平成二十三年東京都議会会議録第十三号

〇議長(和田宗春君) 十番山内れい子さん。
   〔十番山内れい子君登壇〕

〇十番(山内れい子君) まず初めに、災害対策について伺います。
 東日本大震災から半年が過ぎ、復興に向けて歩み始めた被災地ですが、被災地ではまだ瓦れきの処理や液状化対策、道路、鉄道などの復旧、さらには、被災者の生活再建に向けての継続的な支援が求められています。
 都はこれまで、発災直後から被災三県に現地事務所を設け、被災地のニーズを酌み取りながら的確な支援を行っており、その取り組みについては評価するものですが、被災地の現状を踏まえた今後の被災地支援のあり方について、知事のご所見を伺います。
 東日本大震災は、岩手、宮城、福島、茨城まで六百キロにわたって広域な被害が発生したため、実態把握や支援がおくれました。今後、首都圏でも、東海、東南海、南海の連動地震等が起きた場合、被害想定も広域にわたり、これまでの九都県市の連携では対応し切れないことも考えられます。
 今回、いち早く支援に動いた姉妹都市連携や、物資の供給や輸送に日ごろから関係性を持つ生協などの活動が有効だったとの事例も多く聞かれていますが、広範な自治体との災害協定や支援体制の構築及び民間事業者との連携強化などについて見解を伺います。
 次に、放射能対策については、感受性の高い子どもへの影響を最小限に抑えるため、子ども独自の基準を設け、放射能測定を継続していく必要があります。
 都は、都内百カ所の測定を行い、線量計の貸し出しなどを行っていますが、自治体や住民がはかった結果、いわゆるホットスポットが明らかになり、子どもが遊ぶ公園などに関心が高まっています。自治体が所有する公園や学校については、自治体ごとに測定されていますが、都立公園では三十七公園に砂場のある子どもの広場があり、砂場の放射能を気にしている保護者も多いのです。
 特に二十三区東部地域の都立公園については、管理者としての都の責任において、一度は砂場の放射線量をはかるべきと考えますが見解を伺います。
 空間線量が安定してきた今、気になるのは食品に含まれる放射能ですが、これをはかれる測定器は数が少なく、精度の高い測定を行うには時間もかかります。都民が安心して食材を購入し利用するためには、保健所、学校などに測定器を置き、支援する人がいれば、食材を持ち込んでみずから測定することが望ましいと考えます。
 チェルノブイリでは学校に測定器を置き、牛乳などを持ち込んで調べている様子をテレビで見ました。また小金井市では、チェルノブイリ事故以来、測定器を設置して市民が測定できるようになっており、今回も多くの市民が利用しています。
 今後、長期にわたる放射能監視が必要ですが、機材購入への支援について見解を伺います。
 次に、ことし八月、再生可能エネルギー特措法が成立し、大規模設備や商業用設備では全量買い取りとなったことから、今後、ビルやマンション等で設置が加速されることが見込まれます。環境確保条例では、一定規模の建築物に再生可能エネルギーの検討が義務づけられましたが、これまでの東京都の積極的な取り組みを踏まえて、特措法を契機に爆発的な導入促進が実現するよう、対象建築物の面積の見直しや検討の義務づけだけではなく、導入を義務づけるソーラーオブリゲーション制度の導入について見解を伺います。
 二〇〇九年度に始まった東京都地球温暖化対策推進のための区市町村補助金の提案プロジェクトは、先駆的な事業に初期経費を都が出す取り組みです。例えば、先日小金井市に、この制度を活用してエクセルギーハウス、雨デモ風デモハウスがオープンしました。
 省エネタイプの建物を体験型のモデルハウスとして市民団体が運営していくこの取り組みは、今後の普及が期待できます。温暖化対策については、将来的には自治体の自立を促すとしても、震災で、ともすれば足踏みしかねない中、不断に着実に地域の温暖化対策が進むよう、こうした事業はもうしばらく継続すべきと考えます。
 そこで、区市町村補助制度について、この二年半に行った事業の成果と課題を伺います。
 次に、団塊の世代が二〇二五年には七十五歳以上に到達し、高齢者のひとり暮らしも増加する状況の中で、住みなれた地域で暮らし続けるためには、医療と介護の連携、高齢者の住まいの確保、見守りや配食など多様な生活の支援が必要であり、地域の介護力を高めていくことが求められています。
 都は、現在、高齢者保健福祉計画を策定中ですが、この計画は、区市町村の介護保険事業計画を支援する性格もあわせ持っています。区市町村とも協力しながら、今後どのように地域包括ケアシステムを構築していくのか伺います。
 医療的なケアが必要な高齢者がふえており、介護現場においては、たんの吸引などの必要なケアをより安全に提供し、利用者と介護職員等の双方にとって安心できる仕組みが求められています。今回、法改正により、介護職員等は一定の条件のもとに、たんの吸引などの行為を実施することになりました。
 今後、介護職員等は、たんの吸引などを行うに当たり、国が定める基準に沿った研修を受講する必要がありますが、この仕組みと現時点における都の取り組み状況について伺います。
 次に、社会的課題や地域課題の解決に向けては、行政の対応だけに期待するものではなく、市民が具体的な対応を生み出そうとする力を活用していくことが必要です。特に、東京にはソーシャルビジネスの担い手を目指す多くの人材が存在します。こうしたビジネスの機運を高め、効果的な活動を後押しするため、ソーシャルベンチャーセンターを設立して支援したと聞いていますが、これまで都は、ソーシャルビジネスの分野でどのような考え方で取り組みを展開してきたのか伺います。
 こうした社会的事業は、地域雇用の創出にもつながり、地域を元気にする新たな事業として期待されます。しかし、立ち上げ時には経営に関する知識や事業分野の専門性にも乏しいことなどから、十分な事業経費や人件費を得ることは容易ではありません。事業として継続していけるよう、さまざまな角度からの支援や社会的仕組みが墨田で始まっています。私の地元多摩地域でも、市民が主体となった事業が芽吹いており、多摩地域への開設を要望するものです。
 ソーシャルビジネスを展開する団体に対し、活動拠点の確保や事業運営に必要なスキルを磨く拠点や機能を提供するような努力を積極的に行うべきと考えますが、所見を伺います。
 最後に、教育行政について伺います。
 このたび示された都立高校白書では、全日制普通科で五・五%、定時制では三八・九%の生徒が中退していることが明らかになりました。
 生活者ネットワーク・みらいは、以前から夜間定時制高校に勤労青少年が通学する実態が一割未満であり、本来、日中学べるはずの子どもたちが夜間に通わなければならない現状を指摘してきました。高校無償化により都立高校への期待がますます高まる中、経済状況などさまざまな困難を抱えていても、都立を希望するすべての生徒一人一人の自己実現に寄与すため、柔軟で門戸の広い高校教育を望むものです。
 都が進めてきた中高一貫、エンカレッジ、チャレンジ、国際科など特色のある学校を数校設置するだけではおさまり切れるものではなく、今後の都立高校のあり方について見解を伺い、生活者ネットワーク・みらいの質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 山内れい子議員の一般質問にお答えいたします。
 今後の被災地支援のあり方についてでありますが、この半年を振り返ってみますと、つくづく国は硬直しておりまして、現場を知らずに、肝心なところに手が届いていない感を否めません。
 例えば、震災の何日後でしたかしら、一週間ぐらいの後に、私、気仙沼に行きまして、そうしたら気仙沼の漁業組合長も、何とかとにかく港を復旧したい、漁業をしたいというから、それは、しかしこれだけ壊滅したら大変でしょうと、特に水揚げしたいんだというから、船も壊れてしまってだめじゃないですかといったら、いやうちは遠洋漁業ですから全部船は外で生きていますと、水揚げするところがないという。私、聞いてびっくりしまして、三崎の、市長にお前のところで引き受けてやれといったら、喜んでやりますということで、次の日に現場に職員を送ってくれましたが、そのころ、私、かつての僚友でありましたので、農水大臣の鹿野君に、ちょっと君、こういうこと知っているかといったら、いや知りません、詳しく教えてあげてくださいというから行きました。
 そうしたら、後ろに農水省の幹部がぞろぞろ並んでいましたけれども、私の話を聞いて、顔見合わせて、ああ気仙沼の船、生きているんだ、よかったなと。お前らちょっとそれは遅いんじゃないかと。水産庁の役人、そのまま真っ先に出かけていって組合長の話を聞くのが君らの仕事じゃないの、現場をばかにしたらいかんよということをいったんですが、これも本当に一つの事例でしかありませんで、こういう例がもう枚挙にいとまがない。
 そういう中で東京都は、福島、仙台、盛岡に現地事務所を設置しまして、現地のニーズを受けとめて新しいスキームをつくっていきました。
 例えば、民間の運送事業者のノウハウをかりて、滞留した倉庫に積み上げられた物資を避難所や福祉施設に確実に届ける仕組みを構築しましたし、今後もインフラの本格復旧や被災地の経済再生など、山積する現地の課題に対して、現実に解決するための手立てを差し伸べて、機を逸することなく協力していくつもりでもあります。
 現に岩手県の災害がもたらした瓦れきを、処置に困っているので、東京が引き受けて、東京で焼却することにしましたし、一昨日も、現地の知事から感謝の電話がかかってきましたが、これも東京が先んじてやったことでありますけれども、いずれにしろ、その東京が持つ大都市としての力を奮って、一日も早く生活や経済活動の基礎を復活させるために、港湾施設や道路の整備に当たる専門性を備えた技術職員や、子どもたちに寄り添い健やかな育ちを導く教員などを長期に派遣することにしております。
 また、被災地の中小企業の受注回復につなげるための商談会も開催しておりまして、被災地、被災者が復興に向けて、みずから踏み出す歩みを強力に後押ししていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長、技監及び関係局長から答弁します。
   〔教育長大原正行君登壇〕

〇教育長(大原正行君) 今後の都立高校のあり方についてお答え申し上げます。
 都教育委員会は、全日制、定時制を問わず、さまざまな学科や新しいタイプの高校を設置し、多様な生徒を受け入れてまいりました。また、都立高校への進学を希望する意欲と熱意のある生徒を一人でも多く受け入れられるよう、生徒数の推移や中学生の進学希望率等を考慮し、全体の募集枠を設定しております。
 今後とも、各都立高校の教育活動の特徴や具体的な入学者選抜方法等についての情報提供など、中学校における進路指導の支援を行いますとともに、地域バランスを考慮した募集枠を設定し、希望する生徒を適切に受け入れてまいります。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 都立公園における砂場の放射線量の測定についてでございますが、都が本年六月に放射線量の測定をした百カ所の中には、都立公園五カ所が含まれております。
 また、常時計測を行うモニタリングポストは七カ所に増設することとしており、増設箇所には、足立区の舎人公園と江戸川区の篠崎公園も含まれております。
 本年八月三十日に公布された放射線物質汚染対処特別措置法を施行するために、国では現在、除去すべき土壌の範囲、収集、運搬や保管のあり方の検討をしており、今後とも国の検討経緯を注視してまいります。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 広範な自治体や民間企業との連携についてでありますが、首都直下地震などの広範囲に及ぶ被害が発生した場合には、都県域を超えた自治体同士の相互連携が重要であり、これまでも九都県市においては、物資支援や職員派遣など、発災時の情報連絡体制や相互連携の強化に努めてまいりました。
 また、災害時における物資の供給や輸送につきましては、民間事業者や業界団体などと協定を締結し連携を図っております。
 先日公表いたしました東日本大震災における東京都の対応と教訓におきましては、九都県市に加え、全国知事会等との広域的な連携協力の重要性などを明らかにいたしております。
 今後は、首都圏を超えた自治体や民間事業者など、多様な主体との連携をより一層図ってまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、食品の放射能測定機器の購入支援についてでございますが、農産物等の放射性物質を検査して安全を確認するには、作付状況や出荷時期が把握できる生産地において、出荷前に検査をすることが最も確実でございます。
 現在、生産県では最大限の検査を実施しており、都においても、都内産農産物等の検査を行うほか、他の生産県の検査にも協力をいたしております。また、都の検査体制につきましても、検査機器の整備など充実強化を図っております。
 区市町村が検査機器の整備を行う場合には、国の交付金により都が設置をいたしました東京都消費者行政活性化基金を活用できるほか、独立行政法人国民生活センターから機器の貸与を受けることができます。
 次に、地域包括ケアシステムについてでございますが、高齢者が住みなれた地域で暮らし続けるためには、地域包括ケアの視点に立って、医療や介護、生活支援サービス等を日常生活の場で切れ目なく提供していくことが重要でございます。
 このため都は、区市町村と協力をいたしまして、介護サービス基盤の整備を進めますとともに、包括補助事業を活用して、医療と介護の連携の推進、地域住民が主体となって高齢者を支え合う仕組みなどの普及に取り組んでおります。こうした取り組み状況を踏まえ、第五期の高齢者保健福祉計画の改定にあわせまして、区市町村への支援策について検討してまいります。
 最後に、介護職員等によるたんの吸引等の実施についてでございますが、今般の社会福祉士及び介護福祉士法の改正によりまして、平成二十四年四月から、医師、看護師との連携など一定の条件のもとに、介護職員等がたんの吸引等を行うことができるようになりました。
 介護職員等がこれらの行為を行うためには、国のカリキュラムに沿った都道府県研修を受講することが要件の一つになっております。このため、現在都は、介護現場におけるたんの吸引等の円滑な実施に向けまして、研修講師の養成や実地研修の受け入れ施設の確保など、関係機関と調整しながら準備を進めております。
   〔環境局長大野輝之君登壇〕

〇環境局長(大野輝之君) 二点のご質問でございます。
 まず、再生可能エネルギーの導入促進についてでございますが、都は、建築物環境計画書制度によりまして再生可能エネルギーの導入検討義務づけなどの取り組みを進め、これまで一割程度であった大規模建築物における太陽光発電の設置率が二〇〇九年度には約三割となるなど、着実に成果を上げてきております。
 今後の導入促進策につきましては、昨日もご答弁したとおり、環境審議会におきまして議論を開始しており、建築物に対する太陽エネルギー利用機器の導入義務づけ制度など、先進事例についても活発な議論が交わされております。
 都は、今後とも建築物環境計画書制度の適切な運用を図るとともに、審議会の議論も踏まえて再生可能エネルギーの導入促進策を検討してまいります。
 次に、区市町村補助制度の成果と課題についてでございますが、この制度は、区市町村の地域特性に応じた地球温暖化対策等の取り組みの一層の推進を図ることを目的としております。
 本制度の創設によりまして、例えば、家庭の省エネルギー機器の導入に対する補助事業を実施する区市町村数が倍増するなど、地域の取り組みが着実に広がっております。
 一方、一部の自治体におきましては、地球環境分野を担当する職員の育成が追いついておらず、新たな事業構築が難しいといったことが要因となりまして、区市町村ごとの取り組みに差があることが課題となっております。
   〔産業労働局長前田信弘君登壇〕

〇産業労働局長(前田信弘君) 二点のご質問にお答えいたします。
 ソーシャルビジネスへの支援についてでありますが、ソーシャルビジネスは社会的な課題の解決に資するとともに、新事業の創出にもつながるため、その育成を図ることが必要であります。
 このため都は、一昨年にソーシャルベンチャーセンターを設置し、ソーシャルビジネスに関して相談業務を行うとともに、その起業に関心を持つ潜在層を対象としたセミナー等を実施しております。
 また、同センターでは、ソーシャルビジネスの事業者とその潜在層との交流を図り、両者のパートナーシップをつくり上げることができるよう支援しております。
 次に、ソーシャルビジネスの活動拠点についてでありますが、創業して間もないソーシャルビジネスの団体が、低廉なコストで活動の拠点を確保し、事業の展開に必要な知識も学べる仕組みを整備することは必要と考えております。
 そのため、都は、本年七月に、ソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDAを設置いたしまして、創業直後のソーシャルビジネスの担い手に、賃借料を低く抑えたスペースを貸し出し、企業経営などのノウハウを提供する専門家を配置する支援を実施しております。
 こうした取り組みにより、ソーシャルビジネスの創業の支援を進めてまいります。

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