平成二十三年東京都議会会議録第十八号

〇議長(和田宗春君) 一番小林健二君。
   〔一番小林健二君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇一番(小林健二君) 初めに、我が国が誇る技術の開発力と科学技術教育について質問します。
 私は先日、社団法人日本能率協会が主催した、ものづくりNEXT二〇一一という展示会に行ってまいりました。
 革新的なものづくりの情報を発信する展示会であるだけに、製品を壊さずに検査を行うハイレベルな技術や3D画像を活用して試作品を高速でつくり上げる装置など、改めて日本の持つ技術力の高さと、ものづくりの力が脈々と受け継がれていることを実感いたしました。
 幕末に黒船で来航したペリーが日本への遠征記録をまとめたペリー提督日本遠征記の中に次のような記述があります。
 技術分野では、日本人の腕前は大したものである。彼らの粗末な道具や機械の知識の不完全さを考えてみれば、彼らの手先の器用さは驚異的に思われる。日本の職人の技術の高さは、世界のどの国の職人にも劣らないものであり、国民の発明力がもっと自由に発揮されるならば、世界の最も進んだ製造業国に肩を並べる日も遠くないことであろう。このように日本人の技術力を評しています。
 今日、このペリーの予言は現実のものとなり、ものづくりは我が国を支える産業の礎となっていることは論をまちません。
 知事は、今定例会の所信表明の中で、技術の開発力こそ国力の源であると述べられましたが、技術の開発力と東京の活性化について知事の所見を伺います。
 そして、この技術の開発力を向上させていくために、とりわけ大切な取り組みが科学技術教育の充実であります。
 本年四月の科学技術週間の標語募集で最優秀となったのは、港区の小学校六年生の「輝いている科学するときのあなたの目」という作品でありました。優秀作品には「身のまわりすべてが科学の宝箱」「すぐそこのまさかの発見見つけよう」などが選ばれておりました。いずれも科学の魅力やおもしろさを実に見事に表現していると思います。
 青少年が科学や理科への関心や興味を高めていくためにも、都有施設の開放やさまざまな機関の連携した取り組みが必要であると考えます。
 昨年、首都大学東京では、児童生徒を対象にして、遊びながら科学を学ぶサイエンスキッズワークショップを開催し、好評を博したと聞いております。
 こうした首都大学東京における科学への興味を高める事業については、新たな取り組みも含め、さらに充実させていくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、東京の文化財建造物の保護について質問いたします。
 中国敦煌の仏教遺跡、莫高窟の保護に生涯をささげた、敦煌の守り人といわれる常書鴻画伯は、敦煌の地へ赴いた心境を、私は決して自分のために行ったのではありません。祖国と人類の文化のためです。どうしても、あのすばらしい芸術を守りたかったと述べています。
 常書鴻画伯を初め、文化財を守り抜いてきた先人の絶え間ない努力によって、今、私たちは、人類の宝である文化遺産から歴史の呼吸を感じることができます。
 しかしながら、これらの貴重な文化遺産も災害によって甚大な被害を受け、喪失してしまう事例は歴史上多数存在します。
 殊に、東日本大震災では、国が指定した文化財だけでも四百件以上の被害があり、文化庁長官は、文化財保護法制定以来の最大の試練と述べています。
 平成十五年六月、内閣府、国土交通省、消防庁、文化庁により、災害から文化遺産と地域をまもる検討委員会が組織されました。
 この検討委員会には、当時の東京都危機管理監も委員として名を連ねており、翌平成十六年七月には、地震災害から文化遺産と地域を守る基本的な観点や計画の考え方を取りまとめました。
 その冒頭において、巨大地震に対する対策が進められている一方、文化遺産に関しては、これを代替性のない特別なものとして扱う視点が欠けていたこと、また、一九九五年の阪神大震災までは、地震後の同時多発火災の神社仏閣への延焼などのような、外からの災厄に対する視点が欠けていたという指摘がなされています。
 東日本大震災における甚大な文化財の損傷、喪失の現実を目の当たりにし、首都直下型地震が懸念される中、後世に先人の遺産を伝えていくためにも、東京における災害時の文化財建造物保護の取り組みを一層強化していくべきです。
 都では、文化財所有者が保存活用計画を策定する際、防災計画などの優先度の高い事項を先行させるよう指導助言を行っていますが、文化財の立地状況や周辺の災害危険度などを念頭に置いた具体性のある防災計画としなければならないと考えます。見解を求めます。
 また、文化財建造物を災害から守るには、文化財所有者と地域住民とが連携して防災対策に取り組み、災害時にはその両者が一体となった防災活動に取り組むことも大切です。
 そのためには、地域の人々が文化財建造物に触れ合い、親しみを持つことによって、地域の大切な資産であるとの認識を高めてもらう取り組みが必要と考えます。見解を求めます。
 さらに、文化財建造物の保護は、担当部署だけで取り組めるものではなく、多角的な視点を持って講じていかなければなりません。今後、庁内の関係各局が一体となって連携し、保護策に取り組んでいく体制の構築を強く要望いたします。
 次に、携帯情報端末利用のあり方について質問します。
 今や多くの人の生活の一部となっている携帯電話が普及して久しい今日、それに取ってかわる勢いで今普及しているのが、本年の流行語大賞のトップテンにも入ったスマホ、いわゆる多機能型携帯電話のスマートフォンであります。
 ある民間会社の調査によれば、昨年九月のスマートフォン所有率が九・〇%だったのに対し、本年九月の調査では二二・九%と増加しており、現在利用していない人でも今後の利用を検討している人は六六・六%に上り、高い関心が持たれています。
 しかしながら、この急速な普及の裏で、スマートフォンの使い方における危険性も指摘され始めています。スマホ普及の年といわれる本年、国民生活センターに寄せられたスマートフォン関連の相談件数は、昨年の五百四十二件に対し、本年は十月末日時点で一千七百八十九件と三倍以上に増加しているとの報告がありました。
 歩きながらスマートフォンを見る人もまち中で多く散見され、注意散漫による通行人との接触事故や、スマートフォンの大きな特徴であるアプリケーションソフトの使用による盗撮事件なども露見しております。
 今後、さらに利用率が高まるであろうスマートフォンを正しく利用していくためにも、その特徴や利用のあり方の普及啓発や注意喚起をしていく必要があると考えます。
 都では、インターネットや携帯電話を利用したトラブルから青少年を守るために、保護者や児童生徒向けにファミリeルール講座や、専門講師を派遣した出前講演会の事業展開を実施していますが、今後のスマートフォンの普及状況や問題点などを的確に把握し、内容も充実していくべきと考えます。見解を求めます。
 また、青少年を中心として広く都民に注意喚起をしていくためにも、さまざまな媒体を利用してトラブル防止のための普及啓発をしていく取り組みが必要であります。見解を求めます。
 一方、利便性に富んだスマートフォンを有効活用している事例もあります。
 このたび、都は、初めてスマートフォンを活用して、まちの情報を多言語で提供する実験を行うと聞いております。普及しつつあるスマートフォンをまちのガイドとして活用することは先駆的な取り組みであり、高く評価するものであります。
 このたび行われるスマートフォンを活用した東京ユビキタス計画・銀座の具体的な実験内容について答弁を求めます。
 なお、今後、すべてのスマートフォンの機種で情報提供がなされることを期待しております。
 また、私は先日、広島市が取り組んでいる救急医療コントロール機能システムの視察をしてまいりました。救急隊の搬送を効率的、迅速に行うため、救急を受け入れる病院と救急車にそれぞれスマートフォンを配備。病院側は受け入れの可否を入力し、救急隊は地域や診療科目を選択し、検索するとリアルタイムの病院の受け入れ体制が表示されるシステムです。
 十月より運用が開始されたシステムですが、持ち歩けることや情報入力の手軽さなど病院、救急隊の双方の負担軽減や利便性が期待されています。
 東京消防庁では、既に救急医療機関の病院端末装置と救急隊の車載端末装置による救急医療情報システムが活用されていますが、今後、救急活動を初め現場で活用するシステムを更新、あるいは改修していく際に、最先端の技術を導入することの意義について所見を伺います。
 最後に、都立練馬特別支援学校の通学の安全確保対策について質問します。
 都立練馬特別支援学校は、来年四月に開校する高等部のみを設置する知的障害特別支援学校でありますが、保護者の皆様から、同校が最寄り駅からの徒歩通学に時間を要することや、学校周辺の道路が狭隘で交通量が多いことなどから、通学の安全を心配する声が私のもとにも多数寄せられています。
 また、知的障害特別支援学校高等部は一人通学を原則としており、高等部のみを設置する学校にはスクールバスの配車がないため、障害が重い生徒の保護者の方は送迎に関する不安があり、ぜひスクールバスの配車を検討してもらいたいとの強いご要望をいただいております。
 保護者の皆様が安心して子どもを通わせることができるよう、地元住民の方々のご理解もいただきながら、スクールバスの配車も視野に入れ、練馬特別支援学校への通学の安全確保策を講じるべきと考えます。見解を求め、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 小林健二議員の一般質問にお答えいたします。
 東京における技術の開発力についてでありますが、先ほどもペリーの日本遠征記の話がありましたけれども、我が国のものづくりの技術というのは、まさに日本人の希有な感性が結実したものだと思います。
 例えば、恐らくペリーも見て驚いたでしょうけれども、江戸時代の浮世絵の版画の刷り板の彫り込みというのは、現代の要するに彫り師が機械をもってしても及ばないぐらい巧緻なものでありました。そういう技術のすばらしさというのは枚挙にいとまがありませんけれども、東京のまち工場の技術も取り入れた小惑星探査機「はやぶさ」の快挙を見るにつけても、日本が持っている技術の開発力は国家の実力そのものでありまして、私たちの先祖が培ってきた努力のあかしであると強く感じております。
 東京には、高度な新技術を縦横に使いこなし、その応用を図る多様な産業の集積に加えて、洗練された大きなマーケットがありまして、他の追随を許さない画期的な技術を生かし切る潜在能力がございます。
 都は、これまでもベンチャー技術大賞を創設して、世界に通用するすぐれた技術を表彰してまいりました。本年大賞となった新しい発想でつくられたねじは、製品の安全性や耐久性を飛躍的に高める機能を持って、どんなことをしても緩まないという、すばらしい、簡単なようで、これもたった二人の要するに工場がつくったものですけれども、これは、本当に東京のものづくりの底力を示すものにほかならないと思います。
 こうしたすぐれた技術開発が数多く実現するよう、この十月に開設した都立産業技術研究センター新本部などを通じた支援の充実を図るとともに、卓越した開発の成果が盗み専門の隣国に盗まれたりしないように、知的財産総合センターによるサポートも力を入れていきたいと思います。
 今後とも、こうした取り組みによって中小企業の技術開発力を高め、東京の産業の活性化に結びつけていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長、関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、文化財の防災計画についてでございます。
 防災計画は、文化庁の定める指針にのっとり、文化財建造物の保存活用計画の一部として、その所有者や管理者が策定するものでございます。
 その策定に当たりましては、文化財建造物個々の防災設備の整備にとどまらず、文化財建造物が火災や震災、風水害等によって周辺からの被害を受けることのないよう、地域の状況に十分配慮した計画とすることが重要でございます。
 都教育委員会としては、今後、所轄消防署等との一層の連携を図り、類焼等、周辺からの被害を最小限にとどめる防災計画となるよう、適切な指導及び助言を行ってまいります。
 次に、文化財建造物の防災活動についてでございます。
 文化財建造物を地域の人々の力で災害等から守るという意識を醸成していくためには、文化財への理解と愛着を深める機会を増加させることが重要でございます。
 このため、都教育委員会では、毎年十一月三日の文化の日を中心とする東京文化財ウイーク事業を実施しておりまして、その一環として、区市町村と連携した地域の文化財の特別公開等を行っております。
 また、文化財建造物の修復工事現場を公開し、地域の住民や小中学校の児童生徒等を対象にした見学会も開催しております。
 今後とも、文化財建造物が地域の資産として愛され、守り続けられるよう、地域住民に着目した普及啓発活動に取り組んでまいります。
 次に、練馬特別支援学校の通学の安全確保についてでございます。
 知的障害特別支援学校高等部では、卒業後の自立と社会参加に向け、保護者の理解と協力のもとで一人通学を進め、社会体験の充実を図っております。
 都立練馬特別支援学校の通学の安全確保につきましては、現在、学校や地元自治体等とも緊密な連携を図りながら対応策を協議しております。
 今後とも、学校周辺の道路の状況や公共交通機関の利用事情、保護者の要望等を十分に踏まえ、通学の安全と安心の確保に向けた具体的方策をさらに検討してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 首都大学東京における科学への興味を高める取り組みについてでございますが、首都大学東京は、次代の東京を担う人材を育成するとともに、教育研究の成果を広く社会に還元していくことも重要な使命としております。
 社会還元の一つとして、お話のサイエンスキッズワークショップのほかに、日本学術振興会などと連携し、中学生などを対象とした磁石の不思議な世界を体験する講座や、女子中高生を対象に理系分野に興味を持ってもらう東京理系女子探検隊プロジェクトなどを実施してまいりました。
 また、都立産業技術高等専門学校では、親子ものづくり教室を開催し、戻る紙飛行機などの製作を通して科学を身近に感じるような取り組みを行っております。
 今後とも、児童生徒が、見たり聞いたり触れることで科学の魅力を体感できるよう、これらの事業の充実を図るとともに、新たな取り組みについても検討してまいります。
〔青少年・治安対策本部長樋口眞人君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(樋口眞人君) スマートフォンについての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ファミリeルール講座等の充実についてでありますが、近年、スマートフォンの所有者が急増していることに伴い、通話記録等の個人情報の流出を初め、さまざまな問題が生じていることは認識しております。
 このため、都では、ファミリeルール講座や出前講演会において、保護者等に対してスマートフォンを利用する上での危険性、例えばアプリケーションをダウンロードする際に個人情報を盗み取られるおそれがあることや、スマートフォン等の操作に集中する余り、転倒するおそれがあることなど、実際に起きた事例に基づいたきめ細かい内容を盛り込んでおります。
 今後も、スマートフォンの普及状況や発生したトラブルの具体的な内容を踏まえ、講座や講演会の一層の充実に努めてまいります。
 次に、スマートフォン利用によるトラブルを防止するための普及啓発についてでありますが、スマートフォンの普及が拡大しており、今後、青少年の所有もさらに増加していくものと考えております。
 このため、都では、スマートフォンを利用する上での注意点や、その危険性等を盛り込んだリーフレットを作成し、小学生や中学生の保護者を中心に配布することとしております。
 また、スマートフォンを利用する上での注意を喚起するためのDVDを制作して関係機関に配布し、さまざまな機会を利用して啓発活動に利用してもらうこととしております。
 今後とも、スマートフォン利用に関し、青少年がトラブルに巻き込まれないよう、関係機関の協力も得ながら広く注意喚起や啓発に取り組んでまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 東京ユビキタス計画の実験の内容についてでございますが、これまで銀座地区において、平成十八年度から、観光や店舗案内等のまちの情報提供のほか、視覚障害者への移動支援などの取り組みを進めてきております。
 今年度は、これまでの取り組みに加え、情報提供エリアを拡大するとともに、より汎用性を高めるため、普及の進んできたスマートフォンを活用して、十二月十三日から実証実験を始める予定でございます。
 具体的には、専用のアプリケーションをスマートフォンにダウンロードし、実験エリア内を歩くと自動的に今いる場所を認識し、銀座の店舗や名所、イベント情報、さらにはトイレなどの情報が、日本語はもとより多言語で入手することが可能となります。
 こうした取り組みを通じて、まちの魅力や活力を高めるとともに、だれもが安心してまち歩きを楽しめるまちづくりを目指してまいります。
   〔消防総監北村吉男君登壇〕

〇消防総監(北村吉男君) 現場活動で活用するシステムへの最新技術導入の考え方についてでありますが、東京消防庁では、総合的な情報通信システムを計画的に整備しており、救急隊を含めた消防部隊の編成を初め、搬送先医療機関の選定など、必要な情報を迅速確実に伝達することにより、円滑な消防活動を展開しております。
 お話のとおり、技術革新に伴う最新技術の導入は、より効率的かつ効果的な消防活動を行うことが期待できるものと認識しております。
 一方、こうしたシステムは都民の安全や安心に直結していることから、機能の信頼性や安定性の確保が必要不可欠でございます。
 このことから、最新技術の導入につきましては、今後とも費用対効果を含め総合的に検討してまいります。

〇副議長(ともとし春久君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時二十四分休憩

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