平成二十三年東京都議会会議録第十八号

〇副議長(ともとし春久君) 四十八番しのづか元君。
   〔四十八番しのづか元君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇四十八番(しのづか元君) 初めに、生物多様性の重要性と緑の確保策について伺います。
 昨年十月に、名古屋市で開催された生物多様性条約第十回締約国会議、COP10では、生物多様性を保全するための愛知ターゲットと遺伝資源を利用する際の利益配分の国際ルールを定めた名古屋議定書が採択されました。その結果、生物多様性の価値を経済の仕組みに入れていく新しい社会づくりの流れが出てきたのです。これからは自然資源を持続可能に活用しなければ、企業も生き残れない時代となります。
 愛知ターゲットは、二〇一一年以降の生物多様性保全に関する国際目標であり、二〇五〇年までの長期目標、二〇二〇年までの短期目標と五つの戦略目標、二十の個別目標から成ります。
 その中の地方自治体と生物多様性に関する愛知・名古屋宣言では、地方自治体は、生物多様性条約の目的を果たし、生物多様性減少の進行を食いとめる上で重要な役割があり、この役割を果たしていくと誓っています。生物多様性の確保において、自治体の役割とその重要性が明確化したのです。
 都内では、郊外部の民間開発により、多くの緑が失われつつあります。民有地の緑の保全策については、あらゆる手段をもって対応していますが、実際に保全の手だてが講じられた事例は多くありません。この分野に有効な保全方策が講じられる必要があると考えます。
 そこで、都がこれまで取り組んできた緑の保全策について伺います。
 私の地元多摩市、稲城市は、都心から電車で一時間以内ですが、里山の風景とともに、そこには、蛍やオオサンショウウオ、タマノカンアオイなど、貴重な動植物が生息している場所があります。世界の先進国の首都の中でも、このような環境があるのは東京だけといっても過言ではなく、東京の大きな強みでもあると思います。だからこそ、残された緑を保全し、里山のように、適切に維持管理していくことが求められます。
 民間の開発による生物多様性の喪失を回避するには、国や都や区市町村がその緑地を確保することが考えられますが、特に、基礎的な自治体の場合、土地取得にかかる費用や維持管理の経済的な負担が大きく、なかなか保全につながっていない実態があります。緑を保全、確保することが財政逼迫につながらない仕掛けが必要です。企業など民間の力をもっと引き出すべきです。
 民間の活用として、現在、都が実施している温室効果ガスキャップ・アンド・トレードでは、電気エネルギーなどを削減した実施量だけが有効なクレジットになっていますが、それに加え、新たな開発などで失われる自然を、他の場所や労力、資金などで代償することにより、企業や事業所に対してインセンティブを与える仕組みの創設なども考えられます。比較的近い施策として、グリーンシップ・アクションや企業の森制度がありますが、あくまでも企業の社会貢献の一環であり、より強力な義務として、自然環境の保護、緑の保全力を上げる必要があると考えます。
 世界じゅうの企業が集積し、アジアのヘッドクオーターを標榜する首都東京。常に日本の環境行政をリードしてきた東京こそ、COP10の成果を踏まえ、国に先駆けて生物多様性の価値を経済の仕組みに入れていく新しい仕組みづくりに、いち早く取り組むべきと考えます。この生物多様性の重要性の認識と緑の確保について、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、教育再生における教師の育成について伺います。
 知事は、従来の制度や常識、慣行にとらわれずに、今後の教育のあり方について議論することを目的として、教育再生円卓会議を設置し、先月その第一回目が開催されました。今後、そこでの議論を踏まえて、具体策を教育現場での試行や国への建言をしていくとしていますが、私は、教育再生には教師の育成が最も重要なかぎを握っていると考えます。
 都教委は、二〇〇八年に、東京都教員人材育成基本方針を策定し、毎年四千人ともいわれている大量退職、大量採用時代の到来にあって、教育に求められる教師像を実現するために、職層に応じて身につけるべき力を推進する体制を構築してきました。OJTの活用や研修、大学との連携など、さまざまな取り組みを行ってきたことは評価をいたします。
 現在、都教委が展開している人材育成の取り組みは多様でありますが、もっと早い段階で、大学在学中の四年間、時間をかけて人材を育成できれば、即戦力として、四月から教壇に立つことが可能になるのです。特に最近は、教師の指導力不足、小学校教諭を希望する学生の減少や部活を指導できる教師の減少、主幹教諭や校長、副校長など管理職のなり手が少ないことなどをよく耳にしますし、学校を取り巻く社会状況の変化により、教育における課題は複雑化、多様化しています。それらを解決するのに有効な処方せんが都独自の大学期における人材育成であると考えます。
 東京教師養成塾で似たような取り組みは行われていますが、実施期間も短く、本格的な取り組みとはいえません。
 具体的には、現在の教員養成システムとは異なりますが、消防士を養成する消防学校や、看護師を養成する看護学校のように、目的意識を持った学生を都の責任で都教委の教育方針や人材育成方針に沿って養成するのです。
 例えば、その養成課程を修了すれば、採用試験を免除するなどのインセンティブを与えれば、早い段階で優秀な人材を発掘することが可能になります。さらにいえば、東京都は、公立の小中学校、都立高校、特別支援学校など、その実習現場が豊富にあり、補助教員として実践を経験させることによって、学習指導力や問題解決能力を身につけさせることができますし、本人や都教委にとっても、そして、独自予算で補助教員を採用している区市町村にとってもメリットがあると考えます。
 人は財産であり、組織の根幹です。学校経営の時代にあって、その土台づくりから始めても遅くはないと思います。将来を見据え、人づくりの根幹をなす、教師の育成をもっと早い段階から取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、都営住宅政策の転換について伺います。
 一九五一年、昭和二十六年に、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することを目的に公営住宅法ができてからことしで六十年、現在、都内の住宅ストック数は世帯数を一割以上上回り、七十五万戸ある空き家は、今後も増加が予想されています。しかし、都内に二十六万戸ある都営住宅の入居希望者は、年間延べ二十万人、平均二十五倍もの競争率となっており、依然として狭き門です。
 住宅に困窮する低額所得者とは、東京でいえば、四人家族で年収四百五十万円程度までの世帯が該当し、全世帯の約二五%までとなっています。しかしながら、現在のルール上、実際に入居してしまえば、収入が資格条件を上回っても明け渡し請求の対象とはならないので、結局、本当に住宅に困窮する多くの人たちが入居できていない現状にあります。しかし、だからといって、ニーズを酌んで増築せよという意見には賛成しかねます。つまり、間口は広く出口が詰まっている状態なのです。この詰まりを解消するには、入居資格を現行の収入分位二五%から二〇%以下に下げ、対象を限定することや、収入が資格条件を上回った場合の明け渡しの徹底などが考えられます。
 このように、真の住宅困窮者に住宅を提供できるよう、セーフティーネット機能をさらに強化すべきと考えます。都の所見を伺います。
 都営住宅の区市町村ごとの配置状況は、全くないあきる野市から、多くの都営住宅を抱えている足立区や江東区など、適正配置とはいいがたい状況です。多くの非課税世帯や生活保護世帯が生活する都営住宅を受け入れるということは、区市町村にとっては、福祉や教育など、独自の財政支出を伴います。また、域内においても、大規模団地の存在による課題が生じていると聞きます。
 一方、都営住宅は、住機能のセーフティーネットとして、都民が居住地域を変えることなく、都心においても、郊外においても、ひとしく享受できるサービスであるべきであり、居住における福祉政策でもあります。その意味においても、自治体間の供給数の偏在を是正することが求められるのです。
 このような都営住宅の偏在によって生じる課題について、都はどのような認識を持っているのか見解を伺います。
 現在、老朽化した団地を高層化、集約化して、型別供給方式により建てかえが進められています。しかし、一度建てたら今後七十年もの間、維持管理していかなければならず、そもそも、この先、公設公営で二十六万戸の都営住宅を維持していくかどうかを再検討すべきです。
 維持管理にかかる経費を抑え、大量の民間の空き家を解消するには、民間の空き家ストックの活用による借り上げ方式の導入が最も有効な手段であると考えます。その活用などで、自治体間の不公平な配置バランスを調整し、大規模団地の中小規模化を図り、年齢、職業、所得水準などが異なる人々が同じ地域で交流して暮らせるようにするソーシャルミックスを目指すべきと考えますが、所見を伺います。
 今回の我が会派の海外調査団も調査してまいりましたが、イギリスのロンドンやアメリカのニューヨークなどでは、アフォーダブルハウジング制度という、大都市において民間が高額所得者向けのマンションの建設や住宅地の開発をする場合に、低所得者向けの住宅も一部組み込んで販売または賃貸することを義務づける制度をつくり、民間事業者による低所得者向けの住宅供給を推進しています。
 このアフォーダブルハウジング制度の導入など、新たな開発に対する規制誘導策についても検討すべきと考えます。都の見解を伺います。
 これらを踏まえ、都の住宅政策として、早急に都営住宅政策の転換を図る必要性があると考えます。今後の住宅政策における公営住宅の果たすべき役割と展望について認識を伺います。
 最後に、保育について伺います。
 平成二十三年四月現在の就学前児童人口約六十一万人に対する保育サービスの整備率は約三割です。東京都の緊急三カ年事業や区市町村独自の取り組みにより、待機児童数は七千八百五十五人と、昨年四月より五百八十人減少しましたが、潜在的な待機児童数を視野に入れると、保育所整備は依然として喫緊の課題です。
 緊急三カ年事業の事業期間は終了してしまいましたが、保育所整備拡充並びに待機児童解消には、引き続き特段の取り組みが必要と考えます。都の見解を伺います。
 地域主権改革推進法が成立し、児童福祉施設の基準が条例委任されました。中でも保育施設は、都や区市町村の国制度への上乗せ基準や補助もあり、待機児童が多く、高い保育ニーズへの対応が必要な一方、土地や人件費の高い大都市ならではのコスト負担の間で非常に悩ましい状況です。
 こうした状況に対し、東京都児童福祉審議会の専門部会では、激論の末、年度途中で児童を受け入れる際には、認証保育所と同じく、一人当たり三・三平米の基準に対し二・五平米までの緩和を認めるという取りまとめが行われたと聞いています。しかし、待機児童解消までという時限的な保育士雇用が困難などの課題もあり、緩和は行わない方向性の自治体が多いようです。
 一方、都の調査では、ゼロ歳児の認可保育所面積基準三・三平米に対し、実際は五・七五平米と上回っています。それでも待機児童の受け入れにつながらないのは、一歳児は基準近くで運用されており、ゼロ歳児を多く受け入れると、翌年は学年進行する一歳児が多くなるため、保護者の育児休暇明けなどによるニーズが高い一歳での入所児童の受け入れ数が減少してしまうといった事情もあるようです。待機児童が最も多い一歳児の受け入れ枠がふえなければ、待機児童問題の根本的な解決にはつながりません。
 そこでまず、喫緊の課題である一歳児の受け入れ枠の拡充に都としてどのように取り組むのか伺います。
 保育の質は、単に面積の問題ではなく、少子核家族化の中、子どもや家庭が抱える悩み、障害や疾病への対応、社会性の涵養など、求められる役割が急速に多様化している今、保育力の向上への支援策も必要です。
 また、多摩地域では、三月十一日、都心に勤める保護者が帰宅困難となり、急遽お泊まり保育を行う事態が発生しました。首都直下地震など大規模災害時に、保育所はどのように子どもの命を守るのか、震災対策への一層の対応が必要となっております。
 したがって、待機児童の受け入れを進めるためにも、今後、運営費や職員確保、専門性向上、震災対応などへのさまざまな支援も積極的に検討する必要があると考えます。都の見解を伺って、私からの質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) しのづか元議員の一般質問にお答えいたします。
 生物多様性と緑の確保についてでありますが、多様な生物とその生息環境を守り、これを将来世代に伝えていくことは、人々が安心で健康的に暮らす生活の基盤ともなる重要な取り組みであると思います。
 東京には、レンジャーの配置やエコツーリズムなど、都が全国に先進して取り組みを進めた節もありまして、先般、世界自然遺産にも登録された小笠原諸島や奥多摩の山々のように、動植物が豊かな大自然がある一方で、ビルに囲まれた都心の中にも、さまざまな生物が生息している公園や緑地がありまして、多彩な自然を織りなしていると思います。
 人間は、自然との共生なくしては存在し得ないことでありまして、東京で営まれる経済活動は、自然との調和を図りながら展開していかなければならないと思います。
 近年、都心部では、ビルの低層部分の庭園に野鳥が訪れる森をつくるなど、自然植生をよみがえらせ、生物にとってもすみやすい都市空間を生み出す先駆的な再開発プロジェクトも進んでおります。
 今後とも、さまざまな主体の参画を得ながら、東京の豊かな緑の保全と、さらなる創出を図る施策を重層的、多角的に展開し、人間と自然が共生し続けられる都市へと東京を導いていきたいものだと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 学生段階からの教師の育成についてでございますが、教師を目指す高い志を持った学生を早い段階から実践力に富んだ人材に育成していくことは重要であると認識しております。
 このため、都教育委員会は、平成十六年度から、都の教員を目指す学生が実践的指導力や社会性を身につけ、新人教員の中のリーダーとして活躍できるよう、東京教師養成塾を開校し、毎年百五十人程度の学生に対し、特別教育実習、ゼミナールや体験活動等、一年間にわたり、都独自のプログラムによる実践的訓練を実施してまいりました。既に八百人を超える修了生が現場で活躍しております。
 お話の教員養成につきましては、戦前は、師範学校等の専門の学校で行われておりましたけれども、現在は、幅広い視野と高度の専門的知識、技能を兼ね備えた多様な人材を教育現場に迎え入れるために、いわゆる教員養成系大学に限らず、教職課程を有するすべての大学で教員養成が行われております。
 都教育委員会は、大学での養成と採用選考、採用後の育成を一体のものとしてとらえており、教職課程を有する大学で教員を目指す学生が、より実践的な知識、スキル、能力の修得ができるよう、教員として必要な資質、能力を明確に示した小学校教諭教職課程カリキュラムを策定いたしまして、現場からの提案として、全国の大学に提示するとともに、首都圏の教員養成課程を有する大学に対しては、説明会をも実施しております。
 あわせて、目的意識を持って学ぶ学生の自己啓発のよすがとなるよう、教員の仕事の実際や大学で学ぶべきこと等を具体的に記述した学生向けハンドブックを十二万部作成し、全国の教員養成課程を有する大学に配布しております。その上で、小学校教諭教職課程カリキュラムで示した資質、能力を採用選考で検証することにより、優秀な人材を確保しているところでございます。
 今後とも、大学等と連携しながら、創意工夫を重ねて、すぐれた新人教員の養成、確保に努めてまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 都におけます緑の保全の取り組みについてでございますが、都はこれまでも、自然保護条例に基づきまして、東京に残された丘陵地や里山を保全地域として指定する取り組みを進めてまいりました。同じく、条例に基づく開発許可制度におきまして、自然地を含む土地を対象とする一定規模以上の開発行為に対して、一定割合の緑地面積の確保を義務づけておりまして、平成二十一年度には、緑地基準の強化を行いました。
 今後とも、これら緑を守る取り組みを着実に推進することによりまして、東京に残されました貴重な緑を保全してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営住宅のセーフティーネット機能についてでございますが、都営住宅は、市場において、自力では適正な水準の住宅を確保することが困難で、住宅に困窮する都民の居住の安定を確保する役割を担っております。都営住宅の募集においては、公募による選定を原則とした上で、高齢者や障害者、子育て世帯など、特に居住の安定を図る必要がある都民に対し優先入居を実施しております。
 一方、都営住宅の基準を超過する収入のある居住者からの割り増し使用料の徴収、高額所得の居住者に対する明け渡しの請求などにも努めているところでございます。
 今後とも、こうした対応により、真に住宅に困窮する都民に対して、都営住宅を公平かつ的確に供給してまいります。
 次に、都営住宅の配置状況についてでございますが、都営住宅は、戦後の著しい住宅不足や高度経済成長期の急速な人口集中による住宅難の中で、地元市等の要望も踏まえながら、用地の確保を図り、建設を進めるとともに、これに合わせ、地域を支える生活基盤である小中学校、道路、公園などの整備も行ってまいりました。こうした取り組みにより、都民に住宅セーフティーネットの形成を図るとともに、良好な居住環境の創出に寄与してきたと考えております。
 都としては、都営住宅約二十六万戸のストックを有効活用する観点に立って、少子高齢化の進行などの課題も踏まえ、老朽化した住宅の建てかえを進め、バリアフリー化された住宅に更新するとともに、敷地の有効利用を図って用地を生み出し、地域のまちづくりに寄与してまいります。
 次に、地域のソーシャルミックスについてでございますが、都では、住宅に困窮する都民に対しては、都営住宅ストックの活用により対応することを基本としており、都営住宅の建てかえに当たっては、世帯構成に応じた間取りの住戸を提供し、多様な世帯が入居できるようにしております。入居者の募集に当たっても、子育て世帯に対する当せん倍率の優遇制度や若年ファミリー世帯向けの期限つき入居を実施し、若年世代の入居を促進しているところでございます。
 また、大規模団地などでは、建てかえに際して創出した用地を活用し、地域の特性に応じて、民間事業者による住宅、保育所やグループホーム等の施設を整備するなど、多様な人々がともに暮らす地域コミュニティの形成に寄与しております。
 次に、民間事業者による低所得者向けの住宅供給についてでございますが、先月出された東京都住宅政策審議会答申においては、住宅困窮者に対し、公営住宅の公平かつ的確な供給を図るとともに、民間事業者など多様な主体と連携し、重層的かつ柔軟なセーフティーネットの構築を図ることが重要とされております。
 今後、この答申を踏まえ、年度内に新たな住宅マスタープランを策定し、必要な施策を実施してまいります。
 お話の英国や米国での都市開発における、いわゆるアフォーダブルハウジング制度は、必ずしも低所得者層のみを対象とするものではなく、また、土地利用規制や建築規制の考え方が欧米諸国とは異なる我が国には、そのまま導入することは難しいと考えております。
 最後に、公営住宅の果たすべき役割と展望についてでございますが、都は、平成十三年度に策定した住宅マスタープラン以降、従来の住宅政策を抜本的に見直し、市場機能の活用やストックを重視する政策へと転換してまいりました。こうした中で、都営住宅は、市場において、自力では適正な水準の住宅を確保することが困難な世帯に対応し、市場機能を補完する役割を果たしてまいりました。
 今回の答申では、こうした役割に加え、都営住宅ストックを活用し、木密地域の整備改善や、老朽マンション建てかえの促進など、高度防災都市づくりを推進することが提言されております。都営住宅は、引き続き、住宅セーフティーネット機能の中心的役割を担うとともに、ストック活用により、都市づくりの課題にも対応してまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、待機児童解消に向けた取り組みについてでございますが、都は、保育ニーズの増大に対応するため、平成二十年度から保育サービス拡充緊急三カ年事業を開始し、平成二十二年度からは、その取り組みをさらに進めた少子化打破緊急対策事業に取り組んでまいりました。この間、施設整備を行う事業者や区市町村の負担を軽減いたします都独自の支援、家庭的保育の共同実施など、多様な取り組みを行い、平成二十年度から三カ年で保育サービスを新たに二万四千六百十三人分整備をいたしております。
 東京都保育計画では、平成二十二年度から平成二十六年度までの五カ年で、保育サービス利用児童数を三万五千人ふやすことにしており、今後とも目標の早期達成に向けまして、さまざまな施策を積極的に展開してまいります。
 次に、一歳児の受け入れ枠の拡充についてでございますが、保育の実施主体である区市町村は、待機児童の年齢などを踏まえて、認可保育所や認証保育所、認定こども園、家庭的保育など、多様なサービスを組み合わせて保育サービスを整備いたしております。
 都は、地域の実情に応じたサービスの基盤整備を促進するため、一歳児を初め、特にニーズの多い三歳未満児の定員拡充に積極的に取り組む区市町村に対しまして、開設準備経費の補助率をかさ上げすることにより、重点的に支援をいたしております。
 また、基準面積の弾力的な運用を可能とすることも、既存施設の柔軟な活用に有効でございまして、都の認可保育所の設備運営基準にこれを取り入れることについて、現在、児童福祉審議会でご審議をいただいております。
 最後に、保育所に対する支援についてでございますが、保育サービスの拡充に当たりましては、サービス基盤の整備に加え、サービスを担う質の高い人材の確保、さらには安全な環境の整備が重要でございます。
 このため、都は、保育士の有資格者を対象といたしました就職支援研修と就職相談会を一体的に実施をいたしますほか、区市町村が行う認可保育所職員等を対象といたしました研修事業を支援いたしております。
 また、保育施設において、延長保育や休日保育の充実など、運営面での努力や防災対応力の強化が図られますよう、子育て推進交付金や子ども家庭支援区市町村包括補助によりまして、保育の実施主体でございます区市町村を支援いたしております。