平成二十四年東京都議会会議録第三号

〇議長(中村明彦君) 六十九番野島善司君。
   〔六十九番野島善司君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇六十九番(野島善司君) 最初に、多摩四百万都民の安全・安心の確保の観点から、流域下水道について伺います。
 東日本大震災では、東北地方沿岸部を中心に下水処理施設が壊滅的な被害を受けました。東京において、このような地震に見舞われ、下水道の機能が失われるような事態が生じた場合、都民生活への影響ははかり知れないものが考えられます。
 流域下水道では、多摩川を挟んで向かい合う二つの水再生センター同士を連絡管で結ぶという取り組みを進めてきております。この取り組みは、震災時で処理機能に支障を来したとしても、お互いの施設がバックアップし合う画期的で先見性のある取り組みであると評価をいたしております。
 そこで、流域下水道の連絡管整備について、具体的な成果と今後の予定を伺います。
 また、東日本大震災の際、避難所などでは仮設トイレなどのし尿の処理が十分にできず、劣悪な生活環境が問題化いたしました。流域下水道では、市町村と連携し、災害時の仮設トイレの設置やし尿処理など、衛生環境を確保するための取り組みを進めておりますが、その具体的な取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、水道事業について伺います。
 東京都では、一定規模以上の私道を対象に、平成六年から配水管を布設し、給水管のステンレス化を行う私道内給水管整備工事を実施しております。
 さきの第三回定例会で、我が党の代表質問において、生活道路として使用されている私道内の塩化ビニール管の耐震化の必要性をも指摘したところ、塩化ビニール管をステンレス管に取りかえる新たな取り組みについて検討を進め、早期に事業化を行う旨の答弁がありました。
 そこで、これまでの私道内給水管整備工事の実績と今後実施する新たな取り組みの事業規模など、具体的な内容について伺います。
 また、私道内給水管整備工事では、水道管を布設するときに、私道所有者の許可が必要となります。公道と異なり、所有者が複数存在することなどから、許可を得るのに長時間を要する場合も聞いております。
 私道内給水管の耐震化をさらに推進していくためには、所在不明への対策や所有者、近隣住民等へのPRを十分に行うなどのさまざまな工夫が必要と考えます。
 私道内給水管整備工事を円滑に進めるための見解について伺います。
 次に、都市型高齢者サービスのあり方について伺います。
 現在策定中の東京都高齢者保健福祉計画においては、地域包括ケアシステムの実現が大きな柱となっており、その目指すところには賛意を示すものであります。
 しかしながら、身近な地域でデイサービスもショートステイも、できれば特養もというのは、この地価の高い、また、土地利用が進んだ東京ではなかなか困難なことでもございます。区市町村も学校跡地の活用などの努力をしておるようでありますけれども、都においても都有地の活用を一層推進してほしいと常々考えております。
 私は、そういった土地を活用して、これからふえていく高齢者のために、それも元気な人から介護が必要な人まで、さまざまな人々が集い、交流できる都市型ともいうべき高齢者サービス拠点がつくれないかと、こんな理想を持っております。
 デイサービスと一緒にショートステイの施設があれば便利でしょう。さらに、もっと要介護度が重くなったときのために、特養もあれば安心です。小規模多機能に対して、大規模多機能とでもいえるかもしれません。こうしたことは民間主導ではなかなかできません。そこはやはり行政の関与が必要不可欠と考えております。
 そこで、東京都の十年後、二十年後を見据え、こうした都市型の高齢者サービス拠点や活動拠点の整備について、都の所見を伺います。
 次に、小児総合医療センターについて伺います。
 小児総合医療センターは、開設後間もなく二年を迎えます。小児科医が全国的に不足する中、清瀬小児病院、八王子小児病院及び梅ケ丘病院を統合再編し、加えて、医療機能を充実強化することで、小児病院が移転した地域を含めて、多摩地域の方々が安心して出産から子育てまでをできる医療環境を整備したものと理解をいたしております。
 小児総合医療センターでは、こども救命センター、さらにスーパー総合周産期センターの指定を受けており、都民の期待と果たすべき役割は、統合前の小児病院に比べて格段に大きくなっております。
 そこで、小児総合センターが都民に期待されている役割を果たしているかどうか、都の認識を伺います。
 また、多摩地域、とりわけ北多摩北部地域の小児科医の数は、区部と比較して少ないというのも実情でございます。このため、限られた医療資源を最有効利活用させる仕組みづくり、すなわち、初期、二次、三次それぞれの医療機関が医療機能の役割分担を確実に担うとともに、多摩北部医療センターを中心とした二次医療と初期医療の連携、そして、小児総合医療センターにおける三次医療と二次医療の連携といった横の結びつきを強化することにより、小児医療体制のさらなる充実を図っていくことが重要と考えます。
 そこで、多摩地域、とりわけ北多摩北部地域の小児医療を一層充実させるために、医療連携体制の確保に向けてどのように取り組んでいくのか、都の考え方を伺います。
 また、地元では、清瀬小児病院跡の今後について関心が高まっております。跡地周辺は、武蔵野の原風景を思わせる緑豊かな土地が広がっており、恵まれた自然を守っていこうという清瀬市の強い意向があります。
 一方で、この地域には歴史的な経緯もあり、病院や老人ホーム、福祉系の大学など医療資源、福祉資源が数多く存在をしております。このことから、跡地について、地元には、緑を守りつつも、まちづくりの上で貴重な位置づけをしていきたいとの強い思いがあるわけでございます。
 ついては、跡地の利活用方法の検討に際しては、東京都だけの課題としてとらえるのではなく、地元清瀬市の緑やまちづくりの視点等を十分に把握する中で進めるよう、強く要望しておきます。
 次に、産業振興について伺います。
 多摩地域の中小企業が、大学や研究機関などと協力し、生み出した製品を国内外の市場で販売するためには、販路の開拓も重要です。
 昨年十二月に開催されました都の産業交流展、ここに参加した多摩の精密加工の会社経営者の話を伺いますと、展示会を通じた販路拡大の効果の高さや出展者同士の情報交換や交流の重要性を強調しておりました。
 こうした事例から見ても明らかでございますが、多摩の産業振興を図る上で、展示会等の開催を通じ、販路の開拓や企業間の交流を活発にして、地域の中小企業の製品や技術のレベルの高さを広く発信する機会と場の確保が必要不可欠でございます。
 都では、多摩地域の中小企業振興に向けて、産業交流拠点を八王子市に整備するとの方針を明らかにしております。この拠点については、産業交流や情報発進の役割の面では、八王子市はもとより、多摩地域全域からの大きな期待が寄せられておりますが、これまでの取り組みと今後の予定について伺います。
 多摩地域には、日本のものづくりを代表する自動車産業を支える部品製造の会社や精密機器などを扱う中小企業が数多く存在しております。こうした企業の持つ技術力が、周辺の大学や研究機関の知識や技能と一体となることで、海外の企業では簡単にまねのできないハイレベルの製品を生み出すことも可能になると考えます。
 実際に、企業と大学が連携する、いわゆる産学連携により、多摩地域の中小企業が最新鋭の医療機器を次々に開発するような事例も聞いております。こうした取り組みに、行政のサポートや金融機関による資金面からのフォローが加われば、研究開発から製品化までを一貫して行うことがさらに容易になるものと考える次第でございます。
 都では、多摩地域で、計測分析器やロボットといった分野を対象に、産学に加えて行政や金融も加えた強固なネットワークをつくり、新製品の開発プロジェクトの立ち上げを支援する取り組みを進めてまいりましたが、今後はこの取り組みをさらに一歩進め、集中的に商品にまで完成度を高めていくような展開が必要かと考えます。
 そこで、多摩の産業振興に向けた、都としての取り組みの進め方についてお伺いをいたします。
 今まで、多摩の課題を中心にるる述べてまいりました。多摩地域は、多くの先端技術産業や大学等の集積、緑あふれる豊かな自然環境など、区部とは異なる個性と独自性を有する、発展の可能性に満ちた地域です。
 平成二十五年には、多摩・島しょ地域を中心に、都内全域でスポーツ祭東京二〇一三が開催されますが、多摩地域が明治二十六年に、神奈川県から当時の東京府に移管されて百二十年の節目の年でもございます。
 都は、先般、新たな長期ビジョンとして、「二〇二〇年の東京」計画を発表されましたが、東京が東日本大震災を乗り越え、日本の再生を牽引していくためには、多摩地域の持つ潜在力を存分に生かすという視点が欠かせないと思います。多摩地域の将来像について、知事の見解を伺い、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 野島善司議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩地域の将来展望についてでありますが、東京は、区部と多摩地域、さらには世界自然遺産にも登録されました小笠原諸島を初め、島しょ地域という異なった個性が連帯、融合することによりまして、世界にもまれな首都を形成しております。
 何年かに一度、在日の大使たちをヘリコプターに乗せて、東京の上を飛んで、東京の外観を知ってもらおうと思って努力していますが、そのたんびに彼らが驚くのは、一つの首都として、これだけ大きな変化を持った都市というのは考えられないということでありますが、とりわけ多摩地域は、既に多くの先端技術産業が集積し、さまざまな大学や研究機関も立地しておりますが、今後、交通ネットワークがさらに整備されることによりまして、首都圏の中核拠点となる可能性を有しております。
 十年後の二〇二〇年には、圏央道を初め三環状道路が完成して、東京の最大の弱点であります渋滞も解消され、我が国を代表する物流拠点やものづくり産業拠点となることが期待されております。
 一方では、ミシュランのグリーンガイドで三つ星の観光地と評される高尾山に代表される緑あふれた豊かな自然は、都会近接の安らぎと潤いの空間であると同時に、CO2の削減や水源確保の面からも極めて貴重な我が国の財産であると思います。
 こうした都市機能と自然環境が調和した多摩地域の多彩な魅力を、来年開催されるスポーツ祭東京二〇一三の機会などを効果的にとらえて国内外へ発信することにより、東京で最もポテンシャルの高い多摩地域をさらなる発展へ導き、東京の進化につなげていきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

〇下水道局長(松田二郎君) 多摩地域の流域下水道についての二つのご質問にお答えをいたします。
 まず、水再生センター間の連絡管についてでございます。
 連絡管は、施設整備や維持管理の効率化と、お話のように震災時などのバックアップ機能の確保を目的として整備するものでありまして、全国でも先駆的な取り組みでございます。既に、多摩川上流水再生センターと八王子水再生センター間は、平成十八年度から稼働しておりまして、下水や汚泥を相互融通することで、設備の補修などを効率的に実施しております。
 また、昨年の計画停電の際には、汚泥処理が停止したセンターから対岸のセンターに汚泥を送ることによりまして、処理に支障を来すことはございませんでした。
 現在、二本目となる北多摩一号水再生センターと南多摩水再生センター間で、来年度の完成に向け工事を進めているところでございます。
 また、三本目の北多摩二号水再生センターと浅川水再生センター間についても、来年度には工事に着手し、早期の完成を目指してまいります。
 次に、災害時に衛生環境を確保するための流域下水道の具体的な取り組みについてでございます。
 避難所の仮設トイレなどから出るし尿については、各市町村が収集、運搬し、流域下水道の各水再生センターで受け入れ、処理することとなっております。東日本大震災では、避難所などから出るし尿の処理が問題化したことを踏まえまして、都では目標を四年前倒しして、このたび、すべての市町村との間で、し尿の運搬、搬出、各水再生センターの受け入れなどについて定めた覚書の締結を完了いたしました。
 今後も、各市町村と連携し、実践的で効果的な訓練を実施するなどして、災害時における下水道機能確保のための相互支援体制を充実してまいります。
   〔水道局長増子敦君登壇〕

〇水道局長(増子敦君) 二点のご質問にお答えします。
 まず、これまでの私道内給水管整備工事の実績と今後実施する新たな取り組みについてでございますが、水道局では現在、給水管が三本以上、またはお客様が十世帯以上ある私道を対象に、配水管を布設して塩化ビニール管をステンレス管に取りかえる工事を実施しております。
 平成二十二年度までに配水管延長で約七百キロメートルを施工し、今後も約八百キロメートルの整備を予定しております。
 新たな事業は、東日本大震災で給水管が多くの被害を受けたことを踏まえ、給水管の一層の耐震化を推進するため、これまで対象となっていなかった小規模な私道の給水管に対しても、既設塩化ビニール管をステンレス管に取りかえてまいります。その規模は、総延長で約八百五十キロメートル、約七百億円の事業費を見込んでおり、平成二十四年度上半期からの事業開始を目指します。
 次に、私道内給水管整備工事の円滑化についてでございますが、ご指摘のように、事業への理解を得ることと私道所有者の了解手続の改善が重要と考えております。
 そこで、リーフレットを活用して、私道の所有者や近隣住民等の皆様に対して、給水管の耐震性や水圧が向上すること、さらに、新たに設置される排水栓により、震災時等の応急給水にも利用できることなどをわかりやすく説明し、工事の円滑な推進を図ります。
 一方、所有者の一部の方が所在不明のため、工事に至らなかった事例も多数ございます。この事態を打開するため、今般、法律上の整理を行うとともに、取り扱い手続を策定し、所在が不明で了解を得られなくても工事が可能となるよう、平成二十四年度から対応してまいります。
 これらの取り組みにより、私道内給水管整備工事の推進を図り、震災時における水道水の確保に努めてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 高齢者のサービス拠点や活動拠点の整備についてお答え申し上げます。
 お話にございましたさまざまな高齢者が利用できるサービス拠点等の整備は、今後急速に高齢化が進む大都市東京におきまして、高齢者サービスのあり方を検討する上での一つのリーディングモデルであると考えるものでございます。
 本年三月に策定いたします第五期高齢者保健福祉計画では、多様なサービス提供主体が存在する東京の特性を生かしまして、施設サービス、在宅サービス等の基盤をバランスよく整備するとともに、社会参加に意欲的な高齢者の活動の場を確保することといたしております。
 今後、計画の実施状況を逐次検証いたしますとともに、区市町村の意向や他県の取り組み等も把握しながら、将来を見据えた大都市にふさわしい高齢者のサービス拠点等の整備のあり方について、幅広い観点から検討を行ってまいります。
   〔病院経営本部長川澄俊文君登壇〕

〇病院経営本部長(川澄俊文君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、小児総合医療センターについてでございますが、今年度は、十二月までの実績で、一日当たりの入院患者数は四百三十五人、外来患者数は六百十四人、救急外来患者数は百十五人と、三病院統合前の患者実績の合計よりも受け入れ数が増加している状況にございます。
 また、こども救命センターでは、二十二年度実績で、都内でもトップクラスの八十六人の重症患者の搬送があり、小児集中治療室、PICUはフル稼働の状態でございました。
 さらに、周産期医療に関しましては、母体救命措置が緊急に必要な妊産婦を必ず受け入れており、NICU及びGCUの病床利用率は、今年度十二月までの実績で、それぞれ九九・五%、九二・一%と、ほぼフル稼働となっております。
 こうした実績から、小児総合医療センターは、多摩地域における三次医療機関としての役割を着実に果たしていると認識しております。
 今後とも、一人でも多くの命を救う努力を行い、多摩地域の小児医療及び周産期医療を担う最後のとりでとしての役割を確実に果たし、都民の期待にこたえてまいります。
 次に、医療連携体制の確保に向けた取り組みでございます。
 限られた医療資源を最大限活用するためには、一次から三次までの各医療機関が役割に応じた機能分担を確実に担うとともに、密接な連携を図ることで、重層的な医療体制を構築することが重要でございます。そうした意味で、一次医療と二次医療の連携及び二次医療と三次医療の連携のかなめとなる多摩北部医療センターの役割は極めて大きいと考えております。
 このため、都は、多摩北部医療センターに専門医を派遣するなど、小児医療体制の強化を図ってきており、地域の期待にこたえてきたものと認識しております。
 また、二次医療と三次医療との連携につきましても、多摩北部医療センターで対処できない重症患者を小児総合医療センターで確実に受け入れるとともに、逆搬送についても着実に件数をふやすことで、重篤な患者の受け入れ体制を整えているところでございます。
 今後とも、多摩北部医療センターの医療機能を確固たるものにするため、小児総合医療センターとの必要に応じた人的交流や搬送及び逆搬送の双方向の連携などを着実に進め、小児医療のさらなる充実を図ってまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、産業交流拠点の整備についてでありますが、多摩地域の中小企業がものづくりの力を高めるため、企業同士の交流や大学などの産学公連携を図るとともに、そのすぐれた技術と製品を広く紹介する取り組みは重要であります。
 そのため、都は、多摩地域の代表的な産業集積エリアの一つであります八王子市に産業交流や情報発信の拠点を整備することとしております。
 これまでに拠点に必要となる機能を調べ、まちづくりと一体となった整備のあり方について関係局や地元市と協議を行ってまいりました。今年度は、民間活力の導入を含めたさまざまな整備手法の比較に利用するデータを取りまとめます。来年度は、まちづくりの方針との整合性を図りつつ、施設内部の具体的なレイアウトや効率的な管理運営の方法を検討してまいります。
 次に、多摩地域の産業振興についてでありますが、先端的な技術を持つ多摩地域の中小企業が、大学や公的機関に加え、金融機関とも連携してすぐれた製品を生み出すことは重要な取り組みであります。
 そのため、都は平成二十一年度より、都市機能活用型産業振興プロジェクト推進事業によりまして、産学公金のネットワークをつくり、製品の共同開発に向けた検討などを支援してまいりました。参加団体は七百を超え、検討中の開発テーマからは、車いすの転倒を知らせるシステムなど、製品化の見込める事例が出ております。来年度、これらを市場に出すさまざまなサポートをいたしますプロジェクトマネジャーを配置して支援体制の充実を図ってまいります。
 こうした取り組みを通じて、多摩地域の産業活性化を着実に進めてまいります。

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