平成二十四年東京都議会会議録第三号

〇議長(中村明彦君) 二十四番高木けい君。
   〔二十四番高木けい君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇二十四番(高木けい君) 高度防災都市づくりについて伺います。
 東日本大震災によって、改めて非常事態における我が国の根源的な欠陥が浮き彫りになりました。それは、非常時の法体系がないということであります。
 法治国家において、想定される危機に対して法整備を怠ることは、とりもなおさず立法府の怠慢と不作為ということになりますが、代議制、主権在民の我が国にあって、政治が国民の意識と乖離したまま立法行為をすることは不可能ですから、半分が政治の責任なら、半分は国民の責任でありましょう。
 いずれにしても、かねてから最高法規としての憲法に非常事態の規定がないことの異常性は指摘されていたことであり、占領軍に押しつけられた憲法とはいえ、戦後一貫してそれを墨守、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してという空虚で空想的な平和主義に安住し、そうした法体系整備の努力を忌避し続けてきたツケが、このたびの東日本大震災でいみじくも露呈しました。
 例えば、発災から十一カ月たって、ようやく復興庁なる組織が立ち上がった我が国と、お隣の台湾で起こった一九九九年の台湾大地震の際、台湾政府がとった行動を比較すると、それは一層鮮明に見えてきます。
 例えば台湾では、発災後四日目に総統の非常時大権である緊急命令が発令され、翌年三月までの六カ月間、現行法の制約を受けずに行政措置がとれることとなりました。このときの緊急命令は十一項目、直ちに発効し、さまざまな復興策が実現しました。
 例えば、八百億台湾元の特別公債の発行権限、復興に必要な土地や財産の強制借用と公共財産の民間活用、被災地再建のための中央銀行から市中銀行への一千億台湾元の低利融資枠の供与、復興作業のための軍の動員、被災家族の成人男子への徴兵期間の短縮、被災者が喪失した公的書類の再発行の簡素化、期間中の物資買い占めや便乗値上げ、詐欺、強盗などの犯罪に対する罰則の強化などでありました。
 昨年夏、私は、大地震から十二年たった台湾中部震源地のまち、集集を視察してきましたが、倒壊した寺院が一つモニュメントとして残っている以外、震災の傷跡は全く感じられず、清潔で整然と整ったまち並みに台湾政府の復興策が成功したことを確認してまいりました。
 このように、震災などの非常時には、平常時と違った優先順位があるにもかかわらず、我が国にはそうした法体系がありません。この状態を続けていると、非常時に迅速で効果的な対策をとろうとすれば、超法規で行わなければならないことが続出し、法治国家の体をなさなくなることは明らかであります。
 千年に一度といわれる東日本大震災を経験し、しかも、近い将来、かなり高い確率で首都東京に大地震が起こるといわれている現在、施政方針演説で、日本再浮上の道筋をつけるといわれ、先日の記者会見では現行憲法の破棄と新憲法の制定を主張された石原知事に、都民、国民の生命と財産を守るための本質的、根源的な法体系のあり方、またそこに至る道筋について所見を伺います。
 災害時、東京の大きな弱点は、およそ一万六千ヘクタールといわれる木密地域の存在です。そこで、このたび発表された木密地域不燃化十年プロジェクトに期待がかかります。
 まず、不燃化特区の選考のスケジュールと要件、また、特区指定による特別の支援策にはどのようなものが考えられるのか伺います。
 次に、木密特区の中にある延焼遮断帯を形成する都市計画道路は、特定整備路線として五十路線程度指定し、十年後に一〇〇%の完成を目指すと聞いています。多額の事業費が見込まれ、国と都の負担割合がそれぞれ五〇%としても、国はその負担とスピード感についていけるのでしょうか。
 また、今後十年という、いまだかつてないスピードで都市計画道路を完成させるには、町会、自治会やまちづくり協議会、地権者、借地人、借家人など、相当数の関係者の理解が不可欠であります。そのための特別の支援策も検討されるべきと考えますが、その内容と十年で特定整備路線の一〇〇%完成を目指す決意を伺います。
 さらに、特定整備路線とともに、現在事業中の都市計画道路も予定どおりに進めていただかなければなりません。あわせて見解を伺います。
 次に、昨日の我が党の代表質問にもあった災害時の支障となる踏切の解消、連続立体交差化事業について伺います。
 私の地元北区のJR埼京線十条駅周辺には、木密地域の中心に、災害時には支障となるおそれのある踏切が六カ所あります。当該区域は、既に踏切対策基本方針で、八カ所の事業候補区間の一つとして除却すべきものと位置づけられていますが、木密十年プロジェクト及び現在都市計画決定の案件提出に向けて鋭意取り組み中の十条駅西口再開発と歩調を合わせて、一層の対策促進に努力すべきと考えます。現在の進捗状況と今後の見通しについて所見を伺います。
 次に、緊急輸送道路沿道建物の耐震化について伺います。
 この間、私も幾つかのケースで相談を受けましたが、この取り組みをより進めていくためには、さらに制度を充実させる必要があります。
 一つには、緊急輸送道路全体の安全性の確保、少なくとも環状七号線内側の緊急輸送道路は、第一次、第二次、第三次の区別なく、条例で指定した緊急輸送道路と同じ条件で沿道建築物の耐震化を進めていくこと、二つには、耐震補強ではなく、この際建てかえたいという要望もあり、耐震補強の助成では資金的に困難な場合、特別の低利融資や利子補給制度をつくることであります。以上二点は、早急なる改善の検討を要望しておきます。
 さらに、耐震補強の工法によっては、建物内の利用可能面積が減少いたしますが、このような場合は税制面で何らかの手当てがなされるべきと考えます。見解を伺います。
 防災の最後に、中小企業の防災対策について伺います。
 製造業など工場や設備を抱える企業にとっては、防災対策に必要な資金は多額となるだけに、計画性のある対応が必要です。
 都は、昨年四定で、我が党の提案を受け、災害時の事業継続の計画、いわゆるBCPを策定する中小企業への支援に加え、その計画の実現をモデルとして取り上げ、サポートする考え方を明らかにしています。中小企業の防災対応力を高めるための具体的な施策展開について見解を伺います。
 次に、産業振興、小売商業後継者育成開業支援事業について伺います。
 昨今、商店街や小売商業の後継者難が著しく進んでいるといわれています。しかし、今や商店街は、商業という枠にとどまらず、地域コミュニティの核として住民生活を支える重要な役割を果たしていることから、後継者の育成はもとより、将来商店街で出店にチャレンジする人材、あるいは小売商業にベンチャー的挑戦をする意欲ある人材を育成、確保することが不可欠です。
 昨年、我が党が本会議で主張したとおり、かつての徒弟制度やのれん分けのような、商人を育てるすぐれた仕組みも参考にしながら、現代的で新しい支援策を早急に立ち上げる仕組みが必要であろうと考えます。所見を伺います。
 次に、市場政策、まず豊洲新市場について伺います。
 二十四年度予算に、土壌汚染対策費を含む豊洲新市場建設費約六百億円が盛り込まれ、二月七日には、移転反対を主張していた東卸から、組合長名で豊洲移転計画に組合として関与していく旨の文書が出されました。
 かねてから私たちは、土壌汚染対策に万全を期すことを前提に、豊洲に新しい市場を建設することこそ都政の責任であると訴えてきました。
 新市場建設が明確に見えてきた今、ようやく次のステップに進むときが来たと考えます。それは、土壌汚染対策と新市場の建設がハードのプラットホームづくりとするならば、市場内部の商品の物流を合理化、高度化するためのソフトのプラットホームづくりに取りかかることであります。
 例えば、魚については、通常、卸、仲卸、買い出し人という三段階の取引になりますが、商品が産地から卸へ来た段階で最初の伝票が発生します。そうして次々と商品が動くたびに伝票が作成され、買い出し人に届くまで合計五回書かれることになります。さらに、市場内物流が合理化されないことで、余分なコストがかかり、この手間の多さと余分なコストが市場業者の経営の大きな負担になっていると聞いています。
 世界レベルを目指す豊洲新市場は、こうした物流を合理化、高度化させるソフトのプラットホームが必須であると考えますが、都の所見を伺います。
 次に、市場の衛生管理について伺います。
 私は、昨年五月、被災地視察の一環として青森県八戸市を訪ねました。
 八戸の魚市場は、震災による津波で、オープン間近の新しい施設が大きな被害を受けましたが、驚いたのは、その魚市場の建物全体がHACCP対応で、主にEUへの輸出を目指してつくられた衛生基準、安全基準の完璧な鮮魚加工工場のような設備だったことです。
 HACCPという基準がすべてとはいいませんが、たまたま私が目にした八戸の最新式魚市場がそうであったように、既に地方市場は、築地などを通さずに直接海外への販路拡大を模索しています。
 東京の目指すすべての市場の将来像は、衛生基準、品質ともに、すべからく世界に通用することが共通認識でなければならず、東京の商品が安全・安心、高品質であることを発信できる、魅力ある市場でなければならないと考えます。所見を伺います。
 最後に、防災教育について伺います。
 関東大震災の翌年、時の東京市長永田秀次郎は、東京市の復興に向け、市民にも大きな犠牲を求める大規模な都市改造案を発表いたしました。このとき永田は、市民諸君に告ぐと題した声明を発表し、この事業は、実に我々市民自身がなさなければならぬことであり、これを他人の仕事として苦情をいったり、批評をしたりしてはいられませぬ、後世子孫に対する我々の当然の義務でありますと、復興事業は、広く世のため、そして後世のためにもなし遂げなければならない義務であると訴えました。
 さらに永田は、東京市民の敵は我々の心中の賊、我々はまずこれに打ちかたねばならぬとして私利私欲を戒め、我々市民の自覚により、我々市民の了解によってこれを実行したいと、市民一人一人の自主性に呼びかけました。
 この帝都復興事業は、市民一人一人が高い意識と使命感を持った結果、震災の焼失面積の約九割に当たる三千百十九ヘクタールの区画整理事業をなし遂げるという、世界の都市計画史上例を見ない壮挙となりました。
 延焼遮断帯としての昭和通り、清洲橋等の耐震耐火構造を持つシンボル性の高い橋梁、モダンな設計の小学校、防災とコミュニティの両面を備えた公園等緑のスペース、上下水道の整備、義援金でつくられた同潤会による鉄筋コンクリートづくりのアパートなど、まさに現在の首都東京はこのとき形成されたといっても過言ではありません。
 この様子は、都教育委員会が発行した日本史教科書「江戸から東京へ」に詳しく書かれており、これは防災教育の教材としても大変すぐれていると思います。
 そこで、この教科書を活用し、まずは先人が江戸東京の災害をいかに克服し、繁栄につなげてきたかを高校生に学ばせるべきであると考えます。教育長の所見を伺います。
 次に、このたびの東日本大震災を受け、都立高校改革推進計画の重点的な取り組みの一つとして、世のため人のために尽くす人材の育成、防災教育の推進が本会議に提案されています。世のため人のために尽くす人材の推進をどのように進めるのか、教育長の見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 高木けい議員の一般質問にお答えいたします。
 国家の非常事態と憲法の問題についてでありますが、敗戦後、かつて占領下に、占領軍に一方的に押しつけられた現憲法には、ご指摘のとおり、大災害あるいは外国からの武力攻撃、テロなどへの対応を想定した非常事態条項があるはずもなくて、国家の危機に臨んでも、みずからの手でみずからを守ることすらできない状況であります。
 例えば、世界が非常に時間的にも空間的にも狭くなってきて、はるか遠隔の地で起こっているいろいろな出来事が一つの危機として日本にも大きな影響を与えると。そういう事態にも、日本はそれを集団で防ごうとする善意の国家と連帯して集団自衛をすることが憲法の拘束でできない。あのインド洋での給油もばかげた理論で中止せざるを得ないと、そういうていたらくでありました。
 この憲法によって、アメリカのもくろみどおり、日本人には他力本願がしみついたわけでありますが、この実に巧みな、この国を骨抜きにする占領政策によって、国民の心の奥には、今でも、他力本願といいましょうか、アメリカにすべてを結局リファーし、依存するというあしき習慣が抜け切れずにいると思います。
 いずれにしろ、北朝鮮に同胞が誘拐、拉致され、殺され、シナに領土、領海を侵されようとも、あるいは今回の大災害が起きても、国家が自発的に動いて有効の手がなかなか打ち切れない。多くの国民もこうした危機を我がこととして考えようとしないという、こういうある意味では自堕落な国家になり果てたわけでありますが、こういう問題を反省して考えるためには、出直すためには、やっぱり国家そのものをこういう形でいろいろ規制している、国家の基本ともいえる憲法というものを考え直す必要があると思います。
 ともかく世界の歴史を眺めても、占領下で占領軍が統治のためにつくった法律が、日本の場合にはサンフランシスコ条約で独立を果たしたわけですけれども、その後も占領軍がつくった占領のための国家基本法が有効で生きているというこういう事例は、これは法律的に無効とかそんなことの問題じゃなくて、人間の歴史を振り返ってみてもあり得ないことなんですね。
 それがいまだに続いていることそのものが面妖な話でありますけれども、そういう意味では、私たちやっぱり、この現憲法がどう考えても歴史的に無効だという判断をすべきだと思う。
 これは、これが誕生したときに、例えば、かつての美濃部達吉博士、これは亮吉さんじゃないですよ、そのおとっつぁんの方でありますが、あるいは清瀬一郎とか、あるいは共産党の野坂参三氏までが、これはやっぱり無効であると、これはやっぱり速やかに変えなくちゃいかぬという発言をしているわけですね。
 私はやっぱり、そういう点で、この憲法を、いかなる政権であろうと、本気で見直して、歴史的に無効であるという判断をしたらいい。判断をするということは、この憲法を捨て去るということです。破棄することです。
 破棄という言葉は激しいから、みんな顔を背けるかもしれませんが、歴史的に無効な法律を六十数年間、とにかく拝受して続けている国家、民族というのは、私は、世界に例はないと思いますね。ですから、アメリカの知人なんかとこの問題を話しても、彼らがびっくりするのは、ともかく日本は、私たちがつくって占領したんだ、占領のための手だてでつくった憲法をいまだに続けているのかねといって、驚くのはアメリカ人の方なの。
 そういう意味で、私は、ご指摘のとおり、この憲法というものに大きな疑義を抱いて、何党の政権であろうと、これを歴史的に無効だと判断して、まず、これを破棄することから始まらないと、この国は立ち上がれませんよ。そういう点で、私たち、やっぱり本気で憲法というものを見直して、同じことを私、間もなく出る自分担当のコラムに書きましたが、古くなって靴ずれを起こしている靴は、掃いて捨てたらいいんだ、こんなものは。それが人間の道理ではないでしょうかね。私は、この今の憲法なるもの、歴史を振り返ってみれば、こんなものをいまだに歴史的に無効なまま拝受して続けている国家、民族は、かつての歴史にどこにもないということを、私たち、これを考え直すことで、この国の再生、再建というものは可能になってくると思います。
 他の質問については、教育長及び技監、関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、江戸東京の災害の歴史を高校生に学ばせることについてでございますが、江戸時代の明暦の大火や安政の大地震、近現代の関東大震災や東京大空襲から江戸東京は目覚ましい復興を遂げており、そこには私利私欲を捨て、復興に尽力した人々の姿があったことを高校生に理解させることが重要でございます。
 都教育委員会が作成した独自教科書「江戸から東京へ」では、関東大震災後の復興に取り組んだ後藤新平や、東京を水害から守る荒川放水路の建設に尽力した青山士を取り上げ、江戸東京の災害の歴史を学ぶだけでなく、現在の東京の繁栄を築いた人々の功績も学べるように工夫しております。
 今後は、「江戸から東京へ」で取り上げた災害からの復興の過程を通して、後世の人々のために尽くした先人の業績を学ばせ、都立高校生の社会貢献意識を高めてまいります。
 次に、世のため人のために尽くす人材の育成についてでございますが、都教育委員会は、来年度、すべての都立高校で、生徒の防災意識や社会貢献意識を高めるため、学校における宿泊を伴う防災体験活動を行わせます。その際、各学校は、消火訓練や被災地で救援活動に従事した方の防災講演会を行う等、東京消防庁はもとより、警視庁、自衛隊、気象庁、大学等と連携を図ってまいります。
 さらに、来年度指定する十二校の防災教育推進校では、防災活動支援隊を結成し、地域と協力してリーダーとなる生徒を育成するとともに、東京消防庁と連携して、消防学校等で一週間程度の宿泊体験活動も行ってまいります。
 このような取り組みを通して、地域で消防団や災害時支援ボランティアとして活躍する等、自助、共助の精神を持って社会貢献できる生徒を育てる防災教育を推進してまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、木密地域不燃化十年プロジェクトの特定整備路線及び現在事業中の都市計画道路の整備についてでございますが、特定整備路線の整備は、延焼遮断帯の形成や沿道建物等の不燃化を促進し、震災時に特に甚大な被害が想定される整備地域の早期改善に大きな効果を有する事業でございます。
 このため、関係権利者の移転先確保や残地取得の弾力的運用など、特別な生活再建支援策を講じることで、十年で特定整備路線の一〇〇%整備を目指してまいります。
 また、現在事業中の第三次事業化計画の優先整備路線などにつきましても、引き続き早期完成を目指し、着実に整備を推進してまいります。
 今後とも、これら事業に対する財源を安定的、継続的に確保し、確実に配分するよう国に対して強く求め、東京の道路整備に全力で取り組んでまいります。
 次に、JR埼京線十条駅付近の鉄道立体化についてでございますが、連続立体交差事業は、複数の踏切を同時に除却することで、道路ネットワークの形成を促進し、地域の防災性の向上にも寄与する極めて効果の高い事業でございます。
 都は、補助第八五号線との交差部を含む六カ所の踏切がある十条駅付近を事業候補区間に位置づけており、平成二十三年度は、踏切除却の効果を調査するなど、事業化の可能性について検討を進めております。
 平成二十四年度は、事業範囲や構造形式について、国費を導入し、調査を実施する予定であります。
 引き続き、駅西口再開発や関連する道路など、地元のまちづくりの取り組み状況を踏まえ、区や鉄道事業者と連携し、鉄道立体化の検討を進めてまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 不燃化特区制度についてでございますが、この制度は、市街地の不燃化に従来よりも踏み込んだ取り組みを行う区に対し、都が特別の支援を行い、木密地域の改善を一段と加速することをねらいとしております。
 制度の構築に当たっては、先行実施を行うこととしており、都は区からの提案を受けて、地域の課題解決への効果的な取り組みや他の地域への波及効果などを総合的に検討し、本年八月ごろに実施地区を選定することとしております。
 また、特別の支援策については、例えば不燃化助成の上乗せや税の減免、都有地の提供、執行体制確保のための支援などが想定されますが、今後、区からの提案を踏まえながら具体化を図ってまいります。
 都は、こうした取り組みにより、実効性のある制度を構築し、木密地域の不燃化に取り組んでまいります。
   〔主税局長新田洋平君登壇〕

〇主税局長(新田洋平君) 耐震補強を施した建物に対する税制上の対応についてでございますが、建築物の耐震化は都の喫緊の課題であり、他の政策手段と組み合わせながら税制の活用を図ることは重要であると認識しております。
 特に、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化は、路線全体で一体的に進めていく必要があることから、耐震改修を施した事業用建築物につきましては、固定資産税等の減額などの税制上の優遇措置を講じるよう国へ提案要求することを関係局と検討してまいります。
 また、耐震改修工事の工法によっては、家屋の床面積が減少する場合があり、その際の固定資産評価上の取り扱いについては研究してまいりたいと考えております。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業の防災対応力の向上についてでありますが、中小企業が、震災が生じても迅速に事業を再開するため、事前にBCPをつくるとともに、事業所等の耐震性を高めていくことが重要であります。
 都はこれまで、中小企業に対しましてBCPの策定を支援し、その成果を広くPRしてまいりました。その上で、さらにBCPの実効性を高めていくためには、企業の建物の耐震化などを先行事例として紹介していくことも重要と考えております。
 このため、来年度、都の支援によりBCPを策定した企業のうち、建物等の耐震診断や補強を行う十社を選びまして、一千万円を上限にモデル的に支援いたします。
 これにより、中小企業の防災対応力の向上を実現してまいります。
 次に、商店街の新たな担い手の育成等についてでありますが、お話のように、商店街の後継者や新しく出店する意欲のある人材の育成を適切に支援していくことは重要と考えております。
 このため、都は来年度から、東京都小売商業後継者育成・開業支援事業を開始いたしまして、商店街での開業を希望する人材の育成等を支援してまいります。
 具体的には、商売に不可欠な仕入れのノウハウや経営知識を学ぶ研修に要する費用や、研修終了後に商店街での出店等にめどがついた際に、開業に必要な資金の一部を助成いたします。
 こうした取り組みにより、新たな担い手の育成と確保を通じて、商店街の活性化につなげてまいります。
   〔中央卸売市場長中西充君登壇〕

〇中央卸売市場長(中西充君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、豊洲新市場における物流効率化のためのソフト面の取り組みについてでございますが、新市場が、首都圏の基幹市場として産地や顧客ニーズに的確にこたえていくためには、商品の品質を保持する閉鎖型で温度管理された施設整備など、ハード面の充実はもとより、取引業務や物流といった施設の運用面、ソフト面においても、効率化に向けた新たな仕組みを構築していくことが重要でございます。
 ご指摘のとおり、卸売市場における取引業務においては、現在も人手を介した紙伝票のやりとりが多く、事務作業の情報化がおくれているとともに、築地市場においては、荷の搬入から搬出までに複数の場内物流業者が関与しておりますので、場内での荷の移動に伴うコストの増大を招いています。
 情報化による取引業務の効率化については、水産物の卸売業界において、電子データによる伝票のやりとりを考慮に入れ、産地からの伝票様式を標準化する取り組みを始めております。
 都は、こうした状況を踏まえ、豊洲新市場において光ファイバーケーブルを用いた市場内LANを敷設するなど、情報通信インフラを整備することとしています。
 また、移転を契機に、業界団体が行う情報化の取り組みに対する支援について、今後検討してまいります。
 さらに、場内物流の効率化、コスト低減の仕組みの構築に向けて、荷役業務等の共同化やマニュアル化などに、関係業界と連携して積極的に取り組んでまいります。
 次に、東京の卸売市場が目指す将来像についてでございますが、東京の卸売市場は、世界を代表する都市東京の魅力ある食文化を支える市場として、将来にわたり、豊富で魅力ある生鮮食料品等の品ぞろえを維持するとともに、食の安全・安心を確保していくことが重要であると認識しております。
 都が開設する十一の卸売市場について見ると、豊富な品ぞろえにより都民の豊かな食生活を支えている一方、品質衛生管理の面では、閉鎖型で温度管理された海外の先進的な市場などと比べた場合、多くの課題が残されていることも事実でございます。
 こうした状況を踏まえ、都は、まず、豊洲新市場を今後の卸売市場に必要なHACCPの視点に立った高度な品質衛生管理施設を整備するなど、先進的な生鮮食料品流通を実現できる卸売市場としてまいります。
 豊洲新市場におけるこうした取り組みを初めとして、それぞれの市場が、特色、特性を生かしながら、品質衛生管理の高度化を着実に進め、世界に食の安全・安心を発信することができる魅力的な市場を目指してまいります。

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