平成二十三年東京都議会会議録第十三号

〇副議長(鈴木貫太郎君) 七十七番伊藤まさき君。
   〔七十七番伊藤まさき君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

〇七十七番(伊藤まさき君) 東京は、都心から多摩地区、臨海地区へとその都市機能を拡大し、世界一の都市に成長いたしました。しかし、現在、その成長も飽和状態となりつつありますが、東京には、まださまざまな可能性が残されております。その中でも最も有望視されるべきなのは東京の海だと思います。
 東京は、豊穣な海へと乗り出していくことにより、二十一世紀においても引き続き、日本だけでなく世界の都市を牽引していく役割を果たしていけると確信をいたします。
 まず、日本そして東京の海が、いかに大きな可能性を秘めているかご紹介をいたします。
 日本の国土の大きさは三十八万平方キロメートル、世界第六十位であることに対し、領海と我が国が他の国を排除して、さまざまな経済的権益を持つ排他的経済水域は四百四十七平方キロメートルで世界第六位の規模を誇ります。お隣の中国と比較をすると約五倍の海を持つ、世界に冠たる海洋国家であります。
 その中でも、伊豆・小笠原諸島を擁する東京は、四十七都道府県の中でも最大の海域を持っております。広いだけではありません。この日本の海には、世界じゅうの海に生息をする生物の約一四・六%、三万三千六百二十九種類もの海洋生物が確認をされており、世界でも有数の漁場も有しております。さらに、海底資源も豊富に存在していることが近年、明らかになっております。
 私は先日、独立行政法人海洋研究機構海底資源研究プロジェクトのチームリーダーを務める木川栄一博士を訪ね、最新の取り組みを聞かせていただきました。水深三百メートルを超える海底には、燃える氷と呼ばれるメタンハイドレートが多数分布しており、そのメタンガスの量は、国内消費量に換算すると百年分あるといわれ、伊豆諸島や小笠原諸島の一帯にはレアメタルや金、銀、銅、鉛などを含んでいる海底熱水鉱床があり、その含有量は陸上でとれるものよりも品位が高く、銀で約十倍、金や銅では約二倍の含有量を誇る有望な鉱床があると報告をされております。
 沖ノ鳥島や南鳥島付近には、マンガンやコバルト、ニッケルやプラチナを含有するコバルトリッチクラストが存在をしていて、含有量、存在する海底の深さともに、商業化が十分検討されるといっております。その他二酸化炭素をメタンガスに変える夢のような研究も今後本格的に進めていくようであります。
 このように、海の可能性は技術の進展に伴いますます広がっております。海底調査船を使ってボーリング調査をすれば、こうした有望と推測される海域にどれぐらいの資源があるのかが把握できます。
 しかし、残念なことに、東京の海域の詳細な調査は十分に行われていない状況であります。こうした調査は、本来、国や企業が対応すべきことでありますが、国の計画では、沖縄海域を最優先とし、伊豆・小笠原海域は二の次という状況で、企業はリスクをとることに及び腰で、積極的な投資を行えていないのであります。
 その一方、外国のベンチャー企業が東京の海での調査をしたいと申請をしている動きもありますし、アメリカやロシアだけでなく、中国や韓国なども積極的かつ旺盛に投資をしております。
 特に中国は、この日本の豊かな海を虎視たんたんとねらい、軍事的にもさまざまな行動を盛んに起こしております。
 先日、都議会民主党として、野田総理大臣に対し、領土と主権の保全に関する申し入れをし、レアアースなど戦略物資についての確保などについて強く要望してまいりました。私は、今こそ都が、国の施策を後押しし、海底資源の開発を東京の海域で積極的に行われるようにするべきであると考えます。
 岩手県では、国の情報を積極的に収集し、県としてできることを具体的に検討している例もあります。伊豆・小笠原海域を、海底資源の開発のベース基地とすれば、投資を呼び、雇用を増進し、活性化の新たな柱となります。
 日本の海にこれだけの資源があるのはなぜか、それは地震を引き起こす要因となる三つのプレートが集中し、火山活動が活発的なことと裏腹なのであります。我々日本人は、有史以来、多くの震災に襲われ、多くの人命と生活の糧を奪われてきました。三月の震災でも一万五千人以上の死者、約二十兆円ともいわれる経済的被害が出ております。海底資源を開発することの意義は、単に資源を得るという経済的な意義だけでなく、これまで亡くなった方々に報いるために、犠牲と引きかえとされているともいえるこの豊富な恵みを、我々日本人が日本人の手で、十二分に活用していくことに大きな意義があると私は考えます。
 平成十七年に、みずから沖ノ鳥島を訪れ、以来、当地における漁業支援を国に先駆けて行い、永続的経済活動を実現し、排他的経済水域を維持することに力を注いできた石原都知事にお尋ねいたします。
 現在、都には、海底資源を所管する組織が存在をしておりませんが、島しょ地域の振興をさらに積極的に進めるためにも、将来有望な海底資源の開発を検討するべきと考えるが、海底資源の開発に対する知事の所見を伺います。
 ことし六月に、小笠原諸島が念願の世界遺産に登録をされました。開発か自然の保護かといった二者択一ではなく、持続可能でバランスのとれた島しょ振興を行うべきであります。現在、各局がそれぞれ施策を展開しておりますが、それらを総合的に結びつけ、地域の特性を生かしながら、総合的な島しょ振興をするべきだと考えますが、所見を伺います。
 公文書の管理についてお伺いいたします。
 行政のあらゆる活動は、意思決定過程の透明性、住民への説明責任の明確性、運営の一体的持続性と安定性が求められることから、文書主義の原則で運営をされております。公文書の管理は大変地味な分野ではありますが、すべての行政活動の基礎、基本であり、適正な文書作成と管理を行うことはとても重要であることは論をまちません。
 公文書の適正な管理を怠れば、例えば消えた年金問題、また、薬害肝炎患者リストの放置問題など、人々の生活や生命をも脅かす重大な問題を引き起こすのであります。
 ことし四月に公文書管理法が国において施行され、我が国の公文書の管理は、新たな段階へと踏み出しております。
 都においては、昭和六十三年の公文書館法施行の二十年前、昭和四十三年に都政史料館と総務局の文書課の機能の一部を統合し、東京都公文書館を設立し、平成十一年には、東京都文書管理規則を制定、施行しております。法制定前に先進的な取り組みを重ねていることは評価をいたしますが、他の自治体や国の取り組みには、より先進的なものが出てきております。
 公文書管理法施行に当たり、いま一度、都の文書管理を見直しする絶好の機会と考え、以下、質問並びに提案いたします。
 公文書管理法第三十四条には、地方自治体においても、この法律の趣旨にのっとり、必要な措置を講ずるよう努める義務を課しております。都ではこの法の趣旨をどのようにとらえ、施策を実行していくのか所見を伺います。
 都では、国と違い、これまで総務局を中心に文書の一元管理をしてきました。しかし、長期保存文書については、公文書館への引き継ぎが義務づけられているにもかかわらず、二割程度しか引き継ぎは行われておりません。神奈川県では六割から七割の引き継ぎが行われていることを見れば、低いといわざるを得ません。さらに、各局での引き継ぎの状況はかなりの差があります。この点についての所見と、局横断での取り組みの強化が必要と考えますが、所見を伺います。
 大阪市では、公文書管理条例において、地方独立行政法人や住宅供給公社等については、市と同様の規定を設けることを義務づけ、出資等法人については、必要な指導等の実施に努める、指定管理者についても努力義務を明文化しております。都では、各所管の局が監理団体を指導しておりますが、都においても、条例で必要な定めを置くべきと考えますが所見を伺います。
 文書管理については、ルールや仕組みをつくるだけでなく、日々業務を行っている職員の能力の向上が何より重要と考えます。従来は業務に精通しているベテラン職員が知識や経験を継承し、人材育成を担っていたようだが、職員が大量退職している状況であります。人材育成への継続的な取り組みが必要と考えますが、所見を伺います。
 これまで指摘したことについては、東京都文書管理規則には触れられておりません。時代の変化に対応すべく、条例に格上げし、都民に対し、都の説明を明確にすべきであります。
 文書の管理と情報の公開は車の両輪です。情報公開については、法に基づき、情報公開条例が施行されていることからも、人材育成や文書管理の範囲拡大などを明確に規定する条例を制定するべきです。所見を伺います。
 公文書館について伺います。
 先日、私は、東京都公文書館を視察してまいりました。館長以下各責任者の皆様からつぶさに取り組み状況をお聞きいたしました。明治、大正時代の記録資料だけでなく、江戸時代の貴重な歴史的資料が大量に保管管理をされており、大変興味深く拝見をいたしました。その中でも、とりわけ安政大地震や関東大震災の関連資料は、被災状況や各地から寄せられた救援物資、避難所の名簿など、当時の状況を生々しく伝えており、これからの防災対策を考える上でも貴重なものだと思います。公文書の適切な管理の必要性を改めて感じました。
 そこで伺います。
 現在の公文書館は、建設から四十三年たち、更新時期を迎えております。都有施設の移転更新に合わせて、民間のノウハウを活用したまちづくりを進める都市再生ステップアップ・プロジェクトに伴い、来年の四月に、世田谷区の旧都立玉川高校の校舎を改築し仮移転をされ、平成二十八年以降に本移転をする予定となっております。
 公文書館の年間利用者の約三割は都の職員であります。業務の効率化を考えれば、都庁に近く、利用者の利便性向上のためにも、交通状況がよい方が望ましいと思います。また、公文書の効率的な収集、保管をすべく、中間書庫も設けるべきと思います。新設される施設の内容など、今後の整備をどのように行うのか所見を伺います。
 次に、電子化への対応について伺います。
 公文書管理法においても、都の規定においても、紙媒体の公文書管理を中心としておりますが、電子文書による管理という抜本的な対策が必要と考えます。それと同時に、膨大な資料を都民が容易に検索できるシステムを現在構築中とのことでありますが、歴史的に重要な絵図などもネット上で閲覧できることが重要と考えますが所見を伺います。
 公文書館にある重要な、貴重な資料をより多くの都民に活用してもらえる環境づくりが必要と考えます。
 都立図書館や江戸東京博物館など、他の機関との連携強化や、本庁にある都政情報コーナーに資料が閲覧できる出先機関を設けるなど、積極的な対応が必要と考えますが、所見をお伺いいたしまして質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 伊藤まさき議員の一般質問にお答えいたします。
 海底資源の開発についてでありますが、世界的な資源獲得競争が激化する今日、この日本を囲む海の重要性はご指摘のようにますます高まってきていると思います。近隣の国々は、すきあらば我が国の領土や、あるいは排他的経済水域をかすめ取ろうとしている、これが国際社会の厳しい現実であります。こうした現実に、民主党政権は全く対応できているとは思えません。
 日本列島は日本人だけの所有物ではない、日本列島は日本人の所有物ではないと発言する売国的な総理がいたと思えば、我が国の領海を侵犯した者をつかまえながら、北京政府の圧力にやすやすと屈してその責任を地方の一検事に背負わせた総理もいました。こうしたやからがトップに立つ国が存在感を失っていくのは自明の理であります。
 東京の沖ノ鳥島も、シナの政府は一方的にただの岩と呼び、日本の排他的経済水域を否認しております。これに対して、広大な海を抱える東京は、沖ノ鳥島に関しては、小笠原の卓抜な漁業のリーダーであります菊池組合長にも相談しまして、操業のための船を新規に進水もさせましたし、それによって漁礁もつくって、活発な漁業活動をあの周りで行っております。こういう経済活動を行うことで、今まで勝手にやってきていた外国の漁船も姿を消したようでありますが、ひとり東京のみならず、これは日本を守るための行動だと思っております。
 今、危機に瀕している尖閣諸島も、実は私が国会議員時代に仲間と図って拠金して、最初に、関西の大学の冒険部の学生に頼んで、簡単な灯台をつくりまして、その後、ある政治団体が立派な灯台をつくってくれましたが、いずれにしろ、こういったことを示すことで、私たちはやっぱり領土を辛うじて守ることができているんじゃないかという気がいたします。
 国政の大眼目は、国民の生命、財産を守ることであります。領土と排他的経済水域を守り、そこに眠る可能性をいかに引き出すかは、まさに国が責任を持って進めることだと思います。国が重い腰を上げるのであれば、都としてこれに協力することはやぶさかではありません。
 しかし、最近も日本が開発計画を進める沖縄トラフでの中国からの調査申し込みに安易に同意して、尖閣諸島付近で中国の調査船が、事前通報と異なる海域を航行するという事態も頻発しております。あるいは、国内の海域をシナの潜水艦が無断で通過する、これに対して日本は何の警告もしないでいる。これ、もし日本の潜水艦が、例えば、北朝鮮あるいは中国、あるいはロシアの国内の海域を潜水して無断で通過したら、これ、爆雷落とされますな。あるいは韓国の領域を潜水艦が侵しても、恐らく爆雷を投下されるでありましょう。
 こういったことに全く何の反応も示さない国家というのは、世界で珍しいものだと思いますけれども、まず、みずからの領土を守るという国の姿勢が、これは最重要だと私は思います。それなくして、都が乗り出して云々ということではならない。
 ご質問を聞いていても、非常にこの問題について熱意のあるあなたなら、ここで質問だけじゃなしに、ぜひ、とにかく民主党として、彼らが政権の座にある限り、これは極めて重要な日本の海洋資源を守るために、あなたが本当に頑張って国を実際に動かしていただきたい。
 その他の問題では、総務局長から答弁いたします。
   〔総務局長笠井謙一君登壇〕

〇総務局長(笠井謙一君) 九点のご質問にお答えをいたします。
 まず、総合的な島しょ振興についてでございますが、豊かな水産資源や自然環境に恵まれた島しょ地域の振興に当たっては、自然環境の保全と開発を両立させることにより、その持続的な発展を図っていくことが重要でございます。
 このため、都は、島しょ地域に関する総合的な計画であります東京都離島振興計画や小笠原諸島振興開発計画を策定し、豊かな自然を保全するとともに、これを地域の財産として有効に活用することで、観光を初めとした産業振興などに取り組んでまいりました。
 今後も、東京の島々が有する潜在的な魅力を引き出し活用するとともに、財産として守り育てていくことにより、地域の特性を生かした島しょ振興を積極的に行ってまいります。
 次いで、都における文書管理についてでありますが、いわゆる公文書管理法は、これまで国において文書管理の運用が各省庁任せであったことなどにより、不適切な文書管理が行われていたことを踏まえ、まちまちだった各行政機関での文書管理について統一的なルールを定め、適切な文書の管理体制の確立を目指すために制定されたものでございます。
 一方、都では、既に平成十一年に制定いたしました情報公開条例におきまして、公文書の適正な管理の必要性を規定するとともに、文書の発生から廃棄までを統一的なルールで統制するため、文書管理規則等を整備しております。今後とも、こうした文書管理の仕組みを適切に運用してまいります。
 次いで、長期保存文書の引き継ぎについてでございますが、長期保存文書につきましては、事業の性質によって各局ごとに文書量が異なっており、さらに、当面、手元にある方が事務執行上適当な文書もあることから、公文書館への引き継ぎにつきましては、文書管理規則等に基づき一定期間の適切な時期に行えるものとされております。こうしたことから、各局の引き継ぎ状況に相違が生じているものと考えております。
 今後とも、全庁を対象とした説明会の開催など、さまざまな機会を通し、引き継がれるべき長期保存文書について、公文書館への適切な引き継ぎを促進してまいります。
 次いで、監理団体の文書管理にかかわる規程のあり方についてでありますが、都におきましては、従来から監理団体に対し、監理団体指導監督要綱等において情報公開の推進を求め、それに必要な文書管理がなされるよう指導を行ってまいりました。これにより、それぞれの団体において、文書管理に関する規程が整備され適切な運用がなされております。
 今後とも、各団体において適正な文書管理が図られるよう、引き続き必要な指導に努めてまいります。
 次いで、人材育成への取り組みについてでございますが、文書事務は、ベテラン職員のみならず、すべての職員が担うべきものであり、都政を取り巻く課題が多様化、複雑化する中、都においては、平成二十年に文書・政策法務の能力向上・人材育成方針を策定いたしました。この方針に基づき、自己学習を支援する手段の提供や研修の充実を図るとともに、文書管理についての職員の能力向上にも努めております。
 今後とも、適正な文書管理に向け、人材育成に継続的に取り組んでまいります。
 次いで、条例の制定についてでありますが、都におきましては、情報公開条例や文書管理規則等により適正な文書管理を行うとともに、人材育成についても方針を定め、職員の能力向上を図っております。こうした取り組みを進めることにより、都民の都政に対する理解や信頼の確保などに努めてまいります。
 次いで、公文書館の整備についてでございますが、現在、竹芝地区にある公文書館は、民間の活力や複数の都有地の有効活用を図る都市再生ステップアップ・プロジェクトが進められることに伴い、平成二十四年四月から、仮移転先の旧都立玉川高等学校において業務を行う予定となっております。その後の本移転に向けては、利用者の利便性や保存していくべき文書量の推移等を考慮しながら、今後、検討を行っていくこととしております。
 次いで、資料の電子化についてでありますが、公文書館においては、これまでも利用頻度の高い文書等を対象として、マイクロフィルムからデジタル媒体への変換作業を行っています。さらに、歴史的に重要な絵図等、原本による閲覧が困難な資料については、電子画像化を進めております。
 今後とも、利用者サービスの向上に向け、着実に取り組んでまいります。
 最後に、資料の積極的な活用についてでありますが、公文書館では、従来から都立中央図書館や江戸東京博物館等と連携し、普及事業の一環として所蔵資料展やセミナーの開催、所蔵資料の貸し出し等を実施しております。
 今後とも、関係機関と積極的に連携し、公文書館の所蔵文書がこれまで以上に多くの都民の皆様に活用されるような環境づくりを進めてまいります。

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