平成二十三年東京都議会会議録第十七号

   午後五時五十五分開議

〇副議長(ともとし春久君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百七番東村邦浩君。
   〔百七番東村邦浩君登壇〕

〇百七番(東村邦浩君) 都議会公明党を代表して、知事、警視総監、教育長並びに関係局長に質問します。
 一九七〇年に、世界有数のシンクタンク、ローマ・クラブが、マサチューセッツ工科大学に委託し取りまとめたリポート「成長の限界」は、世界人口、工業化、汚染、食料生産及び資源の使用の現在の成長率が不変のまま続くならば、来るべき百年以内に地球上の成長は限界点に到達するであろうと警告し、持続可能な地球環境と経済的な安定性を目指すべきと提言しています。
 また、その二十年後、一九九二年に取りまとめたリポート「成長の限界 限界を超えて」においては、食料生産量、エネルギー消費量、工業生産量を減少させないためには、第一に、物資の消費や人口を増大させるような政策や慣行を広範にわたって改めること、第二に、原料やエネルギーの利用効率を速やかに、かつ大幅に改善することという二つの変化を要求しています。そして、持続可能な社会を実現するには、単なる技術開発ではなく、産業構造システムの構造改革が必要であると結論づけています。
 これらの課題は、まさに今、日本社会が直面している課題そのものであり、このことを克服しない限り日本の経済成長は見えてこないのであります。
 そこで、こういった課題を踏まえながら、都政の喫緊の課題について、以下質問いたします。
 まず、製造業の空洞化対策について質問いたします。
 今や日本の製造業の海外移転という潮流は、とどまるどころか加速をしています。経済誌の論評では、日本でつくった部品を海外で組み立てて納めるというモデルは崩壊したとまでいわれております。製造業が急成長するアジアの諸外国と対等に競争しようとしても、労働規制や法人税、さらには電力価格などの障壁が大きく立ちはだかっています。その上に急激な円高が進み、製造業は何重苦にも陥っています。
 例えば、電気料金一つとっても、日本の月額基本料はアジアの新興国の二倍から四倍の料金を支払わなければならず、このことがコストにはね返り、円高と相まって、価格での競争にどうしても負けてしまうとのことであります。したがって、製造業は海外に生産拠点を移さないと生き残れないというのが現実であります。
 こういった中、ある製造業の会社は、海外に生産拠点を移し、海外で稼いだ資金を日本に還流させ、研究開発やそれに伴う量産試作で国内の雇用を生み出そうと努力をしています。具体的には、研究開発に携わるエンジニアをふやした結果、ほぼ同数の新たな工員が量産試作で必要となるなど、新たな雇用に結びついております。
 また、山形県のある繊維製造会社は、付加価値の高い繊維製品をつくることによって、海外での見本市で評価され、今では欧米など世界各国を相手にビジネスが進み、それまでの新卒者がほとんど来ないという環境が一変し、全国の大学から新卒者がこぞって入社するまでになっています。
 そもそも日本の経済成長は、貿易の波及効果で成り立ってきました。製造業が生み出す経済効果や雇用創出量は、極めて大きいものがあります。今後、日本の製造業は、海外の生産拠点でもうけて、その資金を国内に還流させ、研究開発や量産試作で雇用を生み出すとともに、付加価値の高い製品をつくって世界で勝負するといった選択を行っていくべきであります。
 都は今後、このような選択をして、景気浮揚にも国内雇用の拡大においても貢献しようとする製造業者に対しては、集中的に支援策を講じるべきと考えます。知事の見解を伺います。
 次に、中小企業への支援策について質問いたします。
 都内中小企業の業績状況の動向は、三・一一震災直後に急激に低下し、その後、改善の兆候が見えたものの、再び低下をしてきています。
 都議会公明党は、十一月二十四日に、厳しい経済環境と都民の雇用不安への対応を求める緊急要望を行いました。年末も押し迫る中、長引く不況と円高や震災被害の余波に苦しむ都内の中小企業の経営を支えるため、都は、一層資金繰り支援策を拡充させるほか、その利用促進に向けて、相談体制などの取り組みを強化すべきであります。見解を求めます。
 ある中小企業の経営者は、経営に行き詰まり、新たな事業展開の発想を持って東京都中小企業振興公社を訪ねたところ、専門家派遣事業を通じて中小企業診断士を紹介され、経営課題を克服する方策が見えてきたと喜んでおられました。不況に苦しむ中小企業には、資金繰り支援を拡充するほか、こうした経営課題を根本から改善していく道筋を、専門家が助言してくれることが求められています。
 都の相談事業では、経営課題の解決までに、平均して八回程度の専門家の派遣が必要と聞きます。こうした支援の提供を望む都内の中小企業は、今後、数十ではなく数百にも及ぶものと考えられます。
 そこで、都は、経営相談の専門家派遣事業を大きく拡充すべきであります。見解を求めます。
 次に、雇用対策について質問いたします。
 定例会初日の所信表明で、知事は、年末に向けて、福祉保健分野での官民連携の新たな緊急雇用を表明しました。しかし、雇用対策はこうした取り組みに加え、非正規労働者の正規雇用化と、新卒者の雇用確保という二つの難問に対し、現場を持つ都の強みを生かして、真正面から対策を講じるべきであります。
 まず、非正規労働者の正規雇用化についてであります。
 直近の国の労働力調査によれば、昨年の労働者に占める非正規労働者の割合は三四・三%で、データ比較が可能な平成十四年以降、過去最高となりました。有為な人材を求める都内の中小企業が多くある中で、非正規労働者が増加する理由の一つが、大卒者の大企業志向であるといわれております。多くの学生にとって、中小企業への就職は、生涯を通じた賃金不安から、二の足を踏んでいるというのが現実ではないでしょうか。
 我が党の主張を受け、都はこれまでも、カウンセリングから仕事探し、就職後のフォローまで、早期に正社員としての就職を希望する人を継続して支援する取り組みを進めてきましたが、問題の根本的な解決にはより一層の取り組みが必要です。
 これまで都は、求人求職のミスマッチを解消するため、産業労働局を中心にさまざまな対策に取り組んできました。今後は、中小企業で働くことに対する賃金不安、具体的には、住まいや子どもの教育、仕事と育児の両立などを総合的に支援するパッケージを構築することが不可欠と考えます。そのためには、各局横断の取り組みが必要であります。知事の見解を伺います。
 新卒者の就職支援も重大な課題です。新規就職時に非正規だった人が、不遇なままで人生を終わることを、欧米ではバッドスタート・バッドフィニッシュというそうですが、これを何としてもグッドフィニッシュに転換する施策展開が必要であります。
 この秋、公明党青年局が全国規模で実施した若者雇用実態調査では、極めて困難な就職活動の実態が浮き彫りになりました。三人に一人が非正規職という実態をこれからの取り組みで転換するためには、まずは即効性ある支援策として、新卒特別応援窓口の大幅な拡充を進めるとともに、その窓口において学生の適性を見きわめ、適所に就職ができるようカウンセリング機能を持たせるべきであります。都の見解を求めます。
 次に、精神障害者の雇用対策について質問します。
 都はこれまで、都独自の東京ジョブコーチ支援事業などを通して、精神障害者の特性に対応した支援を講じるなど、さまざまな取り組みを展開してまいりました。ところが、都の職員採用においては、身体障害者の正式採用は行われておりますが、知的や精神障害者の採用は行われていませんでした。
 そのため、我が党は、知的や精神障害者の採用を実施するよう提案し、都は、六カ月間のチャレンジ雇用を開始しました。しかしながら、障害を持った人にとっては期間が余りにも短く、長期間働くことを望む強い声があります。都は、長期就労を視野に入れて知的や精神障害者を採用するべきであります。見解を求めます。
 精神障害者については、過渡的雇用も重要です。我が党は、先日、精神障害者の自立支援施設を視察しました。その施設では、民間企業と契約を結び、約一年にわたって実習する過渡的雇用を実施しています。これは、精神障害者にジョブコーチが付き添って働き始め、一緒に働く中で適性を見きわめるもので、この施設では、過渡的雇用により、昨年度までに四十二人のうち二十七人が一般就労を果たしています。
 そこで、都は、就労支援機関と連携し、過渡的雇用など、本格採用する前の段階にも、東京ジョブコーチを活用すべきと考えます。見解を求めます。
 一方、東京ジョブコーチは、定期的に研修を受けスキルアップを図っていますが、その知識、スキル等には相当格差があり、特に、身体、知的、精神障害の三つに対応できる知識、スキルを持っている人は少ないといわれています。
 そこで、東京ジョブコーチについて、三障害にバランスよく対応できるよう、そのスキル向上を図るべきと考えますが、見解を求めます。
 都はこれまで、就労を求める障害者の立場から取り組みを進めてきました。今後は、それに加え、企業経営と障害者の雇用の融合を促進するため、精神保健福祉士やキャリアカウンセラー等の有資格者、経験者を企業に派遣するなど、障害者の採用を検討している企業に対する支援を強化し、障害者の働きやすい雇用の場の創出を図るべきであります。見解を求めます。
 次に、首都東京のエネルギー政策について質問します。
 東日本大震災は、福島第一原子力発電所など、発電施設に甚大な被害をもたらし、国の対応策も迷走した結果、東京都はかつてない電力危機に直面いたしました。電力消費がふえる真夏や真冬の節電対策とともに、今後、エネルギーを安定的かつ長期的に確保していくために、抑制と供給の両側面から具体的な取り組みをしなければなりません。
 その第一は、経済成長と両立する省エネ施策の推進です。国は、公明党の提案を受け、省エネ家電のエコポイント制度を導入し、経済成長と省エネの両立を可能にしました。
 他方、都は、かねてから地球温暖化対策として、事業所などに新たな省エネ設備の導入を促進してまいりました。
 そこで、これまでの都の取り組みを集約し、無理のない賢い省エネ対策や模範となる事例を各家庭や事業所に周知し、省エネ生活を推進する都民ムーブメントを展開していくべきであります。見解を求めます。
 第二は、エネルギー需給の最適化に向けた取り組みであります。
 都議会公明党は、第二回定例会の代表質問で、発電や電力消費の状況を情報技術によって把握し制御することで、効率のよい電気の流れを実現する次世代送電網であるスマートグリッドの導入を早急に検討すべきと求めました。
 これを受け、このたび都がオフィスビルなど業務系施設の集積地域である大手町、丸の内、有楽町において、スマートグリッド導入に向けた基礎調査に着手したことは、先駆的な取り組みとして評価いたします。
 一方、電力消費の約三割を占める家庭においては、電力会社から電力使用のピーク時間に関するデータが提供されないため、節電インセンティブが働きません。
 公明党は先日、北九州市のスマートコミュニティ創造事業を視察しました。そこでは、集合住宅の家庭におけるスマートメーターを活用した需給コントロールが可能となるなど、快適で利便性の高いまちづくりを目指していました。
 そこで、都内の住宅の約七割を占める集合住宅においても、スマートな節電を継続できるよう、電力使用量の見える化と需給の最適化を図る取り組みを進めるべきと考えますが、都の見解を求めます。
 最近、首都圏では、大規模マンションの入居世帯を対象に、スマートメーターを設置するとともに、時間帯別料金を導入し、昼間の電力使用量を抑制したユーザーがメリットを得られるディマンドレスポンスサービスを開始しております。
 そこで、マンション等の新規開発時におけるエネルギーマネジメントの実施とあわせて、こうした節電インセンティブが働く仕組みについても、都として導入を誘導すべきと考えますが、見解を求めます。
 第三には、火力発電の高効率化についてであります。
 原子力発電の依存度を減少させ、安定的な電力供給を実現するためには、再生可能エネルギーを促進するとともに、当面、環境負荷の少ない、高効率な火力発電に転換していくことも重要であります。
 都議会公明党は先月、東京電力の品川、大井火力発電所を視察しました。このうち、品川火力発電所は、都市ガスを使用し、ガスタービンで発電した後の排熱で蒸気をつくり、蒸気タービンで再度発電するコンバインドサイクル発電機三基で、合計百十四万キロワットもの電力を生み出していました。発電効率は五五%を超え、天然ガスを使用した最新の川崎火力発電所では、約五九%の発電効率でした。他方、大井火力発電所は、老朽化し、発電効率も四〇%と低く、コンバインドサイクル発電へ改良、更新していく必要があります。
 安定した都民生活や経済活動の維持強化のためには、地産地消のエネルギー創出が不可欠であります。そのためにも、老朽化した発電所を低炭素で高効率のコンバインドサイクル発電へリプレースすることを都が積極的に後押しすべきであります。見解を求めます。
 次に、被災地に対する都の支援について質問いたします。
 被災地の復旧、復興はいまだ道半ばであり、大きな課題となっているのが震災瓦れきの広域処理の問題であります。岩手、宮城両県の震災瓦れきは、両県の一般廃棄物の十年から二十年分に相当し、県単独での処理は不可能といわれております。このため、国の責任で、県内処理される福島県を除き、両県の分は県外の自治体に委託する広域処理が急務となっております。
 こうした中で、都は、我が党の緊急要請もあって、本年五月、今後三年間で岩手、宮城両県の震災瓦れき五十万トンの受け入れを表明しました。既に受け入れた岩手県宮古市からの一千トンに加え、さらに宮古市から一万トン、また、都内区市町村の協力のもと、宮城県女川町からの十万トンが決まっております。
 都の広域処理を着実に実行していくには、都民の十分な理解と協力が不可欠であります。そのためには、瓦れきを受け入れる際の自治体の選定基準、焼却や埋め立ての体制、放射線の測定と公表など、処理計画の内容を具体的に示すべきであります。また、放射線への不安を払拭するには、測定体制や埋立状況等を目に見える形で広報すべきであります。あわせて都の見解を求めます。
 一方、全国では、瓦れきの放射性物質の安全確認、自治体への情報提供など、後手に回った国の対応のまずさによって二の足を踏む自治体が続出しています。震災瓦れきの広域処理を東京から全国に広げていくために、都がこれまで培ったノウハウを積極的に提供し、国に対して多くの自治体が協力しやすい環境を整備するよう求めるべきと考えます。知事の所見を伺います。
 次に、被災地応援ツアーについて質問いたします。
 我が党が被災地を調査した際、被災各県が観光立県であることから、多くの都民が観光に来てほしい、そのため、東京都が旅行者にインセンティブを与えてもらいたいと経済団体から強い要請がありました。そして、このことを知事に緊急要望し、知事は前向きに取り組むことを約束、実現に至ったのが被災地応援ツアーであります。
 事業規模についても、当初、一泊二千円の助成で、二万五千人分であったものを、知事の英断により、一泊三千円の助成で、五万人分に大きく拡大いたしました。被災各県の経済団体や観光団体も大変喜んでくださり、八月には福島県の旅館のおかみさんたちが福島県の副知事と一緒に都庁と都議会に御礼のあいさつに見えました。
 この事業の期間は九月から来年二月までの予定でしたが、大変に好評で、大手旅行会社においては十月末で完売したところも出ております。ただ、福島県については、風評被害も相まって、いまだ観光産業にとって厳しい状況が続いており、福島県のこうした状況を勘案して、来年度も被災地応援ツアーを継続すべきであると考えます。都の見解を求めます。
 次に、都内へ避難してきている被災者への支援について質問します。
 現在、都内では約九千人の避難者が生活しています。このうち福島県からの避難者は約七千人を超え、避難生活は長期化する様相を見せています。避難者の孤立化が心配され、それを防ぐ手だてとして、避難者と地域、避難者相互の交流を促進させることが重要であります。
 都は、区市町村や社会福祉協議会などと連携して、避難者への各種支援や交流事業などを展開していますが、必ずしも避難者が主体者となって交流できる状況になっていません。
 そこで、都庁の展望台や都民広場などに、被災者みずからが運営する広域的な交流サロン機能を設け、被災地を支援する特産品の物販機能を持つシンボリックな取り組みを行うべきであります。見解を求めます。
 また、被災者の方々は就労も難しく、都内での避難生活は厳しい状況に置かれています。これから本格的な冬に向かいます。このような状況を踏まえ、被災者へのさらなる生活支援を推進すべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、東京の防災対策について質問します。
 公明党は、このたび、地方自治体の防災担当セクションに対する聞き取り調査、女性の視点からの防災行政総点検を実施しました。その中で、半数の地方自治体において、地方防災会議に女性が登用されておらず、防災対策の策定に女性の意見が反映されていない実態が明らかになりました。
 今回の震災で、避難所における女性のニーズの把握やプライバシーへの配慮が不十分だったとの報告もあり、女性の特性に配慮した防災対策を講じていくことが必要であります。
 また、九月二十八日に発表された中央防災会議の専門調査会の報告によると、岩手、宮城、福島の三県では、高齢者の犠牲者が多かったという実態が明らかになっています。避難生活を送る高齢者の中には、介護支援施設やケアマネジャーらも被災し、全く介護サービスを受けられなくなった事例もあります。
 都は、防災対応指針の策定を受け、地域防災計画の修正に取り組んでいくとしています。しかし、災害時に援護の必要な人や女性の意見をしっかりと聞き、反映させていくべきであります。都の見解を求めます。
 次に、帰宅困難者対策について質問します。
 東日本大震災では、都内で三百五十万人以上の方々が帰宅困難者となりました。もし首都直下地震が昼間発生した場合、さらに多くの都民が、途絶する交通の影響により、都内に取り残されると想定されています。こうした人々の安全を確保し、加えてけが人の救出、救護、消火活動の円滑な展開のためにも、膨大な帰宅困難者の発生を抑える必要があります。
 そこで、発災時にさまざまなメディアを通じて、帰宅しないことを求めるメッセージを迅速に発信し、企業などに協力を要請することが必要であります。この責務を担うのは知事であります。
 また、知事は、企業に災害支援物資の備蓄を促す条例の制定を表明されております。一斉帰宅の抑制から一時待機施設の確保、物資の備蓄まで一貫した取り組みを条例に盛り込むべきであります。総合的な帰宅困難者対策に取り組む知事の見解を伺います。
 都はこれまでも、駅前滞留者対策訓練を実施してきましたが、駅前協議会を立ち上げた初年度までは都が関与するものの、その後は各地域の主体的な取り組みに任せてきました。しかしながら、三・一一の大震災当日の混乱を見た場合、都は各地域の取り組みだけに任せず、一斉帰宅の抑制、一時待機施設の開設、鉄道運行状況の把握など、発災時の具体的な対応を検証するために、実践的な訓練を通じて、実効ある帰宅困難者対策を進めるべきであります。見解を求めます。
 災害時における道路の寸断は、救援活動をおくらせる原因の一つであります。そこで、ITS、インテリジェント・トランスポート・システムの活用について質問します。
 ITSとは、最先端の情報通信技術によって、渋滞解消や事故発生の抑制などを目指す新しい交通システムであります。
 今回の東日本大震災では、長年の課題であった、移動中の車両から発信される走行地点の情報の統合が、自動車メーカーの壁を超え、世界で初めて実現されました。これにより、被災地内で通行可能な道路情報の迅速な把握が可能となり、救援隊の移動や救援物資の輸送に大いに役立ったと聞いております。
 一方、土木学会と電気学会による東日本大震災の調査団は、緊急提言の中で、震災当日に東京で発生した大渋滞に言及し、発生のメカニズムの解明を急務の課題と指摘しています。
 二〇一三年には、ITS世界会議が東京で開催されます。日常の渋滞緩和に加え、東日本大震災を経験した日本、とりわけ東京のITS技術の進展がもたらし得る災害対策が、世界の注目を集める機会となります。
 都は今後、都内の産業界に加え、大学などの研究機関とも連携して、ITS技術の災害時の交通対策における活用を検討すべきと考えます。見解を求めます。
 なお、東日本大震災により、被災地の市町村では庁舎にも甚大な被害が及び、戸籍データを消失する事態に陥りました。また、昨今ではサイバー攻撃の危険が急激に高まりつつあり、行政の持つ電子情報のセキュリティー強化が改めて求められております。
 行政が保有する情報資産を守るためには、都や区市町村のシステムを災害やサイバー攻撃に強い外部のデータセンターに集約する必要性が高まっております。都は、ネットワーク経由でソフトの共同利用やデータの保管などができるクラウドコンピューティングの活用を、都内区市町村と連携し、取り組むべきであります。見解を求めます。
 本年七月、障害者と健常者の共生を目指す改正障害者基本法が成立し、八月に施行されました。これは、二〇〇九年に公明党がまとめた同法改正の骨子案をもとに、政府と与野党が修正協議を重ね、全会一致で成立したものです。
 本改正では、国や自治体に障害の程度や生活の事情に応じた防災、防犯施策を講じることも義務づけられました。これは、東日本大震災で、耳が不自由な人が防災無線を聞けず、逃げおくれるなど、障害者への情報の伝達がうまくいかなかったことなどを踏まえて盛り込まれたものであります。
 都議会公明党はこれまで、障害者が災害や不測の事態に遭遇し、助けを求めたいときに、周囲の人が気づき、支援しやすい環境を広域的に整えるよう再三求めてきました。
 障害者の就労、社会参加が進む中、これまでにも移動中の障害者の方々が、災害や事故などによる交通ダイヤの乱れなど、ふだんと異なる事態に遭遇してパニックになったり、迷子になるなどの事例がありました。
 現に三・一一東日本大震災のときには、翌朝まで続いたターミナル駅などの帰宅困難者の列には障害を持った人も少なからずおり、本人だけでなく、家族も大変つらい思いをされたとの話も聞いております。
 改正障害者基本法が施行された今こそ、災害時に障害者が支援や情報を求めたい場合には、社会全体で支援できるよう、ヘルプカードの拡充とともに支援のためのガイドラインを作成し、広く周知すべきと考えます。見解を求めます。
 次に、災害時の視覚、聴覚障害者対策について質問いたします。
 東日本大震災では、被災地で、聴覚障害者が必要とする手話通訳者が不足しました。都は、手話通訳者派遣の支援を行ってきたと聞いておりますが、都が被災地になったときには逆に支援を受けねばならず、その体制を万全にしておかなければなりません。
 障害者基本法の改正では、言語としての手話が法律の中に初めて盛り込まれ、意思疎通の手段として手話を選択できる機会の確保と拡充が図られることとされました。法改正も踏まえ、聴覚障害者に対する災害時の情報バリアフリーの取り組みをさらに推進すべきと考えますが、見解を求めます。
 一方、視覚障害者に対する対応としては、音声による案内装置の積極的な活用が有効であります。都議会公明党はこれまで、本会議質問で、鉄道、都庁舎、都立公園、スポーツ施設などの公共施設に視覚障害者用の音声案内装置を整備すべきと主張してまいりました。都営地下鉄や都庁舎への音声案内装置の導入は徐々に進んでいます。
 都立公園は、大規模災害時に防災公園として避難場所にも位置づけられていることもあり、音声案内装置は必要であります。視覚障害者のため、都立公園のだれでもトイレへの音声案内装置の整備を早急に推進すべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、障害者用駐車場の適正利用について質問いたします。
 近年、障害者用駐車スペースの整備が進んでいますが、せっかく設置された専用スペースに健常者が駐車してしまうことも多く、本来の利用者が使用できない事例が後を絶ちません。
 その対策の一つとして、全国に広がっているのがパーキングパーミットであります。
 この制度は、身体障害者や難病、また高齢で歩行が困難な方、けが人や妊産婦など一時的に歩行が困難な方に対して、共通するパーキングパーミット、すなわち障害者用駐車場利用証を交付することで、専用駐車枠を利用できる人を明らかにし、駐車スペースを確保する制度であります。
 都議会公明党は先日、山口国体の後に行われた全国障害者スポーツ大会を視察しましたが、競技会場の外でも、障害者用駐車スペースの適正な利用が守られていました。都においても、スポーツ祭東京二〇一三に向けて、こうした制度を早期に取り入れることで、障害者支援に関する都民の理解が一層深まるものと考えます。
 そこで、すべての人が障害の有無にかかわらず、共生した社会を築くために、都内のバリアフリーを一層進めるとともに、パーキングパーミット制度を導入すべきであります。見解を求めます。
 次に、障害者スポーツの具体的な振興について質問します。
 スポーツ祭東京二〇一三は、国民体育大会と全国障害者スポーツ大会を初めて一体として開催し、ユニバーサルデザインを意識した今までにない大会運営を目指しています。
 障害者スポーツの振興は、障害者の社会参加や自立促進を図る上でも大きな効果が期待されています。そのためには、障害の有無を超えて、だれもが、いつでも、どこでも取り組める競技の普及が必要です。
 その点、今注目を集めているのが卓球バレーであります。卓球バレーは、視覚、聴覚、肢体不自由等のさまざまな障害の方が参加できるスポーツで、一チーム六名で卓球台を取り囲むように座り、金属球の入った音の出るボールを三打以内で返球するゲームであります。
 全国障害者スポーツ大会山口大会でもオープン競技として採用され、私も大会前日には、障害者の選手の皆さんと競技を楽しみ、都が目指す障害者スポーツのコンセプトに合致する競技であることを実感しました。
 都は現在、我が党の要請にこたえて、障害者スポーツ計画の年度内の作成、公表に向けて取り組んでいます。卓球バレーなどのように、障害の有無や障害の種別を超えて取り組めるスポーツの普及などを通して、都内の障害者スポーツの本格的な振興を図るべきと考えます。スポーツ振興局の見解を求めます。
 障害者スポーツの若年層の拡大を図るためには、都立の特別支援学校での普及啓発が大切です。体育活動を充実させるためにも、卓球バレーのような活動を積極的に取り入れるべきであります。教育庁の見解を求めます。
 次に、特別支援学校における移動支援について質問します。
 都立肢体不自由特別支援学校には、医療的ケアを必要とする障害が重い児童生徒のために在宅訪問教育制度があります。障害が重い児童生徒を育てる保護者の中には、教員が自宅を訪問して学習指導を行ってくれることに感謝しながらも、一方で、我が子の体調に応じて学校に通学させて、より多くの友達や先生とのかかわりの中で教育を受けさせたいとの願いもあります。
 しかし、保護者が運転免許証を持っていない、あるいは福祉タクシーの利用に関する支援において区市町村ごとに隔たりが大きいなどの理由により、そうした願いがかなわない地域差に苦しんでいます。
 そこでまず、都教育委員会は、医療的ケアが必要で訪問教育を受けている児童生徒の心身の状況や保護者の通学に関する意向を改めて把握すべきと考えます。また、医療的ケアを必要とする児童生徒の通学手段の確保については、区市町村や保護者、医療関係者との連携を踏まえた取り組みが必要と考えます。あわせて教育庁の見解を求めます。
 次に、自転車走行の安全対策について質問します。
 東日本大震災後のガソリン不足等により、自転車を利用する人が増加してきています。自転車は、だれでも乗れるという利便性の反面、最近では、歩道上や交差点での歩行者に対して自転車が加害者となるケースが顕在化し、高齢者、障害者などの交通弱者が犠牲となるケースも出てきています。したがって、ブレーキのないピスト自転車や、夜間に無灯火で車道を逆走するケース、飲酒運転など、悪質な法律違反は厳しく取り締まるべきであります。
 そのような中、去る十月二十五日、警察庁より自転車総合対策が公表されました。同対策では、自転車の車道走行が徹底されており、都民からは、歩道から自転車をすべておろす大転換が図られ、自転車の歩道走行が厳しく取り締まられるのではないかとの不安の声や、車道上での自転車走行レーンが十分に整備されていない中、自転車が車道を走行することで自転車と自動車の事故がふえるのではないかとの声が多く寄せられております。
 具体的には、保護者が幼児を乗せて自転車を運転するときや車道に駐車車両がある場合、車道の幅員が狭い場合などの走行方法であります。原則として、自転車は車道を走行すべきとは思いますが、このような場合は走行方法について警視庁の見解を伺います。
 また、自転車が本来の車道を安心して走行できるように車道上の自転車走行レーンを積極的に整備していくべきであります。今後の都道における自転車走行レーン整備への取り組みについて、都の見解を求めます。
 我が党は、自転車の取り締まり強化のみならず、自転車走行空間の整備を初め、事故を起こした場合の保険制度など、一貫した自転車条例の制定を求めてきました。最近のこういった状況をかんがみて、条例制定の取り組みを一層加速すべきであります。都の見解を求めます。
 最後に、東京発公会計制度改革について質問いたします。
 我が党が提唱し、知事が決断をして、都が全国に先駆けて導入した複式簿記・発生主義会計を活用して、平成二十三年度の予算編成において、二百十億もの財源を捻出したことは、国が仕分け人の一方的な主観により事業仕分けを行い、結果的に絵にかいたもちになってしまっていることと比較すると、大いに評価されるべきであります。
 我が党は、こうした成果を広く全国に発信していくことを求めてまいりました。都は、これにこたえて、公会計改革白書を作成、公表するほか、公会計制度改革シンポジウムを開催するなど、全力で普及拡大に取り組んでいます。特に、大阪府は、石原知事が直接、橋下前知事にアドバイスして導入を決めたものであり、知事のリーダーシップに敬意を表します。
 また、今般、大阪府に続き、愛知県、新潟県が複式簿記・発生主義会計による新公会計制度の本格導入を表明するなど、広がりを見せ始めております。基礎的自治体でも町田市が導入を決め、都も積極的に応援する中、今は会計システム等の最終的な詰めを行う段階と聞いております。
 一方、総務省は、全国の自治体に対し、基準モデルと改訂モデルの二つのモデルを示し、財務諸表の作成を要請してきました。現在、全国自治体の約八割が総務省方式改訂モデルに基づく財務諸表を作成していますが、そもそもこの改訂モデルは、東京都が当初実施していた機能するバランスシートにほかなりません。
 機能するバランスシートでは、時間もかかる上、資産や負債の実在性、網羅性に欠け、精度の高い財務諸表が作成できません。さらに、個別事業ごとの財務諸表を作成することが困難なため、事務事業の評価に結びつけることができないのであります。だからこそ、東京都は、複式簿記・発生主義会計に移行したのであります。
 また、総務省の基準モデルは、民間の企業会計からかけ離れたものであり、住民が理解しにくいだけでなく、国際公会計基準に合致しない不十分なものであります。日本の公会計制度は、世界から孤立する結果になりかねません。やはり都が導入したような、複式簿記・発生主義会計による新公会計制度を広げていく必要があります。
 そこで、今後、他の自治体に対する普及を一層進めるため、新公会計制度の本格導入を決めた自治体に協力を求め、全国への普及拡大に取り組む体制を整備し、国に対し、会計基準の統一化をより一層強く迫るべきと考えますが、知事の決意を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 東村邦浩議員の代表質問にお答えいたします。
 製造業の空洞化についてでありますが、海外の生産拠点で利益を上げて、その資金を元手に日本国内で研究開発などを行い、高付加価値の製品を生み出していくべきであるとの主張には基本的には同感であります。
 しかし、企業の規模によって、それが可能なところとそうでない会社もあるわけでありまして、経済のグローバル化が進み、世界全体が時間的、空間的に狭くなった現代において、新興国の追い上げと相まって、技術の伝播は避けられず、空洞化対策は先進国共通の課題となっております。
 とりわけ、歴史的円高のもとにある我が国は、未曾有の空洞化の危機に直面しているわけでありまして、我が国がみずからの地位を守り抜くためには、研究開発を通じて技術の一段の向上を図り、高付加価値の製品を創出することが有効な手だてであると思います。
 もとより現在の円高には、デメリットだけではなくて、海外企業の買収によって世界シェアを大幅に拡大し、資源開発にも参加するという契機となるメリットもあるはずであります。今必要なのは、円高をただ嘆くだけではなくて、研究開発体制を基本的に強化し、画期的な技術の創出に一層の力を注いで、海外市場を席巻する競争力の高い製品を生み出すことを構想すべきであると思います。
 また、円高を奇貨として、国際経済の中で存在感を示す取り組みを国家を挙げて行うことだと思います。問題は、国が多面的、複合的に発想して戦略を構えることができないということであると思います。
 こうした中で、都は、空洞化を乗り越えるべく、他国には決してまねることのできない高付加価値の製品や斬新な技術の開発に向けて、新製品や新技術の開発助成やベンチャー技術大賞によるすぐれた技術の発掘などを一層推進し、懸命に努力する中小製造業を全力で支え、東京の産業の実力をさらに高めていきたいと思います。
 実は、先般のベンチャー技術大賞でグランプリをとりました、決して緩むことのないねじは、たった二人の、要するに会社が考えたものでありまして、これはまことに見事な発想だと思うんですが、あれもよほど都なり国が守ってあげませんと、ゼムピンみたいに簡単にまねられて、安価ではんらんするというおそれもあります。こういったものを本当に私たちはもっと大事にして、国がその気になって保護しないと、他国に出し抜かれるという気がいたしてなりません。
 次いで、雇用のミスマッチ解消に向けた総合的な支援についてでありますが、近年進んだ働き方の多様化によって、労働者が柔軟に働き方を選択できるようになった反面、企業が人件費の抑制や雇用調整の手段として、非正規労働者を積極的に活用した面もあります。これは、アメリカの要求を受けて、小泉内閣時代に、国が労働者派遣事業の規制緩和を進めたことが拍車になったと思います。
 私は、あの法律の改正は間違いだと思いますね。これは健全な雇用関係を損なって、現況の非常に悪い状況というものを生み出したと思いますが、しかし、こうした状況の中で、正規雇用を望みながらも、やむなく非正規で雇用される方々は、結果として十分なスキルを習得できずに、不安定な就労を続けております。この問題は、本人にとっても不幸なばかりではなくて、社会全体にとっても大きな損失だと思います。
 このため、都はこれまで、努力しているにもかかわらず、不安定な就労を余儀なくされている方々に対して、区市町村とも連携して、生活費の支給と一体となった職業訓練や、住居費の貸し付けなど、国に先駆けた総合的な対策を講じてまいりました。
 また、保育、医療はもとより、仕事と家庭の両立に取り組む企業への支援など、各分野に横ぐしを通した少子化打破緊急対策を実施し、働きながら安心して子どもを産み育てられる自立的な成長社会を築くことを通じて、働く者の将来への不安を払拭すべく取り組んでまいりました。
 一方、都内には、意欲のあるすぐれた人材を求める中小企業も数多くあるものでありまして、人材の確保は十分ではない状況であります。
 こうしたことから、保育、住宅、雇用など、分野の異なる相談を東京しごとセンターにおいてワンストップで対応することによって、意欲のある非正規労働者と中小企業とのマッチングを総合的に支援していきたいと思っております。
 次いで、災害廃棄物の広域処理についてでありますが、未曾有の大震災から間もなく九カ月が経過いたしますが、多量の瓦れきが被災地の復旧、復興を阻んでおります。都は、被災地を後押しするために、発災直後から岩手、宮城両県に赴いて、災害廃棄物の受け入れについて、被災市町村とともに精力的に調整を進めて、都内区市町村や民間との力を合わせて、両県の瓦れきを受け入れることにいたしました。
 また、都は、放射能について、測定回数や手法など、現場で実践的に必要となる事項について、国のガイドラインよりも詳細な都独自のマニュアルを制作してきました。都が安全性を十分に確認し、都民にわかりやすく情報を公開しながら、災害廃棄物を受け入れている事実は、必ずや多くの自治体を動かして、被災地の復旧、復興が大幅に加速されるものと確信しております。
 国に対しては、都の経験を学んで、被災地のそれぞれの現場の実態に即した広域処理の仕組みづくりに、政府自身が汗を流すように強く求めていきたいと思っております。
 次いで、帰宅困難者対策についてでありますが、東日本大震災で都内において多量の帰宅困難者が発生して、大きな混乱を招くという経験をしたにもかかわらず、今回、国が実施した調査によれば、首都直下地震が発生した場合に、約五割の人がやはりすぐに帰宅したいと答えております。
 実際に首都直下地震が発生した場合には、時間帯にもよりますけれども、都民がすぐに帰宅を開始しようとすれば、都民自身が危険にさらされるだけではなくて、救助、救護、あるいは消火活動に支障が生じ、首都東京の機能回復がおくれることになりかねません。
 このため、都は、都民のこうした意識を変えていくとともに、発災時には、都がリーダーシップをとって、都民の一斉帰宅の抑制を徹底するつもりであります。もちろん、みずからの安全が確認されれば、地域の救助活動にも協力してもらいます。
 また、企業には、食料等の備蓄と、周辺の帰宅困難者を受け入れる一時待機施設の確保等にも協力してもらうつもりであります。
 こうした自助、共助の視点から、総合的な帰宅困難者対策のための条例を設けて、都民の生命と財産を守るとともに、首都機能の迅速な回復を図っていくつもりであります。
 最後に、新公会計制度の普及拡大の取り組みについてでありますが、気鋭の評論家であります福田和也君の名論文に、日本人はなぜかくも幼稚になったかというものがありまして、その中で幼稚な人間というのは、IQが低いとか、人の知っていることをよく知らぬというものじゃなくて、何が肝心かということがわからない人間、その肝心なことについて取り組もうとしない人間が幼稚な人間だと。私は至言だと思いますが、経済そのものが非常にピンチに瀕している今に、日本にとって一番肝心なものはこの公会計制度だと思いますね。それがわからずに、今の政府のように事業仕分けみたいなスタンドプレーをやったって、財務諸表のない国に、そんなものの本当の仕分けができるわけがない。
 ですから、最初はバランスシートというものをつくり直すことから始めまして、当時の公認会計士協会の会長の中地君と一緒に協力しまして、力もかりました。
 公明党も理解いただいて、とにかく新しい会計制度をつくったわけでありますが、これをやらない国というのは、日本の周りでは考えてみますと、北朝鮮とパプアニューギニアとマニラ、フィリピンだけでありまして、先進国でこれをやっていない国はないのに、日本はなぜか知らぬけれども、とにかく、いまだに大福帳の域を出ない単式簿記でやっているわけでありました。これを私たちは一番肝心なこととしてとらえて、その改正に努めてきたわけでありますが、やはり、これは私たちがやってきた改正、改革の最たるものであったと思っております。
 これは日本にとっても大事なことでありますから、さまざまな機会を通じて、国に公会計制度の改革を働きかけるとともに、その意義を全国の自治体に広く発信してまいりました。
 改革の本質を理解し、こうした取り組みに真っ先にこたえたのが大阪府や町田市でありました。今般、新たに愛知県と新潟県が──新潟県は、なぜか財務省がそそのかして総務省が進めている非常に中途半端な複式と称するいいかげんな会計制度はとらずに、やはり東京と同じ、税金というものをきちっと踏まえた、これはここでくどくど申しませんけれども、私たちと同じ会計制度に取り組むということを意思表示しました。これは大変健全だし、結構な判断だと思っております。
 いずれにしろ、新公会計制度の本格的導入を各自治体がこれから積極的に取り組むことが、国が抱えている、自治体が抱えている問題を、その肝心なものを直すことでの、要するに解消につながると思っております。
 この制度のさらなる普及を進めるに当たって、都と本格導入を表明した四つの自治体がそれぞれの経験をもとに互いに協力して、共同した取り組みを進めることによりまして、従来以上に大きな波及効果が期待できると思っております。このため、年内を目途に、これから自治体との協議機関を設置することにいたしました。
 今後とも、都は国に対し、全国標準たり得る会計基準の策定を強く働きかけるとともに、志を同じくする自治体と緊密に連携して、日本の全体の公会計制度の改革を全力で牽引していきたいと思っております。
 他の質問については、警視総監、教育長、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監樋口建史君登壇〕

〇警視総監(樋口建史君) 自転車の通行方法についてでございますが、ご指摘のとおり、自転車は道交法上、軽車両でございまして、車道の左端を通行していただくのが原則であります。原則でありますけれども、道交法上も、ご指摘ございましたけれども、駐車車両の有無でありますとか、車道の幅員のいかんでありますとか、あるいは、自動車通行量の多寡などのその時々の現場の状況に照らして、車道を通行することが危険と思われる場合には、歩道を通行することができることとされております。
 なお、東京都内でありますけれども、現状について申し上げますと、歩道全長の六三%を普通自転車歩道通行可にいたしております。これは、全国平均が四十数%でありますから、全国平均を大きく上回る歩道が、都内では自転車通行可になっているという現状でございます。このような通行可の標識のある歩道では、ご指摘のありましたような幼児を自転車に乗せた保護者の方々も、自転車で歩道を通行することができるということであります。
 それから、警察官が現場で指導や警告をする場合についてでございますけれども、必ずしもこの標識の有無にかかわらず、その時々の個々の道路の交通の状況を踏まえまして、安全第一で、ご指摘のような方々の安全にも配意した現実的な指導なり警告なりを実施できるように努めたいと考えております。
 もちろん、歩道を通行していただくような場合には、車道側をゆっくり走っていただく必要がありますから、そういった歩行者の通行を妨害しないといった観点からの指導も徹底をしてまいりたいと考えております。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、都立特別支援学校における障害者スポーツの普及啓発についてでございます。
 障害のある児童生徒に対して、体力の向上や健康の増進を図るとともに、将来の余暇活動を充実させるためには、都立特別支援学校等での体育活動に障害者スポーツを取り入れることが大切でございます。
 これまで都教育委員会は、ハンドサッカーやフロアバレーボールなどの障害者スポーツについて、競技会の開催や運営を支援し、都立特別支援学校等での普及啓発に取り組んでまいりました。
 今後、お話の卓球バレーのような新たな障害者スポーツについても、都立特別支援学校等に紹介し、障害のある児童生徒が楽しく、安心して取り組めるよう、体育活動の一層の充実を図ってまいります。
 次に、医療的ケアが必要で訪問教育を受けている児童生徒についてでございます。
 濃密な医療的ケアを必要とする重症心身障害児は、生命や健康の維持管理が極めて重要であり、通学に係る負担等も考慮して在宅訪問教育の対象として、これまで実施体制の整備と教育内容、方法の充実に努めてまいりました。
 重症心身障害児が通学をして教育を受けることにつきましては、今後、一人一人の医療的ケアの種類や程度、通学による教育に対する保護者の意向を的確に把握し、区市町村との連携のあり方や、医師等の専門家の関与のあり方も含めて総合的に検討してまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立公園のだれでもトイレにおける音声案内装置についてでございますが、都立公園は、都民に安らぎや憩いの場を提供する重要な施設であり、高齢者や障害者も含めたすべての人々が安全・安心、快適に利用できることが重要であります。
 このため、都立公園では、東京都福祉のまちづくり条例に基づき、園路の段差解消、手すりの設置、だれでもトイレの整備などを推進するとともに、視覚障害者のために、点字ブロックや点字表示も設置してまいりました。
 音声案内装置は、福祉のまちづくり条例に基づく施設整備マニュアルでは、今後社会的に目指していくべきより望ましい整備とされております。平成二十一年度に駒沢オリンピック公園のだれでもトイレに設置いたしました。
 こうした施設の利用状況を踏まえ、視覚障害者の方にも使いやすい公園づくりを一層推進するため、都立公園のだれでもトイレにおいて、音声案内装置の順次設置に向け、検討してまいります。
 次に、自転車レーンの整備についてでございますが、自転車は、近距離の移動にすぐれ、環境への負荷が少ない手軽な交通手段として、その利用が広がっております。
 こうした自転車需要に対応し、車道空間を確保しつつ、歩行者、自転車それぞれの安全・安心を実現する自転車走行空間の整備が重要でございます。
 車道上に自転車レーンを整備するに当たっては、二車線道路の場合で、歩道や植樹帯を含め、全体でおおむね十五メートル以上の道路幅員が必要であります。また、沿道店舗の荷さばきやパーキングメーターなどの施設への対応、違法路上駐車の排除など、さまざまな課題がございます。関係者間の合意形成や連携が肝要と考えております。
 現在、都は、「十年後の東京」への実行プログラムに基づき、現状の道路構造や利用状況を踏まえて、広い歩道を活用した植樹帯による構造的な分離や、カラー舗装による視覚的分離、車道の一部を活用した自転車レーンなど、多様な手法を用いて自転車走行空間の整備を進めております。
 引き続き、自転車レーンも含め、だれもが安全で安心して利用できる自転車走行空間の整備を、地域の理解と協力を得ながら着実に推進してまいります。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 七点のご質問にお答えいたします。
 まず、年末の資金繰り支援についてでありますが、年末における短期の運転資金の需要の増加に対し、都は、制度融資におきまして、原則三営業日以内で保証審査を行うつなぎ融資の上限額の引き上げを行いました。
 また、長期化する円高により売り上げが減少している中小企業を支援するため、円高対応融資メニューの利用要件を緩和し、輸出企業に限らず、幅広い企業を対象とするほか、融資の申し込みを速やかに行えるようにいたしました。
 加えて、都が独自に実施している地域の金融機関と連携した新保証つき融資については、保証料率の引き下げが行われることとなりました。
 こうした取り組みについて、都は中小企業団体を通じまして、各中小企業に周知を図るほか、金融機関の最終営業日であります十二月三十日まで、年末特別相談窓口を開設し、事業者の資金繰りの相談にきめ細かく対応いたします。あわせて、すべての取扱金融機関などに対して協力を要請することにより、中小企業の円滑な利用促進に努めてまいります。
 次に、中小企業の経営相談のあり方についてでありますが、中小企業が厳しい経営環境を克服するためには、直面するさまざまな課題の的確な解決に向け、会社の現場で豊富な知識やノウハウを持つ専門家の相談を受けることが効果的であります。
 このため、都では、中小企業振興公社において、経営の専門家などが継続的に企業を訪問いたしまして、課題解決に向けたアドバイス等を行う事業を実施しております。この事業に対する利用者の評価は高く、相談実績も大幅に伸びておりますことから、中小企業からの要望に適切に対応のできる派遣相談の体制の拡充について検討しております。
 こうした取り組みにより、中小企業の経営上の課題解決を積極的に支援してまいります。
 次に、新卒者の就職支援についてであります。
 新卒者を取り巻く雇用状況は依然として厳しく、意欲ある若者の就職を実現するためには、きめ細かい支援が必要と認識しております。
 このため、都では、平成二十二年三月から、東京しごとセンターに新卒向けの特別応援窓口を緊急に開設し、キャリアカウンセリングやセミナーなどを通じたきめ細かい支援を行うこととしております。翌二十三年には、同窓口の設置時期を一月に前倒しするとともに、新たに既卒三年以内の若者も対象といたしました。これに加えて、国と連携し、新卒向け求人紹介等を専門で行うジョブサポーターを配置いたしました。
 今後は、より一層、適性に応じた就職ができますよう、原則として同窓口の利用者全員に職業適性診断を実施し、カウンセリング機能を強化いたします。
 さらに、新卒者等が求人企業を訪問して企業説明等を受ける少人数制のツアーを新たに実施いたします。
 引き続き、意欲ある新卒者が早期に就職できるよう、こうした取り組みを着実に推進してまいります。
 次に、障害者の本格採用前の段階における東京ジョブコーチの活用についてであります。
 東京ジョブコーチは、企業や地域の就労支援機関等の要請に基づいて事業場に赴きまして、個々の企業の実情に応じて、職場環境の調整や作業能力向上に係る助言等の支援を実施しております。
 就労支援機関は、障害者の方に寄り添った生活面を含めた支援を行っていることから、東京ジョブコーチは必要に応じて、就労支援機関と連絡をとり合いながら、企業現場での定着支援を実施しております。
 また、東京ジョブコーチ支援事業を所管する東京しごと財団においては、就労支援機関との間で情報交換を進めるなど、連携体制を構築しているところであります。
 ご指摘の過渡的雇用のような本格採用前での東京ジョブコーチによる支援につきましては、その後の定着に資するものでありますことから、引き続き地域の支援機関と連携を図りながら、今後、計画的に取り組んでまいります。
 次に、東京ジョブコーチのさらなるスキルアップについてでありますが、東京ジョブコーチ支援事業は、障害者の就労支援に意欲ある方々に研修を受けていただき、東京しごと財団に登録し、支援を行う仕組みであり、支援対象に応じて適切に対応できますよう、企業の人事部門や福祉施設での勤務経験のある方や精神保健福祉士等の専門資格、技能を持つ方など、多様な人材により構成されております。
 これらの方は、職業経験等その背景が異なることから、一定のスキルを維持するため、東京ジョブコーチとなった後も、困難事例に対応するための研修を毎年受講することを義務づけているほか、実際の事例に即してジョブコーチ同士が支援手法を共有するための事例検討会を本年五月に設けております。
 今後は、研修等の内容についても、新たにジョブコーチの経験や技量をきめ細かく見きわめてカリキュラムを作成するなど、一層のスキルアップに努めてまいります。
 次に、障害者の採用を検討している企業に対する支援についてでありますが、障害者の雇用拡大に向けましては、雇用の受け皿となります企業に対する支援も重要であります。
 このため、都は、東京しごと財団を通じ、障害者の雇用促進を図るため、中小企業向けセミナーや企業合同説明会、企業間で障害者雇用に関する情報を交換する企業情報連絡会などを開催しております。
 今後は、企業情報連絡会等において、東京ジョブコーチや専門家による先進事例の紹介や、企業の人事担当者の実務的な疑問に答える場を設定するほか、雇用機会の拡大に向け、採用に意欲のある企業に対する支援の強化を検討してまいります。
 最後に、被災地応援ツアーについてでありますが、本ツアーは、東日本大震災による被災地域復興支援のための緊急対策の一環として、本年九月から実施しております。
 参加された都民からは、このツアーが岩手、宮城、福島の被災三県への旅行のきっかけとなったという意見を多数いただいておりますほか、受け入れ側の観光事業関係者などからも、当ツアーの実施に対し、感謝の声が多く寄せられており、今年度予定した五万泊のうち、既に過半が販売済みであります。
 一方、大震災から九カ月が経過いたしまして、岩手県、宮城県におきましては、復調しつつある地域もあると聞いておりますが、ご指摘の福島県におきましては、いまだ多くの県内主要観光施設の入り込み客数が前年を大幅に下回る状況が続いていると聞いております。
 こうした福島県の観光の状況や今後の動向を踏まえまして、平成二十四年度の被災地応援ツアーの実施につきまして検討してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 六点のご質問にお答えをいたします。
 まず、知的障害者、精神障害者の採用についてでございますが、障害者の就労機会を拡大する上で、都が率先してこれに取り組んでいくことは重要であると認識しております。
 都ではこれまで、知的障害者、精神障害者に対して、企業等への就職を促進するため、臨時職員として雇用するチャレンジ雇用を実施してまいりましたが、これには任期が六カ月という制約がございます。
 知的障害者、精神障害者の就労におきましては、就職後の職場定着が重要であることから、都においても仕事内容を理解し、職場の人間関係になれ、落ちついた環境で仕事ができるよう、より長期間就労していただくことが必要であります。
 今後は、知的障害者、精神障害者を採用するため、任期一年、かつ更新が可能な新たな非常勤職員制度の創設を検討するとともに、就労する職場の拡大にも努め、都としてさらなる率先的な行動を図ってまいります。
 次いで、都内避難者の交流の場の提供についてでございます。
 避難生活の長期化等により、避難者の孤立化が懸念されることから、交流の場を確保することは重要でございます。現在、避難者のための交流会やサロンの多くは、避難先の区市町村等が直接避難者に呼びかけて実施しており、都はこうした取り組みを支援しております。
 また、地域における交流が進む中で、例えば東雲住宅のように、都の働きかけにより、避難者みずからが運営する交流組織が活動を始めた例や、交流会への参加を契機に、子育て中の親子がみずから交流を始めた例など、避難者の自主的な取り組みも生まれ始めております。
 都は、今後とも、このような地域における交流を支援するとともに、お話の広域的な交流の場等についても、避難者の意向を十分聞きながら、避難者支援策の一環として検討をいたしてまいります。
 次いで、都内避難者への生活支援の推進についてであります。
 都内への避難者に対しては、各局や関係機関と十分に連携し、被災地の行政情報や都の支援情報を定期的に提供しているほか、相談窓口の設置、就労、就学支援など、生活全般にわたる支援をきめ細かく実施しております。
 また、都営住宅等、都が用意する応急仮設住宅に入居を希望する避難者に対しては、生活を始める上で必要不可欠な家電製品や布団をいち早く用意し、速やかに生活を始めることができるようにしてまいりました。
 しかしながら、避難生活が長期化するにつれ、さまざまな課題が生じることも懸念されることから、都は、民間事業者が行うチャリティー活動と連携し、地域の交流の場で生活支援イベントを開催することなども検討しているところでございます。
 今後とも、避難者の意向の把握に努めるとともに、関係機関等と連携し、避難生活上の諸課題に積極的に対応してまいります。
 次いで、災害時要援護者や女性の視点に立った防災対策でございます。
 災害発生時には、避難誘導や生活支援において、高齢者や障害者、女性などに対して、それぞれの特性や実情に即したきめ細かな対応を行うことが必要であります。
 今回の地域防災計画の修正に当たっては、被災地では具体的にどのような課題が生じ、どのように対応してきたのか等について、被災地の自治体や、現地でボランティア活動を行った方の生の声を聞くなど、さまざまな機会をとらえて実情の把握に努めていくとともに、パブリックコメントを実施し、広く都民の意見を聞くことで、災害時要援護者や女性の視点に立った防災対策を推進してまいります。
 次いで、帰宅困難者対策の実践的な訓練についてでございます。
 都は、猪瀬副知事と内閣府政策統括官を共同座長とし、近隣自治体を初め、経済団体、鉄道や通信など各分野の事業者団体から成る帰宅困難者等対策協議会において、一斉帰宅抑制の基本方針を取りまとめるなど、帰宅困難者にかかわる多面的な対策について議論を積み重ねております。
 こうした取り組みを実効あるものとするため、関係自治体、防災機関、民間事業者等の協力を得て、来年二月三日に東京駅、新宿駅、池袋駅の三つのターミナル駅を主たる会場として、実践的な帰宅困難者対策訓練を実施いたします。
 具体的には、駅構内や周辺の大規模集客施設での利用者の保護、一時待機施設への誘導、情報ツールを活用した安否確認や情報の提供、徒歩帰宅への支援等、発災時のさまざまな場面を想定した訓練を行います。
 こうした訓練を通じて得られた課題をさらに検討することにより、帰宅困難者対策を効果的に進めてまいります。
 最後に、災害等に備えたシステムの集約についてでございます。
 耐震構造や非常用電源、入退室管理などを備えたデータセンターに情報システムを集約することは、災害対策等の観点からは有効と考えます。
 都の各種情報システムについては、例えば三百六十五日二十四時間の稼働が求められるシステム等は外部のデータセンターを利用するなど、システムの特性に応じた配置を進めており、今後とも、安全性や技術動向を見据えた上で、適正な配置に努めてまいります。
 また、クラウドコンピューティングについては、現在、区市町村と連携し、その技術を活用した電子申請等のシステムを共同で運営しており、それらの成果も踏まえ、さらなるシステムの集約について、都と区市町村で構成する協議会において検討してまいります。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、経済成長と両立する省エネ対策の周知についてでございますが、都は、これまでの地球温暖化対策の展開の中で、経済的にもメリットのある省エネ対策を進めてきておりまして、この夏もその蓄積を生かした対策を促進することによりまして、一部では企業活動への負担が見られたものの、全体としては、おおむね無理なく節電が実施されたものと考えております。
 一例を挙げますと、本年五月の東京都電力対策緊急プログラムで提唱しました照明の照度の見直しは、業務に支障がなく、経費の節減にも寄与する取り組みとして多くの事業所で実施されまして、都内の大規模事業所の約八割が来年の夏も実施する意向でございます。
 こうした経済的にもメリットのある省エネ対策を定着させていくことが大変重要でありまして、先日も、業界団体と連携してデータセンターの省エネシンポジウムを開催し、賢い省エネ対策事例の周知を行いました。
 また、家庭におきましても、節電アドバイザーが九月までの夏場の三カ月間に、約三十三万世帯を訪問いたしました。
 今後とも、都は、この夏の取り組みで得られました知見も含め、業界団体と連携したセミナーや説明会、家庭への省エネアドバイスなどを活用し、幅広く都民、事業者に対しまして、賢い省エネ対策の周知を図ってまいります。
 次に、マンションなど集合住宅におけるエネルギー需給の最適化でございますが、夏季のピーク時間帯など、需給逼迫時に電力の最適制御を行うためには、需給データのリアルタイムでの見える化と逼迫時の制御を行うシステム、いわゆるスマートグリッドの導入が有効でございます。
 都は、オフィスビル等の業務集積地に加えまして、今回、マンションなど大規模な集合住宅におきましても、電気、熱両面でのエネルギーマネジメントのあり方について、新たに調査を開始することといたしました。
 この調査では、エネルギーの最適な管理により需要を抑制するとともに、高効率なコージェネレーションや再生可能エネルギーの導入など、集合住宅におけるエネルギー源の自立化、低炭素化を図る手法を検討し、エネルギーマネジメントの具体的な手順、採算性等を明らかにしてまいります。
 さらに、都営住宅跡地等を活用したプロジェクトにおきまして、コージェネレーション設備や蓄電機能等を備え、災害時にもエレベーターの運転や水の供給等に必要な最小限の電力を確保し、住宅内での生活継続を可能とするとともに、エネルギーマネジメントを行う低炭素で災害にも強い民間の住宅開発のモデルを提示し、普及を目指してまいります。
 次に、マンションなどにおいて節電インセンティブが働く仕組みについてでございますが、ディマンドレスポンスサービスは、スケールメリットを生かした高圧一括受電契約によりまして、電力会社から二割程度安い価格で受電し、各世帯が直接、電力会社と契約するよりも安い料金で電力を提供するとともに、時間帯別料金やポイントの付与などによりまして、ピーク時間帯の電力使用量の抑制を図る仕組みでございます。
 このディマンドレスポンスサービスは、電力需給の最適化を図る観点から極めて有効な手法でございまして、都は、先ほどご答弁申し上げました今回の調査の中で、こうした取り組みを標準的な手法として盛り込むとともに、電気と熱の最適な組み合わせや、再生可能エネルギーの活用の観点も含めた新たなモデルの構築に取り組むことといたしました。
 これによりまして、系統電力のピークカットや消費電力の削減を図りながら、家庭における低炭素化にも大きく寄与するモデルを提示しまして、民間事業者の取り組みを誘導してまいります。
 次に、老朽化した発電所のリプレースについてでございますが、東京電力の火力発電設備の約四割が運転期間三十五年を超えておりまして、このまま老朽化した非効率な火力発電に依存することは、安定供給に支障が出かねず、また、CO2排出量を増加させ、地球温暖化対策に逆行することとなります。
 このため、都は、発電効率が高く、環境負荷が少ない百万キロワット級の天然ガス発電所整備に向けた検討を開始しております。あわせて、先月、九都県市として、国に対し、低酸素かつ高効率な火力発電設備の増設、リプレースの推進などに向けまして、民間事業者の活用を図ることを要求いたしました。
 今後も、天然ガスコンバインドサイクル発電などへのリプレースの推進に向け、九都県市で立ち上げました首都圏のエネルギー問題に関する検討会におきまして、具体的な方策を検討し、国に実現を強く求めてまいります。
 最後に、災害廃棄物の受け入れ処理の内容とその広報についてでございますが、都は、発災直後から、被災地の岩手、宮城両県に二十回以上も足を運びまして、どこからどのような性状の廃棄物を受け入れできるか、地元自治体との調整を行ってまいりました。
 今後の新たな受け入れ先や災害廃棄物の数量などにつきましては、引き続き、岩手県、宮城県と仮置き場の限度量や現地の処理施設の整備状況など、被災地の状況を考慮しながら調整いたしまして、都内の受け入れ体制につきましても、これらを踏まえて構築してまいります。
 また、災害廃棄物の放射能対策につきましては、都民に災害廃棄物の状況を正確に理解していただき、安心していただくことが受け入れ事業を進める上で何よりも重要でございます。
 このため、繰り返し測定した放射能濃度の測定結果は、すべて逐次、都のホームページで公表するとともに、都の埋立処分場の放射能濃度につきましても、五月から毎週測定して、その結果を公表しております。
 現在、被災地での放射能測定状況や分別の方法等をわかりやすく説明するDVDを作成しておりまして、今後、都の広報媒体などを通じて示すなど、広く都民に事業の安全性を周知してまいります。
   〔青少年・治安対策本部長樋口眞人君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(樋口眞人君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ITS技術の活用についてでありますが、ITS技術は、救急車を優先通行させるよう信号制御するなどの平時の活用に加え、震災、台風等の災害時の道路情報の把握などにも活用できる可能性がございます。土木学会、電気学会による調査団の提言等にもありますが、災害時のITS技術の活用は重要と考えております。
 二〇一三年には、世界の産学官のITS関係者が技術開発と今後の活用について議論するITS世界会議が東京で開催されます。
 都は、今後、世界会議を、ITS技術が都市機能の向上と安全確保に貢献することを示す一つの機会ととらえ、産業界、研究機関等と連携強化を図り、災害時の対応を含めた大都市の交通問題の解決にITS技術を活用することを検討してまいります。
 次に、自転車条例制定の取り組みについてでありますが、現在、都では、警視庁など関係各局、区市町村、交通安全協会等の関係団体や業界団体の参加を得て、条例制定についての課題も含め、自転車安全利用のための仕組みづくりについて、年度末を目途に検討を進めております。
 一方、警察庁が自転車交通秩序の実現に関する通達を出し、国土交通省等が自転車の利用環境に関する検討委員会を設置するなど、国でもさまざまな動きがありますが、自転車対策を進めるに当たっては、関係者が多く存在するため、自転車利用者、民間事業者はもとより、幅広い都民の理解と協力を得ながら取り組みを進めていく必要があります。
 今後、国の動向も見きわめつつ、都民や関係機関、団体の意見も十分に聞きながら、自転車をめぐる諸問題を解決するため、総合的な自転車政策の構築に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、災害時における障害者支援についてでございますが、緊急連絡先や必要な支援内容などが記載されたヘルプカードは、コミュニケーションが困難な障害者が、災害時等に周囲の人に支援を求める際に有効でございます。
 都内でも、複数の区市や障害者施設が独自に作成しており、都としても、これらの事例集を作成して区市町村に情報提供を行いますほか、カードの目的などについて、広報誌やホームページ等を通じて都民や交通事業者等関係団体に対して周知をしてまいりました。
 今後、こうした取り組みを推進し、区市町村の取り組みや都民、事業者への普及啓発が一層図られるよう、カードの標準様式や記載内容、障害者に配慮すべき事項などに関するガイドラインの作成を検討してまいります。
 次に、災害時の聴覚障害者に対する支援についてでございますが、お話のように、聴覚障害者が災害時に必要な情報を得るには、さまざまな手段を確保することが重要でございます。
 そのため、都はこれまで、災害時要援護者対策を行う区市町村のための指針の中で、聴覚障害者への手話通訳者の派遣や文字情報の掲示等を定め、区市町村に対し適切な体制を確保するよう働きかけてまいりました。
 今回の震災でも、被災自治体の要請により、全国の自治体が手話通訳者を派遣したほか、避難所におきましては、プラカードやホワイトボードが有効に活用されたと聞いております。
 現在、都は、災害時要援護者の支援策につきまして、聴覚障害者団体からも意見を聞いており、聴覚障害者の情報、コミュニケーション支援についても関係団体と十分に意見交換を行いながら取りまとめ、避難所等において障害者の支援に当たる区市町村が必要な体制を整備できるよう、地域防災計画の修正にも反映させるなど、災害時の情報支援の取り組みを推進してまいります。
 最後に、パーキングパーミット制度についてでございますが、この制度は、障害者用駐車施設の適正利用のための有効な方策の一つでございますが、大都市東京で導入するには、対象者の多さや駐車区画の不足など、さまざまな課題がありますことから、都は本年、飲食店、大規模商業施設等における駐車施設等の調査を実施いたしました。
 その結果、中小規模の店舗では、障害者用駐車施設の設置自体が三割以下であること、係員の誘導がない施設では、障害者用駐車区画を健常者が利用している例が五割を占めていることなどが改めて明らかになりました。
 そのため、来年度は、障害者等の駐車施設の利用実態や具体的なニーズを詳細に把握するとともに、施設管理者が導入可能な適正利用策を検討いたしますため、利用者と施設管理者それぞれに利用頻度や駐車台数、管理方法などについてアンケート調査を実施する予定でございます。
 その結果を踏まえまして、大都市東京の実情に合った障害者用駐車施設の適正利用の仕組みづくりに向け、パーキングパーミット制度を含め、施設規模や管理方法に応じて施設管理者と区市町村が連携して実施できる取り組み、対象とする利用者の範囲、効果的な普及啓発の方策等について検討をしてまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) 障害者スポーツの振興についてでございます。
 都はこれまでも、スポーツ博覧会などの参加型スポーツイベントにおいて、ボールを投げて的への近さを競うボッチャやブラインドサッカーなどの障害者スポーツを都民に体験してもらう機会を提供してまいりました。
 お話の卓球バレーのような、障害のある人もない人も、ともに楽しめるスポーツは重要でございまして、現在策定中の障害者スポーツ振興に係る計画において、推奨するスポーツの一つとし、普及に向けた検討を進めてまいります。
 また、あわせて、本計画では、障害者スポーツにかかわる情報発信や普及啓発のあり方を初め、指導者養成や場の確保などについての具体化を図りまして、障害者スポーツの一層の振興に取り組んでまいります。

ページ先頭に戻る