平成二十四年東京都議会会議録第四号

〇副議長(ともとし春久君) 九十七番泉谷つよし君。
   〔九十七番泉谷つよし君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇九十七番(泉谷つよし君) 生活保護受給者の数は年々増加し、全国で二百七万人を超え、過去最高になりました。
 東京都も例外ではなく、その数は毎年増加しています。特に高齢者の受給者が増加し、その中でも身寄りのない高齢者も数多く存在します。
 都心部では、高齢化に伴い葬儀の数も増加し、火葬場は予約でいっぱいになりつつありますが、火葬場は地域住民の反対も多いことから、新たに建設をすることもかなり困難になりつつあります。
 東京都が運営する瑞江葬儀場は、実に生活保護受給者の火葬がおよそ三割となり、増加の傾向にあります。
 二十三区内の民間火葬場を見てみますと、生活保護受給者の火葬は、一日三件と限定されることが多く、身寄りのない生活保護受給者の火葬は後回しにされ、申し込みから火葬されるまで、四、五日は当たり前になっています。この遺体の保管料は一日五千円程度で、費用に関しましては市区町村の費用となり、地方の負担となっております。
 そこで、東京都としましても、瑞江の例のように、今後、生活保護受給者の葬儀が増加することが予想されることから、身寄りのないことをかんがみ、二件増加し五件とするなど、受け入れ数を拡大するよう働きかけていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、平成二十四年度に改正されます介護保険法改正についてお伺いします。
 東京都では、平成二十七年に高齢者人口が三百十万人を超え、都民の四人に一人が高齢者となる超高齢者社会が到来します。高齢化率はその後も上昇を続け、平成四十七年には三〇・七%に達する見込みです。
 また、核家族化の進行など、家族形態の変化に伴い、高齢者の単身世帯や高齢夫婦のみの世帯が増加していきます。そのような時代背景の中、平成十二年度に創設された介護保険制度は、この間さまざまな改正がなされ、高齢者の暮らしを支える仕組みとして定着してきました。来年度には、三年に一度の大幅な見直しの年になっています。
 平成二十四年四月施行の改正介護保険法をよく読んでみますと、高齢者が住みなれた地域で安心して暮らし続けられるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを切れ目なく提供する地域包括ケアシステムの実現に向けた取り組みを推進することが、国及び地方公共団体の責務とされています。
 また、同改正法では、地域包括ケアシステムを推進するための具体策として、新たに、二十四時間対応の定期巡回・随時対応型サービスや複数のサービスを組み合わせて提供する複合型サービスなどが示されています。これらのサービスについて、東京都は平成二十三年七月に実施しました介護報酬改定に関する緊急提言の中で、早朝、夜間帯の人員確保を可能とする介護報酬水準を設定すること等を国に提言していますが、定期巡回・随時対応型サービスについては、多数頻繁な訪問をすることから、特に夜間や雨の日など、駐車スペースの確保に困ることも想定されています。
 定期巡回・随時対応型訪問介護看護が導入されることについて、その報酬水準も含めて、都はどのように受けとめているのか所見をお伺いします。
 次に、介護職員等によるたんの吸引についてお伺いいたします。
 特別養護老人ホーム等では、高齢化や要介護度の重度化に伴い、医療的ケアを必要とする入所者がふえています。国は当面、やむを得ない措置として、介護職員等が看護職員等と連携してたんの吸引と経管栄養を行うことを認めていました。しかし、法改正により、平成二十四年四月から介護福祉士及び一定の研修を受けた介護職員等が、一定の条件のもとでこうした行為を実施できるようになります。
 東京都は、介護職員等に対する研修やたんの吸引などを行う事業者の登録等を実施することとされています。
 研修につきましては、都は介護職員向けのたんの吸引等の研修を実施していますが、その募集人員は七十名程度であり、希望者の多くは研修を受講することができなかったと聞いております。
 四月以降も一定の経過措置が設けられており、たんの吸引業務ができなくなるということはないようですが、事業者の受講希望を最大限踏まえた研修を行うべきです。来年度のたんの吸引研修や登録事務の円滑な実施に向け、都としてどのような準備を進めているのかお伺いいたします。
 次に、地域包括支援センターが行う、要支援一、二の方々のケアプラン作成についてですが、委託可能件数が、居宅介護支援事業所ごとに、所属ケアマネジャー一人当たり八件という規制が今現在あります。この規制により、地域包括支援センターはまとまった件数を外部に委託することができず、業務負担軽減の障害になっています。
 しかしながら、今後ますます高齢者がふえ、プラン件数も増加していく中で、地域包括支援センターが総合的、包括的、継続的に業務を遂行していくためには、現在の委託件数の制限を撤廃しなければ、その役割を果たすことはできないと私は懸念しておりました。その意味において、都が以前から国への提言において委託件数の制限撤廃を求めていたことを評価するものであります。
 そして今回、国においてこの委託件数の制限を撤廃する方針が示されました。地域包括ケアシステムの構築に向けて、より一層重要な役割を担う地域包括支援センターを支援するためにも、今後とも、国に対して有益な提言を行うよう要望しておきます。
 次に、特別養護老人ホームの整備についてお伺いします。
 東京都は、特別養護老人ホームの用地費補助につきましては、所期の目的を達成したとして、平成二十年度の着工分をもって廃止しております。そしてそのかわりに、高齢者が中重度の要介護状態になっても、可能な限り住みなれた自宅や地域で生活を継続できるようにするため、平成十八年四月に創設された地域密着型サービスの整備促進が進められており、そのうち認知症高齢者グループホームについて、平成二十六年度末までに定員一万人までふやす計画になっています。
 しかし、入居者の加齢がさらに進むことで要介護度が重度化することは避けられず、重度要介護者の受け皿施設としての特別養護老人ホームの整備は依然として重要ですが、どのように整備していくのか見解をお伺いします。
 次に、介護サービス情報の公表制度の見直しについてお伺いいたします。
 平成十八年度に、利用者が質のよい事業所を判断する仕組みとして公表制度が導入されましたが、結局のところ、利用者は、近くの事業所や知り合いの事業所を選ぶことが多く、まだまだ十分に機能しているとはいいがたい面があります。
 また、事業所への訪問調査について、これまで私も問題提起してきたところですが、今回の見直しでは、都が必要と認めた場合に実施する仕組みに変更されました。今後の都の方針を伺うとともに、調査したデータを貴重な資料として、介護制度の改正等のために役立てていただきたいと思いますが、所見をお伺いします。
 次に、高齢者の住まいについてお伺いします。
 東京都は、平成二十二年度から高齢者の新たな住まい東京モデルとして、適切な負担で入居できるケアつき住まいや居室面積要件の緩和等により、家賃負担を軽減した都市型軽費老人ホームの設置を進めており、また、高齢者の居住安定確保プランを福祉保健局と都市整備局が共同で策定し、高齢者の居住安定確保に向けた取り組みを総合的、計画的に推進するための基本的な方針と実現のための施策を示しました。
 また、平成二十三年十月には改正高齢者住まい法が施行され、国土交通省と厚生労働省共管の制度として、都知事への登録制度であるサービスつき高齢者向け住宅制度が新たに創設されました。
 このように、高齢者の住まいについていろいろな制度が構築されているにもかかわらず、実際、高齢者のもとに情報がなかなか届きにくくなっているのも事実であります。
 高齢者は、若者のようにインターネットで情報を得ることができず、人からの伝達によってしか情報を得ることができないのです。
 今後、情報の伝達はどのような手段で行う予定なのかお教えください。
 次に、介護人材の育成についてお伺いします。
 高齢化の進行とともに、医療ニーズの高い高齢者や重度の要介護者、単身の高齢者世帯等が増加しており、在宅療養生活を支える質の高いケアマネジメントやサービスを確保することが求められています。そのためには、ケアマネジャーや介護職員等が基本的な医療知識を習得することが不可欠です。
 都はこうした状況に対し、ケアマネジャーについては、平成二十一年度から三年間で千四百人の在宅医療サポート介護支援専門員を養成し、さらに訪問リハビリテーションについても、今後新たに人材育成研修を実施するなど、在宅での医療的ケアに対応できる人材の育成について、いち早く取り組みを進めていることについては評価するものです。
 一方、訪問介護サービスにおいては、訪問介護員とケアマネジャー、高齢者をつなぐ重要な役割を担うサービス提供責任者の負担が大きく、どこの事業所でも、なり手を探すのに苦労しているのが実態です。
 現在、サービス提供責任者は、実務経験三年以上のホームヘルパー二級の資格でよいとされていますが、今回の報酬改定では、経過措置があるものの、介護福祉士等の資格がないと介護報酬が減算されるということです。
 今後、介護現場での質の高いサービスが確保されるためには、介護職員の介護福祉士への国家資格取得が大切だと考えますが、都は、資格取得のために、どのような支援を考えているのかお伺いいたします。
 次に、要介護認定についてお伺いします。
 介護保険は国の制度であり、要介護認定は全国一律の基準によって定められておりますが、認定を受けたご本人や家族から、認定結果が軽過ぎるのではないか、また、市区町村によって要介護認定に差があるのではないかといった声を聞くことがあります。
 要介護認定を行うのは保険者である市区町村ですが、こうした声が聞かれないよう、都は市区町村への指導を強化するなど、認定の適正化を推進していくべきだと考えますが、所見をお伺いします。
 次に、シルバー交番設置事業についてお伺いします。
 都は、平成二十二年度から、二十四時間三百六十五日ワンストップサービス窓口の機能を担うシルバー交番設置事業の推進に努め、二十三年度までに三十カ所整備される予定と聞いております。
 シルバー交番は、高齢者に対し訪問活動、情報の一元的収集、共有化、インフォーマルサービスを含めた提供体制のコーディネート、安否確認を行うと同時に、単身、夫婦のみ高齢者世帯等に緊急通報システムや生活リズムセンサーを設置し、緊急事態に対応できる仕組みを構築するものですが、今後、都内で何カ所設置する予定なのか、事業計画についてお聞きいたします。
 最後に、来年度のスタートまであと一カ月となりましたが、介護保険料、後期高齢者医療の保険料も値上げが現実のものとなり、二十三区では国保料値上げも余儀なくされています。
 保険者として介護保険制度の運営を担っている市区町村の間には、現行のままでは制度を維持できないという不安感が広がっています。高齢者人口が今後もふえていく中、今後五年、十年といった長期的な観点から、東京都の高齢者施策をどのように推進していこうと考えるのか所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 泉谷つよし議員の一般質問にお答え申し上げます。
 私からは、九点のご質問にお答えをいたします。
 まず、二十三区内の民営火葬場での生活保護受給者の火葬の受け入れについてでございますが、都としては、お話のような身寄りのない生活保護受給者の火葬受け入れがおくれるといったことは承知しておらず、現在の体制で十分対応していると認識をいたしております。
 なお、二十三区内にある公営火葬場二施設、民営火葬場七施設、合わせて九施設の年間火葬可能数の合計は約十六万七千体でございまして、年間死亡者数の約七万人に対応可能な状況となっております。
 次に、定期巡回・随時対応型訪問介護看護についてでございますが、今回導入されるこのサービスは、日中、夜間を通じて定期巡回と随時の訪問介護、訪問看護を行うものでございまして、要介護高齢者の在宅生活を支える効果が期待されております。
 都は、昨年七月、このサービスの介護報酬につきまして、早朝、夜間の人員確保が可能となる適切な水準とするよう国に緊急提言を行い、今回の報酬改定では、一カ月当たりの定額制導入や区市町村が独自に報酬を加算できることなどが反映をされております。
 今後、このサービスの実施状況を把握し、区市町村など関係者の意見も聞きながら、介護報酬や運営基準について、必要に応じて国に提言をしてまいります。
 次に、介護職員等によるたんの吸引等の研修についてでございますが、平成二十四年四月から、都道府県研修を受講し登録された事業所に従事するなど、一定の要件を満たす介護職員等は、たんの吸引を行うことができることとなりました。
 このため、都は、本年二月から研修を実施いたしておりますが、七十人の募集規模を大幅に上回る申し込みがあったため、受講人数を百二十六人までふやしているところでございます。
 来年度は、今回の応募状況を踏まえまして、希望者ができる限り研修を受講することができますよう、研修の方法や回数について検討を行い、規模を拡大して実施をいたします。また、現在、介護事業者に対し、たんの吸引等を行う事業所としての登録意向を確認しておりまして、それを踏まえて、登録事務が円滑に実施できるよう準備を進めてまいります。
 次に、特別養護老人ホームの整備についてでございますが、都は、保険者である区市町村が地域の介護ニーズを踏まえて算定をいたしましたサービス見込み量に基づき、特別養護老人ホームの計画的な整備を進めており、現在策定中の第五期高齢者保健福祉計画においては、平成二十四年度からの三年間で約五千人分をふやし、四万五千人余のサービス量を確保いたします。
 整備に当たっては、整備の進まない地域における補助額を一・五倍に加算するほか、都有地の減額貸付や定期借地権の一時金に対する補助などを行っております。
 今後とも、区市町村と連携しながら、特別養護老人ホームも含め、介護サービス基盤の整備を積極的に進めてまいります。
 次に、介護サービス情報の公表制度についてでございますが、本制度は、介護保険サービスの利用者が、より適切に事業者を選択できますよう平成十八年度に導入されましたが、今回の介護保険法改正で、本年四月から、公表のための訪問調査については知事が必要と認める場合に実施するなど、大幅な見直しが行われることとなりました。
 これを受けまして、都は、来年度からの訪問調査の対象サービスや調査頻度などについて、年度内に指針をまとめる予定でございます。
 また、調査したデータは、都としても適正に管理し、地域ごとのサービス体制の分析や運営指導に役立てるなど、引き続き介護保険サービスの質の向上のために適切に活用してまいります。
 次に、介護職員の介護福祉士資格取得への支援についてでございますが、介護現場において安定的に質の高いサービスを提供するためには、職場の中で中核的な役割を担う職員が高い専門性を発揮することが重要でございます。
 このため、都は、今年度から介護サービス事業者を対象として、介護職員が介護福祉士資格を取得するために要する経費を補助しておりまして、第五期高齢者保健福祉計画の最終年度でございます平成二十六年度までの四年間で、介護職員二千人の資格取得を支援してまいります。
 次に、要介護認定についてでございますが、都は、介護保険利用の前提となります要介護認定が適切に行われますよう、区市町村の認定調査員や認定審査会委員を対象にした研修を毎年実施し、必要な知識の習得や技術の向上を図っております。
 また、認定審査に当たり重要な資料となる医師の意見書が適切に記載されますよう、主治医に対する研修を東京都医師会に委託をして実施いたしております。
 現在、都が設置をいたします介護認定審査会運営適正化委員会におきましても、認定の適正化のための手引も新たに作成をしておりまして、今月中には区市町村に周知をする予定でございます。こうした取り組みにより、今後とも、要介護認定の適正化に努めてまいります。
 次に、シルバー交番設置事業についてでございますが、この事業は、猪瀬副知事を座長とする、少子高齢時代にふさわしい新たな「すまい」実現プロジェクトチームにおいて提案されたものでございまして、高齢者などからの相談にワンストップで対応いたしますとともに、訪問や安否確認などにより安全・安心を確保する都独自の取り組みでございます。
 シルバー交番は、地域包括支援センターや民生委員、自治会などと連携をしながらサービスを提供するものでございまして、区市町村ごとに人口規模や日常生活の範囲などを考慮して設置することとしております。
 今月策定をいたします東京都高齢者保健福祉計画では、平成二十六年度までの設置目標を七十カ所とする予定であり、設置促進に向けて事業実施主体となる区市町村に積極的に働きかけてまいります。
 最後に、今後の高齢者施策についてでございますが、高齢者の方の多くは、介護が必要になっても可能な限り住みなれた地域や自宅で生活し続けることを望んでおります。
 このため、都は、地域包括ケアの考え方に立ちまして、現在策定中の第五期高齢者保健福祉計画において、介護サービス基盤の整備、高齢者のニーズに応じた住まいの確保、医療が必要な人や認知症の人への対応、見守り等の生活支援サービスの充実など、高齢者を支えるさまざまな施策を展開することとしております。
 今後急速に高齢化が進む中で、だれもが住みなれた地域で暮らし、支え合う社会の実現に向けまして、施策の実施状況や効果を検証しながら、大都市東京の実情に応じた地域包括ケアシステムの構築を目指してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 高齢者の住まいに関する情報提供についてでございますが、高齢化が急速に進む中、高齢者が多様なニーズに応じた居住の場を選択でき、住みなれた地域で安心して暮らすことは重要でございます。
 このため、都では、サービスつき高齢者向け住宅や高齢者の入居を拒まない東京シニア円滑入居賃貸住宅の情報提供を、ホームページによる媒体だけでなく、パンフレットや区市町村の広報紙などを用いて積極的に行っております。
 今後とも、高齢者にとってわかりやすく、効果的な情報提供に努めてまいります。

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