平成二十四年東京都議会会議録第十三号

〇副議長(ともとし春久君) 十二番西沢けいた君。
   〔十二番西沢けいた君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇十二番(西沢けいた君) 行政委員会及び附属機関に対する行政改革の必要性について質問いたします。
 行政委員会は知事から独立した組織で、主に教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、公安委員会、労働委員会、収用委員会などがあります。その報酬については、委員長や会長が月額五十二万五千円、委員が四十三万円、つまり年収約五百万円から六百万円となっております。
 調べてみたところ、その委員会の開催は、例えば教育委員会では、平成二十二年度及び二十三年度で年間二十二回の開催、大体三十分から二時間くらいの会議が多いようです。人事委員会は、平成二十二年度で三十一回の開催、口頭審理の開催が九回、会議は一時間から四時間くらいです。つまり、一見すると、約週一回、数時間程度の会議で、年収五百万円から六百万円と見ることができ、経済や雇用の厳しい状況が続く中、都民に理解を得られないように思われてしまいます。
 もちろん、行政委員は、会議に出席するだけでなく、事前に資料を読み込んだり、調査研究のための時間が必要であります。単に会議の回数や時間で報酬を議論するのはなじまない部分もあります。
 例えば、収用委員会について、平成二十二年度、大体三十分から三時間くらいの会議が年間四十六回開催されております。会議の回数だけを見れば週一回弱となりますが、このほかの現地調査、審理、打ち合わせを合わせて三百十一件の活動があるということで、当然、会議だけが仕事ではないということは理解ができます。
 しかし、昨年十一月一日の財政委員会で、我が党の鈴木勝博議員から、収用委員会について、委員によっては年間一日の活動もない委員がいると聞いているとの発言に対し、収用委員会事務局長は、たまたま平成二十二年度においては、指名された案件で現地調査や審理が行われず、活動日数のカウントとしていなかったと答弁し、委員会出席以外の活動がほとんどなかったことを認めております。行政委員会によってさまざまな状況があるということがいえます。
 こうした中で、全国の自治体でも、これまで月額が一般的でしたが、報酬の見直しが進んでおります。二〇一〇年から神奈川県と静岡県では原則日額に、ほかにも青森県や熊本県など、全国の都道府県のうち三十自治体で、主な行政委員会の日額化や、月額と日額の併用化が進められております。
 常勤である代表監査委員に日額制はなじみませんが、行政委員会の委員によって活動量が違う状況がある中、一律に月額制をとるのはおかしいのではないでしょうか。
 行政委員は、職務において必要性が高ければ、逆に非常勤ではなく常勤として勤務していただき、報酬だってさらに高額にしてもよいのかもしれません。また、そうでない場合は非常勤として日額制としていくべきであり、検討の余地があります。
 さらに、行政委員会の事務局体制についてです。
 知事から独立しているとはいえ、事務局は東京都が担当しております。非常勤という立場で週一回、二回の活動では、結果的に事務局の意向に流されてしまうということがあるのではないでしょうか。
 例えば、人事委員会は、東京都職員の給与の決定にかかわる報告や勧告をするわけですが、人事委員には元副知事が任命をされており、その事務方を東京都職員が行うわけですから、うがった見方をすれば、なれ合いといわれかねません。監査事務局についても、監査をする側の事務方と監査をされる側が同様に東京都の職員ですから、こちらも同様の懸念があります。
 九月十九日に発足した原子力規制委員会で、独立性を強化するために出身省庁へ戻ることを禁じたノーリターンルールがあるように、別組織とする、プロパー職員とするなど、東京都から新たな組織のあり方を提言するべきと考えます。
 行政委員会については、その委員会ごとに所管が分かれるため、網羅的になかなか議論ができません。各局ごとの議論で積み上がっていくものではなく、知事の考えが大きな突破口となります。
 委員の報酬、運営のあり方など、行政委員会は幾つもの課題を抱えていると思いますが、今後のあり方について所見を伺います。
 続いて、附属機関について伺います。
 専門的な知識や経験を都政に反映させるために、東京都には法律や条例、要綱などで定められている審議会や審査会などの附属機関などが二百九十もあります。こうした附属機関などでの議論は都政に多大な影響を与えます。
 そこで、議会局を通じて、附属機関などの構成状況、開催状況、出席状況、発言状況など調べられる範囲で調査をいたしました。その結果、議論が積極的、活発に行われているかどうか、疑わしいものが幾つもありました。
 東京都国土利用審議会で直近に行われた平成二十二年度の開催では、二十三人の委員中十八人の発言がありません。発言した方の割合は約二一・七%。東京都国民健康保険委員会は、二十七人の委員中二十一人が会議で発言がなく、約二二・二%でした。東京都総合治水対策協議会は、二十二年度、二十三年度ともに、五十九人の委員中五十三人の発言がなく、発言者率は約一〇%です。東京都水防協議会は十五人の委員で構成され、水防計画を策定する重要な会議だと思いますが、平成二十二年度の質疑をされた方はゼロ人、二十三年度は一人、二十四年度も一人のみでした。
 全体の附属機関などの委員数と、発言を一度もしていなかった方の割合を単純に計算し、発言者がどれくらいいたかを計算すると、約七〇%から八〇%の発言者率となることから、こうした会議は大変発言の少ない会議であるといえます。
 また、平成二十二年度の住宅政策審議会では、委員三十人のうち三分の一に当たる十一人が欠席、都議会議員枠や区市町村長枠を除いた、都が選任している学識経験者でいえば、二十人のうち九人と、約半数が欠席してしまっています。せっかく委員に選任されても欠席が多い会議はほかにも幾つも見られます。
 その一方で、スポーツ振興審議会など、欠席も少なく、出席委員全員が発言している会議など、活発に発言がされているような会議ももちろん多くあります。当然、単純に発言の多い少ないで議論の中身を決めつけることはできません。もともと、ただ追認だけの会議であったり、報告会のような意味合いが強い会議もあることでしょう。しかし、数字を見れば、形骸化した運営となっている附属機関などがあるということは明らかであります。
 委員の選定には、関係団体からの推薦や公募なども一部あります。しかし、区長が選任する消防団運営会議などを除くと、有識者や学識経験者の選任はおよそ九割、つまり、ほとんどが専門性を理由に局が選任しています。私は、それに偏ることなく、委員の公募を積極的に進めるべきだと考えます。
 やる気のある方に積極的に入っていただくことは、出席率や発言率を高めることにつながります。人材活用の幅を広げ、附属機関を活性化していくべきと考えますが、所見を伺い、次の質問に移ります。
 東京都自転車対策懇談会、自転車問題の解決に向けてには、自転車ナンバープレート制度やデポジット制度などの新たな仕組みづくりの必要性が提言されています。しかしながら、多額の時間や税金が投入されるそのような制度以前に、自転車を安全に運転するためのルールやマナーをすべての大人が身につけることが必要ではないでしょうか。
 提言の中には、取り締まりの強化やマナーの向上がうたわれております。自動車に比べ、信号無視をする自転車を多く見かけます。また、アルコールを飲む機会に、きょうはお酒を飲むから車を置いて自転車で来たということをいう方がいると聞きます。自転車は軽車両です。したがって、飲酒して自転車に乗ってはなりません。それを知らない、または知っているけどこれくらいは大丈夫だと認識の甘い大人が多くいるのではないでしょうか。警視庁には、悪質な違反者の取り締まりを厳しくしていただきたいと要望いたします。
 自転車マナーの悪さについては、利用者が自発的にルール、マナーを守れるようになるためには、取り締まりだけでなく教育が重要です。自転車利用者は子どもから高齢者まで幅広く、社会全体での取り組みが必要と考えますが、行政としてどのように取り組んでいくのか、伺います。
 また、行動範囲が広がる小学校三年生ぐらいになると、自転車による事故が増加し、ことしも重大事故が発生していると聞いています。
 そこで、都教育委員会では、東京の児童生徒のために、特に自転車交通安全教育をどのように推進しているか、伺います。
 次に、尖閣諸島に関する寄附金についてです。
 現地時間四月十六日、ワシントンでの石原知事の発表を受け、日本国じゅうだけでなく、海外からも多くの寄附金が持ち寄られました。こうした国を思う気持ちに動かされ、東京都は四月二十七日に寄附金の受け入れ口座を開設し、多くの人の協力も得て、現在十万件を超える、都民、国民から約十五億円の寄附金が集まっております。
 ところが、九月十一日、尖閣諸島は国有化されました。もともと国がやるべきと知事も発言されているように、国有化という流れ自体は基本的に必然ともいうべきと考えております。
 一方で、尖閣諸島寄附金の取り扱いについて、寄附をした私の地元の方々や知人から、国有化された後の寄附金の行方はどうなるのかといった不安の声も一部耳にします。こうした不安の声を払拭し、多くの都民、国民の方々に安心をしていただきたいとの立場から質問をいたします。
 まず、九月十一日の尖閣諸島の国有化以降、寄附金に関する問い合わせが寄せられたと思いますが、事務局にはどれだけの問い合わせがあったのか、また、そのうち、東京都が買わなくなったのだから寄附金を返還してもらいたいという声がどれだけあったのか、お伺いをいたします。
 尖閣諸島寄附金は、購入だけでなく、その活用に充てられるということは当初から想定されているところであります。その上で、先日の所信表明においても、石原知事は、寄附金を島の活用を国に迫る原動力としていくという方針を示しております。
 一方で、我が都議会民主党は、野田総理あてに、尖閣諸島の国有化についてと題した申し入れを先般行いました。ここでは、今回の国有化は基本的に評価するとした上で、国有化が国有化のみにとまってしまってはその意義が失われることから、自国領域維持の観点から、義務履行としての種々の行為が不可欠であり、さらに具体的な実効支配を強化することが必要との基本的見解を明らかにした上で、灯台、警戒監視レーダーなどの設置や避難港の整備などの具体的な申し入れをしております。この点、方向性は同じであると認識しております。
 こうしたことについて、寄附者に対して丁寧に説明することも極めて重要であります。
 そこで、都はホームページなどで、尖閣諸島寄附金は地方自治法に定める負担つきの寄附として受けるものではないとしていますが、尖閣諸島寄附金の基本的性質についてどう認識しているか、お伺いいたします。
 その上で、国有化を踏まえ、今後の寄附金の活用が重要になりますが、今後、寄附金をどのように活用していくのか、あわせて伺います。
 今月初め、都が実施した尖閣諸島の現地調査の映像は、多くのマスメディアを通じて、広く国民の注目を集めました。日本の領土を強く意識した方々も多数いると思います。
 東京都の行動に対する都民、国民からの揺るぎない信頼を得るためにも、この寄附金をしっかり活用していくよう願い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 西沢けいた議員の一般質問にお答えします。
 行政委員会のあり方についてでありますが、行政委員会は、みずからの判断と責任で、公正中立な立場から業務を執行する機関でありまして、行政運営上、重要な役割を担っております。
 とりわけ日本の心臓部、頭脳部であります東京においては、膨大な行政需要とともに、我が国が直面する課題が最も先鋭的にあらわれておりまして、それは行政委員会の業務にも顕著に反映されております。
 例えば、労働委員会にかけられる労使紛争や、あるいは収用委員会で取り扱う土地収用の件数は、他の道府県に比較して格段に多く、また、公安委員会が担当する東京の治安や教育委員会が所管する都の学校教育においても、増大する課題が重層的に絡み合って、大都市ならではの複雑さを呈しております。
 このように、都の行政委員会の業務は、質、量ともに密度が極めて高いことから、そのかじ取りを担う委員の責任は非常に重く、任期中、常にその職責を果たすことが求められております。
 今後とも、こうした行政委員会の特性を十分に踏まえつつ、都政へのさらなる貢献の観点から、委員の報酬や運営方法なども含めて、そのあり方について不断に検討していくつもりであります。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長比留間英人君登壇〕

〇教育長(比留間英人君) 自転車交通安全教育の推進についてでありますが、都教育委員会では、平成二十年度から安全教育プログラムを作成し、都内公立学校全教員に配布して、その活用を図ることで、交通安全教育の充実に努めてまいりました。
 各学校では、このプログラムを踏まえ、特に二人乗りや傘差し運転、携帯電話を利用しながらの運転の禁止や、車道、歩道の走行方法など、自転車走行時に守るべき規則やマナーについて具体的に指導しております。
 さらに、都の安全教育推進校では、スタントマンが児童生徒の前で自転車による交通事故を再現し、交通事故の恐ろしさや自転車走行時のルールを守る必要性を実感させる交通安全教室を実施しております。
 今後も、安全教育プログラムに基づき、実践的な自転車交通安全教育を一層推進してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 附属機関の活性化についてでありますが、附属機関の運営に当たりましては、幅広く各方面の人の意見を聞くことが求められることから、附属機関等設置運営要綱の取り扱いにおいて、可能な場合は都民からの公募を積極的に行うように努めることを定めており、既に十の附属機関で公募委員を登用しております。
 また、社会経済状況の動向等に的確に対応するためにも、委員の選任に当たりましては、常に新鮮な人材の登用を図り、積極的なご発言をいただき、議論を十分に尽くしていただくことが望ましいと考えており、委員の任期は原則二年としております。
 今後とも、こうした方針に沿って、附属機関の活性化に努めてまいります。
   〔青少年・治安対策本部長樋口眞人君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(樋口眞人君) 自転車の安全教育に関する取り組みについてでありますが、自転車の危険な運転をなくし、交通事故を一件でも減らすためには、すべての自転車利用者が、自転車は車両であり、ルール、マナーを遵守する必要があるとの意識を持つことが重要でございます。
 都といたしましては、警視庁、教育委員会、区市町村等の行政機関だけでなく、自転車販売店等の民間事業者とも連携し、さまざまな年齢層を対象とした交通安全教室の開催などにより、ルール、マナーを遵守した自転車の安全な利用が促進されるよう、引き続き取り組んでまいります。
 また、家庭、学校、事業所など、社会全体で安全教育が推進されるよう、自転車対策懇談会の提言を受けて、条例において必要な規定を盛り込むことを検討してまいります。
   〔知事本局長前田信弘君登壇〕

〇知事本局長(前田信弘君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、尖閣諸島寄附金に関する問い合わせについてでありますが、ことしの四月以来、昨日現在で、都民、国民から十万二千九百三十三件、十四億七千五百十三万円の拠金が寄せられております。また、直近におきましても毎日お寄せいただいておりまして、累計も日々増加をしているという状況でございます。
 知事本局に対する問い合わせの件数は、尖閣諸島が国の所有となりました九月十一日から昨日までの約二週間で五百八十六件ございました。このうち、東京都が購入しないのなら寄附金を返還してほしいという意見は百九件でありまして、これらの意見は日を追って大幅に減少しているという状況でございます。
 次に、この寄附金の基本的性質についてでありますが、この寄附金は、本年四月、知事が尖閣諸島を購入する方針を打ち出された後、数多くの問い合わせが寄せられたことを受けまして、島々の購入と活用のために充てる旨をお示しして受け入れを始めたものでございます。
 寄附金の使途につきましては、島の購入はもとより、島々を有効に活用するため多様な調査を実施するとともに、地元自治体の意向も取り入れつつ、広範な活用方策を検討する必要がありました。また、都民、国民から幅広く受け入れることも考慮いたしまして、他の自治体の事例なども参考にして、使途が制約を受ける負担つきの寄附ではなく、一般的な寄附として受け入れているものでございます。
 最後に、この寄附金の活用についてでありますが、ただいま申し上げましたように、東京都は島々の購入とその活用に充てるため、この寄附金を受け入れてまいりました。尖閣諸島は国の所有となりましたけれども、その活用について、国は何ら明らかにしておりません。また、現政権は何もしないとも伝えられております。
 都は、九月二日に洋上から島に接近して現地調査を行いましたが、ヤギの被害から貴重な動植物を守るなど自然環境の保全を図ることや、漁業者のための船だまりや無線中継基地、できれば有人の気象観測施設などの、地元石垣市も強く要望しております施設を設置することが、都に寄せられた貴重な志を生かすとともに、尖閣諸島の実効支配の強化につながるものと考えております。
 都は今後、都民、国民の志であります寄附金を基金とすることを考えておりまして、地元石垣市とも連携しながら、島々の有効活用を国に強く求めてまいります。

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