平成二十四年東京都議会会議録第九号

〇副議長(ともとし春久君) 七十九番野上ゆきえさん。
   〔七十九番野上ゆきえ君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇七十九番(野上ゆきえ君) 都は昨年、アジアヘッドクオーター特区として国から指定を受けたところですが、アジアのヘッドクオーターとしての地位を確立し、グローバルな都市間競争時代における強い東京の復権と、日本経済の活性化につなげていくためには、国際競争に打ち勝てる人材、アジアのエリートになり得る専門能力の高い人材を育てていくことが喫緊の課題です。
 知事は、一年前にこの定例会において、破壊的な教育改革を議論し発信する、教育再生・東京円卓会議を設置すると表明し、これまで三回の会議を開催されました。国際化に取り組む大学の学長や国際感覚豊かな民間出身の高校校長などを招き、グローバル化時代にふさわしい人材育成について、さまざまな意見が出されたと伺っております。
 まず、その議論に対する知事の所見を伺います。
 一方、国内では、若者の労働市場が縮小しております。高卒求人件数、全国では、平成四年の百六十七万人から平成二十三年の十九万人まで落ち込んでおります。約二十年で九〇%減です。
 その理由は、第一に、製造業等の海外移転などにより、高卒者の従来の就職先が激減したこと。第二に、労働者派遣法の改正以降に非正規雇用が拡大したこと。第三に、IT化による単純労働の縮小と知的労働が拡大したこと。第四に、従来の高卒者の就職先に大学生がいわば天下りしてきたこと。第五に、特にアジアに進出した日本企業が、海外の学生の採用を拡大していることなどのためだと考えられます。
 また、内閣府が発表した平成二十四年版子ども・若者白書によると、十五歳から十九歳の失業率は九・六%、高卒新卒者の三年以内の離職率は三七・六%、十五歳から二十九歳の若者が働くことに対して不安を抱いている割合は、十分な収入が得られるかが不安な若者が八二・九%、きちんと仕事ができるかが不安な者が八〇・七%、そもそも就職ができるのか、仕事を続けられるのかが不安な者が七九・六%などとなっており、若者が学校から社会に出るに当たっての仕上がり水準が、現在の労働市場の要求に耐えられない現状が見てとれます。また、それを反映して、若者自身も、学校卒業後の就職に大変不安を感じていることがわかります。
 グローバル化やIT化の進展、非正規雇用の拡大などによって、新卒労働市場が縮小しつつあるということは、これまで以上に高度な知識、高度な技術が卒業の時点で要求をされているということであり、安定した就職を意識した専門的な学習と適切な進路指導が不可欠です。
 そこで、今こそ専門高校における教育の質を向上させ、高度なスキルを習得し、専門的能力の高い人材を育成する専門高校へと生まれ変わるべきと考えますが所見を伺います。
 また、日本を支える高度な専門的人材を育成するためには、高校のころから専門教育を学び、大学においてさらにそれを伸ばしていくということも重要です。専門高校における教育そのものの質を上げ、例えば、商業高校の三年間に加え、大学商学部、経済学部四年間の合計七年間で商業実務のエキスパートを育成していくなどが必要であり、そうした質の高い専門教育を展開することにより、商業高校など専門高校の全体のレベルアップを図っていかなければなりません。
 そうでなければ、グローバル化時代における労働市場への有用な人材の輩出は不可能です。
 専門高校において、より一層充実した専門教育を行った上で、大学などとの連携を模索し、高校と大学とで必要な専門的な人材を育成していくシステムを構築していくことが急務の課題であると考えます。
 専門高校の生徒の技術力などを適正に評価して、専門高校から大学に進学する道を開いていくなどが必要です。専門高校と大学との接続についてどのように取り組むのか、所見を伺います。
 大学における教育には、中学、高校までの教育のように、一人一人の生徒を学年担任の集団などがきめ細やかに面倒を見るような姿勢は見られず、学生は半ば放任されているように見受けられます。学生を真に大切にしてくれる大学はどこなのか、熾烈な就職戦線を勝ち抜くことができる学生を育ててくれる大学は一体どこなのかなどを明らかにし、学生一人一人の顔が見えるよう、大学教育をも促していくことが必要です。
 そのために、高校側から大学側に積極的に働きかけて、大学側にも緊張感を持たせる、大学の姿勢やカリキュラムなどを変えていくことも必要なのではないでしょうか。
 こうした都立高校改革の取り組みは、大学で何を学ぶのか、高校や大学でどのように学ぶのかといった明確な目的を持った生徒を育てていくことになるとともに、日本の大学の改革にも大きな影響を与えるものであり、知事のいう破壊的教育改革を大きく前進させるものであると考えます。さらなる成果を期待して次の質問に移ります。
 次に、環境エネルギー政策について伺います。
 都は、昨年十二月に発表した「二〇二〇年の東京」において、低炭素で高効率な自立・分散型エネルギー社会を創出するという目標を掲げ、その達成に向けて、東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトを、今後十年間で戦略的に展開していくとしています。その中核となる、百万キロワット級の高効率なコンバインドサイクル方式の天然ガス発電所の設置については、東日本大震災が提起したエネルギー問題に対して、エネルギーの安定供給体制を構築するために、東京都が示した解決方法の一つであると私は受けとめております。
 発端は、昨年五月の石原知事の定例記者会見での発言でした。その後、猪瀬副知事をリーダーとする局横断的な検討組織がつくられ、これまで議論が行われてきたと伺っております。
 先月には、東京天然ガス発電所プロジェクトの事業可能性調査の結果が公表されたところですが、検討目的とその内容、今後の取り組みについて猪瀬副知事に伺います。
 来月から開始される再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度については、買い取り価格や買い取り期間が、発電事業者の要望を踏まえた採算性のとれる水準に設定されたことで、今後、我が国の再生可能エネルギーの導入が急速に進展することが期待されます。
 都は、これまでも、キャップ・アンド・トレード制度において、大規模事業者のCO2削減義務の履行に利用できるオフセットクレジットの一つとして、グリーン電力証書を活用した再エネクレジットという仕組みを設けるなど、再生可能エネルギーの利用拡大を進めてきました。
 固定価格買い取り制度の開始により、これまでグリーン電力証書の対象であった風力発電所などの設備は、固定価格買い取り制度に移行していく可能性があると考えますが、都は今後どのようにしてキャップ・アンド・トレード制度を活用して再生可能エネルギーを普及していくのか、所見を伺います。
 固定価格買い取り制度の導入は、我が国において、再生可能エネルギーの普及が加速化する一つの契機となることは間違いありません。特に、風力発電を初めとする再生可能エネルギーの導入ポテンシャルが高い北海道、東北地域等においては、新たな発電設備の建設が進むことが期待されます。
 一方で、再生可能エネルギーのさらなる普及拡大に向けた電力制度改革が早急に求められております。これまでのように、電力会社がそれぞれの供給エリアごとに系統電力への再生可能エネルギーの新規受け入れ可能量を検討し、受け入れを制限している現状を改めない限りは、固定価格買い取り制度が始まっても、せっかくの供給ポテンシャルを生かすことができません。
 今後、再生可能エネルギーを拡充していくためには、系統、すなわちグリッドをいかにコントロールしていくかが重要なファクターとなるわけです。将来的には、グリッド全体の最適化が可能となるスマートグリッドの実現が望まれるわけですが、制度改革のスピードを上げて、一刻も早く具体化を図るべきと考えます。
 現在、国では、電力制度改革に向けた検討が行われていますが、都は再生可能エネルギーのさらなる活用促進に向けたグリッドのコントロールを実現する制度的な対応についても、国や東京電力に対して要求していくべきと考えますが、所見を伺います。
 最後に、医療政策について伺います。
 本年四月一日、練馬区に公益社団法人地域医療振興協会練馬光が丘病院が開設しました。日本大学が、日本大学医学部付属練馬光が丘病院として、平成三年から、ことし三月までの二十年間運営し、救急医療、周産期医療、小児医療など区西北部二次保健医療圏における地域医療の中核的役割を担ってきた病院を引き継いだものです。
 昨年七月、練馬区は、日本大学医学部付属練馬光が丘病院の運営が、平成二十四年三月三十一日に終了することを明らかにし、八月一日には、後継運営主体をプロポーザル方式で選定すると公表、九月十五日に地域医療振興協会を後継に選定しております。
 わずか半年という短い期間で引き継ぎを行うことや、新たに運営する地域医療振興協会の診療体制などに対し不安を募らせている住民や患者からは、日本大学による運営の継続を求める声が上がり、私のところへも多く意見や相談が寄せられました。
 都は、都内病院の開設許可を所管しており、今回の日本大学から地域医療振興協会への事業継承についても、地域医療振興協会から事前相談計画書の提出を受け、都が許可をしております。
 四月一日に開設した練馬光が丘病院の開設許可までの経緯と今後の都の取り組みについて伺います。
 日本大学医学部付属練馬光が丘病院は、東京都指定二次救急医療機関として、休日全夜間診療に取り組み、圏域有数の救急病院として活躍されるなど、東京都保健医療計画の施策の実現にも大きく貢献してまいりました。
 特に小児科は、十数名の常勤医師を配置し、住民から大きな信頼を得ており、都が実施している休日・全夜間診療事業(小児)実績では、平成二十一年、二十二年ともに一千台以上の救急車の受け入れ、このほか、隣接する埼玉県からの患者も受け入れていたと伺っております。
 一方、光が丘病院から十五キロ離れたところに小児科四十五床を持つ埼玉県志木市民病院がありますが、小児科医師不足により、四月から入院診療を中止すると発表しております。現在は通常どおり診療しているとのことですが、隣接する志木市において小児医療が不足すれば、練馬区、板橋区などの埼玉都県境地域の小児医療にも影響が及ぶ可能性があります。
 こうした医療資源の変化には、全国的な小児科医師不足の中、いつ、どこで起きても不思議ではなく、その影響を最小限にとどめることの取り組みが求められます。
 現在、都においては、小児科医師不足や、小児科を標榜する医療機関数の減少が見られるようですが、そのような現状の中でも限られた医療資源を活用し、安全・安心な小児医療体制を確保する必要があります。
 そこで、現在、都における小児救急医療体制はどのように確保されているのか伺います。
 安全で安心できる医療の実現には、例えば、緊急時においても迅速かつ確実に医療を受けられるなど、都民の病状に応じて速やかに適切な医療を受けることが可能な体制の確保が必要です。地域における、それぞれの医療機関の医療機能に基づく役割分担と、円滑な連携が必要であります。
 しかしながら、そうした医療連携は一朝一夕に体制が整備されるものではありません。光が丘病院の新しい運営主体である地域医療振興協会は、日本大学から一般病床三百四十二床を引き継いだものの、実際に引き継いだ患者は四名、稼働病床数は、六月十二日現在、百八十四床であり、現在もICU、心筋梗塞患者らを収容するCCUと、中核病院としては欠かせない産科分娩が行われていない状況です。都民に安全で安心な医療を提供するためには、引き継ぎ病院として許可された協会には、必要な体制を確保していただくことはもちろんですが、医療圏内外の地域の病院や診療所等との連携により医療を提供することが求められています。
 日ごろから地域の病院や診療所等と情報交換や患者紹介を行う中で培われる、そういった医療連携は、四月に新規開設し、一から信頼関係を構築するには大変困難が予想されます。
 そこで、都として、地域における医療連携の推進に当たりどのような取り組みを進めているのか所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 野上ゆきえ議員の一般質問にお答えいたします。
 グローバル化時代にふさわしい人材育成についてでありますが、先般の円卓会議メンバーで、国際経験豊かなメンバーの一人が、世界に出て外から日本を眺めてみると、日本という大きな船が少しずつ沈没しているのだが、船に乗っている人たちはそれに気づいていないという危機感を持ったとも述べておりました。まさにそんな感じがいたしますが、現在の日本は、まさにそのタイタニックの様相を呈していると思います。
 まだ大丈夫だろう、まだ大丈夫だろう、こんな大きな船だと。現代の最高技術でつくった船なんだからといっているうちに、タイタニックは機関室に浸水して、あっという間に沈んだわけであります。
 また、科学技術者であるメンバーからも、八〇年代まで世界の科学技術の最先端はアメリカと日本が中心だったと。しかし、九〇年代以降、世界の科学技術はアメリカとヨーロッパ、東アジアで三分されたと。しかも、日本はその東アジアのワン・オブ・ゼムに成り下がってしまったといっておりました。
 しかし、私は、これちょっと異論があるんですね。ノーベル賞というのは、平和賞とか文学賞とか経済学賞ってかなりいい加減なものでありますが、自然科学に関するノーベル賞だけは、これはきちっと実証性がありますから、非常にシビアな審査を得ていると思いますけれども、二〇〇〇年以後、アメリカを除いて日本人が獲得した自然科学におけるノーベル賞の数は、ヨーロッパの総数に匹敵するんですね。これは、私は大事なことだと思います。
 しかし、そのポテンシャルを私たちはやっぱり維持しなくちゃいけないと思いますが、いずれにしろ、国際──断っておきますけれども、アジアの諸国で自然科学におけるノーベル賞をとった人は一人もおりません。国際競争が熾烈をきわめる中、他国、とりわけアジアの国々が競争に打ち勝つべく必死で取り組んでいる一方で、我が国は危機意識も強く持たずにほとんど無為に過ごして、国際的地位を決定的に下げてしまいました。このままでは、やはりこの国の未来は非常に危ないと思います。
 今、隣の韓国のサムスンが非常に幅をきかしていますけれども、このきっかけになったのは、実は東芝がギブアップした半導体に関するプロジェクトチームのほとんどを、彼らは五倍以上の給料で引き抜いたわけですね。私、一人だけ残った人のインタビューというのをテレビで見ましたが、彼も悩むんですけれども、ある先輩に相談して、どうしようかといったら、その先輩が、君の人生だから自分で決めるがいい、ただ君がそれだけの条件で韓国に行って、あの国の科学技術の発展とか基本的な半導体のプロジェクトに参加するのは君の人生の問題だが、そうすることで君は日本における友人を失うだろうということで、彼は翻然として決心を変えて、今、東北大学の研究所の教授をしていらっしゃいますけれども、これはそれぞれの人生の問題ですから、それをとやかくいう必要はないと思いますが、しかし、サムスンなるものの原動力というのは、実は日本の科学者のチームというのがつくったということを、私たちは忘れてはならないと思います。それがまさにグローバル化の時代の一つの表象かもしませんが。
 日本の存在感を取り戻すためには、何よりも教育の立て直しが急務だと思います。戦後続けられてきたこの横並びの教育を根本から改めて、個性と競争を重視し、この可能性を存分に発揮させる、そういう教育へと大転換をしなくてはならないと思っております。国際競争、国際関係の中で、ナショナルならざるものがインターナショナルたり得ない、これは当たり前のことでありまして、例えば、日本の浮世絵というものを、すぐれたセンシビリティーを、フランスの印象派のすぐれた絵かきたちのみが評価して、そのまねまでした。ゴッホは随分その模写をかいていますけれども。いずれにしろ、自分のよって立っている国を誇りとして、その心意気を世界に向けて発信できる真の国際人の養成に取り組まなきゃならないと思っております。
 最近の商社のある社長に聞きましたが、新人を採ってみて、君は将来どこの国に行きたいかといったら、私は外国に行きたくないと。一体商社に入ってそれじゃ何をするんでしょうかね。あるいはまた一つの例で、あるゼネコンの社長に聞きましたが、これはまたちょっと筋の違う話かもしれませんが、とにかくゼネコンに入って、君は、うちは土木と建築とどっちへ行くかといったら、私は企画をやりたいと。現場も知らない人間が企画なんかできるわけがないんで、その社長が慨嘆しておりましたけれども。いずれにしろ、次代をしっかり担う人材をどうやって教育していくか、育成していくか。この最も重要で基本的な問題を、これ以上私たちは先送りするわけにはいかないと思います。
 しかるに、地方自治体が頑張っても、大阪の橋下君も慨嘆していましたが、地方が画期的な教育改革をしようたって、これ文部省が許さない。その権限はあくまで文部省にある。その文部省は何をやりましたか。ゆとりの教育ってばかなことをやって、一年間であっという間に子どもたちの学力の低下を見せた。しかも、それを正式に取り消していない。公立の学校でも気のきいた学校は、これに反発して、土曜日の授業も平気でやりましたけれども、それをとがめる能力も文部省にはない。
 私たち、やっぱりこういった問題を基本的に考えて、この教育の改革というもののイニシアチブをだれがどうやってとるかということを本気で考えていかないと、私たちは大事な機会を国家として逸するのではないかという気がいたします。
 他の質問については副知事、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔副知事猪瀬直樹君登壇〕

〇副知事(猪瀬直樹君) 東京天然ガス発電所プロジェクトについてでありますが、東日本大震災を契機として、安定的な電力供給の前提が揺らいだことを受け、自立分散型エネルギー社会の創出という目標のもと、東京産電力三百万キロワット創出プロジェクトの一環として、百万キロワット級の天然ガス発電所の設置に取り組んできました。
 昨年八月以降、関係九局から成る東京天然ガス発電所プロジェクトチームにおいて、具体的な検討を行ってきたところであります。
 本プロジェクトの目的は、首都東京がみずから地産地消の東京産エネルギーの確保に取り組むこと、東電の老朽火力のリプレースに向けた先導的取り組みとして、エネルギーの高効率化やCO2削減に寄与すること、電力市場の課題を発掘し、真に自由化された電力市場の実現に向けた取り組みを国に対して提案要求すること、この三点であります。
 本プロジェクトとしては、まず、昨年九月に、発電所に適した土地の条件を整理するとともに、その条件を満たした都有地五カ所を選定、事業可能性調査を実施しました。
 その結果、五カ所のうち三カ所について事業成立の可能性があり、東電への売電を主としつつ、一定割合を新電力に売電するスキームが効率的かつ現実的であるとの結論に至りました。
 今後は、本調査を受け、三カ所の候補地周辺の自然環境調査に着手し、引き続き事業を推進していきます。
 また、本プロジェクトにおける発電事業には、新電力を経由した売電も念頭に置いていることから、東電の送配電網を利用する際に支払う託送料金の軽減など具体的提言を、先般、枝野経済産業大臣に行ったところであります。
 きのうきょうの新聞に、託送料金一〇%値下げというふうなものが報じられていたりして、背景はいろいろありますが、今後とも、本プロジェクトを東京モデルとして、東電改革につなげていくとともに、こうした機運を醸成するという、競争環境を整備していくなど、国に対しては、さらに規制緩和などの実現を強く迫っていくつもりであります。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、専門高校の教育の質の向上についてでございますが、国際競争が激化し、若者の雇用が厳しさを増す中で、専門高校には、専門的な技術、技能を持った人材を育成し、生徒を確実に就職させていくことが求められております。
 このため、これまで企業の熟練技術者によるものづくり実習の指導、模擬株式会社の設置による商品企画や財務管理の実践、デュアルシステムの推進など、地元企業と連携した実践的な人材育成を展開してまいりました。
 今後は、学校全体として到達すべき技術、技能の水準を専門学科ごとに、産業やビジネスの社会で通用するよう高く設定いたします。その上で、生徒に将来の明確な目標を持たせ、その実現に必要となる高度な技術、技能の習得や有用な資格の取得を支援し、生徒の進路実現を図ってまいります。
 次に、専門高校と大学との連携、接続についてでございますが、専門高校は、高校で学んだことをもとに進学し、その専門性をさらに高めたいという生徒の希望にも的確にこたえていくことが必要でございます。
 このため、専門高校生の進学に当たりましては、高校で取得した専門の資格を生かした大学への推薦制度や、工業高校卒業後に都立産業技術高等専門学校四年次へ編入する制度を設けるなどして、専門高校から高等教育機関へ接続する取り組みを進めてまいりました。
 今後、大学のカリキュラムの基礎や導入部分として位置づけられるような授業を専門高校で展開するなど、高校で学習した成果を進学後に生かせる効果的な大学等との連携、接続のあり方について研究し、その成果を大学等に対して発信してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、キャップ・アンド・トレード制度を活用した再生可能エネルギーの利用拡大についてでございますが、この制度におきましては、グリーン電力証書を利用した再エネクレジットのほか、風力発電所等の電力を大規模事業所に直接送電し、削減義務の履行に利用できる、いわゆる生グリーン電力の仕組みを設けるなど、再生可能エネルギーの利用拡大を図ってまいりました。
 今後、生グリーン電力につきましては、再生可能エネルギーと高効率天然ガス発電による低炭素電力との組み合わせによって利用しやすくなるよう、年度内を目途に検討を進めてまいります。
 あわせて、再生可能エネルギー等による低炭素電力を供給する電力事業者を選択することが、削減義務の履行において大規模事業所のメリットになる仕組みについても検討を進めてまいります。
 これらを通じまして、キャップ・アンド・トレード制度による再生可能エネルギーのさらなる利用拡大を図ってまいります。
 次に、再生可能エネルギーの拡大に向けた国等への制度要求についてでございますが、都がこれまで導入を求めてまいりました固定価格買い取り制度は、本年七月からようやく開始されることになりまして、業種業態を超えて再生可能エネルギーによる発電事業への参入意欲が高まっております。
 今後、風力発電のように供給ポテンシャルが地域的に偏在する再生可能エネルギーのさらなる活用を実践するためには、送電系統の全国的な一体運用など、電力会社のエリアを超えた広域的な対応が必要になります。
 また、将来的には、現在、地域的な取り組みが始まっておりますスマートグリッドを発展させまして、系統全体で電力需要の変動に効率的に対応できる最適制御を実現することが必要でございます。
 都はこれまでも、国や東京電力に対しまして、系統電力の一体的な運用を求めてまいりましたが、今後とも、送電系統への再生可能エネルギーの優先接続や太陽光発電の大量導入時における配電網の強化等、再生可能エネルギーの活用促進に向けた積極的な取り組みを求めてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、練馬光が丘病院の開設許可までの経緯と今後の都の取り組みについてでございますが、昨年九月に、練馬区が日本大学医学部付属練馬光が丘病院の後継運営主体を公益社団法人地域医療振興協会に決定して以降、都は即座に、大学、協会及び区に対し、医療安全を確保し、円滑に引き継ぎを行うよう開設直前まで繰り返し指導を行ってまいりました。
 また、事業を継承する協会に対しましては、地域医療を維持継続していくための診療体制の確保や病棟使用等に関する具体的な計画を事前に提出させ、確認の上、開設を許可し、開設後にも、病院の運営状況や医療安全体制に関する臨時の立入検査を実施し、指導を行っております。
 今後も、適切な医療が提供される体制を確保する観点から、定期的に計画の達成状況を確認し、必要な指導助言を行ってまいります。
 次に、小児救急医療体制についてでございますが、都はこれまで、区市町村が実施いたします小児初期救急医療事業に対する支援を行いますとともに、入院が必要な救急患者に対し、小児科医師が二十四時間体制で診療を行う小児の二次救急医療機関を五十施設確保してまいりました。
 また、重篤な小児救急患者を必ず受け入れ、高度な救命治療を行うこども救命センターを都内四カ所に整備し、三次の救急医療体制を確保いたしております。
 さらに、こども救命センターを中核といたしまして、地域連携会議や研修会の開催を通じ、地域の実情に応じた医療機関相互の連携体制を構築しております。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、小児救急医療体制の確保に努めてまいります。
 最後に、地域における医療連携の推進についてでございますが、都は、患者の疾病や症状に応じて必要な医療を切れ目なく提供できるよう、がんや脳卒中等の疾病ごとに地域連携クリティカルパスの活用を促進するなど、地域の医療機関の連携体制構築を進めております。
 また、救急、小児、周産期など、広域的な医療連携体制確保が必要となる医療につきましては、二次保健医療圏等を単位として検討会を開催いたしまして、医療機関相互の実効性のあるネットワークづくりに取り組んでおります。
 さらに、医療機関に対し、東京都医療機関案内サービス「ひまわり」により、各医療機関の診療科目や保有する診療機器など医療機関に必要な情報を提供いたしております。
 今後とも、これらの取り組みを通じて医療連携を推進してまいります。

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