平成二十四年東京都議会会議録第九号

〇議長(中村明彦君) 三番三宅正彦君。
   〔三番三宅正彦君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇三番(三宅正彦君) 太平洋に浮かぶ東京の島々にとって、水産業は非常に重要な産業です。その年の漁業のよしあしが、島の経済状況を左右するといっても過言ではありません。ところが、かつては豊かな水産資源に支えられていた島の水産業も、近年は漁獲も不安定になり、価格の低迷、経費の増大などから、漁業者の経営は大変厳しい状況となっています。
 一方、沖ノ鳥島、南鳥島を含めたこれら東京の島々による排他的経済水域は、日本全体の約四割という広大な面積となっており、日本の国益上、非常に重要なものとなっています。特に小笠原の島々は東京都でありながら国境の島であり、平成十七年度からは知事の意向を受けて、沖ノ鳥島への漁業操業を開始しました。小笠原特有の縦縄漁法によってマグロ類を中心に漁獲し、地元で薫製を製造するなど、新たな産業にも寄与していると聞いています。
 こうした島々とその排他的経済水域をあらしめるためにも、水産業が営まれていることが非常に重要であると思います。
 そこで、東京の島々の基幹産業である水産業振興について、知事の所見を伺います。
 私の地元である伊豆諸島の漁業者は、近年さらに水産資源が減少したと感じているようです。まとまって漁獲できる魚種が減少し、価格も低迷する中で、比較的漁獲量があり、単価も高いキンメダイに多くの漁業者が集中しています。また、他県の漁業者も以前からキンメダイを漁獲しているため、資源の減少に危機感を抱いています。
 伊豆諸島の海における水産業を持続可能な産業とするためには、水産資源が安定していることが必要不可欠です。
 ことし二月に都の調査指導船「みやこ」が竣工しましたが、この船は最新鋭の機器を搭載し、東京都の漁業者に貢献できる調査を実施すると伺いました。
 そこで、水産資源の管理について伺います。
 次に、小笠原航路について伺います。
 小笠原は世界遺産への登録を契機に観光客が増加する一方で、さまざまな問題も浮上しています。小笠原航路において、東京─父島間を運航する「おがさわら丸」は、観光客のみならず、そこで生活する村民にとって、唯一の大変重要な生活航路ですが、時期によっては、村民でもなかなか予約がとれず、二等客室のスペースは、混雑時は寝返りもできないといった話も耳にしております。
 運航事業者も、この六月より、二等客室の一人当たりのスペースを拡充しましたが、より一層の対策が待たれるところです。
 現在の「おがさわら丸」は、平成九年三月に就航してから、十五年ほど経過していますが、小笠原航路特有の長時間の外洋航行による船舶の老朽化も進行しているようです。こうした現状にかんがみ、新たな船の建造について都の考えを伺います。
 次に、離島航空路について伺います。
 まず、就航率向上についてですが、島しょ地域と本土を結ぶ離島航空路線の拠点である調布飛行場には、大島、新島、神津島との間で一日十便就航し、年間六万人を超える利用があり、島民の生活を支える上でなくてはならない重要な拠点となっています。しかしながら、これら各島と調布飛行場を結ぶ航空路線については、梅雨どきを初めとして欠航がたびたび発生しています。
 これは調布飛行場がいまだに有視界飛行方式になっており、天候などに大きく影響を受けてしまうためです。
 島民の日常の交通手段としてのみならず、島での治療ができず都内の病院に通院する足としても利用されており、欠航が多いのは死活問題にもつながりかねない状況になっています。また、島の観光振興といった観点でも、減少している観光客を呼び戻し、離島のよさをPRしていくために、航空路の安定性の向上は重要な課題となっています。
 このような課題の解決に向け、島しょ側の三空港については既に計器飛行方式を導入し、就航率の改善に一定の効果を発揮していますが、調布飛行場には導入されていません。こうした状況を踏まえると、一刻も早く計器飛行方式を導入すべきです。
 今般、三鷹、府中、調布の地元三市との協議を始めたとのことですが、今後どのように取り組んでいくのか都の見解を伺います。
 次に、三宅島の航空路について伺います。
 昨年七月に全日空は、現在就航している航空機について、平成二十四年度末に退役させるとの方針を打ち出しました。また、退役後は、三宅島空港の千二百メートルの滑走路では離着陸できる航空機を保有していないため、路線を維持できなくなるとしています。
 もとより、離島の航空路は島民の貴重な足であり、特に三宅島は東京から約百八十キロの遠方にあり、海路では六時間以上を要するため、島民の生活を守り、観光客の誘致などを進める上で、航空路は欠くことのできない重要な交通インフラです。
 都は、全日空の現行航空機の退役方針を受けて、三宅島島民の生活を守るという観点から、有効かつ迅速な対応を行い、島民が引き続き安心して暮らせる環境を実現すべきと考えますが、現在の取り組み状況と今後の展望について伺います。
 次に、島しょ地域の防災対策について伺います。
 昨日の我が党の島しょ地域の津波防災対策にかかわる質問によって、津波避難施設の整備、地元町村と連携した避難誘導の仕組みづくり、津波ハザードマップの作成支援、そして、十一月の神津島での防災訓練の実施など、ハード、ソフト両面にわたる津波対策を推進する旨の答弁がありました。
 ことしの春に、国や都の被害想定が出され、島しょ地域では、高い津波の想定への衝撃が走り、具体的な対策を望む声が多く寄せられています。地元の町村や消防団も、現実を見据えて取り組もうとしています。ぜひ都としても力強い支援を求めたいと思います。この十一月に行う都と神津島村合同での防災訓練でも、津波からの避難訓練を実践的に行うなど、都と島しょが一体となった取り組みを期待します。
 私からは、津波防災対策における基盤ともいうべき、通信の課題について質問します。地震が起こり、津波の到来が予想されるとき、即座に、そして確実に、島民や観光客に対して、避難を呼びかける必要があります。また、津波が来た後の救助、復旧への対策のためにも、本土との連絡を確実に確保しなければなりません。
 災害時の防災行政無線の強化を図るとともに、バックアップ体制も考慮し、絶対に通信を途絶させない対策を講じていくべきと考えますが、都の取り組みを伺います。
 最後に、社会資本整備について伺います。
 公共事業による社会資本の整備は、豊かな暮らしとこれを支える経済社会を実現し、安全で持続可能な誇りの持てる国づくりに必要な財産を築くものであり、国民の安全・安心を守る役割を担っていることはいうまでもありません。
 これまで、我が国の公共事業に関する議論は、毎年どのぐらいの予算を注ぎ込むかというフローばかりが着目されてきましたが、本来は、社会資本の意義を正確に理解し、次世代に残すべき社会資本ストックを明らかにして、真に必要な社会資本の整備を進めなければなりません。
 国は確たる理念もなく、公共事業関係費を削減し続けており、このままでは現存する社会資本の維持管理すらできず、国民の安全・安心の確保が難しくなります。コンクリートから人への理念は既に破綻しています。
 一方、都は、都民の安全・安心を守るとともに、東京に活力をもたらし、経済に波及効果や、雇用創出効果が高く未来につなぐ財産をも築く公共事業に予算を重点的に配分し、歳出総額を抑制しつつ、投資的経費を八年連続で伸ばしてきました。
 政府が、この国の将来の姿を示すこともできずにいる今、国に先駆けて、災害時の人的、物的被害を最小化する事前防災の考え方に基づき、公共事業において計画的かつ賢い投資を行い、東京の強靱化を積極的に進めるべきと考えます。
 そこで、まず、都民の生命と財産を守る土砂災害対策について伺います。
 島しょ地域や多摩山間部は、地震、台風、集中豪雨に襲われるなど、厳しい自然条件のもとにあり、土砂の流出やがけ崩れなどの災害を幾度となく受けています。一たび災害が発生すれば、土砂の流出は広範囲に及び、さまざまな生活の基盤にも被害を及ぼします。八丈島でも、島の生命線ともいえる港にまで土砂が流れ込むおそれのある危険な渓流があり、不安があります。
 これまで都は、ハード、ソフト両面から土砂災害対策を進めていますが、このような地域に生活する住民が将来の世代まで安全・安心に暮らせる環境をつくるための事業を進めることが必要であると考えます。
 そこで、島しょ地域や多摩地域における都の土砂災害対策事業の取り組みについて伺います。
 また、これらの地域は、急峻な地形などから道路が限られており、こうした道路の安全・安心を確保していくためには、日ごろからの備えを確実に行うとともに、過去に防災対策として擁壁や防護さくの設置などを行った斜面も含め、状況に応じた対策を計画的かつ柔軟に行うことが必要と考えます。
 そこで、斜面の崩落や落石などによる被害の発生や孤立集落の発生などを未然に防止する道路災害防除事業の取り組みについて伺います。
 こうした災害を未然に防止する対策を行っていたとしても、災害は予期せず発生します。大雨や地震などによって、一たび土砂崩れなどの災害が発生した場合には、通行どめなどによる日常生活への影響は甚大です。
 このため、災害に速やかに対応し、一日も早く安全な通行を確保するとともに、再び同じ災害を受けないようにすることが重要です。実際に神津島では、本年三月五日に二○○ミリを超える大雨によって、都道の斜面が崩落し、一時通行どめになりました。
 復旧に向けた都の取り組みについて伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 三宅正彦議員の一般質問にお答えいたします。
 東京の島々の水産業振興についてでありますが、豊かな漁場を持つ、伊豆諸島、小笠原諸島にとって、水産業はいうまでもなく基幹産業の一つでありまして、近年、漁獲の減少、高齢化など、厳しい状況にあり、その振興が急務であります。
 加えて、私の代議士時代のことでありますが、他県の漁船がやってきて、八丈の南の水域で、のど元で乱獲をしまして、島の、要するに漁民の方々の収穫が減ったこともありました。それから、ロシア、ソビエトの底引き船が勝手にやってきて、神津島の沖でサバを乱獲したこともあって、やっぱり豊穣な漁場というのは、他県あるいは他国の漁民にとっても格好の獲物であると思いますが、そういったものをこれからも起こり得ることでありまして、また、そのたんびに、私たちも強く抗議もして、これを阻害しなくちゃいけないと思いますが、都はこれまで、水産資源の管理に必要な調査や漁場造成など、それぞれの島が必要とする振興策を実施してきておりまして、今後も、地元の要望を聞きながら、きめ細かな対応をしていきたいと思っております。
 一方、東京の島々は、我が国全体の四割に及ぶ広大な面積の排他的経済水域を生み出しております。この排他的経済水域を守るためには、経済活動である漁業が活発に行われることが非常に有効であると思います。
 例えば、あの放置されていた沖ノ鳥島に、今では東京全体の組合長になりましたが、小笠原の非常に有能な菊池さんという組合長にお願いしまして、そのために新造船も、船もつくりましたけれども、あそこに新規の漁礁をつくってもらいまして、そのために、非常に漁獲が上がるようになり、日本の漁船も沖ノ島に出かけることになりました。その結果、今まで勝手に侵入してきた韓国や台湾や、あるいはシナの漁船が姿を消したという結果にもなりました。
 いずれにしろ、広大な東京のその海域は、都民、国民の大切な財産であり、また資源であることを踏まえて、今後とも、東京の水産業の振興を図っていきたいと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁します。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、土砂災害に対する取り組みについてでございますが、集中豪雨や台風などによる土砂災害から都民の生命や財産を守るためには、砂防事業や急傾斜地崩壊対策事業などを推進することが重要でございます。
 都は、土石流やがけ崩れの危険性が高い箇所などにおいて、砂防堰堤や崩落防止のためののり枠などを整備し、地域の安全性を高めてまいりました。
 今年度は、八丈島の重要な産業基盤である八重根漁港の保全対象とする大里一ノ沢などで新たに事業に着手いたします。あわせて、大島町の地の岡沢や三宅村の鉄砲沢、夕景沢など十五カ所、多摩地域では檜原村藤原地区などで十三カ所において整備を行ってまいります。
 今後とも、関係自治体と連携して土砂災害対策を推進し、都民の安全・安心の確保に全力で取り組んでまいります。
 次に、道路災害防除事業についてでございますが、島しょや多摩山間部の都道は、地域の生活や経済活動を支えるとともに、災害時の避難や救援活動に不可欠な生命線ともなる極めて重要な社会基盤でございます。
 このため都では、道路巡回にあわせて行う日常点検に加え、すべての斜面を対象とした五年に一度の定期点検、大雨等の際に行う異常時点検などにより、斜面の状況を的確に把握し、緊急度の高い箇所から計画的に対策を実施しております。
 二十四年度の事業箇所は、国道四一一号線や八丈循環線など二十二路線、五十四カ所で、このうち経年劣化が課題となっているモルタル吹きつけ斜面につきましては、「二〇二〇年の東京」計画に基づき、二十八カ所で対策工事を実施いたします。
 今後とも、道路災害防除事業を全力で推進し、都民の安全・安心を確保してまいります。
 最後に、神津島の道路災害復旧への取り組みについてでございますが、本年三月五日に発生した大雨による斜面崩壊につきましては、崩落した土砂等が道路をふさぎ通行不能になったことから、安全な通行を確保し、生活への影響を最小限に抑えるため、大型土のうの設置など応急対策を速やかに行いました。
 本格的な復旧につきましては、崩落に至ったメカニズムを特定した上で、斜面の安定化を図る対策工法や復旧範囲などを確定し、国土交通省、財務省の立ち会いのもと、その場で事業費を決定する実地査定により既に財源を確保しております。来春には工事を完了させる予定でございます。
 今後とも、自然災害に対して、道路等の復旧に機動的に対応し、都民の安心・安全を全力で確保してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 水産資源の管理についてのご質問にお答えいたします。
 水産資源が乱獲などにより枯渇すると、その回復は困難となるため、適切な資源管理こそが必要でございます。そこで都は、伊豆諸島の重要魚種であるキンメダイの生態調査を行い、伊豆諸島海域がその産卵や幼魚の生育に重要な場所であることを明らかにいたしました。
 この結果を受けて、伊豆諸島海域で操業する東京、静岡、神奈川、千葉の漁業者による協議会において、キンメダイを守る具体策を検討し、禁漁期間の設定や操業手法の制限等の取り組みを実施しております。
 今後はさらに、二月に建造いたしました調査指導船「みやこ」を活用して、新たな水産資源の開発にも取り組み、資源の持続的な利用と島しょの水産業振興を図ってまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、新たな「おがさわら丸」の建造についてでありますが、伊豆、小笠原諸島の離島航路につきましては、国や都、町村、運航事業者などの関係者で構成される東京都離島航路地域協議会において、新船の建造を含む航路の維持改善等の調査検討を行っております。
 本協議会では、新たな「おがさわら丸」の建造についても、中期的な課題の一つとして検討を進めております。
 こうした中、世界自然遺産への登録以降、乗客数が大幅に増加し、現行の「おがさわら丸」では予約がとりづらい、客室の居住空間が狭いなど多くの苦情が寄せられております。このままでは、増加した観光客の維持が困難になるだけでなく、村民生活へのさらなる影響も懸念されます。
 このため都は、今後、小笠原村や運航事業者を初めとする関係者と、幅広い視点で改善に向けた調整を行ってまいります。
 次いで、島しょにおける災害時の通信の確保でありますが、大地震による津波の到来に備え、住民に迅速な避難を促すとともに、救命救助などの応急対策を着実に行うためには、島しょ地域における通信の確保が不可欠であります。
 このため、都ではこれまで、島しょの各支庁と町村役場に防災行政無線を整備した上で、地上系の通信回線に加え衛星回線を確保し、通信の多重化を図ってまいりました。
 今後は、町村の防災行政無線のデジタル化に向け、必要な助言や国に対する財政措置の要望などを行うとともに、万が一、防災行政無線が使用できない事態に備え、衛星携帯電話の活用などのバックアップ方策を講じてまいります。
 今後とも、島しょ町村と緊密に連携して、島しょにおける通信の確保に万全を期してまいります。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

〇港湾局長(中井敬三君) 離島航空路に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、調布飛行場への計器飛行方式の導入についてでありますが、大島、新島、神津島の各島の住民の方々にとって、調布飛行場との航空路線は、生活の安定や産業の発展に欠くことのできないものであり、その安定的な就航は極めて重要であります。
 このため、計器飛行方式を島しょ側の三空港に引き続き調布飛行場にも導入すべく取り組んでおり、これまで管制にかかわる調整を国や関係機関と進めてきております。
 さらに、ことし五月には調布飛行場の地元三市の合意を得るべく、三鷹、府中、調布市との協議を開始いたしました。
 今後、早期に三市との合意が得られるよう精力的に協議を進め、一刻も早く計器飛行方式が調布飛行場に導入できるよう全力で取り組んでまいります。
 次に、三宅島航空路線についてでありますが、離島航空路は島民の生活を支える貴重な足であり、特に三宅島にあっては、復興を一層進めていく上においても、その確保が極めて重要であります。
 都では、全日本空輸株式会社からの現行航空機の平成二十四年度末の退役通告を受けて、昨年八月から、関係局で構成する三宅島航空路調査検討プロジェクトチームで検討を進め、この四月には、三宅村の意向も踏まえ、調布─三宅島間の航空路新設が妥当との結論を得ました。
 さらに五月には、調布飛行場の地元三市の合意を得るべく、三鷹、府中、調布市と協議を開始したところであり、今後、計器飛行方式導入と同様、精力的に協議を進め、調布─三宅島間の航空路線の早期開設に全力で取り組んでまいります。

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