平成二十四年東京都議会会議録第四号

〇副議長(ともとし春久君) 十八番松葉多美子さん。
   〔十八番松葉多美子君登壇〕

〇十八番(松葉多美子君) 初めに、女性と子どもの視点に立った防災対策について質問します。
 東日本大震災から間もなく一年を迎えます。私もこの間、被災地を訪れては、さまざまなお話を伺ってまいりましたが、ご高齢のお母様の徘回により、八カ所も避難所を変わらざるを得なかった方や、避難所で着がえる場所がない、授乳スペースがないなどのお声をいただきました。加えて、生理用品やおむつなどの支援物資の不足も目立ち、災害時における女性や子どもの視点の大切さが改めて浮き彫りになりました。
 また、先般、阪神・淡路大震災当時の状況を改めて伺うために、兵庫県に行ってまいりました。避難所で下着が盗まれるなどの被害に遭い、心に傷を負われた方が十七年たった今もカウンセリングを受けていらっしゃるお話や、母乳が出なくなり、赤ちゃんを育てるのにとてもつらい日々を送られたお話などを伺いました。
 こうした女性共有の課題に心底共感し、何が必要で何をすべきかを真剣に考えることは、同じ女性にしかできません。女性は男性に比べて、日ごろから地域の中でつながりを持ち、介護や子育てといった具体的な経験を通じて、子どもや高齢者に対するきめ細やかな配慮といった視点も持っています。こうした女性の視点を防災対策にもっと積極的に生かすべきです。
 公明党は、昨年八月に女性防災会議を立ち上げ、全国の自治体を対象に、防災行政総点検を実施しました。その結果、判明したことは、調査した六百五十八自治体のうち、残念ながら、地域防災計画の策定に女性の意見を反映させた自治体は約四割、避難所の整備、運営の検討に女性の視点や子育てニーズを反映した自治体も半分どまりという実態でした。
 この調査結果を踏まえ、昨年十一月、公明党は十一項目にわたる提言を政府に提出し、年末に改定された国の防災基本計画にはこの提言が反映され、女性の参画拡大が必要と明記されたのです。
 また、昨年の第四回定例会でも、都議会公明党は、女性の声を広く聞き、女性の視点に立った防災対策の充実を都に求めました。早急に具体的で実効性ある取り組みを求めたいと思います。
 女性の意見の反映方法として重要なのは、女性委員の登用であり、防災の専門家には女性の方もおられることから、こうした方の意見を聞くことが有効です。また、都はこれまでに合わせて二百人を超える女性職員を被災地に派遣してきました。事務職のほか、保健師の方などもおられ、こうした方々の生の声を積極的に生かして対策を練ることも重要です。
 都は、現在、地域防災計画の修正に着手しているとのことですが、その検討組織に女性の有識者を委員として必ず選任するとともに、都庁の女性職員からの意見を広く聞く場の設定など、確実に女性の声を反映させていくことが重要と考えますが、見解を求めます。
 都は、地域の防災リーダーの育成の際にも、女性や子どもの視点に立った防災対策の重要性への理解を促進するよう取り組むべきと考えます。そして、女性や子どもに配慮した災害時の物資の確保にも取り組むべきです。それぞれ見解を求めます。
 次に、障害者スポーツについて質問します。
 障害者スポーツは、障害者の健康増進や生きがいにつながるばかりでなく、社会参加や自立支援の促進に加え、都議会公明党が推進しているユニバーサル社会の実現に資するなど、大きな意義があります。
 昨年の第一回定例会での都議会公明党の代表質問に対し、知事は、障害者スポーツ振興を推し進めるため、指針となる計画策定に向けた準備を進め、スポーツ振興の新たな姿を東京から提示していくと答弁されました。
 これを受けて、現在策定中の東京都障害者スポーツ振興計画は、国や都道府県を含め、行政として初めての障害者スポーツに係る振興計画であり、東京から障害者スポーツのムーブメントを大きく巻き起こすものと期待しております。
 そこで、まず、障害者スポーツの振興に取り組む知事の決意を伺います。
 来年に迫ったスポーツ祭東京二〇一三は、国体と全国障害者スポーツ大会を初めて一つの祭典として開催するものであり、また、東京での全国障害者スポーツ大会の開催自体も初めてのこととなります。
 障害者の方々や障害者スポーツの振興に取り組んでこられた方々からは、大変大きな期待が寄せられています。そして、多くの障害者の方々が競技観戦をすることも考え合わせれば、競技場や周辺施設、交通機関のバリアフリー対応には万全を期すべきであります。
 最新技術を駆使した音声や文字による情報提供といったソフト面の対応のほか、手すりやスロープ、トイレの配慮、点字ブロックの整備などハード面の整備、さらには障害者をサポートするボランティアの育成も求められております。
 そこで、メーン会場を初め、各競技会場におけるバリアフリー対応の方針を明らかにしていただきたいと思います。所見を求めます。
 次に、都立公園整備について質問します。
 都は、「二〇二〇年の東京」で、高度な防災都市を実現し、東京の安全性を世界に示すとしています。地域防災計画における避難場所の二割、震災対策条例に基づく救出及び救助活動拠点指定の三割強が都立公園となっております。
 都市の防災を考える上でも、都立公園は大変に重要な施設であります。都市計画公園・緑地の整備方針に、新たな都立公園の事業として高井戸公園の優先整備区域の設定がなされたことは、震災時における避難場所や救援、復興活動の拠点となるなど、防災の面からも地元杉並区では大いに期待しているところです。
 高井戸公園の整備計画事業化の要望については、平成二十年四月に地元町会、自治会、商店街の多くの皆様の署名を、私もご一緒させていただき、都にお届けさせていただきました。
 計画策定に当たっては、地元地域の方々の意見を十分に取り入れるなど、防災面はもとより、地域に親しまれる公園として整備していただきたいと思います。
 そこで、都市計画高井戸公園の整備計画について、今後の整備計画を明らかにしていただきたいと思います。所見を求めます。
 次に、街路樹の再生について質問します。
 都は、「十年後の東京」に引き続き、「二〇二〇年の東京」でもグリーンロードネットワークの形成を推進し、平成二十七年度末には街路樹を百万本まで増加させることとしています。街路樹をふやしていくことは、都市の景観を向上させるとともに、温暖化対策の観点からも大変有効です。
 また、都は、一方で新たに大径木再生大作戦を展開することとしています。近年の台風や集中豪雨での倒木被害の状況を見ますと、災害に強い街路樹へと回復、更新することは喫緊の課題ともいえます。
 大径木再生大作戦の具体的な調査の内容を明らかにしていただきたいと思います。所見を求めます。
 杉並区阿佐谷の中杉通りには、原宿の表参道にまさるとも劣らない、東京を代表する立派なケヤキ並木があります。この並木は、昭和二十九年に地元住民の皆様がケヤキ植樹の資金を集め、百二十九本を植栽したのが始まりです。
 しかし、このケヤキ並木は、植栽して六十年近くも経過していることから、一部のケヤキには老朽化したものもあり、平成十九年の強風では二本が倒木しました。
 建設局による地元説明会の折、私も一本一本の木の状況を現場で確認しながら説明を受けましたが、木には表面から見ただけではわからないような問題があることを改めて理解いたしました。
 安全性を高めながらも、その上で、美しい景観を維持することも求められております。この杉並を代表するケヤキ並木の景観を未来に継承していくための維持管理手法や、その取り扱いについては、地域住民や道路利用者の理解と協力が不可欠であると考えます。
 大径木化した街路樹に対する先駆的な事例となるべき中杉通りのケヤキ並木の再生に向けた取り組みについて所見を求めます。
 次に、電柱の地中化について質問します。
 災害時に道路を閉塞するものとしては、沿道の建物や街路樹とともに、道路上の電柱も考えられます。私も地域の住民の方から、地震のときに建物が倒壊する危険と同様に、電柱の倒壊もさらに心配だとの声をいただきました。
 都はこれまで、センター・コア・エリア内の都道については、平成二十七年度を目標に無電柱化するとともに、多摩地域や周辺区部においても整備を進めていますが、災害時の迅速かつ円滑な救援、救助活動を行うためにも、緊急輸送道路の無電柱化を進めることが重要です。
 緊急輸送道路のうち、特に環状七号線は、その沿道に木造密集地域が多く存在することもあり、災害時の緊急活動や物資の輸送等に重要な役割を果たします。
 そこで、環状七号線の無電柱化こそ最優先に進めるべきです。都の所見を求めます。
 最後に、善福寺川の河川整備について質問します。
 平成十七年の集中豪雨による水害より、都は河川激甚災害対策特別緊急事業を完了し、あわせて、環七通りから済美橋までの約一キロの護岸整備を行い、七年前の水害時に比べ、治水安全度が一三ポイント上昇し、六六%になると見込まれており、高く評価させていただきます。
 そこで、次は上流域です。
 水害当日の夜、私が急行した上流域地域も、道路が川のように流れ、腰までつかる状況でした。
 現在、都は、護岸や善福寺調節池の工事着工へ向け検討を進めているところですが、一刻も早く地域住民の安全で安心な暮らしを確保していただきたいと思います。
 善福寺川の今後の整備について所見を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 松葉多美子議員の一般質問にお答えいたします。
 障害者スポーツの振興についてでありますが、障害のある方々がそのハンディキャップを乗り越えてスポーツに打ち込む姿は、それ自体がもう輝きでありまして、見る者すべてに勇気と感動を与えます。
 昨年、オリンピックに関するビッグトークでお会いした走り幅跳びの女性アスリートの佐藤真海さんは、いわばもう死病でもある骨肉腫にかかって、幸い早期発見ということで、右足を切断して、一度は人生に絶望されたそうですが、スポーツによって生きる力を取り戻したといいます。パラリンピックで跳躍する彼女の姿は、まことに人間としてたくましく美しく、すばらしいものだと思います。
 障害者スポーツは、また、障害のある方々とない方々との相互理解と交流を広げて、互いに尊重し合える社会の実現にも寄与するものだと思います。
 国においては、厚生労働省と文部科学省の二元行政の中で、障害者スポーツに対する明確な指針はいまだに示せないでおります。
 都は、全国に先駆けて、長期的ビジョンと具体的な行動指針を示した障害者スポーツ振興計画を策定いたします。
 身近な地域でだれもがスポーツを楽しむことのできる環境づくりを進めるとともに、ハンディキャップを強靱な精神力で克服し、人々に感動を与えるアスリートの育成も進めて、パラリンピックを開催するにふさわしいスポーツ都市としての東京を目指していきたいと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 五点のご質問にお答えします。
 初めに、都市計画高井戸公園の今後の整備計画についてでございますが、当該公園は杉並区の西部に位置し、計画面積が十七・四ヘクタールの未着手の公園でございます。
 整備計画の考え方といたしましては、公園化による避難場所の確保、常緑樹など防火性の高い植樹帯の整備、さらに、貯留、浸透機能の確保による豪雨対策などを重視してまいります。
 また、放射五号線内の玉川上水や神田川と連続する緑の創出により、道、水、緑のネットワークの形成を図ってまいります。
 平成二十四年度には、東京都公園審議会に整備計画を諮問し、用地取得に着手してまいります。
 次に、大径木再生大作戦の調査の具体的な内容についてでございますが、これまでの調査は、街路樹診断として、幹などの外傷やキノコの発生を調べる目視点検及び幹の空洞や腐りぐあいを調べる診断を行ってまいりました。
 平成二十四年度から新たに、根の張りぐあいや根腐れを調査項目に加えた精密診断として、街路樹防災診断を行ってまいります。これにより街路樹の樹勢回復工事などを行い、健全な大径木を維持し、災害に強く、風格のある緑豊かな美しい道路空間を創出してまいります。
 次に、中杉通りのケヤキ並木の再生に向けた取り組みについてでございますが、平成二十年度から、地域住民、杉並区及び東京都の三者で中杉通りケヤキ並木連絡会を組織して、大径木化したケヤキの保全、更新について検討を重ね、平成二十四年度から二十七年度までの四カ年を事業期間とする中杉通りケヤキ保護管理計画を策定いたしました。
 地域の方々に事業を理解していただくため、阿佐谷南三丁目地先の約百メートルで、不健全なケヤキの更新や高くなり過ぎた樹形を整える剪定、根上がりによる歩道舗装の段差解消など、モデル事業を実施中であり、広報誌など、あらゆる機会をとらえ、事業の周知を図っております。
 本格実施に当たりましては、引き続き地域と連携を深め、理解と協力を得ながら事業を着実に推進してまいります。
 次に、環状七号線における無電柱化の取り組みについてでございますが、無電柱化事業は、都市防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保、良好な都市景観の創出を図る上で極めて重要な事業でございます。
 現在、都は、センター・コア・エリア内はもとより、周辺区部や多摩地域においても、緊急輸送道路や主要駅周辺などで無電柱化を推進しております。
 緊急輸送道路のうち環状七号線は、大震災発生時に車両通行禁止区域の境界となり、都心へ流入する車両の迂回路となる防災上重要な路線でございます。この環状七号線においても整備を重点化してまいります。
 今後とも、高度防災都市の実現に向け、無電柱化事業に積極的に取り組んでまいります。
 最後に、善福寺川の今後の整備についてでございますが、善福寺川では一時間に五〇ミリの降雨に対応するため、護岸の整備を基本に調節池を設置するなど、効果的な整備を進めております。
 平成二十四年度には、これまで進めてきた環七通りから済美橋の区間に引き続き、上流の護岸整備を実施するとともに、新たに善福寺川調節池の工事に着手いたします。
 このうち、調節池は、都立善福寺川緑地を活用した三万五千立方メートルの地下式の貯留施設であり、取水開始により下流の未整備区間の治水安全度が向上するとともに、上流においても護岸整備の着手が可能となります。
 明日には地元説明会を開催するなど、着手に向けた準備を進めており、二十七年度末の取水を目指してまいります。
 引き続き、都民の命と暮らしを守るため、河川整備に全力で取り組んでまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、女性の視点に立った防災対策の推進についてでございますが、多岐にわたる防災対策の中には、避難所運営や備蓄物資など、女性の特性や実情に即したきめ細やかな対応を求められるものもあり、ご指摘のように、対策を講じるに当たっては、女性の視点に立った検討を進める必要があると思っております。
 このため、防災会議のもとに設置した検討部会に、専門的な知見を有する女性委員を選任するとともに、被災地に派遣された女性職員などによるワーキンググループを設け、女性から見た防災対策上の課題について具体的な検討を行い、その成果を地域防災計画の修正に反映させてまいります。
 今後とも、防災関係の検討組織への女性の登用を含め、男女双方の視点に立った防災対策を推進してまいります。
 次いで、女性や子どもの視点を踏まえた地域の防災リーダーの育成についてでございますが、女性や子どもに配慮したきめ細かい防災対策を推進していくためには、その重要性を十分に理解し、具体的な行動を起こしていく地域の防災リーダーを育成していくことが必要でございます。
 このため、今後、都が実施する防災リーダー養成研修において、発災前の備蓄、避難所運営におけるプライバシー確保や物資の提供、さらには被災後の生活支援等について、被災地における実例を踏まえつつ、女性や子どもの視点に立った防災対策を研修項目として盛り込むとともに、こうした取り組みを区市町村にも働きかけてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 女性や子どもの視点に立った災害時の物資確保についてのご質問にお答えをいたします。
 都は、食料や毛布等、避難所生活を送る上で緊急度の高い物資を備蓄しておりますが、東日本大震災では、お話にありました生理用品やおむつなど、被災者のニーズに対し、自治体の備蓄品だけでは十分対応ができませんでした。
 こうした状況を踏まえまして、現在、都が被災した場合を想定し、女性や子どもにも配慮しながら、必要な物資の品目やその量、備蓄や調達といった確保の手段などについて、民間シンクタンクを活用した調査検証を行っているところです。
 検証結果は地域防災計画の修正に反映させる予定でありまして、今後、区市町村とも連携しながら、女性や子どもの視点を取り入れて、災害時に必要な物資が確保できるよう取り組んでまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) 全国障害者スポーツ大会についてでございます。
 都は、昨年三月、障害者団体の意見を聴取した上で大会準備推進計画を策定いたしました。
 競技会場の整備については、ユニバーサルデザインの考え方のもと、障害のあるなしにかかわらず、あらゆる人にとって使いやすい会場づくりを目指すこととし、スロープの設置など、バリアフリー化を進めております。
 また、視覚障害者や聴覚障害者に対してもわかりやすく情報提供するため、本年二月、情報保障体制整備基本方針を策定いたしまして、音声誘導装置の設置、手話ボランティアの配置、筆談対応等に取り組むことにいたしました。
 具体策の検討に当たりましては、トイレの入り口に男女の区別がわかる音声案内を設置してほしいといった要望を聞きながら、きめ細かな対応を行うこととしております。
 今後とも、障害のある人もない人も、ともに支え合う社会を目指し、全国障害者スポーツ大会の開催に向け、着実に準備を進めてまいります。

〇副議長(ともとし春久君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時三分休憩