平成二十四年東京都議会会議録第三号

〇議長(中村明彦君) 六十一番橘正剛君。
   〔六十一番橘正剛君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇六十一番(橘正剛君) 初めに、自治体間の災害時応援協力体制について質問します。
 東日本大震災では、自治体相互で結ばれている応援協定などに基づいて、全国規模で活発な支援が展開されました。東京都も、全国政令都市による大都市災害時相互応援協定や、全国知事会の都道府県広域応援協定等に基づいて支援を実施し、都の物心両面にわたる大規模かつ継続的な支援には、被災地から多くの感謝が寄せられております。
 その一方で、今回の応援では幾つかの課題も浮き彫りになりました。都に関係する応援体制で見ますと、その一つは、全国知事会による支援です。同じ東北ブロック内で予想を超えた多くの県が同時に被災したこともあって、調整に手間取り、初動対応がおくれてしまったといわれております。
 また、首都圏の九都県市による支援では、協定内容が九都県市域外の自治体の支援を想定したものではないことから、各自治体が独自に支援を行わざるを得ず、広域力を生かすことができなかったことなどが指摘されております。
 こうした中で注目されているのが、広域行政組織、関西広域連合によるカウンターパート方式です。応援する側が担当する被災県や自治体を決めて支援する方式で、我が党が、今月、調査のために訪問した宮城県の防災担当者によりますと、被害の全体像が把握できない大混乱の中で、自主的に応援に入る自治体を決めて支援に取り組んでもらったことが、結果的に切れ目のないスムーズな支援につながったとのことでありました。
 都が参加する相互応援協定については、こうした分析も踏まえ、地域ブロック単位で広域支援体制をつくるなど、相互応援体制を再構築すべきです。
 あわせて、九都県市が協定域外の支援についても協力連携して実施できるよう、都が見直しを推進すべきと考えます。見解を求めます。
 さらに、首都直下地震、三連動地震など、連続する巨大地震の可能性も指摘されており、太平洋岸一帯が、広域にわたって機能不全に陥る事態も想定しなければなりません。
 首都東京がこうした事態に迅速的確に対応するためには、国内に加え、海外との連帯の強化も不可欠です。
 特に、これまで深めてきたアジアの大都市との結びつきは重要であります。アジア大都市ネットワークを提唱し、人間の連帯の重要性を訴え行動されてきた石原知事に、防災対策における海外との連帯の強化について所見を伺います。
 次に、災害医療について質問します。
 首都直下地震の切迫性が指摘される中で、災害拠点病院等の事業継続計画、BCPの策定は一段と緊急性が高まっております。BCPが策定されていないと、初動の対応、医療提供の継続性、院内の医療スタッフの役割分担等があいまいになり、いざというときに大混乱を招きかねません。また、病院内における不備な部分や、改善しなければならない分野等も明確にならないからであります。
 昨年の第二回定例会の一般質問で、私は、災害時に災害拠点病院が機能を十分発揮できるよう、建物や設備を詳細に再点検すべきと提案いたしました。都はこれを受けて、再点検を実施すると同時に、水や燃料の確保状況など、BCPに必要な点検項目も調査しており、現在、まとめ段階に入っていると聞いております。
 この結果を踏まえ、災害拠点病院それぞれがBCPを策定しやすくなる情報として集約し、病院側に提供すべきと考えます。見解を求めます。
 さらに、災害拠点病院のみならず、そのほかの病院においても、BCP策定を急がなければなりません。東日本大震災の被災県における医療機関の被害状況と医療活動の関連を見ますと、多くの医療機関が被災し機能が低下すると、被害の小さい医療機関に患者が集中し、結果的に地域全体の災害医療機能が低下するケースが見られました。
 災害時に同様の事態が都内で多発しないように、BCP策定の働きかけを一般病院にも広げ、災害拠点病院と一般病院の緊密な連携体制を医療圏ごとに構築すべきと考えます。見解を求めます。
 次に、災害廃棄物、いわゆる震災瓦れきの広域処理について質問します。
 都内では、瓦れきの受け入れと清掃工場での焼却等について、二月から都内各区で住民説明会が行われております。説明会では、被災地の現状や現地での仕分け作業、放射線測定体制などを紹介したDVDが放映され、瓦れき処理に対する地域住民の不安解消や広域処理への理解に役立っていると聞いております。
 私も十数分に編集されたこのDVDを見ましたが、映像による処理作業の紹介は、見えない放射線への対応を見える形にしており、非常にわかりやすくなっていると思います。
 しかし、都内清掃工場での本格処理がまだ始まっていないため、このDVDには、都内に搬入された後の処理工程や放射線測定の部分が盛り込まれておらず、説明会では、これまでの試験処理段階で撮影した写真が使用されております。
 都民にとっては、都内の処理工程も大きな関心事であることから、都内清掃工場で三月二日から始まる本格処理の様子を動画に収録し、被災地から都内までの一連の処理工程を都民に紹介すべきと考えます。見解を求めます。
 二十三区では、今月いっぱいで住民説明会が終了します。説明会に出席しDVDを見た都民や清掃工場周辺地域の町会、自治会等からは、より多くの方に見せてもらいたいとの声も寄せられております。このため、このDVDを広く配布し、都民が自由に活用できるようにするほか、要請があれば、瓦れきの受け入れを検討している全国の自治体にも配布して、広域処理推進の一助にすべきと考えます。見解を求めます。
 次に、中小企業支援について質問します。
 厳しい経営環境にある多くの中小企業は、生き残りをかけて懸命の努力をしておりますが、自社のみでの対応には限界もあります。そこで、複数の中小企業がグループをつくり、仕入れや発注などを共同で行ってスケールメリットを確保しようという動きが広がりを見せております。
 都は、三年前から基盤技術の担い手である中小企業がグループを結成した場合、アドバイスを行う専門家を派遣したり、助成金を出す支援事業を実施しました。グループ化の成果をより高めようとする中小企業にとっては、心強い支援策となっております。
 そこでまず、この三年間の中小企業グループに対する支援の成果とアドバイス事業の充実について見解を求めます。
 グループ化と同様に、同じ業種を中心とした事業組合によるスケールメリットを生かす手法として、同業種組合が官公需の受注資格を取得する官公需適格組合があります。この適格組合は、単独では大きな官公需を受注できない中小企業が、組合として結集することによって、予算規模の大きい官公需の受注資格を得ることができるという利点があります。
 しかし、適格組合の理事長など関係者から話を伺うと、必要とされる組合としての技術力強化や組合内の調和が難しいといった課題を抱えておりました。こうした状況を乗り越えるためには、組合に加入する個々の中小企業の技術や経営問題の解決を図る専門家によるサポートが極めて有効であります。
 特に、適格組合の構成員である中小企業経営者に対しては、会社の現場に専門家が出向いて相談に応じるきめ細かな支援が不可欠であると考えます。都の取り組みについて見解を求めます。
 次に、東京都保健医療公社豊島病院と地域医療連携の強化について質問します。
 私の地元板橋区にある豊島病院は、平成二十一年四月に、都立病院から保健医療公社に移管されました。移管後、全国的な医師不足、看護師不足に悩まされるなど、病棟の運営に大変な苦労を背負いながらも、地域医療の充実に貢献してきたことは大いに評価したいと思います。
 公社移管から間もなく三年がたとうとしておりますが、地域医療連携を中心とする病院の取り組みが、公社移管のメリットを生かしてどのような成果に結びついたのか所見を求めます。
 地域医療連携は一段と重要性を増しております。すなわち、患者の高齢化に伴い、継続的に医療を必要とする人が増加している一方で、医療機関や療養施設の受け入れ能力は限られていることから、在宅医療を含め、地域連携の充実が重要になります。在宅医療を担うのは診療所等の医師や看護師であり、この活動を支えるのが地域医療の中核病院であります。
 こうした観点から、豊島病院では、在宅医療を提供している診療所等とも紹介、逆紹介という相互連携や、地域包括支援センターとの調整などが密に行われており、区部西北地域の地域医療充実に大きな役割を担っております。
 これまで、地域医療連携のノウハウを積み重ねてきた豊島病院は、地元医師会や行政との連携をさらに強化し、医療連携のモデルとなる取り組みを進めていくべきと考えます。これを支援する都の見解を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 橘正剛議員の一般質問にお答えいたします。
 防災対策に関する海外との連帯の強化についてでありますが、東日本の大震災では台湾、タイ、韓国などのアジアの各国のほか、ブータンやツバルなどの小さな国に至るまで、多くの国々が救助隊や医療支援チームの派遣をしてくれまして、救援物資や義援金を送り日本を支援してくださいました。
 震災のような非常時において、最も力を発揮するのは信頼と連帯のきずなでありまして、これは都市と都市との間においても変わらないと思います。
 これまでも、みずから提唱し、創設したアジア大都市ネットワークを通じて、アジア危機管理会議を開催し、国境を越えた恒常的な協力体制を構築するなど、儀礼的な外交とは一線を画した実質的な交流を深めてまいりました。
 また、都は台湾地震やインドネシア・スマトラ沖地震など、海外の災害に対しても、義援物資の提供、ハイパーレスキュー隊の派遣などの支援を行ってきておりまして、先般、大洪水に見舞われたバンコクに対しても、真の友人として義援金や飲料水を送付いたしました。
 今後とも、海外の諸都市との結びつきを深めて、有事の際には積極的に支援をするなど、連帯に裏打ちされた安全な都市を実現していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 災害時の相互支援についてでございますが、発災時には、救出救助活動にかかわる人的支援、食料等の物的支援を円滑に行う必要があり、自治体間の相互支援が果たす役割は極めて大きいものと思っております。
 しかしながら、今回の震災では、全国知事会による初動時の調整や九都県市が一体となった被災地支援が困難であったなどの課題が明らかになりました。この教訓を踏まえて、全国知事会では、複数ブロックによる広域応援や事務局体制の強化などの検討が進められております。
 都といたしましては、今後、発災時に有効に機能する広域支援体制の構築に向けて、他県との効果的な協力体制の確保や具体的な支援内容などについて検討を進め、全国知事会に働きかけるとともに、域外自治体への支援も含めた協定への見直しを九都県市に提案してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 災害医療に関します二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、災害拠点病院におけるBCPについてでございますが、都はこれまで、災害拠点病院に対しBCPの基本的な考え方や策定に当たってのポイントを明示するなど、その策定を促してまいりました。
 今回の東日本大震災では、他県からの医療救護班等の円滑な受け入れ、水や燃料、そして医薬品の長期的な供給不足などの課題が明らかになりましたことから、これらへの対応をBCPに加えるため、都は現在、改めて各病院における人員配置計画やライフラインの確保対策などについて調査を実施いたしております。
 各災害拠点病院がより実効性のあるBCPを策定できますよう、この調査結果も踏まえまして、必要な記載項目のほか、先駆的な対策事例等も盛り込んだ、仮称でございますけれども、BCP策定ガイドラインを本年三月中に作成をいたしまして、その周知徹底を図ってまいります。
 次に、災害拠点病院とその他の病院の連携についてでございますが、首都直下地震など大規模災害が発生した場合、都は地域防災計画に基づきまして、被災を免れたすべての医療機関を後方医療施設として位置づけまして、災害拠点病院を中心に、継続的に必要な医療を提供することといたしております。
 このため、都は、今回作成をいたしますBCP策定ガイドラインを災害拠点病院のみならず、すべての病院に周知しBCPの策定を促してまいります。
 さらに、災害拠点病院とすべての病院が緊密に連携をいたしまして、傷病者への医療提供を迅速かつ効果的に行えますよう、東京都災害医療協議会、二次保健医療圏ごとに設置をいたします地域災害医療連携会議で具体的な方策を検討いたしまして、地域の実情に応じた災害医療体制の充実強化を図ってまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 災害廃棄物の広域処理に関する住民説明についてでございますが、都が区市町村と共同で実施をしている住民説明会では、被災地女川町での放射線量の測定状況や、選別の方法、女川町長や町民の声などを入れました動画と、都内での処理工程を示した写真入りの資料を使い、都民の理解を求めております。
 三月からの本格搬入開始後は、実際の処理を担う区市町村の協力をいただきまして、ご提案のように、都内清掃工場での処理工程や放射能測定等の様子を撮影し、被災地の状況から都内での処理までのすべてのプロセスを含む新たな動画を作成し、一層わかりやすい説明に努めてまいります。
 また、作成した動画は、区市町村を通じて清掃工場周辺の町会、自治会等にもDVDとして配布するとともに、環境局のホームページに掲載し、広くユーチューブからも閲覧できるようにしてまいります。
 また、被災地の女川町では、あした処理現場の見学施設が開設されますので、視察に訪れる全国の自治体向けに活用するほか、都に相談があった他県の自治体に対しても配布して、広域処理の促進に努めてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 中小企業支援に係る二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業のグループへの支援についてでありますが、中小企業がグループをつくり、生産や販売等を共同で行い、受注の増加につなげることは重要であります。
 都は、平成二十年度から、基盤技術産業グループ支援事業によりまして、中小企業のグループが共同受注の体制を充実する取り組みに対し、三カ年で十八グループ、七十五の企業に専門家を派遣し、受注システム開発などの経費を助成してまいりました。
 今年度より、製品の開発から生産や営業までを協力して行うグループを支援する新たな事業を開始いたしまして、これまで以上に幅広い課題の効果的な解決に向け、さまざまな分野の専門家のチームによるきめ細かいサポートを実施しております。
 次に、官公需適格組合の企業への支援についてでありますが、事業協同組合などが抱える課題の解決に向け、加盟されております個々の中小企業に対しまして、専門家が企業の現場で相談に応じサポートすることは効果的であります。このため、中小企業振興公社では、経営の専門家などが継続的に企業を訪問いたしまして、アドバイスなどを行う事業を実施しております。
 利用者の評価は高くなっておりまして、相談実績の増加が見込まれますため、派遣の規模を四百八十回から七百六十回に拡充をいたします。こうした取り組みにより、中小企業の経営課題の解決を的確に支援してまいります。
   〔病院経営本部長川澄俊文君登壇〕

〇病院経営本部長(川澄俊文君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、移管後の豊島病院の取り組みについてでございますが、豊島病院では、地域の医療機関との患者の紹介、逆紹介を積極的に推進するとともに、地域の医療従事者に対する研修を行うなど、地域医療連携の取り組みを強化し、平成二十二年八月には、地域医療支援病院の指定を受けたところでございます。また、二次救急医療を適切に提供するとともに、地域に不足する産科医療につきましても、月五十件程度の分娩を安定的に行っているところでございます。
 さらに、看護師不足に対しましては、PR活動や病院見学の実施など、さまざまな対策に力を注いだ結果、必要な人員を確保することができ、平成二十三年六月には、長年の懸案であった一般病床の全面開設を果たすなど、体制の充実を図ることができたところでございます。
 次に、豊島病院の在宅医療への支援についてでございますが、豊島病院では、退院後に在宅で療養している患者が急変した場合には、救急で対応しております。また、緩和ケア病棟では、退院後、在宅で療養しているがん患者の受け入れにも対応しているところです。地域の在宅医療の関係者とは、区医師会主催の在宅療養ネットワーク懇話会への参画や、ケアマネジャー研究協議会との連携を図りながら、協力関係を築いているところでございます。こうした取り組みを継続し、在宅医療に関するニーズを把握しながら、病院の機能を生かしたさらなる支援のあり方を検討してまいります。

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