平成二十四年東京都議会会議録第二号

〇副議長(ともとし春久君) 八十二番吉田信夫君。
   〔八十二番吉田信夫君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇八十二番(吉田信夫君) 日本共産党都議団を代表して、今日の石原都政が抱える重大問題をただし、今後の都政が進むべき方向を明らかにする立場で質問します。
 周知のように、東京都は一つの国家並みの大きな財政力を持つ自治体です。しかし、その力が都民の暮らしを守るために生かされない、ここに今日の都政の大問題があります。しかも今、地震に強い東京をどうつくるかが差し迫った課題になっているにもかかわらず、防災の名のもとに、これまで以上に大型開発につぎ込もうとしているのです。
 石原都知事が昨年末発表した長期計画「二〇二〇年の東京」は、東京をアジアの司令塔にするという方針のもとに、二〇二〇年オリンピック招致をてこに、外環道をこの十年で完成させる、過大な港湾整備を進めるなど、大型開発をさらに加速させようとしています。
 三カ年計画では、こうした事業に実に三四%もの事業費を充てています。その一方、超高齢社会の到来を強調しながら、高齢者対策はわずかに四・二%、少子化対策はさらに少なく三・一%、障害者施策に至っては〇・九%です。
 知事、このような計画で都民の福祉、暮らしが守れるのですか。今求められていることは、東京都が自治体本来の役割に立ち返り、切迫した防災、放射能対策とともに、暮らしと福祉を守る手だてを尽くし、経済の主役である中小企業への支援を強化することです。
 初めに、防災対策です。
 東日本大震災から一年がたちますが、東大地震研究所の研究チームがマグニチュード七クラスの首都直下型地震の確率が四年で五〇%以内と発表し、文科省調査で東京湾北部地震の震度が都心部で七とされるなど、従来の想定を超える危険性が次々と指摘されています。それだけに都民の不安が広がっています。しかし、都の防災対策は他県と比べても大きく立ちおくれています。
 まず、津波対策です。
 既に多くの県が、新たな津波予測図の作成、湾岸施設の強化対策、避難施設の確保と耐震化を進めています。神奈川県と千葉県では、それぞれ東京湾の奥に位置する横浜市、千葉市で最大五メートルの津波を想定し、ハード、ソフト両面の対策の検討をしています。
 神奈川県では昨年五月に立ち上げた津波浸水想定検討委員会が、今月初めに新たな予測図の案を発表しています。その作成に携わった学者は、東京湾は津波が湾内を反射して長時間とどまり、地盤が低いところから浸水が広がっていくと分析し、東京のゼロメートル地帯などでも大規模な浸水が起こり得ることを指摘しているのです。
 ところが、東京都は、昨年九月にようやく学者の専門委員から成る地震部会をスタートさせ、津波の想定見直しはまだ論議が始まった段階にすぎません。対策を検討する別の委員会もいまだに具体策を示していないのです。この立ちおくれた現状を放置していいのですか。知事は震源地によって東京を津波が直撃し、甚大な被害になるおそれがあるといったではありませんか。東京の津波対策のおくれをどう認識し、対応するのですか。
 都として津波対策の位置づけを高め、早急に新たな津波予測図の作成と区市町村への情報提供、地震と津波の両面からの護岸施設などの緊急強化対策、さらに避難施設の確保と整備への支援を進めるべきです。
 また、都の現行の被害想定は震度六強が最大です。河川堤防などの都市施設は、中規模程度の地震を想定したレベル一対応にすぎず、阪神・淡路大震災など、巨大地震に対応した強度にする計画すらつくられていないのです。そればかりかレベル一の耐震化さえ実施されていない河川堤防は、東部地域だけでも六十八キロ残され、来年度は四・五キロの耐震化を進めるにすぎません。このペースでは完了まで十五年もかかります。
 知事、このような状況で高度な防災都市の実現などといえるのですか。都が直接責任を持つべき都市施設の耐震化が立ちおくれている事態をどう認識しているのですか。緊急計画をつくって、震度七クラスにも耐え得るレベル二対応の強化策に踏み出すべきです。
 木造住宅の耐震化が立ちおくれていることも重大です。
 最大の原因は、都が自己責任第一の立場をとり、ごく限られた地域を除けば木造住宅への助成を行っていないことです。
 知事は昨年十一月の記者会見で、自分の生命、自分の財産を守るというのは自分の責任じゃないですか、行政はそんなもの負うんじゃない、とてもじゃないけど、そんな財政力ありませんとまでいい放ったのです。知事の発言は、住民の生命、財産を守ることを地方自治体の根幹的な責務として位置づけた地方自治法や災害対策基本法にも、もとるものです。知事、そう思いませんか。
 木造住宅は、高齢世帯、低所得世帯が多いだけに、自己責任だけでは耐震化は進みません。我が党が実施した防災対策に関する調査に対し、二十三区の七割が耐震改修助成対象地域の拡大を要望しています。また、助成額の拡充、さらに簡易な耐震改修も助成の対象とするよう求めています。こうした要望をどう受けとめますか。改善を図るべきではありませんか。
 とりわけ、都内で一万六千ヘクタールに及ぶ木造住宅密集地域の安全対策は、最重要課題の一つです。現在の都の想定でも、地震火災による死者は全体の五割を超える三千五百人と推計されていますが、巨大地震による被害はさらに増加する可能性が高いのです。
 ところが、都の不燃化十年プロジェクトの目玉は、整備地域内で未整備の幹線道路を十年間ですべて整備するというものです。また、大幅な支援を行うという不燃化特区も〇・五ヘクタール以上の法的拘束力を持つ再開発事業などを必須要件としています。
 これでは、幹線道路建設や再開発の推進で、住民追い出しにつながりかねないではありませんか。地元との信頼関係を全く考慮せず、強制事業を要件とすることには、事業者である区として違和感を持たざるを得ないなど、多くの区から批判の声が寄せられています。都は、この声をどう受けとめますか。
 木造住宅密集地域の耐震改修助成は、対象を整備地域で、かつ六メートル以下の道路に面しているという極めて狭い要件がネックになっており、大幅な見直しと拡充が必要です。
 墨田区では、高齢化が進み、耐火建築への建てかえが困難な中で、高齢者、低所得世帯でも改修に取り組める壁面や窓、軒裏など、部分的耐火改修に一律百万円を来年度から助成します。区市町村のこうした取り組みこそ支援し、普及を図るべきではありませんか。
 前面道路幅員が狭隘なために建てかえができない問題の改善も急務です。専門家から、これらの規制が逆に建物の新陳代謝を困難にして、防災に逆行する結果を招いていると指摘されています。
 既に京都市や神戸市では規制緩和の検討が始まっています。特区というなら、こういう地域こそ指定して、一定の条件を設けた上で規制を緩和して、幅員の狭い地域でも建てかえができるよう緊急に検討すべきです。見解を伺います。
 住宅数の四割を占める二百三十五万戸のマンションの耐震化の支援も極めて不十分です。我が党の調査に対して、区市は、賃貸マンションも助成対象として補助額を拡充するよう求めています。また、簡易な耐震改修や部分的改修も助成対象とするよう要望しています。いかがですか。
 ピロティーなど、共用部分については公共的施設と位置づけ、居住者負担なしに耐震化できるよう検討することが重要です。また、阪神・淡路大震災で大問題となったスプリンクラーなどの破損を防ぐための耐震化が図られるよう対策をとるべきではありませんか。
 長周期地震動対策の強化も重要です。都内には六十メートルを超える超高層マンションは三百五十棟ありますが、診断と対策を実施するための合意や費用負担など困難を抱え、対策が進んでいません。長周期地震動に対応した建物の診断や補強への支援が必要ですが、いかがですか。また、家具の固定化など、室内の安全対策の普及促進を図ることを求めます。
 東京都の放射能対策が他の自治体と比べて大きく立ちおくれていることも重大です。その大もとにあるのは、知事の放射能問題についての間違った認識です。知事は最近も新聞紙上で、福島原発事故以来、原発廃止論の論拠なるものの多くが、放射能への恐怖というセンチメントに発していることの危うさだといい、一度の事故で否定するのは無知に近い野蛮なものでしかあり得ないなどと発言しているのです。
 原発事故は一度どころか、ここ三十年ほどの間にスリーマイル、チェルノブイリ、そして福島と三度にわたり重大事故が起きているのです。チェルノブイリではレベル七、被災者は隣接三カ国で九百万人。放出された放射能が世界じゅうに影響を及ぼしました。今回の福島原発事故は、一年近くたってもなお収束のめどが立たず、歴史的にも最悪な事態を招いているといわれています。
 これらの事実は、原子炉の事故リスクが極めて高いこと、放射線の封じ込めという最も重要な課題を現代の技術は達成していないことを示しているのです。知事は、これまでの原発事故の実態をどう認識しているのですか。あなたの発言は間違っていたと認めるべきです。どうですか。
 知事、今問題なのは、低線量の内部被曝が、五年、十年後にがんを初めとしたあらゆる健康障害をもたらす危険、それも子どもたちにより影響が大きいという問題です。多くの専門家が疫学的な調査などによって、そのことを指摘、警告しているのです。
 低線量被曝の影響について、未知の部分があることも確かです。しかし、何よりも重要なことは、これ以下なら安全ということが医学的に明らかになっていないという事実です。内部被曝を無視してきたICRPでさえ、閾値はない、少なければ少ないほどよいという見解です。こうした中で、住民の安全に責任を持つべき行政としては、被曝を最小限に抑えるという立場にしっかりと立つことこそが求められていますが、どうですか。
 我が党が二月十五日に都立水元公園の落ち葉、土壌等を採取し、放射線量を測定しました。その結果、地上一メートルで〇・二四マイクロシーベルトから〇・七四マイクロシーベルトの地点で、セシウム濃度は落ち葉で一キログラム当たり最高八千二百九十ベクレル、土壌では二万ベクレル以上でした。これは、下水道汚泥など、飛散を防止する処理を行う基準とされる八千ベクレルを超える値です。
 今、放射性物質が雨などによってたまりやすいポイントに集まっており、各地にこうしたミニスポットがある可能性が強いのです。都は危機意識を持って調査し、除染すべきです。それとも、子どもたちが、このような放射性レベルの土の上で転げ回って遊んでも問題ないというのですか。都が測定も除染も行わない根拠としているのは、文科省の放射線測定ガイドラインです。しかし、このガイドラインは、人間への影響を防ぐための科学的根拠に基づくものなのですか。
 日本共産党都議団は、東京に隣接する六県五政令市のアンケート調査を行いました。どこも県立高校や公園など、県及び市有施設での空間線量の測定を行っています。除染基準も、川崎市では地上五センチメートルで〇・一九マイクロシーベルト以上としているのです。
 また、我が党の調査では、都内の区市町村も八割が除染の独自基準を定めています。どの自治体も住民の不安にこたえ、面的な汚染だけでなくても除染に努めているのです。もちろん我が党は、隣接県市や都内区市町村の対応が十分だと思っているわけではありません。しかし、それと比べても東京都の放射能対策は大きく立ちおくれています。そう思いませんか。
 都が除染基準を地上一メートルで毎時一マイクロシーベルト以上としていることに対し、都内の区市町村から安全といえる根拠を示してほしい、市民、区民の理解を得られにくいなどの意見が寄せられています。
 都有施設における測定や除染を行わないことに対しても、住民に説明できないなどの厳しい意見を上げ、対策を求めています。都は、こうした都内区市町村の声に背を向けるのですか。お答えください。
 次に、福祉都市東京を目指す課題について提案します。
 緊急課題の一つは、来年度に介護保険料、後期高齢者医療保険料、国保料の値上げがそろって予定されていることです。都内の多くの自治体の基準介護保険料が二〇%以上上がり、月額五千円台に突入します。廃止のはずだった後期高齢者医療の保険料も二年ごとに上がり続けています。国保料も相次ぐ値上げで、払いたくても払えない状況が広がっています。
 私は、母子家庭のお母さんから、パートで必死に働いても年収が二百万しかないのに、国保料は毎月二万円近く、年収の一割が国保料でなくなってしまうと訴えられました。我が党の調査では、区市町村からも、介護保険料や後期高齢者医療保険料について大幅な負担増になっている、収入増の見込みが少ない高齢者にとって、保険料の増加は死活問題などの声が寄せられているんです。
 国民健康保険では、医療機関の窓口で全額負担となる資格証明書になっている世帯は都内で二万世帯を超えています。資格証や短期証、無保険者、さらに保険料は何とか払っても窓口負担が払えないなど、経済的理由で受診がおくれ、死に至ったと考えられる事例も後を絶ちません。
 知事は都民のこうした実態、暮らしの深刻な困難をどう認識しているのですか。社会保障が充実したといって福祉切り捨てを行いましたが、今の社会保障についてどう認識していますか。これで高福祉低負担などというのですか。
 都は、介護保険と後期高齢者医療保険料について、若干の値上げ抑制策を講じましたが、多くの区市町村が、都の制度として軽減措置を実施してもらいたいなど、さらなる対策を求めています。
 国保についても、医療費の増加、低所得者が多く負担能力が低いという構造的課題を抱えている中、保険者の一般会計からの繰り入れは限界、国や都による保険料負担軽減を図られたいなど、支援の拡充を求めています。
 都は、現場から上がっているこうした声をどう受けとめているのですか。介護保険料、後期高齢者医療保険料、国保料を一人五千円ずつ値下げする保険料負担軽減三点セットは、都が三百十億円の予算を振り向ければ実施できます。決断すべきときです。いかがですか。
 国保料の滞納による差し押さえも深刻です。私たちの調査では、都内で六千人を超えています。理不尽ともいえる事例も明らかになっています。
 例えば、三年前に勤め先が突然倒産して以来、アルバイトで何とか生活している四十代の男性は、朝食は抜き、昼食も百円のカップめんや菓子パンなどで過ごしてきたといいます。差し押さえられた口座にある現金はアルバイトの給与全額で、家賃、光熱費、交通費、食費など生活に必要なお金であり、全財産なのです。そのような窮状を訴えても、取りつく島もなかったといいます。
 その背景に、東京都が国民健康保険財政安定化方針で、差し押さえを進めるため、保険者を指導、支援するとしている問題があります。悪質なケースへの厳正な対応は当然ですが、滞納している人の多くは、払いたくても払えない実態にあるのです。生活を維持することさえ困難にするようなやり方は許されないと思いますが、どうですか。都として差し押さえ事例の調査を行い、是正を図るよう求めるものです。お答えください。
 知事は施政方針で、認知症高齢者グループホームを一万人分にふやすといいましたが、この目標は区市町村の計画を合計したものにすぎません。大体、都のグループホーム整備率は、要介護認定者に対してわずか一%程度で全国最低水準ですから、一万人分ふやしてもまだ圧倒的に足りません。小規模多機能施設の整備率も全国最低です。認知症高齢者グループホームや小規模多機能施設への支援を抜本的に強化し、大幅増設と利用者の負担軽減ができるようにすることを求めるものです。
 特別養護老人ホームの待機者は、都内で四万三千人を超えており、九十歳の夫を八十代の妻が介護するといった超老老介護が広がっています。施設整備は急務です。我が党が実施した区市町村アンケートでも、特別養護老人ホーム整備促進に向け、用地確保への支援を求める要望が多く寄せられました。現場の要望にこたえ、用地費助成の復活、都有地活用や定期借地権利用に対する支援の拡充などに取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 「二〇二〇年の東京」の待機児解消策は、駅ビルなどの駅ナカ保育などを中心に進めるというもので、保育の質の後退を招く危険があります。また、今定例会に提案された認可保育所の面積基準緩和も、子どもが育つ環境を後退させるものであり、反対を表明するものです。
 兵庫県では、政令市、中核市も合わせて待機児童が千人ですが、来年度は二千人分の認可保育所を整備する予算を組んでいるのです。施設的にも職員配置も充実した認可保育所の大幅増設で、子どもたちの豊かな育ちを保証することを基本に、待機児を解消することこそ必要です。答弁を求めます。
 知事、都民の暮らしや福祉を守る財源はあるではありませんか。豪華海外出張や過大な都市施設整備など、むだ遣いをやめればいいのです。
 今、最大のむだ遣いといえるのは外環道路です。本体部分である地下高速道路の事業費は一兆二千八百億円という巨額なものです。しかも、事業費の七割から九割を国の事業としてやろうというのです。外環道は有料の高速自動車道事業なのに、なぜ国や都が肩がわりをするのですか。もともと有料道路事業として成り立たないからではありませんか。そのような高速道路をつくる必要はありません。お答えください。
 仮に九割を国直轄事業とすると、八千六百四十億円が国、三千二百億円が都の負担になります。同じように地下道路を主体とした中央環状新宿線は、当初五千億円といわれた事業費が二倍に膨れ上がりました。外環道も恐らくさらなる巨額の事業費に膨れ上がるでしょう。その上、知事も知らなかったようですが、外環ノ2という地上部道路まで都がつくろうというのです。合わせて二兆円を大きく上回るでしょう。
 国や都は、外環道で都心の渋滞緩和や環境を改善するといいますが、既に中央環状線や圏央道の建設を進めています。このこと自身、都民の厳しい批判を受けています。その上、外環道です。東京地裁も判決で、三本もつくる必要はないとする趣旨を述べているのです。三本でも、少なくとも四兆二千億円もかけようというのです。それでも大した事業費ではないというのですか。こんなお金があるなら、それこそ防災や福祉に回すべきではありませんか。
 大体、渋滞緩和という高速道路建設の大義名分は、少なくとも大都市では成り立たないというのが国際的な常識です。
 イギリスでは、かつて環状道路建設に取り組みましたが、結局、高速道路をつくれば新たな交通を誘発し渋滞は緩和しない、際限のない道路建設になることから、道路容量に見合う自動車交通量を抑制するという方向に切りかえたのです。
 ロンドンでは、三本の環状高速道路計画のうち、つくったのは一本だけで、交通量を抑制し、公共交通の利用者をふやすという方向に切りかえました。バーミンガムやオックスフォードも同様です。ひたすら道路をつくることから、ロードプライシングなど自動車交通を抑制する政策に転換したイギリスなどの教訓をどうとらえているのですか。
 さらに、知事は、日本の再生を牽引するためと称して、法人事業税の免除など、大幅な減免を行うなどによって、外国企業を五百社以上呼び込もうというアジアヘッドクオーター構想を進めようとしています。
 しかし、こうした発想自体、間違った経済対策だといわなければなりません。外国企業への大幅減税という手段についてですが、かつてOECDは、税の低減競争の有害性を指摘しました。各国の競争がその国や都市の財政を破綻に導くことになるからにほかなりません。こうした問題をどう考えるのですか。
 また、神奈川県の外国企業誘致について出された報告書では、外資系企業の立地は短期間に競合する既存企業との間で激しい競争が起こり、場合によっては競争劣位の企業が淘汰されるおそれがあると中小企業への影響を危惧しています。外国企業の進出には見過ごすことのできない大問題があるのです。
 さらに、全国各地で、減税して企業を誘致したものの失敗した経験が少なくありません。こうした大問題について、どう認識し検討したのですか。
 また、この間、東京に大企業と人、物、金を呼び寄せるという知事が進めた東京一極集中政策によって、地方は一体どうなっているのか考えたことがありますか。ほとんどの地方は疲弊してしまったではありませんか。東京に外国企業を集めればうまくいくというのは、幻想にすぎません。ましてや、東京をアジアの司令塔とするなどという経済覇権主義ともいえる方針がアジア諸国からどう受けとめられるか、知事は考えたことがありますか。
 今、東京が目指すべきことは、アジア諸国や国内地方都市との共存共栄、そして対等平等の関係を築き、お互いに発展し合うことではありませんか。知事、お答えください。
 現在、東京の経済が停滞している最大の理由は、社会保障の切り捨て、雇用破壊で都民の購買力が落ち込んでいることです。
 東京では、この十年間に正規労働者が五万三千人減る一方、非正規労働者は五十八万二千人も激増しており、年収二百万以下の低賃金で生活も成り立たなくなっているのが現状ではないですか。これでは内需が冷え込み、景気が回復するわけがありません。この現実をどう認識しているのですか。これを是正する必要があると思いますが、どうですか。
 都としても労働、雇用対策の拡充が求められているとき、来年度予算では雇用対策予算を四割も減らしています。また、東京全体での雇用確保の目標が掲げられていません。静岡県では三万人の新たな雇用の創造、京都府では一万人の雇用創出事業など、明確な目標を掲げているのです。都としても目標と具体策を明確にし、予算を大幅にふやして取り組むことを求めるものです。
 知事は施政方針で、若者の就職難に対し、正規雇用をふやし成長が見込まれる産業分野における中小企業の人材確保を支援すると述べました。しかし、その規模は、今年度八百人程度、来年度千四百人程度です。これでは、今日の失業率から見ても、内定率の低さから見ても不十分です。正規雇用拡大の取り組みを抜本的に強めるべきではありませんか。
 東京の製造業は、約二十年間で事業所数も従業員数も半数以下になり、製造品出荷高は十三年間で二十兆円から十兆円へと半減しました。小規模小売業も約十年間で十二万店が十万店に減少しています。
 東京の再生というなら、外国企業の呼び込みをいう前に、まず事業所の九割を占める中小企業の活力を活性させることにこそ力を注ぐべきです。商工費の割合を全国平均にまで伸ばせば二千億円もふえるのです。そして、これまで我が党が再三提案してきた再生可能エネルギーや医工連携による新産業の育成を抜本的に強める必要があります。
 広島では、医工連携推進事業を既に実施していますが、今年度末から医療関連産業クラスター形成事業を本格実施し、医療とものづくりの関連の企画立案、医療産業集積の開発を必要な人員も配置して進めています。
 都としても、持てる力を尽くし、ものづくり活性化のため、集中的投資を進めることこそ必要ではありませんか。
 再生可能エネルギーや医工連携で新産業の成長を促進し、新たな仕事と雇用を生み出すための仕組みを創設するとともに、専門家の育成や委託研究開発事業の立ち上げや、仕事起こしへの支援を抜本的に拡充するよう求めるものです。
 我が党は、都内商店街のアンケート調査を実施しましたが、商店街の現場を調査して、実情に合った指導が欲しい、街路灯などのメンテナンスコストを考慮してほしいなどの要望が出されています。
 区市町村に対するアンケートでも、新・元気を出せ商店街事業の年度途中の申請受け付けを含む抜本拡充、補助要件の緩和、補助率の拡充、幅広い事業に利用できる補助事業の創設、買い物弱者支援事業の本格実施などの要望が寄せられました。
 都は、こうした要望をどう受けとめますか。商店街支援予算を抜本的にふやし、直ちに商店街や区市町村の要望を踏まえた対策に踏み出すことを求めますが、いかがですか。
 最後に、知事は最近、日本が核兵器を保有するか、少なくとも核兵器を持つシミュレーションを行うことで日本の発言力を強めよという主張を繰り返しています。
 そもそも核兵器を持つことで発言力を強めようとすれば、それを危機と感ずる国は、さらに大きな核兵器を持とうとし、核兵器をめぐる歯どめない核軍拡競争を招きます。
 核兵器のない世界をつくることが国際的な合意になりつつある今、そのときに知事の主張は、それに逆行するものであり、断じて許されません。
 憲法を破棄せよとの暴言とあわせ、被爆国の首都の知事としての資格が根本から問われることを厳しく指摘をし、再質問を留保し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 吉田信夫議員の代表質問にお答えいたします。
 いささか順不同になりますけども、基本的な問題でありますので、まず、「二〇二〇年の東京」計画についてでありますが、相変わらず共産党は都市インフラの整備にやみくもに反対のようですけども、いつも申し上げているように、三環状道路にしても、港湾の整備にしても、基幹的な都市インフラの重点的な投資は、都市の効率性の向上に加えて、国の経済も活性させる、そして国際競争力の強化につながることにどうか気づいていただきたいと思います。
 都はこれまでも「十年後の東京」計画を構えて、東京の進化を加速させてきましたが、大震災がもたらした危機を乗り越えて、日本の再生を確かなものとするために、この計画を充実強化した新たな都市戦略であります「二〇二〇年の東京」計画を策定したわけであります。
 この計画を羅針盤にして、防災力の向上やエネルギーの安定供給体制の構築だけではなくて、福祉、環境、教育などあらゆる分野において先進的な取り組みを戦略的に展開し、都民、国民の安全・安心を確保していくつもりであります。
 東京が都市のあるべき姿を世界に発信し、先陣を切って行動を起こすことで大震災を乗り越え、日本の再浮上を牽引していくことができると思います。
 なお、事業費の多寡をもって施策の軽重を機械的に比較するような指摘がありましたが、そもそもハード整備を中心とする事業と仕組みづくりや区市町村の取り組みの支援などを中心とするソフト事業を同じ土俵の上で比較すること自体が何ら意味を持たないと私は思います。
 いつも、何か声はいかにも物悲しげで猫なで声みたいな声で同じことをいわれますけど、もうそれはいいかげんにやめたらいいんじゃないですか。
 新入社員がなかなかいないようで、だんだん、要するに新しい発想がなくなって、まことに時代おくれな話でありますけれども、私も長いこと国会におりましたが、国会の共産党の方がまだましですな。せめてテレビ討論に出て恥をかいたり、ばかにされないぐらいの見識を持ったらどうでしょうかね。
 次いで、津波対策についてでありますが、いうまでもなく東京はこれまでも津波や高潮などの発生に備えて、これは隣県に比べてもはるかに進んだインフラを整備してきていまして、水門とか防潮堤の整備などの対策を着実に推進してきました。
 ご指摘のように、東京の多くの部分は海抜ゼロメートルになっておりますけど、これを守るために長期の計画でスーパー堤防を計画してきましたが、現政府の何かわけのわからぬ閣僚が、スーパー堤防はスーパーむだだといって予算を削りましたけど、この責任は一体だれがいつとるんでしょうかな。
 来年度の予算においても、これらの対策に加えて、高潮対策センターの二拠点化など、新たな対策を盛り込んでおりまして、津波対策がおくれているとのご指摘は当たらないと思います。
 今必要なのは、単に被害想定の見直し時期の早さを競ったり、いたずらな不安をあおることでなくて、最新の科学的知見を踏まえて具体的な手だてを講じることであります。
 このために、都は現在、地震、津波の第一人者たちによって、新たな被害想定の見直しを進めております。
 この結果を踏まえて、自助、共助、公助すべての総力を結集して津波対策に万全を期してまいります。
 次いで、防災対策全体についてでありますけれども、都は、これまでも日本のダイナモであります、この首都東京の防災力を強化するために実効性のある取り組みを積み重ねてきました。
 日本の東西をつなぐ三環状道路を初めとした道路ネットワークの構築や、国に先駆けて制定した条例によって、緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化も強力に推進しております。
 最大の弱点である木造住宅密集地域の改善を一段と加速させるために、木密地域不燃化十年プロジェクトを立ち上げました。
 専門家を派遣して、必ず来るであろう地震の怖さを伝えて、住民の意識を変えていく取り組みも既に着々と実施しております。
 私の言葉じりをとらえて、まるで私が自治体の長としての責任を放棄しているかの非難は、これは全く当たらないと私は確信しております。
 そもそも、自分の住んでいる家の耐震性の問題は自分の命の問題でありますから、いざというときに大事なのは、まず自助、そして身近な隣近所で助け合う近助、共助でありまして、今後も自助、共助、公助の原則のもとにさまざまな施策を複合的、重層的に講じて、世界に誇れる安全な都市東京につくりかえていきたいと思っております。
 次いで、原発の問題でありますけれども、質問を聞いておりますと、共産党の皆さんも私のコラムを読んでいただいたようでありますが、それでどうしてこういう質問が出てくるのか逆に聞きたいね。
 日本人が世界唯一の被爆国としての放射能に対して持つ強いセンチメント、トラウマは私もよく理解しておりますが、こうしたときにこそ人間として備えた理性で物事を判断する必要があります。
 この間も意外な発言を、私はある週刊誌で読みました。どちらかというと非常に反体制的な、左翼じゃありませんけれども、そういう人たちの強いリーダーである吉本隆明君が、要するにこの原発の問題について、技術というものは日々人間が手がけて進化させてきた。当然誤りもあった、間違いもあった、事故もあった。しかし、それを超克することで技術は洗練され、さらに本当の技術になっていった。それが近代というものをつくってきたというその近代精神を、この一事をもって原発をすべて否定するのは、これは人間の進歩を否定する、人間が猿に戻るみたいな話だということをいみじくもいっておりましたが、私も極めて同感いたしました。
 やはり人間でありますから、人間として備えた理性で物事を複合的に、重層的に分析して判断する必要があると思います。この理性的な判断というのは、決して無責任に不安だけをまき散らして大変だ、大変だ、だからだめだという、そういう短絡的な判断とは全然違うと思いますな。
 これは共産党の諸君は最も不得手なことかもしれませんが、もう少し物事を複合的にとらえて、せめて国会の共産党並みに冷静に物を判断することが必要なんじゃないでしょうか。
 人間の進歩は、繰り返して申しますけれども、技術の改良、開発によってもたらされてきました。原子力の利用に関する技術もしかりでありまして、今回の事故は危険な日本の国土の地勢学的な条件を考えずに事を進めてきた。
 現に、すぐれた学者は、貞観年間、はるかはるか昔に清少納言のお父さんがつくった和歌をもとにして、これが信憑性があるかどうかということで仙台まで赴いて、要するに今回の被害以上に遠くまで津波が押し寄せてきたことを地質学から検証している。これを政府に建言したのに、結局、これは当時の政府は自民党ですよ。それが通産省も一緒になって隠ぺいして対処してこなかったからこういうことになった。
 地勢学的にも条件は違いますけれども、これがもし山の上にあったらあんな被害は起こらずに済んだ。そういうことも、私たちは、やっぱり短絡的に海水がとりやすいからとか、いろんなことで、ああいう海浜を立地として構えるということそのものが私は間違っていたと思います。それが証明されたわけで、原子力そのものが否定されたわけじゃ私はないと思いますね。
 大体、共産党の諸君は一体いかなる社会、いかなる生活を望むのか。経済が生み出す富は、福祉、医療、防災、治安、教育などにも回って、高度に発達した社会の生活を支えているわけでありまして、それを保障するエネルギーをいかに確保するのか。そうしたことをしんしゃくせずに、現実を見ないままセンチメントだけで判断すれば、結局はみずからの首を絞めることになるんですよ。
 化石燃料がもたらす地球温暖化の問題や、資源を海外に依存せざるを得ない我が国の実情というものを決して忘れてはならないと思います。エネルギーの議論をいたずらにもてあそぶと、結局国が滅びることになりますよ。皆さんも曲がりなりに日本人であるならば、そのことを考えて物を申していただきたい。
 次いで、現在の社会保障に関する認識についてでありますが、我が国は世界一の長寿国として、世界にもまれな豊かな、平等な社会を実現し、相対的に高い生活水準を維持してきました。これは国民皆保険、皆年金など、社会保障制度がこれまで有効に機能して社会的リスクに対応してきたからであります。
 しかし、いろいろ経済事情も変わってきて、こうした高福祉低負担のシステムが制度疲労を起こして、完全に行き詰まりを見せているのもだれの目にも明らかなことであります。
 るる生活実態の話がありましたが、急激な高齢化が進むこの国で、医療や介護にかかる費用が増大することは自明の理でありまして、ゆえにも、給付と負担のバランスを顧みない高福祉低負担という社会保障制度は、到底今後は成り立ち得ない。
 今なすべきことは、国民にいたずらにこびるのではなくて、あるべき国家の姿を国民に改めて示し、確固たる意思で新たな社会保障のありようを形づくっていくことだと私は思います。
 行政による公助はもとより、自助、共助を有機的に組み合わせることで、だれもが自立して生活できる成熟した社会をつくらないと、我が国は世界のだれもが経験したことのない超高齢社会を乗り越えることができずに確実に衰退するに違いないと思います。
 とにかく共産党の皆さんは、相変わらずばらまき福祉を主張していますが、行政への過剰な期待をかき立てるだけで、そんないい分は国民に幻想を振りまくだけで、まさに無責任としかいいようがないと私は思います。
 次いで、東京への外国企業誘致が地方都市の経済やアジア諸都市との関係にいかなる影響を及ぼすかについてでありますが、話を聞いていると、外国企業を東京に誘致することが国内地方都市を疲弊させてアジアの諸都市から搾取を行うことであるように聞こえますが、これは全くこっけいないい分で、経済の仕組みというのを理解していない、やっぱりさすがに共産党だなという感じがいたします。
 都市の世紀を迎えた今日、国家の力というものは、その成長の中心になる大都市の持つ力で決まるといっても過言ではありません。これは、現代的な文明の一つの原理であります。
 今やアジア諸都市のみならず、世界の大都市が熾烈な都市間競争を繰り広げているわけです。我が国において国家を牽引する役割を担い得る大都市は、東京をおいてもほかになくて、東京が国際競争力を高め、グローバルな都市間競争を勝ち抜くことこそが、東京のためだけじゃなしに日本全体の再生につながることは明らかであります。
 都が推進するアジアヘッドクオーター構想は、外国企業のアジア本社や研究機関を誘致して、外国の頭脳と東京の頭脳が刺激し合って、新たな価値を生む舞台を整えることで、東京に集中、集積するさまざまな力をさらに引き出し、束ねて、熾烈化する都市間の競争を勝ち抜くためのものであります。
 都市と都市とが正当に競い合って、それぞれが持つ豊かな個性を磨いていく関係こそ真に対等な関係にほかならないと私は思います。これをもって経済覇権主義とする指摘は全くこっけいで的を外れていると私は思います。
 東京は、アジアの諸都市との競争を勝ち抜き、アジアのヘッドクオーターの地位を確立することこそ日本の再生を牽引していくことができると思います。
 ついでに、私の核に関する論について言及がありましたが、私の本をよく読んでいただきたい。読めばよくわかりますわ。
 いずれにしろ、東京はアジアの諸都市との競争を勝ち抜き、そのために私は大都市のアジアのネットワークをつくった。これが結局、互いに刺激し合って大きな効果を生んでいるじゃないですか。
 そして、まさにアジアのヘッドクオーターの地位を確立することで、私は日本の存在感というものをこれからも高めていくことができると信じております。
 他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁します。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 四点のご質問にお答えいたします。
 初めに、河川施設の耐震化についての認識でございますが、都はこれまで、耐震性を向上させるため、スーパー堤防整備や水門などの耐震強化、補強などの事業を行ってまいりました。
 お話の残る六十八キロメートルの区間のうち六十六キロメートルにつきましては、民地側の地盤が満潮面より高い地域、または関東大震災時の震度に対する対策が完了している水門の内側にある地域でございます。一定の安全性を有しているものと認識しております。
 既にマグニチュード八クラスの海溝型地震などを想定して、各施設の耐震性の確認を進めるとともに、技術検証委員会などで耐震性の向上策について検討を行っており、これを踏まえて、残る区間を含む新たな整備計画を策定し整備目標を示してまいります。
 次に、耐震性の強化についてでございますが、これまで堤防や水門などの整備に当たりましては、国の基準に基づき、関東大震災時の震度に対して耐震対策を行い、一定の安全性を確保してまいりました。
 これらの対策に加え、マグニチュード八クラスの海溝型地震等を想定して、各施設の耐震性の確認を既に進めるとともに、技術検証委員会などでの検討を踏まえて、新しい整備計画を策定してまいります。
 次に、外環でございますが、外環は、平成二十一年五月に高速自動車国道として整備計画が決定され、国の直轄事業と有料道路事業により整備することとなりました。都は、国の直轄事業に対し、法令に基づき負担金を支出しております。
 外環は、交通分散による渋滞の解消や、排出ガスの大幅な削減などの環境改善だけでなく、我が国の国際競争力を高め、経済を再び成長軌道に戻すなど、大きな整備効果が期待されております。
 また、災害時におきましては、救命、救援や復旧活動に大きな役割を果たすほか、日本の東西交通の分断を防ぎ、首都機能を堅持するなど、その整備効果は多岐にわたり、都は引き続き国と連携し、全力で外環の早期完成を目指してまいります。
 最後に、首都圏三環状道路でございますが、首都圏三環状道路は、首都圏に集中する放射状の高速道路を相互に連結し、交通の分散などを図ることにより、首都圏のみならず、広く国全体にその整備効果が及ぶ重要な幹線道路ネットワークを形成するものでございます。
 ましてや、東日本大震災において改めて認識されたように、災害時における人や物資の輸送ルートの多重化や避難路など、都民、国民の生命、財産を守る命の道としての重要な役割を担っております。
 なお、その費用便益は、いずれも事業費を大きく上回っております。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 津波対策についてでございますが、東京には区部東部を中心としたゼロメートル地帯など、津波、高潮等による震災被害が懸念される地域が存在しており、都は、これまでも水門や防潮堤の整備など津波、高潮対策を着実に進めてまいりました。
 また、東日本大震災を踏まえ、震災のリスクを冷静に見詰めた上で、適切な対策を講じるため、東京都防災会議のもとに地震、津波の第一人者から成る地震部会を設け、最新の科学的知見や客観的データに基づいて、本年四月を目途に被害想定の見直しを進めております。
 この結果に基づき、ハード、ソフト両面にわたり必要な対策を着実に講じてまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 十点のご質問にお答えいたします。
 まず、旧耐震基準の木造住宅の耐震化助成についてでございますが、都は、防災都市づくり推進計画に定める震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象として、住宅の倒壊による道路閉塞や大規模な市街地火災を防止するという公共性の観点から、区と連携し、公的助成を行っております。
 また、簡易な耐震改修では住宅の耐震性能が十分向上せず、住宅が倒壊し、道路閉塞を引き起こす可能性があり、補助対象としては適切ではないと考えております。
 都としては、財源を効率的、効果的に活用する観点から、引き続き整備地域に的を絞り、重点的に木造住宅の耐震化助成を行ってまいります。
 次に、木密地域不燃化十年プロジェクトについてでございますが、木密地域は狭隘な道路や行きどまり道路など基盤が脆弱な上、狭小な敷地や接道していない敷地が多いといった課題がございます。
 早期に安全なまちにつくり変えていくためには、延焼遮断帯を形成する主要な都市計画道路の整備や、建物の共同化による市街地の不燃化を促進することが必要でございます。
 こうした住民の安全を守るという公共性の高いまちづくりを進める上では、地元の理解を得ながらスピード感を持って確実にやり遂げることが行政の責務でございます。
 このような考え方に基づいて、木密地域不燃化十年プロジェクトの推進に取り組んでまいります。
 次に、不燃化特区に対する区の意見についてでございますが、不燃化特区は、特に改善を必要としている地区について、従来よりも踏み込んだ取り組みを行う区に対し、期間と地域を限定して都が特別の支援を行い、不燃化を強力に推進するものであり、地区の設定や具体的な事業内容については、区の提案によることとしております。
 既に多くの区から、不燃化特区に積極的に取り組む意向であると聞いております。
 次に、耐震改修助成の対象についてでございますが、都は、地震発生時の住宅の倒壊による道路閉塞や、大規模な市街地火災を防止することを目的に、六メートル以下の道路に面している住宅を対象に耐震改修助成を行っております。
 都としては、燃えない、壊れない、震災に強い都市の実現に向け、木造住宅密集地域整備事業などとあわせて、引き続き整備地域内の道路閉塞のおそれのある木造住宅を対象に耐震化助成を行ってまいります。
 次に、地元自治体の取り組みへの支援についてでございますが、都はこれまでも、延焼を防止するという公共性の観点から、延焼遮断帯となる道路の沿道建築物の不燃化建てかえや老朽建物の共同建てかえ等に対し、地元自治体と連携して費用の一部を助成してまいりました。
 今後とも、こうした必要な支援を行ってまいります。
 次に、建築規制の緩和についてでございますが、不燃化特区の指定に当たっては、建てかえによる不燃化を確実に進めるため、現行の建築安全条例に基づく防火規制等の導入を前提とすることとしております。
 都は、平成十四年に策定した用途地域等に関する指定方針及び指定基準において、木密地域における不燃化建てかえを促進する観点から、条例に基づく防火規制区域に指定した場合、建ぺい率、前面道路幅員による容積率制限、道路斜線制限の緩和を適用することができるとの考え方を既に示しております。
 次に、マンションの耐震化助成についてでございますが、まず、賃貸マンションについては、事務所ビルなどと同様、基本的には事業者がみずからの責任で耐震化を行うべきと考えております。
 一方、合意形成が困難な分譲マンションについては、耐震診断や耐震改修に一定の助成を行っておりますが、建築物全体を地震に対して安全な構造とすることが重要でございまして、改修を行っても十分な耐震性が得られない部分的改修等への助成は考えておりません。
 次に、ピロティーなど共用部分に対する全額助成についてでございますが、建築物の耐震化は、所有者みずからが主体的に取り組むことが基本でございます。
 したがって、分譲マンションの耐震改修について、区分所有者である居住者の負担なく全額助成することは考えておりません。
 次に、長周期地震動対策についてでございますが、国は一棟ごとに超高層建築物の構造方法を認定しており、平成二十二年十二月、長周期地震動への対策試案を示しましたが、昨年の大震災を踏まえ、さらに検討が必要であるとしております。
 都は、長周期地震動に対する都民の不安を解消するため、一日も早く対策を取りまとめるよう国に要望いたしました。
 今後、国の対策が示された場合には、直ちに建築士や建設業の団体等に対して、構造上の安全性に対する検証方法を周知するなど、普及啓発を図ってまいります。
 また、都独自の取り組みとして、専門家の知見を踏まえ、用途や構造など、建物の特性に適した補強方法の事例などについて、マンションの管理組合等に対し広く情報提供してまいります。
 最後に、自動車交通施策についてでございますが、東京と海外の諸都市では、都市構造や交通基盤の整備状況が異なっており、海外の事例を東京にそのまま適用することは適切ではないと考えております。
 東京の鉄道網は、世界の諸都市と比べて発達している一方、首都圏の環状道路の整備率は低い水準にございます。
 東京を魅力とにぎわいを備えた環境先進都市とするためには、東京の最大の弱点である交通渋滞を解消し、人、物の流れを円滑にする交通ネットワークを整備することがまず不可欠であり、そのことにより効率的な自動車交通の流れを誘導することができます。
 このため、整備がおくれている三環状道路を初めとした幹線道路ネットワークの整備を強力に推進してまいります。
   〔消防総監北村吉男君登壇〕

〇消防総監(北村吉男君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、スプリンクラー設備などの耐震措置についてでありますが、東京消防庁では、これまで消防法令に基づき地震動に耐える措置として、配管等を壁、床、はり等に堅固に固定するとともに、配管のひずみや変形を防止するために、フレキシブルな継ぎ手を設けることとして対応しております。
 今後も、引き続き防火対象物の関係者に対して、スプリンクラー設備などの消防用設備等のより一層の耐震措置について指導してまいります。
 次に、長周期地震動における家具の固定などの室内安全対策についてでありますが、これまで東京消防庁では、家具類の転倒防止器具取りつけ講習会などを実施するとともに、映像、パンフレットを活用した普及啓発を積極的に推進してまいりました。
 このたびの東日本大震災における都内の室内被害に関するアンケート調査では、約二割の住宅及び事業所において、家具類の転倒、落下や移動による被害が発生していることが判明いたしました。
 このことから、昨年九月に長周期地震動等に対する高層階の室内安全対策専門委員会を設置し、揺れに対する事前の備えや身の安全の図り方について審議を行いました。
 今後とも、本委員会で取りまとめた結果を広く都民や事業所に普及啓発するなど、地震時における総合的な室内安全対策を推進してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 七点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、内部被曝への対応についてでございますが、内部被曝は放射性物質を含む空気、水、食品などを体内に取り込むことで起こりますが、主な要因でございます食品については、暫定規制値を超える農産物などが流通しないよう、生産地での検査結果に基づき、出荷制限等を実施する仕組みを国が構築いたしております。
 都は、これに加えまして、都内小売店で流通をしている食品について、都民、特に子どもが日常的、継続的に摂取する乳製品などを中心にモニタリング検査を実施しており、これまでに暫定規制値を超えた例はございません。
 四月には、より厳しい基準値が施行される予定であり、都では、今後とも健康安全研究センター等の検査体制を強化し、都民の安全・安心の確保に努めてまいります。
 次に、保険料の軽減についてでございますが、国民健康保険、後期高齢者医療及び介護保険の各制度は、保険料や公費等によって運営することとされており、都は、法令等に基づき応分の負担を行っております。
 今回、後期高齢者医療につきましては、前回改定時の対応や広域連合からの要望を踏まえまして、特段の措置として財政安定化基金を二年間で二百六億円活用し、保険料の急激な上昇を緩和することとしております。
 また、介護保険につきましては、平成二十四年度に限り介護保険財政安定化基金を取り崩すこととし、区市町村への交付金は、法に基づき、保険料の上昇の緩和のために活用されることとなっております。
 いずれも特別な措置でございまして、新たな支援を行うことは考えておりません。
 次に、国民健康保険料の滞納処分についてでございますが、国民健康保険制度は、被保険者間の相互扶助で成り立つ社会保険制度でございまして、その財源となる保険料の収納確保は、制度を維持していく上での前提でございます。
 保険者である区市町村は、滞納者に対しまして督促や催告を行っているほか、納付相談により生活状況を把握し、必要に応じて保険料の分割納付を案内するなど、きめ細かな対応を行っております。
 そうした対応を行った上で、財産があるにもかかわらず保険料を納付しない場合は、被保険者間の公平性を確保する観点からも、法令に基づき差し押さえを行っております。
 次に、国民健康保険料の滞納に伴います差し押さえ事例の調査でございますが、先ほど申し上げましたとおり、保険者でございます区市町村は、財産があるにもかかわらず滞納していると判断した場合について、法令に基づき保険者の責任で差し押さえを実施しており、東京都として調査を行う考えはございません。
 次に、認知症高齢者グループホームや小規模多機能型居宅介護の整備についてでございますが、都は、区市町村が整備を進める認知症高齢者グループホームや小規模多機能型居宅介護について、国の交付金に加えまして、土地所有者がみずから建設し、事業者に貸し付ける場合にも補助を実施いたしますほか、グループホームの整備状況が十分でない区市町村を重点的整備地域に指定し、補助単価を一・五倍に加算するなど、独自の取り組みにより整備促進を図っております。
 また、都有地を減額して貸し付けているほか、社会福祉法人等による利用者負担額軽減の仕組みを都独自に拡大して実施をいたしてございます。
 次に、特別養護老人ホームの整備についてでございますが、特別養護老人ホームの用地取得費助成につきましては、国の規制緩和により、民有地の貸し付けや定期借地権制度の活用による整備が可能となるとともに、用地取得費に対する融資制度が充実されるなど、状況が大きく変化したことから、平成二十年度着工分をもって終了したものであり、復活することは考えておりません。
 また、都有地の活用につきましては、福祉インフラ整備事業により、未利用の都有地を減額して貸し付けております。
 さらに、定期借地権の利用に対する支援につきましても、定期借地権設定時の一時金に対する補助を平成二十二年度から国制度に独自に上乗せをして実施いたしております。
 最後に、待機児童解消に向けた取り組みについてでございますが、保育サービスは、保育の実施主体であります区市町村が認可保育所に限らず、認証保育所、認定こども園、家庭的保育など、地域のさまざまな保育資源を活用して整備するものでございます。
 都は、待機児童解消に向けた区市町村の取り組みを支援するため、保育サービス拡充緊急三カ年事業や少子化打破緊急対策事業を実施し、平成二十年度から三年間で認可保育所一万四千八百三十二人分を含め、保育サービスを二万四千六百十三人分整備いたしました。
 平成二十四年度以降につきましても、三年間で二万四千人分の保育サービスをふやすことといたしております。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 四点のご質問でございます。
 まず、都内の除染についてでございますが、面的な汚染に関しましては、国の航空機モニタリング調査によりまして、都内の空間線量は関東地方の中でも高い水準にはないことが明らかになっておりまして、放射性物質汚染対処特別措置法に基づく汚染状況重点調査地域に指定された地域は都内にはございません。
 また、局所的な汚染に関しましても、昨年十一月、都内としては比較的空間線量が高いことが示されました区部東部三区を対象とし、文部科学省のガイドラインで放射性物質がたまりやすいとしているポイントを測定いたしましたが、このガイドラインの目安を上回る地点はございませんでした。
 これらの結果から、これまでも申し上げておりますが、都内においては、都有施設全般にわたる調査や経常的な調査は基本的に不要と考えております。
 お話の水元公園の調査では、セシウム濃度が土壌で最高二万ベクレル超としておりますが、発表された資料によれば、これは深さ約一センチメートルという土壌の表層部を集めて測定したものということであります。
 こうして得られた二万ベクレルという数値を特別措置法の廃棄物の指定基準値である八千ベクレルと比較しておられますが、特別措置法の基準は、脱水汚泥や焼却灰などが数万トン単位で大量に集まり、放射性物質が総量として大きなものとなる埋立処分場などでの長時間の管理や作業に関するものでございます。これと、表層部だけを薄く集めて計算した数値を適用条件の違いも考慮せずに直接比較することは適切ではないと考えます。
 そもそも国のガイドラインにおきましては、除染の判断は空間線量で評価することが妥当とされております。都が昨年十一月に実施した調査結果を見ましても、局所的に高い濃度があった場合でも、わずかに離れただけで空間線量は大幅に減衰していることが確認されております。
 加えまして、都が水元公園で測定した一般的な調査ポイントでは、高さ一メートルの地点で、昨年十一月に毎時〇・二五マイクロシーベルトであったものが、本年二月の測定では毎時〇・二三マイクロシーベルトに減少しております。
 昨年十一月にお示ししたように、都ではこうした時間的な減衰を把握するための継続的な調査を実施してまいります。
 次に、文部科学省のガイドラインについてでございますが、このガイドラインは、文部科学省が、地方自治体等が地域住民のニーズに応じて、人、特に子どもの集まる公的スペース等において空間線量を測定する際の参考となるよう提示を行ったものでございます。
 文部科学省からは、このガイドラインは、福島県外において放射線量が周囲よりも有意に高いと判断するための相対的目安であり、地域内の除染に当たって優先的に作業した方がよい箇所を示す当面の目安だと聞いております。
 次に、都の放射能対策についてでございますが、都では、これまでも都内全域での空間放射線量の測定を初め、水道水、食品、工業製品など幅広く検査を行いまして、モニタリングポストや検査機器を増設するなど、具体的な施策を拡充してきております。都の放射能対策が立ちおくれているとのご指摘は当たらないと考えます。
 また、先ほどの答弁のとおり、都内については面的な、あるいは局所的な除染を行う必要性は少ないものと考えております。今重要なことは、都内の放射性物質の状況を全体として正しく示すことでございます。全体の中での位置づけなしに断片的な数値を発表することは、無用な混乱を招くおそれがあると考えます。
 こうした観点から、都は、局所的汚染と面的汚染に関するリスクの違いなども含めまして、放射線に関する正確な情報の提供を今後とも進めてまいります。
 最後に、区市町村への対応についてでございますが、都は、昨年十二月に区市町村に対しまして、特別措置法と都有施設の対応の考え方に関して説明会を開催し、都有施設の調査結果についても詳細な説明を行いました。
 また、日常の業務におきましても、区市町村からの技術的な相談や住民対応での問い合わせに対しまして、懇切丁寧に対応しております。
 今後も、区市町村からの相談や問い合わせに関しましては、適切な対応をしてまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 財政運営についてでございますが、外環道を初めとする都市インフラの整備は、都民の利便性や国際競争力の向上、東京の活力維持などに不可欠な取り組みであります。
 福祉や医療、教育、雇用、中小企業施策などには的確に財源を振り向けてきており、加えて来年度予算におきましても、大震災を受け、防災力の強化やエネルギー対策にも重点的に対応しております。
 今後とも、財政の健全性に十分留意しながら、山積する都政の諸課題にしっかり取り組んでまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、総合特区制度を活用した法人事業税の減免についてでございますが、外国企業誘致は、国や都市の財政破綻を招くものではなく、むしろ対日投資が促進され、日本経済の活性化につながるものという認識をしております。
 都の試算では、新たに東京に進出する五十社の外国企業のアジア統括拠点、研究開発拠点に対し、法人税や法人事業税を一定程度軽減することにより、国全体で年間約一千億円の増収を見込んでいるところでございます。
 このように、外国企業の誘致はその効果が日本全体に及ぶことから、積極的に推進していく考えでございます。
 次に、外国企業誘致と中小企業との関係についてでございますが、外国企業の立地はすぐれた経営資源の受け入れにつながるものであり、中小企業にとって販路拡大や新たなビジネスチャンスの創出、国際競争力の強化につながるものでございます。
 このため、都では、ビジネス支援をワンストップで行うコンシェルジュを設置し、外国企業と都内中小企業とのビジネスマッチングを促進してまいります。
 また、税の軽減措置だけでなく、外国企業へのヒアリング結果を踏まえ、ビジネス環境や生活環境の整備を戦略的に実施する考えでございます。
 今後、こうした取り組みを具体化し、外国企業誘致を展開してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、非正規労働者に対する認識と対策についてでありますが、正規雇用を望みながらもやむなく非正規で雇用された方々は、十分なスキルを習得できず不安定な就労を続けており、このことは本人にとっても不幸なばかりか、社会にとっても大きな損失であります。
 このため、都は、意欲を持ち正規雇用を希望する方々に対し、東京しごとセンターできめ細かな就職支援を行うほか、多様な職業訓練の機会を提供するなどの支援を既に実施しております。
 次に、雇用対策予算についてでありますが、来年度予算案では、雇用創出に係る基金事業における国の交付金の終了による減などがございますが、都としては、現在の雇用情勢に対応する施策を行うため必要な額を計上しております。
 なお、都では、緊急雇用創出事業を通じて、平成二十年秋のリーマンショック後の制度創設から、来年度、平成二十四年度末までの間、実績と計画を合わせ約六万人の雇用を創出することとしております。
 次に、若者の正規雇用拡大への取り組みについてであります。
 この問題の本質的な解決のためには、国が実効性のある経済対策を進め、雇用を創出することが不可欠であります。
 都はこれまでも、東京しごとセンターのカウンセリングやセミナー、合同就職面接会、職業訓練など、さまざまな事業を実施して、正規雇用を望む意欲ある若者を支援してまいりました。
 また、今年度から既卒者を対象に、研修と中小企業での就労体験を組み合わせた未就職卒業者緊急就職サポートを開始しております。
 来年度は、事業規模を拡充するとともに、今後成長が期待できる産業分野に就業先を重点化した取り組みなどを実施することとしております。
 次に、中小企業対策に係る予算についてでありますが、都内中小企業を取り巻く経営環境は依然として厳しいことから、来年度予算においても中小企業対策について新規事業を含め必要額を計上しております。
 なお、予算額の歳出総額に占める割合について、財政構造の異なる他県との単純な比較をもって評価することは適当ではないと考えます。
 次に、新産業の成長に向けた支援についてでありますが、都は、今後の成長が期待できる環境分野や医療分野を重点的に育成するとの方針のもと、中小企業の製品開発や事業化を既に支援しております。
 最後に、商店街に対する支援についてでありますが、都はこれまでも、商店街や区市町村からの要望を踏まえまして、毎年度必要な予算額を確保して施策を実施しているところでございます。
   〔八十二番吉田信夫君登壇〕

〇八十二番(吉田信夫君) 知事に再質問いたします。理性的に質問をいたしますので、きちんと答えてください。
 まず、津波対策です。
 津波の想定と対策について、神奈川県や千葉県は国の防災基本計画の見直しを受け、いずれも第一線の科学者、専門研究者を結集し、いち早く進めていますが、知事はこれらの県が単に早さを競っているとか、いたずらに不安をあおっているとでもいうのですか。
 いたずらに不安をあおるというなら、知事自身が、震源によっては津波が東京を直撃し甚大な被害になると発言していることは、それに当たらないのですか。みずからの津波対策のおくれを糊塗するために、悪罵を投げつけるのではなく、おくれを直視し、津波対策を急ぐべきです。答えてください。
 二つ目に、アジアヘッドクオーター構想についてです。
 私が質問したことに答えてください。
 外国企業の誘致により各地で中小企業が淘汰される危険、誘致の失敗の教訓、東京一極集中による地方経済の疲弊状況、OECDも税低減競争の有害性を大問題にしたこと、東京をアジアの司令本部にすることへのアジア諸国の受けとめなど、どれ一つまともに答弁がありませんでした。
 検証もせずに進めてきたとしたら無責任きわまりません。知事、我が党が指摘した問題についてどう検討したのか、明確に答えてください。
 三つ目に、原発問題です。
 知事は、理性、理性といいました。それではお伺いいたします。
 知事は、原発廃止論を放射能への不安というセンチメントと決めつけましたが、知事は、重大事故が起きた場合、人類が放射線を封じ込める技術を持っていると思っているのですか。イエスかノーかで答えてください。
 また、都民の不安は、ここまでの内部被曝なら安全だという科学的に確信した基準がないからです。知事は、科学的に確定した安全基準があるというのですか。答えてください。
 また、私は、地上一メートルで毎時〇・二四から〇・七四マイクロシーベルト、セシウム濃度が土壌では二万ベクレルを超える地点で、子どもたちが転げ回って遊んでも問題ないというのかどうか聞きました。イエスかノーか、はっきりと答えてください。
 最後に、社会保障に関する問題です。
 知事は、社会保障制度の深刻な行き詰まりについて、まるで人ごとのような発言をし、専ら国民、都民に犠牲を押しつける姿勢を表明しました。とんでもないことです。
 石原都政のもとで三環状道路や五輪招致が最優先にされる一方、国民皆保険の最後のとりでともいえる国民健康保険への国と都を合わせた財政支援は大きく削られたのです。その結果、毎年のように保険料が上がり、払いたくても払えない人が激増し、国民皆保険が機能不全に陥っているのです。
 知事は、国民健康保険制度の行き詰まりへのみずからの責任をどう考えているのですか。はっきりと答えてください。
 最後に述べさせていただきます。私が紹介をした都民の苦しみ、痛み、叫び、これがわからず批判をするようでは、私は知事としての資格が問われるものだといわざるを得ません。
 また、批判されたからといって、まともな根拠を示すこともできず、ただ汚い言葉で誹謗する、こういう態度は発言者の品性や理性そのものが問われることだということを厳しく指摘し、再質問を終わります。(拍手)
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) まず、被害想定の見直しの時期の早さを争う、また、いたずらに不安をあおるという言葉でございますが、これはもとよりほかの県の被害想定などに言及したものではございません。
 東京都では、先ほどご答弁申し上げましたように、東京都防災会議の下に地震、津波の第一人者から成る地震部会を設け、最新の科学的知見や客観的データに基づいて、本年四月を目途に被害想定の見直しを進めております。
 この結果に基づき、ハード、ソフト両面にわたり必要な対策を着実に講じてまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 二点の再質問にお答えいたします。
 まず、特区による海外企業誘致の影響についてでございますけれども、先ほど知事が答弁されましたが、我が国において国を牽引する役割を担える大都市は東京以外になく、東京が国際競争力を高め、グローバルな都市間競争を勝ち抜くことが東京のためだけでなく、日本全体の再生につながるとの考えのもと、アジアヘッドクオーター構想を推進していくものでございます。
 なお、具体的な検証の件でOECDの件が出ましたけれども、OECDの有害税制に関しましては、政府が総合特区による法人税の優遇措置について、有害税制に該当しないとの見解をOECDから得ているというふうに聞いております。
 二つ目でございますけれども、原発問題に関する再質問でございますけれども、これも先ほど知事が答弁されましたが、今回の原発事故は人間による管理の問題でありまして、したがって適切に管理することで原子力を有効に活用することは十分可能だという趣旨でございます。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 水元公園における除染についてのお尋ねでございますが、再三ご答弁しておりますように、都内におきましては、局所的な汚染場所は限られておるものでありまして、少し離れただけで大幅な距離減衰を確認していること、その場所への滞留時間が少ないと見込めることから、除染など特段対応は必要ないものと考えております。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 社会保障制度についての再質問でございますが、先ほどお話がありました国民健康保険制度を初め、後期高齢者医療制度、それから介護保険等の各制度につきましては、保険料、そして公費等によって運営されることとされておりまして、東京都は法令に基づき応分の負担を行っているところでございます。
 先ほど知事の答弁にもございましたが、そうしたシステムが制度疲労を起こしており、今後は公助はもとより、自助、共助を有機的に組み合わせるということで、新たな社会保障のありようを形づくっていくことが必要ではないかということでございます。

〇七十四番(西岡真一郎君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

〇議長(中村明彦君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(中村明彦君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後九時二分散会

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