平成二十四年東京都議会会議録第三号

〇副議長(ともとし春久君) 二十九番新井ともはる君。
   〔二十九番新井ともはる君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇二十九番(新井ともはる君) まず初めに、都民のための情報通信の確保に向けた情報提供ツールの活用についてお伺いします。
 発災時に何より重要なのは、情報通信の確保です。とりわけ、都民の安全・安心を確保するための情報確保策を充実させる必要性があります。東日本大震災が発生した昨年三・一一当日の通信の混乱は、今なお、強く印象に残っています。通信事業者も、無線LANのアクセスポイントの増設や携帯電話の基地局における電源確保の機能強化などの取り組みをしていますが、こうした事業者の動きも、連携を図る必要性があると考えています。都は、Wi-Fiの実証実験を行うとのことですが、ぜひ実のある検証を行うよう要望いたします。
 また、大震災当日、公衆電話が有効に機能したことを踏まえれば、こうした特設電話を活用することも視野に入れる必要性があります。被災地では、防災科学研究所が構築した復興クラウドが、デジタル地図などと組み合わされて有効に活用されていますし、参考にすべきです。
 こうした取り組みの一環として、せんだって、二月三日に行われた帰宅困難者対策訓練を視察いたしました。私が伺った新宿会場では、さまざまな通信手段を使った情報提供が行われていましたが、エリアワンセグをうまくチューニングできない人も多く、さまざまな手段の普及も課題だと感じました。こうした課題を今後の対策に生かしていく必要性も重要なことと考えます。
 そこで、都は、発災時における都民のための通信確保に向け、新たな情報提供ツールの活用も含めて、今後どのように取り組むのか見解を伺います。
 次に、都民に対する歯科保健事業についてお伺いします。
 歯と口腔、いわゆる口の中の健康は、全身の健康保持、増進にとても重要な働きをすることがわかっています。特に、歯が少ない、または入れ歯の状態の悪い高齢者においては、身体的健康状況が悪化するといわれています。そのため、国と日本歯科医師会が、八十歳になっても自分の歯を二十本以上保とうという八〇二〇連動を提唱し、これまでに自治体や全国の歯科医師会が、さまざまな事業を取り組んでいます。
 さて、高齢期になっても口の中の健康を保つには、乳幼児からの歯と口腔の健康管理が非常に大切です。母子保健法では、一歳六カ月と三歳児の歯科健診が義務づけられています。
 また、学校保健安全法では、小学校入学時から高校まで、やはり学校での歯及び口の健康診断が義務づけられています。
 しかし、それ以降、歯科健診は健康増進法に基づく歯周疾患検診の努力義務規定があるだけです。口腔ケアが特に必要になる高齢者についても、歯科健診に関して何ら規定はありません。
 歯周病にかかる人の割合は、年齢が進むに従ってふえていきます。厚生労働省の調査によると、六十五歳以上では、九〇%以上の人に何らかの所見があるというデータもあります。
 私の地元の日野市歯科医会の先生方の話では、歯と口腔の健康維持のためには、歯科疾患の予防のため定期的に歯科医院に通院するのが理想的なのだが、実際には、痛みなどの自覚症状が生じて初めて歯医者さんに来るケースも多いと聞いています。特に歯周病は、自覚症状があらわれてから受診した場合、症状がかなり進んでいることが多いそうです。
 口腔の健康を増進し、トータル的な医療費の増加を抑えるには、都は、定期的に歯科健診を受診する都民をふやすための対策をとるべきと思いますが、見解を伺います。
 次に、中学校武道必修化に向けた安全対策について伺います。
 中学校では、学習指導要領の改訂により、平成二十四年度から保健体育の授業において、すべての中学生が、柔道、剣道、相撲などの武道を学習することとなっています。
 武道には、礼に始まり礼に終わるという伝統的な行動の仕方があり、激しい戦いの中であっても、みずからの心を律する克己心や、戦う相手を尊重する考え方を大切にしています。子どもたちが、国際社会をたくましく生きていく日本人として、我が国、日本固有の伝統的な考え方や行動の仕方を正しく身につけていくためには、武道の学習が適切かつ安全に行われることが大切です。
 さて、最近の新聞報道などでは、この二十八年間で全国の百十四人の子どもが柔道で死亡するという事故が発生していることから、必修化を危惧する指摘がなされています。確かに、こうした数字を聞けば、危険性が高いように感じられますが、授業と部活動が混同されており、柔道の技そのものが危険であるという誤解を招く可能性があります。こうした状況では、これから武道を学ぼうとする生徒や保護者を、不安な気持ちにさせてしまうことはいうまでもありません。
 スポーツには、けがはつきものですが、どのような場合でも、重大事故を発生させないよう、安全対策を講じる必要性があります。特に、武道を指導する中学校の保健体育の先生は、武道本来のよさや特性を十分に理解するとともに、重大事故を発生させないよう安全な指導方法を確実に身につけておくことが不可欠です。
 しかし、指導する先生の指導力を疑問視する声があります。特に、柔道を含めたコンタクトスポーツの過去の事故を分析すると、頭部に外傷や打撲がなくても、頭蓋骨と脳の硬膜の間に損傷を与える加速損傷という現象が起こることが医学的にわかってきました。こうした医学的知識を踏まえて、安全な指導を行うことが必要ではないかと考えます。
 そこで、武道必修化に向けた安全対策について、次の五点について質問します。
 まず、新聞報道などで指摘されていますが、実際に全国の中学校で柔道の授業中に発生した死亡事故の状況についてお伺いいたします。
 第二に、武道必修化といわれますが、平成二十四年度から中学校では具体的にどのような柔道の授業が行われていくのか、そして、柔道の授業と部活はどのように違うのかお伺いいたします。
 第三に、都教育委員会は、中学校保健体育での武道必修化に向けて、どのような取り組みを行ってきたのかお伺いいたします。
 第四に、報道等で指摘されているような危険性に対し、都教育委員会は、今後どのように安全対策を充実させていくのかお伺いいたします。
 第五に、万が一、重大事故が発生した場合の再発防止策についてお伺いいたします。
 最後に、武道の授業を実施するに当たっては、事故防止に関する医学的知識を普及啓発することや、専門的な指導力を有する外部指導員を導入することなどを通して、教員の指導力の向上を図るべきと考えますが、都教育委員会の見解を伺い、次の質問に移りたいと思います。
 次に、多世代交流を推進するための住宅政策についてお伺いします。
 私の地元であります日野市では、市長が先頭に立って、市を挙げて多世代交流の推進に取り組んでいるところです。今日、日本の社会では、核家族化が急激に進み、かつては当たり前だった三世代同居は減少しています。このことが、ひとり暮らしの高齢者、ひとり親、待機児童などの社会のゆがみを生じさせる一因となっており、この傾向は、少子高齢化が進行していくことを考えると、さらに進んでいくものと予想されます。
 一方、こうした状況にあっても、高齢世代と若年世代の世代間の交流が盛んになれば、例えば子育てに悩む母子世帯に経験豊富な高齢者がアドバイスを与えることや、身寄りのないひとり暮らしの高齢者を若年世代が見守ることなど、双方にとってメリットがあり、さらには、先ほど述べた核家族化による社会のゆがみを戻していく力にもなるのではないかと考えます。
 日野市内にあるUR都市再生機構の多摩平団地では、団地再生事業に伴い空き家となった建物を活用し、民間事業に貸し出し、大学生や若い社会人を対象としたシェアハウス、子育て世帯やアクティブシニアを対象とした菜園つき賃貸住宅、高齢者を中心とした多世代向けのコミュニティハウス及び高齢者向け住宅として生まれ変わりました。
 昨年末、たまむすびテラスとして、新たにまち開きが行われたところです。多摩平団地にお住まいの方からのお話によりますと、異なる世代の間での交流が実際に始まっているということでした。東京都においても、多世代交流が生まれやすく、育ちやすい環境の住宅、住まいづくりを行っていくべきだと考えますが、そこで、今後、住宅政策における多世代交流の取り組みについてお伺いします。
 最後に、交通政策についてお伺いします。
 初めに、交差点部における自転車の安全対策についてお伺いします。
 自転車は、広く都民に利用される手軽な交通手段として、特に多摩地域では、鉄道やバスなどの公共交通機関を補完する手段として活用されています。
 さて、昨年、平成二十三年、警視庁が発表した調査結果によれば、東京都内の自転車事故もしくは自転車が関係する事故の発生状況は、交通事故全体の約三七%を占めていますが、これは全国平均の約二〇%を大きく上回っています。
 そこで、歩行者と自転車が、安全で安心して通行できる環境の整備を推進していくことが重要と考えます。特に自転車の交通事故は交差点において発生することが多く、都内では約七割が交差点周辺で発生しています。このような事故に対し、栃木県宇都宮では、交差点の道路運用を変更する実験が行われるなど、交差点における自転車の安全確保に向けた取り組みが進められていますが、都においても、同様の取り組みを推進していくべきです。
 そこで、今後、交差点部における自転車の安全対策について、道路構造上の取り組みをお伺いいたします。
 次に、大規模地震発生時の都営バスの役割についてお伺いします。
 東日本大震災発生時には、首都圏の鉄道が運行を中止し、多くの帰宅困難者が発生したことは記憶に新しいところですが、いざ首都直下地震が発生した場合には、鉄道の運行再開までには、かなりの日数がかかることが予想されます。
 せんだって、二月三日に行われた帰宅困難者対策訓練では、大地震が発生してから数日間が経過し、鉄道がまだ運転再開されていないという前提のもと、バスと船舶による代替輸送を行う訓練が行われました。約千五百台の車両を有している都営バスも訓練に参加いたしましたが、帰宅困難者の輸送に関し、都営バスは大きな役割を担うことが期待されます。
 そこで、帰宅困難者の輸送など、大規模地震発生時の都営バスの役割について見解を伺いまして、私からの質問を終わりにします。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 新井ともはる議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、柔道の授業中に発生した死亡事故の状況についてでございますが、新聞等で報道されております平成二十二年度までの二十八年間に全国で発生した百十四件の柔道の死亡事故のうち、百二件は、中学校や高校の柔道部の活動中に発生したものでございました。授業中のものとしましては、中学校で一件、高校で十一件の死亡事故が発生しており、中学校の一件は、いわゆる突然死によるものでございました。
 なお、東京都では、この十年間で、中学、高校の柔道の授業や部活動のいずれにおいても、死亡事故は発生しておりません。
 次に、柔道の授業と部活動との違いについてでございますが、新学習指導要領により、平成二十四年度から、中学校では、柔道、剣道、相撲の中から一つを選択し、すべての生徒が、一、二年生の間に、いずれかの武道を学習することとなっております。
 中学校の保健体育では、各学年、年間百五時間の授業時数の中で、陸上や球技等八つの運動領域をすべて学習しますために、武道は十時間程度の授業時数となり、柔道を選択した場合には、その歴史や特性、礼法、基本動作や技術の基礎を学習することとなります。
 これに対し、柔道部では、段位を取得することや試合に出場することなどを目標に、一人一人の部員が体力や技能に応じて練習を積み重ねていきますために、体力、技能ともに競技性が高い点で柔道の授業とは大きく異なります。
 次に、武道必修化に向けての取り組みについてでございますが、学習指導要領の改訂を受け、都教育委員会は、これまで区市町村教育委員会と連携して、武道必修化の意義やねらいを中学校に周知徹底いたしますとともに、生徒向け実技のDVD視聴覚教材や、武道指導事例集を作成、配布するなど、武道必修化に向けて指導の充実を図ってまいりました。
 また、学校体育実技講習会、運動部活動指導者講習会及び体育系大学と連携した武道の専門的な研修会を毎年開催するとともに、二年間にわたり、外部の専門家を活用した武道指導のモデル事業を実施し、教員の指導力向上に努めてきたところでございます。
 次に、今後の安全対策の充実についてでございますが、都教育委員会は既に、部活動中の重大事故防止のためのガイドラインを作成し、事故防止に努めてまいりましたが、さらに、専門家による技術委員会を設置して、柔道指導に内在する危険性を分析し、安全指導の一層の充実を図ってまいります。
 また、この技術委員会の委員を講師として、すべての保健体育科教員を対象とした安全指導のための実技講習会を地区別に開催いたしますとともに、区市町村教育委員会の要請に応じて、中学校への特別な指導訪問を行い、安全指導のさらなる徹底を図ってまいります。
 次に、重大事故が発生した場合の再発防止策についてでございますが、学校の教育活動中に死亡事故や後遺障害が残るなどの重大事故が発生した場合、学校はもとより、当該の教育委員会は、事故調査委員会等を設置して事故の原因を究明するとともに、事故の再発防止策を講じてまいります。
 その際、事故の態様に応じて医療や運動の専門家等から意見を聴取するなど、より正確に原因を分析し、重大事故を防止するための具体的な対策を明示することによって、安全指導の徹底を図ってまいります。
 次に、教員の指導力の向上についてでございますが、過去の事故を教訓に、指導内容や方法を見直したり、武道の専門家の指導を仰いだりすることは、武道指導を安全に進めていく上で極めて有効でございます。
 このため、都教育委員会は、これまでの取り組みに加え、過去の重大事故から見出された医学的知見等を踏まえ、すべての保健体育科教員を対象とした実技講習会等を通じて、安全に配慮した授業の進め方の指導をさらに充実させてまいります。
 また、これまで進めてきた外部の専門家を活用したモデル事業の成果の普及を通して、教員の指導力を向上させ、安全指導のより一層の徹底を図ってまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 道路交差点における道路構造上の自転車安全対策への取り組みについてでございますが、自転車は、近年、その利用が広がっており、交通が集中する交差点部における自動車との接触事故の防止など、自転車の安全対策を図っていくことが重要であります。
 交差点部における自転車の動線の分離や滞留空間の確保など、自転車にとって安全な交差点の構造については、既に交通管理者と連携して検討を進めております。
 今後とも、歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して利用できる道路空間の整備に努めてまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 都民のための情報通信の確保についてでございますが、発災時に一斉帰宅を抑制するとともに、都民の不安を和らげ冷静な行動を促すためには、家族との安否確認や、行政などによる迅速な情報提供が不可欠でございます。
 このため、都は、猪瀬副知事と内閣府政策統括官を共同座長とする帰宅困難者等対策協議会を設置し、通信事業者を交えて、発災時の情報通信の確保に取り組むとともに、都営地下鉄の駅構内や列車内でのメールやインターネットの利用が年内に順次可能となるよう、整備を進めております。
 また、東日本大震災では、携帯電話が通じにくくなった一方で、インターネットを通じた情報共有に効果が認められており、都はこうした教訓を踏まえ、二月三日の帰宅困難者対策訓練において、ツイッターやエリアワンセグなど多様な通信ツールを活用した情報提供を試みました。
 今後、訓練成果の検証を踏まえ、ソーシャルメディアや特設公衆電話の活用、地図による情報提供も含めた東京都防災ホームページの機能強化など、発災時の安定的な情報通信の確保に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 歯科健診の受診促進につきましてお答えを申し上げます。
 都は、成人期にかかりつけ歯科医で定期健診等を受ける都民の割合につきまして、平成十二年に策定をいたしました西暦二〇一〇年の歯科保健目標において、具体的な数値目標を定めておりまして、講演会やイベントなどを通じて都民への普及啓発を図ってまいりました。
 その結果、四十歳以上で目標値を大きく超えるなど、定期健診を受けている都民は着実に増加いたしております。
 また、区市町村が実施しております歯周疾患検診等につきましても支援を行っておりまして、五十七の区市町村で既に実施されております。
 昨年一月に策定いたしました新たな歯科保健目標でございます、いい歯東京におきましても、健診の目標を定めておりまして、今後とも、区市町村や東京都歯科医師会等関係団体と連携して取り組みを進めてまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 住宅政策における多世代交流についてでございますが、年齢や世帯構成等に偏りのないバランスのとれたコミュニティを形成することは、多様な人々の交流を促進し、地域活力の維持向上に寄与すると認識しております。
 都はこれまでも、都営住宅において、子育て世帯の入居機会拡大を図ったり、建てかえによる創出用地を活用し、保育所や子育て世帯向け住宅、高齢者福祉施設の整備を促進するなどの取り組みを行っております。
 また、お話の都市再生機構、URの多摩平団地の建てかえに当たっては、市やURと連携して保育所、高齢者福祉施設、集会施設などを備えたまちづくりを支援することで、多様な人々の交流を促進しております。
 今後とも、こうした取り組みにより、多世代がともに暮らすバランスのとれた地域コミュニティの形成に努めてまいります。
   〔交通局長野澤美博君登壇〕

〇交通局長(野澤美博君) 大規模地震発生時の都営バスの役割についてでございますが、都営バスは、大規模地震発生時に、交通規制が行われる区域においても通行できる緊急通行車両となっており、東京都地域防災計画に基づいて、負傷者、医療スタッフのほか、帰宅困難者の緊急輸送を担うことになります。
 現在、関係機関と首都直下地震の発生時における、より具体的な帰宅困難者の輸送体制について検討しておりまして、この結果等を踏まえて、震災時において都営バスが機動的な輸送手段としての役割を果たせるよう努めてまいります。

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