都の見解を求めます。
 次に、いじめ対策について質問いたします。
 子どもたちの中でいじめが原因の不登校やひきこもり、中途退学、非行、薬物乱用などの課題が頻発しております。保護者も子育てに悩みうつ病を併発したり、児童虐待などにつながっているケースがあり、対策が急がれます。
 現在、都は、都議会公明党の提案を受け、すべての中学校と都立高校百校にスクールカウンセラーを配置していますが、すべての小学校や残りの都立高校にも配置すべきであります。専門家への相談をきっかけに解決への糸口を見つけ、一人一人を大切にする社会の構築を図るべきと考えます。見解を求めます。
 文科省が先日発表したいじめの認知件数は全国で十四万件を超え、これは今年度の上半期だけで昨年度の二倍を超えています。そもそもいじめの定義や認知について、現状では学校間でさえ必ずしも一律ではなく、学校現場や保護者の対応だけでいじめの解決に取り組むことは、もはや限界を超えているとも指摘されています。
 そこで、いじめ問題の解決に向けた、仮称いじめ防止条例を制定し、広く社会全体で発見と解決及び防止に取り組んでいく必要があると思います。そのための有識者会議を早急に立ち上げていくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、エネルギーを有効利用する東京の都市づくりについて質問いたします。
 環境負荷の少ない都市づくりを推進するためには、大規模な開発計画をつくる早い段階から、未利用エネルギー等の導入検討を求め、エネルギーを有効に利用していくことが重要です。
 我が党は、先般、東京スカイツリーとその周辺施設の冷暖房を一手に担う地域冷暖房施設を視察してまいりました。この施設では、基礎ぐいに熱交換チューブを取りつけ、地中熱を活用することで、エネルギー効率を高めるシステムを導入していました。また、約七千トンの冷水や温水を蓄える貯水槽によって効率的なエネルギー利用が可能となっており、しかも非常時には消防、生活用水としても提供できるようになっていました。
 そこで、こうした地中熱などの未利用エネルギーの導入拡大やエネルギーエリアマネジメントを進めていくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、家庭におけるスマートな節電についてであります。
 エネルギー供給とともに、需要の抑制が重要であり、電力消費の三割を占める家庭における省エネ施策を進めなければなりません。
 東京電力によると、この冬の電力需給見通しは七・五%以上の予備率を確保できるとしていますが、必ずしも安定した供給とはいえません。現に、今月二十六日に予想外の寒さに電力需要が見通しより上昇し、東京電力は百万キロワットの融通を他の電力四社へ緊急要請いたしました。
 我が党は、需要の抑制にはホームエネルギーマネジメントシステム、いわゆるHEMSを活用した電力の最適制御が有効であると提案してきました。今後、家庭における賢い節電をさらにスマートに進めるためには、HEMSと蓄電池、電気自動車の蓄電機能を活用するビークル・ツー・ホームシステムなど、複数の機器の連携による電力の最適制御を行うことが有効と考えます。都の今後の普及促進に向けた取り組みについて見解を求めます。
 最後に、多摩振興について質問いたします。
 都は、平成十三年に多摩の将来像二〇〇一を策定し、二〇一五年の多摩のあるべき姿と取り組みの方向性を明らかにしました。
 その取り組みの結果として、インフラ整備の分野では、圏央道の着実な延伸や南北主要道路五路線の整備などの交通ネットワークの整備などが進展、また産業サポートスクエア・TAMAの開設を初め、地域の中小企業への支援体制の充実が図られてきました。ハード面から多摩振興に向けた取り組みが着実に進展してきたところであります。
 多摩の将来像二〇〇一の策定から十年が経過した今日、都は人口減少社会の到来や高齢化の急速な進展など、多摩を取り巻く大きな状況変化等を直視し、有識者や民間企業等へのヒアリング等を行い、新たなビジョンの策定を進めております。
 一方で、多摩地域においては、ひとり暮らし高齢者の増加や買い物弱者の発生などの課題も顕著となっており、地域の実態を踏まえたソフト面の施策の方向性も新たなビジョンで明示していくことが必要であります。
 各局とも十分に連携しつつ、生活者の視点を踏まえたソフト施策の方向性を明確に打ち出していく必要があると考えますが、見解を求めます。
 また、ハード面のさらなる振興策として重要なのが産業交流拠点の整備についてであります。
 東京都の平成二十二年工業統計調査報告によると、多摩地域の市部の工業製品出荷額は約四兆三千億円で、区部の三兆五千億円を大きく上回っています。こうした状況を踏まえ、都は、計画の中において、多摩地域の産業集積を生かした施策を打ち出し、多摩地域のイノベーションを活性化するため、多摩産業支援拠点を昭島市に整備するとともに、広域的な産業交流の拠点となる施設を八王子市に整備することとしました。
 企業や事業者を地域づくりの重要な担い手として位置づける新たな多摩ビジョンを策定する今こそ、一日も早く多摩地域の産業交流拠点を整備していく必要があると考えます。
 都は昨年度、拠点の整備に関する調査を実施しましたが、その調査結果と今後の取り組みについて都の見解を求め、私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 東村邦浩議員の代表質問にお答えをいたします。
 三点のご質問ですが、まず防災教育の推進についてでございます。
 今年度、防災教育推進校十二校四十三名の教員と、区市町村教育委員会の指導主事等六十三名が被災地を訪問し、被害のつめ跡を実際に見たり、現地の教員等から直接話を聞いたりして、被災地の状況や児童生徒の果たした役割などを学び、各学校の防災教育に生かしております。
 また、現地の高校との交流を行った都立高校は三校あり、これらの学校の生徒は、被災した生徒から体験談を聞き、災害の恐ろしさを実感するとともに、人への思いやりや社会に貢献することの意義を改めて理解し、自分たちにできる被災地支援について考えを深めたところです。
 今後も、被災地訪問や生徒同士の交流を継続するとともに、その成果や事例等を防災教育発表会等で紹介し、防災教育のより一層の充実を図ってまいります。
 次に、専門家を活用した相談体制の充実についてでございますが、都教育委員会では、専門性の高い臨床心理士をスクールカウンセラーとして学校に配置することで、教員とは異なる立場からの助言等を積極的に活用し、児童生徒の問題行動の未然防止や解決に努めております。
 今後、国の動向も注視しながら、スクールカウンセラーを配置し、児童生徒の不安や悩みへのカウンセリングや子育てに関する保護者への助言、援助など、学校における教育相談を充実させてまいります。
 また、福祉や医療等との連携を一層推進するなど、学校内外の関係者が一体となっていじめ問題の解決へ取り組むよう徹底をしてまいります。
 次に、いじめ対策についてでありますが、いじめはどの学校でも、どの学級でも起こるものであるという認識のもと、考えられるあらゆる手だてを講じていくことが重要であります。
 都教育委員会では、児童生徒の健全育成緊急対策本部を立ち上げるとともに、弁護士、精神科医、臨床心理士、相談機関職員を含めた学識経験者等をメンバーとした専門家会議を設置したところでございます。
 ここでは学校での取り組みはもとより、学校と家庭、地域、関係機関との連携を含め、いじめの解消に有効と思われる対策について幅広く検討しております。
 今後は、専門家会議の検討結果に基づき、総合的に対策を実施することにより、社会全体でいじめの防止に向けた取り組みが進むよう努めてまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 河川の治水安全度の向上についてでございますが、昨今、これまでの整備水準を超える降雨が頻発していることから、降雨に対して、より高い目標を設定し、河川整備を一層効率的、効果的に進めていくことが重要でございます。
 このため、整備水準を年超過確率二十分の一のレベルまで対応できるようにすべきとした専門家による検討委員会の提言を受け、都は今月初めに新たな整備方針を策定したところでございます。
 この方針の中で、これまでの時間五〇ミリから、区部と多摩の降雨特性の違いを踏まえ、区部では時間最大七五ミリ、多摩では時間最大六五ミリに引き上げることとしており、これに対応した具体の対策を講ずることにより、狩野川台風規模の豪雨でも河川からの洪水を防止することが可能となるものでございます。
 効果的な対策例といたしましては、複数の地下調節池をトンネルで連結し、流域を越えて相互に活用する広域調節池の整備などを示しておりまして、こうした対策の実現により、時間一〇〇ミリの局地的かつ短時間の豪雨にも効果を発揮いたします。
 今後とも、都民の生命、財産を守る高度な防災都市東京の実現を目指して、中小河川の整備に全力で取り組んでまいります。
   〔産業労働局長中西充君登壇〕

〇産業労働局長(中西充君) 七点のご質問についてお答えいたします。
 まず、被災地応援ツアーについてでございますが、都は今年度、観光振興により福島県の復興を後押しするため、緊急的な対策といたしまして、宿泊四万泊分、日帰り一万五千人分について、その費用の一部を助成しております。
 今後も、福島県への送客につながります被災地応援ツアーについて、さまざまな観点から検討してまいります。
 次に、年末対策についてでございます。
 中小企業を取り巻く厳しい経営環境が続く中、資金需要がふえる年末に向けて、中小企業の資金繰り支援をさらに強化することは重要でございます。このため、十二月から短期の運転資金に対応いたしまして、原則三営業日以内で保証審査を行う、つなぎ資金の上限額引き上げを実施いたします。
 また、年末特別相談窓口を十二月二十五日から二十八日の間、開設いたしますとともに、電話相談を夜間まで延長して実施し、事業者の資金繰りの相談にきめ細かく対応いたします。
 さらに、制度融資を取り扱うすべての金融機関等に対し、事業者の実情やニーズを踏まえた資金供給への協力を速やかに要請することにより、中小企業の円滑な利用促進に努めてまいります。
 次に、創業の支援と事業転換の促進についてでございます。
 産業振興を図る上で事業の新たな担い手でございます創業者の支援や成長分野への事業転換の促進は重要でございます。都は、創業を支援するため、セミナーや相談、投資機関等との交流の場の提供、インキュベーション施設の運営等を行うとともに、制度融資による資金面からのサポートも行っております。
 成長分野への事業転換等を図る中小企業に対しましては、新製品、新技術の開発を補助するなどの支援を行っております。また、中小企業が新たな事業活動に取り組むために策定いたします経営革新計画を都が承認した場合、政府系金融機関から有利な条件で融資が受けられるなど、さまざまな支援策の活用が可能となります。
 お話の税制面からの優遇策については、貴重なご提言として受けとめたいと考えます。引き続き創業支援や事業転換の促進など、効果的な中小企業の支援に取り組んでまいります。
 次に、インキュベーション施設についてでございます。
 創業間もない企業が成長の見込める分野において事業の発展を確実なものとしていくためには、インキュベーション施設を充実させることが必要でございます。
 このため、都では、現在七カ所のインキュベーション施設を整備し、事業スペースを提供いたしますとともに、各施設に専門人材等を配置し、販路開拓や資金調達などについてきめ細かな経営サポートを実施しています。また、区市町村が行いますインキュベーション施設の整備に対する補助を行い、これらの取り組みを通じ、創業の支援の充実を図ってまいりました。
 都内には、これらの施設に加え、民間が運営する施設など多様な広がりを見せておりますことから、それぞれの実態を踏まえながら、今後とも効果的な支援を展開してまいります。
 次に、若年者向けの就業支援についてでございます。
 民間職業紹介事業者のきめ細かいサービス提供のノウハウを効果的に活用することによって、若年者の雇用就業対策の成果を高めることは重要であると考えております。東京しごとセンターのヤングコーナーでは、併設ハローワークにおける職業紹介に加え、昨年度からは、民間事業者が開拓をした都内中小企業の求人情報を情報端末等により提供いたしますとともに、若年求職者の個々のニーズを踏まえた求人情報の解説を行うなど、就職活動の支援の充実を図ってまいりました。
 今後とも、民間事業者をより効果的に活用しながら、若年者の就業支援をきめ細かく展開してまいります。
 次に、若者の職業訓練への誘導についてでございます。
 職業訓練を通じた若者のものづくり現場への早期就職を実現するためには、在学中からものづくりへの関心を高め、職業訓練への理解を深める必要がございます。そのため、都は学校と連携し、電気工事や溶接などを学ぶ高校生向け実習講座を、今年度は二百四十名規模に拡大して実施し、ものづくりへの興味を喚起するとともに、実践的職業訓練の体験の場を提供しています。また、進路選択における生徒の理解を促進するため、PR用のDVDの配布や体験入校、見学会を随時開催しております。さらに、推薦入校制度を設けることで、目的意識が明確な卒業予定者の優先的な入校を促す措置も講じております。
 このように、学校との連携を密接に図ることに加え、修了生を受け入れる各種業界の協力を得ながら、若者を職業訓練に結びつける取り組みを推進してまいります。
 最後に、産業交流拠点の整備についてでございます。
 多摩地域の中小企業が企業間の交流や大学、研究機関などとの産学公連携を図るとともに、技術や製品を広く紹介する取り組みは重要でございます。
 こうした取り組みを支援するため、都は、八王子市に産業交流拠点を整備することとしております。昨年度は、建物配置プランの検討や整備手法の比較に必要なデータの取りまとめを行いました。今年度は、これまでの検討をさらに深め、拠点の効果的な利活用の方法や具体的な整備内容などについて調査検討を行っています。
 今後は、効率的な管理運営のあり方などについて調査を進めながら、地元市などからの提案も踏まえ、拠点の整備に向けた検討を行ってまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) スポーツを通じた被災地支援についてでございます。
 スポーツ交流事業は、昨年度の三回から今年度は倍増の六回開催し、種目、参加人数とも拡大して実施しました。このほかに国際大会への観戦招待事業では、今年度の二つの大会に、都民とともに被災地の親子を招待いたしました。パンパシフィックテニスでは、観戦だけでなく、シャラポワ選手と被災地の子どもたちとのラリーなどの交流も行いました。
 さらに、アスリート派遣事業は、被災地にトップアスリートを派遣し、子どもたちにスポーツ指導などを行う事業で、今年度はこれまでに五回開催し、五千八百八十四人が参加しております。トップアスリートとの交流が復興へ向けた力として、子どもたちの心に深く刻まれたと聞いております。
 これら一連の事業は、いまだ復興途上にある被災地の子どもたちに大きな感動と勇気を与えるとともに、その経験がかけがえのない心の財産になったと認識しております。
 今後も引き続き、こうしたスポーツの力を最大限発揮しながら、被災地支援の充実に向け取り組んでまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 五点のご質問にお答えをいたします。
 まず、被災地産品の消費拡大に向けた展開についてでございますが、一大消費地であります東京における被災地産品の消費拡大は、被災地の本格的な産業復興の後押しとなるものでございます。
 このため、都は現在、民間団体や区市町村とも連携して、原発事故に伴う風評被害に今なお苦しむ福島の早期復興を図るため、ふくしま東京キャンペーンを展開いたしております。
 具体的には、JRや東京メトロ、都営地下鉄など鉄道事業者と協力し、集客力の高い都心の駅構内において産直市を開催するとともに、都内での催事における被災地産品の通信販売の周知など、幅広い視点に立った取り組みを継続的に行っております。
 また、これまでも、都庁食堂で被災地の食材を使用したメニューを提供するほか、都民に向けた被災地産品の販売、PRのため、被災地復興応援フェスタや市場まつりなどの開催を通じ、全庁を挙げて被災地産品の消費拡大に寄与してまいりました。
 被災地の支援に当たりましては、お話のように息の長い取り組みが必要であります。今後とも、被災三県と連携し、それぞれの意向を十分に踏まえ、民間団体、区市町村とも手を携え、創意工夫しながら、都内における被災地産品の消費拡大への機運醸成を図ってまいります。
 次いで、都内における取り組みの情報発信についてでございますが、都はこれまでも、被災地産品の産直市など、東京都が関与したさまざまな被災地支援策について、テレビ、ラジオ、メールマガジン、ホームページなどの各種媒体や、駅張りのポスター、トレインチャンネル、中づり広告など、さまざまな方法で都民の目に届くよう努めてまいりました。
 被災地の方々に対しても、現地事務所を通じ、都で行うさまざまな支援の取り組みについて、現地報道機関に対し情報提供をするとともに、県政番組での紹介を働きかけるなど、被災地の復興の後押しとなるよう、積極的に情報を発信してきております。
 お話のように、被災地産品のより一層の消費拡大を図っていくには、このようなさまざまな取り組みを、都民や被災地の方々にわかりやすく知らせていくことは大変大切でございます。
 引き続き、さまざまな主体による支援の取り組みが、より多くの都民や被災地の方々に伝わるよう、積極的な情報発信に努めてまいります。
 次いで、災害時の安否確認手段の確保についてでございます。
 都は、総務省や電気通信事業者が参加する帰宅困難者等対策協議会において、安否確認手段の確保に向けた対策強化について検討を進めてまいりました。
 協議会での議論も踏まえ、都は、災害時に通信規制の影響を受けにくい特設公衆電話を、都立施設を活用した一時滞在施設に整備してまいります。また、通信事業者においても、停電時に備えた発電機の整備、広範囲に電波を送受信する基地局の設置などのハード対策や、通信の迅速化に向けた音声データ化送信サービスの開始といったソフト対策に取り組んでいくこととしております。
 こうした官民あわせてのさまざまな取り組みにより、災害時の安否確認手段の確保を図ってまいります。
 次いで、一時滞在施設確保のための支援策についてでございます。
 一時滞在施設の確保につきましては、民間事業者の協力が不可欠であることから、帰宅困難者対策実施計画にさまざまな支援策を盛り込んだところでございます。
 具体的には、国と連携した備蓄品の購入費補助、二十三区内の防災備蓄倉庫の固定資産税等の減免、都市開発諸制度を活用した一時滞在施設の整備誘導など、多面的な支援を行ってまいります。加えて、民間事業者から要望の強い、発災時の損害賠償責任が一時滞在施設の管理者に及ばない制度の創設を国に要請してまいります。
 こうした民間事業者への支援策を講ずることにより、区市町村とも連携して一時滞在施設の確保を図ってまいります。
 最後に、新たな多摩のビジョンについてでございます。
 これまでも都は、多摩の将来像二〇〇一などに基づき、多摩の交通ネットワークの整備や医療体制の充実など、地域の生活環境の向上に向けた取り組みを進めてまいりました。本ビジョンは、多摩の目指すべき姿や方向性を示すものであり、今後の人口減少や高齢化のさらなる進展など、多摩地域が直面する深刻な課題を勘案すると、ご指摘のように、暮らしやすいまちづくりや地域の安全・安心の確保などといった、地域住民の生活を守るという視点が一層重要になると考えております。
 現在、ビジョン策定に向け、市町村との意見交換に加え、有識者や民間企業等へのヒアリングを行っており、それらの意見を参考にしながら、各局とも連携し、さまざまな角度から検討を進めてまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、サービスつき高齢者向け住宅のモデル事業についてでございますが、都は平成二十一年度の事業開始以降、社会福祉法人と医療法人が連携した事業運営や区市が所有する公有地を活用した整備など、それぞれ特色のある住まいの整備を進めており、これまでに九件選定し、そのうち六件が開設しております。
 開設している住宅につきましては、入居者の要介護度やサービスの提供状況などの情報を定期的に収集しており、今後、地域包括ケアの考え方に立って、モデル事業の詳細な検証を行い、医療と介護が効果的に提供される高齢者向け住まいについて、東京の地域特性を踏まえた整備促進策を検討してまいります。
 次に、高齢者等の転倒事故防止についてでございますが、都はこれまで、すべての人が安全かつ円滑に建築物を利用できるよう、東京都福祉のまちづくり条例に基づき、建築物の敷地内の通路や廊下、トイレ等について、床の表面は粗面とし、または滑りにくい材料で仕上げること等の整備基準を定め、施設整備マニュアルにより事業者等に周知してまいりました。
 お話のように、本年七月に国はバリアフリーのガイドラインを改定し、建築物における床の滑りについて、新たに具体的な推奨値を示しており、都としても、鉄道事業者、百貨店等の事業者団体で構成する連絡協議会等を通じ、このガイドラインの内容を今年度改めて周知するとともに、施設整備マニュアルについても来年度の早期に改定を行う予定でございます。
 最後に、障害者用駐車区画の適正利用についてでございますが、都が実施したアンケート調査では、施設管理者から、適正利用に効果的な対策として、目立つ色による区画の塗装、利用対象者を明示した看板の設置、誘導員、警備員の配置などが挙げられております。また、障害者の方からは、障害者用駐車区画の対象者を識別する方策や、当該区画とは別の優先区画の設置を求める意見がございました。
 都は、こうした調査結果を踏まえ、効果的な対策事例等を盛り込んだ施設管理者向けのガイドラインの策定等について検討してまいります。
 あわせて、都立施設の駐車場において必要な対策を率先して実施するよう、関係部局に働きかけるとともに、全国障害者スポーツ大会の場なども活用し、広く都民に駐車区画の適正利用に関する普及啓発を行ってまいります。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

〇財務局長(中井敬三君) 都立建築物の整備に係る高齢者等の転倒事故の防止についてでありますが、都はこれまでも、だれもが安全かつ円滑に建築物を利用できるよう、東京都福祉のまちづくり条例による施設整備マニュアルに基づき、都立建築物の設計、工事を行ってきております。
 一般に、建築物での事故事例では、床材の種類や使用条件、天候などの要因が見られることから、こうした状況を参照するとともに、今般改定された国のガイドライン等を踏まえつつ、床の滑りに係る仕様を満たす材料を選定するなど、都立建築物の設計、工事を適切に進め、より一層の安全性の確保に努めてまいります。
   〔生活文化局長小林清君登壇〕

〇生活文化局長(小林清君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、私学の振興についてでありますが、都内の高等学校の生徒の約六割、幼稚園に至っては園児の九割以上が通う私立学校は、その建学の精神に基づき、個性的で特色ある教育を展開し、東京の公教育に極めて大きな役割を果たしております。
 このため、都は、私立学校の教育条件の維持向上、保護者負担の軽減、学校経営の健全化を目的とする経常費補助を基幹的補助と位置づけ、充実を図ってまいりました。
 少子化の影響などにより、私立学校の経営環境が厳しさを増す中、今後とも私立学校が都民の期待にこたえる質の高い教育を確保していくため、学校運営に対する支援の柱となる経常費補助を中心に、耐震化に対する助成など幅広い施策を総合的に活用し、引き続き私立学校の振興に努めてまいります。
 次に、私立高校生の留学支援についてでありますが、都内の私立高校では、約八割の学校で独自の教育理念に基づいて海外留学を実施しており、北米地域を中心とした英語圏に加え、アジアやヨーロッパへ多くの生徒を派遣し、成果を上げております。
 都としては、こうした各学校が主催する留学に参加する生徒への経済的な支援が重要であると認識しておりまして、より効果が高いとされるおおむね三カ月以上の留学に対して、期間に応じた補助制度を設けることで、長期留学への取り組みを促進することになると考えております。
 今後、世界で活躍するグローバル人材の育成を図るため、学校現場の意見などを踏まえ、私立高校生の海外留学に対する効果的な支援制度の構築に努めてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、地域におけるエネルギーの有効利用についてでございますが、都は面的なエネルギーの有効利用を促していくため、延べ床面積が五万平方メートルを超える大規模な開発につきまして、計画を策定する早い段階から、未利用エネルギーや地域冷暖房の導入検討などを義務づける制度を平成二十二年から施行いたしました。
 本年三月末までの計画の提出件数は四十五件でございまして、東京駅周辺の事務所ビル等の開発計画におきまして、地中熱やビル排熱などの未利用エネルギーを導入した事例も見られてきております。
 今後も、本制度を活用し、地域におけるエネルギーの有効な利用を一層進めてまいります。
 次に、家庭でのスマートな節電の実現についてでございますが、いわゆるHEMSは、太陽光の発電量や家庭の使用電力の見える化に加えまして、個々の家庭の生活パターンに応じた家電等の効率的な運用を図る機器であり、系統電力への負荷を軽減することが可能となります。
 さらには、HEMSと太陽光発電、蓄電池や電気自動車の蓄電機能を活用するビークル・ツー・ホームシステム等との連携により、効果を高めることが期待できます。
 こうしたHEMSを活用した電力の最適制御は、家庭におけるエネルギーマネジメント実現への有効な手段でありますので、普及促進に向けた取り組みを検討してまいります。

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