平成二十三年東京都議会会議録第十八号

〇議長(和田宗春君) 三十九番遠藤守君。
   〔三十九番遠藤守君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇三十九番(遠藤守君) 初めに、都が策定中の「二〇二〇年の東京」について質問をいたします。
 この新しい計画は、現在の「十年後の東京」を充実強化し、中長期的な都政運営の道筋を明らかにするものと位置づけ、防災、エネルギー、国際競争力の強化を三つの柱に据えていることが既に明らかになっております。
 二〇二〇年の東京のあるべき姿を、都みずからが明らかにすることは、東日本大震災から立ち直ろうとする日本に対して、復興の道筋を示すことにもつながっていきます。こうした意味からも、新しい計画は、現在の「十年後の東京」の成果を十分に踏まえ、将来に向けた明るい、そして、都民に安心感を与える展望を示すべきであります。
 そこでまず、計画期間の半ばを迎えた「十年後の東京」をどう検証、総括し、今回の新しい計画に反映させようとしているのか、答弁を求めます。
 次に、計画の策定プロセスについて申し述べます。
 石原知事の就任以降、都は、東京構想二〇〇〇及び現在の「十年後の東京」の二つの総合計画を策定、推進してきました。このうち「十年後の東京」は、あえて都市ビジョンという名称を用いて、知事及び都が重視する施策を重点的かつビジュアルにまとめ、都民にわかりやすく提示した点が、従来のプランにはなかった点だと思います。こうしたこれまでにない手法のため、「十年後の東京」及び「二〇二〇年の東京」が総合計画といえるのかとの声もありますが、これらのプランが、現在及び今後十年にわたる都の行財政運営の基本指針となることから、広義の総合計画と位置づけ、以下、質問をいたします。
 第一は、多様な意見の聴取についてであります。
 自治体計画は、その内容はもちろんのこと、策定手続にも重要な意味があるとされております。とりわけ肝心なのは、主権者たる都民の意見をいかに丁寧にくみ上げたかにあります。過日公表された都民生活に関する世論調査でも、これからの都政の進め方に対してどんなことを望みますかとの問いに対し、都民の意見や要望をよく知るが三九%で最も多かったという結果が出ております。「二〇二〇年の東京」の策定プロセスにおいて、都民ニーズをどう聴取したのか、答弁を求めます。
 第二は、「二〇二〇年の東京」の着実な推進に必要となる財源の確保についてであります。
 「十年後の東京」では、施策の実効性の観点から、三つの基金を創設し、年々それを取り崩しながら施策推進を担保してきました。国による法人事業税の収奪、東日本大震災や超円高による企業業績の不振など、将来にわたる確かな財政収支の見通しがつかない中ですが、計画の実効性はしっかりと担保されるべきであります。見解を求めます。
 この項の最後に、計画策定における執行機関と議会の相互連携、これについて申し述べます。
 いうまでもなく、我々都議会は、条例や予算など、都の最高意思決定に携わっておりますが、これらと並んで重要とされるのが、「二〇二〇年の東京」のような総合計画へのかかわりであります。
 ことし四月の地方自治法改正により、総合計画の策定及びその議会議決は、それぞれの自治体の判断にゆだねられることになりました。同法の規定はそもそも市町村を対象にしたもので、都道府県は対象外でありますが、同法制定当時の国会審議をひもといてみると、地方団体の意思機関たる議会が、総合計画にかかわる重要性が指摘をされております。この点については、東京大学の金井利之教授の以下の指摘が、問題の本質を的確についております。
 総合計画は、執行機関である首長の計画ではなく、自治体という団体として首長、議会の両者の合意のもとに策定されるべきものである。議会の議決を経ることによって、条例、予算と並ぶ最上位のマスタープランとしての正統性を主張できると。
 都議会公明党は、以上のような総合計画の重要性にかんがみ、八月に「二〇二〇年の東京」調査PTを立ち上げ、知事本局と議論を重ねてきました。それらを踏まえ、先月二十一日、石原知事に対して、「二〇二〇年の東京」に盛り込むべき事項について要望したところであります。
 この要望には、重点施策として、一つ、高齢者対策、特に単身高齢者への支援と住まいの確保、二つ、地域における医療と介護の連携強化、そして三つ、低所得者及び離職者への総合支援など六項目を掲げ、あわせて、施策推進のための基金等の創設及び事業の到達目標や達成時期を数字で明記することなどを求めてきました。これら一連の取り組みは、ひとえに総合計画の策定、推進を通じて、執行機関と議会が互いにより強く連携し、都民の負託にこたえたいとの強い発露によるものであります。
 「二〇二〇年の東京」の着実な推進こそが、安全・安心の首都東京の構築、そして、震災からの早期復興に寄与するものと確信し、その達成に協力を惜しまないことを表明し、次の質問に移ります。
 都内の放射線対策について二点質問をいたします。
 まず、地表等に付着した放射性物質の除染についてであります。
 報道によれば、国は、放射性物質汚染対処特別措置法に基づく汚染状況重点調査地域を、十二月中旬に公表するようであります。都内では該当する区市町村はないものの、隣接する千葉県や埼玉県では、幾つかの市が指定を受けるようであります。
 一方、都内には、ホットスポットと呼ばれる局所的に高い放射線量が測定される地域もあることから、今後、除染に関する関心、とりわけ都や区市町村に対する期待や要請が高まることが考えられます。
 都内においては、量としてはそれほど多くはならないと考えられますが、除染で生じた汚染土壌等を収集、運搬、保管、管理する対応を、都と区市町村一体であらかじめ用意しておくべきと考えますが、答弁を求めます。
 一方、都内の民有地において、放射線の測定や除染を本格的に行おうとすれば、多くの都民が専門事業者に依頼するものと予想されます。しかし、放射線量測定器をめぐっては、誤差の大きな製品が出回っていることや、効果的な除染技術も確立されていないことから、都民の不安や知識不足につけ込んだ悪質な除染ビジネスも横行しかねません。
 そこで、専門業者に対する適切な指導が不可欠と考えます。都の見解を求めます。
 放射線対策に関する第二のテーマは、より安全な水道水の提供についてであります。
 福島第一原発の事故により、三月二十二日、都水道局の金町浄水場で、水道水一キログラム当たり二百十ベクレルの放射性沃素が検出され、乳児に限ってではありますが、水道水の摂取が控えられた事実は、都民及び我々都政関係者に大きな衝撃を与えました。水道水から放射性物質が検出される原因は、雨などと一緒に降り注いだ放射性物質が、浄水場でのろ過過程で完全には除去できず、一部がすり抜けてしまったものと考えられますが、現在は、不検出の状況が続いております。
 一方、放射性セシウムでありますけれども、文部科学省が発表した分布図を見ると、群馬県などで高い濃度であり、降雨時には水源への流出が考えられ、これに対する都民の不安を払拭することが重要であります。各浄水場での実態調査の充実など、浄水プロセスにおける放射性セシウム対策に引き続き万全を期すべきであります。答弁を求めます。
 次に、分譲マンションの耐震化の促進について質問をいたします。
 都は、緊急対策二〇一一において、マンションの耐震化を大きな柱と位置づけ、我が党の質問で明らかになったように、初めて、都内のすべてのマンションを対象とした実態調査を行い、得られた情報をデータベース化することとしております。
 旧耐震基準で建築されたマンションの中には、耐震診断すら行っていないものが多く、相談窓口には、どのように進めればいいかわからない、基本的な知識を得たいがわからないとの声が、合意形成が難しい分譲マンションから多く寄せられております。
 今後、分譲マンションの耐震化対策をより迅速に実施するため、都は、現時点で判明している課題について、速やかに対応策を検討していくべきであります。答弁を求めます。
 最後に、国際的な視野を持った若者の人材育成について質問をいたします。
 経済のみならず、社会のあらゆる分野でグローバル化が急速に進む中、日本が世界の中で生き残っていくためには、全地球的規模で社会をとらえることのできる広い視野を持った人材の育成が不可欠であります。
 経済成長が著しい中国やインドといった諸外国では、海外への留学生が年々増加し、各分野における最新の学問の習得や多種多様な社会での経験の蓄積により、将来国際社会で活躍できる人材が育成されております。
 一方、我が国からの海外留学生の数は、経済情勢の影響もあってか、平成十六年以降減少傾向にあり、国際社会で伍していくためにも、この傾向に歯どめをかける施策の実施が急務となっております。
 そこで、若者が海外に雄飛していくことの意義について、石原知事に改めて所見をお伺いいたします。
 こうした時代状況の中、私立高校は、それぞれの教育方針に基づいて、世界に通用する人材の育成に取り組んでおります。また、長年にわたって行ってきた海外留学を初めとする国際交流は、グローバルな人材を育成していく上で着実な成果を上げてきたと認識をしております。
 そこで、都内の私立高校における国際交流、特に留学支援について、都として取り組むべきと考えます。局長の答弁を求め、質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 遠藤守議員の一般質問にお答えいたします。
 若者が海外に雄飛する意義についてでありますが、世界が時間的、空間的に狭いものになりまして、国際競争がますます激化する中で、この国が自力で立っていくためには、世界を舞台に活躍できる力強い若者の存在がどうしても必要であります。
 しかし、現代の若者は、将来への不安のためか、安全、安定志向に流れて、他者とのかかわりを避けて、ひ弱な内向き志向を強めておりまして、例えば、留学する学生は年々減ったり、海外勤務を希望しない新社員が半数に達するありさまで、特に商社に入りながら外国勤務は嫌だという人がいるというのは、これ驚いた話であります。
 先日、ちょっと例は違いますけれども、ある大手のゼネコンの社長と会って話したときに、後輩ですけれども、いや驚きましたと。我が社というのはゼネコン、つまり建築、土木をやっている会社ですけれども、現場に行きたがらなくて、どこに配属したいか、企画やりたいと。現場も知らない人間が企画できるわけないんじゃないですかといって失笑していましたが、そういう傾向が非常に強くなっているという気がいたします。こうした現況にくさびを打つためにも、若者を海外に送り出し、さまざまな経験を積ませて、鍛え直すことは一つの有効な手だてだと私は思います。
 若者が海外の文化に身を置くことは、新たな他者との摩擦と相克を生みまして、より多くの刺激と耐性を与えると同時に、外から日本を見詰め直すことで、日本人としての自覚と誇りを取り直すことになると思いますし、また、日本人が苦手な自己主張においても、他国の友人と議論を交わす中で、その重要性を身をもって知ることにもなると思います。
 昔からかわいい子には旅をさせよといいますが、日本が世界の中で存在感のある国家として繁栄していくためには、こうした若者の挑戦意欲というものを引き出して、力強く後押しすることが必要でありまして、全国の若者が集まる東京から、新たな具体策の構築に取り組んでいきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔知事本局長秋山俊行君登壇〕

〇知事本局長(秋山俊行君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、「十年後の東京」計画の検証と新しい計画への反映についてでございますが、「十年後の東京」計画が計画期間の半ばに差しかかったことから、これまでの取り組みの進捗状況や成果につきまして、総点検を現在行っておるところでございます。
 現在までのところ、おおむね順調に進捗しているものというふうに認識をしております。
 例えば「十年後の東京」計画で目標の一に掲げました緑化につきましては、千ヘクタールの緑の創出という目標に対しまして、都市公園などの整備によりまして、平成二十二年度末までに四百六十三ヘクタールを生み出し、また少子化対策では、都独自の認証保育所で二万人の定員を拡充いたしました。また、雇用対策では、東京しごとセンターにおけるきめ細かい支援を通じまして、六万五千人の就業を実現しているところでございます。
 しかしながら、都政を取り巻く状況を踏まえますと、ひとり暮らしの高齢者人口が大幅に増加するなど、急速に進展する超高齢社会への対応や円高に苦しむ中小企業の支援など、さらなる充実強化を図るべき課題も存在しているものというふうに認識しております。
 東日本大震災により明らかになった防災対策の強化や、エネルギー政策の強化推進などの新たな課題への対応も含め、現在策定中の計画に反映させていく予定でございます。
 次に、仮称でございますけれども、「二〇二〇年の東京」策定に向けた都民意見の反映についてでございます。
 まず、地域住民の声を最もよく把握し、計画推進に当たりまして連携が不可欠となります都内すべての区市町村に対して、計画策定に向けた意向調査を実施いたしました。
 また、都政に関する要望などを把握いたします都民生活に関する世論調査では、東京の望ましい将来像について意見を伺いまして、さらに、都政の緊急課題等に関する意識を迅速に把握するインターネット都政モニターアンケートにおきまして、エネルギー政策や少子高齢化対策の方向性などについて調査を実施したところでございます。こうした取り組みを通じて、環境先進都市の実現や都市基盤の整備などにつきまして、さまざまなご意見をいただいておりまして、今後、十分に検討した上で、計画に反映をしてまいります。
 最後に、計画の実効性の担保についてでございます。
 現在策定中の計画は、今後十年間の都政運営の基本方針となるものでございまして、この計画で示される東京の将来像を確実に実現するため、「十年後の東京」計画と同様、三カ年の事業展開の道筋を明らかにした実行プログラムを策定することによりまして、実効性ある取り組みを着実に展開してまいります。
 また、この実行プログラムにつきましては、これまでの取り組みや新たな施策展開について検証を加えながら、毎年度改定を行い、社会状況の変化に迅速に対応して、的確な対策を講じていく考えでございます。
 さらに、この実行プログラムに掲げる事業に対しましては、優先的に予算を措置することというふうにしておりまして、財政状況が厳しい中にありましても、各施策を着実に推進してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、除染で生じた汚染土壌の管理等への対応についてでございますが、昨日もご答弁しましたとおり、面的な除染が必要となる可能性がある汚染状況重点調査地域の指定は、都内で該当する地域はないものと考えております。
 また、局所的な汚染につきましても、文部科学省のガイドラインの目安より高い地点が見つかる可能性は低いものと考えております。
 このような状況から、都内の除染につきましては、区市町村が独自に行うものなど、限られたものになると想定されます。
 その場合でも、法や国のマニュアル等を参考とした適切な対応が望ましいため、都としては、区市町村等に対し、適切な対応がなされるよう、今後制定される特別措置法の政省令の内容等を速やかに、また、正確に伝えていくなど、支援を行ってまいります。
 次に、除染に関する正しい情報の提供や除染に携わる事業者に対する指導についてでございますが、放射能問題への対応は、これまで経験したことのない問題でありますために、情報や知識の不足により無用な混乱を招くおそれもあることから、都民や事業者に正確な知識を普及することが大切でございます。
 このため都は、都民や事業者に放射能にかかわる正しい知識を得てもらうため、ホームページ等を通じて放射能に係る情報を提供してまいります。
 また、都は、被災地支援のため福島県への職員の派遣を行ってまいりましたが、この中で、現地でのモニタリングや除染の経験も蓄積してきております。こうした職員のノウハウも生かしながら、区市町村等への技術支援を行うことを通じて、除染を行う事業者の啓発に努めてまいります。
 あわせて、消費者被害を防止する観点から、関係局と連携して除染関連事業者の動向を注視してまいります。
   〔水道局長増子敦君登壇〕

〇水道局長(増子敦君) 浄水プロセスにおける放射性セシウム対策についてでありますが、水道局では、水道水の原料となる河川水の段階でも、毎日、放射性物質濃度を検査しており、放射性セシウムはほとんど検出されないレベルまで低下しております。
 放射性セシウムは、河川水に含まれる土の成分に吸着されやすい性質を持っておりまして、沈殿池などの浄水処理過程で土とともに完全に除去されております。
 このため、浄水場において処理した水道水、すなわち浄水につきましては、高精度の測定機により、毎日、検査を行っておりますが、これまで検出されておりません。
 なお、浄水処理過程で発生した沈殿物につきましては、池の中にたまらないように毎日排出し、脱水処理過程を経て浄水場発生土となります。この発生土は、埋立処分場へ搬出しておりますが、放射性物質濃度を測定して、基準に適合していることを確認しております。
 今後も、浄水場の入り口から出口までの一連の処理過程において、放射性物質に対する万全な対策を、引き続き実施してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 分譲マンションの耐震化についてでございますが、昭和五十六年以前の旧耐震基準により建築されたマンションの耐震化を進めていくためには、まず、耐震診断を実施し、所有者みずからが耐震性能を把握することが不可欠でございます。
 現在実施中の実態調査では、耐震診断が進まない理由として、耐震化に対する知識が不足している、合意形成が難しい、相談できる専門家がいないことなどが挙げられております。
 このため都は、新たに来年度から、セミナーや個別相談会を地域ごとに開催するほか、積極的にマンション啓発隊を派遣し、調査の結果も踏まえた啓発や助言を行い、耐震診断の実施を促すなど、耐震化の促進に取り組んでまいります。
   〔生活文化局長井澤勇治君登壇〕

〇生活文化局長(井澤勇治君) 私立高校における留学支援についてでございますが、都内の私立高校では、これまでも海外の提携校を開拓するなどの取り組みによりまして、留学生の派遣及び受け入れや海外への研修、修学旅行の実施など、それぞれの建学の精神や教育理念に基づく国際交流を進めております。
 こうした各学校における独自の取り組み等を踏まえまして、私立高校を対象とした留学支援のあり方について、今後検討してまいります。

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