平成二十四年東京都議会会議録第十三号

〇議長(中村明彦君) 十八番遠藤守君。
   〔十八番遠藤守君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇十八番(遠藤守君) 秋の彼岸を迎えたこの週末、全国の霊園、墓地公園には多くの墓参者が訪れました。東京都公園協会によれば、都内八カ所の都立霊園でも約三十七万人の来園者が訪れ、故人に深く思いをはせました。
 急速な高齢化により、都の霊園行政に対する都民の関心そして期待、これが高まっていることから、初めに、この問題について質問をいたします。
 都立霊園は、平成十六年度から、霊園本来の機能である故人をしのぶ空間としての役割を保持したまま、地域の特性や自然、歴史資源を生かし、墓地公園へと再生を図っております。
 再生事業に共通するコンセプトは、景観を重視した多機能空間の創出でありますが、リーディングプロジェクトの青山霊園では歴史の森をテーマに、続く谷中霊園では寺町の風情と緑陰を、そして直近の染井霊園はソメイヨシノのふるさとにちなんで桜をテーマとし、それぞれ、霊園と公園の共存化が図られております。
 メモリアルパークとして世界的に有名なアメリカのスプリング・グローブ霊園は、墓地を野外美術館にをスローガンに、高い美の基準にのっとり、園内を本格的にデザイン、一九〇〇年のパリ国際博覧会で、アメリカの最もすぐれた景観デザインとして金賞を受賞し、後の都市公園、郊外住宅地の模範となりました。
 都立霊園の今後の再生に当たっても、例えば、一級の設計家に園内のデザインをゆだねたり、園を美しく保つための徹底した維持管理システムを導入したり、さらには、箱根の彫刻の森美術館のように、園内に多彩な彫刻やモニュメントを配置するなど、より明るく開放的な墓地公園を目指し、創意工夫を凝らすべきであります。見解を求めます。
 ところで、都は、本年、都立霊園初となる樹林墓地を小平霊園に整備いたしました。七月に利用者を公募したところ、平均倍率は約十六倍、最も人気だった申込区分は三十一倍という高倍率になりました。
 背景には、人間も自然の一部であり、死後は自然に帰りたいという強い憧憬がある一方で、お墓の承継者がいない、一般墓地に比べて使用料が格段に安い等の社会的、経済的理由が存在するものと思われます。
 先日、私もこの樹林墓地を視察してまいりましたが、こうした都民の要請を満足させると同時に、厳かな雰囲気と良好な緑環境を備えた質の高い施設であると実感をいたしました。
 そこで、小平霊園の樹林墓地の公募数をふやすとともに、他の都立霊園にも拡大すべきであります。答弁を求めます。
 次に、精神科医療の充実について質問をいたします。
 厚生労働省の全国調査によると、うつ病を初めとする気分障害の患者数は、平成八年の四十三万人から、平成二十年には百四万人と、十二年間で二・四倍に激増しております。都においても、同じ期間で六万三千人から十万四千人へと増大をしております。
 うつ病は、自殺の大きな要因であることも明らかになっており、その対策に都民の大きな期待を寄せております。
 こうした中、最近、新聞などで、うつ病患者の過量服薬や多剤投与の問題をクローズアップした記事を見かけます。
 もちろん、医師の多くは、患者に真摯に向き合っており、誤った認識は禁物であります。しかし一方で、私が相談を受けた患者のご家族からは、長年多くの薬を飲んでいるにもかかわらず症状はほとんど改善されないといった声や、副作用が強くかえって症状が悪化したなどの訴えを耳にいたします。
 国は、この過量服薬という課題を認識しておりますが、都としても、必要な対策を講じるべきであります。見解を求めます。
 この問題の解決に向けては、医療機関と患者、双方の視点から対策を打つことが必要であります。
 まず、医療機関側で重要なのは、身近なかかりつけ医である一般診療科における対応であります。うつ病患者の方は、多くの場合、心身両面にわたる不調があることから、精神科を受診する前に、内科等の一般診療科を訪れる傾向にあるそうです。診療初期のこの段階で、一般診療科の医師と精神科の専門医との間で、適切な連携が図られれば、過量服薬のリスクは軽減されるものと考えます。
 以上のことから、都は、都議会公明党の提案を受け、一般診療科医師に対する精神科分野の研修事業を開始しましたが、こうした取り組みなどを通じ、精神疾患の理解を一層充実させるべきと考えます。答弁を求めます。
 一方、患者側からこの問題を見ると、症状が改善されず、やむなく薬の量や種類がふえたり、安易に医師に処方を求めてしまうケースがあります。
 こうしたケースに対しては、院外処方で薬を処方する薬局や心の悩みに対応する相談施設など、患者の身近にある機関と医療機関との連携が有効であり、その仕組みを早急に構築することを強く求めておきます。
 次いで、妊婦の感染症予防について質問をいたします。
 近年、報道等でも大きく取り上げられているウイルスに、サイトメガロウイルスという名称のウイルスがあります。このウイルスは、人間の唾液、血液などの体液中に存在しているヘルペスウイルスの一種であり、私たち成人でも子どもでも、ほとんどの場合、感染しても症状はありません。しかし、妊娠中に初めて感染した場合、胎児に母子感染し、生まれてきた子どもに脳障害や難聴などを引き起こす可能性があり、最悪の場合は、流産や死産のリスクが高まるといわれております。
 最近、日本小児感染症学会が行った調査によれば、このウイルスが原因で、脳障害や難聴などになった乳幼児は、この十五年で二倍にふえているとあります。このウイルスは一度感染すると免疫ができ、その免疫があれば、妊娠中に再度感染しても胎児に影響することはほとんどない、このように専門家は指摘をしております。ところが、従来、九〇%といわれていた抗体保有率は、最近では、妊娠可能な年齢の女性で七〇%台、あるいはそれ以下に減少していることが報告されており、妊娠中に初めて感染するリスクが高まっていると考えられます。
 私たちの身の回りには多くのウイルスが存在しており、母子感染のリスクを減らすために、妊婦が感染症予防についての正しい知識を持つことが重要であり、そのための支援がぜひとも必要であります。
 都は、妊婦に対して、サイトメガロウイルスを含む感染症の予防について、積極的な注意喚起を行うべきです。具体的な取り組みについて答弁を求めます。
 最後に、新公会計制度の普及について質問をいたします。
 石原知事は、我が党の提案にこたえ、平成十八年度に、全国自治体に先駆けて、複式簿記・発生主義会計による新公会計制度を導入し、本定例会には、六回目の財務諸表が提出をされました。
 都は、制度導入後、従来以上に正確かつ迅速に財務状況を把握し、都議会や都民に対する説明責任を果たすとともに、事業評価では、この制度も活用して、発生主義の観点からきめの細かい分析を行い、予算編成に生かしております。
 一方、国は、改訂モデル、基準モデルという二つの全く異なる公会計モデルを示し、全国の自治体に財務諸表の作成を要請しております。現在、全国自治体の約八割が、改訂モデルで財務諸表を作成しておりますが、大半は、官庁会計決算の数値を事後的に組み替えて財務諸表を作成するため、作成時期が大幅にずれ込むとともに、精度にも難点があり、予算編成にほとんど活用できていない、このようになっております。
 また、基準モデルは非常に独特な考え方によるもので、専門家でも理解するのが困難といわれております。国の動きが遅々として進まない中、公会計制度改革の先駆者として、今後の取り組みに対する知事の力強い決意をお伺いいたします。
 今後は、国の動きを待つことなく、東京都と同様の新公会計制度をさらに普及拡大させていくことが極めて重要であります。
 都内では、町田市がいち早く制度のメリットに注目し、東京都方式を導入しましたが、おひざ元である都内で、さらに導入の実績をつくっていくことができれば、それが全国自治体への普及にもつながっていくものと考えます。
 今後とも、必要な情報提供を行うとともに、区市町村の実情を踏まえた普及活動を強力に進めるべきと考えます。
 また、その一方で、全国に向けた普及についてでありますが、これまでも都は、大阪府とともにシンポジウムを開催し、公会計改革白書を作成するなど、積極的に普及活動を展開してきました。昨年十二月には、都は、我が党の提言に速やかにこたえ、大阪府、新潟県、愛知県、町田市とともに新公会計制度普及のための連絡会を立ち上げました。
 今後は、この連絡会議の五団体が緊密に連携し、全国自治体に対し、制度導入に役立つ情報をさらに効果的に発信していくべきと思います。
 今後の都内区市町村や全国の自治体への普及について答弁を求め、私の一般質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 遠藤守議員の一般質問にお答えいたします。
 新公会計制度についてでありますが、私は父が急死しました後、父の先輩にいわれて、公認会計士という新しい仕事につきなさいということで、一橋という大学を選びまして、そこで一年間勉強しましたが、簿記会計というのは私に全くそぐわない学問だと思ってあきらめました。
 しかし、少しはその蓄積がありますけれども、この複式簿記・発生主義による新公会計制度の導入は、金利感覚やコスト意識の欠如した、これ、現行の政府がやっております太政官制度以来続いております時代おくれの官の体質を根本から変えるものでありまして、効率的な行政運営を実現するための切り札となるものだと思っております。
 知事に就任しましてから、当時、私の非常に親しい友人でもありました当時の公認会計士協会の会長の中地さんと相談しまして、新しい会計制度をつくりたいということで、彼も努力をしてくれまして、最初は機能するバランスシートという新しいバランスシートの方式をつくってもらいましたが、それをベースにして、今日、東京が採用している会計制度ができたわけであります。
 いずれにしろ、先進国の中で、単式簿記なんてばかなことをやっているのは、ほとんどありません。日本の周囲の国を眺めましても、単式簿記をやっている国は、北朝鮮、パプアニューギニア、フィリピン、マレーシアぐらいでありまして、あとはどこも、発生主義・複式簿記をやっているわけでありますが、日本だけは依然として単式簿記であります。
 ゆえに、この民主党の政権も、それに気づいてかわかりませんが、結局、財務省の圧力で方向転換しまして、事業仕分けなどというばかなことをやりましたが、あんなもので、何の欠点も出てくるわけではないわけでありまして、いずれにしろ、この近代社会、現代社会の中で、投資家がどこかの会社に刮目して、その会社の株を買おうと思っても、財務諸表のないような会社の株をだれも手をつけるわけはないわけでありまして、この日本には、健全なバランスシートがない。財務諸表もない。ゆえに、非常に不透明な特別会計などが憶測されて、随分お金を隠しているようですけれども、そういったものも出てこない、いろんな弊害があるわけであります。
 いずれにしろ、この新しい会計制度をつくるときには、いろいろ苦労しましたが、例えば、地方自治体が持っているアセット、資産の中には、鉄道のようなものもあります。東京の一番古い地下鉄は、戦前にできた渋谷から浅草までの地下鉄ですけど、これは普通の法律でいきますと、四十年たつと償却されるものでありますが、しかし、これいろいろな手を加えて商店街も地下にできたり、いろいろな形で付加価値がついて、依然として資産としての価値がある。これをどう評価するかということを非常に中地さんも苦労されましたが、いずれにしろ、今日の非常に合理的な公会計制度ができたわけであります。
 これを、私はやはり全国に普及したいなと思っておりまして、これに呼応して、大阪の、かつて知事でありました橋下さんが、これを採用してくれましたし、私たち無償でこれに協力しました。新潟県も愛知県もこれに呼応してくれました。また都下では、町田のようなまちがこれを採用してくれるようになりましたが、いずれにしろ、こういった合理的な会計制度というものを採用しませんと、官僚が何をしているか、よくわかるようでわからない。
 国は、地方の自治体には法律で決めて、外部監査も入れろということをいっておりますけれども、何で国は外部監査を入れないのでしょうかね。会計検査院なんて、役人が役人を調べるったって、こんなもの何の役にも立たない。いずれにしろ、私たちは、健全な財政というものを保持するために、こうした合理的会計制度を必要とするわけでありまして、こういったものを全国に展開していきたいと思っております。
 現今、経済の先行きが非常に不透明で、国家財政や地方財政が危機に瀕しておりますが、まず行うべきことは、事業仕分けなどというものではなくて、財政のむだをあぶり出す公会計制度の改革であることを国が認識すべきだと思っております。
 今後とも、都は、制度導入の先駆者として、志を同じくする自治体と緊密に連携しながら、日本全体の会計制度の改革を牽引していきたいと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁します。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立霊園の再生についてでございますが、都立霊園は、社会状況の変化や都民ニーズにこたえながら、墓所の供給と、訪れる方々も安らぐことができる緑豊かな快適な空間の提供を行ってまいりました。
 区部の霊園におきましては、平成十六年度から、墓所の返還や移転の促進により、まとまった空地を生み出し、都民が快適に墓参りや散策を楽しむための園路、広場を整備する再生事業を実施しております。
 今後とも、都市環境の保全や良好な景観の形成といった公園的な機能と、静ひつな霊園を共存させるよう創意工夫を重ね、都民に親しまれる霊園づくりを進めてまいります。
 次に、小平霊園の樹林墓地についてでございますが、都はこれまで、将来の管理や承継の心配のない合葬式墓地や狭小な敷地を有効に活用した立体式墓地などを供給してまいりました。
 合葬式墓地の一つである樹林墓地は、死後は自然に帰りたいという都民の思いにこたえ、緑豊かな樹林のもとに設けられた納骨施設に多くの遺骨を埋蔵する形式の墓地でございます。
 小平霊園の樹林墓地におきましては、今年度から募集を開始いたしましたが、この応募状況を踏まえ、来年度からは募集数をふやすとともに、他の都立霊園への樹林墓地の拡大についても検討してまいります。
   〔福祉保健局長川澄俊文君登壇〕

〇福祉保健局長(川澄俊文君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、過量服薬への対応についてでありますが、国は平成二十二年に薬物治療のみに頼らない診療体制の構築に向けて、過量服薬への取り組みを公表いたしました。
 この中では、当面の対策として、診療ガイドラインの作成、普及啓発の推進や、一般医療と精神科医療の連携強化など、五つの取り組みを挙げるとともに、今後検討していく対策として、向精神薬に関する処方の実態把握、分析など五つの事項を示しました。
 このうち、処方の実態把握、分析につきましては、実態調査等の研究結果を本年一月に報告書として取りまとめ、睡眠薬などの処方における注意喚起を行っております。
 都は、こうした国の取り組みについて、都内の関係団体に周知を図っており、今後とも、国の動向を踏まえながら適切に対応してまいります。
 次に、精神疾患に対する一般診療科医師の理解の促進についてでありますが、都は、昨年度、一般診療科医師向けに、精神疾患の症状や精神科医師との連携のポイント等を記載したハンドブックを作成するなどの取り組みを行いました。
 また、このハンドブックを活用し、日常診療における精神症状の診方などに関する研修と、かかりつけ医と精神科医師が連携して治療を行った事例についての合同症例検討会を、医師会と協力して都内八地区で開催し、今年度は、実施を希望する地区が昨年度を上回る状況にございます。
 今後とも、こうした研修や検討会などを通じて、一般診療科医師と精神科医師との連携を図るとともに、精神疾患に対する理解を促す取り組みを着実に推進してまいります。
 最後に、妊婦の感染症予防についてでありますが、感染症は、ウイルスや細菌が人や動物等から感染し発症いたします。お話のサイトメガロウイルスについても、唾液や尿を介して感染するため、乳幼児のいる家庭では、おむつ交換の際の手洗いの徹底が予防に有効でございます。
 妊娠中は、母子感染で胎児に影響を及ぼす可能性があることから、妊婦がこうした感染症の予防のための正しい知識を持つことが重要でございます。そのため、区市町村では、母子健康手帳に、感染症予防について記載するとともに、母親学級等での保健指導の際にも注意喚起を行っているところでございます。
 都は、区市町村が適切に啓発や保健指導が行えるよう、保健師などを対象に研修や会議で情報提供を行っており、今後も最新の情報を迅速に提供してまいります。
   〔会計管理局長松田芳和君登壇〕

〇会計管理局長(松田芳和君) 新公会計制度の普及についてでございますが、新公会計制度を、まず足元である都内区市町村へ普及させていくことは重要な視点でありますが、都内では、既に町田市が今年度から新公会計制度を導入しており、さらに今般、江戸川区が導入を決定したところでございます。
 都はこれまで、区市町村に対し適宜個別訪問を行ってきたほか、本年八月には、財政や会計部門の担当者を対象に合同説明会を開催し、制度の特徴や財務会計システムの活用などの理解を深める取り組みを行いました。
 また、都と区市町村が共同で立ち上げた研究会で、制度導入に当たり区市町村が直面する実務的な課題について検討を進めており、こうした普及活動にさらに積極的に取り組んでまいります。
 一方、全国自治体に対しましては、この四月に、大阪府、新潟県、愛知県など、先行五団体で構成する連絡会議でホームページを開設し、継続的に情報を発信しているところでございます。
 さらに、本年十一月には、全国の自治体関係者等を対象としたセミナーを東京ビッグサイトで開催し、五団体の多様な導入、活用事例を紹介するとともに、公会計の専門家を交え、参加者との意見交換を行う予定でございます。
 今後とも、都は、連絡会議内の連携を密にし、さらなる情報発信を行うなど、普及活動に努めてまいります。

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