平成二十四年東京都議会会議録第二号

   午後六時開議

〇副議長(ともとし春久君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百八番中嶋義雄君。
   〔百八番中嶋義雄君登壇〕

〇百八番(中嶋義雄君) 公明党を代表して質問をいたします。
 初めに、平成二十四年度予算案と財政運営について質問をいたします。
 石原知事は、過日の所信表明において、五年連続の都税収入減収に危機感を表明いたしました。確かに平成十九年度にはおよそ五兆五千億円に上った都税収入は、現在では四兆一千億円台に激減をしております。
 しかも、日本を取り巻く経済状況は、失われた二十年を惜しむどころではなく、現代資本主義はもはや自壊したなどと指摘する論評まであらわれ、経済構造の根源的な転換なくしては日本経済の再生はあり得ず、財政の好転など望むべくもないという認識が広がっております。
 しかも、それは経済の問題にとどまることなく、政治、経済、社会全体すべての構造転換が不可欠との深刻な認識に発展をし、現在の国政への抜きがたい不信感、絶望感につながっております。しかし、絶望ばかりしている場合ではありません。
 こうした中にあって、東京都の平成二十四年度予算案は、公会計制度の改革、つまり複式簿記・発生主義会計の導入による事業評価によって約二百二十億円の財源を生み出し、さらに事業費の精査によって、およそ千百六十億円の財源を確保するなどの取り組みによって、雇用や中小企業支援、景気対策に密接に連動する投資的経費を八年連続で増加させ、さらに保健と福祉の分野を、その額、構成比とも過去最高とするなど、苦心と苦労、努力の跡がうかがえる予算案となっており、評価をいたしたいと思います。
 しかし、それにしても問題は、依然として厳しい経済状況が続く今後の財政運営であります。東京は、今まさに都市の更新時期に差しかかり、防災、環境、福祉に最大限に配慮した中長期にわたる都市インフラの再整備は待ったなしの課題であり、加えて、加速度を増す高齢化に伴う諸施設、住宅などの環境整備、また、都市間競争に打ち勝つための官民挙げての大胆な都市再生の積極的な展開も避けて通ることはできません。まして、東日本大震災の被災地への復旧、復興支援は、さらに息の長い取り組みが不可欠であります。
 ここで、東京都の抱えるすべての課題を挙げて論ずることは不可能でありますが、いずれにしても重要なことは、まず第一に、今後の財政のかじ取りであります。都政史上初の五年連続の都税収入減収に危機感を表明した石原知事の今後の財政運営にかける意欲と決意、そして、より根源的な解決策として、財政自主権の確立を中心とした本格的な地方分権への取り組みについて、まず所見を伺いたいと思います。
 続いての質問は、東日本大震災の被災地支援であります。
 政治に携わる者の一員として、千年に一度の大災害に遭遇した重みを断じて忘れてはならない、これが発災以来の我々都議会公明党の合い言葉でありました。
 発災直後から、警視庁、東京消防庁、そして自衛隊の皆様が必死の活動を展開されたことは、日本国民全員の称賛の的となりました。石原知事も、東京都としてできることは何でもやるとばかり、うろたえる国をしり目に支援、救援に当たったことは、これも高く評価すべきであります。
 我々都議会公明党も、被災地から悲鳴にも似た支援の要請を連日のように受け、総務局の総合防災部を初め関係各局の局長、部長、課長の皆さんと、時にはきつい言葉のやりとりを交わしながら、一つ一つの支援策の実現に取り組んでまいりました。
 その結果、例えば、被災三県への旅行者に対して、一泊三千円、五万泊分の補助の実施や、来年度における福島県への旅行者に対する助成の実現など、被災地から大変に歓迎される成果も上げることができました。
 間もなく被災から一年を迎えますが、いまだ国は復興庁の本格的な始動もできないお粗末な状態にあります。したがって、東京都の果たすべき復旧、復興支援の必要性は、いささかも減じるものではありません。
 都議会公明党は、昨年来の数次にわたる被災地訪問に引き続き、二月の十二、十三の両日、福島、宮城、岩手の被災三県に議員団を派遣し、県や市町、商工団体、あるいは被災住民から実情をつぶさに聞いてまいりました。
 やはり最大の課題は、水産業、農業の壊滅的被害による地元経済の崩壊、雇用の喪失であります。地元商工会議所などからは、地元産の物産は何としても確保し、必要量を必ず集めるから、大規模な被災地物産展を連続して実施してほしいなどと強く要請をされました。
 都は、昨年十二月、東京国際フォーラムで三日間にわたり被災地復興応援フェスタを開催いたしました。このイベントには、岩手、宮城、福島の被災三県の物産展や伝統工芸品の制作実演、また、販売コーナーなど三十八の店舗が出店し、三日間の来場者が延べ二万四千人を超えるにぎわいの中、物産を完売できた店舗も少なくありません。
 出店者からは、こうした応援イベントは大変にありがたいとの数多くの声が上がっておりました。都は、今後も、ぜひともこのような取り組みを大規模に、しかも連続して実施すべきであります。
 また、同じ物産展でも、小規模なイベントなどの場合、交通費や宿泊費などの費用が収益を上回り、赤字になる例が少なくないといいます。
 そこで、東京都は、商工会議所やJAなど民間にも協力を求め、収益が上がり、被災地の雇用にもつながるような物産展の実施を検討すべきでありますが、これも見解を求めたいと思います。
 他方、宮古市では、特産品を初め、現地の産業に精通した県外の企業が、現地の人を雇用しながら市の産業支援センターと連携し、一軒一軒の店舗や事業所を回り、無理のない範囲で物産品を集めては、東京のイベント会場や店舗で販売を行い、消費者と結びつける努力を行っておりました。こうした現地における身の丈に合った丁寧な支援も重要であり、陸前高田市でも同様の支援が検討されておりました。
 このような企業などが東京で販路拡大をしやすくできるよう、まずは都が活動拠点を提供するなどの支援策を講じるべきであります。
 また、都内各地に散在する商店街の空き店舗を活用し、被災地支援のため、企業やNPOがアンテナショップなどを出店できるよう、新たな仕組みや支援策を考えるべきであります。あわせて、都の見解を求めたいと思います。
 被災地では、国の第二次補正などでライフラインの復旧予算が約四倍にふえたものの、専門職員が決定的に不足し、大幅に予算の執行が滞っていると、現地の県庁の主要な幹部から聞いてまいりました。
 同様に、復興にかかわる各種補助金の申請への対応、また、津波ですべてを流された地域での土地の権利関係の確定や区画整理などの専門家も大幅に不足をし、復興の足かせとなっているそうであります。
 都は、これまでも被災地支援のための職員派遣に取り組んでまいりましたが、今後も現地で必要とされる専門職員の中長期にわたる支援が不可欠であります。都の継続的で力強い対応を求めたいと思いますが、見解を伺います。
 次いで、災害廃棄物、いわゆる瓦れきの処理であります。
 被災地では、行政関係者を初め、実に数多くの人々から、瓦れき処理の受け入れを開始した東京都に対する尽々の感謝の言葉が寄せられました。五十万トンの瓦れきの処理の受け入れの表明は、まさに誇るに足る東京都の英断であります。
 被災地で最も大量に瓦れきが集積しているのは石巻市であります。ここには被災三県の瓦れき総量の四分の一が集積しており、しかも、いまだ手つかずの一万数千棟に及ぶ被災家屋の解体が進むと、さらに瓦れきの総量が増大すると現地で説明を受けました。
 したがって、まずは表明した五十万トンの処理を迅速に進めることが何よりも肝要であり、さらには宮古、女川に次ぐ処理計画を早急に明らかにすべきであります。都の見解を求めます。
 一方、問題は、国が本来音頭を取るべき広域処理が全く進展しないことであります。ここにも現政権の当事者能力の致命的な欠如があらわれておりますが、しかし、これも放置はできません。
 公明党は、昨年、山口代表を中心に全国各地選出の国会議員およそ二十名で大田区城南島の処理工場を視察し、その現場で山口代表から各国会議員に対して、それぞれの地元において瓦れきの処理の受け入れを強く促すよう求めました。
 我々公明党も引き続き全国の議員と連携して広域処理の推進に努力してまいりますが、ここはぜひとも発信力の強い石原知事と東京都が一肌も二肌も脱ぐべき局面ではないかと私は思います。
 瓦れきの処理は、ただ単なる廃棄物の処理ではなく、被災者の心に突き刺さった大厄災のとげを抜くことにもつながりますと現地の方から伺いました。知事の見解を伺いたいと思います。
 また、瓦れきの輸送には運搬車両の調達や廃棄物専門のコンテナの確保など、大変な苦労があると聞いていますが、瓦れきの処理を本格化させるためには、さらに輸送力を高める必要があります。
 現在、車両と鉄道輸送が主流ですが、大量処理を推進するためには、いずれ船舶の活用も検討すべきと思います。見解を伺います。
 被災三県の中でも、特に福島県における除染が重大な課題です。現在、国と福島県が除染の効果を検証するモデル事業を実施していますが、汚染土壌の仮置き場の確保など、課題が尽きません。
 都議会公明党は、JA福島中央会やJA全農福島の方々とも意見交換してまいりましたが、国の対応がおくれる中で、JAグループとして独自の除染マップの作成を進めるとの話もありました。
 広い耕作地でのマップづくりには多くの人手が必要であります。また、マップを作成した後に、それに従って除染を進めるにしても、また多くの人手が不可欠であり、県外への数多くの避難者を抱え、深刻な人手不足に陥っている福島県では、極めて困難な課題となっております。
 また、福島県農業総合センターでは、果物の樹木の除染講習会も視察をしてまいりました。高圧洗浄機を使っての作業は非常に手間がかかり、やはりこれも人手が必要であります。
 そうした実情を知れば知るほど、我々も頭を抱えてしまいましたが、瓦れきの処理と同様、ここはやはり東京都の底力を発揮して、支援の検討に乗り出すべきであります。
 既に首都大学東京放射線学科の大谷浩樹准教授と研究室の学生さんたちが、ボランティアで郡山の除染活動を行っている例もあります。除染支援に関する都の見解を伺いたいと思います。
 次に、木密対策について質問いたします。
 東日本大震災では津波で甚大な被害が出ましたが、首都直下型地震における最大の脅威は建物の崩壊と二次災害の火災であります。
 現在、災害に対して脆弱な木密地域には約百五十万世帯の都民が居住しております。これは放置できません。しかし、木密対策は三十年以上も前からの課題でありながら、一向に解決のできない難題でありました。
 そこで、このたび東京都が木密対策十年プロジェクトに着手をすると発表したことは高く評価し、期待するところ大でありますが、しかし、問題がなくはありません。つまり、都の不燃化助成制度は、あくまで意欲ある区が主体となり、都は、その意欲ある区に対して支援を行うとしている点であります。これでは、意欲はあるが財政が厳しい区や執行体制が脆弱な区においては、意欲がないと置き去りにされかねません。
 木密対策は、地元自治体の意欲の多寡にかかわりなく、必要のあるなしを最優先に判断すべきであります。そこまで都が踏み込んでいくことが重要であります。
 さらに、対策が必要なすべての自治体が行動を起こすためには、従来の不燃、耐震助成だけではなく、民間の資金を活用する都市計画上の工夫が必要であります。例えば、潜在的なポテンシャルを持つ木密地域の未利用容積をアジアヘッドクオーター特区エリアに移転、売却する制度を構築すれば、木密地域の整備費用を民間から新たに調達することが可能となります。いわゆる空中権、容積率の移転であります。
 現実に、東京都は平成十四年に、大手町・丸の内・有楽町地区を容積率の移転可能地域といたしました。その結果、JR東日本は東京駅の空中権を民間に譲渡、売却し、駅舎の復元、保存や駅周辺整備費のうち約五百億円の資金を調達できたという事実があります。
 残念ながら、従来の耐震助成などは、特に高齢世帯における本人負担が障害となって、普及が進みませんでした。また、木密地域における再開発なども、各地で反対運動に遭って進展せず、その後提唱された修復型まちづくりも、住民合意形成の困難さ、あるいは資金の不足、住民の転居先の問題、さらに土地の権利関係の複雑さなど、さまざまな理由から目立った成果は上がりませんでした。同じことの繰り返しでは意味がありません。
 そこで、先ほど述べた容積率の移転、売却による民間資金の活用や、さまざまな経験を積んで進歩した民間の再開発のノウハウを利用しつつ、一兆円といわれる資金を確保し、大胆な都市経営の手法で木密対策を進め、高度防災都市東京を実現すべきであると考えますが、知事の見解を伺いたいと思います。
 また、木密対策を進めるためには、地元自治体の執行体制の強化が大切であります。そのためには、都は技術的支援や人材育成、マンパワーの提供など、ソフト面で地元自治体の支援を行うべきであると考えますが、これも都の所見を求めたいと思います。
 木密地域における初期消火体制の確立も同時に重要であります。木密地域には狭隘道路が数多く存在しており、こうした地域の消防水利の整備や、地域住民による初期消火体制を強化することが極めて重要であります。
 現在、東京消防庁では、水道局と連携して、狭隘道路における水道施設である排水栓の消火用水への活用や、住民が使いやすい防火水槽の整備、あるいはまたスタンドパイプなどによる消火活動の訓練をより実践的に実施するなど、地域住民の初期消火活動の効果を高める取り組みを世田谷区などのモデル地区において検証していると聞いております。
 地域住民による初期消火の能力の向上に加えて、細かい路地の奥で新たに排水栓という消火用水源が確保できれば、木密地域の消火活動を強化、補充することが可能であります。
 今後、都内の木密地域において、震災時の防災力を総合的に向上させるため、こうした新たな消防水利の整備などを進めるべきと考えますが、東京消防庁の見解を求めたいと思います。
 続いて、景気、観光対策について質問をいたします。
 現在、日本経済再生のかぎとして注目されているのが、東京をアジアのヘッドクオーターへと進化させることであります。東京が国際戦略総合特区を活用してグローバル企業を誘致し、アジアのヘッドクオーターへと発展して、アジアを初め海外の成長活力を日本に取り込むことこそが、日本経済を再生させる大きな原動力にほかなりません。
 アジアや欧米の企業を東京に誘致するには、まず都市としての高度な防災性能を確保し、安定したエネルギーを供給するための自立分散型システムを導入し、さらに文字どおり大胆な都市計画上の規制緩和を行って、国内外のディベロッパーの投資意欲をかき立てる必要があります。
 それと同時に、これも大胆に税制、金融面での優遇策を実施し、世界トップレベルのビジネス環境を整備することは当然の前提であります。そうした前提の上で、ここではアジア、そして世界のヘッドクオーターたるためのソフト面の整備、わかりやすくいえば、海外のビジネスマンが、本人たちだけでなく、その家族もともに安心、快適に生活できる環境の整備を強調したいと思います。
 海外では、誘致した企業の社員の教育費の負担を軽減したり、あるいは彼らの母国語で子育て支援や教育サービスを提供している例も存在いたします。教育に限らず、医療、介護の面でも同様であり、さらにシンガポールの空港では、ホテル、コンベンション施設のほか、スポーツ、ゲーム、カジノなどのアミューズメント施設まで空港と連動して整備され、ビジネスだけでなく家族もともに楽しめる工夫が凝らされております。
 これを可能とするものこそが特区制度であり、特定都市再生緊急整備地域でもあります。都市の国際間競争に勝ち残るためにも、こうしたハード、ソフト両面での多様な取り組みが必要であると考えますが、都の見解を求めます。
 また、特区の活用は、東京の中小企業の活性化につながるものでなければなりません。海外に優秀な日本製品を売り込んでいくためには、誘致した企業の持つ海外販売網と東京の中小企業のものづくりを連動させることが重要であります。
 多くの外国企業には、日本でつくる商品のプロトタイプは間違いなく海外で高い評価を受けるとの認識があるといいます。特区制度を活用して、中小企業の海外販路の拡大を図るなどの活性策を具体的に展開すべきであります。都の見解を求めます。
 同様に、景気対策としてアジアのヘッドクオーター構想とともに重要なのが観光産業の活性化であります。都は国に先駆けて観光を成長産業としてとらえ、平成十三年に観光産業振興プランを策定し、以来、積極的な外国人旅行者誘致の取り組みを展開し、東京への外国人旅行者数を十年間で二倍以上に増加させました。
 しかし、昨年の東日本大震災以来、歴史的な円高なども加わって、観光客が減少しております。この状況を打開し、新たな観光需要を掘り起こすためには、外国人の目線で新たな魅力ある観光ルートの開発が不可欠であります。
 そこで、都は、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京招致を視野に入れて、外国人旅行者のニーズを的確に把握するとともに、外国人の目から見て魅力的な東京の観光資源を新たに発掘し、それを積極的に世界に向けて発信していくなど、外国人の視点を重視した戦略的な旅行者誘致策を展開すべきと考えます。都の見解を求めます。
 次に、高齢者を地域で支える仕組みづくりについて質問いたします。
 現在、第五期東京都高齢者保健福祉計画の策定が進められておりますが、先般取りまとめられた中間のまとめでは、在宅療養の推進及び認知症対策の総合的推進の二点が今後の重点事項として掲げられております。
 いうまでもなく、高齢者の多くは、医療や介護が必要になっても、住みなれた地域での生活を望んでおります。こうした在宅高齢者の療養生活を地域で支えるためには、医療機関、介護専門員、いわゆるケアマネジャー、介護サービス事業者等が連携して、一体的なサービス提供を行う必要があります。
 しかしながら、高齢者が安心して在宅療養ができる医療と介護の連携は、いまだ不十分であります。多忙な医療機関に対してなかなか気軽に相談できないというケアマネジャーの悩みは、いまだ改善されておりません。
 したがって、医師、看護師、介護職員等が互いの専門分野を理解し合い、意思疎通を図るなど、高齢者を中心とした顔の見える関係を構築するための具体的な取り組みを進めていく必要があります。
 そこで、都は改めて、在宅療養の推進のため、各専門分野間のコミュニケーションの核となる人材の育成を強化すべきと考えますが、都の見解を求めます。
 一方、現在、約三十三万人に上ると推計される認知症患者の医療と介護の両面にわたる支援の体制づくりも急務であります。認知症では、物忘れなど認知機能の低下や徘回だけでなく、肺炎など多様な症状への対応も必要であり、かかりつけ医やケアマネジャーなどのさまざまな支え手が密接に情報を共有する仕組みを構築せねばなりません。
 都は、高齢者保健福祉計画の中間まとめにおいて、認知症疾患医療センターを各二次保健医療圏ごとに一カ所整備を行い、地域の医療機関では対応が困難な認知症についての専門診断や、身体合併症を持つ患者の入院の受け入れのほか、地域における医療、介護連携の推進役とすると定めております。
 そこで、都は、ますます増大する認知症高齢者の地域生活を支える仕組みづくりを推進するとともに、現在、医学総合研究所で行っているアルツハイマー病DNAワクチン療法の実用化など、認知症の予防や治療法の開発を加速すべきであると考えますが、見解を求めたいと思います。
 次に、介護人材の確保と外国人介護士の活用について質問をいたします。
 高齢社会の進展で、介護や見守りの必要性が一層増加するのに対して、高齢者を支える労働可能人口は長期的に減少する傾向にあります。加えて、福祉、介護サービス分野では離職率が高く、厚労省は、平成三十七年には七十万人以上の介護職の不足が発生すると試算をしております。
 都は、平成二十年度から二十三年度までの四年間で八千四百人の介護人材を育成、確保していくことを目標に掲げ、そのために都福祉人材センターによる就労支援など、さまざまな取り組みを行っております。
 さらに都は、国に対して、介護施設で働く人材の定着、確保には施設経営の安定が重要であるとして、さらに介護従事者の処遇改善に直結する介護報酬の地域加算の見直しなどの提案を行い、今回の介護報酬改定に盛り込まれました。
 そこで、都は、今般の介護報酬改定の効果について検証するとともに、安定的に介護サービスを提供するための人材確保に向けて、さらに取り組みを強化すべきであると考えますが、これも見解を求めます。
 去る一月二十九日、インドネシアとのEPAに基づく外国人介護福祉士候補九十五名が三年間の実務経験を経て、初めて国家試験に挑戦をいたしました。日本人でも合格率は五〇%といわれており、当初、国は一回限りとしていた受験の機会を二回に広げたものの、不合格なら強制帰国という理不尽な姿勢を改めておりません。
 受験者は、母国において大学や専門学校を卒業し、看護師や介護士資格を持っており、過去に受け入れを実現した介護施設では、明るくて親身に接してくれる、勤勉などと評判も極めて良好であります。
 グローバル化が進行する中にあって、このような優秀な外国人の獲得に日本が消極的な姿勢を続けていては、今後、国際的に優秀な人材はすべて他の国々に奪われていくことになりかねません。これは、大幅な人口減少社会を迎える日本にとって大きな打撃となります。
 さらに、良質で多様な外国の人材を迎え入れる体制を整え、アジアの将来を担う優秀な人材の育成に貢献し、また、その人材を受け入れていくことも、国際都市東京の重要な役割であります。既に首都大学東京では、EPAで来日した看護師候補者に対する支援にも取り組み、一定の成果を上げていると聞いております。
 そこで、かつて東京が待機児童解消のために規制緩和を行って認証保育所を全国に先駆けて設立したように、EPAに基づく看護師、介護福祉士候補者に対して、都として大胆かつ先進的な支援を行うべきであると思いますが、見解を伺います。
 次に、がん対策について質問をいたします。
 現在の日本人は、二人に一人ががんになり、三人に一人ががんで亡くなるという、まさにがん大国であり、がんは、もはや国民病であるといっても決して過言ではありません。
 都は、平成二十年三月に、がん対策推進計画を策定し、今日まで、がん診療連携拠点病院や認定病院の整備、がん検診受診率の向上を初め、早期からの緩和ケアの実施、がん登録の拡大などに取り組んでまいりました。その結果、現在では、都内に三十四カ所の拠点病院、認定病院が整備され、最新の放射線治療や化学療法が行われるようになっております。
 その上で、さらに東京都は、いよいよ本年七月から地域がん登録を開始すると聞いております。がんの予防、検診、治療から緩和ケア、がん登録に至るまでの一貫した流れを構築し、都が総合的ながん対策に取り組んできたことを評価し、一連のこの対策をさらに進めることを強く求めたいと思います。
 そこで質問の第一は、地域がん登録についてであります。
 がん登録とは、個人情報を保護しながら、発生したがんの種類、進行度のほか、治療方法とその結果などを詳しく登録、分析して、がん対策に活用する仕組みであります。がん登録の推進により、がん治療の基本的データが充実していけば、がんのタイプや進行度に応じた治療法や治療の予後の対策など、より有効ながん対策を整えていくことが可能となります。
 地域がん登録の基礎となるデータは各医療機関からの患者情報であり、地域がん登録を推進するためには医療機関の協力が欠かせません。しかし、医療機関は、退院後のがん患者の状況調査を行う際、照会先の区市町村から住民票の照会を拒否されたり、照会費用を請求されたりするなど、情報収集に苦労しています。
 また、都単独のがん登録では、他県の医療機関を利用する都民や、都内の医療機関を利用する他県の患者のデータが漏れてしまうという課題があります。
 そこで、都は今後、地域がん登録を推進していく上で、このような課題を解消するための具体的な対策を講じるべきであります。
 また、都道府県を超えた患者情報を収集するため、全国統一のがん登録制度の構築を目指すべきであり、そのため東京都は国に対して法制化を強く訴えるべきと考えますが、都の見解を求めたいと思います。
 さらに、地域がん登録を進めるには、各医療機関において、医師だけでなく、登録票への記載など実務を担う職員の確保、育成が不可欠であり、これも見解を求めたいと思います。
 続いて、放射線治療の普及であります。
 先日、我が党は都立駒込病院を視察し、我が党の提案により新たに導入された放射線治療機器を視察し、国内で最高レベルの治療環境が整ったことを実感してまいりました。
 問題は、患者の医療費の負担であります。例えば、効果的ながん治療として重粒子線治療や陽子線治療がありますが、保険が適用されていないため、治療費は三百万円前後に上ります。
 そこで、駒込病院に新たに導入された放射線治療機器の機能とその効果を明らかにするとともに、費用についても保険適用が可能かどうか答弁をいただきたいと思います。
 あわせて、この最先端の放射線治療機器を多摩総合医療センターなど他の都立病院にも導入すべきでありますが、見解を伺いたいと思います。
 早期発見は最も効果的ながん対策であり、したがって、がん検診の受診率向上が何より重要であります。
 公明党は、受診率向上に向けて、その突破口を開こうと、乳がん、子宮頸がん検診の無料クーポン券の配布や、子宮頸がん予防ワクチンの公費助成の実現を全力で推進してまいりました。こうした取り組みの結果、子宮がん、乳がんの受診率は着実に上昇し、効果が明確にあらわれております。
 都は、がん対策推進計画に基づき、平成二十四年度末までに、がん検診受診率五〇%達成を目指していますが、目標達成に向けて、さらなる積極的な取り組みを求めたいと思います。
 個人への意識啓発とあわせ、検診事業の実施主体である区市町村や企業に対して、受診率向上を促すためのさらなる支援策を検討すべきであります。あわせて見解を求めます。
 この項の最後に、緩和ケアについて質問をいたします。
 日本においては、歴史的にモルヒネに代表される医療用麻薬に対する忌避感が強く、緩和ケアがおくれたといわれております。しかし、がん治療の現場からは、不必要な苦痛、痛みを取り除く緩和ケアを行うことによって、治癒率も生存率も高くなるとの報告があります。また、緩和ケアでモルヒネを使用して中毒になった例はないとも聞いております。したがって、緩和ケアは、がん治療の効果を拡大する可能性が極めて高いといえます。
 そこで、都は、医療用麻薬を有効に活用するよう医療機関に協力を求めるとともに、患者や家族、都民に周知を図るべきであります。緩和ケアにおける医療用麻薬の普及啓発について、具体的な都の対策を伺いたいと思います。
 次に、この三月にマスタープランの改定を予定する都の住宅政策について質問します。
 都はこれまで、都営住宅の総管理戸数を抑制してきた理由の一つとして、都内における民間住宅の増大を挙げてまいりました。しかし、都議会公明党の住宅政策プロジェクトチームの調査によると、平成二十年時点で、家賃三万円未満の都内の民間賃貸住宅は十万戸を超えるものと推定されております。
 これは一体何を意味するかといえば、これらの低廉な家賃の民間住宅のほとんどが、居住空間が極端に狭いか、あるいは老朽化、バリアフリー、安全性、快適性などの点で問題があるということにほかなりません。
 現に私も、エレベーターのない民間賃貸住宅に居住する高齢者が、さびついた急な階段を、日々、買い物や通院のために、はうようにして上りおりする光景を目にすることがたびたびあります。
 さらに、家賃七万円未満の都内の民間賃貸住宅は約八十四万戸と推定されています。七万円の家賃とは、都営住宅の収入上限、すなわち、政令で定める方法で算定した月収が十五万八千円未満の世帯にとって支払い可能な家賃の上限とされる額であります。民間住宅で七万円の家賃といえば、恐らく三DKに住むことは不可能であり、子ども二人の標準世帯の住宅としては全く不適切であります。
 つまり、都内において民間住宅の供給が需要を上回っているといっても、その実態は、劣悪な賃貸住宅が依然として数多く存在し、すべての都民に快適で安定した住居を提供できるという状況には、いまだほど遠いということであります。
 居住の安定こそがすべての行政サービスの基盤であり、ベースであると我々は考えています。かつて、国や自治体の住宅政策においては、低廉な家賃の住宅を供給するだけではなく、良質な公共住宅を供給することによって、民間の賃貸住宅の水準を向上させることも大きな政策目的となっていたはずであります。
 改めて、都の住宅政策の中で公共住宅の良質な水準を維持し、あわせて民間賃貸住宅の実態把握に努め、その水準の向上に努めるべきであると考えますが、都の見解を求めたいと思います。
 一方、この数年の毎回の都営住宅の募集では、世帯向けで約五万件、単身者向けとポイント募集では、それぞれ一万数千件ずつの申し込みがあります。抽せん倍率は三十倍から五十倍と高い一方で、当選後に収入面で失格する事例はほとんどありません。つまり、申込者の大半が、ほとんどが都営住宅に入居できる資格を有し、現に、その必要性に迫られながら、しかし、入居できない状態が何年も続いているということであります。
 高齢化や単身世帯化が進み、同時に、景気後退や雇用形態の変化による低所得化が深刻になっております。住宅セーフティーネットとしての都営住宅の必要性は高まる一方であり、少なくとも今後十数年間は同様の状況が続くと想定されます。その意味で、老朽化した都営住宅の建てかえに際しては、従前戸数の確保を図るとともに、新規募集を行うための増戸も必要に応じて行うべきであります。
 都は、当面の間、都民福祉に果たす都営住宅の役割を重視して、その柔軟な運用を図るべきと考えますが、見解を求めたいと思います。
 都はこれまで、低廉な費用で入居できる賃貸住宅の供給など、住まいに関する高齢者の負担を軽減するため、さまざまな施策を講じてきました。民間住宅における安心居住制度も、その一環であります。
 しかし、この制度の利用は、十年間で四百九十二件と伸び悩んでおります。その理由の一つは、入居時に支払う、本人死亡時のためのいわば準備金五十万円にあります。これは、入居者の万が一の場合に備え、葬儀費用や遺品の整理費用に充てるためのいわば保証金のようなものでありますが、この負担が利用を阻む原因であり、見直しが必要であります。
 利用を促進するためには、金額を低く抑え、同時に割賦払い制を導入する必要があります。高齢者の居住の安定のため、早急に検討すべきと考えますが、見解を求めます。
 住宅関係の最後に、住宅政策に取り組む体制整備について伺います。
 今回の改正素案では、民間賃貸住宅の空き家活用策としてのルームシェア用のリフォーム助成や、大都市特有の課題であるマンション問題に関しても、さまざまな取り組みを打ち出しました。これらの制度は我が党が求めてきたものであり、高く評価しますが、これらを実効性のある施策に高めていくためには相当の困難が伴います。
 したがって、重要なことは、都単独で取り組むのではなく、区市町村にも協力を呼びかけ、わかりやすく役割分担を説明して、協働で施策の構築と展開に取り組む体制を整えるべきであります。見解を求めます。
 いずれにしても、今後は都の住宅政策部門の強化が不可欠であります。改めて、近い将来の住宅局の復活など、体制の強化を求めたいと思いますが、都の見解を求めます。
 続いて、教育問題。
 都立高校生の中には、世界に目を向けて、広範な学習に意欲を持っている生徒がいる一方、いじめや不登校から立ち上がり、ぎりぎりの思いで通学している生徒など、さまざまな子どもたちが存在します。
 高校時代は人生の中で感受性の豊かな時期に当たり、この時期に経験したことは、その後の人生で大きな意味を持ちます。したがって、この時期の教育は重要であります。
 そこでまず、都の次世代のリーダー育成に関連して質問します。
 一般に、若者たちが内向き志向にあると指摘される中で、都が積極的に留学支援を行い、長期的な人材輩出を心がけていくと表明したことは高く評価します。そこで、その支援策の具体的な内容をまず明らかにすべきであります。また同時に、多くの生徒が世界に目を向け、留学の意義を自覚することも重要であります。
 そのためには、高校生や都民に留学の魅力と意義をわかりやすく、具体的に伝えるためのフォーラムを開催したり、海外留学経験をまとめた冊子を発行するなど、その成果を広く還元する必要があると思いますが、所見を伺いたいと思います。
 次に、チャレンジスクールの進路未決定の生徒への対応について質問をいたします。
 都教育委員会は、生徒の多様なニーズにこたえ、魅力ある学校づくりを進めるため、平成九年に都立高校改革推進計画を策定し、これまで総合学科高校やエンカレッジスクールの設置などを推進してまいりました。その中でも、我が党がその必要性を強調してきた、不登校や中途退学の生徒等を主に受け入れるチャレンジスクールは、入学者選抜の応募倍率が毎年高倍率になるなど、特に高い評価を得ています。一方で、進路が決まらないまま卒業する生徒も数多く存在すると指摘されております。
 先日、都教育委員会は、新たな都立高校改革推進計画を策定しましたが、チャレンジスクールの生徒に対して、学ぶことや働くことの意義を理解させ、卒業後の進路につなげていく教育が必要であると考えますが、これも見解を伺います。
 次に、盲ろう者支援について質問いたします。
 我が党が長年要望し、知事の英断で実現した東京都盲ろう者支援センターは、二〇〇九年五月の開設から、ことしで三年を迎えます。利用者も年々増加傾向となっており、センターの役割の重要性がうかがえます。
 都内には、およそ二千三百人の盲ろう者の方がおられると聞いておりますが、一方で、都の通訳介助者派遣事業に利用登録している人はわずか百人程度であり、音も光もない状況の中で、孤立した生活を送る盲ろう者が少なくないのが実態であります。
 以前、私が相談を受けた事例では、後天的に視覚と聴覚を失い、金融機関での職も失って、親ともコミュニケーションがとれず、長年、自宅の部屋に閉じこもったままというケースがありました。一人でも多くの人を支援センターにつなげるには、身近な窓口となる区市町村の対応が最も重要であります。荒川区では、区の職員と盲ろう者支援センターの職員がペアを組んで対象者を個別訪問し、生活相談を受けたり、生活状況を把握する事業を展開しています。
 このような支援の手が必要な人に届くよう、区市町村との連携を強化すべきと考えますが、都の見解を求めたいと思います。
 一方、アメリカには、盲ろう者のためのリハビリセンターとして、国立のヘレン・ケラー・ナショナルセンターがあり、対象者に応じた訓練が受けられます。みずからも盲ろう者である東京大学先端科学技術研究センターの福島智教授は、長期にわたってアメリカに滞在し、このヘレン・ケラー・センターに通い、アメリカにおける盲ろう者支援の取り組みについて調査研究されたと聞いております。その研究成果なども伺いながら、盲ろう者支援に一貫して取り組んできた我が党として、国に対して、日本版ヘレン・ケラー・センターの設置を強く働きかけていきたいと決意をしております。
 国に先行して取り組みを開始している東京都としても、国にナショナルセンターの設置を強く求めるべきと考えますが、都の見解を伺いたいと思います。
 次に、自転車政策について質問いたします。
 先般、東京都は、我が党の提案を受けて設置されました自転車総合政策検討委員会の報告書を公表いたしました。行政はもとより、自転車利用者や民間事業者の責任を明確にし、関係機関相互の連携体制を整備するなど、社会全体で自転車対策を推進するとの基本的な考え方は、我が党の主張に沿ったものであります。特に、利用者の責任を明確にするための防犯登録データの改善や、エリア内での走行空間のネットワーク化に向けた調整の仕組みを打ち出したことは高く評価いたします。
 防犯登録制度は、盗難被害の回復を目的として、自転車法で設けられた制度でありますが、自転車の適正な管理や安全な利用について、利用者の責任と自覚が求められている中にあっては、同制度を活用し、車両の所有者としての責任を問うべきであると考えます。
 そこで、都は、国に先駆けて自転車の所有関係を明確に反映できるよう、制度の改善を行うべきであります。見解を伺います。
 また、自転車走行空間の整備に当たっては、バス、タクシー、トラック業界など多様な業界の合意と協力が不可欠であります。これらの関係者や自転車利用者、また、保険業界なども加わった、新たな検討の仕組みを構築すべきであります。
 さらに、今回の報告書を単なる理念の宣言に終わらせず、実効ある施策につなげていかなくてはなりません。そのためにも、我が党が一貫して主張してきた東京都自転車条例の制定が必要と考えます。あわせて都の見解を求めます。
 最後に、暴力団排除条例について質問いたします。
 昨年十月、東京都が暴力団排除条例を施行したことにより、四十七都道府県すべてにこの条例が適用されることになりました。この条例は、企業や一般市民に、暴力団とはつき合わない、利益を提供しないということを強く求めております。
 そこで、当初から危惧されていたことは、追い詰められた暴力団関係者からの報復行為であります。報道によると、昨年十一月には、暴力団と関係を絶とうとした企業経営者がピストルで射殺される事件が発生、また、本年一月にも、建築会社の社長が銃撃される事件が起き、昨年からことしにかけて同様の事件が二十八件に上っているそうであります。しかも、犯人逮捕は二件のみで、証拠の乏しさが事件の解決の障害になっているといいます。
 暴力団排除条例の成否は、暴力団との関係を本気で絶とうとする企業や一般市民を警察力で安全に守り抜けるかどうかにかかっております。暴力団排除条例の本来の目的を達成するために、企業、一般市民の徹底した保護対策を実行すべきであります。警視総監の見解を伺い、私の代表質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔傍聴席にて発言する者あり〕

〇副議長(ともとし春久君) そこで騒いでいる人、ご静粛に願います。従わないときは退場を命じます。
   〔傍聴席にて発言する者あり〕

〇副議長(ともとし春久君) そこで騒いでいる人、退場を命じます。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 中嶋義雄議員の代表質問にお答えいたします。
 今後の財政運営についてでありますが、いかなる社会状況、経済状況にあっても、将来への展望を指し示し、なすべき施策を着実に展開していくことが行政を預かる者の責任であると思います。
 そのための土台は、いうまでもなく強固な財政力でありまして、都は、財政再建を達成した後も新しい公会計制度を駆使しながら、むだの排除を徹底してまいりました。
 今日の厳しい財政環境の中にあって、活用可能な基金残高を八千三百億確保することができたのも、こうした取り組みの成果であると思います。
 この先も都税収入の好転は期待しにくいですが、手綱を緩めることなく自己改革を推進することで、東京が直面する新たな課題にも的確に対応できる強固な財政基盤を堅持して、強い決意を持って都民の負託にこたえていきたいと思っております。
 また、既得権益を墨守しようとする霞が関の抵抗と、それをまた簡単に許してしまう国政のふがいなさも相まりまして、分権改革は遅々として進んでおりませんが、何よりも都民、国民のために、引き続き国に権限と財源の移譲を迫るとともに、法人事業税の暫定措置についても当初約したとおり確実な撤廃を求めてまいります。
 これ、政府は態度を決めたようですけれども、先般の全国知事会では、某県の知事が、財政多端なんで、東京からの収奪を続けてくれという、そういう動議をしたそうで、これは実にけしからぬ話でありまして、自治というものを尊重すべき知事が、自分で自分の首を絞めるみたいなばかなことが起こっているわけですが、これは絶対に皆さんの協力で阻止したいと思っております。
 次いで、災害廃棄物の広域処理についてでありますが、未曾有の大震災から間もなく一年が経過しますけれども、多量の瓦れきが被災地の復旧、復興を阻んでいる現状であります。
 都は、被災地を支援するために、岩手県宮古市と宮城県女川町の瓦れきを受け入れておりますが、都の動きを受けて埼玉県や静岡県などでも瓦れきの受け入れの取り組みが始まっていますが、まだまだこれは全国的な広がりには遠く及ばないと思います。
 大震災以降、原発事故の対応が後手に回りまして、放射能汚染の調査や情報開示がおくれ、国に対する信用が地に落ちた節がございますが、このことが広域処理の実現への大きな障害となっていることを国は深く自覚すべきだと私は思います。
 国は、瓦れき処理が被災地の復興のかぎであることを肝に銘じて、岩手、宮城両県についても、国みずからにその処理責任があることを明確にして、覚悟を決めて臨むべきだと思います。
 先ほど申しましたが、この緊急事態に対処する一種の戦いの最高司令官は総理大臣ですから、総理大臣がもうちょっとはっきりと各都道府県に瓦れきの処理について協力しろという号令を下すべきだと私は思います。
 これを忌避している県は、国から交付金をもらっているんですからね。つまりそういう立場というものを考慮しろということを総理大臣が強くいい切って、とにかく強制とはいいませんけれども、やっぱり国民全体の共感を得るような号令を私は下すべきだと思っております。
 都は、都内の区市町村や民間事業者とも力を合わせて、瓦れきの受け入れ処理を先頭に立って進めるとともに、これまで培ってきたノウハウを提供して、広域処理の促進に力を尽くしてまいりたいと思っております。
 次いで、大胆な手法による木密対策についてでありますが、私もたびたび現地を訪れ、自分の目で確かめましたが、木密地域というのは非常に人情が細やかで、独特の風情がありまして、震災のときの自助、共助、公助という、要するに共助、向こう三軒両隣の連帯というのが一番とりやすい、そういう雰囲気のある地域でありますけれども、同時に、これは震災に一番弱い構造を持っていて、非常に皮肉な存在でありますけれども、一方では、災害時は、とにかく木密地域は甚大な被害が出る、そういう構造になっています。
 首都東京の防災力を強化する上でも、最大の弱点となっているわけでありまして、この地域の改善を加速させていくには、強制力を持った事業手法の活用や、新しい建物の整備に民間の創意工夫を引き出して都市づくりに参加させることなど、これまでにない取り組みが必要だと思っております。
 今後も新たに創設する不燃化特区の制度で、助成の上乗せや都税の減免など、さまざまな施策を総動員して、都や区、民間が連携して、倒れず燃え広がらないまちを何とか実現していきたいと思っております。
 他の質問については、警視総監、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監樋口建史君登壇〕

〇警視総監(樋口建史君) 保護対策の取り組みについてお答えいたします。
 ご指摘のとおりでございまして、東京都暴力団排除条例を本当に実効のあるものにするためには、都民の方々や事業者等の保護対策に万全を期することが極めて重要であると考えております。
 警視庁の取り組みでありますけれども、条例の施行に合わせまして、本部の組織犯罪対策第三課という担当課がございますけれども、担当課に保護対策専門の係を設置いたしました。とともに、二百数十名になりますけれども、身辺警戒員を新たに指定いたしまして、実践的な訓練を重ねているところであります。
 また、必要があらば、状況によって機動隊につきましても活用することといたしております。その他、防犯カメラでありますとか資機材の整備につきましても、予算措置を図っているところであります。
 いずれにいたしましても、暴力団排除の活動に取り組んでいただいている方々が危害を加えられるといったことの決してないように、また、いかなる状況にも、いかなる不安の声にも的確に対処できるように万全を期してまいりたいと存じます。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、留学の魅力と効用のアピール、そして還元についてでございますが、留学した生徒が得た知識や経験は個人にとどめず、他の生徒や都民に広めていくことが重要でございます。
 そのため、帰国後、生徒には、在籍する学校で海外での学習の成果や体験を報告させるとともに、他国の生徒等との国際交流に関する取り組みの中心的役割を担わせます。
 さらに、留学した生徒による体験発表等を行うフォーラムの開催や、海外での生活や学習の様子等を掲載した冊子の作成、ウエブページの開設により、広く都民に事業の趣旨や成果、海外経験の有用性を発信してまいります。
 こうした取り組みによりまして、すべての都立高校生に海外への関心を持たせ、より高い目標に挑戦しようとする意欲を引き出すとともに、社会全体で若者の海外チャレンジを促進する機運を高めてまいります。
 次に、チャレンジスクールにおける進路実現のための教育についてでございますが、チャレンジスクールでは、学び直しのための基礎科目の設置や体験学習の重視など、生徒を学校に定着させる取り組みにより一定の成果を上げてまいりましたが、進路未決定者が卒業生全体の三割を超えているなどの課題もございます。
 このため、キャリア教育を通じて、生徒に将来への明確な目標を持たせ、その進路実現に向けて必要となる基礎学力の定着や、基本的な生活習慣の確立に向けた指導をより一層充実してまいります。
 さらに、今後、企業、大学、NPO等と連携し、生徒が体験的な学習を通じて社会や職業を実感できる教育プログラムを新たに開発、実施し、生徒の社会的、職業的自立に必要な力を育成してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、農業団体などと協力した被災地支援についてでありますが、都は、東日本大震災の被災地復興を応援するため、農業団体などと連携し、被災地の農畜産物を販売する応援キャンペーンなどを重ねて開催してまいりました。
 これらのイベントは、都が会場を提供するほか、共催団体も費用の負担を行っているもので、多くの都民の皆様が来場してお買い上げいただくことにより、被災地にも収益をもたらしております。
 来月も、九日に新宿駅西口広場において、都が農業団体などと共催する東京農業フェアの場の活用を予定しておりまして、今後も被災地の農林水産物を販売し、応援してまいります。
 次に、被災地の商品の販路開拓支援についてであります。
 被災地の企業がその商品を東京で販売しようとする際、営業の拠点を確保することは重要であります。
 都は、地方の企業が東京に営業拠点を設ける取り組みを支援するブリッジヘッド事業を活用いたしまして、被災地の企業に事務用の場所を貸し出しております。現在は、十二の区画に十一の被災地企業が入居しておりまして、来年度は区画を拡充いたしまして、最大で十八の企業の受け入れを予定しております。
 こうした取り組みにより、被災地の商品の販路拡大を効果的に支援してまいります。
 次に、空き店舗を活用した被災地支援についてでありますが、被災地の商品の販売を通じ、震災の被害を受けた地域を支援していくことは重要であります。
 このため、都では、被災地の商品の販売を行う意欲と力のある中小企業やNPO法人等が空き店舗を活用する場合、その取り組みに要する経費に対して支援を行っております。店舗の内装や借り上げ等に必要な費用の三分の二を助成し、開業時の資金負担などを減らしまして、円滑な販売活動をサポートしております。
 今後とも、こうした取り組みを適切に実施し、商品の販売を促進して、被災地の復興につなげてまいります。
 最後に、外国人旅行者の誘致についてでありますが、東京を訪れる外国人旅行者を増加させていくためには、外国人旅行者のニーズを的確に把握し、戦略的に誘致施策を進めていくことが重要であると、このように認識しております。
 そのため、都は来年度から、東京を訪れました外国人旅行者の行動特性について、国別を初めとして、きめ細かく把握するための調査を行うこととしております。
 あわせて、今年度に引き続きまして、海外の旅行事業者を東京に招聘し、実際の東京を肌で感じてもらうとともに、海外メディアの取材を支援するなど、外国人の視点を活用して東京の魅力や安全性を世界に発信してまいります。
 さらに、オリンピック・パラリンピック東京招致の機会も活用して、外国人旅行者の誘致に積極的に取り組んでまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、被災地への職員の派遣についてでございますが、都は、これまで延べ三万人を超える職員を派遣いたしまして、総力を挙げて被災地支援に取り組んでまいりました。
 震災後、およそ一年が経過し、被災地が支援を必要とする業務は、地域を支えるインフラの本格復旧、被災者の生活再建など、復興を見据えた取り組みへと移行してまいりました。
 これを受けまして、都の人的支援も、まちづくりの専門技術や行政経験を有する職員の中長期派遣にシフトをいたしまして、現在、約百五十名の職員が被災地で支援業務に携わっております。
 来年度につきましても、都は、現地事務所などを通じて被災地の状況を的確に把握するとともに、ニーズに即した職員を中長期で派遣し、被災自治体の業務の一翼を継続的に担うことで早期復興に貢献してまいります。
 次いで、福島県の除染活動への支援についてでございますが、都はこれまで、福島県の要請等を踏まえ、除染モデル事業など、除染対策を所管する部署に都職員を派遣するとともに、首都大学東京が福島県と共同して汚染土壌の回復等のための研究を実施するなど、必要な支援を行ってまいりました。
 ご指摘のように、除染活動には、汚染土壌の仮置き場の問題ですとか、モデル事業の検証結果に基づく効果的な除染方法の確立ですとか、除染作業に当たるマンパワーの確保など、非常に難しい課題が残されております。
 今後、都は、国等の対応の動向や福島県の意向等を十分に踏まえながら、関係局と連携いたしまして支援策を検討し、福島の復興を全力で後押ししてまいります。
 最後に、都の住宅政策部門の強化についてでございますが、都では、その時々の行政課題に応じて、常に効果的、効率的な執行体制の確保に努めてまいりました。
 都市整備局は、まちづくりと一体となった住宅政策を推進するため、平成十六年四月に関係部局を再編統合し設置されたものでありまして、その後も住宅担当理事の設置など、さらなる組織体制の強化を行ってきたところでございます。
 一方、今日の住宅行政では、防災対策の観点から、既存住宅の耐震化や木造住宅密集地域の整備促進など、多くの重要かつ困難な課題が山積いたしております。
 そのため、再編統合した局のメリットを最大限に生かしつつ、今後とも、直面する課題により迅速かつ的確に対応できるよう、事業の展開に合わせた組織のあり方を検証してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、災害廃棄物の受け入れの方針についてでございますが、都は、昨年五月に策定しました東京緊急対策二〇一一におきまして、被災地の災害廃棄物を三年間で五十万トン受け入れることを表明しております。
 発災直後から都の職員が被災地の岩手、宮城両県に繰り返し足を運びまして、どこからどのような廃棄物を受け入れできるか、地元市町村とともに調整を行ってまいりました。こうした積み重ねの上に、昨年十一月から岩手県宮古市の災害廃棄物の受け入れを始め、新たに現在、四月以降の受け入れ処理事業者の募集も行っております。
 また、宮城県女川町の災害廃棄物につきましては、これまで約二十回の住民説明会を行っておりまして、この三月から本格的な受け入れを始め、平成二十四年度末までに十万トンを受け入れます。
 五十万トンの受け入れを目指しました宮古市と女川町以外の災害廃棄物の処理につきましては、現在、岩手、宮城両県におきまして、対象地域と搬出量の検討を行っております。都は、都内処理施設の受け入れ基準に合った選別方法や運搬方法に関しまして、両県に赴きまして、速やかな受け入れが進むよう調整を行ってまいります。
 また、岩手、宮城両県のみならず、被災市町村とも協議を進め、また実際に処理を行う都内の区市町村や民間処理業者とも連携して災害廃棄物の処理を進め、被災地の復興を加速化してまいります。
 次に、災害廃棄物の輸送についてでございますが、輸送方法の決定に当たりましては、安全性、効率性、即応性などを比較しております。
 現在行っております鉄道コンテナ輸送は、被災地での積み込み後、都内受け入れ施設まで密閉した状態で運搬して安全性が確保でき、かつ被災地から夜間に搬出した場合、翌朝には都内に到着するなど、定時運行率も高く、効率的な輸送が可能でございます。また、既存のターミナル基地を直ちに使用できることから即応性もございます。
 船舶は大量輸送が可能というメリットがございますが、清掃工場に搬入可能な小型コンテナや、そのコンテナを運搬し、荷おろしできる車両の調達等の調整が必要でございます。
 今後とも、さまざまな状況を勘案しまして、複数の輸送手段の中から適切な輸送方法を選択してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、木密対策における地元自治体の執行体制についてでございますが、木密地域の整備改善は、地域のまちづくりや住民の生活に直結した課題であり、地元区の果たす役割が重要でございます。こうした役割を果たしていく上で、建てかえや生活再建の支援など、きめ細かく対応することが必要でございます。
 今回の木密地域不燃化十年プロジェクトの実施に当たり、区からはまちづくりのノウハウを持つ人材の育成や、執行体制の確保に関する意見や要望が寄せられており、都としてもそうした課題があると認識しております。
 今後、不燃化特区の制度構築に当たりましては、都の特別の支援策として、事業執行体制の確保などについても検討を進め、区と連携して木密地域の不燃化を推進してまいります。
 次に、民間賃貸住宅の水準向上等についてでございますが、都は、五年ごとに実施している住宅・土地統計調査により民間賃貸住宅の築年数、床面積等を把握しております。平成二十年に実施したこの調査によりますと、民間賃貸住宅は都内の住宅ストックの約四割を占め、都民の居住の場として大きな役割を担っており、その居住環境の向上は都民の豊かな住生活の実現に欠かせないものと認識しております。
 都はこれまでも、住生活の向上や質の高い住宅ストックの形成を図るため、長期優良住宅の普及促進や住宅リフォームに関する情報提供等を行ってまいりました。今後はこうした取り組みに加え、空き家改修工事に対する助成制度により民間賃貸住宅の活用を図るため、関係団体との協議の場を設け、意見交換や情報提供を行ってまいります。
 次に、都営住宅の運用についてでございますが、都営住宅については、これまで既存ストックの有効活用を図ってまいりました。また、公平な入居機会を確保するため、より困窮度の高い世帯が入居できるポイント方式による募集や、子育て世帯が優先的に入居できる募集を実施するなど、都営住宅の適切な供給や管理の適正化に努めてまいりました。
 今後、社会経済情勢が変化する中で、重要な役割を果たしている都営住宅につきましては、住宅セーフティーネットの中核としての機能を的確に果たせるよう取り組んでまいります。
 次に、安心居住制度の改善についてでございますが、高齢化の進展の中で、安心居住制度を利用しやすく改善していくことは重要であると考えております。
 このため、契約時に費用を一括して支払う従来の方式に加え、新たに保険制度を活用し、利用者の一時的な負担を軽減する月払い方式を導入することについて、事業主体である財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターとの協議を行っており、早期の実施を目指してまいります。
 今後も関係団体等との連携を図りながら、高齢者の一層の居住の安定確保に努めてまいります。
 最後に、住宅政策における区市町村との連携についてでございますが、高齢者の居住の安定確保や大都市特有の課題であるマンション問題等に取り組んでいくためには、都と区市町村の協力は不可欠なものと認識しております。
 このため、これまでも都は、区市町村の参画を得て、東京都地域住宅計画協議会を組織し、地域における住宅に対する多様な需要に応じた公的賃貸住宅や民間住宅の整備等に関する地域住宅計画を立案し、施策を実施してまいりました。
 このたびの住宅マスタープランの策定に当たっても、区市町村の意見を十分に聴取しており、その実現についても緊密な調整と連携を図り、住宅政策を総合的に展開してまいります。
   〔消防総監北村吉男君登壇〕

〇消防総監(北村吉男君) 地域防災力を総合的に向上させるための消防水利の整備などについてでありますが、震災時には木造住宅密集地域における初期消火活動が重要であり、特に消防車両が進入できない狭隘道路においては、地域住民が使いやすい消火用水を確保することが必要であると認識しております。
 このため、関係機関と連携し、狭隘道路における消火栓等の整備を促進するとともに、自主防災組織による取水が容易となるよう、ふたに改良を加えた防火水槽などを整備してまいります。
 また、これにあわせてモデル事業の検証結果を踏まえ、多様な消火用水を活用した軽可搬消防ポンプやスタンドパイプによる地域住民の実践的な初期消火訓練をより一層推進し、地域防災力の向上に努めてまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 三点の質問にお答えいたします。
 まず、外国企業誘致に当たっての外国人社員と家族の生活に係る取り組みについてでございますけれども、外国企業のトップが他国への拠点設置を決める際には、インフラの整備状況といったハードウエアの面だけでなくて、税制、金融などのビジネス支援や、外国人家族が安心して快適に暮らせる環境など、ソフトウエアの面も含めて総合的に判断するものという認識をしております。
 このため、東京は大気汚染のレベルが低く、高度な医療機関が集積し、治安もよいなど、アジアの他の都市と比べて優位性を有していることをより積極的にPRをしてまいります。
 また、今後、電気事業法に係る規制緩和等によって、高い防災対応力や自立分散型エネルギーを備えたオフィスビルの供給を促進するなど、安心して仕事ができる環境を提供し、あわせまして外国人家族の生活相談や各種手続の代行などをワンストップで行う生活コンシェルジュを民間との連携のもとに設置し、外国人家族の生活をサポートしていく計画でございます。
 さらに、公立学校において外国語で授業を受けられる教育環境の整備など、都みずからも積極的な対策を講じてまいります。
 こうしたハード、ソフトの両面にわたる多様な対策を戦略的に講じることで、東京が外国企業に選ばれる都市となるよう、総合特区の取り組みを推進してまいります。
 次に、総合特区による中小企業の活性化についてでございますが、高い経営ノウハウやグローバルに展開する販売網を持った外国企業を誘致することで、都内中小企業がこれらのすぐれた経営資源にめぐり会うチャンスが拡大するものというふうに考えておりまして、都が提案いたしましたアジアヘッドクオーター特区では、誘致した外国企業と高い技術力を誇る中小企業とのコラボレーションを促進し、新規需要や高い付加価値の創出を促すことを目指しているところでございます。
 このため、ビジネス支援をワンストップで行うコンシェルジュを設置し、企業マッチングや交流会等を行い、外国企業と国内企業との業務提携を促進させ、この提携によって生まれる技術、新製品開発に対しては、都としても財政支援を行い、東京の中小企業の活性化にもつなげてまいります。
 今後とも、さまざまな産業振興施策と連携を図りながら、特区制度活用して、都内中小企業の活性化につながる取り組みを推進してまいります。
 最後に、経済連携協定、いわゆるEPAに基づく看護師、介護福祉士候補者への支援についてでございますが、これまでEPAに基づく看護師及び介護福祉士候補者は約千三百人が来日しておりますが、国には合格までの十分な制度設計がなく、昨年までに行われた三回の看護師国家試験における合格率は数%と非常に低い状況となっております。
 これに対し、都は、平成二十二年六月に試験内容の見直しや受験回数の拡大等を国へ強く要望いたしまして、一部改善も図られてきたところでございます。さらに、都独自の取り組みとして、受け入れ施設に対する研修経費の支援を行ってまいりました。
 また、首都大学東京では、NPO法人が実施する国家試験対策学習会に協力し、昨年行われた看護師の国家試験では、全国の合格者十六名のうち、その受講者が七名、四割を占める実績を上げております。
 そこで、これらの取り組みを活用し、都は、まず国家試験の合格者をふやすために「二〇二〇年の東京」計画の中で、アジアの将来を担う人材の育成事業として位置づけ、介護福祉士候補者にも支援を拡大していく予定でございます。
 また、総合特区において外国企業を誘致するに当たり、外国企業社員や家族が安心して生活できる環境をつくるため、EPAで来日した看護や介護福祉の人材をベビーシッターなどの業務に従事する人材としても活用できるよう、国に対して在留資格の付与などに関する規制緩和を求めてまいります。
 友好的に我が国に人材を提供しようとするアジアの国々や、日本での就職を夢見て人生をかけて来日される若者の思いにこたえるため、今後、合格率の推移や規制緩和の状況などを踏まえながら、都として先駆的な取り組みも検討していく必要があるものというふうに考えております。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 九点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、在宅療養に係る人材の育成についてでございますが、これまで都は、病院から在宅療養への円滑な移行を図りますため、病院スタッフと在宅療養に従事するスタッフとの相互研修を実施いたしますほか、今年度からは新たに、地域における医療と介護の連携を強化するため、医師、看護師、介護従事者が合同で参画する症例検討やシンポジウム等を開始いたしました。
 また、介護支援専門員に対しまして、医師や看護師等と情報を共有し、適切なケアプランを作成できるよう、認知症や脳卒中等に係る医療的知識を習得するための研修を平成二十一年度から三年間行ってまいりました。
 第五期高齢者保健福祉計画の計画期間内におきましても、この研修事業に積極的に取り組み、平成二十六年度までの六年間で約二千八百人の在宅医療サポート介護支援専門員を養成いたしまして、すべての居宅介護支援事業所で医療と介護が連携をした適切なケアマネジメントができる体制を構築してまいります。
 今後とも、こうしたさまざまな取り組みを進めながら、在宅療養を支える人材を積極的に育成してまいります。
 次に、認知症対策についてでございますが、都は認知症高齢者の地域生活を支えるため、地域における医療と介護の連携の推進役となり、認知症の専門医療を提供する認知症疾患医療センターを今年度中に指定する予定でございます。
 また、医療、介護等関係者間の情報共有の仕組みづくりにつきましても、東京都認知症対策推進会議のもとに設置をいたしました認知症ケアパス部会で検討いたしておりまして、その結果を地域での取り組みを進める手引きとして、三月末までに取りまとめることにしております。
 来年度は、こうした今年度の成果のもとに、区市町村や医師会等関係機関、関係団体が認知症疾患医療センターと連携をして進めます地域における支援体制の仕組みづくりを、財政面も含め、積極的に支援をしてまいります。
 また、認知症の予防や治療法の開発につきましては、現在、医学総合研究所におきまして、認知症の原因となるたんぱく質を標的とした治療薬候補物質の特定を進めております。お話にありました安全性の高い非ウイルス性DNAワクチン療法につきましても実用化を目指しておりまして、既に特許申請を行い、今年度は臨床治験を米国内で行うための事前協議を米国の食品医薬品局と開始いたしております。
 来年度は、ワクチン療法の実用化に向けた臨床治験の正式申請を目指すなど、認知症の予防や治療法の研究開発を一層推進してまいります。
 次に、介護報酬改定の効果と人材の確保についてでございますが、都は昨年七月、質の高い介護サービスを提供するために、必要な人材を確保できるよう、大都市にふさわしい介護報酬のあり方について、国に緊急提言を行いました。
 今回の介護報酬の改定では、地域加算の区分見直しなど、都の提案の一部が反映されておりますが、今後とも、改定の事業者への影響や効果を的確に把握し、機会をとらえて国に提案要求をしてまいります。
 また、都は現在、新卒学生等に対する資格取得の支援や、有資格者の再就職支援研修等によりまして介護人材を育成いたしますとともに、事業者の採用を支援するため、大規模な就職説明会や地域での面接会等を行っておりまして、東京都福祉人材センターを通じて就職した方は、二十二年度までの三カ年で四千人を超えております。
 さらに、人材の定着を図りますため、介護従事者が介護福祉士資格を取得するための支援や、研修受講機会を確保するための代替職員派遣の支援も行っております。
 今後とも、関係機関と連携し、事業者が質の高い介護人材を確保できるよう支援してまいります。
 次に、地域がん登録についてでございますが、都は、予防から治療に至るがん対策全般の評価や企画立案に資するため、本年四月、都立駒込病院内に地域がん登録室を設置いたしまして、七月から地域がん登録を開始いたします。登録室では、医療機関から提出をされますがんに罹患した方の診断、治療情報を集約いたしますとともに、区市町村から生存状況に関する情報を収集し、照合して登録をいたします。
 これによりまして、地域がん登録に参加する医療機関には、がん患者の退院後の生存状況について情報を提供することが可能になります。また、他県の医療機関を受診しております都民の情報や、都内医療機関を受診している他県の患者情報につきましては、その取り扱いについて、近隣県と検討を進めているところでございます。
 今後、がん登録を一層推進していくためには、お話のように全国統一の制度が必要でございまして、都はこれまで、がん登録について、法律上明確に位置づけ、積極的に推進するよう国に提案要求を続けておりますが、今後とも法制化を国に強く要望してまいります。
 次に、地域がん登録に係る職員の育成等についてでございますが、都はこれまで、がん診療連携拠点病院及び東京都認定がん診療病院における院内がん登録実務者の育成を支援いたしておりまして、平成二十三年九月現在、国立がん研究センターが実施いたします研修修了者は百十六名となっております。
 地域がん登録を進めていくためには、こうした院内がん登録の取り組みを実施している病院に加えまして、さらに多くの医療機関の参画が必要となります。そのため、今月二十二日、がん診療を実施するすべての医療機関の実務者を対象に、登録票の記載方法などについての都独自の研修を実施いたしまして、約二百名が参加をいたしました。
 今後、事例演習なども加えた、より実践的な内容の研修を継続的に実施するなど、実務者の育成を推進し、地域がん登録の充実と精度向上を図ってまいります。
 次に、がん検診についてでございますが、都は、東京都がん対策推進計画に基づきまして、がん検診の受診率の向上に向け、さまざまな取り組みを進めてまいりました。都民に対しては、リーフレットやホームページを活用して、がん検診の意義や受診方法を普及啓発いたしますとともに、Tokyo健康ウオークなどのイベントを通じまして、検診の重要性を訴えてまいりました。
 また、がん検診の実施主体でございます区市町村に対しましては、都が提案いたしました個別の受診勧奨など効果的な受診率向上策に取り組む際に、包括補助事業を活用して支援してまいりました。
 また、職域におきましては、都独自にがん検診に積極的な企業をがん検診推進サポーターに認定し、従業員への受診勧奨や都民への普及啓発などの活動を支援してまいりました。こうした取り組みによりまして、胃がん、肺がん、大腸がん、子宮がん、乳がんのいずれにおきましても、検診受診率は計画策定時と比較して七%から一五%上昇いたしております。
 来年度は、中高年の自営業者をターゲットに、ラジオを活用した新たな取り組みを実施するなど、より一層効果的な普及啓発を行うとともに、区市町村や企業の取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、緩和ケアにおける医療用麻薬に関する普及啓発についてでございますが、がん患者の療養生活の質を高める上では、早期から緩和ケアを導入し、適切な疼痛管理を行うことが重要でございます。
 このため都は、がん診療連携拠点病院及び東京都認定がん診療病院におきまして、がん医療に携わるすべての医師を対象に、医療用麻薬を用いたがん性疼痛の治療法を含む緩和ケア研修を実施いたしておりまして、昨年十二月末現在で二千八百九十一名が研修を修了いたしております。
 今後、東京都在宅緩和ケア支援センターが実施する講演会におきまして、都民に対しても医療用麻薬の有効性や安全性など、正しい知識を提供いたしますとともに、来年度、都民向けパンフレットにも新たに盛り込むなど、その普及啓発に努めてまいります。
 次に、盲ろう者支援センターと区市町村との連携についてでございますが、都はこれまで、盲ろう者の社会参加が一層進みますよう、研修会や各種会議など、さまざまな機会をとらえ、区市町村に対して支援センターの活用を働きかけてまいりました。
 また、支援センターにおきましても、区市町村職員などに盲ろう者が使用するパソコンを初めとしたさまざまなコミュニケーション手段を体験する機会を提供するなど、普及啓発や事業の周知に努めており、区市町村では、お話の荒川区の取り組みのほか、盲ろう者の交流会を支援センターと共同して開催するなどの取り組みが行われております。
 本年四月には、都が主催いたしまして、福島教授による講演会も開催する予定でございまして、今後ともさまざまな機会を通じて区市町村に支援センターとの連携を働きかけてまいります。
 最後に、盲ろう者の支援に関する国への働きかけについてでございますが、都はこれまで、盲ろう者への支援策の充実について国に提案要求を行いますとともに、国が平成二十一年度に設置をいたしました盲ろう者支援に関する勉強会に支援センター職員とともに参加し、具体的な支援策の検討を行ってまいりました。
 この勉強会での検討結果をもとに、国は、平成二十二年度から盲ろう者の生活訓練等のためのモデル事業を実施しており、来年度は、その成果検証と本格的な事業化に向けての検討を行うことといたしております。
 米国では、国立のヘレン・ケラー・ナショナルセンターで、盲ろう者の個々の状態に合わせた多様な訓練が行われておりまして、都としても、国に対し、盲ろう者の支援策を一層充実するよう強く働きかけてまいります。
   〔病院経営本部長川澄俊文君登壇〕

〇病院経営本部長(川澄俊文君) 都立病院における放射線治療についてですが、駒込病院では、がん細胞に放射線を照射して治療する、いわゆるリニアックを三台活用して放射線治療を行ってまいりましたが、今回の改修工事において新たに三台の機器を導入し、機能強化を図ったところでございます。
 具体的には、頭部や頸部のがんにピンポイントで放射線を照射できるサイバーナイフのほか、がんの形状に合わせた照射技術とCTの技術を組み合わせた高精度な照射を行うことができる機器、さらには、呼吸に応じて揺れ動くがん細胞を追尾して照射する動体追尾機能を装備した機器を新たに導入いたしました。このうち一部の機器は、既に一月から稼働を開始しており、今年度内にはすべての機器が稼働する見込みでございます。
 これらの機器による治療は保険適用の対象でありまして、すべての機器がそろっているのは国内で駒込病院のみであることからも、効果的に活用することにより、がん患者の病態に応じた治療や身体的負担が少ない治療の一層の充実を目指してまいります。
 また、駒込病院に今回導入した機器による治療実績等も踏まえながら、多摩総合医療センターなど、他の都立病院における最先端の放射線治療について、研究、検討してまいります。
   〔青少年・治安対策本部長樋口眞人君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(樋口眞人君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、自転車の所有関係の明確化についてでありますが、自転車のルールやマナーの問題が社会的な関心を集める中、都が国に先駆けて、利用者が責任を持って自転車を管理、利用する環境を整えるため、自転車の所有関係を明確にすることは意義があると考えております。
 自転車の所有者の登録制度といたしましては、防犯登録制度がございますが、購入時に登録されましても、その後、住所の移転や自転車の譲渡、廃棄などに伴う変更登録が必ずしもなされていないのが実態でございます。
 このため、関係行政機関や防犯登録を行っている東京都自転車商防犯協力会とも連携して、防犯登録に自転車の所有関係をより正しく反映させるための方策について検討し、利用者の責任の明確化を図ってまいります。
 次に、自転車条例の制定等についてでありますが、自転車の安全利用に向けては、ルールやマナーの徹底、自転車走行空間の確保や、新たな条例による自転車の安全な利用環境の整備など、さまざまな取り組みが考えられますが、自転車は多くの都民が利用するものであり、その問題の解決に向けては、社会的な合意形成が不可欠であります。
 その上で、都民、民間事業者、行政が責任を分担し、関係機関相互の連携体制を整えるなど、社会全体で取り組みを進めていく必要がございます。
 このため、条例も含め、さまざまな自転車対策のあり方について、利用者はもとより、自転車関連業界やバス、タクシー、トラック等の運輸業界など、幅広い関係者による検討と合意形成の場を新たに設け、実効性ある自転車対策を進めてまいります。

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