平成二十四年東京都議会会議録第三号

   午後一時開議

〇議長(中村明彦君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(中村明彦君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(中村明彦君) 昨日に引き続き質問を行います。
 十二番くりした善行君。
   〔十二番くりした善行君登壇〕

〇十二番(くりした善行君) 私からは、まず、都内における公有土地水面の管理について質問いたします。
 東京は、戦後の高度経済成長期を経て、世界でも指折りの都市に成長いたしました。特に都心部においては、土地価格の上昇に伴い、わずかな面積の土地においても、その所有権については極めて厳密な扱いを受けてきました。しかし、そのまさに都心のど真ん中に、五十年の間、広大な敷地が正式な手続のもとに扱われてこなかったという特異な問題が存在をいたします。
 市ヶ谷や飯田橋に面している皇居外堀においては、釣り堀やレストランといった、水上に地面を設けて商業利用している事業者が数件存在をいたしますが、それらの事業者は、一九四六年のオリンピックを直前にして利用許可が出されなくなって以来、約五十年の間、事実上、水上を不法占拠している状態となってしまっております。
 外堀は国有地でありますが、国有財産法に基づいて、かつては千代田区が許可業務を行い、東京都がその使用料を得ておりました。しかし、一九六二年に許可が出されなくなって以来、一切の使用料を伴わずに無償で水面を商業利用し続けている状況であります。千代田区は、今でも、年一回程度、配達証明という形で警告を出しているそうでありますが、事業者に対して具体的な話し合いに臨むには至らず、解決の糸口はいまだ見えません。
 私も、実際にそこで商売を営む事業者の方とお話をしてきましたが、区や都からこれまで具体的に立ち退きや使用料の話をしてきたことはなく、かつての使用料の金額で法務局に供託を続けているとのお話でありました。当然、時代背景があるとはいえ、公有地を法から逸脱した形で放置をし続けることが、自治体としてふさわしくないことは明白であります。
 まず、外堀において事業者が事実上不法占拠状態にあるこの状態を、都はいつから把握をしていたのか、お伺いをいたします。
 また、外堀には、それらの事業者が利用を行うほかにも、東京電力やNTTの配管等が通っており、それらについては、水面の利用と同じスキームに従い、現在でも都が使用料を得ているそうでありますが、外堀における使用料の算定基準は、都のどの条例に示されているのか。また、今年度、都は外堀で使用許可を受けた者からどれだけの使用料を得ているのか、お伺いをいたします。
 事実上不法占拠状態となってしまっているこれらの施設は、ガイドブックに載るような人気スポットであり、もともとは、後に東京市長となった後藤新平の呼びかけで、都民の娯楽のためにボート場や釣り堀がつくられたという経緯もあります。
 不許可の原因となった東京オリンピックを目前にしたしゅんせつ事業が滞りなく終了したのであれば、方針を再度点検し、正常な許可のもと、営業を続けてきてもらうことが最も適切であったのではないかと思っております。
 外堀における許可業務は、不許可となる以前から、東京都が特別区に委任をしていた状態でありましたが、二〇〇〇年の地方分権一括法施行に伴い、地元区である千代田区と周辺の二区に対して譲与が行われ、使用料についても地元区が活用できるようになるはずでありました。
 しかし、現在においても譲与のめどは立っておらず、イレギュラーな状態での運用が続けられているとのことでありますが、千代田区外二区への外堀の譲与がなぜ進展をしないのか、お伺いをいたします。
 現在の法令のもとにおいては、東京都と特別区は対等な立場とされていますが、この不法占拠の問題が、区が都の内部団体であったころ、区長が公選で選ばれなかったころから始まっていることや、本来都民福祉のために活用され得た使用料を毀損し続けてきたことを考えれば、またそれが地方分権の障壁になっているのだとすれば、東京都も当然無視のできない問題であります。
 これまでも、不法占拠問題の解決に向けての協議は、東京都と関係する特別区との間で長期間にわたって続けられてきたとのことですが、残念ながら具体的な進捗は見られていない状態でありますので、地元である千代田区外二区と連携をして、この問題の解決に向けて、また最終的には外堀の譲与に向けて、今まで以上に努力すべきと考えますが、都の見解をお伺いし、次の質問に移ります。
 第二に、都有地を活用した土地信託事業について質問をいたします。
 都は、昭和の終わりから平成の初めにかけて、数々の土地信託事業をスタートさせてまいりました。時はまさにバブル時代の絶頂ともいえる時代であり、その配当予測は、いずれも地価が右肩上がりに上昇することを前提としてつくられたものでありました。
 しかし、バブル崩壊による地価下落も大きく影響し、結果として、これらの事業の配当は予想を大幅に下回ってしまっていることは、既に周知のとおりであります。
 とりわけ、ことしの七月に期間満了を迎える両国シティコアについては、期間中に返済できなかった借入金が約三十億円残ることとなってしまいました。この両国シティコアの今後については、住宅部分を十三億円余りで特別会計で買い取り、オフィス部分は土地信託契約を五年間継続し、賃料収入から残り十七億円を返済するというプランが既に示されております。
 バブル期に始まった公有土地信託事業全般が、各地の地方自治体でほとんどよい結果を出していないことを考慮すれば、この結果についても理解の余地はあると考えますが、残ってしまった負債については、確実に返済していかなくてはなりません。今後の五年間のプランについて確認をさせていただきたいと思います。
 まず、新たに結ぶ土地信託契約のキャッシュ・フローを試算する中で、どのような点について留意をされたのか、お伺いいたします。
 また、これまでの土地信託契約締結の際には、借入金債務等が残った場合においては、そのときに委託者と信託銀行との間で協議するとされており、委託者である東京都と信託銀行間の責任分担があいまいであるとの指摘がなされてきましたが、信託契約延長の末、再び負債が残ってしまった場合には、どのような処理をする取り決めがなされているのか、お伺いをいたします。
 両国シティコアは、都の行う五つの土地信託事業の中で、初めて債務を残す結果に終わったわけでありますが、今後次々と満了を迎える三つの土地信託事業を控えて、都として、土地信託事業のここまでの結果をどのように総括するのか、お伺いをいたします。
 各地の地方自治体の中で、土地信託事業が期間満了を迎え、負債の処理をめぐって裁判となるケースも出てきております。
 とりわけ兵庫県の青野運動公苑土地信託事業では、事業の中で生じた損失七十八億円の支払いは、委託者である兵庫県が負担をするべきという判断が最高裁で示され、遅延損害金を含めた百五億円の支払いを自治体側が行うこととなっております。
 この制度が全国の自治体で一斉に活用されることとなったバブル景気のころには、土地を運用して負債が生まれること自体想定外であり、それが落とし穴となってしまったわけでありますが、両国シティコアや各地の自治体の失敗例を生かして、今後、新規に土地信託契約を結ぶ場合には、その際、負債の処理方法についても取り決めを行い、リスクを低減することも検討すべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 先日、国においても法改正が行われ、土地信託制度活用の自由度が向上するということもありましたが、経済の先行きが不透明な近年において、公有土地信託制度の活用に際しては、極めてシビアな収支予測と信託銀行の事業経営に対して厳しいチェックを行うことも必要であると考えますが、都として、土地信託事業の活用に際しては、どのような課題があると考えているのか、お伺いをいたします。
 最後に、海洋資源開発に関連して質問をいたします。
 今月より、地球深部探査船「ちきゅう」が、愛知県渥美半島沖で、メタンハイドレートの世界初の海洋産出試験に向けて事前の掘削作業を開始し、多くの注目を集めております。平成三十年度の商業化に向けていまだ多くの課題が残されているものの、日本の消費量の約百年分ともいわれるこの膨大なエネルギーの活用が可能になれば、資源小国といわれてきた我が国の長年の悲願が達成されることとなります。
 また、レアメタルを含有する海底熱水鉱床やコバルトリッチクラスト開発のさらなる加速に向けて、新たな海洋資源調査船「白嶺」が今月に入り就航されるなど、日本における海洋資源開発は、まさに日進月歩の速さで実用化に向けて走り出そうとしております。
 我々も、昨年、野田総理大臣に対して、領土と主権の保全に関する申し入れをし、レアアースなど戦略物資についての確保などについて強く要望してまいりましたが、国もこれらの取り組みを重要視し、来年度予算に設ける七千億円の首相枠の中で海洋分野の優先事業を推進する方針を示す等、この分野に今まで以上に注力することを宣言してまいりました。
 昨年十月の一般質問でもございましたが、沖縄や南海トラフと並び、大きな期待を集めているのが東京の海であり、伊豆・小笠原諸島周辺では大規模な海底熱水鉱床の、沖ノ鳥島、南鳥島周辺ではコバルトリッチクラストの存在が報告をされております。
 先日、経済産業省に出向き、話を聞いてまいりましたが、これまで余りスポットライトの当たらなかった伊豆・小笠原諸島近海の調査についても、来年度は力を入れていくとのことであります。
 また、一昨日に開催された海洋技術フォーラムシンポジウムにおいて、レアアースの専門家である加藤東大准教授が、初めて南鳥島海域にこれまで報告されてこなかったレアアースが大量に賦存をしている可能性について言及されました。
 これらの海底に含まれる資源を活用できることになれば、これまで多くの部分を輸入に頼り、資源ナショナリズム外交に翻弄されてきた日本の脆弱性を改善する一助になることが期待をされます。
 しかし、隣の中国もこれらの海洋資源をねらい、周辺の海洋調査を進めるとともに、二〇二〇年にこの海域を含む軍事的防衛ラインである第二列島線を構築するという目標に向けて着々と準備を進めております。
 日本経済の自立性を確立するとともに、国防上重要な海域の主権を守っていくという二つの意味において、沖ノ鳥島や南鳥島を含む東京の海の開発を進めていくことは、極めて重要な意味を持っているといえます。
 国においては、ことし一月より、沖縄県、尖閣諸島周辺を含む無人島の名づけ作業を進めるなど、排他的経済水域の確保に向けて新たな一歩を踏み出しました。中国は、これを理由に外交会談をキャンセルするなど圧力を強めてきておりますが、これに屈することなく、次はこれらの島々における実効統治を強める策を推進していかなくてはなりません。
 これらは、第一には国の問題でありますが、かつて知事が小笠原諸島の漁業組合と協力し、島しょ振興と沖ノ鳥島周辺における主権強化を両立させたように、都として対応が必要な課題に取り組むと同時に、海洋資源獲得や国防に資する取り組みを行っていくことは検討の余地が残されていると考えます。
 かねてより海洋開発及び海底探査は、大型機器と莫大な資本を必要とする分野でありましたが、東京都のまち工場から生まれた技術が、まさにこの常識を今塗りかえようとしていることをご紹介いたします。
 葛飾区、大田区、墨田区の小さなまち工場がそれぞれの技術を持ち寄って開発を進めている海底探査機「江戸っ子一号」は、従来重厚なケーブルを伴っていた探査機を無線化することによって、数億円かかっていた探査機を約二千万円程度のコストで実現をしようとしております。
 私も、その発起人の一人であります杉野社長にお話を伺ってまいりましたが、従来、機器の数々をアメリカやノルウェーの独占企業で開発されたものを彼らのいい値で購入していたことに対して、これらの供給をストップされれば日本の海底探査を行うことができなくなってしまう、また、国内で低価格でつくれるようになれば、海洋開発の自立性確保とともに、日本の中小ものづくり企業に元気を与えることができるという思いでプロジェクトを立ち上げたとのことであります。
 まさに日本の海洋開発に対する思いと、そしてまち工場の持つ技術への誇りが彼らを動かしたのであります。
 当初は、関係者のだれもが不可能だと断言したそうでありますが、自分たちの身を削って開発費を捻出し、昼間の仕事が終わった後に夜を徹して開発を重ねた結果、ことしの夏に予定をされている水深八千メートルでの耐用試験を経て、「江戸っ子一号」の実用化はもはや目前に迫っております。
 この技術が完成をし、さらなる低コスト化が進めば、都の持つ船や大学、一般の漁船でも、海洋探査機を購入して調査を進めることも十分に可能となります。
 例えば、これらの開発された技術がより広く活用されるように、産学官の連携の仕組みをつくる等、間接的な補助を行えば、東京都発の将来大きな成長が見込まれる新たな産業を生み出すことになりますし、活発に海洋調査が行われれば、小笠原海域に投資を呼び、雇用を増進し、島しょ振興にも結びついていくこととなります。
 そこで、改めて知事にお伺いいたします。
 現在、都には海洋資源を所管する部署がありませんが、海洋資源の開発を前進させると同時に、東京都の活性化につながる取り組みの検討に向けて、積極的に情報収集と研究を始めるべきと思いますが、知事のご所見を伺います。
 知事は、さきの質問に対して、国が重い腰を上げるのであれば、都としてこれに協力をすることはやぶさかではないとおっしゃいました。私も国がやらなくてはいけないことはまだまだ残されていると思いますが、新たな海洋立国に向けて、何とかその一歩を踏み出そうとしております。また、私を含めた幾人もの都議が、引き続き国に対しても働きかけを行っていくつもりでおります。
 ぜひとも、この日本の未来をこの首都東京から切り開いていただけるようお願いを申し上げ、私からの質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) くりした善行議員の一般質問にお答えいたします。
 海底資源についてでありますけれども、まさに日本は資源小国であり、しかし同時に海洋大国でもあります。日本にとって海底資源は極めて重要なものでありまして、とりわけ我が国の排他的経済水域の四割を占める東京の海には、大きな可能性が眠っていると思います。
 昨年の第三回定例会ですか、民主党の伊藤議員からも、海底資源についての質問がありましたが、そのときに私は、みずからの領土を守る国の姿勢が最重要であって、ここでの質問だけではなくて、ぜひ民主党としても、日本の海洋資源を守るために国の政府を実際に動かしていただきたいと答えたと思います。
 要は、政府の姿勢でありますけれども、これは何も民主党の政府だけじゃなしに、歴代の自民党の政府もそうでありましたが、この問題を、間接か直接かわかりませんけれども、大事な部分を担当している外務省が、とにかく腰抜けでありまして、東京の領海のようなものでしたら彼らは異存ないと思いますが、東シナ海のような、際どい国境線というものを構えている地域での開発には、全く及び腰で、もう話にならない。
 現に、今も、シナが東シナ海でガス田を次々に勝手に開発していることに対して、抗議だけで済ませているわけでありまして、海底資源の収奪が現実になっているのに、指をくわえている間に事態がどんどん悪化しております。
 国民の生命、財産を体を張ってでも守るという、まず国の強い姿勢が必要でありまして、日本の領海をシナの潜水艦が無断で通過しても、抗議をするだけで、爆雷による威嚇などということは絶対にやらない。
 もし仮に日本の潜水艦が、シナなり、ロシアなり、北朝鮮の領海に侵入したら、これ即座に爆雷で攻撃されて沈められるでしょう。恐らく友国とされている韓国に日本の潜水艦が無断で潜水しても、これはやっぱり同じ報復を受けると思いますが、いずれにしろ、とにかく当たり前の防衛行為すらとらないようでは、いかに豊かな海でもその可能性が花開くはずもないと思います。
 東京のかけがえのない豊穣な海を守るために国が動くのであれば、可能な限りの協力はしますし、現に、多分、恐らくだれも議員が行ったことのない南鳥島をこの間、昨年時間をかけて行ってまいりましたが、ああいうふうにぽつっと離れて、しかもそれを中心に円を描く排他的水域というものも非常に重要な意味を持ちまして、また、ほかの新しい戦略兵器の時代にも、あれはとっても大事な意味を持つんですが、とにかく港湾も不整備でありますし、飛行場も短くてジェット機は飛べないというていたらくであります。
 とにかく何党の政権であろうと、この日本を代表する政権であるならば、やはり自分の手で自分の国を守るという、そういう姿勢というものを、現民主党政権もしっかりと持って機動してもらいたい。それを、同党の議員からの質問でありますから、改めて民主党にも期待するわけであります。
 他の質問については、東京都技監及び財務局長から答弁します。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 四点のご質問にお答えします。
 初めに、外堀についてでございますが、公有土地水面である外堀は、国有財産であり、都は、法定受託事務として土地境界確認など財産管理の一部を行っております。
 公有土地水面における使用許可など日常的な維持管理は、都区制度開始から平成十二年に地方分権一括法が施行されるまでの間は東京都区長委任条項、それ以降は特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例に基づき、特別区が行うこととなっております。
 外堀は千代田区、港区、新宿区の三区にわたって位置するため、三区の協議により、千代田区が一括して使用許可などの事務を行っております。
 当該占拠者に対しては、昭和三十七年三月末まで千代田区が許可をしておりましたが、その後更新していないと区から聞いております。
 次に、外堀の使用料についてでございますが、使用料は、東京都公有土地水面使用料等徴収条例により規定されております。また、使用料の徴収事務は、特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例により特別区が行うこととなっております。
 公共目的で許可を受けて設置されている地下鉄や通信管などの平成二十三年度使用料は、総額約二億円となりますが、都は、区に対して外堀の日常的な維持管理に必要な経費を特別区事務処理特例交付金として負担しております。
 なお、外堀が国から関係三区へ譲与された場合には、使用料はすべて各区に帰属することとなります。
 次に、国有財産である外堀の譲与についてでございますが、外堀などの法定外公共物は、地方分権一括法に基づき区市町村が申請することにより、国から譲与を受けることになっております。
 外堀の譲与申請につきましては、千代田区、港区、新宿区の三区の区域にまたがるため、三区が一括して行うこととなりますが、区が行うべき不法占拠の解決に対して、各区の間で意見が統一されていないなどの課題があり、三区は譲与の手続を行っておりません。
 最後に、譲与に向けた取り組みについてでございますが、譲与の課題となっている不法占拠への対応は区の権限でありますが、都は関係三区と調整の場を設けて、国に対する区の譲与申請を促してまいりました。
 引き続き、不法占拠への是正指導などを行う千代田区を初め、申請主体である関係三区に対し、国有財産である外堀について区が譲与申請を行うよう働きかけてまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 土地信託に関する五点についてお答え申し上げます。
 まず、両国シティコアの土地信託契約延長後の収支についてでありますが、両国エリアにおけるオフィスの賃貸事例や競争環境など不動産市況を踏まえ、現在のテナントの入居状況、賃料水準をベースといたしまして賃料収入を見積もるとともに、想定されます修繕工事の精査、管理費のさらなる縮減を図るなど、今後の収支を確実に見積もったところでございます。
 次に、再び借入金が残った場合の処理でございますが、オフィスにつきましては、今後も安定した賃料収入の確保が可能なことから、今回の対応により借入金の返済は確実に行っていけるものと考えております。
 なお、現在の信託契約の条項では、借入金債務等が残存する場合は、受託銀行と協議の上処理することとしておりまして、契約延長後も同様の取り扱いとなります。
 次に、土地信託事業のここまでの成果についてでありますが、バブル経済の崩壊など社会的経済状況の変動によりまして、マイナスの面も出ていることは承知をしております。
 一方、都が実施をいたします五つの土地信託事業について総体として見るならば、民間の知識、経験を利用した土地活用という視点に立ちまして、地価高騰の要因とならない都有地の有効活用を進めるとともに、継続的に安定した収入を確保し、これまで合計で約五百六十九億円の配当を受けることができております。したがいまして、所期の目的は達成してきているものと考えております。
 次に、信託契約を結ぶ際の負債の処理方法でありますが、土地信託制度が導入されました当時は、バブル経済の中で地価の急激な下落をなかなか想定し得ない状況でありましたことから、各地の地方自治体で負債が残ってしまうケースがあることは確かでございます。
 今後、新たに土地信託契約を結ぶ検討をする場合は、さまざまなリスクを想定いたしまして総合的に勘案していくものと考えてございます。
 最後に、土地信託事業の活用における課題についてでございますが、都有財産は都民の負託を受けた貴重な財産でございまして、財産価値を最大限に発揮させる必要があります。
 土地信託の活用に当たりましては、信託のメリットを踏まえるとともに、社会経済状況の見通しや費用対効果の検証、そして事業用定期借地、これは両国の土地活用を検討している当時はなかった制度でございますけれども、この方式など他の土地活用の手法とも比較するなど、さまざまな観点から課題を検討し、その上で、都にとって最も有利な利活用方策を選択することになるというふうに思っております。

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