平成二十四年東京都議会会議録第二号

   午後一時開議

〇議長(中村明彦君) これより本日の会議を開きます。

〇議長(中村明彦君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

〇議長(中村明彦君) これより質問に入ります。
 百二十二番山下太郎君。
   〔百二十二番山下太郎君登壇〕

〇百二十二番(山下太郎君) 私は、都議会民主党を代表いたしまして、都政の主要課題について、知事並びに関係局長に伺います。
 質問に入る前に、先日ご逝去なさった名誉都民松平康隆様のご冥福を心よりお祈りいたします。
 さて、都議会民主党が、我が民主党東京都連の対政府最重点要求に盛り込み、導入時から今日まで、あらゆる機会を通じて撤廃を求めてきた法人事業税の暫定措置については、さきの社会保障・税一体改革大綱において、撤廃に向けた方針が明記されました。しかしながら、今なお地方自治の原則をもわきまえない異論が残されており、私たちも撤廃が完全に実現するまで手綱を緩めることなく、国に対して引き続き取り組みを進めていくことを、まず表明させていただきます。
 では、都政運営、「二〇二〇年の東京」計画について伺います。
 人口減少、高齢化社会が進む我が国では、成熟社会への新たな対応を模索してきましたが、昨年の東日本大震災、原発事故の発生により、日本はますます重大な局面に立たされました。
 そこで国は、希望と誇りある日本を取り戻すため、日本再生の基本戦略を策定し、経済成長と財政健全化の両立した経済運営を実現するとともに、経済の土台の立て直しに取りかかることとなりました。
 一方、都においても、「十年後の東京」計画策定から五年が経過する中、都政環境の変化を踏まえた都市戦略「二〇二〇年の東京」計画を発表しました。
 今後、国内産業の活性化とともに、外国企業、研究機関を誘致し、アジア地域の一大国際拠点を目指して、その活力を取り込むことが重要であります。また、日本の中枢である首都東京が、災害時においても、行政や病院、そしてライフラインや物流、情報通信、銀行などの都市機能を維持し、それら業務の継続が可能となるように、関係機関とともに整備を進めていくことが、都民生活を守り、復旧、復興を促進し、投資を呼び込む大きな原動力になります。
 二〇二〇年、いかに東京が都民にとって望ましい安心・安全の持続可能な都市として機能し、それを実感し得るかが重要と考えますが、知事の所見を伺います。
 「二〇二〇年の東京」には、都市戦略を支える十二のプロジェクトがあります。こうした戦略の実現を目指すには、市区町村との連携が大変重要であります。
 緑あふれる都市東京の実現を目指した高井戸公園や練馬城址公園などの都市計画公園の整備は、地域のまちづくりに大きな影響を与えるもので、整備促進への要望が強いものや望ましいと考えるものなど、さまざまな意向があります。
 また、燃え広がらないまちを目指す木密地域不燃化十年プロジェクトでは、都の支援と各区の主体的な事業提案、住民などへの働きかけ、合意形成が整備進捗に欠かせないものとなります。
 都は、みずからの都市戦略と市区町村の取り組みを整合させ、東京のさらなる発展に取り組み、都民福祉の向上を実現すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、平成二十四年度予算案について伺います。
 未曾有の国難であった東日本大震災は、都政運営に大きな政策転換の機会を与えました。都民の意識も変化し、世論調査では、東京は災害に強い都市ではないと思うと述べる割合が約八割を占め、防災への要望が最も高くなりました。計画停電や夏期の電力逼迫の経験から、災害時に首都機能と東京の経済、都市機能を保持するため、いかにエネルギーを確保するかといった必要にも迫られています。
 一方で、これからのグローバル化を見据えて、東京をアジアヘッドクオーター特区、MICE拠点として発展させ、起業支援や次世代の人材育成を推進する戦略が求められています。
 平成二十四年度予算案は、東京、そして都民が安心・安全を着実に取り戻し、今後を展望する予算であるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 一方、平成二十四年度の都税収入は、海外経済の減速や円高の影響による企業収益の回復のおくれから、五年連続の減収となりました。今後も、景気動向から見ても、税収の好転は見込めない厳しい財政環境にあります。
 都政においては、団塊世代が高齢化するなど、福祉と保健分野の経費がふえる傾向にあります。主要施設の維持やインフラ整備といった投資的経費の増や、オリンピック招致も含めた中長期にわたる「二〇二〇年の東京」戦略もあり、今後の財源確保が大きな課題であります。それには、社会情勢の変化に対応した中長期的な財政運営の考え方を示していくことが必要ではないかと考えます。
 将来計画の推進と強固で弾力的な財政運営を目指して、税収見込みを検討し、次世代の福祉も考えたバランスのとれた起債と適正な基金活用などを考えていかなければなりません。
 東京において持続可能な安心・安全社会を実現するために、緊張感を持った方針に基づいた財政運営を行う必要があると考えますが、都の所見を伺います。
 次に、防災対策について伺います。
 戦後最大の人的被害をもたらした東日本大震災からの復旧、復興に取り組んでいる現在、首都東京で想定されている首都直下型地震が実際に発生し、被災することは、日本にとって最悪のシナリオであります。
 その首都直下型地震の地震動は、震源となる首都圏地下のプレートが従来の想定よりも浅いことが判明しました。都内において震度六強の揺れの範囲が広がるとともに、震度七の揺れが起こる危険が出ると考えられています。日本の中枢機能の被災、建物被害や人的被害、日本経済全体への損害が大きくなると懸念され、減災対策のさらなる推進が不可欠です。
 そこで、首都直下地震対策の推進について、知事の見解を伺います。
 また、東日本大震災によって、都内では約三百五十二万人の帰宅困難者が発生しました。当日は東京は停電せず、水道などライフラインも使用できる状況にありました。交通機関も当日夜半から運行を開始、帰宅支援や自治体による一時滞在支援が行われたため、混乱も翌日にはおさまりました。
 しかし、首都直下地震発生時には、火災や道路の寸断、交通、ライフラインの長期停止、人命の救援、救護、情報の途絶など、多くの被害が想定されます。帰宅困難者自身も、駅などにおける集団転倒や建物からの落下物など二次災害の危険が及ぶことから、社内などで一時待機し安全確保を行うことが望まれます。
 阪神・淡路大震災直後、倒壊家屋の下敷きになった人々の多くを救ったのは近隣住民でありました。いち早く救助活動を展開して、多くの人々のとうとい命が救われたことから、みずからの安全を確保した帰宅困難者が、災害時にそうした救助活動を行う事態があるのではないかと考えます。災害時の地域力を向上させる自助、共助そして公助を組み合わせた取り組みが重要です。
 今回の訓練も踏まえて、帰宅困難者対策に今後どう取り組むのでしょうか、知事の見解を伺います。
 都は、帰宅困難者対策条例案を提案しました。これに基づき、企業の協力を得て、帰宅困難者対策をさらに充実させる考えであります。
 しかし、三月十一日に多くの帰宅困難者を緊急に受け入れた事業所に対して、都から備蓄品補てんが行われたことはありません。
 また、都は広域自治体として、主体的な立場で総合的対策を講じることが求められていますが、市区町村や事業者間において、役割分担が明確になっておりません。一時滞在施設の指定はこれからです。災害弱者、外国人対策や避難時の安全確保の責任、補償といった環境整備も必要であります。
 国は、全国の大規模駅周辺の帰宅困難者対策を進めるため、規制緩和や補助金制度を通じて、備蓄倉庫や非常用発電設備の整備を促すとしています。都においても、利用者や通過者対策を推進するため、企業協力に対する物資供与や助成など、誘導策を講じる必要があります。
 多くの課題への具体的な対応が必要な中、都民、事業者に対策を義務づける条例を今制定することが、帰宅困難者対策の実効性を上げる最も有効な手段となるのでしょうか、都の見解を伺います。
 各区における帰宅困難者対策の取り組みも進んでいます。港区は、六本木や青山一丁目、台場などで駅周辺滞留者対策推進協議会を設置し、対策の実施をするとしています。豊島区は、一時滞在施設の例示や備蓄を進める帰宅困難者計画を策定しました。渋谷区も受け入れ施設を二十六カ所に拡充しました。
 一方で、各区が指定する小中学校などの避難所は、首都直下地震時には被災した区民向けとなっています。区部での避難所収容人数は避難者想定数に足りないことや、区において避難者と帰宅困難者が避難先で共存することは困難ではないかと考えていることから、区は、避難所に指定されていない公民施設を一時滞在施設として指定する考えです。
 しかし、帰宅困難者が、緊急時に都が設定した帰宅支援ステーションと避難所の違いを認識することは現実には困難で、今回避難したような避難所に向かう可能性があります。実際、帰宅困難者が避難所に来た場合、ある区では受け入れざるを得ないと述べています。
 都としては、災害時の検証から、一時滞在施設の指定のあり方や、都民や事業者などへの周知方法を検討、実施すべきであります。
 また、都議会民主党が行った防災アンケートによると、帰宅困難者対策は、広域にわたる都市型災害のため、都は市区から主体的な立場で対策を講じること、隣接区との調整などが求められています。
 そこで、都が一時滞在施設の指定推進や備蓄強化、九都県市間の協力、避難時の安全確保の責任、補償といった環境整備など、帰宅困難者対策により主体的に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。
 首都直下型地震による被害は日本経済全体への損害につながることから、東京駅周辺、新宿駅周辺、品川駅周辺など都内主要地域では、災害時に都市機能を維持し、早期復旧後に持続的な発展を図ることを目標として、まちの防災機能を高める活動や災害時における協力体制づくりを行っています。
 二月三日、震災における帰宅困難者の大量発生を踏まえるとともに、首都直下地震に備えて、東京駅周辺、新宿駅周辺、池袋駅周辺の事業者協議会が、都や地元区と連携して帰宅困難者対策訓練を行いました。新宿駅周辺では、地域関係者が連携して、混乱防止のための情報収集伝達と避難誘導訓練を行うとともに、高層ビル街において大量の傷病者が発生したことを想定した応急救護やトリアージ、搬送訓練を行いました。
 災害への対処のため、平常時から官民の連携と協働の取り組みを推進し、地域全体としての業務継続計画を策定する取り組みが進んでいます。都は、こうした主要ターミナル駅を初めとした地域の防災組織が行う帰宅困難者対策の取り組みを支援していくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、津波対策について伺います。
 東日本大震災における想定を大きく上回った津波により、被災地以外の沿岸地での津波等の水害軽減対策が課題となっています。東京湾沿岸地域には都市機能が集積しているため、都は、津波低減効果がある防潮堤や水門などの耐震、耐水化を進めています。
 東京都防災会議地震部会の被害想定の見直しでは、元禄関東地震による津波のシミュレーションは、堤防は機能するが水門は機能しない最悪の場合を想定しています。
 昨年十一月、江東区においては、区民の安心のため、企業と津波等の水害時安心協定を結び、一時避難施設の提供を受けることとなりました。区はこれからの企業と帰宅困難者支援の協定も結んでいます。
 津波避難ビル、マンションなどの指定に当たって、課題は夜間、休日の対応や避難者の安全管理、指定後の管理費用、防犯性、プライバシー確保などです。
 東京都は、安全な津波避難ビル、マンションなどの指定に向けた支援を初め、東京湾沿岸地域における津波等の減災対策に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。
 島しょ地域の地震津波対策も再構築が必要です。
 都は、海岸保全施設や港湾漁港施設の浸水対策に加えて、関東地震の津波第一波到着までに避難が困難な大島岡田港に津波タワーを整備していくとしています。また、国においても新たな津波の被害想定が行われ、都は浸水域を見直した新たなハザードマップ基本図を策定します。これによって各町村は避難体制の確保を行います。
 大島町では、三原山噴火、全島民避難から二十五年を経過し、高齢化に対応した自主防災組織の再構築や、防災無線受信機の検討、避難場所の再編などが課題となっています。避難施設や避難経路の確保、定期航路の不能に対する対策も必要です。
 新たなハザードマップや周辺環境の点検を踏まえた避難とともに備蓄を充実するなど、都民が生き延びる施策が重要です。だれがどう逃げ、そしてどう生き残るかといった地震津波対策を地域全体で取り組む必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、消防力の強化について伺います。
 東京消防庁は、一般的な災害に出場するポンプ隊に加え、複雑な救助に対処する専門の教育を受けた特別救助隊が二十三隊、さらに、大地震を初め、建物の倒壊や土砂崩れなどの大規模な災害に対処する消防救急機動部隊、ハイパーレスキューが四隊設置されています。その他、水難救助隊六隊、山岳救助隊が四隊、日々都民の人命救助に当たっています。また、昨年の東日本大震災には、消防救助機動部隊を中心とした部隊を派遣し、緊急消防援助隊として消火及び人命救助活動を行っていたことは、まだ記憶に新しいところであります。
 この東日本大震災の経験を踏まえて、東京都防災対応指針では、より一層の発災時の災害能力の向上、首都東京の消防力の徹底強化を求めています。
 平成二十四年度予算では、五番目の消防救助機動部隊の設置や、ヘリコプターの配置等、東京消防庁の体制強化が盛り込まれておりますが、今後、都民、国民の期待にどのようにこたえていかれようとお考えか、所見を伺います。
 次に、地域防災力の向上政策について伺います。
 震災時、木造住宅密集地域などにおいて、火災の延焼拡大防止を図るには、地域住民等による初期消火活動が迅速に行えることが必要であり、そのためには、実効性のある体制を整えていくことが必要であります。
 東京消防庁では、こうした体制の確保に向け、小規模な地域コミュニティを単位とした実施方法に工夫を凝らした訓練の実施や、使いやすい消火資器材と水利を活用した市民による活動を、世田谷区と杉並区の二カ所でモデル事業として実施し、検証しているところであります。私は、こうしたモデル地区での検証を踏まえ、積極的に地域防災力の向上を図っていくべきだと考えます。
 また、モデル事業の中では、木造住宅密集地域の消防水利の確保策として、震災時多機能型深層無限水利、深井戸の整備も行い、その効果を検証するとのことでありますが、木造住宅密集地域の防火対策の一つとしても大変貴重な取り組みであります。
 東京消防庁では、こうしたモデル地区の検証を踏まえ、この取り組みを都内全体に拡大するなど、積極的に取り組んでいくべきと考えます。
 そこで、モデル事業における取り組みとそのねらいについて見解を伺います。
 次に、東京湾及び周辺河川における放射性物質対策について伺います。
 東京都内の河川には、国が管理する江戸川や荒川などの河川と、都が管理する隅田川や旧江戸川など、合わせて百七の河川が流れています。
 既に各種調査でも明らかなように、江戸川と荒川の河口付近で高いレベルの放射性セシウムが検出されています。ことし一月十五日の報道番組では、そのメカニズムとして、淡水と海水とがまざり合う際の凝集という状態が影響していること、それがゆっくり移動して、東京湾のセシウムが最大になるのは二年二カ月後であること、東京湾の汚染は十年以上続くことなどが指摘されました。
 こうしたことから、放射性物質が東京湾に流れ込み拡散しないよう、しゅんせつや除染等の対策や役割分担など、あらかじめ検討、協議するなどして、国のガイドラインが示された段階で速やかに対策が実施できるよう、東京都としても積極的、主体的に取り組んでいくことが求められます。
 都議会民主党は、政府に対して要望書を提出し、都内河川におけるモニタリングの実施など、積極的な対応を求めてまいりましたが、都は今後どのように対応していくのか、見解を伺います。
 次に、エネルギー政策について伺います。
 東日本大震災直後の計画停電では、医療機関等の人の命にかかわる施設やライフライン施設の機能に大きな影響が生じ、事業継続に支障を来すケースが発生しました。
 一方、高効率に発電を行い、街区内に電力を供給する特定電気事業者の取り組みが注目されましたが、このような自立分散型エネルギーを持っている施設はまだまだ限られています。
 首都直下地震等が発生したときに、都民生活を守り、都市機能を維持するとともに、できる限り低炭素な自立分散型エネルギーの確保を進めていく必要があります。このような自立分散型エネルギーの確保に向けた今後の取り組みについて所見を伺います。
 都は、キャップ・アンド・トレード制度や太陽光発電など、家庭でつくるエネルギー、創エネルギー機器導入支援などにより、再生可能エネルギーの普及を促進していますが、私たちは、東日本大震災を踏まえた低炭素分散型のエネルギー確保という観点から、再生可能エネルギーのさらなる普及に取り組む必要があると考えます。
 再生エネルギー利用の普及拡大に向けた今後の取り組みについて所見を伺います。
 都は、建築物環境計画書制度やキャップ・アンド・トレード制度、マンション環境性能表示制度等により、建築物の省エネ化を推進するとともに、地域におけるエネルギーの有効活用に関する計画制度により、地域冷暖房のエネルギー効率の向上などを進めています。その結果、東京には、先端的な省エネ技術を取り入れた低炭素型のビルなどが多く建設されるようになってきています。
 しかし、排熱を最大限に利用するコージェネレーションシステムによる地域への効率的なエネルギー供給は十分には進んでいないのが現状です。また、エネルギー需給の両面から最適制御を図る仕組みの構築など課題となっています。さらには、清掃工場等の排熱等の未利用エネルギーも多くあります。
 こうした状況を踏まえ、都市づくりでの面的エネルギー利用の最適化に向けた今後の取り組みについて所見を伺います。
 昨年夏に懸念された電力不足に対処するため、都は、昨年五月に東京都電力対策緊急プログラムを策定しました。このプログラムに基づき各種取り組みを進めた結果、都内の事業所や都民の皆様のご協力のもと、また、電力会社の電力供給力の積み上げ努力や、機動的な電力融通等の対応もあり、計画停電や需給逼迫による停電を回避することができました。
 東京都自身も、民間の取り組みを牽引する率先行動として、都の施設において照明の間引きやエレベーターの二分の一休止などの対策や、出勤時間の分散化、いわゆるサマータイムなども実施しました。昨年夏の節電の経験は、だれもが体験したことのない大きなものであります。昨年限りで終わらせることなく、これを分析し今後に生かしていくことこそ、あの夏を経験した者の責務であると考えます。
 そこで改めて、都関連施設における節電の取り組みをどのように今後生かしていくのか、所見を伺います。
 現在の電力の供給状況では、ことしの夏も再びピーク電力不足が懸念されます。計画停電や電力の使用制限を回避するためにも、生活や業務などに支障を来すことのない、無理のない範囲での合理的な節電とさらなる省エネルギー化を推進していく必要があると考えますが、今後の取り組みについて所見を伺います。
 次に、産業振興について伺います。
 昨年十二月二十二日、東京都が申請していたアジアヘッドクオーター特区において、国からの指定の決定がありました。
 この間、東京都の評価が極めて低いと伺い、都議会民主党としてもさまざまなルートを通じて政府に働きかけてまいりました。今回の決定に安堵することなく、さらに気を引き締めて、国と協議しながら計画策定や規制緩和を進めるとともに、減税を初めとする都独自の取り組みを果断に実施し、目標である五年間で五百以上の外国企業の誘致に積極的に取り組んでいかなければなりません。
 そして私は、外国企業の誘致というのは、五年間という目標の中にあっても、新たな雇用の創出や経済活力の向上という面で、いかに早く成果が出せるかといった視点も極めて重要だと考えています。総合特区を活用した外国企業の誘致に向けた取り組みについて見解を伺います。
 次に、多摩シリコンバレーの振興について伺います。
 平成二十二年六月の代表質問で、研究開発機能の強化も含めた多摩シリコンバレーの取り組みを強く求めるなど、この間、機会あるごとに多摩の振興策を私どもは求めてまいりました。
 しかし、区部においてはアジアヘッドクオーター特区の指定を初め、未来に希望の持てる施策が打ち出されていますが、多摩地域の産業振興にもより一層の力を入れていくべきだと考えています。
 来年度予算では、多摩シリコンバレー形成の核となる半導体・電子デバイス、計測・分析器、ロボットといった分野の産業振興を図るため、産学公金のネットワークから生まれる共同開発や販路開拓などを支援し、中小企業の新事業創出を促進することとしていますが、多摩シリコンバレーの振興に向けて具体的にどのように取り組む考えであるのか、見解を伺います。
 次に、ものづくり産業の振興についてであります。
 現在、全国各地で産業の空洞化に対する危機意識が高まっており、これまでの地域の雇用確保に向けた工場誘致にとどまることなく、空洞化対策として、産業立地を目的として補助金や優遇措置を打ち出すような事例も出ています。
 実際に、自動車産業を中心にものづくり工場が数多く集まる中部地域では、空洞化対策として、立地補助金や研究開発の助成にかなりの思い切った多額の予算を計上する自治体もあると聞いています。
 都内でも、円高などによる採算の悪化から大規模な自動車工場が閉鎖されることとなり、従業員の雇用問題だけではなく、自動車部品の製造を支える周辺中小企業への発注がなくなって、その集積が崩れ去るのではないかとの懸念が強くなっています。区部のまち工場に限らず、多摩地域においても、ものづくりを担う中小企業の集積をどう確保していくのかが、今後は大きな課題になるものと考えます。東京のものづくり産業が空洞化することなく、将来に向けて確実に発展していくためには、やはり都内の中小の製造業の集積をしっかりと守り抜いていくことこそが必要であると考えます。
 そこで、都は産業空洞化への対策として、中小の工場集積の確保に向けてどのように対応していくのか、見解を伺います。
 次に、中小企業に対する金融支援策について伺います。
 都議会民主党は、昨年二月の代表質問などにおいて、中小企業に対する金融支援でも、環境や観光、健康や福祉といった成長産業を育成するという視点、あるいは海外販路を拡大していくといった視点も求められていると述べてまいりました。
 しかし、東京都の平成二十四年度の予算は、制度融資の目標額を過去最高と同額の二兆二千億円としていますが、内容的には戦略的なものが感じられません。
 例えば、福岡県では、海外にビジネス展開した中小企業の現地での資金調達を促進するため、現地金融機関の融資に対し国内金融機関が保証する、現地借入保証型のアジアビジネス展開支援資金制度を実施しています。また、大阪府では、金融機関がそれぞれの特徴や得意分野を生かし、商品設計したものを府と連携して支援する金融機関提案型融資を実施し、ものづくり、海外展開、地域活性化、地域医療・福祉、開業支援などの分野を対象として融資を実施しております。このように、各自治体においては、セーフティーネットワークにとどまらない未来志向の金融支援策が始まっています。
 私は、東京都としても、成長産業の振興や海外展開支援という観点から、今後、中小企業に対する金融支援策のあり方について検討していくべきだと考えます。
 東京都は、中小企業に対する金融支援について、今後どのように対応していこうとお考えなのか、見解を伺います。
 また、地域の金融機関と連携した新たな金融支援策について、二十四年度予算案では、融資規模を六百億円から四百億円に引き下げています。十二月十四日、金融庁が金融円滑化法の一年に限った再延長を発表したこともあり、二十四年度中に融資規模が大きく伸びることは想定されませんが、せっかくの金融支援策であるにもかかわらず、取扱金融機関が制度融資の四分の一程度にとどまっています。
 私は、取扱金融機関の拡大や信用保証料の引き下げなど、地域の金融機関と連携した新たな金融支援策について、中小企業にとってさらに利用しやすい制度となるよう取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、築地市場の移転問題について伺います。
 二月七日、築地市場のある地元中央区と東京都が、築地のまちづくりに関する合意を交わしました。
 私たち都議会民主党は、関係者の合意がない中で築地市場の移転を強引に進めることは反対であると主張してまいりました。その意味から、今回の中央区との合意については、関係者のご努力を多とするものであります。
 さらに、今回の合意を受けて、築地地区には鮮魚マーケットのような食文化の拠点となる施設が建設され、築地市場内の勝どき門駐車場の活用なども含めて、これまでのにぎわいを途絶えさせることなく、食文化の拠点としての継承が図られなければなりません。
 合意書では、平成二十四年度中に都区検討会を設置する等、早期に検討に着手するとありますけれども、築地のにぎわいをいっときたりとも途絶えさせないためには、市場関係者との協議や施設の整備など、早急な取り組みが求められております。
 そこで、都区検討会における課題やスケジュールなどを含め、築地地区において食文化の拠点を継承していく上での今後の取り組みについて見解を伺います。
 また、現在地再整備を機関決定し、豊洲移転に反対の立場をとっていた水産仲卸業者、東卸についても、同じく二月七日、理事長名で、新市場に対する取り組みについてといった方針が報告されました。その第一に、今後、豊洲新市場整備計画に対しては、組合の責任において、東京都及び関係団体との協議に積極的に取り組んでいくことが掲げられております。
 先日、東卸の理事長から直接そのお考えを我が会派は伺いましたけれども、この方針は、東卸が一致団結しなければならないという理事長の思いから打ち出されたものだと感じました。
 そこで、東京都としても、今回の東卸組合の方針を踏まえ、築地地区での食文化の拠点継承という選択肢も視野に入れながら、支援のあり方について、東卸と真摯に協議していくべきと考えますが、見解を伺います。
 さて、豊洲の土壌汚染問題について、私たちは昨年九月の代表質問でも、土壌汚染対策工事の途中経過を報告することや、その検証作業を市場関係者や学識経験者等で構成する協議会とともに実施することなどを求めてまいりました。
 これに対して東京都は、工事の最終段階には処理結果について技術会議に報告することや、対策後の二年間の地下水モニタリングなどを対象に、情報の共有化等を図るなどと答えていますが、都民や市場関係者の理解と安心を得るためにはまだまだ不十分であります。少なくとも、工事の最終段階や土壌汚染対策後などではなく、施工計画の策定や工事の作業状況など、もっと早い段階から市場関係者を含めた協議会を設置し、その取り組みが検証、確認できる体制を構築すべきであります。
 東京都が今まさに進めている土壌汚染対策工事の状況等を広く共有していくことこそが、食の安心・安全に対する都民や市場関係者の理解につながると思いますが、見解を伺います。
 次に、雇用対策について伺います。
 二月二十日、総務省が発表した二〇一一年における労働力調査の速報結果によれば、十五歳から二十四歳の若年層における完全失業率は九・八%と、昨年より改善されているとはいえ、他の年齢層と比べても極めて高い水準にあります。
 私たちは、昨年十二月の代表質問など、機会あるごとに未就職卒業者緊急就職サポート事業の拡大を求めてまいりました。二十四年度予算案では、当事業の規模拡大や、環境や健康など今後成長が見込まれる産業分野における就業支援を新たに実施することなどが盛り込まれています。
 私は、これら事業を積極的に進めることで、若年者の就業対策、とりわけ正社員化が進むことを大いに期待するものでありますが、若年者の就業対策に向けた取り組みについて見解を伺います。
 次に、シルバーハローワークについて伺います。
 昨年十二月二十二日に発表された「二〇二〇年の東京」では、東京しごとセンターの機能を拡充し、高齢者専門の就業支援窓口として、東京都版シルバーハローワークを創設することが打ち出されています。そして、その年次計画では、二十四年度、二十五年度に検討、準備を行い、二十六年度には開設する予定となっています。
 しかし、既に東京しごとセンターの中に、五十五歳以上を対象としたシニアコーナーがあり、都内十五カ所には市区町村が設置するアクティブシニア就業支援センターがあります。
 その昔東京都には、しごとセンターの前身であるシニアワーク東京の高年齢者就業センターを初め、都内各所に高年齢者就業相談所がありましたが、平成十四年度以降、当時の高齢化社会の到来や年金制度改革、地方分権などの流れを受けて、市区町村が主体的に就業支援を行えるように枠組みを変えてまいりました。この流れから、地域での就業支援策を支援、強化していく方が、これからの高齢者の就業支援のあり方としては望ましいのではないかと考えています。
 そこで、東京都版シルバーハローワークを創設する意義、問題意識について見解を伺います。
 次に、東京しごとセンター多摩の移転整備について伺います。
 「二〇二〇年の東京」では、東京しごとセンター多摩の移転整備が新たに打ち出され、多摩地域における就業支援機能を強化するため、東京しごとセンター多摩の移転に着手することが明記されました。
 施設規模の拡大にあわせて、就業支援の機能が強化されるのは望ましいことではありますが、一方で、労働相談機能については、国分寺の労働相談情報センターを立川に移転するのにあわせ、八王子の労働相談情報センターを廃止、統合するとも伺っています。
 現在の厳しい雇用情勢の中で、解雇や賃金不払いなどの相談を身近な場所でできることは労働者にとっても心強い限りであり、仮に統廃合によって多摩地域の労働相談機能が後退するようなことがあれば、断じて容認することはできません。
 そこで、今回の東京しごとセンター多摩の移転整備について、多摩地域にどのようなメリットをもたらすのか、労働相談機能も含めた基本的な考え方や移転のスケジュールなどについて見解を伺います。
 次に、多摩・島しょ地域の振興と将来像について伺います。
 多摩地域は、都全体の半分以上の面積、一千百六十平方キロメートルに四百万人を超える人口と、それぞれの特色や地域事情を抱える三十の自治体があります。そして、この三十の市町村がこれまで独自の自治体経営を進めてきており、広域的な課題に対しては一部事務組合等によって対応してきました。
 しかし、十年後、二十年後の多摩地域を展望すると、全国的な人口減少、高齢化の進展の中で確実に人口減少期を迎え、財政的にも厳しくなることは避けられません。
 現在、都では、多摩振興プロジェクトによる六十の事業を実施し、広域的な多摩振興に取り組んでいるところでありますけれども、多摩地域の各自治体は、急速な高齢化や生産年齢人口の減少に伴い生じる新たな課題にも対応していかなければなりません。これまで以上に積極的な市町村の連携や協力体制が必要になると思われます。
 こうした時代に向けて、圏央道や多摩南北道路を初めとする道路ネットワークの整備を初め、産業支援、森林再生や災害対策等々、多岐にわたる多摩地域振興策に取り組んでいかなければなりません。隣接する県を含む各自治体の広域的な連携や官民協働が不可欠なものとなります。
 新たな時代を迎え、都のさまざまな事業を進める上では、多摩地域の将来に向けたトータルビジョンを明確にすべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、多摩の振興とスポーツ祭東京二〇一三について伺います。
 昨年九月の一般質問において、我が会派のたきぐち学議員が、スポーツ祭東京二〇一三に関連し、主な来場者が選手と関係者だけという状況から脱するために、会場となる六十を超える自治体と連携して、観光要素を付加した複合的なスポーツツーリズムとして集客モデルをつくり出していくべきだと主張してまいりました。
 多摩地域でかつて実施されたTAMAらいふ21とそれに伴うレガシー事業があったように、スポーツ祭東京二〇一三においても、開催機運の上昇に向けたさまざまなスポーツイベントや大会の開催が、多摩地域の振興にもつながっていくと考えています。
 多摩の地域振興のためにも、都はスポーツ祭東京二〇一三の開催機運の醸成に向けてどう取り組んでいくのか、見解を伺います。
 次に、森林の保全について伺います。
 平成二十二年の夏ごろから、埼玉や山梨、長野、岡山県などの全国各地の水源に近い山林において、中国などの外国資本が買収の打診をしているということが明らかになりました。
 都議会民主党では、平成二十二年九月に政府に対して、水資源確保の観点から、国内水源林が外国籍を有する者の所有地にならないよう、法整備を進めることなどを求める申し入れを行い、また、同年十二月都議会においても、我が会派の尾崎大介議員が、森林を含めた国土を売買する際の制限について国に求めていくことや、東京都が率先して対策を立てていくべき旨の質問を行っていました。
 この質問に対して石原知事は、本来、国土資源の保全については国が対応すべきことと述べ、都は、森林に関する情報を十分に把握するとともに、関係各局が連携しながら保全に取り組むとの答弁にとどまりました。
 国においては、昨年四月森林法を改正し、新たな森林の土地所有者となった者に届け出義務を課したところであります。
 一方で、森林に限っていえば、埼玉県では土地取引の事前届け出制を柱とする水源地域保全条例案を二月二十日に県議会に提案したところであり、北海道でも、同趣旨の制度を盛り込んだ水資源保全条例の提案に向けて取り組んでいるところであります。
 このような中、東京都としても、より一歩踏み込んで森林の保全に向けて、条例制定を含め対策を強化すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、小笠原諸島の生態系保護対策について伺います。
 海洋島である小笠原諸島には、限られた種群を起源として独自の進化を遂げた多くの希少固有種群とその生息、生育地、また、島ごとに独自の発展を遂げた生態系、加えて豊かな海洋生物や亜熱帯性の海鳥の繁殖地等であり、適切に保全を図るとともに、必要な再生を図る必要があります。
 小笠原諸島の世界自然遺産登録が認められましたが、生態系を脅かす外来種対策が十分な成果を上げなければ、危機遺産になるばかりか、遺産登録が取り消される事態になりかねないと地元の方々も危惧されております。
 東京都では、外来種対策として、現在は観光客の水際での対策を実施していますが、観光客が五割強も増加し、大型客船の寄港も多く予定されている中、具体的にどのような対策をとられていくのか、所見を伺います。
 また、これまでの例では、国は世界遺産登録後、拠点となる遺産センターを整備してまいりました。環境省の回答では、小笠原の遺産センターについては、施設内容や運営方針も含めてこれから検討するとのことでありますが、遺産センターに野生鳥獣の保護施設や獣医療ができる設備を整備することとともに、獣医師が常駐できるよう、都として計画作成や運営に携わり、調整を図ることが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 また、小笠原固有の生態系を支えながら、そこに暮らす島民の皆様方の社会、生産、経済活動が将来にわたって健全に維持されるよう、自然再生にかかわるさまざまな取り組みと地域の生活や経済活動とを密接に結びつけていくこと等を通じて、エコツーリズム等の自然と共生した地域振興に取り組んでいく必要があります。そして、自然再生にかかわるさまざまな取り組みを自然環境教育の推進に活用しながら、地域の理解の醸成を図っていく必要もあります。
 島民を初めとする小笠原を愛する多くの関係者が、誇りを持って持続的に自然の保全と再生に取り組んでいけるよう、多くの関係機関の参画を得て、相互の連携による仕組みや体制を構築する必要があります。また、海洋島という特異な自然環境のもとでの自然とのつき合い方に関して、小笠原に住み、小笠原を訪れるだれもが守るべき規範となる、小笠原独自のルールを確立することが必要だと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、オリンピック・パラリンピック招致について伺います。
 東京都は去る二月十三日、IOC本部において、申請ファイルを提出しました。また、十六日に、ファイルの内容を公表するに当たって、復興専門委員会の中間報告をあわせて発表しました。
 これらには、私たち都議会民主党が要望してきた既存施設の活用や、被災地の復興支援としての一校一国運動、被災企業への優先発注、被災地での聖火リレーの実施なども盛り込まれており、一定の評価ができる内容となっています。
 また、七月末にはロンドン・オリンピックが開催されます。開催期間中のジャパンハウスを初めとして、あらゆる機会で訴求力のある招致活動の展開が重要となってまいります。
 私たち都議会民主党は先月、オリンピック・パラリンピック招致に向けた第一次提言をまとめ、その提言の中で大江戸ルネッサンスというテーマを提案させていただきました。
 二百六十五年間続いた江戸の社会が持続可能な循環型社会を実現していたこと、そして、その根底には日本の古来から伝承されてきた自然を畏敬する精神文化があったことなどが、二〇二〇年の未来を描く上でヒントになると考えているからであります。江戸文化のすぐれた部分を見直し、未来につなげることは大変意義があり、また、五輪招致のテーマとして海外に向けた訴求力ある発信になると考えます。
 そこで、招致活動において、そのような日本独自の誇るべき文化や精神を積極的に取り入れていくべきと考えますが、都の所見を伺います。
 次に、パラリンピックと招致活動について伺います。
 東京都は、全国に先駆けて、障害者スポーツに関する計画、東京都障害者スポーツ振興計画の原案を発表しました。その計画の中では、障害のある人と支える人へのスポーツ関係情報の不足や、障害のある人が身近な地域でスポーツ活動をする場の不足など、合計五つほどの課題が挙がっています。
 二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの開催は、これらの課題解決の大きな推進力になるに違いありません。計画原案にはパラリンピックという言葉が載っておりませんが、そういった理由からも、ぜひ計画の中にパラリンピックの意義を入れていただきたいと思います。
 また、障害者スポーツ、パラリンピックにちなんだバリアフリー社会の実現、だれもが安心して暮らせる社会の実現は、だれもが望むところであります。よって、都は、二〇二〇年オリンピック招致活動において、パラリンピック開催の意義をもっと前面に出し、支持を訴えるべきではないでしょうか。招致活動においてパラリンピックをどのようにアピールしていくのか、都の見解を伺います。
 ことしの夏に開催されるロンドン・オリンピックに向け、ロンドンでは、公共交通機関の輸送力増強や、オリンピック開催に関する重要な施設をつなぐ既存道路ネットワークの整備、ウオーキングとサイクリングの推進、ヒースロー空港の改善といった交通施策が計画的に進められています。
 二〇一〇年の五月には、ロンドンのボリス・ジョンソン市長が、ロンドン市の交通戦略構想を発表しました。この政策目標は、短期的にはロンドン・オリンピックの交通需要対策の一つとして位置づけられ、市民や観光客の足としての機能を期待するとともに、中長期的には、二〇三〇年を目標に、運輸交通部門における環境改善、市民の健康増進、地域経済の活性化、市民生活の向上を同時に達成することにあります。
 具体的には、鉄道、バス、船舶等の公共交通機関の調整、整備、拡充とともに、自転車を都市交通の重要なファクターとして取り組むことなどが明記されています。
 一方、東京都では、計画的にとはいいつつも、道路網整備、鉄道網整備、航空政策、物流対策等が個別に進められており、自転車や歩行者を含めた総合的な交通施策が示されているとはいえない状況にあります。
 そこで、二〇二〇年のオリンピック招致に名乗りを上げた今だからこそ、東京の交通政策をどのように展開していくのかを示すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、教育施策について伺います。
 初めに、日本、世界を牽引する次世代リーダーの育成について伺います。
 今日、東日本大震災の復興、経済危機の真っただ中にある日本において、現状を打破し、困難を乗り越えていくための次世代リーダーを輩出する教育施策を早急に進める必要があると思います。
 そもそもエリートとは、学歴やキャリアといった表面的な部分でしか見られませんが、真の意味は、社会の奉仕者としての使命感のもと、私事を捨て、公に尽くす精神を備えた者であり、教育水準の底上げとともに、このような社会的リーダーを育てないと、日本も立て直しがきかなくなると考えます。
 日本の江戸期を振り返ると、各地域に設けられた藩校、私塾、寺子屋などが特色あるすぐれた教育を施し、学術ではなく、精神的修養をもとにした人格教育が施されておりました。そこでは、官民双方のバックアップのもと、養成された優秀な青年は、強い使命感と情熱とを持って学術や芸術の道に精進し、日本のリーダーとして時代を切り開いてきました。
 破壊的教育改革をうたう知事は、そのような時代の教育システムの見習うべきところを取り入れつつ、学術だけではなく人格教育にも力点を置いた、学歴エリートではない、日本、世界を牽引する人材の育成を進めていくべきだと考えますが、所見を伺います。
 次に、次世代リーダーを育成するための海外留学支援について伺います。
 昨年六月の一般質問にて我が会派の関口議員が要望した、都立高校における海外留学の支援が、来年度予算案に計上されました。この支援を通じて、都立高校から日本、そして世界を牽引するリーダー、真の国際人が多く輩出されることが期待されます。
 そして、公費で留学支援を実施する以上、生徒一人一人が都立高校の代表で行くのだという使命感を持たせることも重要になります。
 例えば、海外留学の準備段階として、日ごろから、必修となった日本史や道徳の授業にて、日本の誇るべき歴史と文化、そして多大な功績を残した日本の偉人について、しっかりと学んでもらい、海外で出会う人々に自信を持って自国のことを発信できるようにしてもらうことが大事であります。さらには、選ばれた生徒の使命感を高めることが重要であり、来年度、道場に入門した生徒については、都が海外へ派遣する第一期生として、都全体で出発を激励することや、帰国してからもリーダーとしての資質を磨き続けさせることが最も大事なことと考えます。
 そこで、都教育委員会は、次世代リーダー育成道場で、生徒の使命感を高めるためにどのような取り組みを行うのか伺います。
 次に、情報活用能力の育成について伺います。
 昨年の東日本大震災の発生直後、災害情報や安否確認などでリアルタイムに情報を共有できるツイッターなどが活躍した一方、原発事故に関する情報や食料不足の情報を初めとして多くの情報が錯綜し、風評被害が多々見られました。
 二十一世紀は知識基盤社会ともいわれる中、日々生活する上での情報ツールを駆使する能力の育成が重要であると同時に、緊急時、人々が混乱し、二次災害とならないためにも、私たちがこれまで求めてきたように、主体的に情報をとらえ、その情報が正しいかどうかを判断する能力、本質を見抜く力であるメディアリテラシーの育成を早急に進めていかなければなりません。
 昨年四月に出された文科省の教育の情報化ビジョンでは、情報の主体的な収集、判断、処理などや発信、伝達能力等の情報活用能力をはぐくむことが生きる力の育成につながると記されています。さらには、情報活用能力をはぐくむために、情報活用の実践力、情報の科学的理解、情報社会に参画する態度の三つの観点が重要であると指摘されています。
 そこで、このような指摘を踏まえ、私たちの復活予算で計上された情報活用能力向上推進事業について、子どもたちのメディアリテラシーなど情報活用能力をどのように育成していこうと考えているのか、都教育委員会の見解を伺います。
 次に、福祉保健施策について伺います。
 まず、社会的養護についてであります。
 昨年、杉並区内で里親による虐待によって幼い命が失われました。措置下での死亡という最悪の事態を防げなかった事実は大変重く、里親、里子の孤立化防止、支援体制づくりについて、第三回定例会でも求めたところであります。
 都においては、社会的養護を必要とする子どもの約一割が里親委託されておりますが、子どもたちが家庭的な環境で養育、ケアされて成長するには、相談支援を充実させ、里親、里子をしっかりと見守り、支える基盤を強化しなければなりません。
 虐待を受けたり、発達障害があるなどの難しい子どもと出会ってから子育てに自信がつくまでには、相当な時間と葛藤を経なければならないともいわれており、継続的な支援が必要であります。また、里父はもとより里母も就労している方がふえており、また、子どもは夜に問題を起こすことも多いため、夜や土日の時間帯の支援も必要であります。
 里親、里子がきめ細やかな支援を受けられるようなサポート体制構築に向けた取り組みについて、見解を伺います。
 里親への委託や児童養護施設への入所といった社会的養護、児童福祉法に基づく措置は、原則として十八歳までとなっています。
 しかしながら、措置期間の終了にあわせて、急に実親がその役割を果たせるようになるわけでもなく、就職にも進学にも、部屋を借りるにも保証人が必要であったり、一人前の大人になるには、職場のこと、生活のこと、さまざまな悩みや戸惑いと向き合い、先達から支えや教えを受けて成長していくものであります。特に、施設での養育環境においては、現実的なロールモデル、大人像を持ちにくいため、実生活での自立に困難が伴うといわれております。
 措置解除後も里親や児童養護施設職員が折に触れて相談に乗るなど、支援を続ける例はこれまでも多くありました。自立に向けた早期からの支援、手厚いアフターケアを制度として行う必要性が長年指摘されてきました。
 より多くの子どもたちが自立に向けた支援を受けられるようにしていくために、今後どのように取り組むのか伺います。
 次に、がん対策について伺います。
 二〇〇九年の都民のがん死亡率は、人口十万人当たり八五・四人で、最も死亡率の低い長野県七一・一人より、また全国平均よりも高いのが現実であります。
 都のがん対策推進計画においては、死亡率低減目標、検診受診率とともに具体的数値目標を掲げており、がん対策基本法制定時には検診受診率の目標値がなかったことからしますと、大変意欲的と評価しています。
 しかしながら、がん対策の究極の目的ともいえるこの目標は、例えば、現在掲げている平成二十七年度の死亡率到達目標七五・一を達成したとしても、平成二十一年の長野県の値にも及ばないのであります。さらには、死亡率低減に寄与する喫煙率の低下の目標値が定められておらず、検診受診後も都民の実態を十分把握できておりません。
 決して順位を競い合う争いではありませんけれども、高齢化率が全国よりも高く推移することが見込まれている東京ならではの実情や、都民の状況をつぶさに検討した上での、真に目指すべき目標とはなっていないのではないでしょうか。東京都の特性に合わせた真に目指すべき到達目標を設定すべきと考えますが、見解を伺います。
 緩和ケアの推進については、緩和ケア支援センターの整備や緩和ケア人材の育成等々、これまでにも求めてまいりました。こうした専門人材の育成支援については、緩和ケア指導医は百名以上、研修修了医師数は二千五百名を超すなど取り組みは進んでおりますが、実際にすべての患者が治療の早期から、がんによる苦痛の軽減、緩和ケアを受けられているかといえば、まだまだ十分ではありません。
 日本医療政策機構が行った調査では、現に治療を受けている患者、家族のうち、受けられると知らなかった方は二八・八%、受けたくても受けられなかった方は九・九%であります。
 緩和ケアチーム、緩和ケア外来が数多く運営され、機能していくためには、心の痛みに対応する精神科医の確保や、看護師、薬剤師といったコメディカルの育成も進めていかなければなりません。看護師等のコメディカル緩和ケアの人材育成支援について見解を伺います。
 また、医療の複雑化、高度化によって、医師はもちろんのこと、看護師においても、がん医療の高い専門性が必要とされています。
 例えば、都立病院においては、認定看護師六十六人、専門看護師十二人がその専門性を生かして働いています。
 認定、専門看護師は、分野ごとの専門教育課程が確立されております。がんに関係する認定としては緩和ケア、がん化学療法などがありますが、認定看護師、専門看護師は大病院や公的病院に多く、一般の病院に勤める看護師が仕事を続けながら専門性を高めるには、学費や本人の給与に加えて代替職員の確保が必要であることなどの理由から、困難であるといわれてまいりました。
 都議会民主党は、看護職員の専門性の向上のため、認定看護師、専門看護師の育成を支援すべきと主張してきたところでありますが、来年度予算案においては、認定看護師の育成支援が計上されました。認定看護師の育成支援はどのように取り組むのか、お伺いいたします。
 東京の地域がん登録は全国でも最後尾での実施となりました。東京ならではの困難さもあったことは事実でありますが、平成十六年のがん対策基本法制定以前から実施していた自治体も多々あり、国でも事業化され、既に他の道府県ではほとんど実施されております。
 地域がん登録情報は、都民がどの地域でどのようながんにかかっているか、性別や年齢によるがんのかかりやすさ、どのような治療を受けてどれぐらいの生存率か、実態に対応した対策を立てるための唯一の情報源であります。しっかり機能すれば、都のがん対策のエビデンスとして、二次保健医療圏ごとの傾向と対策、さらには市区町村との対策に生かせるような情報提供が期待でき、あるがんのハイリスク群など、特性に対応したきめ細かい対応につなげ、一人でも多くの命を救うための処方せんとなります。
 そうした意味では、都の地域がん登録開始がおくれた分だけ、都民に還元できるデータの蓄積がないということであり、しんがりを務める東京都には、今後のがん登録情報の集積、解析をしっかりと行っていただいて、日本の、世界の、どのがん情報よりもすぐれたものを提供できるようにしていただきたいと強く強く思うところであります。
 登録数の確保、予後調査や登録精度の確保など、地域がん登録の課題への取り組みを伺います。
 さて、都議会民主党は、今定例会に東京都がん対策推進条例の議員提案に向けて準備いたしております。これは、毎年三万人もの方が亡くなっているがんについて、ひとり暮らしの高齢者が多いといった東京の特性に合ったがん医療、療養対策を進めたいという思いからであります。
 都が施策を推進しているのはもちろん承知をいたしておりますが、それでもなお、東京のがん死亡率は全国で三十四位、早期発見、早期治療のために重要な検診受診率も三割台に低迷いたしております。男性の二人に一人、女性の三人に一人ががんにかかるといわれる中、すべての都民ががんについて学び、考え、みずから予防と早期発見につながる行動を率先してとれるような機会をつくっていきたい。そして、がんにかかっても、適切な医療を選び、苦痛を軽減し、住みなれた地域で良質な医療が受けられるよう、がん対策を一段と加速し拡充するために、議会も大きな役割を果たすことが必要であると確信をいたしております。皆様方のご理解とご賛同をどうかお願い申し上げるものであります。
 次に、迷惑防止条例の改正について伺います。
 最近は、盗撮にも使用可能な撮影機材の高性能化、小型化が進み、だれもが容易に購入することが可能となっています。こうした購入者の中には、盗撮目的にこれらを使用する者も少なくなく、結果として盗撮の被害者もまたふえ続けているのが現実であります。しかもこれが、撮った映像をインターネット上に公開されたり、DVD等で販売するなどの営利目的に使用されるなど、二次被害として著しいプライバシーの侵害を引き起こしています。
 盗撮場所も、トイレや更衣室、ホテル、公園、車中、エスカレーター等々のさまざまな場所に及び、その手口も、撮影と同時にその映像を他の場所に転送して証拠を隠滅したり、撮影機材に送信機をつけて他の場所で見たり、暗やみでも赤外線投光器をつけて撮影するなど、ますます巧妙になっています。
 こうした中で、個々の具体的な規制場所に加え、未遂的行為をも規制するのが今回の迷惑防止条例改正であります。これらは、ここまでモラルが低下した現状では、盗撮に対する抑止効果も含めて、必要な措置であると考えます。
 しかしながら、これが卑劣な犯罪であるがゆえに、誤認逮捕による社会的ダメージも、普通の生活を送っている人にははかり知れないものがあります。未然防止の観点からも必要とされる未遂的行為の規制に当たっては、なおのこと慎重にならなければなりません。
 今回、警視庁は、改正を通じて、盗撮の抑止に向けてどのように取り組もうとお考えか、所見を伺います。
 また、今回の改正では、押し買いの規制の新設も予定されております。
 リーマンショックから欧州経済危機へと続く世界的な信用不安により、金の価格が高騰してきたことから、金や指輪、あるいはネックレスなどの貴金属を買いあさる悪質な業者がふえてきています。しかも、高齢者の自宅を訪れ貴金属を強引に買い取るなど、その被害は都民一人一人に及んでいます。
 こうした中で、消費者庁も押し買いの法規制を検討しているようでありますけれども、法令との整合性も含め、押し買いの抑止に向けて今後どのように取り組もうとお考えか、見解を伺います。
 なお、盗撮同様に悪質化、巧妙化している盗聴行為に関しても、対策を検討されるよう要望いたしておきます。
 以上で都議会民主党を代表しての質問を終えます。
 なお、答弁によっては再質問を留保いたします。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 山下太郎議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、「二〇二〇年の東京」計画についてでありますが、都はこれまでも、「十年後の東京」計画を構え、東京の進化を加速させてきましたけれども、大震災がもたらした危機を乗り越えて日本の再生を確かなものにするために、この計画を充実強化した新たな都市戦略であります「二〇二〇年の東京」計画を策定しました。この計画を羅針盤にしまして、ハード、ソフト両面における防災力の向上や、エネルギーの安定供給体制の構築などを進め、東京の都市機能を十全なものにしたいと思っております。
 また、環境、福祉、教育など、さまざまな分野において先進的な取り組みを戦略的に展開することで、都民、国民の安全・安心を確保していくつもりであります。さらに、発展目覚ましいアジアの活力を我が国の成長に取り込むべく、外国企業のアジア拠点を誘致し、日本再浮上のよすがともしていきたいと思っております。
 大震災から一年がたとうとしておりますが、危機感の欠如した国政は、いまだにこの国の進むべき針路を示すことができておりません。お話の日本再生の基本戦略なるものを見てみましたが、すべてに優先する国家財政の見直しやエネルギー戦略をとってみても、具体な策が一向に見えてきません。政府には、国家存続の瀬戸際にある我が国の現実を冷静に把握して、将来を見据えた決意を持って国家運営のかじ取りに当たってもらいたいものだと思います。
 次いで、平成二十四年度予算についてでありますが、今回の予算編成では、財政環境が厳しさを増す中にあって、大震災が浮き彫りにした、首都東京が抱える新たな課題をいかに克服していくかが最大の焦点でありました。
 そのために必要な施策を厳選して、木密地域の不燃化や防災隣組の構築など、防災力強化に資する重層的、複合的な対策を進めるとともに、都独自のエネルギー対策にも果敢に取り組んでまいるつもりであります。
 もとより、少子高齢化対策、雇用対策など、都民の不安を払拭する方策に対しても重点的に財源を振り向けておりまして、また、都市インフラの整備や外国企業の誘致に向けた基礎づくりなど、東京の可能性を引き出す戦略的な取り組みも、足踏みすることなく着実に進めてまいります。
 この予算をてことして、都民生活に安心と活力をもたらし、首都東京の発展につながる確かな流れをつくり上げていきたいと思っております。
 次いで、首都直下型の地震対策の推進についてでありますが、最近の研究では、首都の直下でぶつかりひしめき合っている複数プレートのうち、フィリピン海プレートが想定よりも十キロメートル浅いところにあるということが明らかになりました。これにより、首都直下地震の被害が従来の想定より大きくなることがわかってはきましたが、肝心なことは、いたずらにその危機感をあおり立てることではなくて、リスクを冷静に見詰めた上で、具体的な手だてを着実に講じていくことだと思います。
 先般、都の最高幹部たちが、東大の地震研究所の主任教授でしょうか、平田氏の講義を受けましたが、そのときも、ひと月ほど前でありますけど、いろいろ説明がありましたが、それをさらに集約して、先般、同人物は、四年の間に七〇%ですか、かなりの地震が起こるという発表をされましたけれども、これは学者として、事実を事実として報道されたのかもしれませんが、その受け取り方というのは、私たちやはり問題があると思うんです。一犬実をほえて万犬虚を伝えるようなことになってはならないので、万々々が一の災害というものに、万全ということを期することは至難と思いますけれども、いかにできる限りの対処をしていくかということが必要であると私は思います。
 都はこれまでも、防災上重要な建築物の耐震化や、護岸、堤防の整備など、災害に強い都市の実現に向けた取り組みを進めてきましたが、東日本大震災を踏まえて、改めて最近の科学的知見や客観的データに基づいて被害想定を見直し、その内容を都民に正確に伝えていきたいと思っております。
 平田教授の説明では、東京湾の中に震源地がかなり浅い形で存在するということでありましたけれども、東京湾といってもどの地域なのか。概念的にいえば、三浦半島の先端の三崎と房総半島の先端の野島崎を結んだ、その内側が東京湾になるはずでありますが、しかしこの三浦半島というのは非常に短い半島でありまして、房総はそれに比べてかなり長い大きな半島でありますが、その房総沖、三浦半島の先端から野島崎を結んだその線の中にある海域といっても、これは非常に大きな海域でありまして、それをもって東京湾という表現をすることは、私はこれはやっぱり非常に不安をあおる、余り正確ではない報道の仕方だったと思います。ならば、一体どの地点に、今日の科学をもってすれば、そのプレートが重なっている危険なポイントがあるかということがわかるはずでありますから、そういうものをしっかりと確かめてもらった上で、私たち、やはりいろんな想定をしていく必要があるんじゃないかと思います。
 これまでも、防災上の重要な建築物の耐震化や護岸、堤防の整備など、災害に強い都市の実現に向けた取り組みを着実に進めてきましたが、今回の大震災を踏まえて、改めて今申しましたような正確な科学的な知見やデータに基づいて、被害想定を見直して、その内容を都民に正確に伝えていきたいと思っております。
 また、被害想定を踏まえた災害拠点病院や水門等の耐震化、三環状道路を初めとする道路ネットワークの整備、さらには、自助、共助の取り組みであります防災隣組の構築や帰宅困難者対策の内容を深化させて、地域防災計画の修正に反映してまいります。
 これはひとり東京のためではなしに、何といっても日本の首都でありますこの東京であるがゆえに、日本全体のために、自助、共助、公助のすべての備えを固め直して、首都東京の防災力を高度化させていきたいと思っております。
 次いで、帰宅困難者対策についてでありますが、東日本大震災では、東京は被災地に比べはるかに小さな揺れだったにもかかわらず、都市機能が麻痺しました。
 帰宅困難者の問題は、ふだんは当たり前と思っている都市機能の脆弱性の象徴だったと思います。災害に虚弱な都市が国際的な信用を得られることはあり得ませんし、こうした大混乱を東京で二度と繰り返さないためにも、対策を根底から見直していく必要があると思っております。このため、総合的に帰宅困難者対策を推進する条例を本定例会に提案いたしております。
 都民には、一斉帰宅の抑制を徹底するとともに、日ごろから家族との安否を確認する手段について習熟していただきたいと思っております。もちろん、みずからの安全を確保されれば、地域の防災活動にも協力してもらうわけであります。
 また、東京に存在するすべての主体に、みずからが責任を持って行動をとるということを求めてまいりますし、企業には、食料等の備蓄はもとより、一時滞在施設として、周辺の帰宅困難者の受け入れに協力をしてもらいます。駅や集客施設には、利用者を保護することを徹底していきたいと思っておりますし、学校等にも、児童や生徒の安全を確保すべく徹底してもらいたいと思います。
 こうした帰宅困難者対策を、社会全体で機を逸することなく推し進めることで、都民の生命と財産を守るとともに、一刻たりとも東京という日本の頭脳、心臓がとまることのないように万全を期していきたいと思っております。
 次いで、日本、あるいは日本から世界を牽引する人材の養成についてでありますが、一番、中世において、世界の中で最も成熟を示した江戸時代の、特に元禄のころには、独自の教育理念に支えられた数万の学校が全国にありました。この比類のない文化的な成熟の中で培われた日本人の教養水準の高さについては、これによって日本の近代化の成功はもたらされたと思っております。
 開国して、日本にやってきた外国人が、まちで粗末な草履ぐらいしかはいていない子どもたちで、なお、彼らが本を読んでいるということに感嘆したという記録が残っておりますが、いずれにしろ、明治以来行われてきた近代教育は、その今までの経緯というものを西洋的に、要するに発想してひっくり返すことで、ある意味で成功したかもしれませんけど、しかし、この国を牽引するごくごく限られた人材を集中的、効率的に育てることを主眼としてまいりました。ゆえに、一つの能吏としての官僚を育てることには成功しましたし、その中には立派な人物もたくさん輩出しましたが、しかし、それがそのまま踏襲されることで、戦後の日本は、逆に国家の官僚によって停滞を余儀なくされているといううらみがございます。
 いずれにしろ、我々、これから努力をしまして、高い使命感と発想力を持った、そういう官僚も含めて社会全体のリーダーを輩出させる努力をしなくてはならないと思っております。
 いずれにしろ、戦後通じてきたこの画一的な教育が惰性として続いておりまして、現代の若者を見ていましても、官僚にしてもそうでありますが、何かその彼らから、日本人としての国家というものを意識した自覚の志を感じることが少なくなりました。
 教育の再生は一朝一夕には成らないと思いますが、まずは若者を鍛え直して、正当な歴史観も身につけさせて、相対的に世界を眺めながら、日本について誇るものは誇る、足りないものは足りないものとして自分たちの力でそれを補足し充実させていく、そういう自覚というものを取り戻させることが必要だと思っております。その上で、個々の人間の個性、能力に応じたひらめきや、豊かな創造力を備えた人材の育成に取り組んでいかなければならぬと思います。
 世界が非常に時間的、空間的に狭小になる中で、日本は、厳しい国際競争に打ち勝たなければ、とても一流の国家として存続することはできないと思います。これを可能とするには、やっぱりしたたかでたくましい若者を育てなきゃならぬと思いますし、今後、こうした危機感を社会全体で共有して、日本の教育におけるパラダイムを転換すべく、ある意味では破壊的な教育改革に取り組んでいきたいものだと思っております。
 そのためにも、これはやっぱり衆知を集めなきゃいけませんし、それをさらに具体的に、着実に、いかに実践していくかという、その施策もみんなで討論して構えていきたいと思っております。
 他の質問については、警視総監、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔警視総監樋口建史君登壇〕

〇警視総監(樋口建史君) 二つのご質問でございました。
 最初のご質問でありますけれども、今回の迷惑防止条例の改正内容のうち、盗撮行為の規制に関する部分について申し上げます。
 まず、条例改正の中身でありますけれども、現行条例では、盗撮の発生が懸念される公衆便所等の場所に規制が及んでいないものですから、こういった場所を新たに規制対象として取り込むことといたしております。
 それから、もう一点ございまして、盗撮の目的で写真機等を差し向けまたは設置する行為、つまり、盗撮目的でカメラをスカートに差し入れる行為につきましても、こういった行為は、現行の条例でも卑わいな言動の一態様として規制可能ではあるのですけれども、規制の実効性を確保する等の観点から、今回、規制対象行為として条文に明記することとしております。
 それから、今後の警視庁の取り組み方針につきましては、盗撮は被害者の心を傷つける卑劣な犯罪でありますけれども、ご指摘のように、事実の認定を誤らないことが非常に重要でありまして、適正で緻密な捜査が重要な課題であります。客観証拠の収集にこれまで以上に努めまして、事実関係の認定に誤りなきを期してまいりたいと考えております。また、こうした厳正な取り締まりが盗撮行為の抑止につながっていくものと考えております。
 それから、二点目のご質問でありますけれども、押し買いの規制に関する部分の条例改正について申し上げます。
 いわゆる押し買いにつきましては、都民生活の平穏保持の観点からも、また財産被害防止の観点からも、早急に対処しなければならない課題であります。
 ご質問の中にございましたけれども、消費者庁におきましても、特定商取引に関する法律の改正を念頭に置いて、クーリングオフの対象に取り込むなどの検討が行われているものと承知をいたしております。けれども、この特商法は業としての行為の規制であるのでありまして、それに対しまして迷惑防止条例であれば、何人によるものであれ、迷惑行為を規制するということになりますので、東京都の迷惑防止条例におきましても、訪問買い取りに当たっての迷惑性の高い行為を規制することができるように、改正の必要があると考えているところでございます。
 ちなみに、四十二の道府県では、既に、同様の観点から条例で規制が行われているところであります。
 それから、押し買いの抑止につきましては、やはり、何事もそうなんでありますけれども、厳正な取り締まりと広報啓発の二本柱でやっていきたいと考えております。条例を改正していただきましたならば、厳正、適正かつ効果的に運用してまいりたいと考えております。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、次世代リーダー育成道場に参加する生徒の使命感を高めるための取り組みについてでございますが、次世代リーダー育成道場は、意欲ある高校生を選抜し、海外に派遣して、みずから定めた目標に対して果敢に挑戦させ自己実現させることを目指しております。
 このため、事前研修では、講義等を通して我が国の歴史や文化をしっかり理解させ、留学の目的を明確にして、海外での生活や学習への意欲を高めさせてまいります。また、留学中には、海外の高校を初めさまざまな場面で、みずからの意見や我が国の魅力等を積極的に発信するなど、日本の若者の代表としての役割を担わせます。
 こうした取り組みを通して、自己の目標を達成しようとする高い使命感やリーダーとしての素地を養い、将来さまざまな分野で活躍できる人材を育成してまいります。
 次に、児童生徒の情報活用能力の育成についてでございますが、都教育委員会は、これまでも情報活用の実践力や科学的な理解の向上に努めてまいりましたが、活字媒体、電子媒体を問わず、不確かな情報を安易に信用するなど、児童生徒のリテラシーに課題がありますことから、新たに情報活用能力向上推進事業を実施することといたしました。
 本事業では、情報教育の専門家を全都立学校及び希望する小中学校に派遣をいたしまして、児童生徒に、情報モラルやメディアリテラシーに関する指導を直接行わせるとともに、情報の選択や発信等について学習できる電子教材を開発し、児童生徒に体験させるなどいたしまして、適切に判断できる力を身につけさせてまいります。
 本事業を通して、児童生徒の情報活用能力の一層の向上を図ってまいります。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都の都市戦略と市区町村の取り組みとの整合についてでございますけれども、「二〇二〇年の東京」計画で描いた都市を実現するためには、市区町村との連携が不可欠でございます。
 このため、計画の策定に当たりましては、都内すべての市区町村に対して、計画策定に向けた意向調査を実施いたしました。市区町村からは、少子高齢化社会への取り組みや中小企業振興などに加え、今般の大震災を踏まえ、建築物の耐震化や帰宅困難者対策、住宅への太陽光発電の導入に対する支援など、数多くのご意見をいただき、それらを十二のプロジェクトなどに積極的に取り入れたところでございます。
 また、政策展開の具体化に当たりましては、三カ年のアクションプランでございます実行プログラムを毎年度策定することとしておりまして、今後、この実行プログラムの改定過程などの機会をとらえ、市区町村と緊密な連携を図りながら、「二〇二〇年の東京」計画実現に向けた取り組みを推進してまいります。
 次に、総合特区を活用した外国企業誘致についてでございますが、昨年末に特区の指定を受けたことで、今後、できるだけ早い時期に多くの外国企業誘致を実現し、その効果を、東京のみならず広く日本全体に波及させていく考えでございます。
 そのためには、都が求めておりますビジネス支援や生活環境整備などに係る規制緩和を実現することが必要でございまして、国と具体的な協議を始めたところでございます。
 また、アジアヘッドクオーター特区の取り組みを世界に向けて発信することが重要でございますことから、本年一月には、ドイツで都が行った海外企業誘致セミナーにおきまして、特区の内容や取り組みをPRいたしました。
 また、本年三月、九十カ国、約千八百社が参加し、フランスで開催されます国際不動産見本市に民間事業者やジェトロと連携して出展し、都独自の減税策や東京の魅力など、外国企業誘致のためのPR活動を展開する予定でございます。
 今後とも、さまざまなツールを活用し、官民一体となった外国企業誘致を進め、グローバルな都市間競争時代における強い東京の復権を果たし、日本経済の活性化につなげてまいります。
   〔財務局長安藤立美君登壇〕

〇財務局長(安藤立美君) 今後の財政運営についてでございますが、都税収入は、企業の繰越欠損金などが足かせとなっておりまして、この先も好転を期待しにくい厳しい状況にございます。
 一方、今後ますます増加する社会保障関係費や、防災力の強化など東京が直面する新たな課題に的確に対応するためにも、今まで以上に中長期的な視点をしっかり持って、財政の健全性に配慮することが重要になってございます。
 そのため、事業評価等によりむだを排除するとともに、一つ一つの施策の効率性、実効性を一層向上させる努力を、緩めることなく継続していく必要がございます。
 その上で、将来を見据え、都債や基金を適切に活用するなど、時期にかなった施策の展開を支えることができる強固な財政基盤の堅持に引き続き努めてまいります。
 法人事業税の暫定措置につきましても、当初約束したとおりの確実な撤廃を求めてまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、帰宅困難者対策条例の制定についてでありますが、帰宅困難者対策は、いつ来てもおかしくない大震災に備えて、都民、事業者がそれぞれの役割と責任を理解し、社会全体で取り組まなければならない課題であります。
 このため、都民の関心が高いこの機をとらえ、まず条例を制定し、企業での備蓄や駅での利用者保護など、都民や事業者、そして行政が取り組むべき基本的責務を明らかにすることといたしました。
 その上で、条例で規定した内容を実施するための具体的な手順等について、事業者や関係機関と十分に調整を行い、必要な支援策とともに、今後、実施計画で定めてまいります。
 こうした取り組みを通じて、実効性ある帰宅困難者対策を推進してまいります。
 次いで、帰宅困難者対策への都の取り組みについてでございますが、帰宅困難者は首都圏で広範にわたり発生することから、国や区市町村、九都県市、民間事業者等がそれぞれの役割分担に基づき連携協力して対策を進めていく必要があります。
 こうしたことから、都が主導して設置した帰宅困難者等対策協議会において議論を積み重ね、各主体の役割分担や連携について定めた一斉帰宅抑制の基本方針を取りまとめました。
 この方針に基づき、都は、総合的に帰宅困難者対策を推進する条例を制定し、一時滞在施設の確保に向け、都立施設の指定準備を進めるとともに、備蓄のあり方など、民間施設に協力を求める場合の体制整備についても検討いたしております。
 また、都内の災害時帰宅支援ステーションの確保に当たっても、九都県市で連携して事業者団体に働きかけていくなど、広域的な取り組みを進めております。
 今後とも、都は、関係機関との密接な連携のもと、主体的に帰宅困難者対策を推進してまいります。
 次いで、地域の帰宅困難者対策の取り組みへの支援についてでございますが、大規模災害発災時における帰宅困難者による混乱を防止するためには、多くの人が集まるターミナル駅や大規模な集客施設周辺での滞留者対策が必要であり、こうした地域での取り組みを後押しすることが求められております。
 このため、都は、去る二月三日に、新宿駅、東京駅、池袋駅周辺において、駅前滞留者対策協議会等と連携して、駅及び集客施設における利用者保護や、一時滞在施設への帰宅困難者の受け入れを初めとする帰宅困難者対策訓練を実施いたしました。
 今後は、訓練の成果を検証するとともに、その結果を他の地域の取り組みに反映させることで、都内各所における帰宅困難者対策の取り組みを支援してまいります。
 次いで、東京湾沿岸部の津波対策についてでありますが、都民の生命を守り、都市機能の維持を図るため、都はこれまでも、東京湾沿岸部における水門、防潮堤などの整備を進めてまいりましたが、あらゆる事態を想定し、浸水時に備えた避難対策を講じておくことは重要でございます。
 このため、都は、現在、東京都防災会議の地震部会において、最新の科学的知見に基づき、津波による被害想定の検証を進めております。
 住民の避難につきましては、主たる役割を担う各区において、津波避難ビルの確保などさまざまな対策が講じられておりますが、都としても広域行政の立場から、避難対策に関する検討部会を設置し、津波、高潮の際の避難先の確保や広域的な避難の方策などについて検討してまいります。
 次いで、島しょ地域の津波対策についてでありますが、関東地震など海溝型の大規模地震が発生いたしますと、島しょ地域では高い津波に襲われるおそれがあります。このため、各島においては、迅速かつ的確な避難が行われるよう、具体的な避難先や避難経路を定め、訓練を行うなど、対策を十分に講じておく必要があります。
 こうした取り組みを支援するため、都は、先ほど申し上げた検討部会におきまして、東日本大震災の被災地における実際の避難の状況を検証するなど、効果的な方策について検討を進めてまいります。この検討結果を都の地域防災計画に反映させるとともに、関係町村と連携して、各島の特性に応じた避難対策に生かしてまいります。
 最後に、多摩地域の将来に向けたトータルビジョンについてでありますが、都は、平成十三年に多摩の将来像二〇〇一を策定し、豊かな自然と大きな発展の可能性を持つ多摩地域の特性を生かしながら、活力と魅力にあふれた多摩の創造を進めていくこととし、翌年度には、重点的な取り組みを示した多摩アクションプログラムも取りまとめました。
 その後、都の取り組みを明確にした多摩リーディングプロジェクトを示し、新たな課題に的確に対応してまいりました。
 平成二十一年二月には、ハード事業に加え、ソフト事業も取り入れた総合的な振興策を推進するため、多摩振興プロジェクトを策定し、首都圏の中核をなす多摩の実現を目指すという方向性を示し、都市基盤の整備や産業振興、福祉、医療の充実などの六分野、六十事業を着実に推進しております。
 今後も、多摩地域を取り巻く社会情勢の変化を踏まえ、多摩の目指す方向を明確に示しながら、市町村とも連携し、幅広い取り組みを進めることで、多摩の一層の振興を図ってまいります。
   〔消防総監北村吉男君登壇〕

〇消防総監(北村吉男君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、消防力の体制強化についてでありますが、東日本大震災を踏まえ、大規模かつ複合的な災害に対処するためには、消防活動体制等のより一層の強化が必要であると認識しております。
 このため、平成二十四年度では、ハイパーレスキュー隊の増設に加え、機動性の高い大型消防ヘリコプターの更新、救助車やポンプ車などの消防車両を増強し、最新鋭の資器材を拡充いたします。
 こうした消防活動体制の強化を図るとともに、すべての消防部隊の活動能力の向上に努め、迅速な人命救助と消火活動のさらなる実現に向けて、都民の期待にこたえてまいります。
 次に、地域防災力向上方策に係るモデル事業における取り組みとそのねらいについてでありますが、震災時における同時多発する火災については、地域住民等による初期消火が大切であり、かつ、防災行動力の向上と防災意識の高揚を図るための取り組みは重要でございます。
 このため、今回実施しているモデル事業では、自主防災組織が取水しやすい防火水槽、狭隘道路における消火栓等の整備を促進するとともに、スタンドパイプ等を使用した実践的訓練のあり方や、大容量の水利である深井戸の多目的な活用などを検証しております。
 今後は、この結果を踏まえ、地域住民や関係機関と連携した自助、共助による地域防災力の向上を図ってまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 九点のご質問でございます。
 まず、都内河川における放射性物質対策についてでございますが、国は、原子力政策を推進してきたことに伴う社会的責任にかんがみとして、昨年、総合モニタリング計画を策定し、みずから統一的な調査を行っております。
 しかし、都内の河川につきましては、これまで調査が行われていませんでした。都は、このような状況や都議会各会派のご意見も踏まえ、荒川及び隅田川などで調査を行うよう、環境省や文部科学省など国に対して緊急要望を行い、その結果、二月十七日、調査が行われました。
 今回調査対象とならなかった河川などにつきましても、統一的な観点から、国が同様に実施すべきものでございまして、引き続き強く働きかけを行ってまいります。
 次に、自立分散型エネルギーの確保についてでございますが、現在、臨海副都心への分散型エネルギーネットワークや防災公園への発電機の設置に向けた取り組みを進めておりまして、来年度には詳細な調査を実施する予定でございます。
 また、民間の都市開発と連携して、新たな助成制度等の手法も活用しながら、エネルギー効率の高いコージェネレーション発電の導入を推進してまいります。
 次に、再生可能エネルギーの普及拡大についてでございますが、今後、さらなる普及拡大を進めるためには、七月に開始されます固定価格買い取り制度の実効性を担保することがまず必要でございますが、国においては、制度の根幹となる買い取り価格を決定する第三者委員会の開催に至っていないのが現状でございます。
 都は、震災後に開始した創エネルギー機器導入支援事業によりまして、住宅用太陽光発電の一層の普及拡大を進めるとともに、太陽熱市場を再構築するための補助事業も開始しており、今後、固定価格買い取り制度の動向も踏まえまして、さらなる普及拡大に向けた取り組みを進めてまいります。
 次に、エネルギー利用の最適化についてでございますが、都はこれまで、建築物環境計画書制度などによりまして、大規模建築物の設計時から運用開始後に至るまで、継続的に建築物の環境性能の向上とエネルギー利用の効率化を誘導してまいりました。
 東日本大震災後は、自立分散型エネルギー源の確保に向けた取り組みを強化するとともに、オフィスビルが集積する大・丸・有地域では、エネルギー需給の最適化に向け、新たな調査を開始しております。
 今後とも、未利用エネルギー等の活用も視野に入れながら、こうした取り組みを推進してまいります。
 次に、都施設における節電の取り組みの活用についてでございますが、昨年夏に講じた対策のうち、照明照度の合理的な見直しなど、業務に支障を与えない対策は、夏の電力規制終了後も継続して実施をしておりまして、その結果、例えば新宿都庁舎におきましては、前年に比べ一五%程度の消費電力量の節減が継続しております。
 今後とも、こうした賢い節電の手法を都の施設全体に広げていくとともに、都民、事業者にも周知をしてまいります。
 次に、合理的な節電と省エネルギー化についてでございますが、昨年夏の節電の成果を踏まえ、多くの事業所では、運用面での対策に加え、エネルギー使用量の見える化、高効率照明、空調の導入など、設備面での対応を計画的に行い、合理的な省エネ、節電に向けた取り組みを進めております。
 都は、こうした動きと連携しながら、事業所や家庭におけるスマートな節電の継続を誘導し、夏季の電力需要の抑制を図ってまいります。
 次に、世界自然遺産登録後の観光客増加に伴う保全対策の強化についてでございますが、小笠原の自然を保全するには、観光客に遺産としての価値等を普及啓発するとともに、外来種持ち込みに対する監視を強化することが必要でございます。
 このため、現在、父島と母島に合計六名いるレンジャーを一名増加するとともに、都の職員を現地に派遣しまして、レンジャーの活動を支援することで、体制を強化いたします。
 さらに、植物の種子や虫など新たな外来種が持ち込まれることを防ぐ上で最も有効な手段として、従来、母島上陸時に靴底洗浄を実施してまいりましたが、この二月からは、東京竹芝桟橋の乗船時にも開始をしております。こうした取り組みを通じまして、小笠原の貴重な自然を将来にわたり保全してまいります。
 次に、国が整備を検討する遺産センターについてでございますが、これまでも屋久島や白神山地など、世界自然遺産に登録された地域に環境省が遺産センターを設置してまいりました。
 都は、昨年秋に実施しました平成二十四年度国の予算要求におきまして、自然遺産センター整備計画の策定に取り組むことを提案要求しております。今後も、遺産センターに関する国の整備計画策定に協力し、調整を図ってまいります。
 最後に、関係機関の連携体制の構築及び自然環境保全のための小笠原独自のルールの確立についてでございますが、平成十八年、観光や漁業等の団体、NPO、国、都、村等の連携体制として地域連絡会議が設置されまして、そこでの検討事項がユネスコに提出した推薦書等に反映され、遺産登録に結びついております。
 また、小笠原には既に、自然環境保全の独自のルールとしまして、小笠原カントリーコードや、鯨、ウミガメへの接近方法を定めた自主ルールなどが策定されております。
 今後とも、地域連絡会議やこれらの独自ルールを活用しながら、小笠原の豊かな自然環境の保全を進めてまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 八点のご質問にお答えいたします。
 まず、多摩シリコンバレーの振興についてであります。
 多摩地域の中小企業が、さまざまな機関と連携して技術水準の向上などを図りまして、すぐれた製品を生み出すことは必要であります。
 これまで都は、多摩地域で大学や研究機関に加え、金融機関の力を活用して、中小企業のものづくりの力を高める取り組みを行ってまいりました。具体的には、都市機能活用型産業振興プロジェクト推進事業によりまして、産学公金のネットワークをつくり、製品開発の検討などを支援しております。来年度は、製品化の見込める開発テーマについてサポートを行う体制の充実を図ってまいります。
 次に、中小製造業の集積確保に向けた取り組みについてであります。
 東京のものづくりを支える高度な技術を持つ中小企業の集積を地域に確保することは重要であり、産業の空洞化が無秩序に進んでいくことを防ぐ必要がございます。
 このため都は、来年度からものづくり産業集積強化支援事業を創設いたしまして、生産設備等の充実や、工場周辺に配慮した対策に取り組む企業への助成などを行う区市町村の事業を支援してまいります。
 次に、中小企業に対する金融支援についてであります。
 都は、都内中小企業のさまざまな資金ニーズにこたえるため、これまでも多様な金融支援策を講じてまいりました。
 制度融資では、震災や円高に対応した経営支援融資の拡充を図る一方で、産業力強化融資により、海外事業展開や事業の多角化などに取り組む企業を支援しております。
 さらに、創業間もない企業の成長に必要な資金を供給するベンチャーファンドに加え、都独自の新保証つき融資制度など、さまざまな手法による金融支援に取り組んでまいりました。
 来年度におきましても、制度融資の目標額を過去最高と同規模の二兆二千億円とし、中小企業の資金調達の円滑化を図るとともに、新たなベンチャーファンドを創設いたします。
 今後とも、こうした取り組みにより、東京の産業基盤を支える中小企業の資金繰りに万全を期してまいります。
 次に、地域の金融機関と連携した新たな金融支援策についてであります。
 都は、本制度について、取扱金融機関の拡大に努めるとともに、中小企業にとってより利用しやすい制度となるよう、利用要件の見直しなどを保証機関に働きかけてまいりました。
 こうした取り組みにより、昨年の八月には借りかえ制度を新設し、融資を利用した中小企業の月々の返済額の負担軽減を図るとともに、申し込み要件を緩和しております。加えて十二月には、資金需要が増加する年度末までの保証料率の引き下げを実施しております。
 来年度におきましても、中小企業の資金ニーズにこたえる融資規模を確保するとともに、引き続き取扱金融機関の拡大やさらなる利便性向上に取り組んでまいります。
 次に、若者の就業対策についてであります。
 若者を取り巻く雇用環境は、やや改善したものの、高い水準にある失業率など依然として厳しい状況にございます。この問題の本質的な解決のためには、国が実効性のある経済対策を進め、雇用を創出することが不可欠であります。
 都といたしましては、正規雇用を望む意欲ある若者に対し、東京しごとセンターにおけるきめ細かい支援などに加え、今年度から、研修と企業での就労体験を組み合わせた未就職卒業者緊急就職サポート事業を開始いたしました。来年度は、事業規模を拡充するとともに、この事業の仕組みを活用し、今後、成長が期待できる産業分野でモデル事業を開始いたします。
 今後とも、こうした対策を通じ、意欲にあふれ、正規雇用を望む若者の就業を支援してまいります。
 次に、東京都版シルバーハローワーク、仮称でございますが、これについてでございますが、高齢者を社会的に支える現役世代が減少していく中で、元気で行動意欲の高い高齢者には、就労や地域活動などに取り組み、これからの超高齢社会を支える担い手役として活躍していただくことが期待されております。
 就労意欲が高い高齢者の活動範囲は広域にわたることも多いと考えられますことから、今後、都としては、地域における就業支援に加え、東京しごとセンターの機能を拡充し、高齢者専門の就業支援窓口である東京都版シルバーハローワークの創設に向けた検討を進めてまいります。
 次に、しごとセンター多摩の移転整備についてであります。
 都は、就業支援サービスを提供する東京しごとセンター多摩を平成十九年に国分寺の労働相談情報センターの施設内に開設いたしまして、これまで七万八千人を超える利用者に対し、きめの細かい支援を実施してまいりました。
 しかし、事業スペースが狭隘で、近年建物も老朽化しているため、平成三十年度を目途に、立川駅前に移転整備することでその機能を拡充いたします。同時に、労働相談情報センター国分寺事務所と同八王子事務所を、交通の利便性の高いしごとセンター多摩と同一施設内に移転統合し、スケールメリットを生かして労働相談事業などを拡充、展開してまいります。こうした取り組みにより、多摩地域における雇用就業施策の強化を図ってまいります。
 最後に、森林の保全についてであります。
 多摩の森林は、水源の涵養や土砂流出の防止等の多面的な機能を持つ、かけがえのない都民共有の財産であるため、森林整備を通じて保全を図ってまいりました。
 北海道において、外国資本による森林買収の問題が報じられましたため、地元情報に詳しい森林組合等の関係団体や市町村の協力を得るとともに、関係各局とも連携して、広く森林売買に関する情報の把握に努めてきております。
 これまで、外資による買収事例は確認されておりません。
 この問題は、全国各地で取りざたされておりますが、本来、国が対応すべきであり、国会において、超党派で議員立法による法案提出の動きがあると承知しております。
 都は、国や他県との連携を密にして、引き続き売買情報の把握に努めてまいります。
   〔中央卸売市場長中西充君登壇〕

〇中央卸売市場長(中西充君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、中央区との合意を受けた都区検討会についてでございます。
 築地地区は、都心や銀座に近接した極めて高いポテンシャルを有するまちであり、築地市場を中心とした食文化の拠点として、食のプロや観光客からの支持を集めることでにぎわいを生み出しており、市場移転後におきましても、このにぎわいを引き継ぎ、発展させていくことが重要でございます。
 このため、都は、今年度、区の協力を受け、築地場外市場の実態調査を行うとともに、観光客などの築地市場来街者の意識調査を実施しております。また、区におきましても、区有地を活用し、築地市場移転前までに仮店舗を開店することとしており、平成二十四年度予算案に設計費を計上しております。
 今後、都区検討会を四月にも立ち上げ、築地市場移転と整合をとったスケジュールを都区双方で共有し、築地地区のにぎわいを途絶えることなく継承するよう、結論を取りまとめてまいります。
 次に、移転支援のあり方に関する東卸組合との協議についてでございますが、ご指摘のとおり、過日、組合理事長が、新市場について東京都及び関係団体との協議に積極的に取り組む方針を示し、組合内に豊洲新市場整備計画検討チームなどの設置を表明いたしました。
 今般、都は、具体的な移転支援策を策定し、公表しましたが、詳細な支援策を検討していく上で、引き続き業界団体と協議していくことが重要でございます。特に、東卸組合の組合員である水産仲卸業者については、今後の事業継続に関してさまざまな立場からの要望が想定されることから、組合が移転に向けての協議に積極的な態度を表明し、その窓口を設置することは、今後、具体的に協議を進める上で有意義でございます。
 都は、こうした市場業者の事情を考慮しながら、各事業者が抱えるさまざまな不安や要望に耳を傾け、移転に伴う支援策について、東卸組合を初め各業界団体と真摯に協議してまいります。
 最後に、土壌汚染対策工事に対する理解促進への取り組みについてでございます。
 都はこれまでも、工事に着工する前に、汚染物質の処理方法などについて技術会議の確認を経て、その内容を広くホームページで公開することに加え、地元住民に対し工事説明会を開催するとともに、市場関係者に対しては適宜情報提供を行っております。
 ご質問の市場関係者や学識経験者などを構成員とした協議会については、対策工事後ではなく、工事の進捗を踏まえた適切な時期に設置することを考えており、具体的には、仮設土壌処理プラントの整備が完了し、処理後の結果をお示しすることが可能となる時期を予定しております。
 また、汚染土壌処理後の分析結果などを広く都民に公開していくとともに、処理プラントの見学会を開催することも予定しております。
 都としては、こうしたきめ細やかな取り組みを引き続き行うことで、都民や市場関係者の理解と信頼を得ながら、土壌汚染対策工事を確実に進め、安全・安心な市場を整備してまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、スポーツ祭東京二〇一三についてでございます。
 多摩・島しょを中心に東京都全域で開催いたしますこの大会を成功させるためには、広く都民に大会を知っていただき、開催機運の醸成を図ることが極めて重要でございます。
 このため、本年四月から各市区町村において開催される競技別のリハーサル大会や、さまざまなスポーツイベント等で、マスコットキャラクター、ゆりーとの活用など、積極的な広報活動を推進してまいります。
 また、全国から訪れる選手や観客など多くの人々をおもてなしの心で歓迎するため、都民が栽培した花によるまちの装飾や、大会ボランティアとしての参加を呼びかけるなど、都民運動を展開することとしております。
 今後とも、市区町村と連携し、スポーツ祭東京二〇一三の成功に向けて、開催機運の醸成を図ってまいります。
 次に、オリンピック・パラリンピック招致活動における日本独自の文化や精神についてでございます。
 オリンピック・パラリンピックの招致は、国と国とが、すぐれた計画、それを支えるインフラ、経済力、そして、開催都市としての魅力をもって競う総力戦でございます。そのため、招致活動において、日本のよさ、強みを積極的にアピールしていくことは極めて重要と認識しております。
 その際、フェアプレーの精神や勤勉さなど、日本人が古くから持つ文化や精神はアピール材料の一つでございまして、今回の申請ファイルでも、日本ならではのおもてなし、友情、地域社会との交流などをうたっているところでございます。
 今後、各種の国際スポーツ会議やロンドン・オリンピック・パラリンピックの際も、その場にふさわしい方法で、日本独自の文化や精神をアピールしてまいります。
 最後に、パラリンピックのアピールについてでございます。
 障害者スポーツの抱えるさまざまな課題を解決するためには、パラリンピックという最高峰の大会の招致、開催を通じて、人々の認知度を高めることが最も有効な手段の一つであると認識してございます。そのため、招致活動のあらゆる場面で、パラリンピックをオリンピックと同等にアピールするよう努めております。
 例えば、「二〇二〇年オリンピック・パラリンピックを日本で」のスローガンなどで両大会名を併記することや、記者発表などの機会に、オリンピアン、パラリンピアン双方に参加してもらうことなどもその一例でございます。
 今後は、バリアフリー化の加速など、申請ファイルに記載したパラリンピック開催の効果についても、都民、国民にわかりやすくアピールしてまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 東京の交通政策の展開についてでございますが、都はこれまでも、東京の都市づくりビジョンにおいて、広域交通インフラの強化を基本戦略の一つとするなど、交通施策を体系的に位置づけ、陸海空を結ぶ交通、物流ネットワークの強化に取り組んできております。
 このたび策定した「二〇二〇年の東京」計画においても、これをさらに推進することとしております。例えば、羽田空港や京浜三港の機能の拡充を図るとともに、それらと首都圏との連絡を強化する三環状道路など広域的な道路ネットワークの整備を推進してまいります。また、ターミナル駅の再編整備をまちづくりと一体的に行い、利便性や安全性の向上などを図ってまいります。
 今後とも、快適で機能的な交通、物流ネットワークの構築に向け、重層的、複合的に交通施策を展開してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 六点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、養育家庭へのサポート体制についてでございますが、都は、来年度、里親からの相談に対応する民間団体等を活用した里親支援機関事業をすべての児童相談所に拡大いたしまして、夜間、休日の相談にも対応するとともに、定期的な養育家庭への訪問を実施いたします。
 また、社会的養護を必要とする児童を養育しております乳児院や児童養護施設に専任の職員を配置いたしまして、養育家庭からの相談に対応をいたします。
 児童相談所におきましても、これまで実施してまいりました児童福祉司の家庭訪問や来所による指導に加えまして、定期的に里子の心理面接を行うなど、里親、里子に対する支援を強化してまいります。
 次に、社会的養護のもとで育つ児童の自立についてでございますが、都はこれまで、児童養護施設を退所した児童に生活や就労に関する相談や指導を行う施設に対し、独自に補助を行うなど支援を行ってまいりましたが、昨年実施した児童へのアンケートでは、措置解除後も、相談相手として施設や養育家庭に寄せる期待が大きいことが改めて明らかになりました。
 このため、来年度から、児童養護施設に、退所した児童の相談に対応する専任職員を新たに配置いたしますとともに、委託期間を終えた里子の自立に向けて、養育家庭が行う援助に対しましても必要な経費を支援いたします。
 こうした都独自の取り組みにより、社会的養護のもとで育つ子どもたちの自立に向けた相談支援体制を強化してまいります。
 次に、東京都がん対策推進計画における目標についてでございますが、都は、平成十九年四月のがん対策基本法施行を受け、同年五月には、学識経験者や関係団体、患者代表などにより構成いたします東京都がん対策推進協議会を立ち上げ、がん対策推進計画策定に向け検討を開始いたしました。
 協議会では、がん患者数が全国に比べ突出していることや、高度ながん医療を提供する医療機関も多いなどの都の特殊性を踏まえまして、分野別施策や個別目標について議論を行い、計画に反映をさせております。
 具体的には、国に先立ちまして、がん診療連携拠点病院の指定要件に、外来化学療法やセカンドオピニオンの実施などを追加いたしまして、都独自に創設する東京都認定がん診療病院についても同様に実施を求めることにいたしました。
 また、二次保健医療圏を超えて受診するがん患者が多いことを踏まえ、地域連携を推進するために、全都で統一の地域連携クリティカルパスを作成することとし、現在、東京都医療連携手帳として活用されております。
 今後、都が計画に基づき推進してきた施策の成果や国の動向を踏まえまして、東京都がん対策推進協議会において、都の特性を反映した数値目標やその達成に向けた施策などについて検討し、来年度改定をいたします推進計画において定めてまいります。
 次に、緩和ケアの人材育成についてでございますが、都は、緩和ケアの普及拡大と質の向上を図るため、医療従事者等を対象にシンポジウムを開催いたしますとともに、がん診療連携拠点病院及び東京都認定がん診療病院におきまして、がん性疼痛の管理に関する講義や緩和ケアチームの臨床実習など、実践的な研修を実施いたしております。また、患者、家族の精神的苦痛にも対応できるよう、医師を対象にがん患者の心理状態などについての研修も実施いたしております。
 今後は、こうした研修に加えまして、二次保健医療圏ごとに職種別の症例検討会を実施するなど、緩和ケアに携わる医師、看護師や薬剤師などの人材育成を推進してまいります。
 次に、認定看護師の育成支援についてでございますが、都は、平成二十年度から、医師の勤務負担軽減を図りますとともに、質の高い看護を提供するため、救命救急センターや周産期母子医療センターなどにおいて、救急看護、新生児集中ケア等の認定看護師の育成を支援してまいりました。現在、都内の認定看護師は千百三十一人となっており、全国で最も多くなっております。
 来年度からは、これまでの取り組みに加えまして、地域医療の中心となる中小病院における看護師の定着促進と看護の質の向上を図るため、研修受講料や認定審査料を補助するなど、新たな支援策を設けまして、認定看護師の資格取得を引き続き支援してまいります。
 最後に、地域がん登録についてでございますが、都は、本年七月の地域がん登録の開始に向け、より多くの医療機関の協力が得られますよう、都内の医療機関に対する説明会を二回開催いたしました。説明会には、院内がん登録が義務づけられておりますがん診療連携拠点病院及び東京都認定がん診療病院を初め、約百五十の医療機関から関係者が参加いたしております。
 また、患者の予後状況の確認に必要な人口動態統計の情報を正確に提供してもらえるよう、区市への説明会も今月二日に実施をいたしておりまして、現在、各自治体は、個人情報に関する審議会への付議など、情報を都に提供するために必要な手続を進めているところでございます。
 今後とも、医療機関や区市町村への説明を行い、地域がん登録の充実と精度向上を図ってまいります。

〇議長(中村明彦君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二分休憩

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