平成二十四年東京都議会会議録第八号

〇議長(中村明彦君) これより質問に入ります。
 百二十番大塚たかあき君。
   〔百二十番大塚たかあき君登壇〕

〇百二十番(大塚たかあき君) 冒頭に一言、述べさせていただきます。
 寛仁親王殿下におかれましては、六日午後、薨去されました。ひげの殿下として国民に親しまれ、障害者福祉、がん撲滅運動などに力を尽くされました。ここに謹んで哀悼の意を表するものです。
 さて、私は都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 まず、尖閣諸島について石原知事に何点か伺います。
 去る四月、米国ワシントン市内で行った講演における石原知事の尖閣諸島購入の表明は、国民に領土、領海について改めて考える機会を与えました。五月の日中韓サミットで野田総理は温家宝総理に対して、尖閣諸島周辺を含む海洋における中国の活動の活発化が日本国民の感情を刺激していることに言及し、中国側の冷静な対応を強く求めていますが、領土、領海に係る歴代政権への不信、不満から、多くの国民はこの石原発言を支持し、既に七万六千人余りの国民から十一億円を超える自主的な寄附が寄せられております。
 一方、所有者の意向についてはさまざまな報道がなされておりますが、この石原発言を支える尖閣諸島所有者の真意はどこにあるのか、現段階ではどこまで交渉が進んでいるのか、まずお伺いをいたします。
 さきの所信表明で、知事は、一刻も早くあの島々の権利を個人から公の所有へと切りかえ、領土と排他的経済水域を確かに守る手だてを講じる必要がありますとされましたが、私たちも基本的には賛成するものです。しかし、今回の購入表明は、尖閣諸島所有者の政治家石原慎太郎氏への信頼があってこその発言であり、所有者の意思を十全に実現するには、募金活動を行うに当たっても、事業を執行するに当たっても、東京都の実施できる事業にはおのずと限界があります。公益財団等の戦略的な組織も検討する必要があると考えますが、見解をお伺いいたします。
 地元自治体の中山義隆石垣市長には、尖閣諸島周辺海域の豊かな水産資源を地域経済の活性化につなげていくために、荒天時の避難港や無線施設、灯台等を整備するとともに、すばらしい自然と景観を持つ尖閣諸島そのものを観光資源として生かしていきたいとの意向があるようであります。知事も、石垣市や沖縄県と連携しながら、豊潤な海や豊かな自然など、島の特徴を生かした活用方法について検討するとされました。私たちも地元石垣市や沖縄県の意向をも踏まえた尖閣諸島ビジョン作成を支援し、事業化に協力するなどの将来展望を明らかにすることが、尖閣諸島問題の国民への定着を確かなものにすると考えますが、見解をお伺いいたします。
 所有がいかなる形態であれ、海上保安庁による沿岸警備の強化はもとより、水産資源や海底資源の管理に、国は当然としてその責任を果たさなければなりません。私たちは昨年九月にも、尖閣諸島について我が国固有の領土であるという歴史的事実を国際的にも明確に主張することを初め、現地調査、灯台、監視レーダーなどの設置、避難港整備、自衛隊常駐などを野田総理に申し入れていますが、地元石垣市や沖縄県の尖閣諸島有効利用への取り組みを支援するとともに、政府の全面的バックアップを確保し、国の責任による尖閣諸島の永続的な保全につなげていく戦略的な取り組みが必要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、横田基地の軍民共用化について伺います。
 ことし三月、在日米軍司令本部がある横田基地に航空自衛隊の航空総隊司令部が移動し、横田基地は日米両国の共用基地となりました。この横田基地を民間が利用する場合は、首都圏の空港容量の拡大や、多摩地域のみならず、山梨県、埼玉県、神奈川県を含めた首都圏西部地域における経済の活性化と多様な航空需要への対応などに大いに寄与する潜在力を持っています。
 知事も所信表明で触れていましたが、ことし四月、知事はキャンベル米国務次官補と面会し、横田基地の軍民共用化の早期実現を求め、帰国後には野田総理と会い、日米首脳会談の機会に横田基地の軍民共用化を改めて日米両政府間の協議事項とするよう働きかけました。
 そこで、長島総理補佐官もアメリカ国務省に前もって協力を求めるなど、軍民共用化協議の環境整備に向けた取り組みを行い、野田総理は日米首脳会談で、オバマ米大統領に横田基地の軍民共用化の検討を要請しました。
 横田基地の軍民共用化早期実現に向けて、都は国や近隣県との連携を進展させ、ともに取り組みを強めていくべきと考えますが、知事の見解をお伺いいたします。
 次に、都民投票条例について伺います。
 直接民主制については、知事も所信表明において、間接民主制を補完する重要な手段であるとされており、私たちとも大きな認識の差はないと受けとめています。
 地方自治体の条例制定による住民投票は、産業廃棄物施設や原子力発電所の誘致、建設などの是非を問う個別政策を対象とした時限設置型条例や、施策を特定しない常時設置型条例、自治基本条例などで定められております。時限設置条例では、実際に投票が行われて住民の意思が示され、その投票結果は自治体運営に反映されていきます。自治体の重要事項について議会が熟議を尽くした後に、住民投票実施を決定し、投票を行うことは、住民の政治参加を促進し、住民自治も向上することになると考えます。
 また、住民の発意により直接に地方公共団体に一定の行動をとらせる直接請求は、有権者の五十分の一以上もしくは三分の一以上という相当数の有権者による集合的行為として認められているものです。
 そこで、改めて直接請求や住民投票制度に対する石原知事の基本認識をお伺いいたします。
 今回の都民投票を求める直接請求は、福島第一原子力発電所の事故に伴い広範囲に飛散した放射性物質問題を踏まえ、原子力発電所の稼働の是非について、都民一人一人の意思表明の場を求めるものです。
 もとより私たちも、原子力発電所の稼働の是非を初めとする、日本におけるエネルギー戦略の決定には、国が第一義的な責任を有していると考えています。また、福島県や新潟県といった東京電力の原子力発電所の立地地域や当該地域住民の皆さんのさまざまな意見も尊重されるべきであります。
 また、その結果が是であれ非であれ、住民投票の結果がにしきの御旗のごとき力を持つわけでもありません。しかしながら、私たちは、直接請求による三十二万名を超える都民の皆さんが求める意思表明の場はあってしかるべきと考え、必要な修正を加え、その実現を求めるものです。
 直接請求による条例案に対する知事の見解は所信表明でもお伺いしましたが、必要な修正を加えた上での都民投票についてはどのようにお考えか、見解をお伺いいたします。
 また、例えば、国が判断材料の一つとして、オーストリアやスウェーデン、スイス、イタリア等で行われてきたような国民投票を日本で実施することもあり得るのではないでしょうか。原子力発電所の稼働の是非についての国民投票についてはどのようにお考えか、知事の見解をお伺いいたします。
 国は、特定規模電気事業者、PPSと電力会社の競争を促す、広域融通などの規制緩和を行う検討に入りました。都も国に対してPPSの発電割合を三〇%に高めていくことなど、抜本的な電力制度改革への要望を行っております。
 東京電力は、五月九日、国に総合特別事業計画を認定され、原子力損害賠償支援機構とともに、原発事故の賠償、事故を起こした原子炉の廃止措置、電力の安定供給に取り組むことになりました。その東電が、今、最も力を注ぐべきことは、値上げに関して本当に都民、国民や需要家への説明責任を果たせるのか、その根拠となる詳細な情報開示を行えるかが重要です。
 東電は、都の株主提案を定款に書き込むことに反対する意向を明確にしましたが、都においては東電が顧客サービス第一主義に基づいた経営改革を行うよう引き続き促すことが重要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、省エネ、エネルギーマネジメントについて伺います。
 昨年の夏、東京電力管内では最大六百二十万キロワットの大幅な電力不足が見込まれ、国が電気事業法に基づき、大口需要家に電力の一五%の使用制限を課すという事態に至りました。東京都みずからの事業における節電の徹底や、都民、事業者の皆様のご協力もあり、昨年の夏は一昨年と比べて約一千万キロワットの削減が実現し、計画停電を回避することができました。
 国の需給検証委員会では、ことしの夏の東京電力管内の電力供給量を五千七百七十一万キロワットと見込んでいるわけですが、この見通しについて都の認識をお伺いいたします。
 原子力発電所がすべて稼働を停止している現在の電力供給状況では、稼働させている老朽火力発電所の故障のリスクなどもあり、ことしの夏も再びピーク時の電力不足が懸念されます。計画停電や電力の使用制限を回避するためにも、生活や業務などに支障を来すことのない無理のない範囲での合理的な節電と、さらなる省エネルギー化を推進していく必要があります。ことしの夏の節電行動に向けた都の基本的考え方について、見解をお伺いいたします。
 先月、都は、東京都省エネ・エネルギーマネジメント推進方針を策定しました。この中で、将来の東京は低炭素、快適性、防災力を同時に実現するスマートエネルギー都市を目指すことが示されております。私たちもこのコンセプトに異論はなく、低炭素、快適性、防災性をあわせ持つ環境配慮型の高度防災都市の実現を期待するものです。
 そこで、東京が目指すスマートエネルギー都市のあるべき姿について、見解をお伺いいたします。
 私たちは、これまでにも何度か質問で取り上げてきたように、今後の東京には再生可能エネルギーや高効率コージェネレーションなどのできる限り低炭素な自立分散型エネルギーの確保や、エネルギーの需給両面から最適制御を行う仕組みの構築など、都市づくりでの面的エネルギー利用、地域単位のエネルギー利用の最適化に向けた取り組みがとりわけ重要と考えます。スマートエネルギー都市の実現に向け、今後、都はどのように取り組んでいくのか、見解をお伺いいたします。
 知事は所信表明で、地域独占の電力会社に頼らない東京産の電力を創出する取り組みである天然ガス発電所の建設では、三カ所の候補地において事業化が可能であると調査結果が出たとされましたが、これまでの検討の経緯や検討内容が、地元区や周辺地域住民に必ずしも周知されていないのではないでしょうか。
 天然ガス発電所プロジェクトは、その規模からも周辺地域のまちづくりに影響を与えることから、地元区や周辺地域への周知や意向確認、意見交換など、今後取り組んでいくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、都内中小規模事業者の省エネの推進です。
 東京電力による電気料金の値上げは、低圧の電気使用者については現在審査中といえ、産業、業務向けを含む事業者のコストを確実に押し上げます。
 さきの推進方針の中で、都は中小規模事業所向けの施策を打ち出していますが、CO2削減とコスト削減に資する省エネ施策の取り組みが進むことで、私は少しでも都内中小規模事業者の負担軽減につながることを期待するものです。
 特に都内中小規模事業者に対する無料省エネ診断については、東京都は既に平成二十一年度より年間六百件ペースで実施して、その実績、効果を把握していると聞いております。
 そこで、事業者の規模や使用状況などにより状況は違うものとは承知しつつも、これまでの改善提案によって、例えばどのようなコスト削減効果があったのか。また、区市町村とも連携しながら、より多くの都内中小規模事業所で省エネへの取り組みが進むことを大いに期待するものですが、見解をお伺いいたします。
 次に、学校施設の省エネ、再エネ化について伺います。
 先月、文部科学省と国土交通省は、環境を考慮した学校施設の整備をさらに進化させるため、共催で学校ゼロエネルギー化推進方策検討委員会を設置し、報告書を取りまとめました。学校施設のゼロエネルギー化を検討する理由として、学校施設が地域に身近な公共施設であり、児童生徒への環境教育の場となることや、災害時の防災拠点となること、また、年間の一次エネルギーの消費量が小さい傾向にあることなどから、ゼロエネルギー化に積極的に取り組む意義のある施設であるとされております。
 私たち都議会民主党が昨年第二回定例会において提案し、可決された省エネ条例では、都の責務として、公共施設の整備等における省エネの取り組み、災害時に備えた公共施設の自家発電機能の検証、整備、環境教育などを通じた省エネに関する意識の向上を図るとしており、都内の学校施設においても省エネ、再エネは優先すべき重要な施策です。
 本報告書を踏まえ、都教育委員会は、都内の公立学校施設の省エネ、再エネ化に向け、積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 例えば、本報告書によれば、都内における学校施設のエネルギー消費量は、暖房が二二%を占めており、冷暖房は省エネ対策の優先すべき対象とされていますが、その対策として、コンクリートに比べて熱容量や熱拡散率が小さい木材を利用した校内の木質化を進めることなども、施策の一つとして考えられますので、要望をしておきます。
 次に、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック招致について伺います。
 日本時間の五月二十四日早朝、カナダのケベックにてIOC理事会が行われ、東京が立候補都市三都市の一つに選ばれました。招致実現に向け大きな第一歩を踏み出しました。
 東京に対するIOC評価は比較的高く、前回の定例会でも答弁いただいたとおり、宿泊施設の受け入れ状況などは非常に高いものでした。
 一方、IOCの調査によるオリンピック招致への国内支持率は、イスタンブールとマドリードの七割台に対して、東京は四七%という低い結果になりました。この支持率は、都が独自に行っていた世論調査と余りにもかけ離れていたことから、この低さへのショックは大きいものです。
 このような状況から、いうまでもなく、今後の大きな課題の一つは世論喚起であり、東京は意見なしと答えた人は三〇%もいることから、どうやってこの三〇%の方々の心をつかむかが重要となります。
 例えば、オリンピックがもたらす健康遺産への取り組みも、世論喚起の一つの方法ではないでしょうか。IOCとWHOは健康的なライフスタイル推進に関する協定を結び、受動喫煙防止の条例制定など、スポーツと健康的な生活習慣推進が相乗効果を生むよう取り組んでおります。
 都民、国民に納得のいく明確な招致実現の大義をアピールし、大々的にメディアを使った効果的な招致PR活動を行っていく必要があると考えますが、今後の世論喚起のための戦略をお伺いいたします。
 次に、東京のエネルギー供給体制に関する懸念の払拭について伺います。
 今回、IOCからの評価結果では、宿泊施設の客室数がIOCの要求基準を大きく超過したことや、政府の強力な支援、コンパクトにまとまった全体計画などが、東京は高く評価されました。一方、エネルギー分野が十段階評価で五・五から八点と低めの点数となり、東日本大震災後の原発停止による電力供給の懸念が示されました。
 都は、東京地域の電力は当面問題なく、天然ガス発電所の建設が検討されていることで電力供給が進む可能性があることをIOCに説明するとのことですが、改めてIOCの電力供給の懸念払拭に向けた取り組みについて、見解をお伺いいたします。
 次に、メーンスタジアムとなる国立霞ヶ丘競技場について伺います。
 ことし三月に文部科学省が策定したスポーツ基本計画にも盛り込まれ、大臣決定とされた国立霞ヶ丘競技場の再整備は、オリンピックの招致活動における喫緊の課題です。整備に当たっては、オリンピックの陸上競技場の主な要件を超えるため、収容人員を現在の五万人から六万人以上の収容にすることや、補助競技場の整備などが必要とされ、大がかりな整備となります。
 現在、国で内容を検討しているようですが、私たち都議会民主党は、国立霞ヶ丘競技場を整備するに当たっては、オリンピックとスポーツの中心拠点となることはさることながら、オリンピックが終わった後も、東京、日本のレガシーとして残り、都民、国民にとって有益な施設となるよう、防災拠点などといった多角的な機能をあわせ持つ場所にしていかなくてはならないと考えます。
 これらの課題に速やかに対応するためにも、国主導で行われている国立競技場整備計画の骨格の早期取りまとめに、都として国への申し入れ等、積極的に働きかけていくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 最後に、IOCや世界に向けた招致の大義について伺います。
 二〇一六年の夏季五輪招致レースでは、東京が高い評価を得ていたにもかかわらず、南米初のオリンピックというテーマを掲げたリオデジャネイロが勝利をいたしました。
 このたび招致委員会は、国内向けには復興五輪というテーマに基づき、招致活動のスローガンを、「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」とされたようです。今後、ぜひこのスローガンで、私たちも一緒になって、わかりやすく都民、国民に訴えていくべきと考えますが、一方、IOC委員や世界が共感を呼ぶ招致の大義、例えば復興五輪にちなみ、各国からの温かい支援への感謝のあかしを示すといったことなども、もっと検討していかなければならないと考えます。
 五輪とスポーツの持つ可能性、社会への影響力と東京を組み合わせ、世界とIOC委員に向けて発信していくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、産業振興についてお伺いをいたします。
 まず、中小企業に対する金融支援についてです。
 平成二十一年十二月四日、中小企業金融円滑化法が施行され、金融機関は中小企業から申し込みがあった場合、できる限り貸付条件の変更等の措置をとるよう努めることとなりました。この時限立法は、ことしの三月末をもって廃案になる予定でしたが、政府は中小企業を取り巻く厳しい経済状況を踏まえ、昨年十二月二十七日、平成二十五年三月末まで再延長を決定するとともに、四月二十日には中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージを策定し、ソフトランディングに向けて施策を公表しました。
 ポスト円滑化法を見据えた対応としては、経済団体からも東京都に対して、早い段階から東京都中小企業振興公社の相談体制の強化を初め、経営改善計画の策定や実行をサポートする専門家の派遣などを求める要望書が提出されていると聞いております。
 また、昨年十二月七日、都議会民主党の代表質問では、都内中小企業の事業承継、再生支援事業として、専門家による税務対策、後継者の育成、発掘、M&Aなど、多様な手法を活用した支援の充実などを主張してきましたが、こうした取り組みを進めていくこともポスト円滑化法の対応としては重要であると考えます。
 そこで、東京都としても、今年度末をもって終了する円滑化法を見据えた中小企業に対する支援策について、早い段階から積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 また、現在、東京都では、中小企業の経営力向上フォローアップ事業として、中小企業診断士による経営診断と経営相談を実施していますが、中小企業の経営力強化に向けては、多様な主体がさまざまな角度から取り組んでいくことも必要ではないでしょうか。
 そこで私が提案したいのは、知的資産経営についてです。知的資産とは、特許やノウハウなどの知的財産だけではなく、組織や人材、ネットワーク、ブランド等の目に見えない資産のことで、企業の競争力の源泉となるものです。
 この知的資産経営については、国も、経済産業省がさまざまな政策立案、情報発信を行っているところであり、都道府県の中でも、京都府が知的資産経営を知恵の経営と呼び、報告書作成ガイドブックの作成やナビゲーターの育成、実践モデル企業の認証や融資等による支援に取り組んでいます。
 私は、東京都としても、中小企業の経営力強化に向けて、知的資産経営の推進に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、東京ビッグサイトの拡張についてです。
 昨年七月八日、私たちは東京ビッグサイトなどを視察し、以来、国際競争力の強化のためにはその拡張が急務であると、再三にわたり主張してきました。その意味からも、ことし三月十五日の予算特別委員会において、石原知事が我が会派の吉田康一郎議員の質問に対して、できる限りの拡大をできるだけ早くやりたいと答弁されたことは、率直に評価したいと思います。
 石原知事の答弁を受けて、四月には、展示会産業にかかわる業界団体からビッグサイト増設に当たっての提案がなされ、ビッグサイトの規模を第一期から第三期の三段階で、八ヘクタールから二十六・四ヘクタールに増設することなどを求めております。
 そこで、都として石原知事が明らかにした問題意識を踏まえ、ビッグサイトの拡張に向けてどのように取り組んでいるのか、見解をお伺いいたします。
 次に、展示会等への出展支援についてです。
 中小企業にとって、展示会への出展や商談会への参加が販路開拓の有効な手段となっていますが、東京都が実施している展示会等の出展支援事業は、利用の申請を一回に限っていたり、売上減少が要件であるなど、さまざまな条件が設けられており、十分な活用を図る場合の制約になっているように感じます。
 こうした条件について、限られた財源の中でより多くの会社に利用してもらうための措置としては十分理解するものですが、特に申請については何度か行うことを可能とし、中小企業の販路開拓の効果を高めるような対応を図るべきと考えます。
 私は、展示会の出展支援に関する申請の回数を見直すなどして、事業の充実につなげるべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 こうした取り組みに加えて、展示会の発展には、税関審査や関税手続のないフリーポート化の実現も急務であるといわれており、今後、こうした課題についても都の積極的な取り組みを要望するものです。
 次に、MICE誘致についてです。
 五月二十四日、日本政府観光局が発表した、ことし四月の在日外国人旅行者数は、昨年同月比で一六三・九%増と大幅に持ち直し、震災前の水準までほぼ回復しています。さきの予算特別委員会でも述べてきたように、引き続き訪日外国人客数の増減要因などを詳しく調査分析するなど、戦略的にシティーセールスを展開していくことを求めるものです。
 また、ことし十月にはIMFと世界銀行の総会が東京で開催され、加盟百八十八カ国の財務大臣を初め、関係者二万人近くが訪れる予定となっていますが、観光振興策の経済波及効果といった点からは、さらなるMICE誘致に積極的に取り組んでいくべきです。
 諸外国では、MICE誘致のために、博物館、美術館などをアフターMICEの会場として開放しており、例えばフランスではルーブル美術館やオルセー美術館などにおいて、一般見学時間外の貸し切り見学やパーティー利用に対応しているとも聞いております。
 都議会民主党は、平成二十二年九月二十八日の代表質問でも、都内には都立施設だけでも、江戸東京博物館や現代美術館など、レセプションを行うのにふさわしそうな施設があり、実際に、現代美術館では、過去にレセプション会場として使われたことがあるとして、施設の有効活用を求めてきました。
 そこで、改めて、都立の美術館や博物館などのレセプション利用を通じ、MICEの推進を図り、東京の観光振興につなげていくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、観光資源の新たな開発についてです。
 五月二十二日に開業した東京スカイツリーは、日本国じゅうの注目を集め、その足元にある東京ソラマチも大変な活況ぶりと聞いております。ことしは、お台場のダイバーシティや渋谷のヒカリエなど、商業施設としての観光スポットが次々と開業していますが、この勢いを持続、向上させていくためには、観光資源の多様化を図り、質と量の両面から底上げに取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。
 観光資源は文化財のみに限る必要はなく、観光客が魅力を感じるものであれば、公共施設なども十分に対象になるものと考えます。東京都が保有する公共インフラの中でも、例えば東京のパナマ運河といわれる江東区の小名木川の扇橋閘門や世田谷区弦巻の駒沢給水塔などは、新たな魅力のある観光資源となり得るのではないでしょうか。また、神田川・環状七号線地下調節池は、満足度が圧倒的に高い訪問場所であることが経済団体の調査結果で明らかになっております。
 私は、こうした公共インフラについても、本来の目的に限定せず、観光資源の一つと位置づけてその活用を図るべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、羽田空港の跡地問題についてです。
 東京都の積極的な関与によって、第四滑走路と国際線ターミナルが完成し、東京の玄関口が世界に開かれたことは、都民の利便性向上に加え、都市間競争を勝ち抜く上で非常に重要なステップとなりました。関係者のご努力に改めて敬意を表させていただきます。
 国際化に伴って生じた羽田空港跡地は、全体面積は約五十三ヘクタールと広大ですが、三つのゾーンに区画され、第一ゾーンは産業交流施設や多目的広場として、第二ゾーンはホテルとして民間からの事業提案を活用すると聞いております。
 先日、大田区からヒアリングしたところ、区は産業振興の観点から、展示会場の建設などを目指しているとのことです。こうした産業振興は、都としても支援していくべきと思いますが、展示会場の規模などを聞くと一・五ヘクタールと小ぶり感は否めず、現在八ヘクタールである東京ビッグサイトのさらなる拡張が見込まれる中では、跡地のスケールを生かし切れるのか、危惧感を覚えます。
 また、民間が手を挙げる第二ゾーンとの連携については、区は第二ゾーンとの一体性をできるだけ目指すとのことですが、例えば、展示会場と民間が建設するホテルなどが空中廊下等でつながるかといえば担保はされておらず、そこにグランドデザインが働くのか、不安は払拭されておりません。
 国際線ターミナルに隣接し、船着き場まで整備された羽田跡地は、国際線化によって長時間の待機が生じるトランジット客を取り込む絶好のロケーションで、ホテルなどの進出も期待され、既に東京ディズニーランドのゲートウエー構想も取りざたされております。
 世界の旅行者にとって、東京の磁力を二倍、三倍にも高める可能性を秘めた跡地の計画は、東京の未来を左右するといっても過言ではありません。羽田の拡張を強力に牽引してきた知事として、羽田の跡地に対し、どのようなイメージを持っているのか、お伺いいたします。
 次に、臨海副都心のMICE、国際観光拠点化について伺います。
 先日も都心五区のオフィス空室率が過去最高を上回ったと報じられましたが、リーマンショック以降の厳しい不動産市況は臨海副都心においても例外ではなく、その土地処分については戦略の練り直しが必要です。例えば、賃貸オフィスなどの業務・商業用途の区画においても、サービスアパートメントなどの住宅での利用を含め、複合的な利用ができるよう、柔軟な対応も検討していくべきです。
 世界的な都市間競争は厳しさを増しており、シンガポールなどの都市では、まちの魅力を高める観光資源の開発にも力を入れております。カジノは重要な国際観光資源ですが、単に賭博施設としてとらえるのではなく、大規模な展示会場などを兼ね備えた複合リゾート施設として開発し、多くの観光客やビジネスマンを引きつけております。東京でカジノを建設するのであれば、お台場が有力視されております。
 現在議論されているカジノ推進法は、推進法である性格から、仮に成立しても実施までに二年以上かかるといわれております。こうした動向も十分に見定めていくべきであり、私はカジノ法案の行方やアジアヘッドクオーター特区の指定の動向などを注視していくべきと考えます。
 いずれにしても、臨海副都心のMICE、国際観光拠点化に向けては、より柔軟にかつ戦略的に取り組んでいく必要があるものと考えますが、東京都の見解をお伺いいたします。
 次に、プラムポックスウイルス対策について伺います。
 平成二十一年に青梅市内の梅で、我が国で初めてプラムポックスウイルス、PPV、いわゆるウメ輪紋ウイルスによる病気が発見され、その後の調査により、さらに八王子市、あきる野市、日の出町、奥多摩町、福生市、羽村市でも感染した梅の木が確認されております。その後、この病気の蔓延を防止するため、農林水産省の緊急防除省令が制定され、平成二十二年二月二十日から施行されております。大きな被害を受けた農家や観光業の代表の皆様からご意見などを伺いましたが、対応の遅いことや新たな梅を栽培するまでには長い期間を要することへの不安に対するご意見が多く出されました。また、蔓延防止策の徹底への対応が懸念されております。
 プラムポックスウイルスのこれ以上の蔓延は、決してあってはならないことであり、そのための徹底した対策が必要と考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 なお、農家への補償については、関係機関のご努力により着々と進められておりますが、梅といういわば観光の主役ともいえる資源を失った観光業に携わる皆様への支援策が講じられることを要望しておきます。
 次に、多摩産材の活用について伺います。
 都議会民主党の視察では、多摩産の木材の現状についても調査いたしました。檜原村では、多摩産材を利用した中学校や図書館などを見学し、木質化が教育効果や健康によい影響を与えることなども伺ってまいりました。都では昨年、東京都公共建築物等における多摩産材利用推進方針を改定し、公共部門での多摩産材利用を推進しているところでありますが、現状では多摩産材に対する認識が不十分であるなど、その利用拡大が十分に図られているとはいいがたい状況です。
 そこで、都内区市町村における多摩産材の公共利用の実例と、より一層の公共利用の促進を図るための対策について、都の見解をお伺いいたします。
 次に、漁業振興策について伺います。
 島しょ地域の産業の柱の一つである漁業にあっては、資源の枯渇化や就業者の高齢化、燃油の高騰などさまざまな課題を抱え、大変厳しい状況が続いております。こうした中、島しょの漁業が持続可能な産業として生き残る道は、管理型の漁業への転換ではないでしょうか。
 都の水産業振興プランにおいても、漁場の整備と栽培漁業の推進がアクションプランとして挙げられ、操業効率の向上と漁業資源の持続的活用などの効果が期待されております。昨年度においては、大島、利島、神津島、八丈島周辺海域において、漁場造成が行われました。
 そこで、これまでの漁場造成の主な成果と今後の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、雇用就業対策についてお伺いいたします。
 五月二十九日、総務省が発表した、ことし四月の完全失業率は四・六%でしたが、十五歳から二十四歳の完全失業率は九・二%となるなど、若年者の失業率は世代平均の倍の水準にあります。五月三十日に開会したことしのILO総会では、若者の失業問題が主要課題の一つになっており、我が国日本においてもさらに骨太な雇用対策を展開すべく、五月二十八日に若年雇用戦略の原案を公表し、六月中にも正式決定をする見込みであると聞いております。
 既に東京都においては、昨年度より就職先が決まらないまま大学等を卒業した未就職卒業者と都内中小企業とをマッチングし、正社員化を支援する、未就職卒業者緊急就職サポート事業を実施し、今年度から、今後成長が見込まれる産業分野での就業支援を実施することとしており、こうした事業が効果を上げていくことを大いに期待するものです。
 そこで、重点産業分野での就業支援の取り組み状況も含めて、若年者の就業支援に向けた取り組みについて見解をお伺いいたします。
 次に、求職者に対する職業訓練の充実についてです。
 生活保護に対する世論の関心が高まる中、職業訓練など自立支援策への注目も高まっています。東京都としても、働く意欲のある人たちに対して、より質の高い知識や技能を身につけることができる機会を積極的に提供していくべきと考えます。
 そのためには、都が直接実施する公共職業訓練のみならず、民間の教育訓練機関等なども最大限活用しながら、内容や訓練期間なども含め、多様なニーズに対応できるよう取り組んでいく必要があります。特に、私は、高校中退者や未就職卒業者あるいは非正規労働者など、働く意欲のある若い人たちへの就職、就業訓練の充実を図っていくことは、我が国の将来のためにも極めて重要であるものと考えます。
 そこで伺いますが、こうした若い人たちに対し職業訓練の機会を与え、就職に結びつけていくことについて、東京都はどのように取り組んでいくのか、見解をお伺いいたします。
 次に、ワークライフバランスの推進について伺います。
 ワークライフバランス、すなわち仕事と家庭生活との両立に向けて、東京都は平成十九年度から、とうきょう次世代育成サポート企業に登録した中小企業に対する両立支援推進助成金事業を実施し、その実績も着実に伸びているところです。
 一方で、東日本大震災やその後の節電等を通じて、私たち日本人の多くが家族や働き方を見詰め直しており、社会全体で仕事と家庭生活との両立支援を進めていこうという機運は高まっています。
 加えて、ことし七月一日からは、育児・介護休業法の全面施行により、これまで猶予されていた従業員百人以下の事業所に対して、介護休暇の導入を初め、短時間勤務制度の導入、所定外労働の制限などが適用され、すべての企業がワークライフバランスを考えなければならない状況になっております。
 そこで、私は、社会的機運の高まりがある中で、育児・介護休業法の全面施行を契機に、ワークライフバランスに配慮した雇用環境の整備に向けた取り組みがより多くの企業で実施されるよう、東京都として積極的に支援していくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、防災対策について伺います。
 都が四つのタイプの首都直下地震等による東京の被害想定報告書を公表しました。東日本大震災による液状化や大量の帰宅困難者の発生といった東京の被害状況を反映するとともに、首都圏直下のフィリピン海プレート上面が従来の想定より十キロメートル浅いという新しい知見を取り入れるなど、現時点における最新の科学的知見を踏まえており、海溝型の元禄型関東地震も想定をしております。また、住宅の構造分布やインフラ整備など、東京のデータの変化に基づき、より実態に即したものとなっております。
 しかしながら、平成十七年、国が行った首都直下地震の被害想定は、近い将来、発生の可能性が否定できないとした首都圏で発生する十八タイプの地震を想定しており、本報告書にある四タイプ以外にも、都心西部地震や都心東部地震、羽田直下地震、プレート境界多摩地震も念頭に置く必要があります。
 今回の想定では最大震度七の地域が出るとともに、震度六強の地域が広範囲に広がっています。都民は、都内全域で強い地震が起こることを意識し、引き続き防災対策の推進に取り組むことが重要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、区市町村との減災に向けた連携について伺います。
 東日本大震災での被害や国の研究、自治体独自の検討を踏まえて、区市町村では既に地域特性に応じた防災対策に取り組んでおりますが、それぞれ解決しなければならない課題があります。
 防災機能を備えた都市づくりでは、豊島区が、老朽化した木造住宅密集地域において、居住者の高齢化や複雑な土地権利関係、建てかえ後の床の減少、相続問題、借地権者の多さなど、建てかえにおけるさまざまな課題を解決していくため、都の不燃化特区に応募し、災害に強いまちづくりに取り組もうとしております。
 帰宅困難者対策では、港区がJR東日本の駅ごとに協議会を立ち上げ、本部を駅に置き対応したいと考えていますが、JR側が了承しておりません。事業者と協定締結はふえていますが、発災後受け入れた避難者の安全確保の責任、補償などの環境整備が未解決です。
 高層集合住宅、マンションの震災対策では、防災住民組織の結成もしくは住民の地域防災組織への加入、防災に備える備蓄倉庫の設置など、自助、共助、公助のほかの取り組みも重要ですが、なかなか進みません。都営住宅や東京都住宅供給公社の高層集合住宅も同様です。
 都は、区市町村が地域で展開する防災対策の課題解決に連携協力し、減災を推進すべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、複合災害対策について伺います。
 今回の想定では、複合災害で予想される展開が記されました。海溝型地震である元禄型関東地震が発生した場合、東京湾内の区部沿岸部に到達する津波は最大で二・六一メートルになります。そのため、水門が閉じた場合の浸水想定では、遡上した津波によって多摩川や荒川などの河川敷などが一部浸水するとされております。
 また、元禄型関東地震による津波が高潮と同時に発生した場合には、防潮堤を超えて浸水被害が生じる可能性がある、さらに、地震発生時に水門が機能しなかった場合には、大田区、中央区、江東区、江戸川区などの東京湾沿岸部の浸水想定地域への浸水被害が想定されるほか、地震動や津波により海岸や河川の堤防が損壊した場合には、浸水被害が拡大するおそれがあるとのことです。
 こうした複合災害のシナリオを受けて、都が把握する震災、水害対策の課題と強化策についてお伺いをいたします。
 もう一つの複合災害として、急傾斜危険地区等における被害の増加が想定されております。仮に地震時に傾斜崩壊等が生じなかった場合でも、その後の長雨や集中豪雨により傾斜崩壊等が生じる可能性があるとのことです。大雨による土砂災害への対応が重要です。
 昨年は台風十二号の豪雨などにより、和歌山県、奈良県を初め、土石流やがけ崩れなど土砂災害が発生し、多くの死者、行方不明者を出しました。多摩地域には多くの土砂災害危険箇所が存在していることから、これから台風や集中豪雨などが予想される中、都民の生命、財産を土砂災害から守るため、備えを講じる必要があります。
 そこで、土砂災害に対する東京都の取り組みについて見解をお伺いいたします。
 次に、災害対策法の見直しの取り組みについて伺います。
 未曾有の被害をもたらした東日本大震災を通じて行われた防災への取り組みと得られた教訓を踏まえ、今後必ず起こるとされる大規模地震に備えて、災害対策法制を整備していく必要があります。
 国は、防災対策推進検討会議の中でそのあり方を議論して、先月十八日、災害対策基本法改正案を閣議決定いたしました。国においては、首都直下地震の発生を見据え、都域を越えて避難する被災都民の受け入れが円滑に行われるよう、受け入れや調整手続の整備といった広域避難システムをつくることとなっていますが、減災の考え方や自助、共助の対策の明確化、復興の枠組み整備など、大規模災害に対応したさらなる改正、その他災害対策法制の見直しも不可欠です。
 都としても、東日本大震災での被害対応や被災地支援を踏まえた教訓を踏まえて、国に対して、都道府県の役割における具体的な提案を行うなど、今後の大規模災害対策の強化にともに取り組んでいただきたいと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 次に、災害時のボランティア活動の課題について伺います。
 東日本大震災の発生時、東京においては帰宅困難者が大量に発生し、これらの人々を受け入れた各大学においては、学生による災害ボランティア活動が行われました。都庁に隣接する工学院大学においても、当日、約一千人の帰宅困難者を受け入れ、学生たちが率先して支援を行いました。また、未曾有の被害に見舞われた岩手、宮城、福島の三県へは、都民を初めとした多くの人々が駆けつけて、ボランティア活動に加わり、避難所での炊き出しや瓦れきの除去などの被災地支援を行いました。
 被災地の多様なニーズに対応する災害ボランティアは、大規模災害での応急復旧の各場面で大きな役割を果たすことが改めて認識されました。
 その一方で、被災地で活動した全国のボランティアの中には、事故に巻き込まれた方や、過酷な場面から精神的な苦痛を受けた方もおられ、保険への加入や精神的なケアなど、安全確保や補償のための後押しが課題と考えられます。
 首都直下地震が発生した場合には、都にも災害ボランティアなどの受け入れと活動支援に関する総合窓口が設置され、ボランティアコーディネーターを災害ボランティア活動拠点に派遣するなど、広域的な支援を図ることになっております。ボランティアの重要性が高まる中、大規模災害時のボランティア活動がより円滑に行われるため、環境整備を図っていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、放射性物質の把握について伺います。
 本年四月、山口県で起きた化学プラントの爆発事故では、火災現場から五百メートル程度しか離れていない倉庫に劣化ウランが多数保管されていたことが明らかになりました。劣化ウランは放射線を発し、人体への悪影響が懸念されます。火災で延焼すれば、広範囲に放射性物質が拡散し、甚大な影響が出るおそれがあります。
 こうした危険な物質である劣化ウランは、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づいて、文部科学省への届け出が義務づけられておりますが、届け出られた情報がその地域の都道府県や市町村に提供される仕組みになっておりません。同じ放射性物質でも、医療分野で用いられるエックス線や沃素などは、法令に基づき、総務省消防庁を経由して都道府県、市町村へと伝達されるのに比べ、法制度上十分な体制とはいえません。
 一方、東京消防庁は、消防活動に必要な情報を収集するため、火災予防条例に基づいて、学校や研究施設から劣化ウランに関する届け出を受けております。劣化ウランなどの核物質はテロの標的にされ得るなど、慎重な対応が必要ともいえますが、どこにどのような危険物があるのか把握し、対策を検討することは重要です。地域防災計画の前提として、情報を把握できるよう検討を進めていくべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 次に、南海トラフ地震の想定と島しょ地域での対策について伺います。
 海溝型の大規模地震による津波想定が島しょ地域においては非常に高く、各島では迅速な避難が不可欠です。中長期的な課題として、海岸保全施設や津波軽減効果をあわせ持つ港湾、漁港施設の整備が必要とされますが、喫緊の対策としては減災対策が課題となります。
 現在、各町村においては津波避難計画の再構築が行われつつあると思われますが、新たな避難路の確保、地震発生から津波の襲来までが短時間であることから、港湾区域内に観光客や島民が避難するための避難施設の整備、また、長期的に孤立のおそれのある島しょ地域では備蓄倉庫の整備、また、さらに場合によっては島外への避難などが考えられます。最も重要である人命を守るためのこうした減災対策への支援について、都の見解をお伺いいたします。
 次に、今後の都市開発について伺います。
 まず、都市における森と緑の再生について伺います。
 一本の美しく強い木ほど神聖で模範的なものはない、ヘルマン・ヘッセは、著書「庭仕事の愉しみ」の中で、凛とした木と人生を重ね合わせ、その本質を説いています。私がこの本をふと思い起こしたのは、永平寺の杉を切る瞬間について、直木哲氏から聞いたことがきっかけでした。
 現在、東京ミッドタウンを初め日本橋川におけるプランターを活用した護岸緑化など、都内では森と緑の再生を幅広く手がける直木氏は、請われて永平寺の樹木再生プロジェクトに参加し、樹齢六百年を超える永平寺の間伐と再生を試みてきました。
 樹齢六百年を超える神聖なる木々を百歳にも満たない人間が伐採するには、専門家といえども覚悟と責任が問われ、一本の木を切るのに六人がかりで一カ月もかけて木と対話すると、切る瞬間には木の声が聞こえてくるのだといいます。
 樹木に対して神々の息吹を感じ取り、畏敬の念を覚えるのは、日本人特有のメンタリティーなのかもしれませんが、神聖な樹木を守り育てるのも人の手であることを教えてくれる逸話です。植える、伐採する、育てる、あがめる、また植える、先人から受け継いできた命のリレーは、人知を超える迫力を持って、今に姿をあらわしております。
 知事は、これまでにも水の都や風の道を提唱するなど、近代都市に自然の力を吹き込む努力を続けてこられました。私は、永平寺が参道の杉を守り育ててきたことに見られるような日本人のメンタリティーが、世界の人々に真の豊かさを覚せいさせ、豊潤な都市の形成にかけがえのないものを気づかせてくれるものと思います。そこで、都市における森と緑の再生について、知事の見解をお伺いいたします。
 さて、東日本大震災におけるマンションの被害を見ますと、昭和五十六年以前の旧耐震基準で建てられたマンションの損傷割合が大きくなっており、これらのマンションを耐震化する緊急性が改めて確認されております。
 都では、昨年六月に策定した東京緊急対策二〇一一の中で、マンション耐震化促進に向けた取り組みを緊急対策の一つとして取り上げ、学識経験者などから成る専門家会議を設置し、耐震化促進のための新たな実効性ある方策を検討してきました。この会議の議論を踏まえ、昨年十一月には、耐震化を促進するための法制度の改正について国に対して緊急提案を行っております。
 そこで、会議の議論を踏まえたマンション耐震化促進に向けた東京都のこれまで及び今後の取り組みについて見解をお伺いいたします。
 都内の分譲マンションストックは増加を続けており、百五十万戸を超えている一方、築四十年以上のマンションもふえ続け、今後さらなる急増が予想されております。こうしたマンションについては、大規模改修による長寿命化や建てかえによる再生を促すことが求められております。中でもマンションの建てかえについては、都は昨年度末まで、マンション建替え円滑化法に基づきマンション建てかえの認可を行ってきましたが、その認可数は、平成十四年の法施行以来平成二十三年度末まで、わずか二十九件にとどまっております。
 私たちは、費用負担やいわゆる既存不適格マンションなどの諸問題があると認識していますが、マンションの建てかえが進まない理由について、改めて都の認識と今後の取り組みについて見解をお伺いいたします。
 マンションに限らず、商業ビルなどその他の用途の建築物においても、既存不適格の問題により老朽化した建築物がそのまま放置され、市街地全体が寂れているようなケースがあります。このような老朽建築物の更新方策について見解をお伺いいたします。
 次に、教育施策について伺います。
 この間、東京都教育委員会は、これまでの都立高校改革を踏まえた新たな都立高校改革推進計画を策定するとともに、特別支援教育推進計画第三次実施計画をまとめ、後期中等教育、特別支援教育のより一層の充実に取り組んでいます。
 また、近年の子どもの体力低下と学力への影響を踏まえ、総合的な子どもの基礎体力の向上にも努めてこられました。これらを着実に推進するために、教育庁組織をまとめ、その先頭に立ってこられた大原教育長に敬意を表するとともに、これが本会議での最後の質問の機会になりますので、心よりご苦労さまでしたと述べさせていただきます。
 では、最後の質問をさせていただきます。
 初めに、発達障害の早期発見、早期支援を促進していくための就学時健診について伺います。
 発達障害の児童が就学する際、就学先の小学校が児童の個々の特性を把握し、事前に支援体制を築くことが重要です。そこで、児童の発達障害の有無と、発達障害の特性を早期に把握するためには、区市町村における乳幼児健診や母子保健相談、就学時健診が大変重要な機会と考えます。
 しかし、従来の就学時健診では発達障害を把握できないことも多々あると聞きます。これは、対人関係の中であらわれやすい発達障害の特性をこれまでの就学時健診では把握しにくいということが要因であると考えます。したがって、発達障害の児童の個々の特性を把握し、就学先での支援に結びつけていくには、発達障害の特性を踏まえた就学時健診を実施することが必要と考えます。
 都教育委員会は、教員が円滑な学級運営を図り、発達障害の児童一人一人の特性に合った指導を行っていくためにも、区市町村と連携し、就学時健診の実施内容、方法の充実を図っていくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、発達障害の児童生徒に対する自立と社会参加に向けた支援について伺います。
 発達障害の有無にかかわらず、将来自立し、社会参加していくための教育が改めて児童生徒にとって重要であることはいうまでもありません。
 しかし、近年の総務省の調査では、いわゆるニートが全国で約六十万人おり、厚生労働省は、ニートに占める発達障害者の割合が二割強であると報告しています。このため、発達障害の若者がニートのような状態に至ることを未然に防ぎ、日本の将来を担う若者として育成する対策が必要です。
 そこで、就学前から高校、大学に至るまで、障害特性を踏まえ、継続的に支援を行っていくことが重要であると考えます。発達障害の児童生徒が各発達段階で直面し、抱え込みやすい問題は異なります。例えば、小学生段階では、衝動的な行動から周囲とのトラブルが生じることがあり、中学生段階では、自我の芽生えから自尊感情を低下させ、場合によっては不登校状態に至ることがあります。これらの問題に対して適切に支援し、一人一人の自立と社会参加を実現していくことが重要と考えます。
 今年度より都教育委員会が実施予定の医療等と連携した発達障害児への教育支援モデルの研究においては、自立と社会参加に向けた支援の検討も行っていくべきと考えますが、見解を伺います。
 以上で都議会民主党を代表しての質問を終えます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 大塚たかあき議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、尖閣諸島に関する四問の質問についてでありますけれども、まとめてお答えいたしますが、尖閣諸島の所有者の栗原さんとは、私が国会議員の時代からこの問題に取り組む中で、いわば人間同士の縁の不思議さもありまして深い知己を得たもので、一族としては極めて強い政治不信がありながら、私のいる東京にならば売ってもよいということになりました。
 交渉の内容については、相手のあることなので、現時点では話せることはございませんが、公益財団設置の検討については、今回のねらいが個人から公に所有権を切りかえ、その安定を図ることにありますので、現時点では、解散もあり得る公益団体よりも、公共団体での所有、活用が望ましいと考えています。
 地元石垣市や沖縄県とは、所信表明でも述べたとおり連携をして、あの豊穣な海や豊かな自然など、島の特徴を生かした活用方法を練り上げていきたいと思っています。内容については、今後しかるべき段階でお示しをしたいと思います。近々、東京みずからが船を仕立てて必要な調査を行うつもりでおります。
 最後に、国との関係についてでありますが、歴代の政権は、国民の生命、財産を守るという国政の大眼目を軽んじて、国際社会の熾烈な国益のせめぎ合いの中で、アメリカの顔をうかがい、シナの顔色をうかがって、主体性も戦略も持たないままに漂流してきました。そしてこの春に至って、シナが尖閣諸島における日本の実効支配を打破する、人民日報で宣言し、いわばこれから強盗に入るぞと声明をしている段になっても、肝心の家の戸締まりもしないという感覚は、私、一人の政治家としても全く理解できないものでありました。
 この切迫した状況でも動かない国とは対照的に、日本人の国家への熱い思いは、既に十一億円を超える拠金として寄せられているわけでありまして、この短期間にこれだけの額が集まるのは、東京の行動への賛意とともに、これまでの国の弱腰な態度への国民の怒りと不信の声ととらえるべきだと思っております。
 シナの特殊船の衝突事件で政府が見せた、地方の一検事に責任を押しつけて、かつまた肝心のビデオを公開しなかったりするという事なかれ主義の態度は、もはや通用しないと思いますし、政府も都の行動をバックアップすべきだと私は思います。
 次いで、横田基地の軍民共用化についてでありますが、首都圏の空港容量の拡大を図る横田の共用化は、我が国の国際競争力を強化し、国力を維持するために不可欠な国家のプロジェクトであると思います。
 私は九年前、日米両政府を動かして、小泉、ブッシュの日米首脳会談にこの問題を取り上げさせて、ナショナルイシューとして取り上げさせて、交渉の端緒を開きましたが、しかし、その共用化の意義を認識しない外務省は、軍事運用の課題から難色を示すアメリカ側の主張をうのみにして、その顔色をうかがうだけで、消極的な姿勢をとり続けてきました。
 日本における空運のアメリカ側の基地に関しての共用というのは、既に冷戦が非常にたけなわだったあのころ、現在の青森空港ができる前に、既に何度も領空に対するロシアの飛行機の侵犯に対して三沢基地から日米両空軍がスクランブルをかけている。その時代でもなお、一応肝心な部分は遮へいしながら共用しておりました。そういう事例があるわけでありますが、しかしその後、普天間基地の問題が迷走するに至って、共用化の交渉においても政府は有効な手だてを講じることなく、いたずらに時間が消費されてきました。
 このような国の不作為に業を煮やして、四月には、私自身渡米して、共用化が実現するよう米国国務省の要人とも直談判してまいりましたが、帰国後、野田総理に直接面談して事を要請し、彼がワシントンに赴いた際の日米首脳会談の折に、正式な議題として取り上げさせました。共用化の交渉再開への足がかりを、また何とかつくることができました。これは非常にアメリカ側も日本の外務省も嫌がったんですけれども、両首脳が事を判断して、ナショナルイシューとして再登録できたと思っております。
 引き続き首都圏の自治体と連携しつつ、共用化の実現に向け、日本側の体制を固め直して、国の関係省庁と都が一枚岩となって、アメリカとの交渉に取り組んでいきたいと思っております。
 次いで、直接請求と住民投票制度についてでありますが、直接請求や住民投票という直接民主制が、間接民主制を補充する重要な手段であることは論をまたないと思います。
 しかし、今回の条例案が提出されている原発稼働の是非に関していえば、一自治体の住民投票に、これはなじむものではないと思います。
 そもそもエネルギーの問題は、国家発展のかなめであります。しかるに国は、どれぐらいのタイムスパンで、どの程度の経済成長を目指すのか、そのためにはいかなるエネルギーをどれだけ確保していくかについて、いまだに明確な方向性を打ち出しておりません。そのシミュレーションも行っておりません。政治が責任を持って決断し、早急にエネルギーの基本戦略を策定すべきであります。
 その上で、原発稼働の是非は、国が、安全性はもちろん、経済性、産業政策、温暖化対策、安全保障などを複合的に考慮して、専門的な知見も踏まえ、理性的かつ冷静に判断すべきであります。
 住民投票という手段で、ただ観念的に原発の是非だけを問い、その結果がにしきの御旗のごとく力を持つならば、これは立地地域の人々もないがしろにするばかりか、国を滅ぼしかねない危険なことにもなりかねないと思います。
 ゆえに、都民投票の条例案には反対であります。
 次いで、修正案についての考えでありますが、修正案がどういうものかまだわかりませんし、今の段階ではお答えできません。しかし、ただいまの質問を聞いておりますと、先般提出した反対意見の趣旨について理解されているようでありますが、それでなぜ修正までして条例を制定し、都民投票を行うのか、私には理解できません。
 いずれにせよ、原子力発電所の稼働の是非は、政治が理性的な討議のもとで冷静に複合的に判断すべき問題であります。
 次いで、原発稼働の是非に対する国民投票についてでありますが、昨年、都は全国に先駆けて、安全を確認した震災の瓦れきの受け入れを開始しましたが、最初は都民の一部から、何ゆえか強い反発を受けました。他の県では、県知事みずからが説明に行ったものの、実際に存在しない、ただの瓦れきを、どういう意味か恐れる住民から猛反発を受けて、受け入れを断念したのも皆さんの記憶にあると思います。
 放射能に対する日本人の特有なセンチメント、あるいはある種のエゴがもたらしたともいえるこうした状況を見るにつけても、仮に住民投票で受け入れの可否を決めるなど無責任ともいえる方法をとれば、東京もどうなっていたかわからないと思います。しかし、東京の決断は、大方の都民、国民の理解の共感を得ていると思います。都の行動は国に重い腰を上げさせ、号令も出させました。呼応する自治体もようやくあらわれてきて、今後、被災地の復旧、復興を大きく加速することになると思います。
 私はかつて、安全を確認した瓦れきの受け入れになお反対する人々に対してどう答えていいかと問われましたので、問答無用と強い姿勢をあえて発しました。これは、国民から負託を受けた政治家は、たとえ有権者には不人気な事柄であっても、国家全体、国民全体のためになるのであれば、みずからの信念で決断し、やり遂げねばならない。それが政治家の使命であり、その責任は選挙で甘んじて受ければよいという趣旨で申し上げました。
 国家の安危を左右する問題である原発の稼働の是非に関して、今求められることは、ただ観念的にその是非のみを問うことでも、困難な課題からその場しのぎで逃げて、国民に判断を任せてしまうことでもないと思います。国会の場での理性的な討議や専門的な知見に基づいて、政治が不人気を恐れず、国民、国家の行く末を見据えた責任ある決断を下すことだと思います。
 なお、質問の中で、ヨーロッパ諸国の国民投票の話もございましたが、そもそも他国と陸続きのヨーロッパと島国の我が国とは、置かれた地勢的な状況が全く違っております。
 例えば、イタリアは国民投票で原発をやめましたが、隣の原発大国のフランスから電力を輸入しているのも、これが現実であります。都議会の皆様には、政治家として議会制民主主義の真の意味と役割を十分認識し、賢明な判断をお願いしたいと思います。
 次いで、羽田空港の跡地についてでありますが、古来より、人、物の交流は、新しい文明へのアクセスとして重要な役割を果たしてきました。今日、空港は、国家の玄関口として、その国の文明を表象する施設であります。
 私は、知事就任以来、国を動かし、羽田空港の国際化を推進してきました。盟友でありました亀井静香君が政調会長のときに二人で図りまして、渋る国交省をほとんど恐喝して予算をつけさせて、あの四本目の滑走路を実現しましたが、今や、米国のほか、ヨーロッパやシンガポールなど世界の多くの都市と首都東京がダイレクトに結ばれておりまして、既に観光やビジネスにその効果があらわれてきております。
 これに隣接する跡地についても、空港と一体となった利用を図ることで、羽田空港の価値を最大限に発揮させていくことが重要であると思います。あの跡地に、この首都圏に欠けている巨大な会議場やそれに付随するホテルなども導入して、都心に出るまでもなく大きな国際会議を、この日本に到着した瞬間に持てるようにすることで、羽田の持つ国際空港機能を一層効果的に発揮させていきたいと思っております。この件については、既に国交省と意見を交換し、意見の一致を見ております。
 今後も、羽田空港を首都東京の活力を高めるインフラとして十分に機能させ、我が国全体の国際競争力の強化を図っていきます。
 次いで、都市における森と緑の再生についてでありますが、我々日本人は、自然への畏敬と愛着の念を抱いて、自然との共生の中で生活を営んできました。とりわけ森と緑は、人間の感性を豊かに保ち続けるために不可欠なものでありまして、人の心に安らぎを与えるかけがえのないものであります。
 首都東京の中心において、凛とした威厳を醸し出している神宮の森は、明治天皇が崩御された後、先人が日本列島の森の原風景であるクスやシイなどの木々を用いて築いたものでありまして、これはまさに日本人の心が都市づくりの中に具現された事例であると思います。
 我々は、こうした先人の取り組みに学びまして、現代の都市づくりの中で、豊かな市街地の緑と永続する都市の森を築いていかなければならないと思います。
 都民とともに、皇居にも匹敵する広さの、現在、海の森の整備を進めるなど、自然と融合した風格ある都市東京を創出し、次世代へ引き継いでいきたいと思っております。
 他の質問については、副知事、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁します。
   〔副知事猪瀬直樹君登壇〕

〇副知事(猪瀬直樹君) 東京電力の経営改革についてでありますが、福島第一原発事故、その後の計画停電や電気料金の値上げなどによって、都民、国民の東電への信頼は大きく揺らぎました。一度失った信頼を取り戻すことは容易ではないが、顧客サービス第一を使命とする電力会社に生まれ変わるためには、東電は不退転の覚悟で、みずからの経営改革に取り組まなければいけません。また、東電改革は、地域独占に安住する九電力体制そのものの改革に波及するものでなければなりません。
 こうした認識のもと、東京都は筆頭株主としての使命を全うすべく、東電の改革を後押しするための五項目にわたる株主提案を行いました。このうち、東電内部からの監視を強めるための社外取締役の選任については、会社提案に盛り込まれることになりました。
 残る四項目、顧客サービス第一を使命とする経営理念を定款に明記すること、徹底した情報開示により経営を透明化すること、設備投資への競争原理を導入すること、高効率で環境負荷の少ない火力発電設備への更新を行うこと、この残る四項目は、定款ですね、ここに書き込まれていません。中身的には入っていますが、定款としては書き込まれていない。
 定款というのは会社の憲法ですから、この定款の中に、いまだに宿泊施設やスポーツ施設の経営とか、不動産の売買とか、そういった経営理念じゃない、なくすべきものが入っているんだが、顧客サービスを第一の使命とするという言葉が入っていない。
 こういうことで、東電がみずから改革を進めていく決意を内外に示すためには、こういう定款に記入することは不可欠なものであり、したがって、東京都は、多くの株主の賛同を得ることが改革を進める上で大きな力となることから、十万株以上の株式を所有する約四百法人に要請文を送付しました。
 また、その他の株主については、東京都のホームページなどで広く賛同を呼びかけています。どこに丸して返したらいいかというふうに全部書いてありますので、ぜひごらんいただきたい。
 六月二十七日に開催される株主総会では、東電の経営陣のみならず、一万人を超える株主の前で、直接、提案の趣旨説明と意見表明を行い、抜本的な経営改革を訴えていきます。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、公立学校施設における省エネ、再エネ化の取り組みについてでございますが、都立学校の改築や大規模改修を行う際、省エネ・再エネ東京仕様等を適用し、高効率のエアコンや照明等の省エネ設備と太陽光発電等の再エネ設備を導入しております。
 また、小中学校につきましては、今月をCO2削減アクション月間と位置づけ、児童生徒に対して節水や節電、省資源等、環境に配慮した行動を身につけられるよう、区市町村教育委員会と連携して環境教育を進めており、省エネ、再エネに関する意識の向上に取り組んでおります。こうした取り組みを推進しますとともに、都立学校における実践事例や国の補助金を含めたさまざまな支援策について区市町村教育委員会に情報提供するなど、小中学校施設の省エネ、再エネ化を支援してまいります。
 次に、就学時健康診断の実施内容、方法の充実についてでございますが、発達障害の児童生徒が充実した学校生活を送るためには、発達障害を早期に把握し、個々の特性に応じた支援を行うことが重要でございます。
 都教育委員会では、平成二十年度と二十一年度の二年間にわたり、発達障害に対応した就学時健康診断におけるスクリーニング項目の開発と実施、検証等を行ってまいりました。この中で、就学時健康診断に集団活動場面での行動観察を導入することが、対人関係における個々の児童の特性の把握に有効であることが明らかになりました。
 このため、本研究に基づく実践事例を蓄積し、その検証結果を区市町村教育委員会に提供することで、就学時健康診断の実施内容、方法の充実に努めてまいります。
 次に、発達障害の児童生徒の自立と社会参加に向けた支援についてでございますが、発達障害の児童生徒の自立と社会参加を促すためには、教育と医療、福祉等が連携し、発達障害に早期に気づくとともに、就学前から学校卒業後までの一貫性のある継続的な支援を行っていくことが重要でございます。
 都教育委員会では、今年度から医療等と連携した発達障害児への教育支援モデルの研究を実施し、発達障害児の増加の現状分析や、各発達段階で必要となる対応について、医療等と連携して実証的に研究することとしております。今後、この研究を通じて得られた知見を発達障害児の指導や支援に活用することによりまして、自立と社会参加の促進を図ってまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 土砂災害に対する取り組みについてでございますが、集中豪雨や台風などによる土砂災害から都民の生命や財産を守るためには、ハード、ソフト両面からの対策を推進することが重要でございます。
 このため、都は、ハード対策として、土石流やがけ崩れの危険性が高い箇所や過去に災害が発生した箇所において、砂防事業や急傾斜崩壊対策事業などを実施しております。
 また、ソフト対策として、がけ崩れなどが発生した場合に危険が生じるおそれのある範囲を土砂災害警戒区域などに指定し、区市町村による警戒避難体制の整備を促進しております。この区域指定は平成十七年度から順次進めており、二十三年度末までに多摩地域で四千五十三カ所を指定しております。
 今後とも、関係自治体と連携し、安全・安心な都市東京の実現を目指してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 六点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、電力の需給見通しについてでございますが、東京電力管内のこの夏の電力需給見通しは、供給力五千七百七十一万キロワットに対しまして、最大電力需要は猛暑の場合でも五千五百二十万キロワットと見込まれております。また、現実に猛暑の夏になったとしましても、需給が逼迫する可能性のある日や時間帯は限られるものと認識をしております。
 次に、ことしの夏以降の節電に関する基本的な考え方についてでございますが、昨年夏の大幅な電力不足を踏まえました徹底した節電の経験の総括とこの夏の電力需給見通しを踏まえまして、第一に、むだを排除し、無理なく長続きできる省エネ対策を推進すること、第二に、ピークを見定め、必要なときにしっかり節電をすること、第三に、経済活動や都市のにぎわい、快適性を損なう取り組みは原則的に実施しないことという三点を賢い節電三原則として明らかにしたところでございまして、今後、この考え方に基づきまして取り組みを促進してまいります。
 次に、スマートエネルギー都市のあるべき姿についてでございますが、気候変動対策に先導的に取り組むとともに、都市の魅力と知的生産性の向上を図り、また災害にも備えるため、第一に、賢い節電と低炭素なエネルギー利用を経済社会活動に内在化すること、第二に、オフィス空間、居住環境の快適性を確保する節電、省エネの最適制御を行うこと、第三に、高度な防災力を備えるエネルギー利用の多元化を図ることという三点を目指すべきスマートエネルギー都市の姿として明らかにし、今後、実現を目指して取り組みを進めていくこととしたところでございます。
 次に、スマートエネルギー都市の実現に向けた取り組みについてでございますが、取り組みの方向性として、節電、省エネルギーの技術やノウハウを最大限活用すること、低炭素、自立分散型エネルギーの利用を進めること、エネルギー利用のさらなる効率化を実現するエネルギーマネジメントの仕組みが組み込まれた都市づくりを実現することという三点を実現していくことで、スマートエネルギー都市の実現を目指してまいります。
 次に、天然ガス発電所についてでございますが、昨年八月、猪瀬副知事をリーダーとする関係九局から成る東京天然ガス発電所プロジェクトチームを立ち上げ、百万キロワット級の発電所設置に向けた検討を公開のもとに行ってまいりました。
 昨年九月には、都有地を一定の条件でスクリーニングし、発電所の適地として五カ所を発表いたしました。この五カ所につきまして、採算面や技術面などから事業可能性調査を行い、このうち三カ所の候補地について、事業成立の可能性があるとの調査結果をこのたび取りまとめ、公表しております。
 プロジェクトの検討経過は、猪瀬副知事が会議終了後その都度記者会見を行うとともに、ホームページに掲載するなど、広く都民に明らかにしてまいりました。また、地元の理解をいただくために、関係区に対しても説明を行ってきたところでございます。
 今後とも、関係区や都民に周知をした上で、発電所の候補地周辺の自然環境についての調査に着手し、事業を次のステップに進めてまいります。
 最後に、中小規模事業所の省エネの促進についてでございますが、都では、個々の事業者の実情に応じた省エネ対策を推進するため、具体的な節電、省エネのアドバイスを行う省エネ診断を実施しております。これまで、照明照度の見直しなどの運用改善を中心とした提案を行ってきております。診断結果では、おおむね一五%程度のCO2削減が見込まれまして、相応の光熱水費削減が可能と考えております。
 また、区市町村との連携につきましては、都はこれまで、区市町村が主催します研修会に省エネの専門家を派遣するなどの施策を行っておりますが、本年はこれを夏に向けて重点的に実施し、中小事業者のコスト削減にもつながる省エネ対策を支援してまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) オリンピック・パラリンピック招致に係る四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、世論喚起のための戦略についてでございます。
 二〇二〇年の大会を東京で開催することは、スポーツや健康への都民、国民の関心を高めるとともに、都市環境の改善やバリアフリー化の加速、経済の活性化など、あらゆる分野に効果をもたらすものでございます。こうした開催効果を的確にわかりやすく、都民、国民に伝えることが重要でございまして、そのためにはメディアを活用した広報展開が効果的でございます。
 具体的には、「広報東京都」など既存の広報媒体の活用に加え、人気のあるテレビ番組や雑誌とのタイアップなど社会的に影響力のあるメディアと連携しながら、招致活動に対する国民、都民の関心を大いに喚起してまいります。
 次に、大会における電力供給についてでございます。
 IOCワーキンググループの評価レポートでは、電力供給について注視が必要とのコメントがございます。都としては、東京産の電力の創出など、電力の安定供給に向けた都独自の取り組みを進めております。また、国においても、中長期的なエネルギー政策指針であるエネルギー基本計画の見直しを進めておりまして、ことしの夏までに改定される予定でございます。
 一方、大会開催時の競技会場などで必要となる電気量は、供給力に対して極めて小さいと考えております。さらに、省エネルギー型施設としての整備の推進などによりまして、電力需給への影響を少なくなるよう努めてまいります。これらの取り組みを、招致活動のあらゆる機会を通じ、IOC委員を初め関係者に丁寧に説明してまいります。
 次に、国立霞ヶ丘競技場の再整備についてでございます。
 一九六四年の東京大会のレガシーである国立霞ヶ丘競技場は、約五十年にわたり日本を代表するスポーツの拠点として広く都民、国民に親しまれてきました。今回、国がスポーツ基本計画の趣旨に基づき競技場の建てかえに向けて動き出したことは、スポーツ国際都市の実現を目指す東京都にとっても大変有意義なことでございます。
 建てかえ計画につきましては、現在、日本スポーツ振興センターが主催いたします将来構想有識者会議において検討が進められておりますが、周辺環境との調和や大会後の利活用を含め、世界に誇れるスタジアムの計画を立候補ファイルに反映できますよう、国及び日本スポーツ振興センターに対し、早期に計画を固めることを、引き続き強く要請してまいります。
 最後に、招致に向けての大義やテーマについてでございます。
 本年二月に策定いたしました申請ファイルでは、二〇二〇年大会の東京開催を、震災から復興を目指す我が国にとって、明確な目標と団結をもたらし、支援を寄せてくれた世界の人々へ感謝を示す機会になるとし、また、大会の開催は、スポーツの持つ大きな力が、困難に直面した人々を励まし、勇気づけることを世界の人々に示すことになると掲げております。
 このような東京の大会理念は、去る五月二十三日の立候補都市選定の際のIOCワーキンググループのレポートにおきましても、スポーツの力を通じて国を結びつけ、新しい世代の人々に活力を与えるという明確なビジョンがあると高く評価されたところでございます。
 今後は、来年一月に提出する立候補ファイルの策定に向けて、このスポーツの力が、人々に夢や希望、勇気を与え、いかに社会全体に活力をもたらすかということを一層強調いたしまして、IOC評価委員会の来日時などあらゆる機会をとらえまして、広く世界にアピールしてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 十二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業支援についてでございます。
 高い技術力やすぐれた製品などの経営資源を持ちながら厳しい経営状況にある中小企業を支援することは、東京の産業の活力を確保する上で重要であります。
 都は、このような中小企業に対して、かねてから事業承継・再生支援事業によりまして総合的な支援を行っております。具体的には、窓口相談を初め、財務、経営分析等を通じて事業承継や再生の方針を提示し、中小企業振興公社の助成事業などを活用した支援を行っており、着実に成果を上げております。
 なお、中小企業金融円滑化法は、国の政策として平成二十一年に制定されました。国は、今年度末で終了としておりますが、終了に伴う中小企業への支援策については十分とはいえず、都内中小企業団体からも強い懸念が示されております。同法の終了に伴う支援につきましては、国が責任を持って対応すべきものと考えております。
 次に、中小企業における知的資産経営についてでありますが、中小企業が、特許等の知的財産はもとより、人材、ネットワークなど無形の資産を活用し、経営力の強化を図ることは重要であります。
 都は、既に知的財産総合センターで、特許や意匠等に係る知的財産の保護を初め、営業情報や技術情報を保護する方法などを企業の実態に応じてアドバイスを行っており、その件数は年間五千件を超えております。また、経営力の向上のため、中小企業が組織力や人的資産などを活用して行う新たな取り組みに対しまして、経営革新計画の承認を行っております。計画を承認した企業には、低利融資や特許関係料金の減免、販路開拓等の支援を実施しております。
 今後とも、こうした取り組みにより、中小企業の経営力の向上を促進してまいります。
 次に、東京ビッグサイトの拡張についてであります。
 現在、主に三つの視点から検討を進めております。一つ目は、拡張用地について、ビッグサイト周囲の土地の現在の利用状況、法令上の制約、利用可能性など、二つ目は、埋立地でありますことから、地盤の状況を踏まえた建設コストと技術的課題、三つ目は、将来の展示会開催需要の見通しを踏まえた運営における採算性の確保などでございます。
 今後、これらの点について精査を行い、拡張の原案を取りまとめてまいります。さらに、利用者等の意見を聞きながら検討を進める考えでございます。
 次に、展示会等への出展支援についてであります。
 都は、経営診断を通じて都内中小企業の抱える課題を明確化した上で、そうした課題の解決に向けた取り組みを支援してまいりました。経営診断の結果、販路開拓が必要とされた企業に対しては、展示会等出展支援助成事業により出展費用等の助成を行っております。本事業による助成申請は、現在、一企業当たり一回となっております。
 今後、円高など中小企業を取り巻く厳しい経営環境を踏まえながら、支援のあり方について検討を行ってまいります。
 次に、MICE誘致に向けた都立施設の活用についてであります。
 都内におけるMICE開催に合わせ、文化施設等を活用する取り組みは、多くの訪日外国人旅行者に東京の魅力を訴える手法として効果的であると認識しております。
 都は、既に国際会議等の機会をとらえ、外国人参加者向けに美術館などを訪問先に組み込んだ観光ツアーを実施し、参加者から好評を得ております。また、レセプションなどの貸し出し利用につきましては、東京都現代美術館等で行っていると承知しております。
 こうした利用につきましては、法令上特段の制約はなく、それぞれの施設の目的や美術品保護の観点等を十分に踏まえた上で、所管部署とともに活用の可能性を検討してまいります。
 次に、観光資源の新たな開発についてでありますが、これまで観光資源として認識されていませんでした工場や研究施設などが近年注目を集め、新たな観光スポットになっている事例もございます。こうした視点に立ちますと、都が保有する公共施設の中にも、観光資源としての魅力を持つものが数多く存在していると考えます。
 一方、ご指摘の閘門や調節池等の公共施設は、安全や防災等のための施設であり、そうした目的を十分に踏まえなければなりません。
 したがって、各施設が持つ本来の目的や機能を妨げないことを前提に、新たな観光資源としての活用の可能性について検討してまいります。
 次に、PPV、ウメ輪紋ウイルス対策についてであります。
 この病気は、植物防疫法に基づき緊急防除を行うべき重要病害であります。このため、農林水産省は平成二十二年一月に防除区域を定め、感染する可能性のある植物を防除区域外に移動することを制限するとともに、都に対し、緊急防除への協力を指示いたしました。
 都は、この指示に基づき、平成二十一年度から延べ五千人を動員し、関係市町村の協力を得て、感染樹の調査や廃棄作業等を実施しております。平成二十三年度までに約二万二千本の感染樹等の廃棄と、その所有者に対する補償交渉を行ってまいりました。
 今年度も推定七千本以上の伐採が見込まれており、こうした作業を継続してまいります。
 次に、多摩産材の活用についてでありますが、都はこれまで、区市町村に対し、多摩産材の利用を働きかけるとともに、先行事例を支援するため、実際に多摩産材を使用する場合の費用の補助などを行ってまいりました。こうした取り組みもあり、建築資材の大部分に多摩産材を用いた図書館や小学校が整備され、公共施設の内装や什器にも活用されるなど、多くの区市町村で公共利用の実例が出てまいりました。
 今年度は、区市町村向けに木材の利用に関する説明会を開催するとともに、多摩産材の活用事例集を作成するなど、多摩産材を利用する効果や意義を、区市町村に対し積極的にPRしてまいります。
 次に、島しょにおける漁場の造成による成果と今後の取り組みについてでありますが、都ではこれまで、魚が集まりやすくなる魚礁を神津島と八丈島で、イセエビやサザエを増産するための築いそを大島と利島でそれぞれ整備し、漁場の造成に取り組んでまいりました。
 その成果として、漁港からの移動時間や魚群の探索時間が短縮されるとともに、燃料などの経費の削減にもつながり、効率的な漁業操業が可能となりました。
 また、今年度は、引き続き大島、利島、神津島周辺において漁場を造成する予定であります。
 今後とも、各町村や漁業協同組合の要望を踏まえ、事業の費用対効果を検証した上で対応を進めてまいります。
 次に、若年者の就業支援に向けた取り組みについてであります。
 若者を取り巻く雇用環境は、失業率が高い水準にあるなど、依然として厳しい状況にございます。この問題の本質的な解決のためには、国が実効性のある経済対策を進め、雇用を創出することが不可欠であります。
 都としては、意欲ある若者に対し、東京しごとセンターにおけるきめ細かい支援や合同就職面接会の実施に加え、今年度は、未就職卒業者緊急サポート事業の規模を七百五十人から一千人に拡充いたしました。
 また、太陽光発電など新たなエネルギーに関連する分野を初めとする成長産業に若者の就業を促す、重点産業分野就業支援プログラムを六月から開始しております。
 こうした施策を通じ、意欲ある若者の就業を支援してまいります。
 次に、若者に対する職業訓練についてであります。
 即戦力となる知識や技能を付与する職業訓練の受講機会を提供することは、働く意欲のある若者を就職に結びつける上で効果的であります。このため都は、みずから実施する訓練と民間委託訓練を組み合わせ、求職者の受講機会の拡大を図っております。
 今年度は、職業能力開発センターで、若者向けに、機械加工や溶接など延べ三十二科目、年間一千二百八十五名の定員で訓練を実施するほか、民間のノウハウを活用し、医療事務や情報処理など多様な求職者向け委託訓練を、年間一万二千人を超える規模で展開しております。
 こうした取り組みの中で、高校中退者なども含め、幅広く若者の就職を支援してまいります。
 最後に、ワークライフバランスの推進についてであります。
 労働者が生き生きと働きながら、子育てなど家庭における役割を果たすためには、仕事と家庭生活の両立が可能となる雇用環境を整備することが重要であります。
 都はこれまで、社内体制の整備など両立支援に取り組む企業への助成を行うとともに、すぐれた取り組みを進める企業を認定するほか、働き方を見直す先進的な事例を支援するなど、社会的機運の醸成も図ってまいりました。
 本年七月からは、改正育児・介護休業法が全面施行されるなど、ワークライフバランスに対する社会の理解と認識も前進しております。
 今後も、ワークライフバランスの一層の推進に向け施策を着実に実施するとともに、認定企業等の取り組みの成果を広く社会に発信してまいります。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

〇港湾局長(中井敬三君) 臨海副都心のMICE、国際観光拠点化についてでありますが、シンガポール、ソウルなどのアジア諸都市では、人、物、情報、技術が集まり、大きな経済波及効果をもたらすMICE分野で戦略的な取り組みが進められております。厳しい都市間競争を勝ち抜くためには、都においても、MICE機能の一層の充実と新しい観光資源の創出に向け、民間の豊かな発想力を効果的に活用することが重要であります。
 そこで、今年度新たに創設した都独自の助成制度を活用して先駆的な事業を支援し、事業者の創意工夫を引き出して開発を促進するなどの取り組みを進めており、既にさまざまな分野から多様な提案をいただいております。さらに、アジアヘッドクオーター特区による規制緩和や税制支援も最大限に活用できるよう努めてまいります。
 これらにより、臨海副都心が日本経済を牽引するMICE、国際観光の重要な戦略拠点となるよう、引き続き全力で取り組んでまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、都民による防災対策の推進についてでございますが、今回の被害想定では、東京に起こり得るさまざまな地震像とそれによる被害を明らかにするため、首都直下地震、海溝型地震、活断層の地震など、あらゆるタイプの地震を対象とした上で、その中で発生すると東京に大きな影響をもたらす四つの地震を選定し、最新の科学的知見に基づいて検証を行ったものでございます。
 東京の防災力を高度化するためには、こうした被害想定の内容を都民に正確に伝え、都民一人一人による自助、共助の取り組みを進める必要がございます。このため都は、ホームページや「広報東京都」を活用して新たな被害想定を多くの都民に伝えるとともに、その内容をわかりやすくまとめた概要版を作成するなど、都民の理解を促進してまいります。
 また、先日認定いたしました東京防災隣組三十六団体を核として、その活動を広く波及させるなど、都民による自助、共助の取り組みを推進してまいります。
 次いで、区市町村の防災対策との連携協力でございますが、大規模災害に備えた減災対策を推進するためには、住民に直結した取り組みを行う区市町村と、広域的な立場から支援を行う東京都が相互に連携協力して取り組むことが必要でございます。
 このため、都は、木造住宅密集地域の不燃化促進、駅等での利用者保護などの帰宅困難者対策の推進、さらには防災隣組の認定を通じた地域の自助、共助の後押しなど、さまざまな防災対策を区市町村との連携協力のもとで進めております。
 今回策定いたしました被害想定や、それを踏まえて修正する東京都地域防災計画に基づき、今後とも区市町村が実施する地域の防災対策への積極的な助言、協力を行うことにより、東京の防災力の向上を図ってまいります。
 次いで、複合災害などへの備えについてでございますが、都民の生命を守り、都市機能の維持を図るため、都はこれまでも、東京湾沿岸部における水門、防潮堤などの整備を進めてまいりましたが、あらゆる事態を想定し、浸水時に備えた対策を講じておくことは重要でございます。
 このため、今回の被害想定では、水門が閉鎖された場合と機能しなかった場合の二つの条件で検証を行うとともに、津波と高潮が同時に発生した場合や堤防が損壊した場合など、起こり得るさまざまなリスクを防災対策上の課題として示しました。
 このような内容を踏まえ、水門、排水機場等の耐震、耐水対策や高潮対策センターの二拠点化などを推進するとともに、広域避難のあり方について検討し、大規模災害に対する備えを着実に講じてまいります。
 次いで、災害対策法制の見直しへの取り組みについてでございますが、発災時において国、都道府県、区市町村が相互に連携し、円滑に行動するためには、活動の根拠となる法制度が適切に整備されていることが重要でございます。
 このため、都はこれまでも、震災復興対策の法制化や災害救助制度の見直しなど、実態を踏まえた制度変更を国に求めてまいりました。また、お話の自治体間の広域応援について定めた災害対策基本法の改正案に対しても、新たな規定が自治体間の迅速な支援をかえって損なうことのないよう、全国知事会を通じて申し入れております。
 国は、発災時の国庫負担のあり方なども含め、今後も同法の見直しを検討するとしており、都としては、現場の実態を踏まえた法改正が行われるよう、引き続き国に対し強く働きをかけてまいります。
 次いで、放射性物質の把握についてでございますが、放射性物質等の保管施設における事故を防止し、災害時に的確な対応を講じることは、都民の安全を確保する上で重要であり、そのためには放射性物質の情報を適切に把握する必要がございます。
 都は、法令に基づき、国から放射性物質にかかわる情報提供を受けております。このうち劣化ウラン等の核物質につきましては、治安対策上の理由により国から情報が提供されておりませんが、火災予防条例に基づく届け出により、消防活動に必要な情報を東京消防庁が把握し、災害対応に活用しております。
 今後とも、東京消防庁など関係局と連携し、災害対策に支障が生じることのないよう、放射性物質の情報を適切に把握してまいります。
 最後に、島しょ町村の津波減災対策への支援についてでございますが、海溝型の大規模地震の発生によって島しょ部に到来することが予想される高い津波から人命を守るためには、各島における避難計画を見直すなど、減災対策を推進する必要がございます。
 このため都は、広域自治体として島しょ町村のこうした取り組みを支援するため、被害想定の各種データなどの情報を提供することや、津波による詳細な浸水想定を共同で作成するなどにより、避難誘導の仕組みづくりに積極的に協力をしてまいります。
 今後とも、島しょ町村と緊密に連携し、島しょの津波減災対策の支援に取り組んでまいります。
   〔生活文化局長井澤勇治君登壇〕

〇生活文化局長(井澤勇治君) 災害ボランティア活動の環境整備についてでございますが、大規模災害時には、被災地の応急復旧支援にボランティアが大きな力を発揮しており、都としても、その力を十分に生かしていくための環境整備が重要であると認識しております。
 東日本大震災では、被災地のニーズとボランティアとのマッチングを行うコーディネーターが不足し、都は、都民ボランティアの派遣に引き続き、現在までに延べ百二十人のボランティアコーディネーターを被災地に派遣しております。この経験を踏まえ、「二〇二〇年の東京」への実行プログラムにおいてコーディネーターの育成に取り組むこととし、新たに演習や訓練等を取り入れた実践的な養成講座を設け、今月、その募集を開始いたしました。
 今後、本事業を通じてボランティアコーディネーターを計画的に養成し、首都直下地震等の災害時において全国から集まるボランティアが円滑に活動できるよう努めてまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、マンションの耐震化についてでございますが、都は昨年度、マンションの耐震化促進施策に関する専門家会議を設置し、耐震化を促進する上での法的な課題について検討を行いました。この専門家会議での検討を踏まえ、昨年十一月、耐震性が低いマンションの耐震改修や建てかえについて合意要件を緩和することなど、法制度の改正に関し国に緊急提案いたしました。
 今後も、引き続き国に対して働きかけを行うとともに、マンション管理組合を直接訪問し、耐震診断実施に向けた助言や誘導を行う啓発隊を今年度から派遣するなど、マンションの耐震化促進に取り組んでまいります。
 次に、マンションの建てかえについてでございますが、分譲マンションは区分所有関係にあるため、建てかえに向けた合意形成が難しく、都はこれまでガイドブックの作成や相談対応などにより、合意形成に向けた情報提供や支援を進めてまいりました。
 こうした取り組みを行う中で、住民の高齢化等に伴う管理組合活動の低下や建築、法律等の専門的な知識の不足など、合意形成を図る上でさまざまな課題があることが明らかになっております。
 また、容積率制限や日影規制等が導入される以前に建設された既存不適格マンションでは、建てかえ後に従前建物の規模を確保できないなどの課題もございます。こうした課題に対応するため、都はこれまでも、管理組合への建てかえ・改修アドバイザーの派遣や、建てかえ時の共用部分の工事費への補助などを実施してまいりました。
 今後も、こうした取り組みや啓発隊の派遣などにより、マンションの再生が適切に行われるよう支援してまいります。
 最後に、老朽建築物の更新についてでございますが、建築時に適法であっても、法改正による容積率制度の導入などに伴い不適合な部分が生じた、いわゆる既存不適格建築物は、建築基準法に基づき、建てかえ時等には法令に適合させることとなっております。
 国は昨年度、既存不適格建築物のうち、従前と同一規模での建てかえが困難となっている老朽建築物について実態調査を行っており、引き続き建てかえ方策を検討するとしております。
 都は、今後の国の動向を注視しながら適切に対応してまいります。

〇議長(中村明彦君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後二時五十八分休憩

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