平成二十四年東京都議会会議録第十三号

〇議長(中村明彦君) 七十二番西崎光子さん。
   〔七十二番西崎光子君登壇〕

〇七十二番(西崎光子君) ロンドン・オリンピックとパラリンピックが終わり、知事は銀座のパレードが実現し、メダリストへの表彰も相次いで、オリンピック招致への支持率も上がったと大変満足しておられるようです。
 ところで、オリンピック憲章では、スポーツによる一切の差別の解消、相互理解、平和共存をうたっており、ロンドンでは、参加したすべての国と地域から女性選手が出場し、女性の活躍が目立ちました。また、義足の陸上選手の活躍も注目を集めました。
 その反面、政治的アピールをした選手がメダル授与の場から外されたり、人種差別的な発言をした選手が追放されたりしたことで、改めてオリンピックの意義を再認識しました。
 そこで、二〇二〇年オリンピック大会の東京招致に向けて、オリンピックの持つ基本理念について知事のお考えを改めて伺います。
 申請ファイルでは、オリンピックは二〇二〇年七月二十四日から八月九日、パラリンピックでは八月二十五日から九月六日となっていますが、ことし、皆が実感した高温多湿の日本の夏は、出場選手や観客には酷な時期であり、ただでさえ電力不足が懸念される時期でもあります。
 前回東京オリンピックは十月開催で、秋晴れの、いかにも日本らしさを満喫できる時期だったことが強く印象に残っています。
 この時期の開催でなくてはならない理由と対策について伺います。
 東京都教育委員会は、大津市の事件を受け、突然、夏休み直前の都内の公立学校を対象にいじめの緊急調査を行いました。自治体との調整もないままの唐突な調査でしたが、いじめや、いじめの疑いのある事例が一万一千五百七件も報告されました。
 東京都教育相談センターが行っているいじめ相談も、七月、八月の相談件数は、昨年と比べ二倍以上あったということです。定期的に実態調査を継続している自治体もある中で、改めて都が子どもたちの実態を適切に把握し、迅速に対応することが重要と考えますが、見解を伺います。
 学校側は、これまでは自分のクラス、自分の学校にはいじめはないと、いじめの存在そのものを認めませんでした。しかし、いじめはどこにでもあるという観点に立ち、あなたの命は絶対守る、見放さないという真剣な態度で学校全体が取り組んでいくことが重要です。
 先生が子どもと向き合う時間を確保し、養護教諭、スクールカウンセラーと日常的に連携しながら、いじめられる子どもはもちろん、いじめる側の子どもにも寄り添った対策を緊急かつ丁寧に行わなくてはなりません。
 いじめの早期発見、早期対応に取り組むことこそ評価されるべきであり、学年会議等で問題を取り上げ、話し合い、解決に積極的に取り組む仕組みを構築する必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 生活者ネットワークは、都立公園の災害時の役割については、多数の避難者が集まることを想定して整備を進めていくべきと考え、防災公園の見学や防災機能の実態調査を行っています。十五区市の延べ三十一都立公園の聞き取り調査では、十自治体では現状把握がされていません。災害時の応急給水体制などについて、多摩地域では、関係自治体と都の協議会を持ち、連絡体制をとっています。
 都立公園でも、日常の管理は指定管理者が行う中で、いざというときのため、日ごろから情報の共有や連絡体制づくりが必要であると考えます。
 そこで、都や指定管理者と各区市町村、さらにはNPO団体との連携や、都立公園が複数の自治体にまたがる場合の情報共有など、どのように考えているのか伺います。
 東京都は、障害者雇用について、民間企業への就労や都庁でのチャレンジ雇用などを進めていますが、厳しい経済状況の中で、民間企業全体では法定雇用率の一・八%をいまだ達成していません。来年四月に法定雇用率が引き上げられることから、障害者が地域でごく普通に暮らす共生社会に向けた取り組みを進めていく必要があります。都内企業のうち、法定雇用率を達成している企業の割合は三割程度にとどまっています。
 都内企業の障害者雇用を進めるために、都としてどのように取り組んでいくのか伺います。
 この夏、視察した滋賀県の社会的事業所では、障害のある人もない人も対等で、一緒に働く形態の職場に対して、行政が運営経費の一部を補助するほかに、職員の名刺など印刷物や公園の清掃など、仕事の提供も行っています。
 障害者の労働権という観点から最低賃金を保障し、賃金も十万から十五万円を得ることができ、障害者の就労の促進及び社会的、経済的自立支援をしています。これは、一般就労と福祉的就労の中間的な場といえます。
 一方、現在、東京都における福祉的就労で障害者が受け取る工賃は低く、経済的に自立できるような状況にはなっていません。
 そこで、今後どのように障害者の工賃アップに向けて取り組んでいくのか伺います。
 障害者雇用の場の確保に向けては、都庁みずからが取り組む必要があります。例えばグリーン購入法に基づく調達方針には、環境配慮の物品等の使用を優先させる方向が示されています。
 都では、昨年六月改正した技術力評価型総合評価方式試行要綱に、障害者雇用の実績点を入れましたが、雇用状況が厳しい時代だからこそ、政策入札の一つとして、契約における障害者雇用の取り組みを重視していくことが、社会的な要請としてますます求められています。都としての見解を伺います。
 現在、都庁の清掃事業の一部をビルメンテナンス協会が行っており、知的障害者が働いています。調査委託とはいえ、知的障害者が働く場を都がつくることは大切なことです。ことし六月、ハート購入法が制定され、来年四月施行されます。今後、東京都も調達方針の策定に向けて関係局と連携し、障害者の自立支援に取り組むことを要望します。
 ことし七月に始まった固定価格買い取り制度によって、再生可能エネルギーの拡大が期待されています。実際、メガソーラーが全国的な広がりを見せていますが、同時に、市民がお金を出し合って太陽光発電を導入する市民共同発電所など、市民が電気を消費するだけではなく、みずから電気をつくり出す活動も活発になってきています。集合住宅の屋根を使う市民共同発電所の動きもあるところです。
 東京都は、これまでも積極的に太陽エネルギーの活用に取り組んできました。固定価格買い取り制度を活用した建物の屋根貸し事業など、新たなビジネスモデルが今後のさらなる普及につながると考えますが、見解を伺います。
 質問の最後に伺います。
 梅ヶ丘駅から代々木上原駅間では、現在、連続立体交差事業が進められています。鉄道地下化に伴い生じる線路跡地の利用について検討が進められてきましたが、東日本大震災の経験を踏まえ、世田谷区では、地域防災などの視点から追加、修正を行い公表しました。
 しかし、先月の新聞報道によれば、震災前に三者で合意した内容を区が一方的に見直し、公表したことに東京都が抗議したと書かれてありました。震災以降、市民の防災に対する関心は高く、防災のまちづくりの観点で小田急線の上部利用について見直してみるのは当然と考えます。
 そこで、小田急線の地下化に伴う地上部利用の取り組みについて、都の見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 西崎光子議員の一般質問にお答えいたします。
 東京招致に向けたオリンピックの基本理念についてでありますが、オリンピックは世界最大のスポーツの祭典でありまして、世界二百以上の国と地域の人々が一堂に集まる平和の祭典でもあります。
 肉体の限界に挑戦し、競い合うアスリートの姿は、見る者にも感動を与え、一人の人間としての輝きを見せてくれます。
 こうした熱い戦いの姿を目の当たりにすることで、国民、とりわけ次代を担う若者たちが自信と誇りを取り戻し、みずからの可能性に挑戦する精神を呼び覚ましてもらいたいなと思っています。
 加えて、世界じゅうから集まった人々と交流することで、何物にもかえがたい心の財産を得ることにもなります。
 この国の未来を切り開くため、オリンピックを東京で開催することが不可欠であると思っております。国、経済界、スポーツ界が一体となって、総力を挙げて招致を獲得したいものだと思っています。
 他の質問については、教育長及び技監、関係局長から答弁します。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) いじめに関する二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、子どもの実態把握と迅速な対応についてでありますが、都教育委員会は本年七月、学校がいじめと認知したものに加え、いじめの疑いがある事例までも含めて把握する独自の緊急調査を実施いたしました。現在、各学校においては、把握した約一万一千件すべてに全力を挙げて対応しているところでございます。
 この調査は、いじめにかかわる情報を多面的、多角的に収集するとともに、一件一件に確実に対応することの重要性をすべての教員に徹底することをねらいとしております。
 今後とも、児童生徒のわずかな変化も見逃さないよう、いじめの実態把握に努め、把握したすべての案件に適切に対応するよう徹底してまいります。
 次に、いじめ解決へ向けた仕組みの構築についてでありますが、いじめ問題に迅速に対応するためには、個々の教員が問題を抱え込むことなく学校全体で情報を共有化し、組織的に対応することが重要であります。
 都教育委員会はこれまで、各学校が学年会や生活指導部会等の校内組織を活用し、いじめなど児童生徒の問題行動に関する情報を教員間で共有し、一体となって対応するよう指導をしてまいりました。
 すべての教員が、どの学校でも、どの学級でもいじめは起こるという危機意識を常に持ち、それぞれが把握したいじめに関する情報を学校全体で共有し、早期発見、早期対応に取り組むよう徹底してまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、区市町村などとの連携や情報共有についてでございますが、避難場所である都立公園において、日ごろから地元区市などと情報を共有し、連携を図ることは、発災時に迅速な対応をする上で重要でございます。
 都は、防災関連施設の整備に当たりまして、地元区市や地域住民の方々に整備内容について情報提供を行うとともに、地域と連携して防災訓練を実施しております。
 例えば、舎人公園では区や地元町会、警察、消防などと合同で大規模な防災訓練を、葛西臨海公園では水上バスによる帰宅困難者の輸送訓練を、小金井公園においては地元四市と合同で総合防災訓練などを実施しております。
 震災時の避難場所の運営は、東京都地域防災計画において基礎的自治体の責任で行うものと位置づけられておりますが、公園管理者としては、地元区市などと連携して、ハード、ソフト両面から都立公園における防災機能の強化に努めており、今後とも、引き続き高度防災都市の構築に取り組んでまいります。
 次に、小田急線の地下化に伴う地上部利用の取り組みについてでございますが、小田急小田原線代々木上原駅から梅ヶ丘駅間の連続立体交差事業及び複々線化事業につきましては、平成十七年度に、都、世田谷区、渋谷区及び小田急電鉄で検討会を設置して協議を重ね、防災性にも配慮した地上部利用計画案のたたき台を示して住民意見を聞き、関係者で調整して、昨年三月に世田谷区が計画案を公表しました。
 しかし、本年七月に、財源や費用負担について関係者間の合意形成のない修正案を世田谷区が独自に策定し、公表する意向を示しました。
 このため、東京都は、土地所有者である小田急電鉄など関係者間の調整を得ずして公表することは、相互の信頼関係を損なうのみならず、地元にも混乱を招くことから、公表を見合わせるよう要請しましたが、区は公表に踏み切りました。
 これを受け、都は直ちに検討会を招集し、在来線の地下化など工事工程に影響を与えないこと、費用負担を含めた実現可能な計画を立案すること、適切な手続に従って協議を進めることなどについて世田谷区など関係者と調整を進め、改めて認識の共有化を図ったところでございます。
 今後とも、昨年三月に公表した計画案を踏まえ、必要な検討を加えた上、小田急線の地下化に伴う地上部が有効に利用されるよう積極的に取り組んでまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) オリンピックの開催期間等についてでございます。
 二〇二〇年の夏季オリンピック競技大会の開催期間は、国際オリンピック委員会の定めによりまして、同年の七月十五日から八月三十一日までのいずれかと定められております。
 過去に、国内ではこの時期に、一九九一年に東京、二〇〇七年に大阪で世界陸上競技選手権を開催するなど、国際競技大会の開催経験を有しており、気候については問題ないものと考えております。
 電力供給についても、大会開催時に競技会場などで必要となる電気量は、供給力に対して極めて小さいと考えております。
 さらに、省エネルギー型施設としての整備を推進するなどの対策によりまして、影響を限りなく少なくするように努めてまいります。
   〔産業労働局長中西充君登壇〕

〇産業労働局長(中西充君) 都内企業の障害者雇用の促進についてでございますが、都はこれまでも、民間企業に対し、普及啓発を図るためハンドブックを作成、配布し、セミナー等を開催してまいりました。
 また、職場体験や合同説明会の開催等を通じて、障害者と企業とのマッチングに向けた支援を実施しています。
 加えて、昨年度からは、障害者を雇用した経験のない民間中小企業を対象として、採用前の環境整備から採用後の定着まで一貫して支援するモデル事業を開始したところです。
 こうしたさまざまな施策を通じて、障害者雇用をさらに推進してまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 福祉施設における工賃アップについてでありますが、都は、平成二十一年度に東京都工賃アップ推進プロジェクトを策定し、生産性の向上に取り組む福祉施設の設備整備に対する補助を行うとともに、販路拡大のために共同受注等を進める区市町村の取り組みを包括補助を通じて支援してまいりました。
 本年六月には東京都工賃向上計画を改めて策定し、自主製品販売や軽作業等、業務の特性に応じたきめ細かな取り組み手法に関する業態別研修を実施するなど、福祉施設の経営努力や創意工夫を促す事業を展開しているところでございます。
 今後とも、区市町村と連携しながらこうした取り組みを進め、福祉施設の工賃アップを支援してまいります。
   〔財務局長中井敬三君登壇〕

〇財務局長(中井敬三君) 契約における障害者雇用の取り組みについてでありますが、現在、都においては、障害者の雇用に積極的な企業について、工事契約においては技術力評価型総合評価方式や技術実績評価型総合評価方式での実績点として評価するとともに、物品買い入れ等の契約において優先指名のための選定要素の一つとして評価しているところであります。
 今後とも、契約の原則である公正性、競争性の確保を基本にしつつ、適切に対応してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 太陽光発電の普及拡大についてでございますが、都は、固定価格買い取り制度の導入によりまして再生可能エネルギー分野への新規参入が期待される事業者を後押しするため、太陽光発電の屋根貸しビジネスにつきまして、昨日もご答弁いたしましたが、発電事業者と建物所有者のマッチングの場を提供する新たな取り組みを展開してまいります。

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