平成二十四年東京都議会会議録第九号

〇議長(中村明彦君) 八十九番田中たけし君。
   〔八十九番田中たけし君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇八十九番(田中たけし君) 四月十八日に首都直下地震による東京の被害想定の見直しが発表されました。これまでの被害想定に対し、客観的データや科学的裏づけに基づき、より実態に即した被害想定へと全面的に見直しが行われたものであります。最大震度七の地域が出るとともに、震度六強の地域が区部で約七割と広範囲にわたり、死者が最大で約九千七百人にも及ぶとの衝撃的な発表でありました。
 焼失棟数分布図を見ると、私の地元品川区は、焼失棟数百以上を示す赤色が区内西部の広域にわたっており、予測されている焼失棟数が二万一千五百六十九棟、焼失率三一・九%と、都内でワーストワンであります。
 また、平成二十年に公表された地域危険度測定調査でも、火災危険度は品川区の豊町五丁目が都内全域で最も高く、ワーストテンには五地区も入っております。さらに、総合危険度にも、二葉三丁目がワースト四位に入っております。
 これまで品川区では、防災都市づくり推進計画のもと、都内最大の四百九十ヘクタールにも及ぶ林試の森周辺、荏原地区を重点整備地域に指定し、東急目黒線の連続立体交差事業、補助二六号線地区の都市防災不燃化促進事業などの事業が行われ、現在継続中の事業も数多くあります。これだけ積極的に木密対策が行われているにもかかわらず、今回の被害想定や地域危険度はまだまだ改善されておらず、抜本的な対策が望まれます。
 このたび、震災発生時に甚大な被害が懸念される木密地域での不燃化の取り組みを加速させるため、木密地域不燃化十年プロジェクトが実施されますが、品川区を指定せずして、一体どこを指定するのかとの思いを強くいたしております。品川区での木密対策の成果が上がれば、東京都全体の防災対策が進むものと確信しており、防災対策一点に絞り、質問をさせていただきます。
 まず初めに、まちづくりの視点からお伺いいたします。
 木密地域の改善に向け、建築物の不燃化とともに、延焼遮断帯となる都市計画道路の整備が求められます。現在、品川区の重点整備地域内にある小山台地区において、延焼遮断帯としての効果だけではなく、広域避難場所である林試の森公園へのルート確保の観点から、都市計画道路補助四六号線の整備事業が行われております。多くの地元の方々の協力のもと、事業が行われており、一刻も早い開通が望まれております。この補助四六号線の開通時期はいつごろなのかお伺いいたします。
 また、補助四六号線の開通は、木密地域の改善の視点から大きな効果が期待されておりますが、事業効果をどのように評価しているのかお伺いいたします。
 現在、さきの重点整備地域にある東急大井町線戸越公園駅周辺で、戸越公園駅周辺まちづくり協議会が組織され、都市計画道路補助二九号線の早期整備及び大井町線の連続立体化による災害に強いまちづくりに向け協議を重ねております。既に一昨年、石原知事に直接、地域要望を説明する機会を得、先月には事業推進を求める千二百名を超える署名を石原知事あてに提出いたしました。
 特に補助二九号線は、火災危険度ワーストテンに入る豊町五丁目、二葉三丁目地区を通り、地域危険度の大幅な改善につながり、早期事業化が期待されております。地元での防災都市づくりに向けた熱意をぜひとも受けとめていただきますよう、要望いたします。
 次に、税制の観点からお伺いいたします。
 現在、既存建物に耐震改修を行った際には、固定資産税、都市計画税は据え置きになりますが、耐震性を強化した建物に建てかえを行うと、資産価値が上がり、固定資産税等が上がってしまいます。また、住宅用の土地に対する固定資産税等は、更地と比較すると約六分の一になる特例があり、老朽化し使えない家屋も、取り壊しをせずにそのまま放置している例も見受けられます。
 税の公平性の観点から課題があることは承知しておりますが、建築物の耐震化促進や倒壊危険性のある建築物の除去などの防災対策を進める上で考慮しなければならない税制上の問題点について、検討を進めることを要望いたします。
 一方、首都直下地震がいつ発生するかわからない中、木密不燃化の促進に向け、あらゆる手だてを講じていく必要があり、税制面からの支援も有効と考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 また、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に向け、耐震診断の義務づけや耐震改修費用の助成制度などがありますが、さらに促進していく上で、税制面からの支援も有効と考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、土地収用制度の活用の視点からお伺いいたします。
 再三申し上げておりますが、災害はいつ発生するかわからず、事業認可された都市計画道路は一刻も早く整備完了することが望まれます。用地の取得は地権者の同意を得ながら着実に進めることが大切でありますが、九割以上の用地取得がなされているにもかかわらず、数名の地権者の同意が得られないため、結果として事業が進まないケースもあります。広範囲にわたる被害が想定される中、災害発生前にどれだけ多くの事業を完了させるかが被害の縮小化につながり、時間との闘いともいえる状況にあります。
 そのような観点から、道路整備事業を行うに当たり、土地収用制度の積極的な活用も視野に入れた取り組みを講じるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 防災都市づくりを進める上では、都だけではなく、区市町村の役割も重要であります。都と同様、用地取得について地権者の同意が得られず、進捗がおくれている事業もあります。区市町村では、用地買収交渉に鋭意臨んでおりますが、区市町村の中には、土地収用制度についてのメリットを十分に認識していないため、あるいはノウハウがないために、本来、制度を活用すれば事業が確実に進むと思われるケースにおいても活用されず、事業が進まないこともあります。
 そこで、防災都市づくりを早期に進めるという観点から、区市町村に対し、土地収用制度への理解をより深めるよう取り組むべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、防災力強化に向けた人的対応の視点から、まず、地域での防災隣組の普及に関してお伺いいたします。
 都は、地域の自助、共助を推進するため、東京防災隣組を三十六団体認定いたしました。品川区では地域特性に応じた取り組みを行っている三団体が認定を受けました。
 都は、防災隣組の活用を広く紹介し、都内全域へと普及させていくことを目指しておりますが、地域特性に応じた取り組みは、同様の特性を持つ認定団体周辺地域へと波及させていくことも効果的だと考えます。広域的な普及活動に加え、周辺地域での普及に向け、区市町村と連携した取り組みを展開すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、地域特性に応じた消防団のあり方に関し、お伺いいたします。
 このたび、消防庁と水道局が排水栓の取り扱いにかかわる覚書を締結し、消火栓と同様の構造を持つ排水栓が活用できるようになり、特に木密地域での防災力の強化につながり、消防団の活躍を期待するものであります。
 これまで消防団では、人材育成や資器材の充実を図るなど全体的機能強化を図ってまいりましたが、並行して地域特性に応じた消防団の育成も望まれます。
 そこで、東日本大震災を踏まえ、特別区消防団の活動をより一層充実させるための消防庁の取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、高校生の防災教育についてお伺いをいたします。
 これまで我が党は、昨日の代表質問での一泊二日の宿泊防災訓練を初め、防災教育の改善、充実について質問を重ねてまいりました。大原教育長からは、まず自分の命を守り、次に身近な人を助け、さらに地域に貢献できる人材を育てるとの理念に基づく防災教育を推進し、自助、共助、公助の精神をはぐくんでいくとのご答弁をいただいております。
 品川区でも防災教育に力を入れており、区内の全中学校にD級ポンプを配置し、操作方法を学ぶとともに、中学生有志によるポンプ隊を結成し、地域の防災訓練に参加するなど防災力向上に努めております。
 この取り組みが中学校での経験で終わることなく、高校でより実践的な活動につながることを期待しております。
 平日の昼間、多くの社会人たちが都心へ働きに出ている際に災害が発生した場合などは、地域で学ぶ中学生や高校生が防災の担い手となることが期待されます。
 このたび、宿泊防災訓練に加え、地元の大崎高校を初め、都立高校十二校を防災教育推進校に指定いたしました。大崎高校は、広域避難場所である戸越公園に隣接しており、災害発生時に避難場所での大きな活躍を果たしてくれるものと期待をしております。
 そこで、防災教育推進校の取り組みについてお伺いをいたします。
 今回の被害想定の見直しは、東日本大震災の際、想定外の事態が数多く発生し、多くの被害が生じたことを教訓に、過去の災害の最悪のケースをもとに、また、最新データを活用し、被害想定を見直し、その対策を講じることで万全の備えをしていくものと受けとめております。そのため、広範囲にわたり大きな被害が生じる想定となっておりますが、この被害想定どおりにならないよう、より積極的に防災対策に取り組むことが求められます。
 首都直下地震がいつ発生するかわからない中、防災対策は待ったなしの状況であり、木密対策は、大都市東京に残された大きな課題であります。この課題解決を通じて、初めて高度防災都市東京が実現されるものであり、私権の制限や土地収用制度の積極的活用なども含む石原知事の力強いリーダーシップが一層期待されております。改めて木密地域解消に向けた石原知事のご決意をお伺いし、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 田中たけし議員の一般質問にお答えいたします。
 木密地域の解消についてでありますが、この木密地域というのは、まさにこの東京のアキレス腱でありまして、都民が考えている以上に広範囲に点在しております。
 しかし、この木密地域は独特の風情もありまして、まちに入ってみますと、人情が細やかで、非常に連帯のとりやすい、昔ながらのそういう古いまちでもあります。
 一方では、今回の被害想定でも改めて浮き彫りになったように、一たびその大地震が発生すれば、建物倒壊や火災などによって甚大な被害が出る構造にもなっております。せめて、そこに居住している方々の生命だけでも守るべく、数年前に寝室をごく簡単に補強する、そういう工法というものを幾つか専門家に頼んで展示もしましたが、余り皆さんその気にならぬですね。まちに行って話してみますと、まちの長老や古い人たちに話しますと、石原さん、東京は危ないよ、必ず地震が来るよ、じゃあ、あなたのところ、危ないよというと、うちは大丈夫だと。なぜか、まあおっしゃる。
 人間というのは、人間は必ず死ぬっていうことは良識で知っていますけれども、自分が死ぬということを信じていないのと同じように、この木密地域の方々も、なぜか、確信を持ってうちは大丈夫とおっしゃるんで、なかなかとにかく話が進まないのが現況でありますが、いずれにしろ、この日本のダイナモである東京を、高度な防災力を備えた都市へと進化させていくために、不燃化十年プロジェクトを立ち上げました。八月には先行実施地区も定めて具体的な取り組みに着手いたしますが、強制力を持った事業手法や建てかえ時の生活支援など、さまざまな施策を総動員して、ともかくその木密地域の改善を一段と加速させていきたいと思っております。
 大震災の記憶が残る今、住民の危機意識を喚起して、地元区も巻き込みながら、東京を、壊れず、燃え広がらないという、そういう都市につくり変えていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び技監及び関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 防災教育推進校の取り組みについてでございますが、防災教育推進校に指定した十二校では、生徒による防災活動支援隊を新たに結成し、地域防災訓練の実施に向けた会議への参加等を行います。また、地域の消防署等と連携した消火訓練、東京消防庁消防学校等での一週間程度の宿泊防災訓練、上級救命講習の受講など実践を中心とした防災教育を実施することとしております。
 今後は、事業を検証した上で、地域の特性を踏まえた防災訓練や小中学校との合同避難訓練を実施するなど内容を充実いたしますとともに、新たな防災教育推進校を順次指定することにより、防災教育を拡大してまいります。
 こうした取り組みを通して、生徒の防災に関する意識や技術を高め、高校在学中だけでなく、卒業後もそれぞれの地域での防災に貢献できる人間を育成してまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、補助四六号線についてでございますが、本路線は、目黒通り、中原街道と並行する放射方向の道路であり、防災都市づくり推進計画において重点整備地域に位置づけられた木造密集地域を貫く重要な都市計画道路でございます。
 本路線の山手通りから補助二六号線までの約一・三キロメートルの区間のうち、未開通箇所について、今月二十七日に交通開放する予定でございます。
 これにより、新たな道路ネットワークが形成され、災害時における延焼遮断帯としての空間確保や避難場所である林試の森公園へのアクセスルートの強化など、地域の安全性や防災性の向上が図られます。
 今後とも、財源の確保などに努め、地元区と連携を図りながら、燃え広がらないまちの実現に向け、都市計画道路の整備を全力で推進してまいります。
 次に、土地収用制度の活用を視野に入れた取り組みについてでございますが、道路整備の推進のためには、関係権利者の理解と協力を得て、事業用地を着実に確保することが重要でございます。
 このため、都はこれまでも、日本有数の折衝力を有する用地職員によるきめ細かな対応により、公正かつ公平な補償を行うとともに、代替地のあっせんなど、関係権利者の生活再建に向けた取り組みを行っております。
 また、事業への反対や補償への不満などにより解決が困難な案件につきましては、第三者機関による公正中立な判断が得られる土地収用制度により解決を図ってきております。
 今後は、防災上、効果の高い都市計画道路の整備を加速するため、関係権利者の生活再建支援を充実させるとともに、土地収用制度の機動的、積極的な活用を図り、事業効果の早期発現につながる用地取得を進めてまいります。
   〔主税局長新田洋平君登壇〕

〇主税局長(新田洋平君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、木密不燃化の促進に向けた税制面での支援についてでございますが、首都直下地震が切迫している中、木密地域の不燃化促進は極めて重要な課題であると認識しております。
 そのため、特に重点的、集中的に改善を図るべき地区として指定される特区におきましては、あらゆる手だてを講じていく必要があり、その支援の一つとして、税制面から対応していくことも有効であると考えております。
 今後、政策効果と公平性とのバランスや税収への影響等を十分に検証しつつ、関係局と連携しながら、効果的な税制活用について検討を進めてまいります。
 次に、特定緊急輸送道路沿道建築物耐震化についてでございますが、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化の促進は重要な課題であり、他の政策手段と組み合わせながら、税制面から支援することは有効であると認識しております。
 特定緊急輸送道路につきましては、そのエリアが広範に及ぶことから、都の固定資産税の課税対象地域である二十三区内にとどまらず、多摩地域や近隣県も含め、路線全体で沿道建築物の耐震化を進めていく必要がございます。
 このため、沿道地域において一体的に固定資産税を減額する税制上の優遇措置が受けられるよう、耐震改修を行った建築物に対する地方税法上の特例措置の創設に向け、関係局とも調整し、国に対し提案要求してまいりたいと考えております。
   〔収用委員会事務局長細野友希君登壇〕

〇収用委員会事務局長(細野友希君) 区市町村への土地収用制度に対する理解を深める取り組みについてでございますが、東京の防災都市づくりを推進していくためには、道路事業等を担う区市町村においても、収用制度を正しく理解し適切に活用することが重要であると認識しております。
 これまで、区長や市長など区市町村のトップを初め、用地担当部署を訪問し、制度の意義や効果等についてPR活動を行うとともに、区市町村の担当職員が収用制度を円滑に活用できるよう、制度に関する知識、ノウハウを学ぶことのできる研修などを開催してきております。
 今後とも、区市町村に対し、こうした取り組みを進めるとともに、今年度は新たに収用手続に関する事例を踏まえた実践的な研修を開催し、収用制度がタイムリーに活用されるよう積極的に支援を展開してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 防災隣組の普及に向けた区市町村との連携についてでございますが、東京の自助、共助の強化を図るためには、その先導的役割を担う防災隣組の意欲的な活動を近隣の地域へ広げていくことも重要であり、そのためには地域の実情に精通している区市町村との緊密な連携が必要でございます。
 このため、都は、シンポジウムや紹介冊子作成等の広域的な普及活動に加え、地元の区市町村と連携して防災隣組やモデル地区のさまざまな活動を紹介するイベントを開催するなど、各地域でのきめ細やかな普及活動も推進してまいります。
 こうした取り組みにより、防災隣組の活動の近隣地域への浸透を図り、地域の防災力の向上につなげてまいります。
   〔消防総監北村吉男君登壇〕

〇消防総監(北村吉男君) 東京消防庁における特別区消防団活動の充実についてでありますが、震災時を含めた消防団の活動は、防災リーダーとして地域の安全を確保する上で、その果たす役割は極めて重要であります。
 このため、これまで消防団活動に必要な資機材や分団本部施設等を計画的に拡充してきたところであり、新たに専用の携帯無線機を初め、電光標示器や非常用発電機等を整備しております。
 また、都知事の諮問に応じ、特別区消防団運営委員会においては、現在、東日本大震災を踏まえ、地域特性に応じた消防団活動のあり方について審議されているところであります。
 今後、その答申内容を踏まえて、各区や関係部局等と連携し、引き続き消防団の活動体制の充実強化に努めてまいります。

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