平成二十三年東京都議会会議録第十八号

〇議長(和田宗春君) 二十五番星ひろ子さん。
   〔二十五番星ひろ子君登壇〕

〇二十五番(星ひろ子君) 長く続く経済不況、未曾有の大災害に見舞われ、この国は厳しい状況が続いています。
 先日、教育再生円卓会議が開催されましたが、厳しい国難に立ち向かっていくために、今こそ次世代の力をたくましく培うことが必要です。子ども、若者にさまざまな体験の機会を与え、真の力をはぐくむ取り組みが重要だと思いますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 東日本大震災からもうすぐ九カ月がたとうとしています。宮城、岩手県では、子どもたちが学校に戻り、日常を取り戻す取り組みが行われ、福島県相馬市では、ふるさと相馬子ども復興会議が設立され、子どもたちの復興への意見を出す取り組みが展開されています。
 セーブ・ザ・チルドレンが七月に行った調査では、八割以上の子どもたちが、自分たちも地域の一員として復興に関与したいと考えていることがわかりました。
 一方、この震災による子どもの被災状況でわかったことは、学校で把握した児童生徒に関する情報と親の存在の有無でひとり親や孤児になったりした子どもの数だけでした。
 また、ようやく進み始めた国の復興計画案でも、子ども支援の内容は学校教育と心のケアのみであり、子どもの生活全体を支援する視点はありません。地域防災計画の修正に当たっては、災害時の対応における子どもへの配慮の視点から、今回の震災で対応に当たった人の話を聞くなどの取り組みにより、防災対策に生かしていくことが必要と考えますが、都のご見解を伺います。
 災害によるトラウマは、持続的、慢性的な状態から引き起こされる方が、急性の体験によるものよりも、子どもにとって心の成長に大きく影響するといわれています。都は被災地に臨床心理士や児童福祉司などの専門家を派遣しましたが、いずれも短期間で、不足する現地スタッフの一時的なサポートにとどまるものであり、継続的に子どもと直接かかわるまでには至っていないのが現実です。
 被災した子どもや保護者への支援を適切に行うため、児童相談所、子ども家庭支援センター等、関係機関による日常的な連携に加え、災害時における連携のあり方、事前協議など、取り組みの強化が重要であると考えますが、都の所見を伺います。
 次に、農薬に頼らない農業についてお伺いいたします。
 食の安全は今、放射能問題に関心が集中していますが、もともと農薬の問題が大きくありました。生産性を高めるために使われる農薬は、適切な時期を選んで毒性の低いものを最小限使用するよう、努力されてきました。有機燐系農薬にかわって毒性を低減すべく開発されたのがネオニコチノイド系農薬で、神経を興奮させ続けることで昆虫を死に至らしめるものですが、一九九〇年代に開発されて以降、農業用だけでなく、松枯れ防止、床下のシロアリ駆除、園芸用殺虫剤などにも多用されるようになり、昆虫のみならず、人、特に胎児や子どもの脳への影響も懸念されています。
 そんな中、ミツバチの大量死や失踪が、一九九四年以降、世界各地で報告され、この農薬が原因の一つではないかと推測されて、フランスでは規制の対象農薬となりました。ミツバチは銀座でも飼育されていることがメディアにも取り上げられましたが、都は養蜂ガイドラインをつくって、飼育の届けを出すよう指導しています。都内のミツバチ飼育の状況をどのように把握しているのか伺います。
 人類の食料の三分の一は植物に依存しており、ミツバチなどの昆虫はこれらの植物の八割の受粉に寄与しているとのことです。ミツバチの大量失踪が教えてくれるのは、生態系の危機であり、私たちの食料自給率に大きくかかわってくるものだということです。
 農薬は、使用が進むと予期せぬ副作用や効き目の減衰で使用中止になることが繰り返されてきました。近年、低毒性で多用されてきたネオニコチノイドも同じような時期を迎えたといえますが、代替農薬はまだ見つかっていません。人に対して低毒性といえども、できる限り使用を減らした農業を推進すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、廃棄物処理について伺います。
 建築廃棄物のリサイクルの推進に伴い、アスベスト含有建材等が紛れ込んでいるのではないかという不安の声が市民から寄せられました。これを受けて、都は対策を強化したと聞いていますが、阪神大震災でもアスベスト被害が指摘されたことから、東京都に搬入された震災瓦れきについても、アスベストの混入が懸念されます。
 実際に私も震災後の六月に、名取市の閖上地区に視察に行った際、海岸線に何もかも混在した瓦れきの山や粉じんを巻き上げるトラックを見て、処理の困難さを実感しました。市民の不安にこたえる科学的実証データの開示など、市民が納得する説明責任を都は果たすべきです。
 都としてどのような説明などの対策をとっているのか。また、検査機器の整備や、目視でのチェックで確実に見分けられるような検査員の研修や安全対策などが必要であると考えますが、都の見解を伺います。
 震災後、多摩地区の下水処理汚泥の焼却灰が、大田区で処理されることになりました。また、先行して受け入れた震災廃棄物も、大田区と江東区の事業者が請け負うことになっています。放射能汚染については、受け入れの事前事後の入念な計測を行っていると思いますが、通常以上のごみ量を引き受けるので、その分、搬入と処理、処分によって環境負荷が増加することは否定できません。
 スーパーエコタウンについては、環境負荷の高い施設が集中しており、それぞれの事業で環境アセスはクリアしていても、全体としての環境負荷は高まります。アセスの対象要件を少し下回る計画が多いことなども問題です。集中する地域では、アセスの要件を厳しくするなどの対応が必要ではないかと考えますが、ご見解を伺います。
 最後に、本定例会に上程されている東京都児童会館を廃止する条例について伺います。
 渋谷区にある児童会館で行われていた事業は、現在建設中の仮称子ども家庭総合センターに移行されます。この子ども家庭総合センターは、現在の福祉保健局の児童相談センター、教育庁の教育相談センター、警視庁の新宿少年センター及び児童会館が集約されることにより、機能を強化させると説明を受けています。
 そこで、子ども家庭総合センターはどのような目的があり、とりわけ今回廃止する児童会館の事業がどのような形で継承されることになるのか、改めて伺います。
 子どもに関する相談は、児童虐待や子育てに関する相談、教育や進路に関する相談、非行問題や犯罪被害等に関する相談などがありますが、各機関の相談機能を集約し、子どもと家庭に関するあらゆる相談に、より一層適切に対応していくことが求められます。
 一方、児童相談センターの中では、子どもに対して虐待やいじめ等の権利侵害の問題が生じた場合に、外部の専門家が子どもと関係機関との間に立ち、助言や調整を行う、子どもの権利擁護専門相談事業が、二〇〇四年度から実施されています。電話相談と専門家による調整活動が一体となり、継続的にかかわりながら問題解決を図っていく有効な取り組みと評価しています。
 二〇一〇年三月には携帯電話からの電話相談も可能となり、利便性が高まって相談件数が増加するなど、子どもにとってさらに身近なものになってきました。
 子ども家庭総合センターでは、相談に対する対応はどのように行われるのでしょうか。また、子どもの権利擁護専門相談事業については、センター設置後も引き続き実施していく必要があると考えますが、都のご所見をお伺いいたしまして、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 星ひろ子議員の一般質問にお答えいたします。
 子どもたちの実体験についてでありますが、携帯電話、パーソナルコンピューター、テレビのいわゆる三つのスクリーンは、若者の資質を大きくひ弱に変えつつあると思います。情報の分析や評価を、結局またその情報に任せてしまうならば、それは情報はただの情報でしかなくて、血肉化しないために、真の教養とはなり得ないと思います。
 これは若者の実体験の乏しさでもありまして、勘違いや思い違いを恐れる余り、情報のつくる虚妄にすがって、挫折を体験しないで過ごそうとする生きざまは、結局ひ弱な人間だけをつくってしまうものだと思います。
 人間は、他人との摩擦、相克の中でこそ鍛えられるものでありまして、たくましく耐性を備えていくことが人生にとって肝要でありますが、強くしたたかな若者なしには、これからの日本は立っていかないと思います。
 さきの教育再生・東京円卓会議では、こうした危機感を共有する有識者と議論いたしました。
 学生寮の共同生活や体験学習など、子どもたちに原体験を積ませることで、身体性を備えた真の教養がはぐくまれる実践例が幾つも紹介されまして、社会的意義のあるボランティア活動や地域の企業における就業体験など、さまざまな機会を通じて社会的な体験を得ることは、子どもがその後のたくましい人生を切り開くための確かな手がかりを与えるに違いないと思います。
 今後、東京円卓会議においても、若者の知識や体験に身体性を付与するために我々は何をしなくてはならぬかということを本気で考えて議論していかなくてはならないと思います。
 ちなみに、隣の韓国では、高校を卒業する年齢で、これはほとんど強制的に二年間、兵役につかせるようでありますが、そこまでいかなくても、例えば一年なり二年なり、警察でも消防でも軍隊でも結構ですし、または海外協力隊でも結構ですが、私はそういう集団生活をするということが、若者たちにとって、私はかえがたい人生の糧になるのではないかという気がいたしております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 子どもの視点に配慮した防災対策についてでございますが、災害発生時には、乳幼児、児童生徒等の子どもを含めた災害時要援護者に対し、その特性や実情に即したきめ細やかな対応が必要となることは当然であり、現行の地域防災計画においても、学校における災害時の対応や災害時要援護者への安全確保対策等を盛り込んでおります。
 今回の東日本大震災の教訓を踏まえ、長期にわたる避難生活等によって子どもに生じた課題や対応策について、被災地の自治体や現地でボランティア活動を行った方の生の声を聞くなど、さまざまな機会をとらえて実情の把握に努め、今後の地域防災計画の修正に反映をしてまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、被災した子どもや保護者への支援についてでございますが、災害時に子どもや保護者への支援を迅速かつ適切に行うためには、日ごろから児童相談所や区市町村の子ども家庭支援センター、保健所等の関係機関の連携体制を構築しておくことが重要でございます。
 そのため、都におきましては、これまで児童相談所に地域支援を行う職員を配置するほか、区市町村ごとに関係機関から成ります要保護児童対策地域協議会を設けまして、合同でケースを検討する場を定期的に開催するなど、情報の共有化と連携の強化に努めてまいりました。
 今後とも、子どもや家庭からの相談に適切にこたえ、災害時にも効果的な援助が実施できますよう、こうした取り組みを一層進めてまいります。
 次に、仮称でございますが、子ども家庭総合センターについてでございますが、このセンターは、児童虐待や非行など複雑、深刻な事例が増加している中、子どもと家庭を総合的に支援することを目的として設置するものでございます。
 具体的には、福祉保健、教育、警察の各相談機関が専門性を生かしまして相談に対応しますほか、いじめなどで傷ついた子どもの心のケア、児童虐待等により分離した家族の再統合の支援などを行うことといたしております。
 児童会館につきましては、その機能をセンターに移転いたしまして、これまで蓄積をしてきたノウハウを生かし、遊びに関する情報提供や、科学や木工等に関する出前講座の開催、職員研修やシンポジウムなどによります人材育成等を行い、区市町村における地域児童館の取り組みを支援してまいります。
 最後に、子ども家庭総合センターと子どもの権利擁護専門相談事業についてでございますが、このセンターでは、福祉保健、教育、警察の三分野の相談機関が連携をいたしまして、児童虐待のみならず、不登校、非行など、子どもに関しますさまざまな相談を幅広く受けとめますとともに、相談内容に応じて最も適切な機関が専門的な対応を行い、総合的に支援することとしております。
 また、現在実施しております子どもの権利擁護専門相談事業は、センターが開設した後も引き続き実施いたしまして、子どもや保護者からの悩みや訴えを相談員がフリーダイヤルで直接受け付けるとともに、深刻な相談には弁護士などの専門員が適切に対応してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都内のミツバチの飼育状況についてでありますが、養蜂業者は養ほう振興法で届け出が義務づけられておりまして、都では平成二十三年一月一日現在、五十八戸の届け出でございます。
 また、近年では養蜂業者以外に、趣味などでミツバチを飼育する者も多いことから、都では平成二十二年に東京都養ほうガイドラインを策定し、周辺とのトラブルや、ミツバチがかかる伝染病の蔓延の防止のため、飼育届の提出について指導を行っておりまして、七十二戸が届け出されております。
 次に、減農薬農業の推進についてでありますが、現代の農業におきましては、農産物の安定的な生産供給のためには、農薬の適正な使用が欠かせないところでありますが、同時に農薬をできる限り減らす不断の努力が求められております。特に、東京農業は住宅地に近接しておりますことから、農薬の使用法にも格段の配慮が必要であります。
 そのため、都は平成六年から、東京都環境保全型農業推進基本方針に基づき取り組みを開始いたしまして、都内すべての生産者が環境保全型農業に取り組むよう促しております。
 具体的には、農薬を減らした病害虫防除技術の研究開発や、その成果の農家への技術移転を実施し、環境保全型農業を推進する農家を支援してまいりました。
 今後とも、環境に配慮し、安全・安心な農産物の生産を推進してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、災害廃棄物のアスベスト対策についてでございますが、被災地の仮置き場と選別エリアでは、手選別作業でアスベストを含有するおそれがあるスレートやコンクリート塊等を取り除いております。都が受け入れる廃棄物は、選別された後の木くずやプラスチックが中心となりますので、アスベストの混入の可能性は低いものとなっております。
 これに加えまして、都では専門家によるアスベストの判別研修を受けた東京都環境整備公社の職員を現地に常駐させておりまして、スレート等の除去を確認させております。職員には粉じん対策として防じんマスクを着用させ、アスベスト含有の有無を迅速に判断できるよう、拡大鏡等を常備させております。
 なお、都内自治体の清掃工場等で災害廃棄物を受け入れる際に行う住民説明会では、被災地でのアスベストの除去方法について丁寧に説明を行ってまいります。
 次に、施設の集中する地域における環境影響評価についてでございますが、環境影響評価は、条例等に定められた要件に基づきまして環境への影響を予測、評価するもので、事業者は事業の実施に当たって、その地域において既に稼働している施設等の影響も含め、予測、評価することになっておりますので、施設の集中による環境影響も評価されております。
 なお、お話のスーパーエコタウンの各施設は、東京の企業活動から排出される廃棄物のリサイクルを進め、資源循環型社会づくりに貢献する重要な役割を果たすものでありますが、その設置許可に当たりましては、事業者が設定した法を上回る自主管理値に基づき、施設が周辺地域の生活環境に及ぼす影響を審査しております。
 災害廃棄物の受け入れは、その許可された処理能力の範囲内でございますので、環境への影響は問題ないものと認識をしております。

〇議長(和田宗春君) 以上をもって質問は終わりました。

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