平成二十四年東京都議会会議録第三号

〇副議長(ともとし春久君) 六十番中山信行君。
   〔六十番中山信行君登壇〕

〇六十番(中山信行君) 初めに、防災対策について伺います。
 私は先日、東京駅周辺での避難誘導訓練に参加しました。建造物内で地震発生の合図を受け、まずは身の安全としゃがみ込んだ際、真っ先に目についたのが天井であります。
 近年、建物の躯体自体はかなり堅牢になっております。しかし、つり天井や照明などが落下すれば、瞬時に多くの死傷者が発生するほか、避難誘導も困難になってしまいます。
 国は、十勝沖地震などを機に、平成十五年、天井の崩落を防ぐ技術指針を策定。二年後の宮城県沖地震では、その対応におくれた建築物で落下被害が発生しました。今回の東日本大震災では、被災三県のほか、都内の九段会館や川崎市の音楽ホールでも天井落下事故が発生しており、今後、指針が改正される可能性があります。
 一方、都市整備局は、平成十五年策定の現行指針に対してすら未対応な建築物が、いまだ都内に存在していることを把握していると聞きます。あわせて、首都直下型地震の切迫性であります。次の指針改正には迅速かつ徹底的に対応すべきです。大規模空間の天井落下を防ぐ、今後の都の取り組みを伺います。
 さらに、地震の発生に伴う危険は、大規模商業空間の陳列物や装飾品、広告物にも当てはまります。商業空間は日ごろから買い物客でにぎわうのみならず、災害時には避難路としても大切な役割を担います。
 そこで都は、駅周辺など滞留者が多く発生する空間だけでも、安全確保のため、関係者による速やかな自主点検と改善を促していくべきと考えますが、見解を求めます。
 災害時の避難誘導では、情報提供が重要です。今回の訓練では、きめ細やかな情報提供手段であるツイッターやエリアメールなどが有効であったほか、民間の大型ビジョンが、外国人などにも伝わりやすい映像による情報提供手段として大いに役立ちました。
 しかし、民間大型ビジョンについては課題があります。一つは、都内での設置数は、ある広告会社の営業契約数で四十四カ所ですが、都が非常時の活用を前提に提携しているものは、そのうちの四カ所にすぎません。また、四十四カ所といっても、十カ所もある駅もあれば、未設置ないし一つしか設置されていないターミナル駅もあります。その意味で、乗降客数や乗降口数など、一定規模以上のターミナル駅での大型ビジョンの活用促進を、上程中の帰宅困難者対策条例の実施計画に定めることが必要です。
 今後、都は多様な情報提供手段を確保し、効果的な避難誘導を期すべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、ひきこもり状態にある若者や精神疾患患者へのアウトリーチについて伺います。
 未来を託す次の世代が、みずから能力発揮の機会を放棄してひきこもることは、家族や社会にとって大きな損失です。同様に、精神疾患と思われる症状にありながらも、診療拒否や通院中断の場合があり、これまた周囲の大きな悩みの種になっています。ともに、社会参加や診療に向けて閉じられた心の扉を開く、専門家のアウトリーチが求められています。
 そこで、ひきこもり支援に取り組む青少年・治安対策本部と精神障害者への支援を展開する福祉保健局に対し、都内のより広範な地域で専門チームによる訪問活動などを活発化させ、より本格的な支援に導く取り組みを強化するよう求め、見解を伺います。
 一方、ひきこもりに取り組むNPO団体にとって、精神疾患的症状への対応が課題となっています。気軽に相談できる医療機関の紹介や、適切に対応するための研修が必要です。見解を求めます。
 私の知人に、財団法人メンタルケア協会の認証資格である精神対話士の存在を知り、子どもへの支援を依頼した事例があります。衰弱死寸前のうつ状態から救い出したものの、実家でも家族と口をきかなかった子どもが、精神対話士の一度目の訪問で会話が成立、二度目の訪問で外出に成功、後に医療機関での治療を経て、大学に復学を果たしています。精神対話士は、榊原記念病院など各地の総合病院で活用が始まっています。
 精神障害は症状の変化が激しく、通院していても突如自殺に至る場合があります。そのため、診療に結びつけるとともに、日常的に精神障害者を支えていくことが大切であります。
 そこで、都は今後、専門家やメンタルケアの研修を経た身近な人々などを活用し、心の不調を訴える人々への支援機関のネットワークを広げ、地域全体で精神障害者を支えるべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、キャリア教育の充実と公立小学校の学力向上について質問します。
 二月二十日、東京都教職員研修センターで開催された都立高校を中心とするキャリア教育の会合に、私も参加させていただきました。日々の教科別の授業の中でキャリア教育を行うことは、具体的な学習内容への意欲、関心の増進に役立つものと考えます。しかし、若手教員グループの報告によると、文系科目に比較し、理系科目では、示唆に富む逸話の取り入れが難しいなどの課題があるようであります。
 そこで、都はキャリア教育の視点を取り入れた標準的な教科別指導案の作成を急ぎ、参考として提示すべきです。見解を求めます。
 さらに、学校と企業などとを結びつける仕組みづくりは、学校側の負担が減り、持続可能なキャリア教育の推進に役立ちます。
 そこで、都は、校種別に課題を整理し、外部人材の活用促進策を強化すべきと考えますが、見解を求めます。
 先日、あるベテラン教員から、教師が児童から尊敬される秘訣は、この教科の指導だけはだれにも負けないという得意科目を持つことだ、児童との関係が深まり、学級崩壊も起きない、一つの科目を徹底的に磨き上げれば、他の科目の指導もおのずと上達すると伺いました。都立教育研究所は廃止されましたが、教員同士が連携し合い、教科別の指導方法を磨き合う機会をふやすことは、今でも十分可能なはずであります。
 都は、改めて教科ごとの指導力の育成に力を注ぎ、公立小学校の学力向上を期すべきと考えますが、見解を求めます。
 山口県の山陽小野田市では、学習への集中力を高めるため、市内全小学校の百三十一学級で週三日、一時限目を百ます計算や声に出して本を読む音読に充てて、十五分間ずつの三こまに分けて取り組む、いわゆるモジュール授業を実施。一年間で全児童の知能偏差指数の平均が一〇二から一一一へと伸展。算数でも九〇%以上の学級で平均偏差値が伸びており、その成果は、「学力は一年で伸びる」との衝撃的なタイトルの本にまとめられています。
 こうした取り組みの結果を踏まえ、山陽小野田市では、モジュール授業の手法開発については一応の決着をつけ、次の段階の学力向上の取り組みに力を入れ始めています。
 一方、都内の公立小学校における学力向上の取り組みは、既にさまざまに試みられているようでありますが、その具体的な進捗を都民は余り実感できていないように感じます。原因にはPR不足もあるでしょうが、根本的には、数多くの手法が学校に紹介されていながら、どの手法がどの程度有効なのかが客観的に検証されていない点にあります。
 都内の公立小学校の管理、執行権は区市町村教育委員会にあり、本来、都は関与するところではありません。しかし、ただ単にさまざまな手法が試みられているというだけでは、五年前も今も同じ、何年たってもその状況に変化なしということになりかねません。
 今後、都は、区市町村教育委員会ごとに客観的に検証可能な形で、公立小学校の学力向上への取り組みが実践され、その伸展を具体的に確保して都民に明示するよう、広域的な立場から導くべきと考えます。見解を求めます。
 次に、都内の中小企業の発展に必要な人材育成、技能継承について伺います。
 左官業は、建造物の大小を問わず、建築工事に欠くことのできない大切な技術職ですが、通常は極めて零細な経営状態にあり、職人の高齢化というタイムリミットに直面しています。私の地元の足立区には、常時百名以上の左官職人を抱える専門の会社があり、社宅も備えて、ベテランから若手への技能継承に懸命に取り組むほか、都の職業能力開発センターによる多角的な支援に期待を寄せています。また、都が成長産業分野に位置づける情報産業においても、ウエブサイトのプログラミング技術と画面デザイン力の双方を兼ね備える即戦力の確保に苦慮しております。しかし、現状の技能訓練では、これら二つの技能をあわせて指導する仕組みになっておらず、改善が必要です。
 ものづくり産業の環境は厳しく、職業能力開発センターにおける人材育成、技能継承に関する柔軟かつ積極的な支援展開が急務となっています。遅きに失することがないよう対応を図るべきと考えますが、見解を求めます。
 都の職業能力開発センターの就職率は高く、不登校状態にあった若者が皆勤して卒業し、就労するなど、目覚ましい成果を上げています。しかし、その利用価値はいま一つ周知されておらず、科目分野によっては就職上の有利さと応募がミスマッチになっております。
 若者のものづくりへの関心を高めるためにも、産業労働局は学校教育との連携をさらに拡充すべきと考えますが、見解を求めます。
 就職難は中高年も同じであります。この点、都の職業能力開発センターでは、未経験者の五十代の訓練生が図面作成の技術を磨き、建築事務所での正規採用を果たすなど、明るい話題を提供しています。都は中高年者にも求人の多い資格分野において、より効果的な職業訓練を展開すべきと考えますが、見解を求めます。
 最後に、都内中小企業の技術力を、だれよりも高く評価する石原知事に、人材育成、技能継承に寄せる決意を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 中山信行議員の一般質問にお答えいたします。
 中小企業における人材育成と技能継承についてでありますが、機械化、自動化が進展した今日においても、電子顕微鏡の心臓部の微細加工やロケットの先端をつくるへら絞りなど、高い精度と研ぎ澄まされた感覚が求められる分野は、熟練技能者の精緻なわざに大きく依存しているわけでありまして、私のかつての選挙区にも、二人だけで小さな工場をやっている夫婦がいまして、削りの名人という、岩井さんというんですが、あるとき行きまして、何を削っているんですかといったら、これは孫請で、実は原子炉のしんを削っているというんですね。そういう日本の経済構造といいましょうか、これはいいような悪いような、本当に、その奥さんなんかも機械に挟まれて、片手が動かなくなって、二人だけでそういう仕事をしておられましたが、いずれにしろ、こうした日本人の持つ繊細なものづくりのわざというのは世界に類を見ないものであると思います。アメリカの新しい戦闘機、ミサイルの、要するに先端の技術も、設計はできても彼らはできませんから、全部日本が原型をつくってやって、彼ら、型を起こすわけですからね。
 長年の研さん、経験によって蓄積されたこの職人わざは、東京のものづくり産業の基盤でありまして、これを受け継ぐ人材を不断に育成するとともに、現場に息づく技能が将来にわたり途切れることなく継承されることが重要であると思います。しかし、これはなかなか困難になってきましたな。
 このため、そのわざをきわめた都内の技能者を東京マイスターとして表彰しているほか、こうした熟練技能を受け継ぐ中堅青年技術者を育成する取り組みとして、東京ものづくり名工塾も設けております。しかし、なかなか人材というものは集まらないうらみがございます。
 今後とも、ものづくりの新たな担い手となる人材の育成を何とか強力に推進して、すぐれた技能を継承することにより、東京のものづくり産業を将来に向けて発展させていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、キャリア教育の視点を取り入れた教科の指導についてでございますが、キャリア教育は、日々の教育活動全体で行うことが重要であることから、都教育委員会は、全都立高校でキャリア教育の年間指導計画を作成し、各教科や特別活動、総合的な学習の時間を通じて取り組むよう指導しております。
 学校では、例えば総合的な学習の時間を活用して、社会人などによる進路講演会や大学への体験入学などを行い、成果を上げておりますが、各教科では、指導内容と実社会との関連が十分に教えられていない現状がございます。
 今後は、キャリア教育開発委員会で、教科の内容と実社会の具体的な課題とを結びつける事例等を提示するとともに、それらを活用した具体的な指導方法を開発し、キャリア教育を一層充実させてまいります。
 次に、キャリア教育における外部人材活用についてでございますが、都教育委員会では外部人材を活用するため、地域教育推進ネットワーク東京都協議会を設置し、企業、大学、NPO等と連携する仕組みづくりを進めてまいりました。公立小中学校においては、児童生徒がさまざまな職業や仕事を知ることが重要であるため、本協議会において、地域の企業等と学校とをつなぐコーディネーターの養成研修を充実してまいります。
 都立高校においては、生徒に社会活動や職業を体験、実感させることが重要であるため、本協議会を活用して、企業関係者等を社会人講師として組み入れた教育プログラムを開発するなど、企業等のキャリア教育への参画を促進してまいります。
 次に、小学校教員の教科指導力の育成についてでございますが、小学校教員にとって一つの教科で専門性を高めることは他の教科指導にも応用でき、極めて有効でございます。都教育委員会では、教職員研修センターにおいて専門性向上研修を実施し、教員に求められる専門性を確実に身につけられるよう、教員の個々の能力や課題に応じて適切な講座を受講するよう指導しております。
 また、平成二十二年度に教科研究のリーダー育成を目的に設置いたしました教育研究員制度では、来年度から宿泊研修において、教員による学校種を超えた討議を通して情報の共有や連携を図らせまして、その研究成果を報告書等により全国に広めてまいります。
 このような取り組みを通して、小学校教員の専門性を高め、児童の学力向上に資する指導力を育成してまいります。
 次に、学力向上施策の推進についてでございますが、今年度から都の学力調査においては、児童生徒の個票に加えまして、学級や学年の学力の定着状況等を記した資料、区市町村別の正答数分布を教科ごとにあらわしたグラフ等を提供することにより、学校や区市町村教育委員会における学力向上施策の検証を図る取り組みを支援しております。
 また、学力調査の結果を踏まえた指導上の留意点等を示したリーフレットを、公立小中学校の全教員へ三月末までに配布して、授業改善に向けた取り組みを一層推進してまいります。さらに、来年度は、学力向上に係る取り組みの成果を保護者や地域に説明している学校の例を全都に紹介するなど、各学校の取り組みが一層理解されるよう支援してまいります。
 今後とも、都教育委員会は、お話の広域行政の役割を踏まえまして、公立小中学校での学力向上施策を推進してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 建築物における天井の落下防止対策についてでございますが、都はこれまでも、建築基準法の定期報告制度により、国の基準に基づき、床面積が五百平方メートル以上の大規模空間の天井で落下のおそれがあるものについて、建築物の所有者等に対して改善を指導してまいりました。
 しかし、さきの大震災では、この規模に満たない天井が落下し、死傷者が出たことから、都は直ちに四百平方メートル以上の天井の点検を所有者等に対して要請いたしました。さらに、震災後は、定期報告についても調査対象をこの規模まで広げて、必要に応じ是正を指導しております。
 現在、国は天井に関する基準を見直しており、今後、この動向も注視するとともに、年二回の建築物防災週間などを含め、さまざまな機会をとらえて落下防止対策を徹底することにより、建築物の安全性を確保してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、事業者等の自主的な滞留者対策についてでございますが、多くの人が集まるターミナル駅周辺などで施設や避難経路などの安全性を確保していくことは、ご指摘のように、駅周辺の滞留者の円滑な避難誘導を行う上で大変重要でございます。
 都はこれまで、都内八カ所のターミナル駅において、鉄道事業者、店舗、学校、行政機関などから成る駅前滞留者対策協議会を区市とともに設置し、避難誘導訓練などを通じて、施設や避難経路などの安全確認を行ってきましたが、東日本大震災を踏まえ、駅周辺等において滞留者対策のさらなる充実を図る必要性が明らかになってまいりました。
 このため、今後都は、各地域の協議会を集めた連絡会において、事業者等に対して安全点検の徹底と定期的な訓練での検証などを求めていくことにより、自主的な滞留者対策への取り組みを促してまいります。
 次いで、帰宅困難者に対する多様な情報提供手段についてでございますが、東日本大震災の当日は、駅周辺などに多くの帰宅困難者が滞留し、混乱が発生したことから、首都直下地震等に備え、一斉帰宅抑制のための家族との安否確認や一時滞在施設への誘導に必要な情報の提供に向け、多様な手段を用意しておくことが重要でございます。
 このため、都は、猪瀬副知事と内閣府政策統括官を共同座長とする帰宅困難者等対策協議会を設置し、通信事業者を交え、発災時の多様な情報提供手段の確保に取り組むとともに、都営地下鉄の駅構内や列車内でのメールやインターネットの利用が年内に順次可能となるように整備を進めております。
 さきにターミナル三駅で実施した訓練においても、一時滞在施設の開設状況等について、大型ビジョンやエリアメール、ツイッターなどさまざまな手段を用いて情報提供を行ってまいりました。
 今後、実施計画の策定に当たりましては、訓練の成果を検証した上で、お話の大型ビジョンを初めとするさまざまな情報提供手段の活用方策等について検討してまいります。
   〔青少年・治安対策本部長樋口眞人君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(樋口眞人君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ひきこもりの若者への訪問による支援についてでありますが、訪問支援を広範な地域で実施するには、実際に支援を行うNPO法人等の育成と、住民との接点を多く持つ区市町村における支援体制の整備が不可欠でございます。
 そこで、都では、訪問による相談支援をひきこもり等の若者支援プログラムの一つと位置づけ、支援プログラムを適正かつ継続的に実施するNPO法人等を登録し、支援技術や経営面をサポートする事業を今年度開始いたしました。
 また、登録を受けたNPO法人等と連携して訪問等の支援に取り組む区市町村に補助を行う事業を開始し、今年度は四区市町が本事業を活用した支援を実施したところでございます。
 来年度も支援に取り組む区市町村をさらにふやすため、本事業の活用を働きかけるとともに、四区市町が引き続き地域の状況に応じた取り組みを進めることができるよう、今後も情報提供等を行ってまいります。
 次に、精神疾患を抱える方等への対応についてでございますが、都では、訪問相談を行うNPO法人等の職員を対象に、精神保健に関する知識や、訪問時に本人の状況を把握する技能等を習得するための実践的な研修を実施しております。
 また、登録を受けたNPO法人等が対象者の支援計画の検討に当たり相談できるよう、今年度新たに精神科医等の専門家を確保いたしました。
 今後、こうした専門家の助言に基づく具体的な支援事例を紹介するなどして、その積極的な活用を促してまいります。
 都では、これらのサポートを通じてNPO法人等の育成を図るとともに、区市町村における支援体制整備を進めることにより、ひきこもりの若者への支援の充実に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 精神障害者に関する二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、精神障害者に対する支援についてでございますが、都は今年度から、精神保健福祉センターに医師、保健師等の多職種の専任チームを配置いたしまして、区市町村、保健所と連携しながら、都内全域を対象に訪問型支援を実施いたしますとともに、支援対象者の症状の変化に応じ速やかに受け入れる短期宿泊事業をあわせて開始いたしました。
 今後、センターが関係者と合同で行います事例検討会等を活用しながら、地域で訪問型支援に携わる区市町村や医療機関などの支援力の向上を図ってまいります。
 また、短期宿泊につきましては、適切な利用によりまして症状の悪化を防ぎ、地域生活への復帰が可能となる成果も得られていることから、将来民間などでも実施できる仕組みを検証するため、来年度は、民間事業者を活用した短期宿泊のモデル事業を実施してまいります。
 次に、精神障害者を地域で支える体制についてでございますが、精神障害者の地域生活を支えるためには、症状の変化に応じ適切な医療が受けられるよう、地域の医療機関や保健所、相談支援機関等が連携して取り組むことが重要でございます。
 都は現在、区東北部と南多摩の二つの二次保健医療圏で、地域の関係機関のネットワークによるモデル事業を実施しておりまして、来年度はこうした連携をより強化するため、地域連携パスを作成し、試行を実施いたします。
 また、東京都地方精神保健福祉審議会におきましても、精神障害者の地域生活の支援体制について審議をいたしておりまして、その中では、当事者や家族会など身近な人々による相談支援等の活動についても議論が行われております。
 今後、モデル事業での成果や審議会での議論を踏まえまして、精神障害者を支える地域連携体制について検討し、来年度の東京都保健医療計画の改定にも反映させてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、人材育成と技能継承への支援についてでありますが、中小企業の熟練技能者が高齢化する中、次代を担う人材の育成と技能継承を効果的に進めるためには、各企業の実情に合わせた支援が重要でございます。
 このため、都は、これまでも職業能力開発センターにおきまして、個々の企業の求めに弾力的に応じるオーダーメード訓練を実施するとともに、随時、訓練科目を見直し、企業ニーズに的確に対応した在職者訓練を行うことで人材育成を支援してまいりました。
 また、来年度からは、企業からの要望を受け、熟練技能の継承を支援する、ものづくり名工塾の基礎コースともなる、いわゆるプレ名工塾を新設いたします。
 今後とも、こうした取り組みの充実に努め、中小企業の人材育成と技能継承を積極的に支援してまいります。
 次に、学校との連携についてでありますが、次代を担う若者のものづくりへの関心を高め、実践的技能が習得できる職業訓練を通じて就職につなげることは、ものづくり人材を確保する上でも重要な取り組みでございます。
 このため、職業能力開発センターでは、中学、高校生向けの体験入校の実施や、学校に対する訓練内容や取り組みのPRを随時行っております。また、実習を通じて職業訓練への関心を高め、ものづくり現場の情報を提供いたします、高校生向け実習講座を開講しており、来年度はその規模を百五名から二百四十名へと大幅に拡大して、より多くの高校生に受講してもらうこととしております。
 今後とも、職業訓練の体験を通じて、若者のものづくりへの関心が高まるよう、学校との連携を強化してまいります。
 最後に、中高年に対する職業訓練についてでありますが、中高年求職者の雇用環境は厳しいものがございますが、求人ニーズの高い分野での資格取得は、就職に際し効果的であります。
 このため、都は、ボイラーや警備関連など中高年の就職に有利な資格取得が可能な訓練科目を設定し、職業訓練を実施してまいりました。
 来年度は、地域の求人ニーズを踏まえて、城東職業能力開発センターに空調や給排水設備の施工技能を習得する建築設備施工科を新設し、施工に附帯する電気工事士等、資格取得に必要なカリキュラムを整備いたします。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、中高年求職者の就職を支援してまいります。

〇副議長(ともとし春久君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時四十一分休憩

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