平成二十三年東京都議会会議録第十三号

〇議長(和田宗春君) 七番福士敬子さん。
   〔七番福士敬子君登壇〕

〇七番(福士敬子君) 三・一一の福島原発事故災害は、半年が過ぎた今も、多くの人々の心も生活もずたずたにしています。当初は、何があっても安全、安全というご用学者の言葉をただ垂れ流したマスコミは、今になって真実の一部を少しずつ公表しています。
 その事実から、事故や震災の想定外はなく、すべてが想定されていたのに、原子力発電推進政権、マスコミ、その上、司法の場でも対策を切り捨ててきたことがわかりました。日本最大の人災以外の何物でもありません。
 それでもなお原発にしがみつく議員や経済界があります。目先の利益がいかなるものであれ、事故処理とそれによる人々への補償の金額を考えると、目先の利益すら吹き飛ぶはずです。今や、経済の下落による利益減は、国も企業も都でさえも、何らかの影響をこうむっています。
 この原発事故後、脱原発及び新エネルギー政策、それに必要な発送電分離を発言した菅総理は、原発を推進してきた保守政権に加え、マスコミからも総攻撃で総理の座をおりました。今後のかじ取りがどうなるのかという中で、知事は、九月九日、新内閣への建言として国へ申し入れをされました。
 オリンピック招致、膨大なエネルギーを要する建設と、最終処理すら未知であることにふたをした原発依存のエネルギー政策、建言には入っていませんが、八ッ場ダムなど、大きいことはいいことだとする知事の方向性は、知事自身提案された分散型エネルギー、地域の自立経済のあるべき姿とは根本的に異なる方向性と思われます。
 さきの台風で、都心の一極集中に疑問を持った人々もふえました。この建言では、国への依存を強め、東京から国を変える自負が見えません。何を期待されたのか、知事ご自身の見解を求めます。
 次に、特定規模電力事業者、いわゆるPPSの導入ですが、この夏、電力需給の逼迫が叫ばれ、ピークカットや電力の見える化、節電などの取り組みで、計画停電なしに乗り切りました。原発依存体質から脱却するためにも、東電だけに頼らないエネルギー政策が求められます。
 立川市では、二〇一〇年度の立川競輪場の電力供給契約をPPSに変更したところ、電力使用料金が二六・五%も削減したとのことでした。
 都は、二〇〇三年より三施設でPPSを導入してきましたが、二〇一一年度の見積もり合わせでは、結果として東電からの購入になっています。それでも、PPS導入は、価格低下と同時に、東電だけに頼るリスクを分散する可能性を秘めています。
 二〇一〇年度のPPSからの電力購入比率は、全国の自治体が九・一%であるのに対し、都はわずか一・九%です。
 PPS導入の場合、五百キロワット以上で負荷率三〇%以下が参入意欲が出るといわれています。庁舎関連の該当施設数は把握されていないようですが、今後、エネルギー政策の一環として、PPSとの契約をより多くの施設に広げるべきと考えますが、見解を伺います。
 また、拡大に当たっては、統一的な導入マニュアルなどが必要と思われますが、いかがでしょうか。
 環境への配慮では、入札参加業者をCO2排出係数によって選ぶとともに、再生可能エネルギー導入を義務化するのが都のグリーン購入方針です。先進性は評価します。しかし、発電時のみを評価するCO2排出係数では、原子力発電を行う会社が有利になってしまいます。
 CO2排出係数の算出に当たっては、原発の負の面、例えば事故時の人体及び環境への悪影響、建設、廃炉時の環境負荷、廃棄物処理によるCO2排出は考慮すべきです。
 原発は、事故が起きると、放射線漏れ、放射能汚染水の垂れ流しなど、人体、環境に関して重大な悪影響を与えることが証明されました。また、建設時や半減期が十万年といわれる核廃棄物の処理についても、都の係数では考慮されていません。都が基準値の参考としている国が公表する数値には、原発の負の面はなく、原発依存率が高いほど数値がよくなることになっています。
 全国市民オンブズマン連絡会議では、自治体電力購入についてアンケートを行い、分析をしています。その中で、いまだ放射能汚染について考慮せず、電力会社のクリーンエネルギーキャンペーンをそのまま受け入れただけのような環境配慮項目は無意味というばかりか、事実を評価しない点で有害ですらあると講評しています。
 都は、率先して全国的に模範となる調達を導入すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 CO2排出量以外にも、環境に関する影響を考慮した電力の総合評価型の調達方法も検討され、国へも申し入れるべきと考えますが、見解を伺います。
 六月の所信表明で、知事は、天然ガス発電所建設を提案されました。また、副知事は、独占的な電力市場を弾力性のある市場に変えられるのか、都が国に示していくと新聞でコメントされました。電力事業育成の意味からも、是としたいところです。
 ただ、電力市場の独占打破には、発送電分離が欠かせません。都として、どのように進めていくのか伺います。
 次に、ことしの四月、震災瓦れきの処理について各自治体に問い合わせがあり、都も含め、全国で五百以上の自治体が受け入れに手を挙げました。その時点で、都は、今年度の約十六万トンを初め、三年間で約五十万トンの処理を行うとの方針を示しました。
 当初、都は、震災瓦れきの受け入れを財団法人東京都環境整備公社が一括して行うとのスキームを出されましたが、その後、廃棄物に付着する放射線をめぐる状況が全国的に問題となり、都内の区市町村には都民から懸念の声が寄せられました。
 国の基準では、焼却施設への搬入規制はなく、焼却灰の埋立基準八千ベクレル以下が示されているだけです。これは従来のクリアランスレベルの八十倍です。さらに、八月末には隔離層の設置等によっては十万ベクレル以下まで最終処分可能と十倍以上も引き上げる見解まで出されました。
 山形県では、焼却灰は四千ベクレル以下、搬入は二百ベクレル以下という独自の基準を設定していますが、都も独自基準を設定する考えはありますでしょうか。
 国基準に従った場合、十万ベクレル弱の灰を都内で最終処分することも可能ですが、それを認めるのでしょうか。
 焼却の際も、バグフィルターがあれば大丈夫との国の見解です。しかし、一〇〇%信じてよいのか、疑問を呈する声もあります。私は、危険性のある瓦れきは、予防原則の観点から受け入れるべきではなく、放射線被害を日本各地に拡散させるべきではないと考えています。
 一方で、震災復興支援のためには、放置できない現状もあります。瓦れきを受け入れた場合、受け入れない場合について、データ分析をもとに徹底議論すべきと思います。市民に説明責任を果たすための方策をどのように考えておられますか。
 特に、都民の瓦れきによる放射線被害拡散への危機意識に対して、どう説明をしていくおつもりか伺います。
 次に、九月二十四日、八ッ場ダム建設予定地の視察をしてきました。現地では、つけかえ道路などの工事が行われていましたが、火山性の地質で地盤がもろく、あちこちで崩落が起きていました。移転住宅の背後にある土どめの赤さびは一層広がっており、酸性土をボルトで土どめができるか心配です。
 奈良県の大滝ダムでは、建設前から地すべりが予測され、近隣の集落では、住民が全戸移転の必要をいい、その訴えは無視され続けてきましたが、慰謝料など損害賠償請求を求めた訴訟で、今回住民側が勝訴しています。そして、現在でもダムは本格運用に至っていません。
 このように、地元住民の知恵が正しく、行政側の予測が間違う例は各地で起きています。
 大滝ダムだけではなく、滝沢ダムにおいても、試験湛水のたびに地すべりを起こし、追加工事が必要となりました。地すべりのデパートともいわれている八ッ場ダムでは、それ以上のトラブルが発生する可能性があります。
 都は、地すべり対策等の追加工事の増加により、ダム完成後も本格運用に至らない可能性が高いと思われることに対し、どのように対応されるのでしょうか。
 今回、八ッ場ダムの検証作業は、事業主体だけで行っています。九月十三日の第一回会合は、建設推進の声のみで、地すべりの危険性は検討すらされなかったとのことです。
 しかしながら、市民を交えた場では、ダムの必要性、安全性や経済性、建設の妥当性についてさまざまな視点から疑問が出されています。大規模な事業は、大滝ダムの轍を踏むことがないよう、真摯に検証する必要性があると思います。水需要予測と供給量の乖離は年々大きくなり、台風対策とされた数値も疑問が出されています。
 このように、むだで危険なダムとの指摘に対し、まず建設ありきの視点ではなく、問題点の徹底検証を行うよう国に申し入れるべきだと考えますが、いかがですか。
 次に、都は、二〇二〇年オリンピック招致に立候補、十五万ドルの申請料も払いました。
 一八年冬季五輪が韓国の平昌に決定し、福島で原発事故が起きるなど、開催都市に選ばれる可能性は低いという説もあります。さらに、震災復興を掲げたオリンピック招致には、市民の多くが疑問を持っています。
 九月の日本世論調査会の調べでは、サッカー日本女子代表がロンドン五輪出場を決めた直後ということもあり、招致賛成が六二%となりましたが、そのときも、地元都民の賛否はほぼ半々です。
 八月に行われた朝日beモニターアンケートでは、招致できると見る人はわずか六%、実現しても観戦したくない人が四一%もあります。
 都職員調査でも、反対多数でした。招致委員会の会長である知事自身は、もっと国を動かす力量のある人がトップに座ればと発言されています。市民や都職員の支持も得られず、知事自身が会長としての活動に消極的な状況で、何のために手を挙げられたのでしょうか。
 知事は、前回、招致失敗直後の記者会見で、二〇年五輪招致再挑戦は民意をしんしゃくする、一方的に決めることではないといわれました。
 しかし、ことし八月の記者会見では、政府が踏み込んでもいない中で戦っても結局敗戦になるので、民意を問う前の準備が必要とも答えられています。これは、知事自身が、民意をしんしゃくする段階ですらないことを認められたと思えます。
 民意を問う前の準備とは一体どう考えておられるのか。また、いつどのような形で民意のしんしゃくをされるのか伺います。
 最後に一言、さきのbeアンケートでは、知事の五輪提案主題である、被災地の復興につながるに共鳴したのは、全回答四千四十五人中わずか二百七十四人です。民意との乖離の上で使われる財政をぜひ考えていただきたいものです。
 運動場もなく時間もない一般の人々に、運動できる環境を整えることこそスポーツの優先課題であると思います。ご感想があれば伺います。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 福士敬子議員の一般質問にお答えいたします。
 新内閣への建言についてでありますが、質問を聞いていますと、大きいことはいいことだとか、国への依存を強めるとか、東京から国を変えるという自負が見えないとか、一体何をもってそのようにいっているのか、私には全くわかりませんですな。
 いずれにせよ、建言の趣旨をご理解いただけないようなので、いま一度申し上げますけれども、まずエネルギーについてですけれども、そもそも原発依存だとか、脱原発とかいった、短絡的意見には全く意味がないんだ。ゆえにも、複合的かつ現実的な戦力を構えるように国に建言したんです。
 また、オリンピック・パラリンピックは、国民が一つになって日本の復興、再生に取り組むきっかけともなると思います。招致実現のためには、国家を挙げた総力戦に臨まなければならなくて、かつての東京オリンピックのときに池田内閣では、池田さんが自分の後継者ならんとしていた佐藤栄作氏を通産大臣でしたかな、とにかく担当大臣ということで指名もしました。私はそういうシフトが推進のためには大事だと思いますよ。
 それから、八ッ場ダムについては、先日、新しい国交大臣に早期の完成を直接申し入れました。今回の千年に一度といわれる災害を見てもわかるように、コンクリートから人へなどというセンチメントでは、国民の生命、財産、とても守れません。
 しかるに、民主党の前原政調会長は、国交大臣時代、みずから国土交通省の検証に基づいて大臣がこれを判断するといっていましたが、自分の思惑と違う、要するに結論が出れば、これはとにかく不愉快だといってうそぶく。そしてまた、この判定というのは、決断を延ばそうとするんでしょうけれども、これは国民にとってもまさに不愉快な話ですな。
 ご質問の意味では、いまだにわかりませんが、政治家の役割は、いたずらに捏造した資料をもとにして非難をするんじゃなくて、現実に真正面から向き合って、なすべきあらゆる手だてを尽くして、沈んでいこうとしているこの国を少しでも浮かび上がらせることではないんでしょうか。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 五点の質問にお答えします。
 まず、都施設における東京電力以外からの電力調達についてでございますが、電力会社以外で電気の小売を行っている特定規模電気事業者、いわゆるPPSですが、この中には、環境性能の悪い石炭や石油コークスなどで発電し、多量のCO2を排出している事業者もあり、PPSからの電力調達を無条件に進めることは、温暖化対策の観点から適切ではございません。
 このため、都は、PPSからの電力調達の入札参加条件として、CO2排出係数の値が一定以下であることとするグリーン電力購入マニュアルを整備し、平成二十年度から運用しております。
 次に、さまざまな環境影響を考慮した電力の調達方法の検討についてでございますが、CO2排出量以外の環境影響を考慮した電力調達につきましては、入札制度に反映する形で、その影響を客観的に評価することは現実的ではないため、検討は予定しておりません。
 次に、発送電分離についてでございますが、都は、既に本年六月、九都県市として発送電分離の早期の検証を国に提案したほか、新内閣に対しても、民間事業者等が容易に電気事業に取り組めるよう、実質的な参入障壁を解消し、電力自由化をさらに推進すべきとの建言を行っております。
 次に、災害廃棄物の受け入れ基準についてでございますが、ご質問の八千ベクレルから十万ベクレル以下という基準は、特別な措置を講ずれば埋立処分ができるとされる基準でございまして、広域処理の受け入れ基準ではございません。
 国が本年八月に策定しました災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドラインでは、広域処理の実施に当たっては、受け入れ側で通常の廃棄物と同様に埋立処分ができるようにするため、焼却した灰の放射性セシウム濃度が一キログラム当たり八千ベクレル以下となる災害廃棄物が受け入れの対象であるとしております。
 最後に、災害廃棄物の受け入れに当たっての対応についてでございますが、国の災害廃棄物の処理方針によりますと、バグフィルターに加えまして、排ガス洗浄装置などを有しているごみ焼却施設では、放射性物質により汚染された災害廃棄物を安全に処理することができるとしております。
 これまで、都におきましては、率先してダイオキシン対策に取り組んできましたので、都内の多くの清掃工場はこれらの高性能の排ガス浄化設備を有しており、こうした設備を有する清掃工場等を対象に受け入れを図ってまいります。
 また、放射能の測定に関しましては、国のガイドラインを踏まえ、搬出側での放射性物質濃度の再確認や受け入れ施設におけるモニタリングを行い、その測定結果等をわかりやすく公表してまいります。
 これらの取り組みによりまして、災害廃棄物の処理を進め、被災地の復興を積極的に支援してまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 八ッ場ダムに関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、八ッ場ダムの安全性でございますが、国は、地質や地すべりの専門家から成る検討委員会を設置し、貯水池周辺の地盤の性質や状態、地すべりの可能性について調査検討を行い、必要な対策を講じることとしております。
 さらに、平成二十一年に地すべり調査や対策に関する指針を定めたことから、八ッ場ダムについても、最新の技術を用いて今後詳細な調査を行い、対策を決めるとの方針を示しております。
 これらのことから、地すべりに対する安全性は、国の責任において確保されると考えております。
 なお、実際の施工に当たっては、引き続きコスト縮減や工期短縮に対して努力すると聞いております。
 次に、八ッ場ダム建設事業の検証でございますが、一切の予断を持たずに検証するとの方針のもと、有識者会議の提言に基づき、国がダムの検証主体や進め方を決定し、検証を進めてきたものでございます。
 国は、八ッ場ダムにかわる複数の治水や利水の対策案を検討した上で、コストや実現性のみならず、環境や地域への影響等も含め総合的に評価した上で、八ッ場ダムが治水、利水の両面から最も有利であるとの検証結果を得たものでございます。
 都は、国に対して、直ちにダム本体工事の着工を決断し、予定どおり平成二十七年度までに完成させるよう強く求めてまいります。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) オリンピック・パラリンピック招致についてでございますが、今回の立候補は、スポーツ界、経済界、被災県等からの強い要請や賛否を含めた都民の意見、さらには、震災からの復興や再生に向けて、オリンピックの開催が国民を一つにする夢や目標となることなどを踏まえまして決定したものでございます。
 オリンピック・パラリンピックの招致活動には、国やスポーツ界、経済界などオールジャパンで臨み、先般の世論調査会の支持率六二%でございましたけれども、さらに都民、国民の支持が拡大するよう、あらゆる機会をとらえ、その効果や必要性の理解促進を図ってまいります。
 なお、申請都市としての世論調査は、申請ファイルを提出する前に実施する予定でございます。
   〔七番福士敬子君登壇〕

〇七番(福士敬子君) ただいまのお答えの五輪についてお伺いします。
 被災県からの強い要望があったというお話がありました。いつ、どのような形で、本当に三県からあったのか、お答えいただきたいと思います。
   〔スポーツ振興局長細井優君登壇〕

〇スポーツ振興局長(細井優君) 被災県からの要望でございますけれども、今回の立候補を決定する以前に、県知事の方から要望がございました。
 今回のオリンピック招致につきましては、震災復興の目標となる二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの開催は国民が一つになる夢であり、日本再生の原動力にもなるものでございます。さまざまな意見もございますけれども、オールジャパンで招致をかち取るため、その意義や理念を今後とも国内外へ広く訴えてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

〇議長(和田宗春君) 以上をもって質問は終わりました。

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