平成二十四年東京都議会会議録第十三号

〇議長(中村明彦君) 十六番斉藤やすひろ君。
   〔十六番斉藤やすひろ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇十六番(斉藤やすひろ君) 初めに、自転車政策について質問します。
 自転車は、本来だれもが気軽に移動に利用できる車両であり、都民生活に不可欠な交通手段です。同時に、環境負荷の軽減、交通渋滞の緩和、健康増進、観光振興の観点からも利用促進を図るべきと考えます。
 我が国では、ママチャリと称される自転車が普及しております。また、都内においては、近年、ロードレーサーという自動車並みの長距離走行に適した自転車で通勤するツーキニストと呼ばれる方々もふえています。
 一方で、近年、交差点内を中心に自転車と歩行者の事故が顕在化し、都内全体の交通事故が減少する中で、自転車関連の事故がふえています。被害に遭っているのは、高齢者や子ども、障害がある方々です。
 私は、平成二十三年の第一回定例会予算特別委員会以来、自転車の安全利用を徹底し、歩行者の安全を守るために、一貫して東京都自転車条例の制定を提案してまいりました。都は、我が党の提案を受け、平成二十三年六月に自転車総合検討委員会を設置し、さらに本年五月には、学識者や民間事業者、自転車利用者を含めた東京都自転車対策懇談会が設置され、先日、石原知事あてに提言が手交されました。昨日の我が党の代表質問に対して、都は、この提言を受けて、条例制定の意思を明確にしたことを高く評価いたします。条例制定を急ぐべきです。
 そもそも自転車事故増加の原因は、第一には、利用者のマナーの欠如、交通ルールへの無関心があり、悪質なルール違反運転に対する取り締まりの強化や教育マニュアルの作成は重要だと思います。
 しかし、一方で、自転車を歩行者と混同させてきた走行空間のあり方にも問題があると考えます。自転車走行空間の整備形態には、自転車道、自転車レーンのほか、自転車歩行車道において、自転車と歩行者のエリアを色や構造物で分離する二タイプを加えた四タイプがあります。
 都道においては、歩道を広くとって自転車の走行空間を歩道上に確保するタイプがふえておりますけれども、このタイプは自転車と歩行者が混在しやすいために、交差点付近などでの自転車事故が懸念されます。
 他方、歩行者の安全確保を第一に考慮すれば、自転車を完全に歩行者と自動車から分離する、いわゆる自転車道が一番安全なのですが、道路幅員が限られている中、新たに自転車道の空間を生み出す必要があり、都心部で自転車道を整備することは困難です。
 これらに比較して、車道に自転車専用の車線を整備する自転車レーンは、自転車と自動車それぞれがルールを守り合うことで、車道を柔軟にシェアし合うことができます。
 そこで、今後、都道における自転車の走行空間の確保に当たっては、自転車レーンの有効性を認識して整備を進めるべきと考えます。
 都の見解を求めます。
 次に、生物多様性地域戦略について質問します。
 都は、本年五月、生物多様性地域戦略の性格を持つ緑施策の新展開を公表しております。海の森や都市公園の整備、街路樹の倍増、校庭の芝生化など、緑の量を確保する取り組みに加え、生物多様性の保全など、緑の質を重視した新たな緑施策の方向性を明示しています。
 東京に暮らす私たちは、衣食住のすべてにわたり生物多様性の恩恵を享受しておりますが、首都東京が、将来にわたり生物多様性の恩恵を受け続けられる都市であるためには、まず、都民、企業、NPO、行政の各主体が、身近な地域の生物多様性を支える緑の保全や創出に取り組むことが重要です。
 ことし、区制施行八十周年を迎える地元目黒区では、記念事業として、みんなで選ぶめぐろのいきもの80選を実施しており、区民に、未来に伝えていきたい、戻ってきてほしい生き物を募集しています。その結果を目黒区生物多様性地域戦略に活用することになっています。
 また、NPO法人菅刈ネット21が委託管理している区立菅刈公園には、武蔵野の貴重な自然が残り、カワセミやオオタカなど多くの野鳥も集まり、ビオトープには蛍のえさとなるカワニナもいます。こうした都市の貴重な自然は、多くの区民や子どもたちに親しまれております。
 このように、生物多様性に配慮した都市づくりを進める上で、住民に最も身近な区などの基礎的自治体が果たす役割は大きいと思います。
 そこで、都は、今後、緑施策の新展開で示した方向性の具体化に当たり、都心の区などとの連携や情報交換を強化するための新しい仕組みを構築すべきです。都の見解を伺います。
 都民が身近に生物多様性を実感できる貴重な場所として水族館があります。水族館は、生命の大切さを伝え、自然環境を守る教育の場としての役割を担っています。
 過日訪問いたしました都立葛西臨海水族園では、オリジナルの教育活用ガイドブックを作成し、子どもたちが魚などの生息環境への理解を深め、命の大切さを学び、豊かな心をはぐくむ教育普及活動を実施しておりました。
 また、メダカやカエル、ハゼなど、東京で身近にいた水生生物を学校へ持参して出張事業を実施するほか、多くの都民に野生生物保全への理解を深めてもらうために、地域のお祭りや催事にも飼育生物を持参し、移動水族館を実施しています。移動水族館を本格的に行っている水族館としては、沖縄の美ら海水族館が有名です。
 障害や病気などで水族館や海に出かけることが困難な方々に対して、専用車両を用いた移動水族館を行っており、この活動は水族館のPRにもなっています。
 生き物には、人々をいやす効果があります。長期間病院に入院することを余儀なくされたり、福祉施設に入所していたりして水族館に来ることが困難なため、生き物に接する機会が少ない子どもたちのためにも、ぜひ沖縄美ら海水族館のような専用車両を活用した移動水族館を行うべきと考えます。
 そこで、都は、このような点を踏まえ、葛西臨海水族園に都立水族館ならではの移動水族館を本格的に導入すべきです。都の見解を求めます。
 防災、減災対策について伺います。
 さきの東日本大震災から、はや一年半が経過しました。私たちの住む日本は、古くから多くの大震災に見舞われてきました。それは、長い歴史の中で、日本人の文化や社会の中に有形無形の記憶を刻み込んできたと思います。未曾有の大震災を経験した今、そうしたものをもう一度思い出し、将来を見据えた防災対策、減災対策に生かしていく必要があるのではないでしょうか。知事の率直なご感想をお伺いいたします。
 今月一日に、都と目黒区合同の総合防災訓練が実施されました。
 駒沢オリンピック公園では、自衛隊、警察、消防が連携した公助の救出救護訓練が大々的に行われた一方で、西小山駅周辺では、東京屈指の木造密集地域における住民共助訓練として、目黒区や品川区の方々が救出救護や初期消火訓練に参加しておりました。
 今回参加した地域の町会の皆さんからは、大規模な防災訓練で大変によかった、初期消火のバケツリレーは、戦時中空襲による火災の消火経験があるので、若い方にやり方を教えてあげたいなどの声が上がっておりました。
 木密地域での初めての総合防災訓練としては非常に注目されましたが、住民共助訓練では、消防団とともに、自分たちのまちは自分たちで守るという住民の熱意と気概が強く感じられ大変に感銘を受けました。
 こうした防災訓練などを契機とした住民意識の高まりを逃すことなく、木密地域対策に結びつけることが重要です。
 そこで、木密地域不燃化十年プロジェクトの不燃化特区の拡大を図るため、住民との双方向のコミュニケーションをとる機会として、これまで都が実施してきた地域密着集会を東京消防庁などと連携させ、充実を図るべきと考えます。都の見解を求めます。
 今回の訓練で、私は、水道局の仮設給水栓の活用を体験させていただきました。
 消火栓にスタンドパイプを差し込み、工具を使わずに、あっという間に組み立てられた仮設給水栓からは、おいしい東京水を取水することができました。
 実際に消火栓を活用した応急給水を実施するためには、都の職員の現場派遣には限界があります。確かに、資器材を確保し、実施には訓練が必要となります。住民が主体となって活用できれば、必ず災害時には役立ちますが、資器材の管理や訓練を実施できる体制などの課題もあり、確実に実施できる区市町と都が連携を図る必要があると考えます。
 そこで、災害時の対応として、まずは住民にとって身近な小中学校などの避難所で活用すべきです。
 本来、避難所は区市町の所管ではありますが、都としても、消火栓を活用した応急給水への支援をするべきと考えますが、都の見解を求めます。
 さきの総合防災訓練には、地域住民の代表の一つとして、品川区の東京防災隣組に認定された町会も参加しておられました。都は、地域で意欲的な防災活動を展開している団体を東京防災隣組として認定し、広く社会に発信していくとしています。
 そこで、都は、九月一日の訓練に見られるような東京防災隣組の取り組みを、ぜひ防災活動の普及啓発の教材に取り入れて、地域防災の手本としていくべきと考えます。都の見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 斉藤やすひろ議員の一般質問にお答えいたします。
 日本人の中にある災害の記憶と将来を見据えた災害対策についてでありますが、未曾有の大震災によって、国民は、我々の国土がいかに危うい構造の上にあるかを改めて思い知らされました。今回の経験を経るまでもなく、文献その他の知識によっても、日本が世界最大の火山脈の上にあることはもう自明のことであります。それについての危機感を欠いた我が国の政府や電力会社などは、幾たびもの大地震に見舞われてきた我が国の地勢学的条件を強くしんしゃくせずにきました。
 ある地質学者が、清少納言の父親の、千年前の貞観年間につくられた歌を読んで、千年前に仙台にすごい大きな津波が来たということを歴史的に知りまして、この現代に、わずか数年前でありますけれども、仙台の奥地を調査しまして、今回以上に大きな波が奥地まで訪れたということを地質学的に証明して、政府や東電に建言したそうでありますが、そういった一顧も顧みられることなしに、今回の悲劇になったわけであります。
 一方、今回の震災をこうむった三陸地方では、今までの歴史的な経験を踏まえて、てんでんこという言葉があるそうです。これは、地震が来たら、家族のことさえ気にせずに、てんでんばらばらに、まず自分の命を守るために、一人でとにかくすぐ避難しろと、一家全滅、共倒れになることを防げという意味のいい伝えがあるそうでありますけれども、昔からこうしたいい伝えに従って、実は多くの命が助かってもきたわけであります。
 しかし、多くの日本人は、みずからのDNAに刻み込まれてきた過去の大災害の記憶に対する真摯な心を見失っていたのではないかという気がいたします。
 コンクリートから人へなる、非常に耳ざわりのいい言葉が躍りまして、スーパー堤防や八ッ場ダムといった必要な事業が中止に追い込まれそうになったことも、その証左であると思います。私たちは、真摯に反省しなければならないと思いますね。将来への視座を持って、インフラの整備をしっかりと進めながら、助け合いの精神など、かつて日本人の多くが持っていたよい部分を呼び起こして、将来また必ず来るであろう震災に備えていくことが肝要だと思います。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁します。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、自転車レーンの整備についてでございますが、自転車は、都市内の有効な交通手段の一つであり、歩行者、自転車、自動車、それぞれの安全・安心を確保しながら、自転車走行空間の整備を進めることが重要でございます。
 このうち、自転車レーンは、限られた車道幅員の中で、歩行者などと分離された自転車走行空間を確保できる有効な整備手法でございます。
 都は、沿道店舗の荷さばきやパーキングメーターなどの施設の対応、違法路上駐車の排除など、関係者間の合意形成を図りながら、停車帯などを活用して、渋谷区内の旧玉川水道道路や千葉街道などで整備を進めてまいりました。
 今後とも、交通管理者と連携を図りながら、地域の実情を踏まえ、自転車レーンなど、だれもが安全で安心して利用できる自転車走行空間を積極的に整備してまいります。
 次に、葛西臨海水族園への移動水族館の導入についてでございますが、都はこれまで、学校の授業との連携や地域の要請に対応し、水族園の教育、レクリエーションの機能を十全に発揮させ、園外で広くPRするため、小型の水槽などを用いて小学校などで生き物を観察できる移動水族館を行ってまいりました。
 こうした取り組みに加え、病院に入院している子どもたちや、さまざまな理由により水族園へ来られない方々が、生き物との触れ合いを通じて、命のとうとさや生きる喜びを体感できるようにすることも、都立水族園の役割として重要であると認識しております。
 都としても、移動水族館について、沖縄美ら海水族館やふくしま海洋科学館アクアマリンふくしまの取り組みを参考に、より多くの方々へ生き物や自然のすばらしさと重要性を伝え、その理解を深めていくため、対象とする地域や訪問する施設、実施する方法など、幅広く検討してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 生物多様性の保全に向けた区市町村との連携についてでございますが、緑施策の新展開では、都市で活動するすべての主体の行動様式を生物多様性に配慮したものに転換していくことを、今後の方針の一つとして提起いたしました。
 こうした展開を進めていく上で、例えば小中学校にビオトープを設置し、子どもたちが生き物に触れる場を確保するなど、地域に暮らす人々が生物多様性の重要性を実感できる取り組みは、住民に身近な区市町村においてこそ、きめ細かな対応が可能でございます。
 このため、都はこれまでも、地域と連携した環境政策推進のための区市町村補助制度を活用し、生物多様性の保全に向けた計画の策定や、これらの計画に基づいて行う希少な動植物の保全などに取り組む区市町村を支援してまいりました。
 今後とも、この取り組みを着実に進めるとともに、区市町村の緑施策や生物多様性を担当する部署との意見交換の場を設置するなど、地域の自然環境保全活動に携わるNPOなどに最も近い区市町村との連携を強化し、地域の取り組みのすそ野をより一層広げてまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 木密地域不燃化十年プロジェクトにおける地域密着型集会の充実についてでございますが、本年八月、都は、先行実施地区を公表いたしましたが、これに先立ち、都はこれまで、九地区で地元区と連携して地域密着型集会を開催し、地域住民の生の声を聞くとともに、阪神・淡路大震災の教訓を伝えるなどの取り組みを行い、区が先行実施地区へ応募する契機ともなってまいりました。
 今後とも、東京消防庁など関係機関との連携を深め、地域密着型集会を充実させ、区や地域住民がより主体的に木密地域の改善策を考えるよう促し、不燃化特区の拡大につなげてまいります。
   〔水道局長増子敦君登壇〕

〇水道局長(増子敦君) 消火栓を活用した応急給水への支援についてでありますが、応急給水は、主に給水所などの応急給水拠点において、区市町と連携し実施することとなっております。消火栓を活用した応急給水は、これまでの応急給水拠点より数も多く、補完的な活用ができると考えております。
 応急給水拠点より身近な小中学校などの避難所において、消火栓による応急給水が実施できれば、震災時における水の確保が容易となります。
 今後は、この方式を拡大していくために、スタンドパイプなどの資器材を水道局が調達し、避難所を所管する区市町に管理していただく方向で協議を進めてまいります。また、区市町や自治会、町会などと連携強化を図り、避難所での応急給水訓練を実施してまいります。将来的には、自治会、町会などが主体となって取り組めるよう、積極的に支援してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 東京防災隣組の防災普及啓発への活用でありますが、自助、共助の取り組みを推進していくためには、地域で防災活動を担う団体が、他の団体の具体的な取り組みやノウハウを知り、地域特性に応じて自身の団体にうまく取り入れていくことが効果的であります。
 とりわけ、地域防災の牽引役が期待される東京防災隣組の意欲的な取り組みは、他団体における防災活動の充実に大きな参考となると考えられます。このため、東京防災隣組の活動映像や現場でのインタビュー、総合防災訓練の様子などを盛り込んだ冊子とDVDを作成し、都内全域に配布するとともに、防災リーダーを育成する研修の教材としても活用してまいります。防災隣組の紹介を通じて、より実践的な地域防災活動の展開を図ってまいります。

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