平成二十三年東京都議会会議録第十三号

〇議長(和田宗春君) 十六番斉藤やすひろ君。
   〔十六番斉藤やすひろ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

〇十六番(斉藤やすひろ君) 初めに、交通基盤整備について質問します。
 東京の公共交通ネットワークは高度に発達しているものの、バスの乗りかえや乗りおりに不便な駅は依然として多く残されております。このため、移動手段が限定されている高齢者や障害者、あるいはベビーカーを使う子育て世代などにとって、スムーズな移動に支障を来すケースが多く見受けられます。
 また、道路構造の整備はいまだ不十分であり、特に都内随所に見られる車道と歩道の分離されていない生活道路などでは、歩行者が常に危険にさらされております。
 こうした状況を踏まえて、二〇〇九年に改定された東京の都市づくりビジョンは、歩いて暮らせるまちづくりの推進を掲げ、区市町村や交通事業者などとともに、地域における公共交通の充実や利便性向上、自転車走行空間のネットワーク形成、コミュニティインフラの整備やバリアフリー化を促進し、だれもが円滑に地域の移動や施設の利用ができるまちづくりを推進するとの方向性を打ち出しました。
 以来、我が党の一貫した主張もあり、鉄道駅のエレベーター設置や可動式ホームさくの設置などのユニバーサルデザイン化、区市町村が行う移動等円滑化基本構想の策定費用の補助事業などが重点的に進められました。引き続いて、歩いて暮らせるまちづくりを推進し、構想を一層具体化させるには、人の移動しやすさに力を入れていく必要があります。
 そこで、公共交通機関の乗りかえの円滑化や、車いす、ベビーカー、自転車などを乗せられるバスや鉄道車両の導入に取り組むなど、人が移動しやすい最先端の交通基盤整備を行うべきと考えます。ユニバーサルデザインの観点から、鉄道駅を中心とした交通基盤整備について知事の所見を伺います。
 次に、自転車政策について質問します。
 欧州では、生活道路における速度規制導入などの工夫に見られるように、歩行者と自転車の共存や道路空間を共有するという考えが広まっています。同時に、自転車がCO2を排出しないことや気軽に行動できることから、地球温暖化防止と地域の活性化を組み合わせた複合的政策として、自転車政策が位置づけられています。さらに、自転車道の整備が人身事故の減少という効果をもたらしています。
 翻って、我が国には、総合的、複合的な交通戦略がなく、都市交通における自転車の位置づけもあいまいなために、自転車の関係する事故が大きな社会問題になっております。
 こうした状況の中で、都の自転車政策については、本年二月の第一回定例会の代表質問や予算特別委員会で、我が党が条例制定の必要性を強調したのに対し、都は、自転車総合政策検討委員会を設置し、検討を開始したと聞いています。
 そこで、委員会の目的、当面する検討テーマと議論の方向性について明らかにすべきです。そして、都としての自転車政策を総合的に再構築し、自転車にかかわる分野それぞれの責務と政策目標を明らかにした東京都自転車条例を、議会と当局が連携して策定するべきです。あわせて都の見解を伺います。
 次に、都が昨年九月に策定した高齢者の居住安定確保プランについて質問します。
 私は、このプラン策定に先立つ平成二十一年十二月の第四回定例会の一般質問で、都が高齢者の住まいの整備を担う計画を早急に策定し、実行に移すよう求めました。東京における高齢者の住まいと介護の問題が極めて深刻な事態になっていることを痛感したからであります。
 プラン策定後、高齢者住まい法の改正により、サービスつき高齢者向け住宅が制度化され、国においては補助の仕組みを構築し、目標戸数を明示するなど、高齢者の住まいの整備に本腰を入れつつあります。さらに、都においては、今年度に住宅マスタープランや高齢者保健福祉計画が改定され、区市町村でも次期介護保険事業計画が策定されます。
 これに基づいて、建設費や家賃助成の実施主体である区市町村による供給促進に向けた積極的な取り組みや、事業のさらなる周知が重要と考えますが、区市町村の取り組みにはかなりの温度差があります。したがって、都には、みずからが区市町村に出向き、丁寧に制度の活用助言を行う責務があります。また、一義的には、区市町村が担う福祉政策との連携を深め、都と区市町村がそれぞれの役割をしっかり果たしていくべきであります。
 そこで伺います。
 法改正や諸計画の見直しなどの状況変化を踏まえ、高齢者の居住安定確保プランを改定する必要があると考えます。あわせて、その際、これまでさまざまなタイプに分かれていた高齢者向けの住まいが、サービスつき高齢者向け住宅として統一されるなど、高齢者向け賃貸住宅制度も変わったことから、都としては、わかりやすいパンフレットを作成するなど、区市町村や事業者へのPRが必要と考えます。見解を求めます。
 次に、児童養護施設入所児童の学力の向上について質問します。
 先日、都内の児童養護施設に学習ボランティアを派遣し、児童に個別学習指導を行っているNPO法人3keysという団体の話を伺いました。その中心者である森山誉恵代表理事は、ほとんどの子どもたちは、児童養護施設に来たときには既に大幅に学習がおくれており、自信や意欲の低下だけでなく、将来の目標や希望を持つことを妨げていると語っておりました。
 都が八月に発表した、東京都における児童養護施設等退所者へのアンケート調査報告書によると、児童養護施設の子どもたちは中学卒業の学歴にとどまっている割合が高く、その結果、正規雇用の割合が低いとの分析を行っております。また、調査では、機会があれば高校や大学などに行きたい、行き直したいとの回答も多く、施設において学習環境を整える重要性を浮き彫りにしております。
 そこで都は、施設入所児童らへの学力向上のためには、施設における学習支援の充実とあわせ、民間団体や協力企業と積極的に連携すべきと考えます。見解を求めます。
 次に、都がこのほど策定した都立動物園マスタープランについて質問します。
 動物園、水族館には種の保存、調査研究、環境教育、観光レクリエーションの四つの機能がありますが、とりわけ都立動物園は、種の保存と調査研究で国内の動物園、水族館の中心的な役割を果たしてきました。
 私はことしの二月の予算特別委員会で、都立動物園、水族館ならではの中長期ビジョンとして、野生動物の保全のためのズーストック構想を策定すべきと主張いたしました。この点について、マスタープランで、飼育繁殖技術を世界に発信し、東京、日本はもとより、世界の野生動物の保全に貢献する動物園を目指すと明記したことは高く評価するものであります。
 今後、都立動物園の有するホルモン分析やDNA解析など、高度な飼育繁殖技術を活用して、都立動物園ならではの取り組みにより、世界の野生動物保全の拠点としていくべきと考えます。都の見解を求めます。
 また、マスタープランの策定を機に、大都市東京の中で、都立動物園、水族館が種の保存や地球の生物多様性の維持に貢献していることを子どもたちが誇りに思えるよう、積極的に都民に情報発信を行うべきと考えます。見解を求めます。
 次に、放射性物質を含む下水汚泥の取り扱いについて質問します。
 放射性物質を含む下水汚泥について、都下水道局は、セメントなどへの資源化を見合わせ、区部では全量埋立処分し、多摩地区では施設内に保管するなど、適切に管理を行っていると説明してきました。
 そこでまず、現在の取扱状況について改めて説明を求めます。
 ふえ続ける下水汚泥の保管場所の確保は、一段と深刻化しつつあります。その緩和策の一つである焼却後の下水汚泥の資源化は、東京湾での埋立処分量を減少させ、資源循環型社会構築の面でも非常に重要な取り組みであります。
 そこで、現在見合わせている下水汚泥の資源化について、都民の理解を得ながら、早急に方向性を打ち出すべきと考えます。都の見解を求めます。
 次に、路地状敷地の大規模長屋について質問します。
 私の住んでいる目黒区や隣接する世田谷区では、最近、路地状敷地に、十数戸で一棟という長屋形式の大規模な集合住宅が相次いで建築されています。この建築形態は、道路に接する間口部分は狭いものの、その奥が広くなっている、いわゆる旗ざお型の敷地を活用したものであります。
 東京都建築安全条例では、路地状敷地の長屋に対して安全を確保するための制限を加えているものの、規制の網をすり抜けるような建設が進められています。
 例えば、間口部分の道路が狭いため災害時の避難に危険が伴い、緊急車両による活動も制限されるほか、避難通路がごみ置き場で狭められていて危険などの問題が指摘されております。現状のままでは、このような長屋がさらにふえる可能性があります。
 そこで都は、完了検査などの機会をとらえ、条例を厳格に適用するよう区市と連携をとるとともに、路地状敷地に建設される大規模長屋については、条例改正も含め、防災面から規制を強化すべきと考えます。都の見解を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

〇知事(石原慎太郎君) 斉藤やすひろ議員の一般質問にお答えいたします。
 鉄道駅を中心とした交通基盤整備についてでありますが、東京の鉄道網は、世界に類を見ない高密度で正確、安全な公共交通でありますが、障害のある方や高齢者を対象としたバリアフリー化をさらに発展させ、だれにでも安心で安全に動けるようにするために、いわゆるユニバーサルデザインの観点から、外国人なども含むすべての人にとって、東京をより一層快適なまちにしていくことが必要であると思います。
 二十三区に限っていいますと、あれだけの面積に、地下鉄も含めてあれだけ数の多い都市というのは世界にございません。
 このため、渋谷駅などで鉄道駅の再整備と周辺まちづくりを一体的に行って、段差を解消するなど、駅とまちを連続的につないでおります。これは安藤忠雄さんのデザインによるものですが、だれもが一目でわかる案内サインも整備しまして、安全で快適な歩行空間を創出しております。
 新しい技術が文明を変えてきましたが、だれにでも通用のできるユニバーサルデザインにおいても、ユビキタスなど先進技術を活用して、すべての人が安心して不自由なく移動できる都市を世界に先駆けてつくってまいりたいと思います。
 ユニバーサルデザインの先進都市東京の実現を目指して、さまざまな施策を重層的、複合的に展開していきたいと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監村尾公一君登壇〕

〇東京都技監(村尾公一君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立動物園、水族園を世界の野生動物保全の拠点としていくことについてでございますが、都立動物園、水族園は、高度な飼育繁殖技術を活用して、希少野生動物の繁殖や生育地の保全活動に取り組むだけでなく、国内外の動物園、水族館などに対する支援を行っております。
 例えば、佐渡トキ保護センターへの技術協力のほか、マレーシアやマダガスカルの野生生物公園や動植物園など、海外の動物園から研修生の受け入れを行い、人材育成にも寄与するなど、その活動は国内にとどまるものではありません。
 世界じゅうで野生動物の絶滅の危機が深刻化する中、今後とも、都立動物園、水族園は、世界の野生動物の保全において日本を代表する先導的な役割を果たしてまいります。
 次に、種の保全、保存の取り組みについて積極的に都民に情報発信を行うことについてでございますが、都立動物園、水族園は、大都市東京で多くの人たちが最初に野生動物と出会う場であり、来園者に多様な野生動物の行動や生態、生息環境を伝え、野生動物の保全に取り組むことの意義を訴えております。
 具体的には、保全フォーラムや時宜を得た企画展の実施などの取り組みを行っております。例えば、本年六月から約三カ月にわたり、世界自然遺産に登録された小笠原諸島に生息するアカガシラカラスバトなどの希少動物の保全活動を紹介するキャンペーンを行ってまいりました。
 今後とも、都は、さまざまな機会を通じて、都民を初め多くの人たちにわかりやすく都立動物園、水族園の取り組みや成果を発信していくことにより、野生動物の保全活動の理解者をふやしていくとともに、将来の担い手をはぐくんでまいります。
〔青少年・治安対策本部長樋口眞人君登壇〕

〇青少年・治安対策本部長(樋口眞人君) 自転車総合政策検討委員会についてでありますが、本委員会は、第一回定例会における自転車条例制定のご提案を受け、今後の自転車政策の総合的な推進のために、自転車の安全利用に関する課題や方策を検討することを目的として、本年六月に設置したものであります。
 警視庁を初め関係各局のほか、区市町村、交通安全協会等の関係団体や業界団体の参加を得て、自転車の安全利用の推進や自転車走行空間の確保などのテーマについて、条例制定に当たっての課題を含め、今年度末を目途に検討を進めていくこととしております。
 この検討結果を踏まえて、都は区市町村、民間事業者との連携により、自転車をめぐるさまざまな課題を解決するための仕組みづくりなど、総合的な自転車政策の構築に取り組んでまいります。
   〔都市整備局長飯尾豊君登壇〕

〇都市整備局長(飯尾豊君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、高齢者の住まいでございますが、都は、猪瀬副知事を座長とするプロジェクトチームの検討結果に基づき、高齢者向けの賃貸住宅の供給促進を図っております。
 国は、都の先駆的な取り組みを受け、本年四月に関係法を改正したところでございます。高齢者の居住安定確保プランは、この法律に基づき、昨年九月に住宅部門と福祉部門の連携により、高齢者の居住安定のための施策等を示したものでございます。
 都では、住宅政策審議会の答申や区市町村の意見などを踏まえた上で、住宅マスタープランを改定するとともに、年度内に次期高齢者保健福祉計画も作成することを予定しております。
 高齢者の居住安定確保プランについては、法改正やこうした上位計画の策定状況を踏まえながら、改定に向けた検討を行ってまいります。
 また、高齢者向け賃貸住宅の供給促進には、区市町村との連携強化や事業者への制度の周知が不可欠であり、都独自の基準や支援策をわかりやすく示すなど、効果的な方法により積極的に取り組んでまいります。
 次に、路地状敷地の大規模長屋でございますが、東京都建築安全条例では、安全上、防火上の観点から、建築基準法の規定に加え、路地状敷地における建築を制限しております。
 共同住宅は、条例により路地状敷地での建築を原則禁止しております。長屋はこれと異なり、共有の廊下や階段などがなく、各住戸の出入り口から直接屋外への避難が可能であり、道路へ通じる通路を確保することなどにより、条例に適合いたします。
 しかし、お話のあった路地状敷地の大規模長屋については、周辺住宅地への圧迫感や安全性などの面から、近隣住民と紛争に至る事例も報告されており、安全上、防火上の観点から、敷地の形態や長屋の戸数、配置などについて調査し、実態を把握してまいります。
 また、通路の有効幅員の確保など、建物完成後の適正な管理について、区市と連携し、建築主に対する指導の徹底を図ってまいります。
   〔福祉保健局長杉村栄一君登壇〕

〇福祉保健局長(杉村栄一君) 児童養護施設における学習支援につきましてお答えを申し上げます。
 施設に入所しております児童は、虐待を受けるなど、それまでの養育環境の影響によりまして、学習習慣や基礎的な学力が身についていない場合も少なくございません。このため施設では、自習室の設置など学習環境を整えますとともに、学校と連携を図りながら、一人一人の児童の状況に合わせた学習支援を行っております。
 また、学力を補い、進学を支援するため、中学生に対しては平成二十一年度から学習塾代が支給されております。こうした支援は、学力向上に効果がございますため、都は、高校生も支給対象とするよう国に働きかけております。
 さらに、お話のように、学習支援を行う民間団体などの協力を得ることも有効でございますことから、今後、施設と団体等との連携を促してまいります。
   〔下水道局長松田二郎君登壇〕

〇下水道局長(松田二郎君) 下水汚泥に関する二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、放射性物質を含む下水汚泥の現在の取り扱いの状況についてでございますが、区部では、専用の施設内で焼却灰にセメントと水をまぜ、飛散防止措置を施した上で、開閉式のふたがついたトラックを用いて運搬し、全量を埋立処分しております。
 多摩地域では、灰を袋に詰めて、敷地内に適切に保管をしております。
 一方で、焼却灰は毎日排出されることから、保管場所に限りがある多摩地域においては、適切な最終処分方法などについて、関係者と協議を進めているところでございます。
 なお、脱水汚泥、焼却灰及び焼却時の排ガスに含まれる放射性物質につきましては、専門機関により測定し、結果を引き続きホームページで公表しております。
 また、下水汚泥を処理する施設の敷地境界の空間放射線量の公表については、測定を二週間に一回であったものを六月から毎週とし、さらに測定箇所をふやすなど、きめ細かい情報提供に努めております。
 なお、汚泥焼却時の排ガスから放射性物質は検出をされておらず、また、空間放射線量の測定結果は、都内の他の地域と変わらない数値となっておりまして、周辺環境への影響はないと考えております。
 次に、下水汚泥の資源化再開についてでございますが、セメントへの再利用については、六月に国から示された安全性の評価方法などを参考に、汚泥の焼却灰に含まれる放射性物質の濃度が徐々に下がってきている現状を踏まえ、今後、濃度が比較的低い値の焼却灰から順次受け入れを再開できるよう、セメント会社と調整を進めております。
 また、セメント以外の製品では、これまで、シールドトンネルを構成するセグメントや鉄筋コンクリート管などの材料として、市場に流通させることなく、下水道工事に使用してまいりましたが、これらの製品化の早期の再開に向け、現在、材料の安全性の評価を独自に行っております。
 都が資源化再開の道筋をつけることで、汚泥の取り扱いに困窮する他の自治体を牽引してまいります。
 今後とも、環境負荷の少ない都市の実現に大きな役割を担う下水汚泥の資源化の一刻も早い再開に向けて、多くの都民の皆様のご理解を得ながら、関係者との協議を精力的に行ってまいります。

〇副議長(鈴木貫太郎君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩をいたします。
   午後五時十八分休憩

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