平成二十四年東京都議会会議録第十三号

   午後一時開議

〇議長(中村明彦君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(中村明彦君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(中村明彦君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第十一号、東京都犯罪被害者等基本条例外条例一件、知事より、東京都教育委員会委員の任命の同意について外人事案件一件がそれぞれ提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

〇議長(中村明彦君) 昨日に引き続き質問を行います。
 四十九番滝沢景一君。
   〔四十九番滝沢景一君登壇〕

〇四十九番(滝沢景一君) 減災対策と地方分権について一般質問をさせていただきます。
 まず、減災対策であります。
 三・一一東日本大震災を踏まえ、これまでの想定地震や想定津波が各地で見直されてきています。
 大災害から都民の命、そして財産を守るために、行政が何ができるのか、何をすべきか、また、都民は何をすべきか、ふだんの議論が必要であると考えます。
 八月二十九日、内閣府の有識者検討会は、駿河湾から日向灘の南海トラフを震源域とするマグニチュード九・一の最大級の地震が起きた場合、最大二十二万三千人が死亡し、二百三十八万六千棟が全壊、焼失するとの被害想定を公表しました。一方で、対策が行き届き、津波からの迅速な避難や建物耐震化で、最悪のケースの死者を六万一千人に減らせると内閣府は説明しています。
 すなわち減災対策の必要性を訴えているのであります。地震発生頻度は極めて低いですが、防災対策の必要性の周知を公表の主目的とされています。
 東日本大震災が発生するまで、地震の想定規模は過去の地震に基づいて算出されてきたと認識をしていますが、今回は、科学的に起き得る地震であれば被害想定や長期予測を行うという方針に転換したものであります。東日本大震災で当たり前のように発せられた想定外をなくすことであります。
 被害数値を見て、悲観するのではなく、国民一人一人が冷静に地震に向き合い、何ができるか、備えることが重要であると思います。
 東京を中心に、一八五五年の安政江戸地震、一九二三年には関東大震災と、これまでも巨大地震に見舞われてきました。本年三月三十日には、文部科学省は首都直下地震防災・減災特別プロジェクトにおける震度分布図を公表しました。
 また、四月十八日に東京都防災会議は、首都直下地震等による東京の被害想定報告書を発表しました。
 平成十八年に公表した被害想定の見直しであります。新たな被害想定は、客観的なデータや科学的根拠に基づいて、可能な限り実際に起こり得る、最大被害像の把握に努めるものになっております。しかし、被害の規模を小さくするために、想定外を想定する想像力が求められてきます。想定結果の特徴は、最大震度七の地域が出るとともに、震度六強の地域が広範囲に、また、東京湾沿岸部の津波高は、満潮時で最大T.P.二・六一メートル、そして、東京湾北部地震の死者が最大で約九千七百人であります。被害想定の結果を踏まえ、東京都地域防災計画は修正作業に入っております。当然に、東京都の地域防災計画が修正されれば、区市町村の地域防災計画も速やかに修正されなければなりません。
 そこで、多摩地域における被害が最大となる多摩直下地震の被害想定の一部を平成十八年と比較しながら紹介いたします。
 人的被害のうち死者数は六百十二人から二千百六十九人と約三倍に、また避難人口は五十二万四千四百七十七人から八十七万九千四百三十七人と、帰宅困難者にあっては四十六万一千二百四十六人から七倍の三百二十三万人になっております。加えて、震災廃棄物は、三百五十三万トンから一千五十万トンと三倍もふえております。
 市町村は、これらの被害数値から、地域防災計画を策定することになります。しかし、冒頭に述べたように、被害数値を低くする自助、互助、公助による減災対策が求められております。そこには、都民一人一人が日ごろから地震に対する意識を持つ、すなわち自助領域を確認することにあります。
 そして、行政は、その意識を行動に結びつけていく減災政策に取り組むことが重要になってきます。
 例えば、地震時の被害軽減に向け、木造密集地域での防災、減災対策があります。法律では、新築住宅の固定資産税、都市計画税は、課税される年度から三年間、二分の一に減免しますが、都は二十三区を対象に上乗せして全額減免をしております。また、耐震改修についても全額減免することで、自助に対する政策誘導を行っております。
 多摩地域においては、税制からの政策誘導を行っているのは、三鷹市での新築住宅に対するものだけであります。
 都市整備局が平成二十年二月に公表した地震に関する地域危険度測定調査は、震災対策条例に基づき、多摩地域を含む都内の市街化区域の五千九十九町丁目について、各地域における地震に対する危険性を、建物の倒壊及び地震による火災について測定したものであります。加えて、平成二十四年には、東京の最大の弱点として木密地域の改善を加速させるため、木密地域不燃化十年プロジェクトの実施方針を策定しているところであります。
 しかし、このプロジェクトは二十三区内にとどまっております。過去の一般質問で、三多摩格差について質問してきましたが、多摩地域においても、地域危険度測定調査で、火災危険度、建物倒壊危険度の判定が高い地域が存在しております。八月三十一日の読売新聞、備えは今と題して、多摩地域での木造住宅密集地への対策を問題提起しております。
 都は、二十三区を対象に新築、改修に対し税制上の支援を行っていますが、耐震化、あるいは建てかえを促進させていくために、税制上の配慮は有効な手段と考えます。
 このことを念頭に置いて、広域行政を行う都においては、二十三区だけでなく多摩地域を含めた木造住宅密集地域の改善を図る取り組みは必要と考えますが、見解を伺います。
 次に、地方分権について質問をいたします。
 平成十三年に行政部が発行した多摩の将来像二〇〇一からの引用でありますが、社会経済状況の変化や住民ニーズが多様化する中で、これまでの中央集権による全国一律の行財政運営に限界が生じています。そのため、地方分権が推進され、身近な行政は住民に身近な自治体で行うという理念のもとで、地域住民の多様なニーズにきめ細かく対応し、地域に密着したまちづくりを進めることが重要になっています。
 今後、国や都道府県、市町村との役割分担を明確にして、国から都、都から市町村への権限や財源の移譲が不可欠になっています。この地方分権の考え方は、発行から十一年たっていますが、今も変わらず、都の地方分権の姿勢であると受けとめております。
 また、平成二十一年作成の多摩振興プロジェクトにおいても、地方分権の時代にあって、市町村の役割はますます高まっている、都は広域的自治体の立場から、今後も各種支援策を着実に推進するとともに、まちづくりなどに共同して取り組んでいく効果的な事業展開を図っていくと明記しております。
 このように都の地方分権の姿勢は、事務処理特例によって具体化され、多くの事務事業が市町村に移譲してきていると推察します。
 そこでお聞きしますが、市町村への事務事業を移譲するに当たって、それに対応する財源の移譲基準、移譲の考え方について伺います。
 また、都は国への要望の中で、権限の移譲にあわせて、必要な財源を確実に措置することと明記しています。都が市町村に事務事業を移譲するに当たって、ルールとして、国への要望を実践していると考えますが、あわせて伺います。
 多摩二十六市のうち普通交付税の交付団体は二十市に及び財政力の格差がそれぞれの自治体のサービス水準の差になってきているのが実態であります。
 さきの防災対策から、そのサービス水準の差を紹介しますと、マンションの耐震化への助成は、二十三区はすべての区で導入しておりますが、二十六市は武蔵野市と町田市の二市だけであります。また、新築住宅に対する税制上の配慮をしているのは三鷹市の一市だけであります。移譲される事務事業を厳しい財政力だからといって、市町村間によって実施する、しないという判断は、多摩地域の都民にとって移譲サービスの格差につながっていきますので、引き続き都で実施してくださいということになります。
 そのような判断、決断ができないからこそ、市町村長は厳しい財政であっても、独自の、あるいは既定のサービスを見直し、財源の捻出をしているのが実態であります。逆にとらえれば、財源を伴わない事務事業の移譲は基礎自治体の自由度を低減させていることになります。
 次に、市町村長が都知事の権限に属する事務の一部を処理したいと都に要請し、都が移譲した場合、この事務にかかわる財源移譲の考え方を伺います。
 都が提供しているサービスの中から、それぞれの市町村が、地域の特性を生かし、よりよいサービスが提供できると確信した場合、事務権限の移譲を都に要請すべきは地方自治の本旨であり、当然のことと考えます。
 具体的な事例になりますが、平成十六年、景観法が制定され、市区町村は都の景観計画及び景観条例の適用を受けることになりましたが、平成二十四年三月現在、多摩地域では府中市、町田市、八王子市の三市が景観行政団体に移行しています。都条例の傘から離れ、独自の景観条例及び景観計画によって景観行政がなされるようになりました。要請による景観行政のような事務移譲は、都の補助制度の趣旨から離れ、それぞれの市で独自に実施するということであります。
 したがって、都としては、これに関する補助金は交付しませんという理屈は成り立つことになります。しかし、冷静に考えると、個人都民税は都が実施するサービスの対価として負担している税金であります。そうしますと、市町村が都にかわってサービスを提供するとなれば、そのサービスに係る個人都民税は、そこの市町村に納めるという理屈が成り立ちます。
 地方分権は、受益と負担の関係を明確にすることから、住民自治が促進されることでもあります。都道府県と市町村間の権限移譲には、国と地方の関係以上に財源移譲が議論されやすいと認識をしております。都においても、国に対し、地方分権に資する国庫補助負担金改革の実現を要求しています。地方の自由裁量の拡大、自主財源の充実を求めるものであります。
 同様に、市町村が都に対して事務権限の移譲を要請した際に、その自治権を正当に評価し、税法上税源移譲ができない場合には、国が導入している過渡的な措置である地域自主戦略交付金のような制度を新たに創設することも考えられます。市町村の権限移譲を進めていくさまざまな支援が必要と考えますが、ご見解をお伺いいたします。
 あるいは、現行の市町村総合交付金の算定に反映するといった地方分権を推進する先進的な取り組みを期待しております。これまで、都から市町村への権限や財源の移譲について伺いました。
 国政では、民主党政権のもとで地方分権に関する第一次、第二次一括法が成立し、国の出先機関改革の議論も行われています。
 このような状況を踏まえて、最後に、地方分権改革について石原知事の見解を伺いまして、私の一般質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 滝沢景一議員の一般質問にお答えいたします。
 地方分権改革についてでありますが、明治以来の中央集権体制は、もはやその有効性を失っていると思います。それゆえ、国家全体に活力を取り戻すために、地方を霞が関のくびきから解き放って、その持てる力、個性を十二分に発揮させる必要があると思います。
 例えば、ハローワークを権限、財源とともに、地方の実情をよく知る地方に移管することで、地域の強みを生かした産業支援と、企業ニーズに基づく職業訓練の実施あるいは人材紹介までを一体的に行うことが可能になります。
 しかし、民主党政権は、地域主権改革を一丁目一番地として掲げてきましたが、いまだに、その省益を墨守する霞が関の抵抗を排除できずにいます。
 現在、政府内で検討されている国の出先機関改革案では、人員削減規模が明示されないなど、三・五万人の人員削減を盛り込んだ地方分権改革推進委員会の勧告とは、ほど遠い内容となっております。
 都はこれまでも、大都市の実態を踏まえた都独自の認証保育所制度なども創設しまして、あるいは排気ガス規制、あるいは新しい会計制度、とにかく、国の認可制度のもとでは進まなかった保育所の新設も促進しましたし、具体的に取り組んできました。
 また、その実績をもとに国への提言も行ってきましたが、しかし、国の官僚は、その独善性から、地方で成功をしたことについて決してまねをしませんな。今後も志を同じくする地方とも連携して、具体の政策を構えながら、地方分権改革の実現を国に迫っていきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 多摩地域での木密改善の取り組みについてでございますが、都は、防災都市づくり推進計画において、地域危険度が高く、老朽化した木造建築物が集積し、かつ、市街地の燃えにくさを示す不燃領域率が一定水準に満たない地域を整備地域に指定いたしまして、施策を重点化してまいりました。
 一方で、お話の多摩地域においても、土地区画整理事業や市街地再開発事業など、地域の防災性の向上に寄与する取り組みが行われてきておりまして、都は、これらを技術的、財政的に支援してまいりました。
 地元市町が主導するこのようなまちづくりを引き続き支援することにより、安全な市街地の形成に取り組んでまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、市町村への事務事業移譲に係る財源の移譲基準等についてでありますが、法令上、都の権限とされた事務を市区町村に移譲する主な手法といたしましては、条例による事務処理の特例制度に基づく権限移譲と、個別法の規定に基づく権限移譲があります。
 事務処理の特例制度に基づき移譲された事務の経費につきましては、地方財政法の規定により、都道府県が必要な措置を講ずることとされております。
 このため、都は、市区町村との十分な協議を経た上で、事務処理特例交付金等により、確実に財源措置を講じております。
 一方、個別法による権限移譲の場合には、その財源については、地方交付税により国が措置することとなっております。しかし、不交付団体にとっては、事実上の財源措置にならないことから、都は国に対して、必要な財源を確実に措置するよう強く求めております。
 次いで、市町村長から権限移譲の要請があった際の財源措置についてでありますが、事務処理の特例制度に基づく権限移譲の場合であっても、個別法に基づく権限移譲の場合であっても、都から市区町村に権限を移譲する際には、先ほど答弁したとおり、それぞれのルールに従って財源措置がなされるものであります。
 こうした財源措置につきましては、当該事務の移譲が市区町村からの要請によるものか、あるいは都からの提案によるものかによって、その取り扱いが変わるものではございません。
 最後に、権限移譲の際の都の支援についてでありますが、事務処理の特例制度による権限移譲の場合には、都は、市区町村との十分な協議を経た上で、必要な財源措置等を講じております。
 一方、個別法による権限移譲の場合には、国が地方交付税で措置することとなりますが、都は過渡的な措置として、必要に応じ、人的、技術的、財政的支援を実施しております。
 具体的には、八王子市や町田市の保健所政令市への移行、立川市や国分寺市などの特定行政庁への移行に当たって、各市が新たな事務を確実に執行できるよう、専門職員の派遣、市職員に対する実務研修の実施、事業経費の補助などの支援を一定期間行ってまいりました。
 今後とも、権限移譲を円滑に推進していくため、市区町村と十分調整を図りながら、適切に対応してまいります。

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