平成二十三年東京都議会会議録第十八号

〇議長(和田宗春君) 九十番宇田川聡史君。
   〔九十番宇田川聡史君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇九十番(宇田川聡史君) ゼロメートル地帯に住む私たちは、常に水の脅威が頭から離れません。大震災による津波や台風による水害が頻発した本年、今までダムや堤防不要論を唱えてきた政党でさえ、水害から命を守るためのハード整備に力を入れるべきと、ようやくご理解をいただいたようであります。
 東京湾で発生する津波は最大二メートル程度、現在の防潮堤や堤防は十分に機能するといわれておりますが、台風などによる高潮が発生し、同時に津波が襲ってきた場合には、果たして耐えられるのでしょうか。こうした異なる災害が重なる確率は非常に低いことだと思います。
 しかし、台風十五号が各地に被害をもたらした九月二十一日、午後十時三十一分、茨城県北部を震源とするマグニチュード五・三、震度五弱の地震が発生したことは紛れもない事実です。都はこうした複合的な災害の発生も見据えて、ハード、ソフトの両面から多面的な対策を講じるべきだと考えます。
 複合災害など、あらゆる事態を想定した対策の必要性が防災対応指針の中で述べられておりましたが、複合災害への備えをどうお考えなのか、知事の見解を伺います。
 江戸川区は三方を水で囲まれている上に、脆弱な低地に存在しております。したがって、津波や高潮、河川の上流部決壊等が発生した場合には、大災害となる可能性が常に存在しているのです。こうした中、避難場所や避難経路の確保が極めて重要だと考えます。
 しかし、江戸川区において一たび浸水被害に見舞われた際には、二カ所の都立公園のみが避難場所たり得るのが現状です。このたび、数年来の私どもの要請にこたえ、都立篠崎公園を高台化する整備計画が発表されましたが、どのような計画なのでしょうか。
 また、その高台が孤立するようでは、避難場所として適切とはいえません。江戸川の堤防等への避難経路はしっかりと確保されるのか、あわせてお伺いいたします。
 一方、今申し上げた避難経路の確保だけではなく、救援活動や緊急物資輸送を支えるための旧江戸川を渡る新たな橋の整備が必要不可欠です。こうした都県境の整備に向けた取り組み状況についてお尋ねをいたします。
 住民避難は基礎的自治体の役割とされておりますが、広域にわたる浸水被害が起きた場合などにおいては、とても区市町村だけでは対応でき得ません。隣県も含めた広域的な避難のシステムをつくり、具体的な手順を盛り込んだ検討や調整を重ね、実態に即した訓練を行うなど、災害を想定した対応が急務だと考えます。こうした広域避難の取り組みについて、都のお考えをお聞かせください。
 また、避難経路の確保や救援物資の搬送に資するためにも、都は今まで防災船着き場を整備してまいりました。国や区、民間なども含めると、都内に整備された船着き場は六十一カ所に及ぶと聞いております。緊急輸送道路を整備する一方で、水上輸送についてもしっかりと取り組みを進めるべきであり、首都直下型地震など、東京に大きな被害が想定される災害発生時には、船の利活用は大きな役割を果たしていくと考えます。この防災船着き場の緊急時の利用を円滑に行うためにどう取り組んでいかれるのか、お尋ねをいたします。
 また、都では、水辺のにぎわいの促進にも取り組んでいるところですが、防災船着き場の平常時の有効利用を図り、舟運を振興させることにより、水辺のにぎわいが創出できると考えますが、見解を伺います。
 次に、中小企業の防災対応力の強化についてお尋ねいたします。
 民間企業が震災などでダメージを受けたときに速やかに体制を立て直し、事業や経営活動を再開できる体制づくりが必要です。しかし、中小零細企業においては、そうした事業継続を図る取り組みに限界があるのだと思います。第三回定例会の中で、災害時などの事業継続計画、いわゆるBCPの策定支援に言及されておりましたが、せっかくつくった計画が実行されなければ何の意味もありません。きちんと実行なされるよう、中小企業のフォローを行っていくべきだと考えますが、都の所見をお伺いいたします。
 次に、水道事業について何点かお尋ねいたします。
 初めに、国際貢献ビジネスについてです。
 昨日の我が党の代表質問において、知事は、アジア諸国への本格進出の主体となる会社を設立し、積極的に事業を展開していく旨、答弁をなされました。また、都が運用を開始した民間企業支援プログラムは、民間企業を数多く募り、企業の海外展開をより一層後押ししていくというものです。海外のさまざまなニーズにこたえていくためには、まさに的を射た取り組みであり、今後とも多くの企業に対し、積極的に支援を行っていただきたいと思います。
 そこで、この支援プログラムの基本的な考えと今後の運用についてのお考えをお伺いいたします。
 次に、水道施設の再構築に向けた基本構想についてお尋ねをいたします。
 都はこのたび防災対応指針を取りまとめ、この指針に従って基盤施設の防災機能向上の施策に全力で取り組んでいくことになります。
 昨年の第四回定例会の私の一般質問で、水道施設については、今後の施設整備に対する新たな考え方の構築が重要と指摘をさせていただきましたが、水道局はこれにこたえる形で、将来の首都東京にふさわしい水道施設の再構築を考える会を設置するなど、基本構想の検討を進めております。特に東日本大震災以降は、想定を超える自然災害や、長期的、複合的災害といった新たな視点を加え、さらなる検討を重ねているとも聞いております。
 間もなく迎える大規模浄水場の更新を契機に、渇水や気候変動などの自然の脅威に対しても安定した水の供給を行えるよう、より確かな水道の再構築が望まれるところですが、安全度についてどう認識されているのでしょうか。どのような方針で基本構想を作成していくのか、あわせてお答えをください。
 水道局では、都民に安全でおいしい水を届けるために、高度浄水などの取り組みとともに、直結給水方式への切りかえを進めています。新築マンションなどにおいては普及が進む一方、既存建物では、貯水槽水道から直結給水への切りかえは進んでいないのが現状です。
 そのため、局では、小中学校における直結給水化の取り組みの推進や、直結切りかえ見積もりサービスを無料で実施するなどの努力を行ってきておりますが、貯水槽水道は都内で十六万件存在し、普及拡大のためには、さらなる新たな取り組みが必要だと考えます。
 直結給水方式は、安全でおいしい水を蛇口から直接飲めるというだけではなく、貯水槽の維持管理が不要になる、ポンプ電力の削減につながるなど、大きなメリットが生じます。
 今後、直結給水方式への切りかえ推進にどのように取り組まれるのか、お尋ねをいたします。
 最後に、京浜港の国際競争力強化について伺います。
 釜山港などのアジア諸港が躍進を続ける中、港湾の国際競争はますます激化しており、このままでは我が国の港湾は世界から取り残されてしまいます。
 京浜港の基幹航路を見ると、平成十年からの十年間で、北米航路では三十三航路から二十九航路へ、欧州航路においては、十七航路から何と七航路へと激減をしており、猶予はありません。京浜港は首都圏の住民生活を支えているにとどまらず、我が国の経済や産業全体を支えており、その重要な役割を果たすためには、基幹航路の維持が必要不可欠だと考えますが、その重要性について都はどう認識されているのでしょうか。今後どのように取り組んでいかれるのか、所見を伺います。
 また、こうした国際的地位の低下に危機感を抱き、京浜港の国際競争力強化に向けた取り組みを実施しております。我々は、自治体の枠を超えた京浜港広域連携推進議員連盟を立ち上げ、取り組みの支援を行ってきたところであり、私も議連事務局長として力を尽くしてまいりました。
 京浜三港の連携は、昨年八月の国際コンテナ戦略港湾の指定獲得や、本年九月の総合的計画の策定などを経て強化を図っており、特に、この計画は我が国の港湾において初の取り組みであり、今後の三港連携にとって非常に大きな意義を持つものと考えます。
 しかし、歴史的経緯や互いの地域特性などにより、三港それぞれにおける異なる事情も存在していることは事実だと思います。こうしたさまざまな課題を乗り越えるためには、三港を利用している船会社や荷主、民間事業者にとって、より使いやすい港として、ハード、ソフトの両面から機能強化をしていくことが重要であります。今後の展開をいかにしていくのかお尋ねいたします。
 東京港の外貿コンテナ貨物取扱量は、アジア諸港に比べればほど遠いとはいえ、増加し続けております。しかし、東京港の最大の弱点ともいえる施設の狭隘により、ターミナル周辺の交通混雑はますます問題視されているのが現実です。
 私は、かねてから、中央防波堤外側コンテナターミナルの整備を契機に、大井や青海などの既存ふ頭の根本的な再編により、機能強化していくべきと繰り返し主張してまいりましたが、こうした施策に加え、東京港周辺の混雑緩和に向けた即効性ある先進的な新たな取り組みを講じていくべきだと考えます。所見をお伺いいたします。
 東京港がアジアの主要港におくれをとった一番の原因は、バックヤードの狭さにあります。しかし、国際基幹航路の維持はもとより、港内の交通円滑化など、効率的な物流拠点として整備することによって、日本の国際物流を支えていくという責務を全うしなければなりません。今を失えば、東京港に未来はありません。さらなる発展のために対策をよどみなく進めていただくようお願いを申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 宇田川聡史議員の一般質問にお答えいたします。
 複合災害への備えについてでありますが、今回の震災は、千年に一度の巨大地震や大津波に加えて、原子力発電所の事故も重なりまして、まさに複合災害でありました。
 また、本年九月に発生した台風十五号は、震災の被災地を襲い、仙台市では、仮復旧していた堤防が再び決壊し、浸水被害に見舞われました。
 防災対策とは、起こり得る災害をも複合的に想定して、それに対する適切な対策を講じることにありますが、時として自然はそれをも超える未曾有の被害を引き起こすわけでありまして、こうした事態にも対応していくためには、一つの対策だけではなくて、あくまでさまざまな施策を複合的、重層的に講じていくことが必要であります。
 海抜ゼロメートル地帯の対策についても、水門、防潮堤などの耐震強化や水門の遠隔操作の司令塔となる高潮対策センターの二拠点などの対策を着実に進めてまいりますし、あわせて関係区と連携して、水門、陸閘の閉鎖を伴う退避訓練を実施するなど、ハード、ソフト両面にわたり有効な手だてを講じていくつもりであります。
 考え得る施策を総合し、複合災害などあらゆる事態を想定した災害への備えを固め直しまして、東京の総力を結集して災害に立ち向かっていく所存であります。
 それにしても、かつて事業仕分けなる政治手法の中、首都東京のゼロメートル地帯のためのスーパー堤防が中途半端にできているのをスーパーむだと称した大臣が、しかもこの人は東京出身のようでありますけれども、一体何を考えておるのかと思わざるを得ませんですな。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 四点のご質問にお答えいたします。
 初めに、都立篠崎公園の整備計画と堤防への避難経路確保についてでございますが、同公園は、東京都の東部地域を代表する都市計画公園で、計画面積八十六・八ヘクタールの広域公園であります。
 都は、都立篠崎公園の整備計画を平成二十三年一月に公園審議会に諮問し、同年十一月十七日の審議を経て、現在、中間のまとめとして都民意見の募集を行っているところであります。
 整備計画においては、平時の利用と災害時に果たす役割を勘案して、公園内の広場を高台化し、避難動線の確保を図ることとしております。この避難動線の確保については、公園の外からも、だれもが無理なく高台へたどり着くことができるように、緩やかな勾配とし、高台の広場を通り江戸川の堤防へ導くものであります。
 次に、旧江戸川を渡る新たな橋梁の整備についてでございますが、江戸川区と千葉県との境に位置する放射一六号線と補助第一四三号線の橋梁の整備は、都県境付近における道路ネットワークの形成を図るとともに、都市間の連携強化や防災性を向上させる上で重要であり、都では、第三次事業化計画の優先整備路線に位置づけております。
 両路線の橋梁部については、整備時期や事業手法など千葉県との合意形成が課題であり、県と道路橋梁整備調整会議を設置し協議を行っております。
 今後、道路構造や周辺道路への影響など、千葉県とともに検討を進め、都県境を渡る橋梁整備の事業化に向け、積極的に取り組んでまいります。
 次に、緊急時に防災船着き場を円滑に利用するための取り組みについてでございますが、防災船着き場は、災害時に船により被害者を避難させ、物資を緊急輸送するための施設であり、現在設置されている六十一カ所のうち、都は十五カ所を、その他は国や区などが管理しております。
 都はこれまでも、国や関係機関と連携し、災害発生時に円滑な対応ができるように、さまざまなケースを想定した訓練を実施しております。
 ことしの東京都総合防災訓練におきましては、四十分後に津波が押し寄せる想定のもと、運航中の水上バスから乗客を最寄りの船着き場へ緊急避難させる訓練を行いました。また、本年十一月には、東京消防庁と合同で、震災時に主要道路が寸断された場合でも、大規模災害現場で消防活動が行われるよう、河川清掃船や屋形船を活用した消防器材や消防隊員の輸送訓練を実施いたしました。
 あわせて、都が管理する主要な八カ所の船着き場では、緊急時の迅速な乗客の避難や物資の輸送を可能とするため、河川からアプローチを容易にする扉の改良を行うとともに、屋形船の組合などと船着き場の利用ルールについて協議を進めております。
 今後とも、災害時に河川舟運が有効に機能を果たすよう、関係機関と相互に連携し、防災船着き場の円滑な活用に取り組んでまいります。
 最後に、防災船着き場を平時に有効利用して、水辺のにぎわいを創出することについてでございますが、東京の河川を人々が集う水辺空間にしていくためには、船着き場を川と陸とのネットワークの拠点として活用していくことが重要でございます。
 都ではこれまで、地域の催しや小中学生の環境学習などで船着き場を活用してまいりました。さらに今年度は、隅田川の川辺における桟敷を設置した納涼イベントや、仮設芝居小屋での歌舞伎公演に合わせて、近隣の船着き場に水上バスを発着させるなど、観光イベントと舟運を積極的に組み合わせることで、人々を川に呼び込む試みを行いました。
 また、東京都公園協会が、東京スカイツリーをラッピングした水上バスを運行しているほか、水深の浅い北十間川や旧中川でも運行できる小型水上バス、「カワセミ」を導入して、区管理の船着き場にも発着させ、江東内部河川の観光舟運の機運を高めております。
 さらに、各種クルーズの新たな発着拠点となるよう、都内においては、国や区に先駆ける独自の施策として、防災船着き場の一般開放を、隅田川の越中島と明石町で実施しております。
 今後は、都みずからは無論のこと、国や区が管理する防災船着き場の一般開放を促すなど、観光舟運のネットワーク拠点の拡大を図り、水辺のにぎわいを一層推進してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 広域避難の取り組みについてでございますが、複合災害などにより大規模な浸水が生じた場合には、区市町村の区域を大きく超えた避難も想定されることから、住民の避難において主たる役割を担う区市町村にとどまらず、都としても広域行政の立場から、避難のあり方や具体の方策を講じていく必要がございます。
 このため、東京都防災会議のもとに、区市町村や防災機関、学識経験者などから成る検討組織を設置し、海抜ゼロメートル地帯における避難誘導や避難者の受け入れ調整など、広域的な避難対策について具体的な検討を行うプロジェクトを推進してまいります。
 そして、この検討結果を踏まえ、九都県市など近隣自治体とも連携を図りながら、広域避難にかかわる仕組みづくりを進め、大規模な浸水被害などへの備えを固め直してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 中小企業の防災対策についてのご質問にお答えいたします。
 都内の中小企業が災害の影響を受けても事業を安定して継続するためには、事業継続計画、BCPの策定が重要であり、都は、昨年度から中小企業のBCP策定を支援する取り組みを開始しております。
 今年度は、東日本大震災の発生を踏まえ、支援企業の数をふやし、この二年間で百を超える会社が計画を策定する見込みとなっております。こうした企業のうち、震災時のBCPを策定した企業が、その計画どおり事業継続を実現するためには、現場で事業に携わる社員の安全性や生産設備の正常な稼働を確保できるよう、施設の耐震性を高める取り組みが必要になります。
 このため、都のサポートにより震災時のBCPを策定した企業が、地震発生による施設へのダメージを抑える耐震性の強化に取り組む場合に、モデル的に支援することを検討しております。
 こうした対応により、BCP策定の必要性に対する理解を広げて、中小企業の防災力の向上を実現してまいります。
   〔水道局長増子敦君登壇〕

〇水道局長(増子敦君) 三点のご質問にお答えします。
 まず、水道の海外展開における民間企業支援プログラムの基本的な考えと今後の運用についてでございますが、海外の数多くのニーズに的確にこたえ、水事情の改善に貢献するためには、民間企業との連携の強化が不可欠であります。
 そこで、日本の民間企業の海外展開を支援し、コンソーシアム形成を促すための仕組みとして、本支援プログラムを創設し、当局の国際貢献への取り組みに賛同する企業を広く公募しましたところ、五十五社の登録を得ました。
 このプログラムでは、これらの企業や相手国からの依頼に基づくマッチング機会の提供のほか、水道局施設への視察の受け入れ、相手国政府等への協力表明など、企業からのヒアリングで要望の多かった項目を体系化して提供することとしております。
 今後は、さらに多くの企業の参加を得るため、随時の募集を行うとともに、適宜、支援項目の拡充、見直しを実施していくことで、このプログラムを充実させ、日本企業の海外展開を積極的に支援してまいります。
 次に、水道施設の再構築に係る安全度の認識と基本構想の策定についてでありますが、水道は、都市を形成する基幹的なライフラインであり、大規模な断水は、人々の生活を直撃するだけでなく、都市機能を麻痺させるおそれがあるなど、その影響ははかり知れません。
 我が国では、未曾有の大震災後も、頻発する余震や大雨による土砂災害などに見舞われ、また、世界では、大洪水や干ばつなどが猛威を振るっております。
 このように、地球的規模で顕在化している自然の脅威に対して、首都東京の大動脈である水道を将来にわたり守り続けていくためには、さまざまなリスクに対して高い安全度を備えることが不可欠であります。
 続いて、基本構想の策定方針につきましては、都の水道は、間もなく一斉に大規模浄水場の更新時期が到来し、これらを再構築していく転換期を迎えることとなります。このため、これを契機に、水道システム全体の安全度を高める観点から、施設の再構築のあり方について、有識者による外部委員会に検討を依頼してきたところでございますが、このたび、同委員会から、再構築の目指すべき方向性などについて幅広い提言をいただきました。
 具体的には、水源や施設は、需要への対応はもとより、渇水や事故、災害などのさまざまなリスクを考慮し、高い安全度を確保していくこと、また、将来の水道需要を見通すに当たっては、既往実績への対応はもとより、人口動態や社会経済状況などのさまざまな要素の不確実性を踏まえ、十分な安全性を考慮することなどの提言を受けました。
 この提言の趣旨や、これまでの都議会でのご指摘を十分に踏まえ、渇水や地震、事故を初め、さまざまなリスクに対する新たな安全度の考え方を取り入れ、今年度末までに、首都東京にふさわしい水道施設の再構築に向けた基本構想を策定いたします。
 最後に、貯水槽水道方式から直結給水方式への切りかえについてでありますが、当局では、平成七年度に、貯水槽なしにポンプで直接各階に送る増圧直結給水方式を採用して以来、さまざまな切りかえ促進策を行ってきており、平成十九年度からは、さらなる拡大策を講じるとともに、直結切りかえ見積もりサービスを実施しております。これらの取り組みにより、直結給水への切りかえは徐々に増加しており、平成二十二年度の年間切りかえ件数は約三千件となっております。
 しかし、都内の貯水槽水道は、いまだ約十六万件残っており、さらなる取り組みが必要であると考えております。今後、さらに安全でおいしい水の供給やエネルギー削減を図っていくためには、既存の建物における貯水槽水道からの切りかえが極めて重要であります。このため、今後、これを促進する新たな対策を検討してまいります。
   〔港湾局長中井敬三君登壇〕

〇港湾局長(中井敬三君) 東京港、京浜港に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、京浜港における基幹航路の重要性と今後の取り組みについてでありますが、ご指摘のとおり、基幹航路の維持は、東京のみならず首都圏そして我が国の産業や市民生活にとって極めて重要であると認識しております。仮に、基幹航路がなくなった場合には、積みかえ作業の発生によるコストや輸送日数の増加などが生じることにより、消費者物価の上昇や企業の海外流出が加速するなど、多方面にわたって深刻な影響があらわれることになります。
 こうした事態を回避すべく、東京港としては、ターミナルコストの低減を図るとともに、新たな集荷補助制度の創設や東京港埠頭株式会社の営業体制の強化など、多様な貨物集荷策を実施しております。
 また、京浜三港の新たな取り組みとして、九月には、京浜港の総合的な計画を策定し、コンテナ船の大型化やアジア地域における貨物量の増加に対応できる施設整備を効果的、効率的に進めていくこととしております。
 今後とも、三港連携のもと、これらの施策を確実に進め、基幹航路を全力を挙げて堅持してまいります。
 次に、京浜三港の取り組みについてでありますが、京浜三港は、平成二十年の基本合意以降、コンテナ船の入港料一元化や、東京湾内を運行するコンテナバージの入港料全額免除など、利用者本位の使いやすい港づくりに取り組んでまいりました。
 今後は、利用者へのメリットをさらに拡大していけるよう、三港間における横持ち輸送の一層の円滑化や、低コスト化に努めてまいります。
 具体的には、三港間の横持ち輸送に係る支援策の実施や、コンテナバージの効率的な運航確保に向けた係留施設の確保などの施策を進めていくとともに、国道三五七号線の整備促進を国に引き続き強く要望してまいります。
 今後とも、港湾関係者の実情や意見も十分に踏まえつつ、三港の特徴を生かした総合港湾としての機能を最大限発揮し、ユーザーにとってより使いやすい港となるよう取り組んでまいります。
 最後に、東京港周辺の混雑緩和に向けた対策についてでありますが、都はこれまでも、コンテナ車専用レーンの設置など、さまざまな対策を講じてまいりましたが、コンテナ貨物取扱量が右肩上がりに増加する中で、抜本的な解決には至っていない状況にございます。
 このため、中央防波堤外側埋立地に、新たなコンテナターミナルを整備するなど、東京港の処理能力を飛躍的に向上させる取り組みを進めておりますが、こうした取り組みには一定の時間を要することから、短期的に効果が得られる対策も、あわせて講じていくことが重要であります。
 このため、今月五日から、翌朝の配送に備え、コンテナトレーラーが集中する夕方の交通混雑を緩和する対策として、本格的な早朝ゲートオープンの取り組みを全国で初めて開始いたしました。さらに、今年度中に、中央防波堤埋立地において大規模な車両待機場の整備に着手し、一般通行車両への悪影響を軽減することとしております。
 今後とも、東京港周辺の交通混雑の緩和に向け、ハード、ソフト両面から創意工夫を凝らし、複合的、重層的な対策を全力で実施してまいります。

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